JP4703126B2 - 水素貯蔵材料の製造装置および水素貯蔵材料の製造方法 - Google Patents

水素貯蔵材料の製造装置および水素貯蔵材料の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、水素貯蔵率の高い水素貯蔵材料を製造するための水素貯蔵材料の製造装置およびその製造方法に関する。
化石燃料の枯渇や地球環境問題から、化石燃料に替わる2次エネルギーとして自然エネルギーや再生可能エネルギーが有望視されている。特に、水素ガスは、エネルギーサイクルの中で重要な位置を占める物質として期待されている。
しかしながら、水素を燃料とする最大の問題は、燃料である水素の貯蔵にある。現在は、水素を気体として貯蔵する手段としては、高圧ガスボンベによる水素の貯蔵があるが、水素貯蔵量を増加させるためには、水素圧力を高めていく必要があり、容器の重量が重くなるとともに、バルブなどの耐圧性や信頼性に問題がある。また、水素を液体として貯蔵する手段としては、液体水素を断熱容器に貯蔵する方法がある。しかし、液体水素は、沸点が非常に低く、液化のために多くのエネルギーを要するとともに、断熱容器への液体水素の供給時に蒸発による損失が10〜20%、断熱をしても8%の水素が蒸発すると言われており、経済的に問題がある。
最近、これらの問題を解決する水素貯蔵材料用原料としてカーボンナノチューブ、活性炭等の炭素系材料が注目されており、盛んに研究が行われている。例えば、本発明者は先に、高い水素貯蔵能を有する水素貯蔵材料として水素雰囲気下で機械的粉砕してナノ構造化されたグラファイトを提案している(特許文献1)。このような微細な粉砕には高エネルギーが必要なことから、この文献では、高エネルギーで機械的粉砕を行うことができる遊星型ボールミルを用いることが記載されている。
しかしながら、上記特許文献1で用いている遊星型ボールミルは、高エネルギーを被粉砕物に与えることは可能であるものの、重力式であるため大型化には限界があり、量産には不向きである。また、遊星型ボールミルによる粉砕処理は乾式粉砕であるために、粉砕が進んで被粉砕物が微細粒化すると、粒子の凝集が起こりやすくなり、これによって粉砕が進み難くなるという問題がある。さらに、粉砕処理後の水素貯蔵材料を別の容器に移さなければならず、しかもこの作業は水素貯蔵材料が空気等に触れないように不活性雰囲気で行う必要がある等、粉砕処理後の水素貯蔵材料の取り扱いが不便である。
特開2001−302224号公報
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、量産性に優れ、被粉砕物の微細粒化が容易であり、しかも粉砕処理後の水素貯蔵材料の取り扱いを容易とした水素貯蔵材料の製造装置および製造方法を提供することを目的とする。
本発明の第1の観点によれば、その中で水素貯蔵材料用原料を粉砕するための、横向きの姿勢で配置される円筒状の粉砕容器と、
前記粉砕容器の一方の端部に設けられ、前記粉砕容器内を液密に維持したまま、水素貯蔵材料用原料と所定の溶剤からなるスラリーを前記粉砕容器内に導入するスラリー供給部と、
前記粉砕容器の他方の端部近傍の上面に設けられ、前記粉砕容器内を液密に維持したまま、前記粉砕容器内のスラリーを排出する第1のスラリー排出部と、
前記粉砕容器の他方の端部近傍の下面に設けられ、前記粉砕容器内を液密に維持したまま、前記粉砕容器内のスラリーを排出する第2のスラリー排出部と、
前記第2のスラリー排出部から排出されたスラリーを前記スラリー供給部へ導き循環させる循環装置と、
前記粉砕容器内を減圧雰囲気または不活性雰囲気にする手段と、
前記粉砕容器に充填された粉砕ボールと、
前記粉砕ボールを前記粉砕容器内で掻き回すインペラを有する攪拌装置と、
を具備し、
前記スラリー供給部から連続的に前記粉砕容器に前記スラリーが供給されて減圧雰囲気または不活性雰囲気の前記粉砕容器内で前記スラリー中の水素貯蔵材料用原料が粉砕され、
前記第2のスラリー排出部から排出されたスラリーが前記循環装置により循環されるとともに、前記第1のスラリー排出部から粉砕処理後のスラリーが連続的に排出されることを特徴とする水素貯蔵材料の製造装置、が提供される。
上記水素貯蔵材料の製造装置において、前記スラリーを調整するスラリー調整装置と、前記スラリー調整装置において調整されたスラリーを前記スラリー供給部を通して前記粉砕容器内に連続的に供給するスラリー供給機構と、をさらに具備することが好まし
この場合において、さらに、前記スラリー排出部から排出されるスラリーを加熱して前記スラリーに含まれる溶剤を蒸発させることにより連続的に乾燥した水素貯蔵材料を製造するスラリー乾燥装置と、前記スラリー乾燥装置により乾燥処理された水素貯蔵材料を貯蔵する水素貯蔵材料貯蔵容器と、をさらに具備する構成とすることが好ましい。これにより水素貯蔵材料の貯蔵、運搬等、粉砕処理後の水素貯蔵材料の取り扱いが容易となる。
または、前記スラリー排出部から排出されるスラリーを貯蔵するスラリー貯蔵容器と、前記スラリー貯蔵容器に貯蔵されたスラリーから溶剤を蒸発させるためのヒータと、をさらに具備する構成とすることも好ましい。これによっても、粉砕処理後の水素貯蔵材料の取り扱いが容易となる。
本発明の第2の観点によれば、その中で水素貯蔵材料用原料を粉砕するための、横向きの姿勢で配置される円筒状の粉砕容器と、前記粉砕容器の一方の端部に設けられ、前記粉砕容器内を液密に維持したまま、水素貯蔵材料用原料と所定の溶剤からなるスラリーを前記粉砕容器内に導入するスラリー供給部と、前記粉砕容器の他方の端部近傍の上面に設けられ、前記粉砕容器内を液密に維持したまま、前記粉砕容器内のスラリーを排出する第1のスラリー排出部と、前記粉砕容器の他方の端部近傍の下面に設けられ、前記粉砕容器内を液密に維持したまま、前記粉砕容器内のスラリーを排出する第2のスラリー排出部と、前記第2のスラリー排出部から排出されたスラリーを前記スラリー供給部へ導き循環させる循環装置と、前記粉砕容器内を減圧雰囲気または不活性雰囲気にする手段と、前記粉砕容器に充填された粉砕ボールと、前記粉砕ボールを前記粉砕容器内で掻き回すインペラを有する攪拌装置と、を具備する製造装置を用いて水素貯蔵材料を製造する水素貯蔵材料の製造方法であって
前記粉砕容器内を減圧雰囲気または不活性雰囲気として、前記スラリー供給部から連続的に前記粉砕容器に前記スラリーを供給し、前記粉砕容器内で、インペラを回転させることによる前記粉砕ボールどうしの衝突により前記スラリー中の水素貯蔵材料用原料を機械的に粉砕し
前記第2のスラリー排出部から排出されたスラリーを前記循環装置により循環させるとともに、前記第1のスラリー排出部から、粉砕処理によって水素貯蔵材料用原料から得られた水素貯蔵材料を含む処理済みのスラリーを連続的に排出することを特徴とする水素貯蔵材料の製造方法、が提供される。
上記水素貯蔵材料の製造方法において、前記粉砕容器から排出されるスラリーを加熱して前記スラリーに含まれる溶剤を蒸発させることにより連続的に水素貯蔵材料を乾燥させ、こうして乾燥処理された水素貯蔵材料を所定の貯蔵容器に貯蔵すると、水素貯蔵材料の取り扱いが容易となり、好ましい。
または、前記粉砕容器から排出されるスラリーを所定のスラリー貯蔵容器に導入した後に、前記スラリー貯蔵容器内のスラリーを加熱して前記スラリーに含まれる溶剤を蒸発させることにより、前記スラリー貯蔵容器内に乾燥した水素貯蔵材料を貯蔵する方法も、水素貯蔵材料の取り扱いが容易となり、好ましい。
さらに、所定の分離装置を用いて前記粉砕容器から排出されるスラリーから水素貯蔵材料を分離した後に、この分離された水素貯蔵材料を前記スラリーに含まれる溶剤とは異なる別の溶剤で洗浄し、さらに、前記別の溶剤を蒸発させることにより、乾燥した水素貯蔵材料を得る方法を用いることもできる。
本発明によれば、湿式粉砕により被粉砕物を粉砕するために、粉砕された粒子の凝集が抑制される。これによって微細粒化を効率よく進めることができ、微細で水素貯蔵率の高い水素貯蔵材料を得ることができる。また、粉砕の連続処理が容易であり、これによって高い量産性が得られる。さらに、粉砕処理後の水素貯蔵材料を所定の容器等に貯蔵することにより、水素貯蔵材料の貯蔵、運搬等の取り扱いが容易となる。
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明に係る水素貯蔵材料の製造装置10の概略構成を示す説明図である。この製造装置10は、その中で水素貯蔵材料用原料(以下「原料」という)を粉砕するための円筒状の粉砕容器11と、粉砕容器11内を液密に維持したまま、原料と所定の溶剤からなるスラリーを粉砕容器11内に導入するためのスラリー供給口12と、粉砕容器11内を液密に維持したまま、粉砕容器11内のスラリーを排出するための第1スラリー排出口13a、第2スラリー排出口13bと、粉砕容器11に所定量充填された粉砕ボール14と、粉砕ボール14を粉砕容器11内で掻き回す攪拌装置15と、粉砕容器11内のスラリーを循環させるための循環ポンプ16と、粉砕容器11内のガス置換を行うための吸排気口17と、を備えている。
原料はスラリーの形態で粉砕容器11に供給される。この原料としては、グラファイトやカーボンナノチューブ等の炭素質材料や、無機系ハイドライド(LiBH、NaBH等のボロハイドライドおよびNaAlH、NaAlHおよびLiAlH等のアラネート)、金属水素化物(Li、Be、Na、K、Ca等の水素化物)と金属アミド(Li、Be、Na、K、Ca等のアミド)の混合物、金属水素化物と炭素質材料との混合物等が挙げられる。水素吸蔵処理が必要な材料では、原料に水素を貯蔵させておいてもよいが、粉砕処理して得られた粉体に対して、さらに水素吸蔵処理を行うことが好ましい。
原料には、水素発生反応を促進させる触媒機能物質を添加することも好ましい。このような触媒機能物質としては、B、C、Mn、Fe、Co、Ni、Pt、Pd、Rh、Li、Na、Mg、K、Ir、Nd、La、Ca、V、Ti、Cr、Cu、Zn、Al、Si、Ru、Mo、W、Nb、Ta、Zr、Hf、Agから選ばれた1種または2種以上の金属またはその化合物またはその合金、あるいは水素貯蔵合金が挙げられる。
スラリーを作製するために用いられる溶剤としては、ジクロロペンタフルオロプロパン(比重1.55、融点−112℃、沸点54℃)、n−ヘキサン(比重0.66、融点−95.3℃、沸点68.7℃)、ペンタン(比重0.63、融点−129.7℃、沸点36.1℃)、IPA(イソプロピルアルコール:比重0.79、融点−90℃、沸点83℃)、MEK(メチルエチルケトン;比重0.81、融点−83℃、沸点80℃)、トルエン(比重0.87、融点−95℃、沸点111℃)等が挙げられる。また、シリコーンオイルを用いることもできる。
円筒状の粉砕容器11は、その長手方向を水平にして配置されており、その一方の端面側にスラリー供給口12が設けられ、他端側の上部に第1スラリー排出部13aが、他端側の下部に第2スラリー排出口13bがそれぞれ設けられている。スラリー供給口12に設けられた配管にはバルブ25が設けられている。また、第1スラリー排出口13aに設けられた配管には逆流防止弁26が設けられており、第1スラリー排出口13aから粉砕容器11内に空気が流れ込まないようになっている。
製造装置10では、後述するように、連続的に水素貯蔵材料を製造することができる。第1スラリー排出口13aは、このような連続処理の際のスラリー排出に用いられる。
第2スラリー排出口13bに取り付けられた配管には切替バルブ18が取り付けられている。この切替バルブ18を操作することにより、粉砕容器11に一定量のスラリーを導入して所定時間の粉砕処理を行った後、処理されたスラリーを採取することができるようになっている。また、切替バルブ18を操作することにより、第2スラリー排出口13bから排出されたスラリーを循環ポンプ16へ送ることができるようになっている。
粉砕ボール14は、粉砕容器11の一端に設けられた密閉可能なボール投入口28を通して、粉砕容器11内に所定量が充填される。粉砕ボール14としては、粉砕時の摩耗によりスラリー中に混在することとなる成分が水素貯蔵材料の水素貯蔵/放出特性に悪影響を与えない材料からなるものが好適に用いられ、例えば、ジルコニアが好適である。
攪拌装置15は、粉砕容器11の一端粉砕容器11の長手方向に一致するように配置された枢軸21と、枢軸21の長手方向に垂直に所定間隔で複数設けられたインペラ22と、枢軸21を回転させるモータ23と、を備えている。モータ23により枢軸21を回転させると、インペラ22により粉砕ボール14が粉砕容器11内で掻き回され、このときの粉砕ボール14どうしの衝突、摩擦によりスラリー中の原料が粉砕される。
循環ポンプ16は、切替バルブ18を通して第2スラリー排出口13bから一定流量をスラリーを取り出し、スラリー供給口12へ送る。このようにスラリーの一部を循環させながら粉砕処理を行うことにより、原料を均一に粉砕することができる。
吸排気口17に設けられた配管には切替バルブ19が設けられており、この切替バルブ19を操作することにより、粉砕容器11内を減圧することができ、また、粉砕容器11内を所定のガス(例えば、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス)で満たすことができるようになっている。なお、第2スラリー排出口13bからスラリーを回収するために排出する際に、粉砕容器11内に不活性ガスを供給することにより、スラリーの排出を容易に行うことができる。
次に、製造装置10によるバッチ式処理での水素貯蔵材料の製造工程について説明する。最初に、粉砕容器11内のガス(空気)を除去するために、吸排気口17および切替バルブ19を通して粉砕容器11内を減圧する。この状態で、粉砕容器11内にスラリー供給口12を通して予め調整された一定量のスラリーを供給してもよいし、または、粉砕容器11内に吸排気口17および切替バルブ19を通して不活性ガスを供給した後に、スラリー供給口12を通して一定量のスラリーを供給してもよい。後者の場合、粉砕容器11内の不活性ガスは、粉砕容器11内にスラリーが供給されるにしたがって第1スラリー排出口13aから排出される。
次いで、攪拌装置15を駆動して、原料の粉砕処理を所定時間行う。このとき、循環ポンプ16を動作させて、粉砕容器11内のスラリーを一定の流量で循環させる。所定時間の粉砕処理が終了したら、第2スラリー排出口13bを通してスラリーを空気に触れないように、例えば窒素ガスが充填された容器、真空減圧された容器等に回収する。スラリーを粉砕容器11から排出する際には、吸排気口17を通して粉砕容器11内に不活性ガスを供給する。これによりスラリーの排出をスムーズに行うことができ、しかも、次のバッチ処理を行うための準備も整えられる。
容器に回収したスラリーは、例えば、不活性ガス気流中で、スラリーを構成する溶剤の沸点以上、水素貯蔵材料が実質的に水素を多く放出し始める温度以下、で熱処理する。これによってスラリーから溶剤が蒸発し、乾燥した水素貯蔵材料が得られる。なお、不活性ガス気流を水冷トラップにフローさせることにより溶媒を回収するとともに、これにより乾燥した不活性ガスを再びスラリーの熱処理に供することができる。
スラリーに用いられている溶剤の沸点が高いために、このような熱処理を行うことができない場合には、フィルターや遠心分離器等を用いて、スラリーを溶剤と水素貯蔵材料に分離し、その後、水素貯蔵材料を沸点の低い溶剤で洗浄処理し、さらにこの低沸点溶剤を蒸発させる。これにより、乾燥した水素貯蔵材料を得ることができる。
次に、水素貯蔵材料を連続処理により製造する製造装置について説明する。図2は、製造装置30の概略構成を示す説明図である。この製造装置30は、先に説明した製造装置10を中心に、これに、原料と所定の溶剤からなるスラリーを調整するスラリー調整装置31と、スラリー調整装置31において調整されたスラリーをスラリー供給口12を通して粉砕容器11内に連続的に供給するスラリー供給ポンプ32と、第1スラリー排出口13aから排出されるスラリーを加熱してスラリーに含まれる溶剤を蒸発させるスラリー乾燥装置33と、スラリー乾燥装置33により乾燥処理された水素貯蔵材料を貯蔵する貯蔵容器34と、が加えられた構成を有する。
製造装置10の構成については先に説明した通りであるから、ここでの説明は省略する。
スラリー調整装置31は、原料と所定の溶剤とを、大まかに均一に混合させることができればよく、例えば、回転羽根を用いたミキサー等が好適に用いられる。これは、粉砕容器11内での粉砕処理によってスラリーが十分に攪拌されるためである。スラリー調整装置31においてスラリーを調整する容器の部分は、スラリーが空気に触れないように、不活性ガス雰囲気に保持される。スラリー調整装置31には、連続的に一定量の原料および溶剤が追加投入される構成とすることも好ましい。
粉砕容器11内がスラリーで満たされた状態で、さらにスラリー供給ポンプ32によりスラリー調整装置31から粉砕容器11にスラリーを一定流量で供給すると、その供給圧力に応じて、一定量の粉砕処理済みのスラリーが第1スラリー排出口13aから排出される。
スラリー乾燥装置33としては、例えば、粉砕容器11から第1スラリー排出口13aを通して排出されたスラリーを、不活性ガス雰囲気で所定の温度に加熱保持されたゾーン内に滴下または噴霧することにより、スラリーの溶剤を蒸発させるとともに乾燥した水素貯蔵材料を採集させる構造のものを用いることができる。
貯蔵容器34は不活性ガス雰囲気に保持されており、スラリー乾燥装置33によって乾燥処理された水素貯蔵材料を回収する。スラリー乾燥装置33と貯蔵容器34とは、図示しない脱着機構により、それぞれに空気が入り込まないように脱着自在であり、水素貯蔵材料の移送は貯蔵容器34の運搬により行うことができるようになっている。
次に、製造装置30による連続処理での水素貯蔵材料の製造工程について説明する。最初に、スラリー調整装置31に原料および溶剤を投入し、スラリーを調整する。また先に説明したように、粉砕容器11内のガス(空気)を除去するために粉砕容器11内を減圧した後に、粉砕容器11内に不活性ガスを供給する。次に、スラリー供給ポンプ32を動作させて、スラリー調整装置31から粉砕容器11にスラリーを供給する。例えば、粉砕容器11内に所定量のスラリーが供給された時点で、一旦、スラリーの供給を停止した後、攪拌装置15を駆動して、原料の粉砕処理を開始する。このとき、循環ポンプ16を動作させて、粉砕容器11内のスラリーを一定の流量で循環させる。
所定時間経過後、スラリー調整装置31からスラリーを一定流量で粉砕容器11へ連続して供給する。このスラリーの連続供給によって粉砕容器11から第1スラリー排出口13aを通して粉砕処理を終えたスラリーが、スラリー乾燥装置33に向けて一定流量で排出される。スラリー乾燥装置33では、粉砕容器11から送られてきたスラリーから溶剤を蒸発させる。こうして、得られる乾燥した水素貯蔵材料は、貯蔵容器34に回収される。
所定量の水素貯蔵材料が得られたら、または、所定量のスラリーを粉砕容器11に供給し終えたら、粉砕容器11へのスラリー供給を停止するとともに、攪拌装置15および循環ポンプ16の動作を停止させる。粉砕容器11内に残ったスラリーは、第2スラリー排出口13bを通してスラリーを空気に触れないように、所定の容器に回収してもよいし、製造装置30の運転を再開するまでの時間間隔が短い場合には、そのまま粉砕容器11内に滞留させておいてもよい。
製造装置30における水素貯蔵材料の回収方法は図2に示した形態に限定されるものではない。図3に別の製造装置30′の概略構成を示す説明図を示す。製造装置30′では、粉砕容器11から排出される粉砕処理済みのスラリーの取り扱い方法が、先に説明した製造装置30と異なるので、以下、この点について説明する。
製造装置30′では、粉砕容器11から第1スラリー排出口13aを通して排出されるスラリーを回収するスラリー貯蔵容器35を備えている。このスラリー貯蔵容器35の内部にはヒータ36が設けられている。また、スラリー貯蔵容器35の上部にはガス排出口39が設けられ、ガス排出口39に設けられた配管には、開閉バルブ38が取り付けられている。
このスラリー貯蔵容器35は、粉砕容器11とスラリー貯蔵容器35とを結ぶ配管に対して、図示しない脱着機構により脱着自在となっている。スラリー貯蔵容器35へのスラリーの導入は、スラリー貯蔵容器35内に空気が入らないように、開閉バルブ38を開いてスラリー貯蔵容器35内の不活性ガスを排出しながら行うことができる。
ヒータ36は、スラリー貯蔵容器35に貯蔵されたスラリーを加熱してスラリーに用いられている溶剤を蒸発させるために用いられる。スラリー貯蔵容器35は、スラリーを導入するために設けられた開口部とガス排出口39の2つの開口部を備えているので、貯蔵されたスラリーを加熱する際に、スラリーを導入するために設けられた開口部を通してスラリー貯蔵容器35の底部に不活性ガスを導入し、ガス排出口39から排出させることで、乾燥処理を促進させることができる。
なお、ヒータ36は、水素貯蔵材料から水素ガスを放出させるための加熱処理に用いることもできる。一方、水素貯蔵材料からの水素ガス放出は、スラリー貯蔵容器35を所定の加熱装置37(例えば、電気炉)内に配置し、加熱することによって行ってもよい。また、ヒータ36が設けられていないスラリー貯蔵容器にスラリーを回収して、スラリー貯蔵容器全体を、恒温乾燥器等を用いて加熱することによって、スラリーの溶媒を蒸発させ、水素貯蔵材料を乾燥させることも可能である。
スラリーの溶剤蒸発処理が終了した後には、スラリー貯蔵容器35には乾燥した水素貯蔵材料が貯蔵されるため、水素貯蔵材料の移送はスラリー貯蔵容器35を運搬することによって行うことができる。
(実施例)
溶剤としてIPA(イソプロピルアルコール)3Lを混合機(タンクミキサー)に加え、固形分濃度が60%となるように、水素化リチウム(LiH;純度95%、シグマ・アルドリッチ社製)とリチウムアミド(LiNH;純度95%、シグマ・アルドリッチ社製)をモル比で1:1、これに三塩化チタン(TiCl;純度99.999%、シグマ・アルドリッチ社製)を全リチウム量の1mol%となるように計り取り、10分間混合を行いスラリーを調製した。
次に、このスラリーをアルゴンガス雰囲気中でビーズミル(製品名:アシザワ社製スターミルを使用,ビーズ径:2mm以下,ビーズ材質:ジルコニア,ビーズ充填量:80%,回転速度:周速10m/秒)に移し、ビーズミル中で60分間混合した。なお、本実施例で使用したビーズミルには、循環タンクミキサーが併設されており、スラリーはビーズミルと循環タンクとの間を循環する。
この粉砕・混合後のスラリーを大気に触れさせないようにアルゴン雰囲気の容器に取り出し、アルゴンガス気流中(グレードGAA(露点:−88.8℃、O:0.4ppm)、90℃で乾燥を行った。なお、アルゴンガス気流を水冷トラップにフローさせることで、溶媒を回収した。乾燥した水素貯蔵材料は、アルゴングローブボックス中で取り出し、後述する水素放出率の測定方法に基づいて、水素放出率を測定した。
(比較例)
水素化リチウムとリチウムアミドをモル比で1:1、これに三塩化チタンを全リチウム量の1mol%となるように配合し、全量で50gになるように計り取り、内容積500ccの高クロム鋼製ミル容器(真空排気バルブおよびガス導入バルブ付)に入れ、ミル容器内を真空排気した後、アルゴンガス(α2、6N(露点<−80℃,O:<0.1ppm)を1.0MPa導入した。粉砕・混合は、遊星型ボールミル装置(Fritsch社製P5)を用いて、公転数250r.p.mで60分間ミリングを行った。なお、粉砕ボールにはジルコニア製ボール(φ10mm)を120個使用した。
(水素放出量の測定)
高純度アルゴングローブボックス内で、実施例および比較例の試料をそれぞれ500mg計り取り、試料容器に移し替えた。真空排気した試料容器中の水素貯蔵材料を電気炉で室温〜250℃まで昇温速度10℃/分で加熱し、250℃で90分間保持した。なお、250℃保持中は、放出ガス圧が20kPa以下となるようにバッファ容器を用いてガス圧を調整した。各温度および250℃で採取したガスを20℃に冷却し、この放出ガスを配管を通じてガスクロマトグラフ(島津製作所製、GC9A、TCD検出器、カラム:Molecular Sieve 5A)に導入し、水素量を測定した。水素放出量としては、この水素量を加熱前の水素貯蔵材料の質量で除した値とした。
(試験結果)
図4に水素貯蔵材料の昇温時間および温度と水素貯蔵率との関係を示す。図4において、水素貯蔵率は累積値で示されており、実施例1の製造装置10を用いて製造した水素貯蔵材料は、比較例の遊星型ミルを用いて製造した水素貯蔵材料よりも高い水素貯蔵率を有することが確認された。
本発明によって得られた水素貯蔵材料は、燃料電池自動車用の水素貯蔵材料や水素ガスの貯蔵および輸送用媒体、水素ガスの分離精製用として好適である。
本発明に係る水素貯蔵材料の製造装置の概略構成を示す説明図。 本発明に係る水素貯蔵材料の別の製造装置の概略構成を示す説明図。 本発明に係る水素貯蔵材料のさらに別の製造装置の概略構成を示す説明図。 水素貯蔵材料の昇温時間および温度と水素貯蔵率との関係を示す説明図。
符号の説明
10・30・30′;製造装置
11;粉砕容器
12;スラリー供給口
13a;第1スラリー排出口
13b;第2スラリー排出口
14;粉砕ボール
15;攪拌装置
16;循環ポンプ
17;吸排気口
18・19;切替バルブ
21;枢軸
22;インペラ
23;モータ
25;バルブ
26;逆流防止弁
28;ボール投入口
31;スラリー調整装置
32;スラリー供給ポンプ
33;スラリー乾燥装置
34;貯蔵容器
35;スラリー貯蔵容器
36;ヒータ
37;加熱装置(電気炉)
38;開閉バルブ
39;ガス排出口

Claims (8)

  1. その中で水素貯蔵材料用原料を粉砕するための、横向きの姿勢で配置される円筒状の粉砕容器と、
    前記粉砕容器の一方の端部に設けられ、前記粉砕容器内を液密に維持したまま、水素貯蔵材料用原料と所定の溶剤からなるスラリーを前記粉砕容器内に導入するスラリー供給部と、
    前記粉砕容器の他方の端部近傍の上面に設けられ、前記粉砕容器内を液密に維持したまま、前記粉砕容器内のスラリーを排出する第1のスラリー排出部と、
    前記粉砕容器の他方の端部近傍の下面に設けられ、前記粉砕容器内を液密に維持したまま、前記粉砕容器内のスラリーを排出する第2のスラリー排出部と、
    前記第2のスラリー排出部から排出されたスラリーを前記スラリー供給部へ導き循環させる循環装置と、
    前記粉砕容器内を減圧雰囲気または不活性雰囲気にする手段と、
    前記粉砕容器に充填された粉砕ボールと、
    前記粉砕ボールを前記粉砕容器内で掻き回すインペラを有する攪拌装置と、
    を具備し、
    前記スラリー供給部から連続的に前記粉砕容器に前記スラリーが供給されて減圧雰囲気または不活性雰囲気の前記粉砕容器内で前記スラリー中の水素貯蔵材料用原料が粉砕され、
    前記第2のスラリー排出部から排出されたスラリーが前記循環装置により循環されるとともに、前記第1のスラリー排出部から粉砕処理後のスラリーが連続的に排出されることを特徴とする水素貯蔵材料の製造装置。
  2. 前記スラリーを調整するスラリー調整装置と、
    前記スラリー調整装置において調整されたスラリーを前記スラリー供給部を通して前記粉砕容器内に連続的に供給するスラリー供給機構と、
    をさらに具備することを特徴とする請求項に記載の水素貯蔵材料の製造装置。
  3. 前記スラリー排出部から排出されるスラリーを加熱して前記スラリーに含まれる溶剤を蒸発させることにより連続的に乾燥した水素貯蔵材料を製造するスラリー乾燥装置と、
    前記スラリー乾燥装置により乾燥処理された水素貯蔵材料を貯蔵する水素貯蔵材料貯蔵容器と、
    をさらに具備することを特徴とする請求項に記載の水素貯蔵材料の製造装置。
  4. 前記スラリー排出部から排出されるスラリーを貯蔵するスラリー貯蔵容器と、
    前記スラリー貯蔵容器に貯蔵されたスラリーから溶剤を蒸発させるためのヒータと、
    をさらに具備することを特徴とする請求項に記載の水素貯蔵材料の製造装置。
  5. その中で水素貯蔵材料用原料を粉砕するための、横向きの姿勢で配置される円筒状の粉砕容器と、前記粉砕容器の一方の端部に設けられ、前記粉砕容器内を液密に維持したまま、水素貯蔵材料用原料と所定の溶剤からなるスラリーを前記粉砕容器内に導入するスラリー供給部と、前記粉砕容器の他方の端部近傍の上面に設けられ、前記粉砕容器内を液密に維持したまま、前記粉砕容器内のスラリーを排出する第1のスラリー排出部と、前記粉砕容器の他方の端部近傍の下面に設けられ、前記粉砕容器内を液密に維持したまま、前記粉砕容器内のスラリーを排出する第2のスラリー排出部と、前記第2のスラリー排出部から排出されたスラリーを前記スラリー供給部へ導き循環させる循環装置と、前記粉砕容器内を減圧雰囲気または不活性雰囲気にする手段と、前記粉砕容器に充填された粉砕ボールと、前記粉砕ボールを前記粉砕容器内で掻き回すインペラを有する攪拌装置と、を具備する製造装置を用いて水素貯蔵材料を製造する水素貯蔵材料の製造方法であって
    前記粉砕容器内を減圧雰囲気または不活性雰囲気として、前記スラリー供給部から連続的に前記粉砕容器に前記スラリーを供給し、前記粉砕容器内で、インペラを回転させることによる前記粉砕ボールどうしの衝突により前記スラリー中の水素貯蔵材料用原料を機械的に粉砕し
    前記第2のスラリー排出部から排出されたスラリーを前記循環装置により循環させるとともに、前記第1のスラリー排出部から、粉砕処理によって水素貯蔵材料用原料から得られた水素貯蔵材料を含む処理済みのスラリーを連続的に排出することを特徴とする水素貯蔵材料の製造方法。
  6. 前記粉砕容器から排出されるスラリーを加熱して前記スラリーに含まれる溶剤を蒸発させることにより連続的に水素貯蔵材料を乾燥させ、こうして乾燥処理された水素貯蔵材料を所定の貯蔵容器に貯蔵することを特徴とする請求項に記載の水素貯蔵材料の製造方法。
  7. 前記粉砕容器から排出されるスラリーを所定のスラリー貯蔵容器に導入した後に、前記スラリー貯蔵容器内のスラリーを加熱して前記スラリーに含まれる溶剤を蒸発させることにより、前記スラリー貯蔵容器内に乾燥した水素貯蔵材料を貯蔵することを特徴とする請求項に記載の水素貯蔵材料の製造方法。
  8. 所定の分離装置を用いて前記粉砕容器から排出されるスラリーから水素貯蔵材料を分離した後に、この分離された水素貯蔵材料を前記スラリーに含まれる溶剤とは異なる別の溶剤で洗浄し、さらに、前記別の溶剤を蒸発させることにより、乾燥した水素貯蔵材料を得ることを特徴とする請求項に記載の水素貯蔵材料の製造方法。
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