JP4754174B2 - 水素貯蔵体の製造装置および水素貯蔵体の製造方法、ならびに水素貯蔵体 - Google Patents
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Description
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る水素貯蔵体の製造装置を示す図であり、(a)は水平断面図、(b)は垂直断面図である。この水素貯蔵体の製造装置は高速遠心ローラーミルタイプのものであり、円筒状の粉砕容器1を有しており、その周囲に水冷ジャケット2が設けられている。水冷ジャケット2には冷却水導入口3と冷却水排出口4とが設けられている。
図2は、本発明の第2の実施形態に係る水素貯蔵体の製造装置を示す断面図である。この水素貯蔵体の製造装置は、この水素貯蔵体の製造装置は内外筒回転型ミルタイプのものであり、同軸的に設けられた内筒22と外筒23とを有し、これら内筒22と外筒23との間に環状粉砕室24が形成された粉砕容器21を有している。内筒22の内側には内筒用水冷ジャケット25が設けられており、外筒23の外側には外筒用水冷ジャケット26が設けられている。内筒用水冷ジャケット25には冷却水供給管25aおよび冷却水排出管25bが接続されており、外筒用水冷ジャケット26には冷却水供給管26aおよび冷却水排出管26bが接続されている。
図4は、本発明の第3の実施形態に係る水素貯蔵体の製造装置を一部切り欠いて示す斜視図である。この水素貯蔵体の製造装置はアトライタータイプのものであり、円筒状の粉砕容器41を有し、その長手方向を鉛直にして配置されている。粉砕容器41は、図示しない駆動機構により矢印の方向に回転可能に構成されており、その両方の開放端を塞ぐ一対の端面部材42が固定的に設けられている。粉砕容器41の周囲には水冷ジャケット43が設けられており、この水冷ジャケット43には冷却水導入口44と冷却水排出口45とが設けられている。
図5は、本発明の第4の実施形態に係る水素貯蔵体の製造装置の概略断面図である。この製造装置は、水素貯蔵材料を粉砕し、粉砕された水素貯蔵材を外部に排出するための排出口61aがその側壁下部に形成された有底円筒状の粉砕容器61と、粉砕容器61を収容し、内部を所定のガス雰囲気に保持することができるハウジング62を有している。
図7は、本発明の第5の実施形態に係る水素貯蔵体の製造装置の概略断面図である。この製造装置は、水素を含む所定の処理ガスを高圧噴射するジェットノズル72と、その内部にジェットノズル72から噴射された高圧の処理ガスが導入され、この処理ガスの気流によって水素貯蔵材料を粉砕する粉砕容器71とを有している。処理ガスは水素ガス単体であることが好ましいが、水素ガスと不活性ガス(窒素やアルゴン等)の混合ガスでもよい。このような混合ガスを用いる場合には、水素ガスと水素貯蔵材料とが接触しやすくなるように、水素分圧の高いガスを用いることが好ましい。
ここでは、水素貯蔵材料として、グラファイトを用いた結果(実施例1〜4および比較例1)と、水素化リチウムと金属アミドの混合物を用いた結果(実施例5〜9および比較例2)について説明する。
(実施例1)
実施例1では、水素貯蔵体の製造装置として、基本的に図1に示したような高速遠心ローラーミルタイプのものを用いた。ただし、粉砕ローラのみならず、粉砕容器も回転するものを用いた。粉砕容器の内容積は5L、内壁およびローターはジルコニア製とした。容器とローターは同回転もしくは逆回転が可能で、本実施例では逆回転で用いた。粉砕容器の回転速度は250r.p.m、粉砕ロールの回転速度は2000r.p.m、グラファイト粉末の投入量は50gとした。
実施例2では、水素貯蔵体の製造装置として、基本的に図2に示したような内外筒回転型ミルタイプのものを用いた。ただし、内筒のみならず外筒も回転するものを用いた。内筒および外筒は水平に設置され、回転軸を共有し、内筒の外径はφ152mm、外筒の内径はφ254mmとし、内筒と外筒との間の環状粉砕室の長さを510mmとした。環状粉砕室に見かけ充填率80%でジルコニア製粉砕ボール(直径10mm)を充填した。内筒外表面や外筒内表面に板状の複数の攪拌翼を配置した。内筒と外筒の回転方向は逆向きとし、各々の回転速度を120r.p.m付近とし、グラファイト粉末の投入量を530gとした。
実施例3では、水素貯蔵体の製造装置として、基本的に図4に示したようなアトライタータイプのものを用いた。粉砕容器の容量は5.4L、粉砕ボールとして直径5mmのジルコニア製のものを用いた。インペラと粉砕容器の回転方向は逆向きとし、インペラ回転数を250r.p.m、粉砕容器を60r.p.mで回転させた。また、グラファイト粉末の投入量を500gとした。
実施例4では、水素貯蔵体の製造装置として、基本的に図5に示したようなインナーピース型のミルを用いた。粉砕容器の容積は10L、インナーピースはジルコニア製のものを2個配置した。ハウジング内を1MPaの水素ガス雰囲気に保持しながら、
粉砕容器の回転数を1500r.p.mとして、グラファイト粉末の投入量を500gとした。
比較例1では、グラファイト粉末2gを内容積250mLのジルコニア製ミル容器に入れ、ミル容器内を真空排気した後、水素ガスを1.0MPa導入した。機械的粉砕は、遊星型ボールミル装置(Fritsch社製P5)を用いて、20℃の室温で、公転数250r.p.mで所定の時間ミリングを行った。なお、粉砕ボールには容器とほぼ同等の組成および硬度を有するジルコニア製ボール(φ10mm)を60個使用した。このミル容器としては、水素ガス導入用や真空排気用のコネクションバルブと水素分子を水素原子へ解離させる機能を有した金属もしくはそれらの合金の添加するための試料導入バルブが備え付けられたものを用いた。
(1)試料および機械的粉砕の前後処理
グラファイト粉末(キシダ化学社製人造グラファイト、平均粒径36μm)を上記各粉砕容器に入れ、粉砕容器内(実施例4の場合はハウジング内)を真空排気した後、水素ガスを導入し容器内圧力を1.0MPaとした。各製造装置を用いて、20℃の室温で、所定の時間ミリングを行いグラファイト粉末を機械的粉砕した。なお、水素ガスとしては、「G1 7N」を用いた。
ミリング後の試料は、水素貯蔵体の各製造装置の排出部に取り付けられているバルブ付の容器中に水素雰囲気のまま移し替えた後、この容器を真空排気し、高純度アルゴンを導入した。なお、アルゴンガスとしては、「α2 6N」を用いた。
真空排気した加熱容器中のグラファイトを電気炉で室温〜900℃まで昇温速度10℃/分で加熱し、グラファイトから放出されたガスを20℃に冷却し、ガス圧を圧力計で測定するとともにガスボンベに採取した。この放出ガスは配管を通じてガスクロマトグラフに(島津製作所製、GC9A、TCD検出器、カラム:Molecular Sieve5A)導入し、水素量を測定した。水素貯蔵量としては、この水素量を加熱前のグラファイト量で除した値とした。
ミリング前後の試料の平均粒子径は、エタノール中で分散し、HORIBA社製LA−920により測定を行った。
各製造装置のミリング時間と得られた水素貯蔵体の平均粒子径との関係を図8に示す。また、図9に図8の拡大図を示す。これらに示すように、比較例1の遊星ボールミルでは、ミリング時間30時間以降でメカノケミカル現象の平均粒子径の増加(凝集)が認められる。一方、実施例1であるローラーミル、実施例2である内外筒回転型ミル、実施例3であるアトライターおよび実施例4のインナーピース型ミルにおいては、圧縮力や剪断力による効果のため、比較例1の遊星型ボールミルより短時間の10時間以降で平均粒子径の増加が認められた。
(原料調製と水素吸蔵処理(粉砕処理))
高純度アルゴンガス雰囲気のグローブボックス中で、出発原料たるリチウムアミド(LiNH2;純度95%,シグマ・アルドリッチ社製)と水素化リチウム(LiH;純度95%,シグマ・アルドリッチ社製)がモル比で1:1となるように、かつ、触媒機能物質たる塩化クロム(CrCl3;シグマ・アルドリッチ社製)とLi全量が原子比で0.05:1となるように、全量で100gを秤量した。この原料を密閉できる原料容器中に移し、空気に暴露しないように、内部が高純度アルゴンガス雰囲気に保持された各水素貯蔵体の製造装置(実施例5;ローラーミル、実施例6;内外筒回転型ミル、実施例7;アトライター、実施例8;インナーピース型ミル、実施例9;気流粉砕型ミル、比較例2;遊星型ボールミル)に投入した。各装置について、処理時間を変えて所定時間の粉砕混合を行った後に、得られた水素貯蔵体を真空雰囲気としてある試料容器に空気に暴露しないように移し替えた。
真空排気した反応容器中の水素貯蔵体を電気炉で室温から250℃まで昇温速度10℃/分で加熱し、250℃で90分間保持した。250℃保持中は、放出ガス圧が20kPa以下となるようにバッファ容器を用いてガス圧を調整するとともに、250℃での保持開始から所定時間経過時に放出ガスをガスボンベに採取した。こうして採取したガスを20℃に冷却して放出ガス圧を圧力計で測定するとともに、採取したガスを配管を通じてガスクロマトグラフ(島津製作所製、GC9A、TCD検出器、カラム:Molecular Sieve 5A)に導入し、水素量を測定した。測定された水素量を加熱前の水素貯蔵体の質量で除した値を水素貯蔵率とした。
図11は水素貯蔵体の250℃での保持時間と水素貯蔵率との関係を示すグラフである。図11において、水素貯蔵率は累積値で示されている。また、水素貯蔵体からは250℃に達するまでに水素ガスが放出されるが、その量は250℃での保持開始から放出される水素ガス量と比べると極めて少ないために、図11の水素貯蔵率に積算していない。図11から、実施例5〜9のローラーミル、内外筒回転型ミル、アトライター、インナーピース型ミル、気流粉砕型ミルのような量産可能な製造装置を用いて製造した水素貯蔵体は、量産が困難な比較例2の遊星型ボールミルを用いて製造した水素貯蔵体と同等またはそれ以上の水素貯蔵率を有することが確認された。
5;粉砕ローラ
5a;回転軸
6;ベアリングアッセンブリー
7;回転軸
8,34,50,63a;水素ガス導入口
9,35,51,63b,73;水素貯蔵材料導入口
10,36,52,63c,74;水素貯蔵体排出口
22;内筒
23;外筒
27,28;攪拌翼
29;回転軸
38,53;粉砕用ボール
42;端面部材
46;回転軸
47a,47b,47c;インペラ
65;インナーピース
72;ジェットノズル
76;衝突板
Claims (9)
- その中で炭素質材料からなる水素貯蔵材料を粉砕する回転可能な円筒状の粉砕容器と、
前記粉砕容器内を水素雰囲気に保つことが可能なように前記粉砕容器内に水素ガスを導入する水素ガス導入部と、
前記粉砕容器内の水素ガス雰囲気を維持したまま前記粉砕容器内に前記水素貯蔵材料を導入可能な水素貯蔵材料導入部と、
前記粉砕容器内の前記水素貯蔵材料を排出する水素貯蔵材料排出部と、
回転軸を前記容器の長手方向に一致させて前記粉砕容器の中に複数設けられ、隣接するもの同士が直交するように配置されたインペラと、
前記粉砕容器と前記インペラとを互いに反対方向に回転させる駆動機構と、
を具備し、
前記粉砕容器内を水素雰囲気にして、前記水素貯蔵材料および粉砕媒体を前記粉砕容器内に充填させ、前記粉砕容器と前記インペラとを互いに反対方向に回転させることにより、前記水素貯蔵材料を機械的粉砕して水素貯蔵体とすることを特徴とする水素貯蔵体の製造装置。 - 前記水素ガス導入部には前記粉砕容器内に連続的に水素を導入する機構が設けられ、前記水素貯蔵材料導入部には前記粉砕容器内に連続的に水素貯蔵材料を導入する機構が設けられ、前記水素貯蔵材料排出部には前記粉砕容器から連続的に水素貯蔵材料を排出する機構が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の水素貯蔵体の製造装置。
- その中で水素貯蔵材料を粉砕し、粉砕された水素貯蔵材を外部に排出するための水素貯蔵材料排出口を側壁下部に有する有底円筒状の粉砕容器と、
前記粉砕容器を収容し、内部を所定のガス雰囲気に保持することができるハウジングと、
円柱曲面を有し、その曲面と前記粉砕容器の側壁内面との間に所定の間隙ができるように配置された1または複数のインナーピースと、
前記インナーピースを保持する保持部材と、
前記粉砕容器と前記インナーピースとの間の間隙幅が変わらないように前記粉砕容器および/または前記保持部材を回転させる容器回転機構と、
を具備し、
前記ハウジングは、その内部に水素ガスを導入するガス導入部と、その内部を水素ガス雰囲気に保持したまま前記粉砕容器内に水素貯蔵材料を導入する水素貯蔵材料導入部と、前記粉砕容器から前記水素貯蔵材料排出口を通って排出された水素貯蔵材料の一部をその内部からその外部に排出する水素貯蔵材料排出部と、前記粉砕容器から前記水素貯蔵材料排出口を通って排出された水素貯蔵材料の一部を前記粉砕容器内に戻す水素貯蔵材循環部と、を有し、
前記ハウジング内を水素雰囲気にして水素貯蔵材料を前記粉砕容器内に導入し、前記粉砕容器の側壁と前記インナーピースとの間の圧縮力およびせん断力によって水素貯蔵材料を機械的粉砕して水素貯蔵体とすることを特徴とする水素貯蔵体の製造装置。 - 前記水素ガス導入部には前記ハウジング内に連続的に水素を導入する機構が設けられ、前記水素貯蔵材料導入部には前記ハウジング内に収容された粉砕容器内に連続的に水素貯蔵材料を導入する機構が設けられ、前記水素貯蔵材料排出部には前記ハウジングから連続的に水素貯蔵材料を排出する機構が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の水素貯蔵体の製造装置。
- 前記粉砕容器内で水素貯蔵材料を粉砕している際に、前記粉砕容器内のガス雰囲気を維持したまま、前記粉砕容器内に水素分子を水素原子へ解離させる機能を有する金属成分を導入する金属成分導入機構をさらに具備することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の水素貯蔵体の製造装置。
- その中で炭素質材料からなる水素貯蔵材料を粉砕する回転可能な円筒状の粉砕容器と、前記粉砕容器内を水素雰囲気に保つことが可能なように前記粉砕容器内に水素ガスを導入する水素ガス導入部と、前記粉砕容器内の水素ガス雰囲気を維持したまま前記粉砕容器内に前記水素貯蔵材料を導入可能な水素貯蔵材料導入部と、前記粉砕容器内の前記水素貯蔵材料を排出する水素貯蔵材料排出部と、回転軸を前記容器の長手方向に一致させて前記粉砕容器の中に複数設けられ、隣接するもの同士が直交するように配置されたインペラと、前記粉砕容器と前記インペラとを互いに反対方向に回転させる駆動機構と、を具備する水素貯蔵体の製造装置を用いて水素貯蔵体を製造する製造方法であって、
前記粉砕容器内を水素雰囲気にしつつ、前記粉砕容器内に粉砕媒体および前記水素貯蔵材料を充填させ、前記粉砕容器内と前記粉砕容器内に設けられたインペラとを互いに反対方向に回転させることにより水素貯蔵材料を機械的粉砕して水素貯蔵体とすることを特徴とする水素貯蔵体の製造方法。 - その中で水素貯蔵材料を粉砕し、粉砕された水素貯蔵材を外部に排出するための水素貯蔵材料排出口を側壁下部に有する有底円筒状の粉砕容器と、前記粉砕容器を収容し、内部を所定のガス雰囲気に保持することができるハウジングと、円柱曲面を有し、その曲面と前記粉砕容器の側壁内面との間に所定の間隙ができるように配置された1または複数のインナーピースと、前記インナーピースを保持する保持部材と、前記粉砕容器と前記インナーピースとの間の間隙幅が変わらないように前記粉砕容器および/または前記保持部材を回転させる容器回転機構と、を具備し、前記ハウジングは、その内部に水素ガスを導入するガス導入部と、その内部を水素ガス雰囲気に保持したまま前記粉砕容器内に水素貯蔵材料を導入する水素貯蔵材料導入部と、前記粉砕容器から前記水素貯蔵材料排出口を通って排出された水素貯蔵材料の一部をその内部からその外部に排出する水素貯蔵材料排出部と、前記粉砕容器から前記水素貯蔵材料排出口を通って排出された水素貯蔵材料の一部を前記粉砕容器内に戻す水素貯蔵材循環部と、を有する水素貯蔵体の製造装置を用いて水素貯蔵体を製造する製造方法であって、
前記粉砕容器内を水素雰囲気にしつつ、前記水素貯蔵材料を前記粉砕容器内に導入し、前記インナーピースの該円柱曲面と前記粉砕容器の側壁との間隙幅が変化しないように前記インナーピースを回動させるかまたは前記粉砕容器を回転させることにより前記インナーピースと前記粉砕容器の側壁との間に生ずる圧縮力およびせん断力によって、水素貯蔵材料を機械的粉砕して水素貯蔵体とすることを特徴とする水素貯蔵体の製造方法。 - 前記粉砕容器内に水素ガスおよび水素貯蔵材料を連続的に導入して水素貯蔵材料を粉砕し、それによって形成された水素貯蔵体を連続的に前記粉砕容器から排出することを特徴とする請求項6または請求項7に記載の水素貯蔵体の製造方法。
- 前記粉砕容器内で水素貯蔵材料を粉砕している途中で、前記粉砕容器内の水素雰囲気を維持したまま、前記粉砕容器内に水素分子を水素原子へ解離させる機能を有する金属成分を導入することを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか1項に記載の水素貯蔵体の製造方法。
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