JP4709995B2 - 廃液に含有される有用金属の回収方法 - Google Patents

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Description

本発明は、廃液、より詳しくは半導体製造におけるエッチング廃液や、メッキ廃液等の産業廃液にイオンとして含有される有用な金属を回収する方法や、これに用いる装置に関する。
半導体工業において多量に排出されるエッチング廃液には、多量の金属イオンが含まれ、また、メッキ工業において使用されるメッキ液の廃液には、多量の金属イオンが含まれている。これら廃液に含まれる金属イオンを回収する一般的な方法として、金属イオンを含む液中に懸架されたアノードとカソード間に電圧を印加する電解法が知られている。その他、溶媒により金属を抽出する方法、加熱・脱水等の分離操作により金属を分離する方法や、回収する金属のイオン化傾向よりイオン化傾向の大きな金属を廃液に投入し目的の金属を回収する方法等が知られている。
また、一般的に金属の回収方法として、ハロゲン化銅溶液中より銅を回収し、銅の回収後の溶液をハロゲン酸溶液として回収する方法として、陽イオン交換膜によって仕切られた一方の側の槽内に銅よりなる陰極体を設置すると共にハロゲン化銅溶液を供給し、他方の側の槽内に陽極体を設置すると共に酸溶液を供給し、陰極体と陽極体間に通電し、ハロゲン化銅溶液中の銅を析出させると共に、酸溶液中の水素イオンをハロゲン化銅溶液側に透過させハロゲン酸溶液を生成する方法(例えば、特許文献1参照)や、金属イオンを含む溶液から金属を電気化学的に回収する方法であって、陽極に酸化反応を生ずる物質を供給して酸化反応を生じさせ、同時に陰極で該金属イオンの還元に基づき金属の電析を生じさせる電気化学プロセスを含む金属の回収方法(例えば、特許文献2,3)等が知られている。
特開平5−204097号公報 特開2002−115088号公報 特開2002−194580号公報
本発明は、ハロゲン気体等の有害ガスを発生させず、環境に配慮し、廃液中に含有される有用金属を回収し、資源とエネルギーの有効活用を図ることができる廃液に含有される有用金属の回収方法や、これに用いる装置を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、燃料電池のシステムに類似した方法を採用し、アノードに供給する水素の酸化により塩素ガス等の気体の発生を防ぐことができ、また電池反応による電流を取り出すことができると考え、塩酸系銅エッチング廃液を対象として銅の回収を試みた。燃料電池に類似したシステムとして、図25に示すように、アノード室21とカソード室22とをカチオン交換膜である導電性高分子膜(ナフィオン膜)23で区切り、導電性高分子膜23のアノード室21側に隣接して電極触媒24(アノード)を設け、カソード室22中に懸架した金属回収電極25(カソード)を設けた二層式実験セルを作製した。かかる二層式実験セルにおいてアノード室21に水素ガスを供給し、カソード室22に酸素の代わりにエッチング廃液を供給し、金属回収電極25と電極触媒24間に電圧を印加したところ、金属回収電極25に銅が析出したが、アノード室21の電極触媒24上にも銅が析出し、電極触媒24及び導電性高分子膜23の破壊が確認された。この電極触媒24上の銅の析出は、電極触媒24と金属回収電極25間に電圧をかけずにアノード室21へ水素を導入しただけでも確認されたことから、アノード室21の電極触媒24への銅の析出は銅イオンが導電性高分子膜を透過し、電極触媒24上で水素により化学的に還元されたことによるものと考えた。
そこでこの問題を解決するため、アノード・カソード間に中間液層を設け、H+と金属イオンの対イオン(例えばCl-)をこの中間液層に導入させることによりセルの電気伝導性が保たれ、金属イオンとアノードの電極触媒との接触を防止することができると考え、アノード・カソード間に、それぞれカチオン交換膜、アニオン交換膜を用いて隔てた中間液層を設けた三層式実験セルを作製した。この三層式実験セルで銅回収を試みた結果、有害ガスの発生及びアノードへの銅の析出を抑制し、金属回収電極上に銅が析出し銅の回収をより効率よく行うことができることの知見を得た。
更に、作製した三層式実験セルで銅の回収を行うと、アノード電極電圧は、電流負荷が10mAのときは一定の値を示すのに対し、50mAのときには電圧は大きく変動・上昇した。このアノードにおける高電流密度時の電極電圧の上昇は、アノードに白金メッシュとナフィオン膜とを圧着したものを用いていたため、高電流密度時に水素酸化反応が追随し得ないことに起因することを見い出した。この水素酸化反応速度を高めるため、電極構造に着目し、アノードに水素酸化反応を容易に生じさせ得る、電極触媒・ガス・電解質の接触界面を形成しやすい構造を有する膜−電極接合体(MEA;Membrane Electrode Assemble)(図2)を採用することにより、一定電圧で銅の回収を継続進行させることができるとの知見を得、これらの知見に基き本発明を完成するに至った。本発明は水素より貴な金属、例えば銀を含有する廃液や、水素より卑な金属、例えば鉄やニッケルやすずを含有する廃液にも適用でき、さらに数種の金属イオンが共存して含有される廃液においても析出電圧の違いを利用した分別回収が行えるものと考えられる。
即ち、本発明は、水素が供給されるアノード室と、カチオン交換膜を利用した膜−電極接合体(アノード)を介してアノード室と隔離され、カチオン交換膜側に設けられた中間液槽と、アニオン交換膜を介して中間液槽と隔離され、金属イオン含有液中に配設されたカソードを有するカソード室とを順次備えた金属回収装置を用い、アノード室に水素を供給し、電池反応によりあるいはアノード−カソード間に通電することにより、アノードで生成した水素イオンをカチオン交換膜を透過させて中間液槽に移動させると共に、カソード室内の金属イオン含有液中の金属イオンの対イオンをアニオン交換膜を透過させて中間液槽に移動させながら、カソードで金属のイオンの還元に基づき金属を電析させることを特徴とする廃液に含有される有用金属の回収方法(請求項1)や、カチオン交換膜を利用した膜−電極接合体(アノード)として、燃料電池用触媒を高分子電解質溶液に混合した混合液を、カチオン交換膜に塗布して形成される膜−電極接合体を用いることを特徴とする請求項1記載の廃液に含有される有用金属の回収方法(請求項2)や、カチオン交換膜として、パーフルオロスルホン酸/ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)共重合体から成膜したカチオン交換膜を用いることを特徴とする請求項2記載の廃液に含有される有用金属の回収方法(請求項3)や、高分子電解質として、パーフルオロスルホン酸/ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)共重合体を用いることを特徴とする請求項2記載の金属の回収方法(請求項4)や、中間液槽に酸性溶液を収納し、該酸性溶液の溶液抵抗を低減することを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の廃液に含有される有用金属の回収方法(請求項5)や、酸性溶液の溶液抵抗を低減する方法が、酸性溶液の液温を上げる方法、酸性溶液の濃度を高くする方法、又は酸性溶液層の厚さを小さくする方法であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の廃液に含有される有用金属の回収方法(請求項6)廃液中に含有される有用金属のイオンが、銅イオンであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の廃液に含有される有用金属の回収方法(請求項7)に関する。
また、本発明は、水素が供給されるアノード室と、カチオン交換膜を利用した膜−電極接合体(アノード)を介してアノード室と隔離され、カチオン交換膜側に設けられた中間液槽と、アニオン交換膜を介して中間液槽と隔離され、金属イオン含有液中に配設されたカソードを有するカソード室とを順次備えたことを特徴とする金属の回収装置(請求項8)に関する。
本発明は、半導体製造工程におけるエッチング廃液や、メッキ液の廃液等の産業廃液に含有される有用金属を、有害ガスを発生させず環境破壊を抑制して回収することができ、更に、これらの産業廃液に含有される金属イオンの対イオンに相当する酸が濃縮され、且つ、電気エネルギーを発生するため、濃縮された酸の再利用や、発生する電気エネルギーの利用も可能とし、資源とエネルギーの有効活用に資することができる。本発明は、アノードに供給される気体よりイオン化傾向が貴な金属、例えば銀を含有する廃液にも適用することができ、更に印荷することによりアノードに供給される気体よりイオン化傾向が卑な金属、例えば鉄やニッケルやすずを含有する廃液にも適用することができる。更に、数種の金属イオンを含有する廃液においても析出電圧の違いを利用した分別回収を行うことができる。また、本発明は、廃液に含有される金属のみならず、一般的に金属イオンを含有する溶液に適用し、溶液中に含有される金属の回収にも利用可能である。
本発明の廃液に含有される有用金属の回収方法としては、水素が供給されるアノード室と、カチオン交換膜を利用した膜−電極接合体(アノード)を介してアノード室と隔離され、カチオン交換膜側に設けられた中間液槽と、アニオン交換膜を介して中間液槽と隔離され、金属イオン含有液中に配設されたカソードを有するカソード室とを順次備えた金属回収装置を用い、アノード室に水素を供給し、電池反応によりあるいはアノード−カソード間に通電することにより、アノードで生成した水素イオンをカチオン交換膜を透過させて中間液槽に移動させると共に、カソード室内の金属イオン含有液中の金属イオンの対イオンをアニオン交換膜を透過させて中間液槽に移動させながら、カソードで金属のイオンの還元に基づき金属を電析させる方法であれば、特に制限されるものではなく、本発明の金属回収装置としては、水素が供給されるアノード室と、カチオン交換膜を利用した膜−電極接合体(アノード)を介してアノード室と隔離され、カチオン交換膜側に設けられた中間液槽と、アニオン交換膜を介して中間液槽と隔離され、金属イオン含有液中に配設されたカソードを有するカソード室とを順次備えたものであれば、特に限定されるものではない。
本発明の金属の回収装置には、図1に示すように、アノード室1と、アノード室1にカチオン交換膜を利用した膜−電極接合体(アノード)2を介して設置される中間液槽3と、該中間液槽3にアニオン交換膜4を介して設置されるカソード室である廃液槽5と、廃液槽5中に収納される廃液6中に配設され膜−電極接合体(アノード)2に接続されるカソードである金属回収電極7とが設けられる。
本発明の有用金属回収装置のアノード室1は、燃料電池に用いられるアノード室を適用することができ、アノード室に供給される水素を膜−電極接合体2を介して水素イオンとして中間液槽に収納される溶液中へ流出する。
上記アノード室1と中間液槽3間に設けられる膜−電極接合体2は、電極成分とカチオン交換膜成分とを接合した接合体であり、電極成分としては白金、ルテニウム等の燃料電池用触媒に用いられるものを使用することが好ましく、カチオン交換膜成分としては燃料電池用に使用されるカチオン交換膜成分ならいずれも使用できるが、パーフルオロスルホン酸/ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)共重合体製等の高分子電解質膜等を使用することが好ましい。かかる膜−電極接合体としては、図2に示すように、アノード1に供給される気体の酸化反応を誘発させ得る、電極触媒・ガス・電解質が触れ合う三相界面が形成された構造を有するものがより好ましい。三相界面が形成された構造を有する膜−電極接合体としては、具体的には1〜5nm等の微粒子の白金−ルテニウム等の燃料電池用触媒成分をパーフルオロスルホン酸/PTFE共重合体液等の高分子電解質溶液に混合した混合液を、カチオン交換膜成分、例えば、パーフルオロスルホン酸/PTFE共重合体製膜(MEA(Membrane Electrode Assemble))上に塗布して電極成分を成形したものが好ましく、かかる電極成分が成形された表面がアノード1側に配置するように設置することができる。
本発明の有用金属回収装置の中間液槽3は、アノード室から水素イオンが流入し廃液槽から金属イオンの対イオン等の陰イオンが流入することにより、電気伝導性を保持し、廃液に含有される金属イオンのアノードへの侵入を抑制して、膜−電極接合体の破壊を防止するために設けられる。中間液槽3に収納する液(以下、中間液という。)は、廃液に含有される陰イオンを含む酸性溶液が好ましい。中間液が廃液に含有される陰イオンを含む液であれば、廃液槽5からアニオン交換膜4を介して中間液槽3に流入する陰イオンと共に、アノード室1から水素イオンが中間液槽3に流入し、中間液槽3中で酸が濃縮され、濃縮された酸の再利用が可能となる。中間液は金属の回収を容易にするため、溶液抵抗Rsを低減させることが好ましい。
ここで溶液抵抗Rsは、導電率k、溶液の厚さL、断面積Sと、式(X)
s=(1/k)×(L/S) (X)
で表される関係にある。このため、中間液の溶液抵抗Rsを低減させるためには、導電率k及び断面積Sを大きくし、溶液の厚さLを小さくすることにより溶液抵抗を低減し、金属の回収を容易にすることができる。また、導電率kは温度や濃度によっても変化する。収納する中間液の溶液抵抗Rsを低減するには、中間液槽3は具体的には、膜−電極接合体2やアニオン交換膜4と平行な断面Dnの断面積が大きく、膜−電極接合体2とアニオン交換膜4間の距離が短い形状であることが好ましく、10mm以下、より好ましくは3mm前後の厚さを有することが好ましい。中間液の導電率kを大きくする方法としては、例えば、中間液の陰イオン濃度を高くする方法、具体的には2M以上、好ましく、3M以上等とする方法等を挙げることができる。また、中間液の液温は、高いほど金属の回収を効率的に行なうことができ、30℃以上、好ましくは、40℃以上である。
本発明の廃液に含有される有用金属の回収装置におけるカソード室である廃液槽5は、廃液を収納できるものであれば、特に制限されるものではない。廃液槽に収納する廃液は金属をイオンとして含むものであり、かかる廃液に含有される金属イオンとしては、アノード室に供給される水素より貴な金属、例えば銅、水銀、銀等のイオンや、水素より卑な金属、例えば鉄やニッケルやすず等のイオンでもよく、さらに数種の金属イオンであってもよい。かかる廃液は、上記中間液と同様に金属の回収を容易にするため溶液抵抗を低減することが好ましく、廃液の溶液抵抗を低減するためには、中間液の溶液抵抗を低減するのと同様に、アニオン交換膜とこれと対向する側面までの距離が短い形状であることが好ましい。
上記廃液槽5と中間液槽3間に設けられるアニオン交換膜4は、廃液中に含有される金属イオンが中間液槽3へ移動するのを抑制する作用を有するものであり、液中に含有されるアニオンのみを通過させるために通常用いられる、例えば、セレミオン(商品名)等を用いることができる。
上記廃液槽5に収納される廃液中に懸架されるカソードである金属回収電極7は膜−電極接合体(アノード)2に接続され、その表面に金属を析出させるため、その材質は回収する金属のイオン化傾向よりイオン化傾向が小さい材質であれば、いずれのものであってもよく、銅、白金等を好適に用いることができるが、銅回収においては経済面で銅を用いることが好ましい。金属回収電極7はその表面積を大きくするためメッシュ状であることが好ましい。
本発明の廃液に含有される有用金属の回収方法において、根拠とする金属の電析機構について、銅が塩化銅として廃液中に含有される場合を例示して説明する。
本発明の有用金属の回収装置を用いて、析出を行うと、銅の析出電流負荷開始後、金属回収電極における電圧は、図3に示すように、約0.18Vからなだらかに下降し、一定時間経過後急激に下降し、その後電圧は約−0.12Vでほぼ一定の値を示す。開始から電圧の急降下点までをA領域とし、電圧の急降下点以降の領域をB領域とし、それぞれの領域について説明する。
A領域では金属回収電極へのCuClの白色結晶が析出し、同時に金属回収電極付近の溶液色が変化(青色→緑色)する。これらのことからA領域では溶液中のCu2+からCuClを生成する式(1)
Cu2++e-+Cl- → CuCl E0=538mV (1)
で表される1電子反応が起こっていると考えられる。
MEAの触媒面積25cm2、中間液HCl(1M、15ml)、廃液HCl+CuSO4(1M、100ml)、カソードの金属回収電極としてPt板(1×1cm、5×2cm)をPt線でリードを取って用い、アノード・カソード間の負荷電流を10〜250mAの範囲で変化させたときのアノード・カソード間の電圧を測定すると、図4に示すように、負荷電流が10、100、150、200、250mAのとき、電圧は0.496、0.315、0.213、0.117、0.017Vと低下し、電圧急降下点までの時間も短縮される。このA領域の電圧を縦軸に、電流を横軸に取りプロットすると、図5に示すように、プロットした点には近似的な直線関係が成り立つ。これは分極曲線の過電圧が小さい領域にみられる直線関係であると考えられ、直線を外挿した電流0のときの電圧値514mVがA領域の反応の平衡電圧に該当し、この値が式(1)に示す反応の平衡電圧である538mVとほぼ同じ値であることから、A領域での反応が式(1)に示す反応であることが確認できる。
更に、A領域におけるCuClの析出量は、負荷電流毎に電荷量に対して、図6に示す関係にある。CuClの析出量は、下記式
{(I(mA)/1000×t)/96485}×99=m (CuCl=99)
により求められる理論値(図中、点線で示す。)に対して、負荷電流が小さいときずれが大きく、負荷電流が大きくなるに従いずれは小さくなっている。電流値が250mAのときにはほぼ理論値と同等のCuClの析出が認められる。この現象から、金属回収電極において、A領域では、式(1)に示す反応だけではなく、式(2)
CuCl+Cl- → CuCl2 - (2)
で示される生成されたCuClの溶解反応が競争的に起きていると考えられる。即ち負荷電流が大きいとき((1)の反応速度が速いとき)にはCuClの溶解の影響が相対的に小さくなり、負荷電流が小さいとき((1)の反応速度が遅いとき)にはCuClの溶解の影響が相対的に大きくなることからも式(2)で示される反応が生じていることが確認できる。
金属回収電極においてA領域からB領域へ変化する点では、A領域で生成したCuClにより金属回収電極表面全面が覆われ、その時点で銅の析出反応が開始することが確認できる。
1×1cmの電極を用い20mA(10mA/cm2)の電流を負荷したときの、図7に示すA領域中の3点、I:負荷開始前、II:A領域中盤で一定の電圧が確認できる点、III:A領域終盤の電圧急降下の開始点、IV:B領域初期の1点において、CuClの析出状態を光学顕微鏡(DP11:OLIMPUS社製)により観察すると、図8に示すように、A領域のI、II、IIIと反応が進むにつれてCuCl結晶が電極表面上を覆っていき、B領域開始点のIVでは電極表面を完全に覆っていることが確認できる。即ちA領域からB領域へと反応が変化するのは電極表面がCuClで覆われたことによると考えられる。尚、図の白い部分は白金電極が露出している部分を示し、黒っぽい部分はCuCl結晶が付着している部分を示す。
金属回収電極における式(1)で示される反応は、図9に示すモデルの分極曲線に従って進行する。反応の進行に伴いCuClで覆われる電極表面の面積が増加し、式(1)で示される反応が起きる電極面積の減少により物質移動過電圧が増加する。この物質移動過電圧により式(1)で示される反応の分極曲線は図中矢印のように変化する。この反応は低電流で行っていることから、負荷電流Iにおいて観測される電圧は徐々にカソード側にシフトする。B領域での銅析出反応の分極曲線と交差する点aに達すると銅の析出が始まり、この点がB領域の開始点になる。
一方、金属回収電極として5×2cmの電極を用い、100、250mA(5、12.5mA/cm2)の電流を負荷したときの、図10に示すB領域中の1点、V、VIにおいて、CuClの析出状態を光学顕微鏡(DP11:OLIMPUS社製)により観察すると、図11に示すように、電流密度の低いV(5mA/cm2)では電極をCuClが覆うCuCl結晶粒が大きく、電流密度の高いVI(12.5mA/cm2)では逆にCuCl結晶粒が小さい。これは式(2)で示されるCuClの溶解反応の逆反応による再析出が生じていることが考えられる。このことは式(2)で示される反応の逆反応(CuClの再析出)は化学反応であるため、低電流密度時にはその影響が大きくなり、結晶粒が大きく成長し、高電流密度時には逆に結晶粒が小さくなることからも裏付けられる。
B領域では金属回収電極へCuClの白色結晶が析出し、同時に金属銅が析出し、金属回収電極付近の溶液色が変化する範囲が拡大する。B領域では式(1)で示される反応と、式(3)及び式(4)で示される銅の析出反応が同時に起こっていることが示されており(外島忍他、電気学会大学講座・電気化学(改訂版7版)、p.72)、観測される電圧はこれらの複合電圧を示していると考えられる。
Cu2++2e- → Cu E0=337mV (3)
CuCl+e- → Cu+Cl-0=137mV (4)
ここでA領域とB領域の電圧差に注目すると、電流密度を変化させてもA領域とB領域の測定電圧差は約300mVであるが、式(1)で表される反応と式(3)又は式(4)で表される反応の電圧差の理論値を考えると、式(3)で表される反応の場合は、A領域とB領域の電圧差の計算値は200mV以下となり、実際の測定電圧差約300mVと矛盾ずる。一方、式(4)で示される反応の場合は、A領域とB領域の電圧差の計算値は測定電圧差300mVに近似する。このことから、B領域では式(4)で示される反応、つまりA領域で析出したCuClが1電子還元されて金属銅が析出する反応が起きていると考えられる。また、B領域開始時点の電極表面がCuClの白色結晶に覆われていることから、実際に存在する物質の観点からも式(4)で示される反応が生じている可能性が示唆される。式(4)で示される反応により消費されたCuClはB領域の競争反応である式(1)で示される反応によって供給されると考えることにおいて、矛盾がない。
更に、B領域における金属回収電極への銅の析出量は、負荷電流毎に電荷量に対して、図12に示す関係にある。銅の析出量は下記式
{(I(mA)/1000×t)/96485}×1/2×63.55=m(Cu=63.55)
により求められる理論値(図中、点線で示す。)に対して、負荷電流が大きくなるのに伴いずれは小さく、180C以上の電荷量において電荷量とほぼ比例し、このとき、理論値に対して、測定析出量から求めた銅の回収効率は、500mAのときには77%、750mAのときには85%、1000mAのときには90%となる。電流密度が小さいときに回収効率が低下する原因については予想された通り、式(2)で示される反応により金属銅の析出における中間物質であるCuClが溶解し、式(4)で示される銅の析出反応の進行により、反応種が減少し、結果的に金属銅の析出量が減少したと考えられる。
上記機構により廃液槽中で金属回収電極上に金属が回収されるが、このとき中間槽においては、アノードに供給される水素等の気体が3相界面を有する膜−電極接合体を介して気体の正イオンに変換され、この正イオンが中間槽へ流入すると共に、廃液槽中の廃液に含有される陰イオンが中間槽へ移動し、中間槽中の中間液の酸濃度が濃縮される。
以下、実施例により本発明の廃液に含有される有用金属の回収方法について具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
1.金属の回収装置の作製
MEAを以下の手順で作製した。
(a)−1 前処理
まず、パーフルオロスルホン酸/PTFE共重合体製膜(商品名:Nafion デュポン社製)を10cm角に切り出し、無機系の汚れを落とすために80℃の純水による洗浄を1時間、有機系の汚れを落とすために80℃の過酸化水素水(3%)による洗浄を1時間行った後、80℃の硫酸(約20%)中に1時間浸漬しH+イオン交換を行った。その後、80℃の純水で1時間洗浄後、室温で乾燥させた。乾燥後、パーフルオロスルホン酸/PTFE共重合体製膜は100℃、7Mpaにて10分間ホットプレス機にてプレスし、シワを伸ばした。
(a)−2 触媒の調製
燃料電池用電極触媒100mgを試験管に取り、溶媒として2−プロパノール3.5mlを加え、超音波洗浄機により1時間撹拌・分散した。その溶液に5%Nafion溶液1mlを加えた。
(a)−3 触媒塗布・ホットプレス
調製した触媒を塗装用スプレーガンにて7cm角でNafion中央に塗布した。このときドライヤーにより裏面から乾燥させながら塗布を行った。総ての触媒を塗布した後、80℃のオーブンで1時間乾燥させ、140℃、7MPa、10分間ホットプレスを行い、膜−電極接合体を得た。
(b)(a)−1の前処理を行なったパーフルオロスルホン酸/PTFE共重合体製膜に白金メッシュを圧着して膜−電極接合体を得た。
2.回収装置の組立
図13に示すように、集電体7、カーボンペーパー8、セパレーター9、カーボンペーパー10、1で作製した膜−電極接合体11、シリコンラバー12、アクリルで作製した幅10mmの中間液槽13、シリコンラバー14、アニオン交換膜(商品名:セレミオンAMV 旭硝子(株)社製)15、シリコンラバー16、金属回収電極17を懸架した廃液槽18を順次配置し、11本のボルトで締め、固定した。シリコンラバー12、14、16はガスの漏洩を抑制するためのものである。膜−電極接合体の触媒面積を25cm2とした。
銅回収時のアノード・カソード間の電圧経時変化の測定
実施例1で得られた回収装置を用い、中間液は1M塩酸25ml、モデル廃液は1M塩酸及び1M硫酸銅25ml、カソードの金属回収電極は白金メッシュ(80mesh)1×1cmを白金線でリードを取って用いた。溶液はそれぞれ超純水を用いて調製した。アノードへは水素ガスを0.3 l/min.で導入した。アノードの集電体とカソードの金属回収電極を測定装置(電気化学測定システムHZ−3000(北斗電工(株)製)に接続した。
10〜300mAの負荷電流で銅回収時におけるアノード・カソード間の電圧経時変化を測定した。同様に参照電極に飽和カロメル電極(以下、SCEという。)を用いてアノード・カソード間の電圧経時変化を測定した。結果を、実施例1(a)で得られた膜−電極接合体を用いた場合、実施例1(b)で得られた膜−電極接合体を用いた場合について、それぞれ図14(a)、図14(b)に示す。
結果から、実施例1(a)で得られた膜−電極接合体を用いた場合、300mAまで電流を増加させても電圧はほぼ一定の値を示し、大きな変動及び低下は認められなかった。50mAの電流を流すと開始1分ほどまで約0.3Vの一定な電圧が認められ、その後電圧降下し約0.05Vの一定電圧を示した。銅は電圧降下した後の領域で析出した。また、電流の小さい10mAのときには電圧降下までの時間が長くなり、100mA、200mA、300mAのときには電圧降下までの時間が短くなった。これらの結果により実施例1(a)で得られた回収装置を用いることで高電流密度での銅回収が可能となることが分かった。
実施例1(b)で得られた膜−電極接合体を用いた場合、10、30mAの電流を流したときには、それぞれ約−0.3V、−0.63Vで一定の電圧となったが、50mAの電流を流すと開始5分後までは約−1.45Vで一定の電圧を示したが、その後大きく低下し約−2.5Vに達した。また、70mAの電流を流したときには開始直後から電圧は大きく変動し、開始3分後には約−2.8Vまで低下した。実施例1(b)で得られた膜−電極接合体を用いた場合、低電流の範囲では銅の回収が可能であることが分かった。
アノード電極電圧の測定
実施例2と同様の装置を用いて、銅回収時におけるアノードの電極電圧の経時変化を測定した。結果を、実施例1(a)で得られた膜−電極接合体を用いた場合、実施例1(b)で得られた膜−電極接合体を用いた場合について、それぞれ図15(a)、図15(b)に示す。
結果から、実施例1(a)で得られた膜−電極接合体を用いた場合、電流を10、100、200、300mAと増加させると電圧はそれぞれ約−0.24、−0.19、−0.13、0.07と上昇したが電圧の変動はなく、一定の電圧を示した。
実施例1(b)で得られた膜−電極接合体を用いた場合、10、30mAの電流を流したとき、それぞれ約−0.24、0.07Vで一定の電圧を示していたのに対し、50mAの電流を流したときには測定開始から電圧は0〜0.5Vの間で変動し、開始約60分後には約2.75Vまで上昇した。これは電流密度を上げると水素酸化反応が追随しなくなっていることが原因であると考えらる。また、電流量の増加に対する電圧の上昇量を実施例1(a)で得られた膜−電極接合体を用いた場合と、実施例1(b)で得られた膜−電極接合体を用いた場合とを比較すると、実施例1(a)で得られた膜−電極接合体を用いた場合、著しく減少したことから、実施例1(a)で得られた膜−電極接合体を用いることにより、水素酸化反応の過電圧が小さくなったと考えられる。
負荷電流変化に伴う銅の回収率
中間液15ml、モデル廃液100ml、金属回収電極白金板(50×20×0.1(mm))とした他は、実施例2と同様の条件で、負荷電流500〜1000mAで銅の回収を行なった。予め金属回収電極の重量を測定しておき、銅を析出させ、析出前後の電極重量の差より銅の析出量を求めた。このとき、析出後の電極には銅とともにCuCl結晶も析出ているため、析出後の電極は一度飽和塩化カリウム溶液(試薬特級>99.5% 関東化学(株)社製)に浸漬しCuClを溶解させ、純水で洗浄した後、オーブン中で80℃、15分乾燥させ重量を測定した。結果を、図12に示す。
銅の析出量は180C以上の電荷量の時に電荷量と比例関係を示した。このとき電荷量から計算した理論析出量の傾きと実際に測定した析出量の傾きから銅の回収効率を計算した結果、500mA時には77%、750mA時には85%、1000mA時には90%の回収効率を得た。電流密度が小さいときに銅の回収効率が低くなる理由については、銅析出時の反応中間種であるCuClが溶液への溶解していることが原因であると考えられる.
中間液槽の酸濃縮の測定
中間液28ml、モデル廃液50mlとした他は、実施例2と同様の条件で、中間液、モデル廃液をそれぞれ中間液槽、廃液槽へ入れたときの中間液のpHの経時変化を測定した。pHは一定時間毎に中間液を約5ml取り出してpHメーター(MP230:メトラートレド(株)社製)で測定し、測定後は取り出した中間液をセル内へ戻し、pHの変化が小さくなるまでこの操作を繰り返し行った。pHの変動が小さくなった後、負荷をかけ、中間液のpHを同様に測定した。結果を図16に示す。
結果から、中間液のpHは3.038であったが、中間液槽へ入れると大きく降下し、60分後には1.086となった。これはセレミオンを通してモデル廃液よりH+、Cl-が侵入し、中間液の塩酸濃度が上がったためと考えられる。また、電流負荷後は大きくpHは降下し、総電荷量7200C時の中間液のpHは0.100となった。pHの測定値が計算値より大きい理由についてはHClの活量、セレミオンを通してのモデル廃液への侵出があったものと考えられる。
pHの計算値は下記に示す式(Y)、(Z)から求めた。
[H+]0 + △[H+] = [H+]t (Y)
[H+]0=10-(pH)
△[H+] ={(I(mA)/1000×t)/96485}×1000/28
pH=−log[H+]t (Z)
式(Y)において、負荷開始前のH+濃度を[H+]0、一定負荷Iでt秒負荷をかけた時のH+濃度増加量を△[H+]、t秒後のH+濃度を[H+]tとし、この値より式(Z)を用いて溶液のpHを求めた。尚、H+の活量は1とした。
電流負荷前後でpH変化の様子を比較すると、電流負荷前と電流負荷後ではpH変化の様子は明らかに異なり、電流負荷後のpH変化は計算値と類似していることから、電流を流すことでアノード反応よりH+がNafion膜を透過して中間液に供給されることにより中間液層での酸濃縮が起こることが確認された。
また、pH変化から式(Z)を用いてH+濃度を計算し電荷量でプロットした結果を図17に示した。図に示す通り、流れた電荷量が大きくなるに従いH+濃度は直線的に増加した。計算値に比べ実測値が小さい原因として、アニオン交換膜を通して中間液からモデル廃液へのH+の移動による酸濃度の低下や、酸濃度が高い領域での活量の変化による計算値のずれ等が考えられる。
銅回収における中間液の濃度
モデル廃液100ml、金属回収電極白金メッシュ5×2cmを用い、中間液の濃度を1、3、5Mとした他は実施例2と同様の条件で、負荷電流300〜1000mAで銅の回収を行なった。中間液の各濃度におけるアノード・カソード間の負荷電流とB領域の電圧は直線的な関係を示した。結果を図18に示す。
得られた中間液の各濃度におけるアノード・カソード間の電圧と負荷電流の直線の関係から、中間液の1M、3M、5M濃度におけるアノード・カソード抵抗を計算すると、それぞれ0.83Ω、0.70Ω、0.69Ωと濃度が高くなるに従って抵抗が軽減した。文献値より1M、3M、5MのHClの導電率はそれぞれ約0.4、0.6、0.75となっており(外島忍他、電気学会大学講座・電気化学(改訂版7版)、p.4)、濃度が高くなるに従って抵抗が軽減するという傾向は合致するものの文献値と比較して3Mと5Mにおける抵抗の差が小さかった。この原因については、高濃度の酸を中間液に用いると中間液とモデル廃液とのH+濃度差が大きくなり、アニオン交換膜を通して中間液からモデル廃液へのH+の移動による酸濃度の減少が顕著になるためと考えられる。
銅回収における中間液槽幅
モデル廃液100ml、金属回収電極白金メッシュ5×2cmを用い、中間液槽の幅を3、10mmとした他は実施例2と同様の条件で、負荷電流300〜1000mAで銅の回収を行なった。中間液槽の各幅におけるアノード・カソード間の負荷電流とB領域の電圧は直線的な関係を示した。結果を図19に示す。
得られた各幅の中間液槽におけるアノード・カソード間の電圧と負荷電流の関係から、抵抗を計算すると中間液槽の幅が10mmでは0.95Ωだった抵抗が3mmでは0.8Ωまで軽減した。式(X)の通り、中間液の幅に比例して抵抗が増加していた。
銅回収におけるアノード・カソード間の距離
モデル廃液100ml、金属回収電極白金メッシュ5×2cmを用い、アノード・カソード間の距離を10、20、30、40mmとした他は実施例2と同様の条件で、負荷電流300〜1000mAで銅の回収を行なった。アノード・カソード間の各距離におけるアノード・カソード間の負荷電流とB領域の電圧は直線的な関係を示した。結果を図20に示す。
得られたアノード・カソード間の各距離10〜40mmにおけるアノード・カソード間の電圧と負荷電流の関係から、抵抗を計算すると0.90〜1.45Ωと増加した。式(X)の通り、アノード・カソード間の距離に比例して抵抗が増加していた。
銅回収と金属回収電極の面積
モデル廃液100ml、金属回収電極を白金板1×1、5×2cmとした他は、実施例2と同様の条件で、負荷電流50〜1000mAで銅の回収を行ない、アノード・カソード間の電圧の経時変化を測定した。金属回収電極の各面積におけるアノード・カソード間の負荷電流とB領域の電圧は直線的な関係を示した。結果を図21に示す。
得られた金属回収電極の各面積1、10cm2におけるアノード・カソード間の電圧と負荷電流の関係から、抵抗を計算すると1.0、2.0Ωであった。
この結果は、以下のことから裏付けられる。
一般に電流密度Iを増加させると、図22に示すように、電気化学的分極(平衡電圧からのずれ)が大きくなる。電流密度Iは電極面積Sと電流iについて式(U)
I=i/S (U)
の関係を有する。異なる電流密度I1、I2に|I1|>|I2|が成り立つとすると、そのときの電圧E1、E2の分極△E1、△E2は△E1>△E2となる。ここで電流密度I1>I2のとき電流iが等しいとき、電極面積S1、S2にはS1<S2が成り立つ。つまり、電極面積を大きくすることで同じ電流量における分極は小さくなる。即ち同じ負荷電流ならば電極面積が大きい方が電流密度は小さくなりアノード・カソード間の電圧の低下が小さくなる。以上のように、電極面積の拡大により回収装置の性能向上を図ることができた。
銅回収の最適化
上記実施例から、銅の回収における装置の最適の条件により銅の回収を行なった。表1に示す条件により、銅の回収を行なった。各条件におけるアノード・カソード間の負荷電流について電圧を測定した。結果を図23に示す。得られたアノード・カソード間の負荷電流と電圧の関係から、最適条件における抵抗を求めたところ、0.65Ωであった。
実施例1の金属回収装置と比べ、MEA面積、モデル廃液層容量が10倍となっている大型金属回収装置を作製した。この大型装置を用いてスケールアップの際のプロセスへの影響について検討を行った。MEAの触媒面積250cm2、中間液はHCl(1M,70ml)、モデル廃液はHCl+CuSO4(1M,1000ml)、カソードの金属回収電極はCu板(15×7cm)をCu線(口径0.40mm)でリードを取って用いた。使用した試料、薬品及び装置の詳細は実施例1と同様にして、3〜9.8Aの負荷電流で銅の回収を行い、アノード・カソード間の電圧の経時変化を測定した。結果を、実施例2、10の結果と共に、図24に示す。結果から、大型セルの性能は実施例2の性能とほぼ同じであることが分かった。
本発明の廃液に含有される有用金属の回収装置を示す概略構成図である。 本発明の廃液に含有される有用金属の回収装置の要部を示す構成図である。 本発明の廃液に含有される有用金属の回収装置の機能を示す説明図である。 本発明の廃液に含有される有用金属の回収装置の機能を示す説明図である。 本発明の廃液に含有される有用金属の回収装置の機能を示す説明図である。 本発明の廃液に含有される有用金属の回収装置の機能を示す説明図である。 本発明の廃液に含有される有用金属の回収装置の機能を示す説明図である。 本発明の廃液に含有される有用金属の回収装置を用いて金属の回収を行なったときの金属の析出状態を示す説明図である。 本発明の廃液に含有される有用金属の回収装置の機能を示す説明図である。 本発明の廃液に含有される有用金属の回収装置の機能を示す説明図である。 本発明の廃液に含有される有用金属の回収装置を用いて金属の回収を行なったときの金属の析出状態を示す説明図である。 本発明の廃液に含有される有用金属の回収装置の機能を示す説明図である。 本発明の廃液に含有される有用金属の回収装置の一実施例を示す分解構成図である。 (a)本発明の廃液に含有される有用金属の回収装置の一実施例の機能を示す説明図である。(b)本発明の廃液に含有される有用金属の回収装置の他の実施例の機能を示す説明図である。 (a)本発明の廃液に含有される有用金属の回収装置の一実施例の機能を示す説明図である。(b)本発明の廃液に含有される有用金属の回収装置の他の実施例の機能を示す説明図である。 本発明の廃液に含有される有用金属の回収装置の一実施例の機能を示す説明図である。 本発明の廃液に含有される有用金属の回収装置の一実施例の機能を示す説明図である。 本発明の廃液に含有される有用金属の回収装置の一実施例の機能を示す説明図である。 本発明の廃液に含有される有用金属の回収装置の一実施例の機能を示す説明図である。 本発明の廃液に含有される有用金属の回収装置の一実施例の機能を示す説明図である。 本発明の廃液に含有される有用金属の回収装置の一実施例の機能を示す説明図である。 本発明の廃液に含有される有用金属の回収装置の一実施例の機能を示す説明図である。 本発明の廃液に含有される有用金属の回収装置の一実施例の機能を示す説明図である。 本発明の廃液に含有される有用金属の回収装置の一実施例の機能を示す説明図である。 従来の金属の回収装置を示す図である。

Claims (7)

  1. 水素が供給されるアノード室と、カチオン交換膜を利用した膜−電極接合体(アノード)を介してアノード室と隔離され、カチオン交換膜側に設けられた中間液槽と、アニオン交換膜を介して中間液槽と隔離され、金属イオン含有液中に配設されたカソードを有するカソード室とを順次備えた金属回収装置を用い、アノード室に水素を供給し、電池反応によりあるいはアノード−カソード間に通電することにより、アノードで生成した水素イオンをカチオン交換膜を透過させて中間液槽に移動させると共に、カソード室内の金属イオン含有液中の金属イオンの対イオンをアニオン交換膜を透過させて中間液槽に移動させながら、カソードで金属のイオンの還元に基づき金属を電析させることを特徴とする廃液に含有される有用金属の回収方法。
  2. カチオン交換膜を利用した膜−電極接合体(アノード)として、燃料電池用触媒を高分子電解質溶液に混合した混合液を、カチオン交換膜に塗布して形成される膜−電極接合体を用いることを特徴とする請求項1記載の廃液に含有される有用金属の回収方法。
  3. カチオン交換膜として、パーフルオロスルホン酸/ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)共重合体から成膜したカチオン交換膜を用いることを特徴とする請求項2記載の廃液に含有される有用金属の回収方法。
  4. 高分子電解質として、パーフルオロスルホン酸/ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)共重合体を用いることを特徴とする請求項2記載の金属の回収方法。
  5. 中間液槽に酸性溶液を収納し、該酸性溶液の溶液抵抗を低減することを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の廃液に含有される有用金属の回収方法。
  6. 酸性溶液の溶液抵抗を低減する方法が、酸性溶液の液温を上げる方法、酸性溶液の濃度を高くする方法、又は酸性溶液層の厚さを小さくする方法であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の廃液に含有される有用金属の回収方法。
  7. 廃液中に含有される有用金属のイオンが、銅イオンであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の廃液に含有される有用金属の回収方法。


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