JP4712421B2 - ビニル変性エポキシエステル樹脂の水分散体の製造方法、及び当該水分散体を用いた水性塗料組成物 - Google Patents

ビニル変性エポキシエステル樹脂の水分散体の製造方法、及び当該水分散体を用いた水性塗料組成物 Download PDF

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本発明は、ビニル変性エポキシエステル樹脂の水分散体の製造方法、及び当該方法で得られた水分散体を用いた水性塗料組成物に関して、ダイマー酸の使用により、密着性と、防食性や耐水性等とを良好にバランスできるものを提供する。
防錆目的の下塗り塗料としては従来、油性塗料が多く使用されている。
しかしながら、油性塗料中に含まれる有機溶剤は、労働衛生や作業性の面で好ましくないばかりか、環境保全の面からも削減が必要である。
環境保全、労働衛生などに適するとともに、防食性、耐水性などに優れた水性塗料用樹脂として、ビスフェノール型のエポキシ骨格を有するエポキシエステル樹脂が汎用されており、従来技術には次のものがある。
(1)特許文献1
常温乾燥、強制乾燥、焼き付けなどの広範囲な乾燥条件並びに各種の塗装条件で優れた防錆力を発揮させる目的で、(a)エポキシ樹脂と、(b)脂肪酸と、(c)これらと反応可能な他の化合物とを特定の割合で反応させた酸価15〜35のビニル変性エポキシエステル系樹脂の水性分散体をバインダー成分として含む水性塗料組成物が開示されている。
上記(c)成分としては、(メタ)アクリレート類、スチレン類などのエチレン性不飽和単量体類、安息香酸などの一塩基酸、フタル酸、マレイン酸、ダイマー酸などの多塩基酸、又はこれらの酸無水物、ポリオール類などが挙げられる(同文献1の段落29〜34参照)。このうちエチレン性不飽和単量体類は、エポキシエステル樹脂骨格の脂肪酸(b)に由来するエチレン性不飽和二重結合にグラフト化させるものである(同文献1の段落26参照)。
(2)特許文献2
低温硬化性と耐食性に優れた塗膜を与えることなどを目的として、エポキシ樹脂、不飽和脂肪酸、必要に応じて1価〜3価の有機酸および1価〜4価のアルコールを付加ないし縮合して得られるエポキシ樹脂エステル中間体に、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの特定の3級アミノ基含有(メタ)アクリレートを特定量含んだエチレン性不飽和単量体をグラフト重合させた生成物を中和し、水中に分散させた低温乾燥塗料用樹脂組成物が開示されている(同文献2の請求項1、段落1参照)。
上記1価〜3価の有機酸としては、安息香酸、フタル酸、マレイン酸、ダイマー酸などが例示されている(同文献2の段落7)。
また、グラフト重合に際しては、スチレン、(メタ)アクリル酸エステルなどのその他のモノマーを使用できることが開示されている(同段落11)。
(3)特許文献3
表面硬度の改善、柔軟性、耐久性などの向上を目的として、(1)エポキシ(メタ)アクリレートと、(2)重合性不飽和単量体とを含む硬化性樹脂組成物において、上記エポキシ(メタ)アクリレート(1)は、多官能エポキシ化合物(a)と、不飽和一塩基酸(b)と、C12以上の非芳香族系の多塩基酸(c)とを反応させてなり、上記重合性不飽和単量体(2)は、ボルニル系(メタ)アクリレートを必須成分としてなる硬化性塗料が開示されている(同文献3の請求項1参照)。
当該塗料は成分(1)と成分(2)を配合して、加熱や活性エネルギー線の照射で硬化させる(同文献3の段落32、37〜38参照)。尚、上記多塩基酸(c)には、ドデカン二酸、ヘキサドデカン二酸、ダイマー酸などが例示されている(同段落13参照)。
(4)特許文献4
耐食性、塗膜形成直後の硬度などを向上することを目的として、エポキシ樹脂(a)と脂肪酸(b)を必須成分として反応させた縮合物(c)の存在下で、これらと反応し得る酸基含有単量体を含むビニル化合物の混合物(d)をグラフト重合させ、グラフト重合体中の酸基を中和し、水中に分散させたビニル変性エポキシエステル系樹脂の水分散体であって、エポキシ樹脂のエポキシ基と脂肪酸のカルボキシル基の当量比がエポキシ基過剰であり、かつ、混合物(d)の使用量が、成分(c)と(d)の総量に対して5重量部以上であるビニル変性エポキシエステル樹脂の水分散体が開示されている(同文献4の請求項1、段落6〜7参照)。
脂肪酸を反応させた残余のエポキシ基は、酸基含有化合物で反応させることができ、酸基含有化合物としては、安息香酸などの1塩基酸化合物、フタル酸、マレイン酸、ダイマー酸などの2塩基酸化合物が挙げられるが、1塩基酸化合物(e)が好ましいことが開示されている(同文献4の段落9、32参照)。また、上記(d)の酸基含有単量体は、不飽和モノ又はジカルボン酸、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン類などである(同段落33〜38参照)。
また、エポキシエステル樹脂に特定のビニル化合物をグラフトする点などに特徴があるエポキシ樹脂系の水性塗料の従来技術には、特開平5−214290、特開平6−136319、特開平8−81512、特開平9−296023、特開平10−36762、特開平11−269249、特開2002−188046、特開2002−309162などがある。
特開平4−292666号公報 特開平7−292314号公報 特開2000−63440号公報 特開2003−119245号公報
エポキシ樹脂においては、一般に、エポキシ骨格の強靱さに起因して樹脂が硬くてもろくなり、金属との密着性、上塗り塗料との層間密着性に劣る傾向がある。エポキシ樹脂に脂肪酸を反応させると柔軟性に優れたエポキシエステル樹脂になり、密着性は向上するが、防食性はそれほど高くなく、乾燥性や硬度も低下する。
また、エポキシ樹脂と脂肪酸に加えて、さらに芳香族ジカルボン酸(例えば、無水フタル酸)等の二塩基酸を反応させると、高分子量化して防食性、耐水性、硬度は向上するが、密着性に劣る。
上記特許文献1〜4についても、特に、柔軟性に伴う密着性と、防食性や耐水性などをバランスさせることは容易でなく、未だ不充分な点が多い。
本発明は、ビニル変性エポキシエステル樹脂の水分散体からなる塗料用樹脂において、密着性と、防食性や耐水性等とをバランス良く向上することを技術的課題とする。
本発明者らは、エポキシ樹脂に脂肪酸と二塩基酸を反応させ、さらにビニルモノマーをグラフトさせた重合物を中和・分散してビニル変性エポキシエステル樹脂の水分散体を得る際に、エポキシ樹脂に対してダイマー酸を特定以上の重量比率で付加・縮合させると、樹脂を高分子量化しながら、当該樹脂に密着性と防食性をバランス良く付与できること、また、樹脂中和物の液に水を滴下して樹脂分散体を得る上記特許文献1や4のような方式ではなく、激しく撹拌した多めの水に樹脂を滴下すると、保存安定性の良い分散体が得られることを見い出して、本発明を完成した。
即ち、本発明1は、(a)ビスフェノール型のエポキシ樹脂と、(b)脂肪酸及び二塩基酸とを反応させてエポキシエステル樹脂を得る付加・縮合工程と、酸基含有モノマーを含むビニルモノマーでエポキシエステル樹脂にグラフトさせる工程と、グラフト樹脂中の酸基を中和して水中に分散させる工程とからなるビニル変性エポキシエステル樹脂の水分散体の製造方法において、
上記付加・縮合工程では、(b)の二塩基酸としてダイマー酸をエポキシ樹脂に対して10重量%以上の割合で含有して、ダイマー酸変性エポキシエステル樹脂を得るとともに、 上記中和及び分散工程では、撹拌した水にグラフト樹脂の中和物を加えることを特徴とするビニル変性エポキシエステル樹脂の水分散体の製造方法である。
本発明2は、上記本発明1において、中和及び分散工程で、撹拌した水に樹脂中和物を滴下する代わりに、撹拌した中和剤含有水に中和前の樹脂、或は一部中和した樹脂を加えることを特徴とするビニル変性エポキシエステル樹脂の水分散体の製造方法である。
本発明3は、上記本発明1又は2において、樹脂中和物、一部中和した樹脂又は中和前の樹脂100重量部を、水又は中和剤含有水100〜300重量部に対して加えることを特徴とするビニル変性エポキシエステル樹脂の水分散体の製造方法である。
本発明4は、上記本発明1〜3のいずれかにおいて、水分散体の粒子径が300nm以下であることを特徴とするビニル変性エポキシエステル樹脂の水分散体の製造方法である。
本発明5は、上記本発明本発明1〜4のいずれかにおいて、乳化剤を使用し、或は使用しないで、ビニル変性エポキシエステル樹脂の水分散体を得ることを特徴とするビニル変性エポキシエステル樹脂の水分散体の製造方法である。
本発明6は、上記本発明本発明1〜5のいずれかにおいて、付加・縮合工程において、ビスフェノール型のエポキシ樹脂100重量部に対して、脂肪酸を30〜90重量部、二塩基酸を20〜80重量部、一塩基酸を0〜50重量部の割合で反応させることを特徴とするビニル変性エポキシエステル樹脂の水分散体の製造方法である。
本発明7は、上記本発明1〜6のいずれかにおいて、グラフト化工程において、ダイマー酸変性エポキシエステル樹脂100重量部に対して、酸基含有モノマーを含むビニルモノマー20〜100重量部をグラフト反応させることを特徴とするビニル変性エポキシエステル樹脂の水分散体の製造方法である。
上記本発明1〜7のいずれかの製造方法で得られたビニル変性エポキシエステル樹脂の水分散体を含有する水性塗料組成物である。
従来では、(無水)フタル酸などの芳香族ジカルボン酸を二塩基酸に使用するため、エポキシ樹脂の硬度が上がる反面、密着性を損なう恐れがある。これに対して、ダイマー酸は長鎖であって芳香環がなく、本発明では、このダイマー酸を特定重量比率で含む二塩基酸をエポキシ樹脂に付加・縮合させるため、エポキシエステル樹脂に柔軟性を付与して密着性を確保しながら、当該樹脂を有効に高分子量化できる。そのうえ、前述したように、密着性の見地から脂肪酸をエポキシ樹脂に反応させると、防食性が低下する恐れがあるが、本発明では、ダイマー酸が高分子量化に寄与するため、エポキシ樹脂に作用させる脂肪酸を従来より減量でき、この減量分だけ防食性を良好に確保できる。即ち、本発明においては、高分子量で柔軟性を具備したビニル変性エポキシエステル樹脂を容易に設計できるため、密着性に優れながら、防食性、耐水性、硬度を兼備した塗料用樹脂を効率良く製造できる。
一方、上記特許文献1、2、4では、中和したビニル変性エポキシエステル樹脂の液に水を加えるため(同文献1の段落37、同文献2の段落12、又は同文献4の段落74参照)、一部ゲル化する恐れがあり、安定な微細粒子を得ることは容易でないが(後述の試験例参照)、本発明では、逆に、撹拌状態にある大量の水又は中和剤含有水に樹脂中和物、一部中和した樹脂又は中和前の樹脂を加えるため、保存安定性の良い水分散体を効率良く調製できる。
本発明は、第一に、(a)ビスフェノール型のエポキシ樹脂と、(b)脂肪酸及び二塩基酸とを反応させてエポキシエステル樹脂を得る付加・縮合工程と、酸基含有モノマーを含むビニルモノマーでエポキシエステル樹脂にグラフトさせる工程と、グラフト樹脂中の酸基を中和して水中に分散させる工程とからなるビニル変性エポキシエステル樹脂の水分散体の製造方法において、ダイマー酸を特定以上の重量比率で含有する二塩基酸をエポキシ樹脂に付加・縮合させるとともに、撹拌した多めの水に樹脂中和物を加える上記水分散体の製造方法であり、第二に、当該製造方法で得られた水分散体を含有する水性塗料組成物である。
上記中和及び分散工程では、撹拌した水に樹脂中和物を加える代わりに、撹拌した中和剤含有水に中和前の樹脂、或は一部中和した樹脂を加えることができる。また、本発明の分散体は、エマルションと溶液を包含する概念である。
本発明の付加・縮合工程で使用するビスフェノール型のエポキシ樹脂は、例えば、エピクロルヒドリンと、ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールS、或はこれらのアルキレンオキシド付加物とを反応させて得られ、グリシジルエーテル型のエポキシ樹脂の外に、水素化ビスフェノール型のエポキシ樹脂などを包含する概念である。これらのエポキシ樹脂は単用又は併用できる。
上記エポキシ樹脂には、酸化重合による塗膜形成の促進、柔軟性付与、或は高分子量化の見地から、脂肪酸及び二塩基酸、或はさらに、必要に応じて一塩基酸を反応させる。
上記脂肪酸としては、大豆油脂肪酸、トール油脂肪酸、桐油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、米糠油脂肪酸、(脱水)ヒマシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、(水添)ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸などの植物由来、或は牛脂などの動物由来の乾性油、半乾性油、又は不乾性油脂肪酸が挙げられる。これらの脂肪酸を精製したオレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの不飽和脂肪酸なども使用できる。
上記二塩基酸としては、(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、マレイン酸、フマル酸、ダイマー酸、アジピン酸、セバシン酸、炭素数21のジカルボン酸などが挙げられる。当該炭素数21のジカルボン酸は、トール油脂肪酸などの(半)乾性油脂肪酸にアクリル酸を付加させたものであり(MeadWestvaco社よりDIACID 1550などの商品名で市販されている)、本発明においてダイマー酸と併用することができる。
一塩基酸としては、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、イソオクタン酸、イソデカン酸、シクロヘキサン酸などが挙げられる。
上記脂肪酸、二塩基酸、一塩基酸は単用又は併用でき、その添加割合は、ビスフェノール型のエポキシ樹脂100重量部に対して、脂肪酸を30〜90重量部、二塩基酸を20〜80重量部、一塩基酸を0〜50重量部の割合で反応させることが好ましい(本発明6参照)。より好ましい割合は、エポキシ樹脂100重量部に対して、脂肪酸40〜60重量部、二塩基酸50〜70重量部、一塩基酸0〜30重量部である。
本発明は、上記二塩基酸としてダイマー酸を特定重量比率(対エポキシ樹脂の比率)で含有し、付加・縮合工程でダイマー酸変性エポキシエステル樹脂を製造する点に第一の特徴がある。
即ち、本発明では、エポキシ樹脂に付加・縮合させる必須成分は脂肪酸及び二塩基酸であり、この二塩基酸にはダイマー酸を特定割合で含有する必要がある。当該ダイマー酸の含有割合は、エポキシ樹脂に対して10重量%以上の比率であり、好ましくは15〜70重量%、より好ましくは25〜50重量%である。10重量%より少ないと、エポキシエステル樹脂を高分子量化し、且つ、最終的な塗料用樹脂の柔軟性と防食性の両立を図ることが難しい。
上記ダイマー酸は、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、米糠油脂肪酸を初めとして、前記植物由来又は動物由来の不飽和脂肪酸又はそのエステル(具体的には、C8〜C24、主としてC18の不飽和脂肪酸など)を重合し、蒸留精製した脂肪酸である。ヨウ素価120〜145程度の脂肪酸を重合反応するのが好ましい。
得られるダイマー酸の一般的組成は、C18の一塩基酸が0〜10重量%、C36の二塩基酸が60〜99重量%、C54の一塩基酸が30重量%以下であり、残存する不飽和二重結合に水素添加したものを使用しても良い。
本発明では、二塩基酸として長鎖のダイマー酸の含有比率を上げ、従来の芳香族ジカルボン酸類(フタル酸など)の比率を下げるため、エポキシ樹脂に柔軟性を付与しながら、樹脂を高分子量化できる。得られるダイマー酸変性エポキシ樹脂の重量平均分子量は5,000〜60,000が適当であり、10,000〜50,000が好ましい。
上記ダイマー酸変性エポキシエステル樹脂には、高分子量化、水酸基価及び酸価の調整による水分散性、撥水性、或は基材密着性付与などの見地から、酸基含有モノマーを含むビニルモノマーをグラフト反応させる。
上記ビニルモノマーとしては、酸基含有モノマー及び疎水性モノマーを単用又は併用でき、このうち、酸基含有モノマーの使用は必須である。また、必要に応じてノニオン性モノマー、カチオン性モノマーを使用できる。
ちなみに、ビニルモノマーに3級アミノ基含有(メタ)アクリルアミド、又は3級アミノ基含有(メタ)アクリレートなどを使用すると、酸基含有モノマーの使用量を低減することができる。また、疎水性モノマーの割合を増すと、水分散体の粒子の微細化に寄与する。 上記酸基含有モノマーは、不飽和カルボン酸類、不飽和スルホン酸類、或は不飽和ホスホン酸類などであり、不飽和カルボン酸類が好ましい。
不飽和カルボン酸類としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)シトラコン酸、又はこれらの塩などを単用又は併用でき、アクリル酸、メタクリル酸、(無水)マレイン酸、イタコン酸などが好ましい。
不飽和スルホン酸類としては、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、イソプレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリル酸スルホプロピル、或はこれらの塩などを初め、その他の公知のスルホン酸基含有モノマーが挙げられる。
不飽和ホスホン酸類は、ホスホン酸基を少なくとも1個有する公知の不飽和モノマーをいう。
上記疎水性モノマーはスチレン類、(メタ)アクリル酸系エステル類である。
スチレン類としては、スチレンを初め、α−メチルスチレンなどのビニル基に置換基を有するスチレン類、或は、ビニルトルエン、p−クロルスチレンなどのベンゼン環に置換基を有するスチレン類などが挙げられ、スチレンが好ましい。
(メタ)アクリル酸系エステル類としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジルなどのメタクリル酸エステル類、アクリル酸エチル、アクリル酸プロビル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸エステル類などが挙げられ、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどが好ましい。
上記ノニオン性モノマーとしては、アクリルアミド、メタアクリルアミド、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ポリエチレングリコール、メタクリル酸ポリプロピレングリコールなどの水酸基含有(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリンなどが挙げられ、アクリルアミド、メタクリルアミドが好ましい。
また、上記カチオン性モノマーとしては、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の3級アミノ基含有(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の3級アミノ基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
上記グラフト化工程では、酸基含有モノマーを含むビニルモノマーは単用又は併用でき、当該ビニルモノマーは、ダイマー酸変性エポキシエステル樹脂100重量部に対して20〜100重量部反応させることが好ましく(本発明7参照)、より好ましくは40〜100重量部である。適正範囲より少ないと、高分子量化、基材密着性、水分散性が不足する恐れがあり、適正範囲より多いと耐水性などが不足する恐れがある。
また、ビニルモノマーにおける酸基含有モノマーの重量比率は5〜100重量%であり、好ましくは10〜50重量%である。
ビニルモノマーでグラフトした樹脂(ビニル変性エポキシエステル樹脂)は酸基を中和した後、水中に分散して水分散体とする。
グラフト樹脂を中和処理する中和剤としては、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機の塩基性化合物、メチルアミン、エチルアミン、n−ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミンなどのアミン類が挙げられる。
本発明は、この中和及び分散工程において、撹拌した水にグラフト樹脂の中和物を加えることを第二の特徴とする。
即ち、前述したように、冒述の特許文献1や4では、樹脂中和物の液に水を加えるため、一部ゲル化する恐れがあり、安定な微細粒子を得ることは容易でないが、本発明では、逆に、撹拌状態にある多めの水に樹脂中和物を加えるため、粒子を微細化して保存安定性の良い水分散体を効率良く調製できる。
この分散工程では、50〜60℃程度の温水をラインミキサーやホモジナイザーなどの撹拌機又は分散機を用いて激しく撹拌し、この撹拌した温水中に樹脂中和物を滴下することが好ましい。また、本発明では、グラフト重合体の酸基の少なくとも一部を中和し、水中に分散すれば良く、従って、中和工程では、必要に応じてグラフト重合体の酸基の一部又は全部を中和することになる。
水(温水)の重量は樹脂中和物より多めであることが適当であり、樹脂中和物100重量部を水(温水)100〜300重量部に滴下することが良い(本発明3参照)。さらには、樹脂中和物100重量部に対する水(温水)の使用量は110〜200重量部が好ましく、より好ましくは120〜200重量部である。
このように、本発明では、樹脂中和物を多めの水に加えて水分散体を得るため、樹脂分散体を効率良く微細化できる。樹脂分散体の平均粒子径は300nm以下であり(本発明4参照)、100nm以下が好ましい。
また、この中和及び分散工程では、撹拌した水に樹脂中和物を加える代わりに、撹拌した中和剤含有水(中和剤を含む水)に中和前の樹脂を加えるか、或は、一部中和した樹脂を残部の中和剤を含む水に加えることができる。この場合、中和前の樹脂又は一部中和した樹脂と中和剤含有水との重量比率は、上記樹脂中和物と水との重量比率に準じる。
一方、このビニル変性エポキシエステル樹脂を水中に分散する場合、乳化剤を用いても良いし、乳化剤の不存在下で分散しても良い(本発明5)。一般に、乳化剤を使用すると、保存安定性は増す反面、耐水性が低下する傾向にあるが、本発明では、乳化剤を使用しなくても(即ち、耐水性などの低下の恐れを排除しながら)、保存安定性の良い分散体を得ることができる(後述の試験例参照)。
上記乳化剤には公知のアニオン性、ノニオン性、又は両性界面活性剤などを使用することができる。
上記アニオン性界面活性剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸塩、ロジン酸塩、アルキル硫酸エステル、アルキルスルホコハク酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル(アリール)硫酸エステル塩などが挙げられる。
上記ノニオン性界面活性剤としては、C1〜C20アルカノール、フェノール、ナフトール、ビスフェノール類、C1〜C20アルキルナフトール、ポリオキシエチレン(プロピレン)グリコール、脂肪族アミンなどのエチレンキシド及び/又はプロピレンオキシド付加物などが挙げられる。
上記両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸型、イミダゾリン誘導型などの界面活性剤が挙げられる。
一方、上述の通り、乳化剤を使用すると耐水性が低下する恐れがあるが、このような問題を克服する見地から、前記グラフト工程でビニルモノマー(の一部)に反応性乳化剤を用いて、エポキシ樹脂中に乳化剤成分を組み込むこともできる。
この反応性乳化剤は、親水基と疎水基に加えて、アリル系、アクリル系、アクリルアミド系、ブタジエン系などの付加重合型の重合性官能基を有する乳化剤であり、アニオン性、ノニオン性などの様々な種類のものが知られている。
上記重合性官能基を例示すると、CH2=CHCH2−、−CH=CH−CH=CH−、CH2=CR−COO−、−OOC−CH=CH−COO−、CH2=CR−CONH−、CH2=C(COO−)CH2COO−、R−CHCH−Ar−(Rは水素かメチル基;Arはベンゼン環)などであり、特に、アリル基、プロペニル基、メタクリル基などが好ましい。
反応性乳化剤の具体例には、前記官能基を分子中に少なくとも1つ以上有するポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのスルホコハク酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルのスルホコハク酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルのリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの脂肪族、或は芳香族カルボン酸塩、さらにこれらの構造を基本骨格とした各種誘導体などが挙げられる。
本発明のビニル変性エポキシエステル樹脂の水分散体はそのまま水性の透明塗料として使用でき、また、顔料を添加し、或は、必要に応じて各種添加剤を加えることで水性塗料組成物を調製できる(本発明8参照)。
顔料としては、カーボン・ブラック、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・ブルーなどの有機顔料、酸化チタン、酸化鉄、チタンイエローなどの無機顔料、タルク、クレー、炭酸カルシウムなどの体質顔料を初め、公知の顔料類を任意に使用できる。
添加剤としては、顔料分散剤、沈降防止剤、増粘剤、ドライヤー、消泡剤、紫外線防止剤、レベリング剤などが挙げられる。
また、本発明では、ダイマー酸の使用がエポキシ樹脂の高分子量化に寄与し、その分だけ耐候性の低下を起こし易いビスフェノール骨格を少なくできることから、耐候性を良好に確保できる。このため、本発明の塗料組成物は厳しい使用条件でなければ、上塗り兼用のワンコート用塗料に適する。さらに、本発明の水分散体は公知のエポキシ樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂などの各種水分散体に対して相溶性が良いため、本発明の塗料組成物はこれらの水性塗料との間で良好な混合使用が可能である。
以下、本発明のビニル変性エポキシエステル樹脂の水分散体の実施例、当該水分散体を用いた水性塗料組成物の製造例、上記水分散体の保存安定性と当該水性塗料組成物の塗膜物性との評価試験例を順次説明する。当該実施例、製造例、試験例中の「部」、「%」は基本的に重量基準である。
尚、本発明は、下記の実施例、製造例、試験例に拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
《ビニル変性エポキシエステル樹脂の水分散体の実施例》
下記の実施例1〜6のうち、実施例1、4、6は1種類のエポキシ樹脂を単用した例、実施例2、3、5は実施例1のエポキシ樹脂に加えて、これより高分子量のエポキシ樹脂を併用した例である。実施例3は実施例2を基本としてダイマー酸の含有量を増量した例である。実施例4は乳化剤を使用して分散した例、その他の実施例はすべて乳化剤を使用しない例である。実施例5は二塩基酸としてダイマー酸のみを使用した例である。実施例6は実施例1より重量を抑えた水に樹脂中和物を滴下して分散させた例である。
一方、比較例1〜5のうち、比較例1は樹脂中和物に水を加える従来方法で分散した例である。比較例2は二塩基酸中のダイマー酸の含有割合が本発明の特定範囲より少ない例である。比較例3は二塩基酸にダイマーを使用しない例である。比較例4は二塩基酸にダイマーを使用せず、脂肪酸を増量した例である。比較例5はダイマー酸に替えて(同様に長鎖の)セバシン酸を使用した例である。
図1は、実施例1〜6について、付加・縮合工程から分散工程までに使用するエポキシ樹脂、脂肪酸、二塩基酸、一塩基酸、ビニルモノマー、中和剤などの種類と組成をまとめたものである。同様に、図2は比較例1〜5についてまとめたものである。また、実施例1〜6及び比較例1〜5により得られた各ビニル変性エポキシエステル樹脂の恒数を図3の上半部の欄にまとめた。
(1)実施例1
[ダイマー酸変性エポキシエステルの合成工程(イ)]
攪拌機、不活性ガス導入管、還流管及び温度計を備えたフラスコに、窒素を通気しながらビスフェノール型のエポキシ樹脂(重量平均分子量370、ジャパンエポキシレジン(株)製、エピコート#828)36部、ダイマー酸(ハリマ化成(株)製、ハリダイマー200)6部、無水フタル酸4部、安息香酸2部、アマニ油脂肪酸14部、トール油脂肪酸(ハリマ化成(株)製、ハートールFA−1)14部、テトラメチルアンモニウムクロライド0.04部を仕込み、攪拌しながら170℃まで昇温した。
次いで、170℃を保持して酸価が20以下になるまで反応させた後、220℃まで昇温して、粘度が飽和するまで付加・縮合反応を進めた。その後、ターシャリーブトキシエタノール20部で希釈して、不揮発分80%のダイマー酸変性エポキシエステル樹脂を得た。
[ビニル変性及び中和工程(ロ)]
攪拌機、不活性ガス導入管、温度計及び滴下ロートを備えたフラスコに、窒素を通気しながら、上記工程(イ)で得たダイマー酸変性エポキシエステル樹脂65部を仕込み、130℃に昇温した。
次いで、滴下ロートにアクリル酸4部、メタクリル酸メチル4部、スチレン19部、ジターシャリーブチルペルオキシド0.8部を仕込み、130℃を保ちながら3時間かけてダイマー酸変性エポキシエステル樹脂へ滴下した。その後、130℃で3時間熟成した後、75℃まで冷却し、トリエチルアミン8部を仕込み、30分保持することで樹脂の一部を中和させ、ビニル変性エポキシエステル樹脂を得た。
[水分散工程(ハ)]
攪拌機、温度計を備えたフラスコに蒸留水52部を仕込み、攪拌しながら50℃まで昇温した。
次いで、上記工程(ロ)で得たビニル変性エポキシエステル樹脂48部を、激しく攪拌した温水中に滴下した後、75℃で1時間保持することで、ビニル変性エポキシエステル樹脂の水分散体(不揮発分40%、pH:9.2、粘度:850Pa・S)を得た。
(2)実施例2
上記実施例1のエポキシ樹脂に加えて、これより高分子量のエポキシ樹脂(重量平均分子量900、ジャパンエポキシレジン(株)製、エピコート#1001)を併用しながら、図1の組成に基づいて処理し、それ以外は実施例1と同様に操作して、ビニル変性エポキシエステル樹脂の水分散体(不揮発分40%、pH:9.3、粘度:1800Pa・S)を得た。
(3)実施例3
上記実施例2に比してダイマー酸を増量しながら、図1の組成に基づいて処理し、それ以外は実施例2と同様に操作して、ビニル変性エポキシエステル樹脂の水分散体(不揮発分40%、pH:9.4、粘度:2000Pa・S)を得た。
(4)実施例4
グラフト工程において反応性乳化剤(旭電化工業(株)製、アクアロンKH−10)を使用しながら、図1の組成に基づいて処理し、それ以外は実施例1と同様に操作して、ビニル変性エポキシエステル樹脂の水分散体(不揮発分40%、pH:9.3、粘度:1100Pa・S)を得た。
(5)実施例5
二塩基酸としてダイマー酸のみを使用しながら、図1の組成に基づいて処理し、それ以外は実施例1と同様に操作して、ビニル変性エポキシエステル樹脂の水分散体(不揮発分40%、pH:9.1、粘度:1500Pa・S)を得た。
(6)実施例6
上記実施例1を基本としながら、水の減量比率下で樹脂中和物を水中に分散したものである。
即ち、攪拌機、温度計を備えたフラスコに、蒸留水40部を仕込み、攪拌しながら50℃まで昇温した。
次いで、実施例1の工程(ロ)で得たビニル変性エポキシエステル樹脂48部を、激しく攪拌された温水40部の中に滴下し、75℃で1時間保持することでビニル変性エポキシエステル樹脂を得た。
その後、他の実施例、比較例と同条件で物性評価を行うため、蒸留水12部を加えて希釈し、不揮発分を調整することでビニル変性エポキシエステル樹脂の水分散体(不揮発分40%、pH:9.2、粘度:900Pa・S)を得た。
(7)比較例1
樹脂中和物の中に水を滴下する方法(以下、B法という。樹脂中和物を水に滴下する本発明のA法に対する呼称である)により分散した以外は、図2に示す通り、上記実施例1と同様の組成と処理を行って、ビニル変性エポキシエステル樹脂の水分散体(不揮発分40%、pH:9.2、粘度:1500Pa・S)を得た。
(8)比較例2
二塩基酸中のダイマー酸の含有量を本発明の範囲より低減しながら、図2の組成に基づいて処理し、それ以外は前記実施例1と同様に操作して、ビニル変性エポキシエステル樹脂の水分散体(不揮発分40%、pH:9.3、粘度:1600Pa・S)を得た。
(9)比較例3
ダイマー酸を使用せず、他の二塩基酸の含有量を増量しながら、図2の組成に基づいて処理し、それ以外は前記実施例1と同様に操作して、ビニル変性エポキシエステル樹脂の水分散体(不揮発分40%、pH:9.0、粘度:2000Pa・S)を得た。
(10)比較例4
ダイマー酸を使用せず、脂肪酸の含有量を増量しながら、図2の組成に基づいて処理し、それ以外は前記実施例1と同様に操作して、ビニル変性エポキシエステル樹脂の水分散体(不揮発分40%、pH:9.2、粘度:520Pa・S)を得た。
(11)比較例5
ダイマー酸をセバシン酸に代替しながら、図2の組成に基づいて処理し、それ以外は前記実施例1と同様に操作して、ビニル変性エポキシエステル樹脂の水分散体(不揮発分40%、pH:9.3、粘度:2200Pa・S)を得た。
そこで、上記実施例1〜6及び比較例1〜5で得られた各ビニル変性エポキシエステル樹脂の水分散体について、保存安定性の評価試験を行うとともに、当該樹脂分散体を主成分とした水性塗料組成物を調製し、塗膜の各種評価試験を行った。
《樹脂分散体の保存安定性試験例》
実施例1〜6及び比較例1〜5で得られた各樹脂分散体をマヨネーズ瓶に取り、密閉して、40℃にて1ヶ月保存した後、水分散体の状態を目視観測し、下記の基準で保存安定性を評価した。
○:沈殿物が観測されなかった。
×:沈殿物が観測された。
《水性塗料組成物の製造例》
先ず、塗料化に際して、下記組成の混合物を得た。但し、下記の混合ドライヤー(東栄化工(株)製、ハイキュアMIX)は、樹脂分散体の固形分に対してCo:0.024%、Zr:0.024%を含有する。
樹脂分散体 75部
二酸化チタン 18部
カーボンブラック 2部
蒸留水 4.5部
混合ドライヤー 0.61部
合計 100.11部
次いで、上記混合物にガラスビーズ48部を加えて、ホモディスパー(特殊機化工業(株)製)を用いて、回転数3000rpm、処理時間25分の条件で分散した後、ビーズを金網で除去して、水性塗料組成物を得た。
《塗膜物性評価試験例》
冷間圧延鋼板SPCC−B(150mm×70mm×0.8mm)を溶剤で脱脂し、サンドペーパー(#240)で塗布面を研磨した後、上記実施例1〜6及び比較例1〜5の樹脂分散体から得られた各水性塗料組成物を、バーコーターNo.65を用いて乾燥膜厚35〜45μmの条件で塗布して試験用塗膜板を作成し、下記の各種塗膜物性評価試験に供した。
(1)防食性
23℃、相対湿度65%の条件で上記塗膜板を一週間乾燥した後、塗膜板にカッターでクロスカットを入れ、耐塩水噴霧試験(35℃×300時間)を実施した。その後、塗膜板を取り出し、カット部にセロテープで剥離試験を行い、下記の基準で防食性の優劣を評価した。
◎:剥離幅が1mm以下であり、極めて防食性に優れていた。
○:剥離幅が1〜2mmであった。
△:剥離幅が2〜3mmであった。
×:剥離幅が3mm以上であり、錆の発生が顕著であった。
(2)硬度
塗料を塗布して1日後及び7日後の塗膜板表面について、JIS−K5400に基づいて鉛筆硬度により測定した。鉛筆硬度については、H<HB<Bの順番で軟らかい。また、Bの付記数字が大きいほど軟らかく、Hの付記数字が大きいほど硬いことを表す。
(3)耐水性
23℃、相対湿度65%の条件で上記塗膜板を一週間乾燥し、次いで、23℃の水に12時間浸水した後の塗膜状態を目視観測して、下記の基準で耐水性の優劣を評価した。
○:塗膜に白化がほとんど見られなかった。
×:塗膜の白化が顕著であった。
(4)密着性
23℃、相対湿度65%の条件で上記塗膜板を一週間乾燥した後、碁盤目セロテープ試験(1mm間隔100目)を行い、剥離後の残留目数を全目数で除して密着率を算出し、下記の基準で密着性の優劣を評価した。
○:密着率が100/100であった。
△:密着率が51/100〜99/100であった。
×:密着率が0/100〜50/100であった。
《保存安定性及び塗膜物性の評価》
図3の下半部は樹脂分散体の保存安定性及び塗膜物性評価の試験結果である。
先ず、二塩基酸にダイマー酸を含有しない比較例3では、その分だけ柔軟性の乏しい芳香環を有する無水フタル酸が多くなるため、塗膜の硬度が上がり、密着性が悪化した。これを補うべく、脂肪酸を増量した比較例4では、塗膜が軟らかくなり、密着性は改善されたが、防食性が不足し、耐水性が悪化した。
また、セバシン酸は長鎖脂肪酸に属する点でダイマー酸に共通するため、ダイマー酸に替えてセバシン酸を使用した比較例5では、塗膜の硬度がやや高めで、柔軟性不足から密着性が悪かった。
これらのダイマー酸を含まない比較例3〜5に対して、ダイマー酸を所定濃度で含有する実施例1〜6では、塗膜に柔軟性が付与されて密着性に優れるとともに、防水性や耐水性なども良好に確保され、密着性、防食性などを良好にバランスさせることができた。従って、塗膜の密着性、防水性、耐水性などをバランスさせる点で、ダイマー酸をエポキシ樹脂に対して反応させることの重要性が明らかになった。
次いで、比較例2は、二塩基酸中のダイマー酸の含有率がエポキシ樹脂に対して3/36=8.3%であり、本発明の特定濃度範囲より低いため、密着性の点で、上記比較例3や5より評価は勝ったが、実施例1〜6に比べて評価が低下した。これにより、密着性と、防水性、耐水性等とを良好にバランスさせるためには、ダイマー酸をエポキシ樹脂に反応させるだけでは充分でなく、エポキシ樹脂に対して特定濃度以上の条件で反応させることが必要である点が明らかになった。
さらに、樹脂中和物に水を加える従来方式(B法)の比較例1では、密着性、防食性、耐水性などの塗膜物性は実施例(例えば、実施例1)に比して遜色はない反面、樹脂分散体の粒子径は350nmであり、当該水分散体の保存安定性は悪かった。従って、保存安定性の良好なエポキシ樹脂分散体を調製するためには、エポキシ樹脂にダイマー酸を特定濃度以上で反応させることに加えて、得られた樹脂中和物を撹拌状態の水に加える操作(A法)が必要である(即ち、樹脂液を水に加えるのでは充分でない)ことが確認できた。この場合、実施例6と他の実施例の対比に鑑みると、水分散体の効果的な微細化には、相対的に重量比率が大きい水に当該比率の小さい樹脂中和物を滴下することが好ましいことが判る。
そこで、実施例1〜6を詳細に検討する。
実施例1は一般的な組成によるビニル変性エポキシエステル樹脂の水分散体の製造例であるが、この実施例1に対して、高分子量のエポキシ樹脂を補填した実施例2では、防食性は実施例1よりさらに向上し、塗膜の硬度は少し増した。さらに、この実施例2を基本として、ダイマー酸を増量した実施例3では、この増量により、密着性が実施例2よりさらに改善された(しかも、防食性は実施例2と同様に優れた評価であった)。
乳化剤を使用した実施例4では、前記実施例1と同様の塗膜評価であった。前述したように、乳化剤を使用すると耐水性が低下する恐れがあるが、実施例4では、グラフト化工程で反応性乳化剤を使用したことも寄与していると考えられるが、耐水性の評価は良好であった。また、実施例4は実施例1に比して樹脂分散体の粒子径は変わらず、保存安定性の評価も同じであることから、乳化剤を使用せずとも、本発明の分散方法(A法)では、樹脂分散体の保存安定性を良好に確保できることが判明した。
また、二塩基酸としてダイマー酸のみを使用した実施例5では、前記実施例1に比して柔軟性があり密着性には優れていたが、防食性が少し不足した。従って、密着性と防食性の良好なバランスには、ダイマー酸をエポキシ樹脂に対して15〜70%程度で含有させることが好ましいと推定される。
一方、実施例1と実施例6は樹脂中和物を水中に分散する際の当該中和物と水の重量比が異なり、実施例1では樹脂中和物をこれより多めの水に滴下したのに対して、実施例6では等重量の水に樹脂中和物を滴下した(但し、分散後に希釈水(12部)を添加して実施例1で使用した水と同量に調整した)。この実施例6では、密着性、防食性などの塗膜物性は実施例1と同水準であり、分散体の保存安定性も実施例1と同様の評価であった。しかしながら、分散体の粒子径は実施例1では90nmであったが、実施例6では300nmであった。これにより、保存安定性の良い分散体を得るためには、樹脂100重量部に対して水100〜300重量部を使用することが適当であるが、分散体を効率的に微細化するには、樹脂中和物をこれより多めの水に滴下することが好ましく、具体的には、樹脂100重量部に対して水110〜200重量部を使用することが好ましく、より好ましくは水120〜200重量部である。
実施例1〜6の各ビニル変性エポキシエステル樹脂の付加・縮合工程、グラフト化工程、中和・分散工程での使用成分の組成をまとめた図表である。 比較例1〜5の各ビニル変性エポキシエステル樹脂の付加・縮合工程、グラフト化工程、中和・分散工程での使用成分の組成をまとめた図表である。 実施例1〜6及び比較例1〜5の各ビニル変性エポキシエステル樹脂の恒数、当該樹脂の水分散体の保存安定性並びに塗膜物性の評価試験結果を示す図表である。

Claims (8)

  1. (a)ビスフェノール型のエポキシ樹脂と、(b)脂肪酸及び二塩基酸とを反応させてエポキシエステル樹脂を得る付加・縮合工程と、酸基含有モノマーを含むビニルモノマーでエポキシエステル樹脂にグラフトさせる工程と、グラフト樹脂中の酸基を中和して水中に分散させる工程とからなるビニル変性エポキシエステル樹脂の水分散体の製造方法において、
    上記付加・縮合工程では、(b)の二塩基酸としてダイマー酸をエポキシ樹脂に対して10重量%以上の割合で含有して、ダイマー酸変性エポキシエステル樹脂を得るとともに、 上記中和及び分散工程では、撹拌した水にグラフト樹脂の中和物を加えることを特徴とするビニル変性エポキシエステル樹脂の水分散体の製造方法。
  2. 中和及び分散工程で、撹拌した水に樹脂中和物を加える代わりに、撹拌した中和剤含有水に中和前の樹脂、或は一部中和した樹脂を加えることを特徴とする請求項1に記載のビニル変性エポキシエステル樹脂の水分散体の製造方法。
  3. 樹脂中和物、一部中和した樹脂又は中和前の樹脂100重量部を、水又は中和剤含有水100〜300重量部に対して加えることを特徴とする請求項1又は2に記載のビニル変性エポキシエステル樹脂の水分散体の製造方法。
  4. 水分散体の粒子径が300nm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のビニル変性エポキシエステル樹脂の水分散体の製造方法。
  5. 乳化剤を使用し、或は使用しないで、ビニル変性エポキシエステル樹脂の水分散体を得ることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のビニル変性エポキシエステル樹脂の水分散体の製造方法。
  6. 付加・縮合工程において、ビスフェノール型のエポキシ樹脂100重量部に対して、脂肪酸を30〜90重量部、二塩基酸を20〜80重量部、一塩基酸を0〜50重量部の割合で反応させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のビニル変性エポキシエステル樹脂の水分散体の製造方法。
  7. グラフト化工程において、ダイマー酸変性エポキシエステル樹脂100重量部に対して、酸基含有モノマーを含むビニルモノマー20〜100重量部をグラフト反応させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のビニル変性エポキシエステル樹脂の水分散体の製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法で得られたビニル変性エポキシエステル樹脂の水分散体を含有する水性塗料組成物。
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