JP4713790B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気入りタイヤに係り、発熱抑制と摩耗性能の両立を図ることのできる、特に建設車両に好適な、摩耗性能の低下を抑制を最小限に止め、発熱を抑制してタイヤ寿命を長くすることができる空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
空気入りタイヤのトレッドの発熱を抑制するため、従来ではトレッドゴム層自体のゴム物性をコントロールしていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、一般的に発熱抑制を狙った物性のトレッドゴムは、摩耗の低下を招くため、発熱抑制と摩耗性能の両立は困難であった。
【0004】
本発明は、上記事実を考慮し、発熱抑制と摩耗性能の両立を図ることのできる空気入りタイヤを提供することが目的である。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の空気入りタイヤは、踏面に溝の形成されたトレッドゴム層を備え、トレッドゴム層の厚さ方向中間部分の少なくとも一部分には、トレッドゴム層を構成するゴムよりも引張弾性率の高い部材からなる薄肉のトレッド補強層が設けられていることを特徴としている。
【0006】
次に、請求項1に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0007】
図14(A)は、従来品のトレッドゴム層の模式図であり、トレッドゴム層100は、接地すると力Fを受けて縦方向に圧縮変形し、縦方向中間部分が横方向に膨出変形する。
【0008】
走行によりタイヤが回転すると、トレッドゴム層100は上記変形を繰り返して発熱する。
【0009】
請求項1に記載の空気入りタイヤでは、図14(B)に示すように、トレッドゴム層100の厚さ方向中間部分に、トレッドゴム層100を構成するゴムよりも引張弾性率の高い部材からなるトレッド補強層102を設けたので、接地した際の横方向の膨出量をトレッド補強層102が抑制する。また、トレッド補強層102が横方向の膨出を抑制することにより、撓み(圧縮変形)も小さくなる。
【0010】
なお、厚さ方向とは、踏面部のトレッド表皮より下ろした法線の方向を言い、トレッドゴム層100の厚さ方向中間部分とは、トレッドゴム層の厚さ方向のゲージの中間部のことを言う。
【0011】
横方向の膨出変形量及び縦方向の撓み量が小さくなるため、トレッドゴム層の発熱が抑えられる。
【0012】
本発明では、トレッド補強層を設けることでトレッドゴム層の発熱を抑えられるので、例えば、本発明のトレッド構造により発熱を抑え、トレッドゴム層のゴムにより耐摩耗性を確保することができ、発熱抑制と摩耗性能の両立を容易に図ることができる。
トレッドゴム層の発熱が問題となるのは、動きが大きく、放熱し難いトレッドゴム層の厚い新品〜摩耗初期の段階のみであるため、その時点でトレッド補強層の効果が発揮されれば良く、摩耗初期以降は効果が減少、または無くてもかまわない。トレッドゴム層踏面から計測するトレッド補強層の深さ寸法を、新品時の溝深さ寸法の10〜30%の範囲内に設定することで、新品〜摩耗初期の発熱の問題が生じやすい期間において、トレッド補強層による発熱抑制効果を最大限に発揮することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の空気入りタイヤにおいて、前記トレッド補強層は、踏面に対して略平行に設けられていることを特徴としている。
【0014】
次に、請求項2に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0015】
トレッド補強層を、踏面に対して略平行に設けることにより、トレッドゴム層の横方向の膨出を抑制する効果を高めることが出来る。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の空気入りタイヤにおいて、前記トレッド補強層の50%伸張モジュラスは、トレッドゴム層を構成するゴムの50%伸張モジュラスの2〜4倍の範囲内であることを特徴としている。
【0017】
次に、請求項3に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0018】
トレッド補強層の50%伸張モジュラスが、トレッドゴム層を構成するゴムの50%伸張モジュラスの2倍未満になると、トレッドゴム層の横方向の膨出変形を抑える作用が低下する。
【0019】
一方、トレッド補強ゴム層の50%伸張モジュラスが、トレッドゴム層を構成するゴムの50%伸張モジュラスの5倍を越えると、異種ゴム層間での剥離が懸念される。
【0020】
したがって、トレッド補強層の50%伸張モジュラスを、トレッドゴム層を構成するゴムの50%伸張モジュラスの2〜4倍の範囲内に設定することが好ましい。
【0021】
なお、トレッドゴム層が複数ある場合、トレッド補強層は、50%伸張モジュラスを隣接するトレッドゴム層の2〜4倍のモジュラス値に設定する。
【0022】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の空気入りタイヤにおいて、前記トレッド補強層の厚さは、前記トレッドゴム層の厚さの2〜5%の範囲内であることを特徴としている。
【0023】
次に、請求項4に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0024】
トレッド補強層の厚さがトレッドゴム層の厚さの2%未満になると、トレッドゴム層の横方向の膨出変形を抑える作用が低下する。
【0025】
一方、トレッド補強層の厚さがトレッドゴム層の厚さの5%を越えると、トレッド補強層自体の耐摩耗性が全体の摩耗に与える影響が大きくなり無視できなくなり、また、トレッド補強層の発熱特性が全体の発熱に与える影響が大きくなり無視できなくなる。
【0026】
したがって、トレッド補強層の厚さを、トレッドゴム層の厚さの2〜5%の範囲内に設定することが好ましい。
【0027】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の空気入りタイヤにおいて、前記トレッド補強層は、ゴム層であることを特徴としている。
【0028】
次に、請求項5に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0029】
請求項5に記載の空気入りタイヤでは、トレッドゴム層は、接地した際の横方向の膨出量が、トレッドゴム層を構成するゴムよりも引張弾性率の高い薄肉のゴム層により抑制される。
【0030】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の空気入りタイヤにおいて、前記トレッド補強層は、トレッドゴム層を構成するゴムよりも引張弾性率の高い繊維を含むことを特徴としている。
【0031】
次に、請求項6に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0032】
請求項6に記載の空気入りタイヤでは、トレッドゴム層の厚さ方向中間部分に、トレッドゴム層を構成するゴムよりも引張弾性率の高い繊維を含む伸び難いトレッド補強層を設けたので、接地した際のトレッドゴム層の横方向の膨出量を繊維が抑制し、トレッドゴム層の撓み(圧縮変形)が小さくなる。
【0033】
また、本発明では、繊維の方向によってトレッドゴム層の伸び難くする方向をコントロールすることができるので、トレッドゴム層の低発熱化に効果のある方向に繊維の方向を設定すれば良い。
【0034】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の空気入りタイヤにおいて、前記繊維は、短繊維であることを特徴としている。
【0035】
次に、請求項7に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0036】
請求項7に記載の空気入りタイヤでは、例えば、トレッドゴム層を構成するゴムと同一種類のゴムに短繊維を混入してトレッド補強層を構成することができ、使用ゴムの共通化を図ることができる。なお、トレッドゴム層を構成するゴムとは異なるゴムに短繊維を混入してトレッド補強層を構成しても勿論良い。
【0037】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の空気入りタイヤにおいて、前記短繊維は、前記トレッド補強層の面方向に対してほぼ平行に配向されていることを特徴としている。
【0038】
次に、請求項8に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0039】
トレッド補強層が短繊維を含む場合、短繊維の向きがトレッド補強層の厚さ方向に平行である場合よりも、トレッド補強層の表面に平行である場合の方が伸び難い。
【0040】
したがって、短繊維をトレッド補強層の面方向に対してほぼ平行に配向することが好ましい。
【0041】
なお、短繊維を混入した未加硫ゴムを押出機のスリット状の押出口から連続して押し出せば、短繊維をトレッド補強層の面方向に対してほぼ平行に配向させたトレッド補強層を得ることができる。
【0042】
請求項9に記載の発明は、請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載の空気入りタイヤにおいて、前記トレッドゴム層は、互いに物性の異なる複数層のゴム層がタイヤ径方向に積層されて構成されていることを特徴としている。
【0043】
次に、請求項9に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0044】
1種類のゴムでは相反する性能を両立できない場合があるが、請求項9に記載の空気入りタイヤによれば、例えば、接地面側の外層を耐摩耗性能を主目的としたNR、SBR系のキャップゴムとし、カーカス側の内層を耐発熱性を主目的としたNR系のベースゴムとすることができ、耐摩耗性能と耐発熱性を更に向上することができる。
【0049】
請求項10に記載の発明は、請求項1乃至請求項9の何れか1項に記載の空気入りタイヤにおいて、前記トレッド補強層は、隣接する前記トレッドゴム層を構成するゴムとは異なる色または色の濃度であり、トレッドゴム層の踏面から計測する前記トレッド補強層の深さ寸法を、新品時の溝深さ寸法の30%に設定したことを特徴としている。
【0050】
次に、請求項10に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0051】
トレッド補強層をタイヤ半径方向外側に隣接するトレッドゴム層を構成するゴムとは異なる色または色の濃度とすると、使用途中で踏面の色または色の濃度が変化することにより、トレッド補強層が踏面に露出したことが、目視により容易に判断できる。
【0052】
通常、タイヤに用いるゴムの色は黒であるので、トレッド補強層の色が黒の場合、色差があるもの、またはそれ以外の色が好ましい。
【0053】
また、建設車両用の空気入りタイヤの場合、一般的な使用条件下で、フロントからリアへのローテーション時期は、トレッドゴム層が30%摩耗(溝が消滅した時点が100%)した時期である。
【0054】
したがって、新品時の溝深さ寸法の30%に設定すれば、色または色の濃度の異なるトレッド補強層が踏面に露出した時点で、30%摩耗時であることが目視により容易に判断できる。
【0055】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。
【0056】
図1に示される如く、本実施形態の空気入りタイヤ10は、一対のビードコア12と、これらのビードコア12をトロイド状に跨がりラジアル方向に配列されたスチールコードから成るカーカス14とを有している。
【0057】
カーカス14は、一方のビードコア12から他方のビードコア12まで延びることにより、ビードコア12の軸方向内側に位置する本体部14Aと、ビードコア12の周りをタイヤ幅方向外側に折返される折り返し部14Bとから構成されている。
【0058】
カーカス14の径方向外側には、複数層のベルトプライからなるベルト22が配置されている。これらのベルトプライ内には、周方向に対して傾斜した多数本のスチールコードが埋設されると共に、これらのスチールコードは隣接するベルトプライにおいて互いに交差している。
【0059】
また、ベルト22の径方向外側には、ラグ溝26の形成されたトレッドゴム層28が、さらに、カーカス14の軸方向両外側にはサイドゴム層30が設けられている。
(トレッドゴム層)
本実施形態のトレッドゴム層28は、タイヤ半径方向外側に配置されるキャップゴム層28Aと、その半径方向内側に配置されるベースゴム層28Bとの2層構造である。
【0060】
キャップゴム層28Aを構成するキャップゴム部材には耐摩耗性にすぐれたNR、SBR系のゴムが用いられ、ベースゴム層28Bを構成するベースゴム部材には耐発熱、耐亀裂成長性に優れたNR系のゴムが用いられている。
【0061】
キャップゴム層28Aには、タイヤ幅方向及びタイヤ周方向全体に渡って一定厚さのシート状のトレッド補強ゴム層32が埋設されている。
【0062】
本実施形態のトレッド補強ゴム層32は、ゴムのみから構成されている。トレッド補強ゴム層32を構成するゴムの50%伸張モジュラスは、トレッドゴム層28の中で最も高い50%モジュラス値を有するゴムの2〜4倍のモジュラス値であることが好ましい。
【0063】
ゴムの50%伸張モジュラス値を高くする方法としては、ゴム種を変える方法、種類の異なるゴムを混合する方法、ゴム中の充填材の量を増量する方法等の、ゴムの分野で周知の方法を用いれば良い。
【0064】
トレッド補強ゴム層32は、トレッドゴム層28の厚さの2〜5%の範囲内であることが好ましい。
【0065】
トレッドゴム層28の踏面から計測するトレッド補強ゴム層32の深さ寸法dは、新品時のラグ溝26の溝深さ寸法Dの10〜30%の範囲内であることが好ましい。
【0066】
本実施形態の空気入りタイヤ10では、キャップゴム層28Aの50%伸張モジュラスが1.1MPa、ベースゴム層28Bの50%伸張モジュラスが1.0MPa、トレッド補強ゴム層32の50%伸張モジュラスが2.2MPaであり、トレッド補強ゴム層32の50%伸張モジュラスはキャップゴム層28Aの50%伸張モジュラスの2倍である。
【0067】
また、トレッド補強ゴム層32の厚さtは3mm、トレッドゴム層28の厚さTは102mmであり、トレッド補強ゴム層32の厚さtはトレッドゴム層28の厚さTの2.9%である。
【0068】
また、トレッド補強ゴム層32の深さ寸法dは18mm、新品時のラグ溝26の溝深さ寸法Dは88mmであり、深さ寸法dは溝深さ寸法Dの20%に設定されている。
(作用)
次に、本実施形態の空気入りタイヤ10の作用を説明する。
【0069】
走行により空気入りタイヤ10が回転すると、トレッドゴム層28は、接地するとタイヤ径方向に圧縮変形し、タイヤ径方向中間部分が踏面に平行な方向に膨出変形する。
【0070】
トレッドゴム層28は上記変形を繰り返して発熱する。
【0071】
しかしながら、50%伸張モジュラスが高く伸び難いトレッド補強ゴム層32が上記膨出変形を抑制するので、圧縮変形量も小さくなり、横方向の膨出変形量及び縦方向の圧縮変形量が小さく抑えられる。また、本実施形態の空気入りタイヤ10によれば、キャップゴム層28Aを構成するゴムに耐摩耗性能を主目的としたNR、SBR系のゴムとし、ベースゴム層28Bを耐発熱性を主目的としたNR系のゴムとしたので、耐摩耗性能と耐発熱性とを高い次元で両立することができる。
【0072】
なお、トレッド補強ゴム層32の厚さtがトレッドゴム層28の厚さTの2%未満になると、トレッドゴム層28の横方向の膨出変形を抑える作用が低下する。
【0073】
一方、トレッド補強ゴム層32の厚さtがトレッドゴム層28の厚さTの5%を越えると、トレッド補強ゴム層32自体の耐摩耗性が全体の摩耗に与える影響が大きくなり無視できなくなり、また、トレッド補強ゴム層32の発熱特性が全体の発熱に与える影響が大きくなり無視できなくなる。
【0074】
トレッド補強ゴム層32を構成するゴムの50%伸張モジュラスが、キャップゴム層28Aを構成するゴムの50%伸張モジュラスの2倍未満になると、トレッドゴム層28の横方向の膨出変形を抑える作用が低下する。
【0075】
一方、トレッド補強ゴム層32を構成するゴムの50%伸張モジュラスが、キャップゴム層28Aを構成するゴムの50%伸張モジュラスの5倍を越えると、異種ゴム層間での剥離が懸念される。
【0076】
また、トレッド補強ゴム層32の深さ寸法dを、新品時の溝深さ寸法Dの20%に設定したので、新品〜摩耗初期の発熱の問題が生じやすい期間において、トレッド補強ゴム層32による発熱抑制効果を最大限に発揮することができる。
(その他の実施形態)
上記実施形態では、トレッド補強ゴム層32がトレッドゴム層28のタイヤ周方向及びタイヤ幅方向の全体に渡って設けられていたが、本発明はこれに限らず、発熱の大きい部分に選択的に設けても良い。
【0077】
例えば、トレッドセンター付近の発熱を抑えたい場合には、図2に示すように、トレッドセンター付近にのみトレッド補強ゴム層32を設ければ良く、ショルダー付近の発熱を抑えたい場合には、図3に示すように、ショルダー付近にのみトレッド補強ゴム層32を設ければ良く、ショルダー付近とトレッドセンター付近の発熱を抑えたい場合には、図4に示すように、ショルダー付近とトレッドセンター付近にのみトレッド補強ゴム層32を設ければ良い。
【0078】
また、上記実施形態では、トレッドゴム層28が1層であったが、本発明はこれに限らず、トレッドゴム層28を2層以上設けても良い。
【0079】
例えば、図5に示すように、タイヤ周方向及びタイヤ幅方向の全体に渡って2層設けても良く、図6に示すようにトレッドセンター付近にのみトレッド補強ゴム層32を2層設けても良い。
【0080】
トレッド補強ゴム層32を複数層とすることで、トレッドゴム層28の変形量をさらに抑制することができる。
【0081】
また、上記実施形態では、トレッドゴム層28が2層構造(所謂キャップ・ベース構造)であったが、単一のゴム部材からなる1層構造であっても良い。
【0082】
トレッドゴム層28が単一のゴム部材からなる1層構造の例としては、例えば、図6〜図12に示す構造がある。
【0083】
また、車両に装着される空気入りタイヤは、一般的に知られているようにローテーションを行う。
【0084】
建設車両では、例えば、30%摩耗時に最初のローテーションを行う場合が多い。
【0085】
本実施形態の空気入りタイヤ10において、トレッド補強ゴム層32の深さ位置を30%摩耗時の踏面位置と同じに設定し(トレッド補強ゴム層32の深さ寸法dを、新品時のラグ溝26の溝深さ寸法Dの30%に設定する。)、トレッド補強ゴム層32を構成するゴムを、トレッドゴム層28を構成するゴムとは異なる色または色の濃度に設定すれば、30%摩耗時にトレッド表面の色または色の濃度が変化するので、ローテーション時期を目視で判断することができる。
【0086】
通常、タイヤに用いるゴムの色は黒であるので、トレッド補強ゴム層32の色は、白、赤、黄色、緑、青等の黒以外の色であれば何色でも良く、また、黒色でも隣接するゴムと色差があれば良い。
【0087】
ゴムの色または色の濃度を変える方法としては、例えば、ゴムを混練りする際に顔料を投入する方法等、ゴムの分野で周知の方法を用いれば良い。
【0088】
また、上記実施形態では、キャップゴム層28Aに、ゴムのみからなるトレッド補強ゴム層32を埋設したが、トレッド補強ゴム層32に短繊維を混入しても良い。短繊維の長さは10〜1000μmが好ましく、短繊維の平均径は1μm以下が好ましく、0.05〜0.8μmがより好ましい。
【0089】
短繊維は、キャップゴム層28Aを構成するゴムよりも引張弾性率が高く、また、トレッド補強ゴム層32の面方向に対してほぼ平行に配向することが好ましい。
【0090】
なお、この例では、本発明では、繊維の方向によってトレッドゴム層28の伸び難くする方向をコントロールすることができるので、トレッドゴム層28の低発熱化に効果のある方向に繊維の方向を設定すると良い。
【0091】
さらに、キャップゴム層28Aを構成するゴムと同一種類のゴムに短繊維を混入してトレッド補強ゴム層32を構成することもでき、使用ゴムの共通化を図ることができる。
【0092】
このトレッド補強ゴム層32としては、ゴムが主体(全体に占めるゴムの割合(体積で)が半分以上。)である。
【0093】
また、上記実施形態では、キャップゴム層28Aにトレッド補強ゴム層32を埋設したが、トレッド補強ゴム層32に代えて、図13に示すように繊維層34を踏面に対して略平行に埋設しても良い。
【0094】
繊維層34は、例えば、長繊維(短繊維よりも長い繊維)を織った織物や、繊維を織っていない不織布等の、繊維が主体となる層(全体に占める繊維の割合(体積で)が半分以上。)のことである。
【0095】
ここで、繊維層34の物性(50%伸張モジュラス等)は、トレッド補強ゴム層32の物性と同様に設定することが好ましい。
【0096】
なお、繊維層34を構成する繊維としては、例えば、天然繊維(木綿、絹、ウール等)、合成繊維(ナイロン、ポリエステル、レーヨン、アラミド等)、無機繊維(スチール、カーボン、ガラス)等を上げることができる。
【0097】
なお、繊維層34の厚さは、トレッド補強ゴム層32の場合と異なる場合がある。
【0098】
また、繊維層34が踏面に露出したことを分かり易くするために、繊維の色は、トレッド補強ゴム層32と同様に、トレッドゴム層28を構成するゴムとは異なる色が好ましい。
【0099】
また、繊維層34は、繊維の方向によってトレッドゴム層28の伸び難くする方向をコントロールすることができるので、トレッドゴム層28の低発熱化に効果のある方向に繊維の方向を設定すれば良い。
(試験例)
本発明の効果を確かめるために、従来例のタイヤと、本発明の適用された実施例のタイヤとを用意し、それぞれJATMAの正規リムにリム組みし、JATMAの正規内圧を充填した後、試験車に装着し、60tを負荷して一般建設用路を24時間同一条件で走行し、走行後、左前輪タイヤにおいてタイヤ周上2箇所のトレッドセンター部(タイヤ赤道面)のベルト最外層上の温度を測定した。
【0100】
実施例のタイヤ:上記実施形態で説明した構造のタイヤである。
【0101】
従来例のタイヤ:実施例のタイヤからトレッド補強層を除いて同一厚さのキャップゴムを加えた構造(トレッドゲージが同一)のタイヤである。
【0102】
なお、タイヤサイズは、何れも40.00R57である。
【0103】
測定結果は、以下の表1に記載した通りである。
【0104】
【表1】
試験の結果から、実施例のタイヤは、従来例のタイヤに比較してトレッドの内部温度が低く、本発明の作用が発揮されていることが分かる。
【0105】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1に記載の空気入りタイヤは上記の構成としたので、発熱抑制と摩耗性能の両立を図ることができる、という優れた効果を有する。
【0106】
請求項2に記載の空気入りタイヤは上記の構成としたので、トレッドゴム層の横方向の膨出を抑制する効果を高めることが出来る、という優れた効果を有する。
【0107】
請求項3に記載の空気入りタイヤは上記の構成としたので、異種ゴム層間での剥離を防止しつつ、トレッドゴム層の横方向の膨出変形を確実に抑えることができる、という優れた効果を有する。
【0108】
請求項4に記載の空気入りタイヤは上記の構成としたので、耐摩耗性及び発熱の問題を抑えつつ、トレッドゴム層の横方向の膨出変形を確実に抑えることができる、という優れた効果を有する。
【0109】
請求項6に記載の空気入りタイヤは上記の構成としたので、接地した際のトレッドゴム層の横方向の膨出量を繊維が抑制し、トレッドゴム層の撓み(圧縮変形)を更に小さくできる、という優れた効果を有する。
【0110】
請求項7に記載の空気入りタイヤは上記の構成としたので、トレッド補強層を伸び難くでき、また、使用ゴムの共通化を図ることもできる、という優れた効果を有する。
【0111】
請求項8に記載の空気入りタイヤは上記の構成としたので、短繊維の向きがトレッド補強層の厚さ方向に平行である場合よりも、トレッド補強層を伸び難くできる、という優れた効果を有する。
【0112】
請求項9に記載の空気入りタイヤは上記の構成としたので、耐摩耗性能と耐発熱性を更に向上することができる、という優れた効果を有する。
【0113】
請求項10に記載の空気入りタイヤは上記の構成としたので、動きが大きく、放熱し難いトレッドゴム層の厚い新品〜摩耗初期の段階において、最大限の効果を発揮することができる、という優れた効果を有する。
【0114】
請求項11に記載の空気入りタイヤは上記の構成としたので、色または色の濃度の異なるトレッド補強層が踏面に露出した時点が、ローテーション時期であることが目視により容易に判断できる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの軸線に沿った断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド付近の断面図である。
【図3】本発明の更に他の実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド付近の断面図である。
【図4】本発明の更に他の実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド付近の断面図である。
【図5】本発明の更に他の実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド付近の断面図である。
【図6】本発明の更に他の実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド付近の断面図である。
【図7】本発明の更に他の実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド付近の断面図である。
【図8】本発明の更に他の実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド付近の断面図である。
【図9】本発明の更に他の実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド付近の断面図である。
【図10】本発明の更に他の実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド付近の断面図である。
【図11】本発明の更に他の実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド付近の断面図である。
【図12】本発明の更に他の実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド付近の断面図である。
【図13】本発明の更に他の実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド付近の断面図である。
【図14】(A)は従来品のトレッドの変形状態を示す断面であり、(B)は本発明品のトレッドの変形状態を示す断面図である。
【符号の説明】
10 空気入りタイヤ
26 ラグ溝(溝)
28 トレッドゴム層
32 トレッド補強層
34 繊維層
Claims (10)
- 踏面に溝の形成されたトレッドゴム層を備え、トレッドゴム層の厚さ方向中間部分の少なくとも一部分には、トレッドゴム層を構成するゴムよりも引張弾性率の高い部材からなる薄肉のトレッド補強層が設けられており、
トレッドゴム層の踏面から計測する前記トレッド補強層までの深さ寸法は、新品時の溝深さ寸法の10〜30%の範囲内であることを特徴とする空気入りタイヤ。 - 前記トレッド補強層は、踏面に対して略平行に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 前記トレッド補強層の50%伸張モジュラスは、トレッドゴム層を構成するゴムの50%伸張モジュラスの2〜4倍の範囲内であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の空気入りタイヤ。
- 前記トレッド補強層の厚さは、前記トレッドゴム層の厚さの2〜5%の範囲内であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
- 前記トレッド補強層は、ゴム層であることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
- 前記トレッド補強層は、トレッドゴム層を構成するゴムよりも引張弾性率の高い繊維を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
- 前記繊維は、短繊維であることを特徴とする請求項6に記載の空気入りタイヤ。
- 前記短繊維は、前記トレッド補強層の面方向に対してほぼ平行に配向されていることを特徴とする請求項7に記載の空気入りタイヤ。
- 前記トレッドゴム層は、互いに物性の異なる複数層のゴム層がタイヤ径方向に積層されて構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
- 前記トレッド補強層は、隣接する前記トレッドゴム層を構成するゴムとは異なる色または色の濃度であり、トレッドゴム層の踏面から計測する前記トレッド補強層の深さ寸法を、新品時の溝深さ寸法の30%に設定したことを特徴とする請求項1乃至請求項9の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
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