JP4708863B2 - エアレイド不織布用短繊維の製造方法 - Google Patents
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かかるエアレイド不織布用短繊維においては、空気開繊性が重要であり、得られるエアレイド不織布の品位を左右する。例えば、本発明者の検討によれば、特許文献3に記載されているポリエチレンテレフタレート/高密度ポリエチレン芯鞘型複合繊維やポリプロピレン/高密度ポリエチレン芯鞘型複合繊維のような繊維表面に高密度ポリエチレンが露出しているエアレイド不織布用短繊維は、空気開繊性が向上しており、形成されたエアレイドウェブ中に、数十本の繊維が平行に揃って束となった未開繊束や、繊維が絡合してできる毛玉状欠点が生成され難く、従来よりもウェブ品位が改善された不織布が得ることができる。
ところが、本発明者の検討によれば、前述のようなオレフィン系エアレイド不織布用短繊維であっても、テストプラントのような小規模の製綿装置では良好であっても、操業機の大規模製綿装置では開繊性が劣化し、未開繊束が多くなる傾向にあることを発見した。
製綿装置の規模が大きくなるにつれて、トウが大きくなり、コンベア上の乾燥すべきトウ密度が格段に大きくなるため、熱風の通過性が著しく悪くなり、結果として開繊性不良に繋がると考えられる。このような事例の報告は、これまでなされていない。
最初に、一般的な短繊維の延伸工程について、図1に示す。
まず、複数の錘から紡糸される未延伸糸を一つに束ねてサブトウとして、原トウ缶1(またはケンス)に収納する。押し込み型クリンパー7に供給するために、複数の原トウ缶1を並べて、サブトウ2をさらに太いトウ3とし、ローラー4、温水バス5から構成された延伸機に供給する。トウを温水バス5で温水中、あるいは、蒸気で加熱延伸(樹脂によっては冷延伸)した後、仕上げ油剤エマルジョンバス6で仕上油剤のエマルジョンを付与して、図示されるような押し込み型クリンパー7に供給される。
また、エマルジョン付与前の乾燥ローラーによる水分除去やクリンパー前の乾燥やスチーム付与といった方法で付着率を下げる方法もあるが、バインダー繊維のような高い温度で融着する繊維や油剤の安定性、目標捲縮性能による制約などで必ずしも全ての繊維に適用できる技術ではない。
図3(タイプA)は、クリンパー7から出た捲縮トウ9を、コンベア10上に設置した円筒型のエジェクター18を通過させて、空気を含ませ、かつテーパー状の管内で延伸トウの嵩を増やしながら該トウを開繊する方法である。すなわち、図3(a)に示すように、クリンパー7で捲縮を付与された捲縮トウ9はトウ引き取りギアで把持されたのち、円筒型エジェクター18で空気開繊され、開繊トウ19としてコンベア10に載置される。図3(b)は、円筒型エジェクター18の断面構成図であり、20はトウ吸引口、21は圧空取り入れ口、22はトウ排出口である。
一般に、ポリオレフィン系樹脂からなる繊維が良好な開繊性を示すが、これらに比べて開繊性の劣るポリエステル系樹脂についても、本発明の製造方法を用いることで開繊性のレベルを向上することが可能である。
また、樹脂中には、必要に応じて、各種の添加剤、例えば、艶消し剤、熱安定剤、消泡剤、整色剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、着色顔料などが含有されていてもよい。中実繊維であっても中空繊維であってもよい。なお、繊維断面形状も丸断面に限定されることはなく、楕円断面、3〜8葉断面などの多葉断面、3〜8角形などの多角形断面など異形断面でもよい。
なお、実施例における各項目は次の方法で測定した。
(1)極限粘度(〔η〕)
オルトクロロフェノールを溶媒として、温度35℃で測定した。
(2)メルトフローレイト(MFR)
JIS K7210記載の方法に従った。
(3)融点(Tm)
JIS K7121記載の示査走査熱量測定(DSC)に従って得たDSC曲線における吸熱ピーク温度として定義した。
JIS L 1015 7.5.1 A法に記載の方法により測定した。
(5)繊維長
JIS L 1015 7.4.1 C法に記載の方法により測定した。
(6)捲縮数
所定の繊維長に切断前の延伸トウより単糸を取り、JIS L 1015 7.12に記載の方法により測定した。
所定繊維重量に対し、繊維から30℃のメタノールによって浴比1:20で10分間抽出した残査の重量を測定し、所定繊維重量で除した値を用いた。
(8)エマルジョン付着率
ドライヤーに入る直前の延伸トウを適量サンプリングし、直ちに秤量ビン(重量:Wo)に入れ、密閉し、重量(Wa)を測定する。トウサンプルを秤量ビンより取り出し、120℃の熱風循環型乾燥機に入れ、約60分乾燥した後、予め乾燥した同一の秤量ビンに入れ、重量(Wb)を測定する。これを以下の式で算出し、エマルジョン付着率(EPU)とする。
EPU(重量%)=〔(Wa−Wb)/(Wb−Wo)〕×100
Dan−Webforming社のフォーミングドラムユニット(600mm幅、フォーミングドラムの孔形状2.1mm×24.5mmの長方形、開孔率38%)を用いてドラム周速度200m/min、ニードルロール回転数900rpm、ウェブ搬送速度20m/分の条件で、短繊維100%からなる目付17g/m2のエアレイドウェブを採取した。ウェブから1g分を10箇所ランダムに採取し、これに含まれる、繊維が平行に凝集した未開繊束で長径が1mm以上であるものと直径5mm以上の毛玉状欠点を数えて、1g当りの平均個数を算出し、欠点数が10個以下を合格とした。
○:良好(未開繊束が10個以下で、一見では未開繊束が意識されない。)
△:やや不良(未開繊束が11〜30個の範囲で、少数の未開繊束があることが意識される。)
×:不良(未開繊束が多量に感じられ、著しく外観品位を損なっている。)
MFRが20g/10分、融点(Tm)が131℃の高密度ポリエチレン(HDPE)と、120℃で16時間真空乾燥した固有粘度[η]が0.61dL/g、Tmが256℃のポリエチレンテレフタレート(PET)を各々別のエクストルーダーで溶融し、各々250℃と290℃の溶融ポリマーとして、前者を鞘成分A、後者を芯成分Bとし、複合比率A:B=50:50(重量比)として、孔径0.30mmの丸孔吐出孔を1,032孔有する芯鞘型複合紡糸口金を用いて、複合化して溶融吐出させた。この際、口金温度は285℃、吐出量は757g/分であった。さらに、吐出ポリマーを口金下40mmの位置で25℃の冷却風で空冷し1150m/分で巻き取り、未延伸糸を得た。
得られた短繊維の繊度は2.4デシテックス、油剤付着率は0.25重量%、捲縮数11個/25mmであった。この短繊維からなるエアレイドウェブの未開繊束数は2個/gであり、良好であった。
本例の実施条件と得られた結果の集約を表1に示す。
図3に示す開繊装置Bを取り付け、圧空流入量の調整により、乾燥前の延伸トウのエマルジョン付着量を4重量%とした他は、実施例1と同様の条件とした。その結果、エアレイドウェブの未開繊束数は1個/gであり、良好であった。
本例の実施条件と得られた結果の集約を表1に示す。
図3に示す開繊装置Cを取り付け、圧空流入量の調整により、乾燥前の延伸トウのエマルジョン付着量を8重量%とした他は実施例1と同様の条件とした。その結果、エアレイドウェブの未開繊束数は4個/gであり、良好であった。
本例の実施条件と得られた結果の集約を表1に示す。
乾燥前の延伸トウ開繊装置を設けない以外は、実施例1と同様の条件とした。その結果、乾燥前の延伸トウのエマルジョン付着量は12重量%であり、エアレイドウェブの未開繊束数は50個/gを超え、不良であった。
本例の実施条件と得られた結果の集約を表1に示す。
乾燥前の延伸トウ開繊装置を設けず、延伸速度を75m/minとして乾燥トウ密度を210kg/m3に下げた以外は、実施例1と同様の条件とした。その結果、乾燥前の延伸トウのエマルジョン付着量は12重量%であり、エアレイドウェブの未開繊束数は12個/gで、やや不良であった。
本例の実施条件と得られた結果の集約を表1に示す。
実施例1と同じ紡糸未延伸糸を用いて、小規模延伸機で開繊装置を設けずに試作を行った。クリンパー幅38mm、延伸トウ繊度15,000テックス、延伸速度70m/min以外の条件は実施例1と同様の条件で、このときのドライヤーに供するコンベア上のトウ密度は176kg/m3、エマルジョン付着率は12重量%であった。得られた短繊維のエアレイドウェブの未開繊束数は0個/gで、良好であった。
本例の実施条件と得られた結果の集約を表1に示す。
2 :サブトウ(未延伸糸)
3 :トウ(未延伸糸)
4 :ローラー
5 :温水バス
6 :仕上油剤エマルジョンバス
7 :クリンパー
8 :シュート
9 :捲縮トウ
10:コンベア
11:熱風ドライヤー
12:未捲縮トウ(延伸糸)
13:ニップローラー
14:ドクターブレイド(ボックスフレーム)
15:フラッパー
16:圧空シリンダー
17:トウ引き取り用ギア
18:円筒型エジェクター
19:開繊トウ
20:トウ吸引口
21:圧空取入れ口
22:トウ排出口
23:矩形型エジェクター
24:圧空噴出管
25:圧空取り入れ口
26:圧空噴出ノズル
Claims (2)
- 延伸トウに油剤エマルジョンを付与した後に乾燥する工程を有するエアレイド不織布用短繊維の製造方法において、油剤エマルジョン付与した後から乾燥する工程までの間に、延伸トウを空気開繊し、乾燥前の延伸トウのトウ水分率を8重量%以下とすることを特徴とするエアレイド不織布用短繊維の製造方法。
- 延伸トウに、油剤エマルジョンを付与した後、延伸トウをクリンパーに供給して捲縮を付与し、しかる後、空気開繊する請求項1記載のエアレイド不織布用短繊維の製造方法。
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