JP6977968B2 - 水素化ホウ素ナトリウムの製造方法 - Google Patents

水素化ホウ素ナトリウムの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、水素化ホウ素ナトリウムの製造方法に関し、より詳細には、メタホウ酸ナトリウムから水素化ホウ素ナトリウムを製造する方法に関する。
化石燃料の代替エネルギーとして水素燃料が注目される中、水素化ホウ素ナトリウムは、水素の貯蔵や輸送、水素発生源として有望な水素キャリアである。水素キャリアとしての水素化ホウ素ナトリウムを社会へ普及させるためには、その量産技術を念頭に置いた最適な製造方法を確立させる必要がある。
水素化ホウ素ナトリウムの従来の製造方法としては、例えば特許文献1においては、ホウ酸トリアルキル類と、ナトリウムアルミニウムハイドライドとを反応させて、ナトリウムボロハイドライドを製造する方法が開示されている。しかしながら、この方法ではあらかじめ、ホウ酸をホウ酸トリアルキル類にし、またナトリウムとアルミニウムと水素とを反応させてナトリウムアルミニウムハイドライドを生成させておく必要が生じるため、製造プロセスが煩雑であった。
また、特許文献2においては、水素雰囲気下で、メタホウ酸ナトリウムと粒状のアルミニウムとを、粉砕媒体を用いて圧延粉砕しつつ反応させて水素化ホウ素ナトリウムを得る工程を有する水素化ホウ素ナトリウムの製造方法が開示されている。当該製造方法は、より簡略化された製造方法であるものの以下の問題がある。すなわち、原料の無水メタホウ酸ナトリウムはメタホウ酸ナトリウム水和物を加熱して水分を蒸発除去する方法で精製してから使用する。ところが、通常入手できるメタホウ酸ナトリウムは4水和物であり、水分の割合が52.2%と高く、加熱時に突沸が起こる可能性があった。さらに、加熱後、乾燥させ固化した粉末状の無水メタホウ酸ナトリウムは、粒子が硬くてサイズが大きく反応性が低いため、微粉末にする必要がある。しかし、メタホウ酸ナトリウムは水との親和性が高く、さらに微粉末にすると一層水分を吸収しやすい。水分を吸収した微粉末無水メタホウ酸ナトリウムを原料として使用すると、水分との反応が常に優先されて水素化ホウ素ナトリウムの生成反応率が低下してしまう。このように、水分を含むメタホウ酸ナトリウムを原料として用いた場合には、水素化ホウ素ナトリウムの生成効率が低下するためその改善が求められている。
さらに、特許文献3においては、ホウ素および酸素を含む化合物を、特定のルイス塩基、アルミニウム並びに水素と併用することを含む、水素化ホウ素ナトリウム(水素化ホウ素化合物)の製造方法が開示されている。ホウ素及び酸素を含む化合物としてメタホウ酸ナトリウムが例示されているが、この方法においても、メタホウ酸ナトリウムの水分について考慮されておらず、特許文献2において示した問題と同様の問題を抱えている。
特許第2809666号公報 国際公開第2015/190403号 特開2009−256180号公報
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、水分を含むメタホウ酸ナトリウムを原料として使用しても、水素化ホウ素ナトリウムの生成効率の低下を抑制することができる水素化ホウ素ナトリウムの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討の結果、以下の知見を得た。すなわち、アルミニウム粒は粉砕媒体の衝突のエネルギーによって塑性変形し、かつ、アルミニウム粒と粉砕媒体の間にアルミニウム以外の固体が挟まるとその打ち込み効果によってもアルミニウムが塑性変形してその表面積が大きくなる。その結果、アルミニウム粒の表面を覆っている酸化被膜が破壊され、新規表面部分が形成される。新規表面部分とは、酸化被膜のないアルミニウムの地肌である。そして、アルミニウムの新規表面部分では、雰囲気中の水や水素などのガス、メタホウ酸ナトリウムなどの固体と接触し反応する。水素ガスと水とが存在する雰囲気下では、アルミニウムの新規表面部分はまず優先的に水と反応して表面に酸化アルミニウムの被膜と水素ガスとを生成する。従って、付着水あるいは水和物を含むメタホウ酸ナトリウムは、1atm100℃以上では付着水が、280℃以上ではすべての水和物の水分が気化し、気化した水分とメタホウ酸ナトリウムに残存している水分はアルミニウムの新規表面部分と反応する。この反応を経て雰囲気中の水分がなくなるとメタホウ酸ナトリウムは無水状態を保つことができる。ついで、アルミニウムの新規表面部分は、無水化されたメタホウ酸ナトリウムと水素ガスと反応して水素化ホウ素ナトリウムが生成される。つまり、この知見によると、水素化ホウ素ナトリウムの生成に当たり、メタホウ酸ナトリウムに含まれる水分の影響を避けることが出来るため、水素化ホウ素ナトリウムの生成効率の低下を抑えることができる。
上記課題を解決する手段は以下の通りである。
本発明の第1の態様の水素化ホウ素ナトリウムの製造方法は、
(1A)水分を含み、粒径が100μm以下のメタホウ酸ナトリウムと、アルミニウムとを密閉容器内に装入した後、又は装入する前に密閉容器内を非酸化性ガスで満たす工程、
(2A)密閉容器内を200℃以上に加熱保持し、メタホウ酸ナトリウム及びアルミニウムの付着水分と、メタホウ酸ナトリウムの水和水とを放出させ気化する工程、
(3A)密閉容器内を280〜550℃に加熱してメタホウ酸ナトリウムとアルミニウムとを粉砕媒体により圧延粉砕し、密閉容器内の残留水分をアルミニウムと反応させ水素ガスと酸化アルミニウムに転換する工程、
を順次含む。
本発明の第1の態様の水素化ホウ素ナトリウムの製造方法において、(3A)の工程の後に、(4A)密閉容器内を200〜550℃に加熱し、かつ、水素ガス圧を0.3〜10MPaとしつつ、メタホウ酸ナトリウムとアルミニウムとを粉砕媒体により圧延粉砕する工程をさらに含むことが好ましい。
本発明の第1の態様の水素化ホウ素ナトリウムの製造方法において、(1A)の工程におけるアルミニウムの質量を、以下の質量X1及び質量Y1の和よりも大きい質量とすることが好ましい。
質量X1:(1A)の工程で装入した質量のメタホウ酸ナトリウムと等モルで反応すると仮定したアルミニウムの質量
質量Y1:(1A)の工程におけるメタホウ酸ナトリウムの熱重量測定による常温から600℃までの重量減少率に0.828と質量X1とを乗じた質量
本発明の第1の態様の水素化ホウ素ナトリウムの製造方法において、(1A)の工程において装入するアルミニウムの質量が、(3A)の工程で密閉容器内の残留水分と反応するアルミニウムの質量以上、かつ、残留水分との反応及び水素化ホウ素ナトリウムの生成の反応に必要な全アルミニウム量の質量以下であって、全アルミニウム量に対する不足分のアルミニウムを追加装入する工程を、(3A)の工程の直後に設けることができる。
本発明の第2の態様の水素化ホウ素ナトリウムの製造方法は、
(1B)水分を含み、粒径が100μm以下のメタホウ酸ナトリウムと、アルミニウムとを密閉容器内に装入する工程、
(2B)密閉容器内を200℃以上に加熱保持し、メタホウ酸ナトリウム及びアルミニウムの付着水分と、メタホウ酸ナトリウムの水和水を放出気化させると共に、密閉容器内を脱気して水分を除去する工程、
(3B)密閉容器内を280〜550℃に加熱して、メタホウ酸ナトリウムとアルミニウムとを粉砕媒体により圧延粉砕し、密閉容器内の残留水分をアルミニウムと反応させ水素ガスと酸化アルミニウムに転換する工程、
を順次含む。
本発明の第2の態様の水素化ホウ素ナトリウムの製造方法において、(3B)の工程の後に、(4B)密閉容器内を200〜550℃に加熱し、かつ、水素ガス圧を0.3〜10MPaとしつつ、前記メタホウ酸ナトリウムと前記アルミニウムとを粉砕媒体により圧延粉砕する工程をさらに含むことが好ましい。
本発明の第2の態様の水素化ホウ素ナトリウムの製造方法において、(1B)の工程におけるアルミニウムの質量を、(1B)の工程で装入した質量のメタホウ酸ナトリウムに室温から600℃の熱重量減少率分の質量を引いた残りのメタホウ酸ナトリウムと等モルで反応すると仮定したアルミニウムの質量と同等とすることが好ましい。
本発明の水素化ホウ素ナトリウムの製造方法において、いずれの態様においても、(1A)又は(1B)の工程におけるアルミニウムの平均粒径は1μm以上10mm以下であることが好ましい。
本発明の水素化ホウ素ナトリウムの製造方法において、いずれの態様においても、(1A)又は(1B)工程の前に、水分を含み、粒径が100μm以下のメタホウ酸ナトリウムとアルミニウムとを混合して混合物を得る工程を設け、(1A)又は(1B)の工程において、水分を含むメタホウ酸ナトリウムとアルミニウムとに代え、前記混合物を用いることができる。この場合、混合物はペレットとすることができる。
本発明の水素化ホウ素ナトリウムの製造方法において、いずれの態様においても、粉砕媒体としてはセラミック製ボールとすることができる。
本発明の水素化ホウ素ナトリウムの製造方法において、いずれの態様においても、(3A)又は(3B)の工程における残留水分とアルミニウムとの反応を、密閉容器内の圧力変化が生じなくなった時点又は圧力が減少する時点まで継続させることが好ましい。
本発明によれば、水分を含むメタホウ酸ナトリウムを原料として使用しても、水素化ホウ素ナトリウムの生成効率の低下を抑制することができる水素化ホウ素ナトリウムの製造方法を提供することができる。
メタホウ酸ナトリウム・4水和物の室温から600℃までのTG−DTAチャートである。 使用したメタホウ酸ナトリウム粉末(<100μm)の室温から600℃までのTG−DTAチャートである。 本実施形態において用いる密閉容器の一例を示す部分断面図である。 本実施形態の水素化ホウ素ナトリウムの製造方法における製造過程を示すグラフである。 加熱脱気工程を含んだ水素化ホウ素ナトリウムの製造方法における製造過程を示すグラフである。
<第1の実施形態>
第1の本実施形態の水素化ホウ素ナトリウムの製造方法は、(1A)水分を含み、粒径が100μm以下のメタホウ酸ナトリウムと、アルミニウムとを密閉容器内に装入した後、又は装入する前に密閉容器内を非酸化性ガスで満たす工程、(2A)密閉容器内を200℃以上に加熱保持し、メタホウ酸ナトリウム及びアルミニウムの付着水分と、メタホウ酸ナトリウムの水和水とを放出させ気化する工程、(3A)密閉容器内を280〜550℃に加熱してメタホウ酸ナトリウムとアルミニウムとを粉砕媒体により圧延粉砕し、密閉容器内の残留水分をアルミニウムと反応させ水素ガスと酸化アルミニウムに転換する工程、を順次含むことを特徴としている。
以下に、各工程について詳述する。
[(1A)の工程]
(1A)の工程は、水分を含み、粒径が100μm以下のメタホウ酸ナトリウムと、アルミニウムとを密閉容器内に装入した後、又は装入する前に密閉容器内を非酸化性ガスで満たす工程である。以下、「メタホウ酸ナトリウム」は、「無水化されたメタホウ酸ナトリウム」と呼ぶ場合を除き、特に示さない限り「水分を含み、粒径が100μm以下のメタホウ酸ナトリウム」を意味する。
(1A)の工程では、主に原料を準備・装入する工程であるが、密閉容器内を非酸化性ガスで満たすことで、メタホウ酸ナトリウム及びアルミニウムの表面酸化被膜への空気中の水分の付着を防止することができる。密閉容器内を非酸化性ガスで満たすタイミングとしては、原料を密閉容器内に装入した後でもよいし、装入する前でもよい。なお、非酸化性ガスとしては、水素ガス、希ガスなどが挙げられ、または真空状態とすることも可能である。
密閉容器としては、550℃((4A)の工程での加熱温度)及び10MPaに耐えうる耐熱性、耐圧性を有し、ガスを充填するため密閉空間を確保でき、粉砕媒体により圧延粉砕するための撹拌手段を少なくとも備えた容器が用いられる。このような密閉容器の詳細については後述する。
原料となるメタホウ酸ナトリウムは、水分を含むものであるが、この「水分」とは水和水及び表面に付着した水分と無水メタホウ酸ナトリウム粉末が水分と反応して含んだ水分を指す。メタホウ酸ナトリウムは、例えば、水素化ホウ素ナトリウムを加水分解して得ることができる。メタホウ酸ナトリウムは通常4水和物であるが、それ以外の割合で水和水を含むものであってもよい。また、本実施形態においては、メタホウ酸ナトリウムの表面に水分が付着しているか否かを問わず、いずれのメタホウ酸ナトリウムも用いることができる。
また、本実施形態においては、メタホウ酸ナトリウムとして粒径が100μm以下のものを用いるが、100μmを超えると水素化ホウ素ナトリウムの生成効率の低下を招く。なお、粒径100μm以下メタホウ酸ナトリウムは、ある程度細かく粉砕した後、目開き100μmの篩にかけることで得られる。水素化ホウ素ナトリウムの生成効率をより向上させるためには、より小さい粒径のメタホウ酸ナトリウムを用いることが好ましい。そのためには、メタホウ酸ナトリウムの粉末を目開き100μm未満の篩を用いればよい。
(1A)の工程において装入するメタホウ酸ナトリウムの質量は、所望する水素化ホウ素ナトリウムの生成量に応じて決定することができる。ただし、上記の通りメタホウ酸ナトリウムは水分を含むため、その水分の質量減少分を考慮して多めに見積もる必要がある。
原料となるアルミニウムとしては、粉末材、スクラップ材などの断片などを用いることができる。アルミニウム断片は、例えば切粉、廃材等のスクラップ材等を利用することも可能であるが、なるべくアルミニウムより貴な金属の不純物の含有量が少ないものを選択することが好ましい。
ここで、(1A)の工程において装入するアルミニウムの質量について考察する。アルミニウムの一部は、(3A)の工程で、メタホウ酸ナトリウム等から気化した水分と反応し酸化アルミニウムとなるので最終生成物である水素化ホウ素ナトリウムが生成するために寄与しない。そのため工程中で放出される水分と反応する量のアルミニウムが余分に必要となる。十分なアルミニウムの量が存在しない場合、(4A)の工程において、無水化されたメタホウ酸ナトリウムと反応するアルミニウムが不足してしまい、水素化ホウ素ナトリウムを十分に生成できない可能性がある。また、例えば(3A)の工程において、全てのアルミニウムが、メタホウ酸ナトリウムから気化する水分と反応して酸化アルミニウムとなった場合、(4A)の工程においては、アルミニウムが不足するため、反応そのものが停滞してしまう。
本実施形態における全工程において、アルミニウムと反応する水分の量は、その大半がメタホウ酸ナトリウムから気化する付着水と水和物からの水分の量に相当する。無水メタホウ酸ナトリウムは常温から900℃程度の加熱において安定であることが分かっており、原料のメタホウ酸ナトリウム中の気化する水分の割合(質量分率)は、メタホウ酸ナトリウムを常温から600℃まで加熱したときの熱重量少率に相当する。この気化した水分と、減量した無水メタホウ酸ナトリウムとの全反応に必要なアルミニウムの質量を「A」とすると、「A」は、減量した無水メタホウ酸ナトリウムと反応するアルミニウムの質量「B」と、水分と反応するアルミニウムの質量「D」とを足したものとなる(A=B+D)。原料の無水メタホウ酸ナトリウム質量を「E」、上記熱重量減少率(%)を「C」とすると、水分と反応するアルミニウム量「D」はD=(C/100)×Eで表される。また、減量した無水メタホウ酸ナトリウムと反応するアルミニウム量「B」は、(1−C/100)×E×0.547で表される。ここで、0.547は無水メタホウ酸ナトリウムと等量で反応するアルミニウムの質量比である。すなわち、反応に必要なすべてのアルミニウムの質量「A」は、A=(1−C/100)×E×0.547+(C/100)×Eとなり、この式をまとめるとA=(1+0.828×C/100)×0.547×Eとなる。すなわち、原料のメタホウ酸ナトリウムの熱重量減少率「C」を測定すれば、すべての反応に必要なアルミニウムの質量を計算することができる。よって、原料の無水メタホウ酸ナトリウム質量「E」に水分が含まれないと仮定したときにこれと等量で反応するAl量「0.547×E」に対して1+0.828×C/100よりも大きい割合のアルミニウム質量を原料とすることが好ましい。
以上より、(1A)の工程におけるアルミニウムの質量は、以下の質量X1及び質量Y1の和よりも大きい質量とすることが好ましい。
質量X1:前記(1A)の工程で装入した質量のメタホウ酸ナトリウムと等モルで反応すると仮定したアルミニウムの質量
質量Y1:前記(1A)の工程におけるメタホウ酸ナトリウムの熱重量測定による常温から600℃までの熱重量減少率に0.828と質量X1とを乗じた質量
上記以外の水分としては、アルミニウムの表面を覆う酸化被膜の付着水分と水和物とが存在する。しかし、腐食していないアルミニウムの通常酸化被膜の厚みは0.5〜1nm程度であり、原料アルミニウムの厚みに対して1/1000以下であり、水分量としては非常に微量となるので無視することができる。
一方、装入するアルミニウムの平均粒径は、1μm以上10mm以下であることが好ましい。粒径が小さいと比表面積が大きく初期の水分との反応、メタホウ酸ナトリウムと水素との反応速度は速く、粒径が大きいと圧延粉砕が継続的に維持されてメタホウ酸ナトリウムと水素との反応速度が低下しにくい。しかし、1μm未満であると粉じん爆発しやすく扱いにくくなると共に、粒子同士が付着しやすく、粒子同士が固まりやすくなることがある。また、1μm未満となると圧延粉砕の余地が小さくなってメタホウ酸ナトリウムとの反応機会が減じて反応収率が低下することがある。平均粒径が10mmよりも大きいと、質量当たりの比表面積が小さくなって反応面積が減って圧延粉砕初期の反応速度が極度に低下することがある。当該平均粒径は、10μm以上5mm以下がより好ましい。
なお、平均粒径は、レーザ回折式粒子径分布測定装置により球相当直径の粒径として得られる。
(1A)の工程における密閉容器内の温度は特に制限はなく、100℃未満であればよい。密閉容器内は特に加熱する必要がないため常温とすることができる。なお、メタホウ酸ナトリウムと空気中の水分との反応を避けるため、原料の装入後は速やかに容器を密閉することが必要である。
以上の(1A)の工程の終了直後から次の(2A)の工程に移行することができるし、任意の時間が経過後に(2A)の工程を開始してもよい。
[(2A)の工程]
(2A)の工程は、反応容器内を200℃以上に加熱保持し、メタホウ酸ナトリウム及びアルミニウムの付着水分と、メタホウ酸ナトリウムの水和水とを放出させ気化する工程である。付着水分はメタホウ酸ナトリウムだけではなく、アルミニウムを覆う酸化被膜にも微量ながら存在するが、いずれも(2A)の工程で気化することができる。また、熱重量分析から、1atmではメタホウ酸ナトリウムの水和水の放出温度は280℃であるので、メタホウ酸ナトリウムの水和水の放出のための加熱条件は、280℃以上とすることが好ましい。保持時間としては、10分以上の保持時間が好ましく、水和水の放出速度を速くするために加熱温度を300℃〜550℃の範囲とすることにより保持時間を少なくすることが可能である。
[(3A)の工程]
(3A)の工程は、密閉容器内を280〜550℃に加熱してメタホウ酸ナトリウムとアルミニウムとを粉砕媒体により圧延粉砕し、密閉容器内の残留水分をアルミニウムと反応させ水素ガスと酸化アルミニウムに転換する工程である。すなわち、本工程は、(2A)の工程において気化した水分、つまり密閉容器内の残留水分とアルミニウムとを反応させ、反応系内から水分を除去する工程である。本工程において、アルミニウムと水分とが反応して酸化アルミニウムと水素ガスが生成する。より詳細には、アルミニウム表面の酸化被膜が破れて、新規表面が暴露したアルミニウムと雰囲気中の水分が反応し、酸化アルミニウム被膜と水素ガスとなる。水分とアルミニウムの反応は以下の反応式で示される。
2Al+3HO→Al+3H
(3A)の工程における加熱条件は、水分が凝結しづらくなる100℃以上であれば十分であるが、280℃以上であれば、メタホウ酸ナトリウム水和物が完全に水を放出するとともにアルミニウムの強度が低下し、圧延粉砕が容易となり、水とアルミニウムとの反応性も高くなるため、より短い時間で雰囲気中の水分を除去することができる。
図1に、メタホウ酸ナトリウム・4水和物の室温から600℃までのTG−DTAチャートを示す。図1より、温度の上昇とともに脱水による吸熱ピークを伴う減量が見られる。そして、276℃を超えると、減量も吸熱ピークが見られないとともに減量もないことから、メタホウ酸ナトリウム水和物が完全に水を放出したと考えられる。すなわち、上記の通り、メタホウ酸ナトリウム・4水和物は加熱温度が280℃以上であれば、水分を除去することができる。
同様に、図2に、使用した水分を含んだメタホウ酸ナトリウム粉末(100μm>)のTG−DTAチャートを示す。図2より、280℃よりも高い温度域(280℃〜600℃)においてもなだらかな減量が認められる。吸熱のピークは認められないことから不定形に取り込められた水分が温度上昇に伴って徐々に脱水したものと推定される。無水メタホウ酸ナトリウムは粉末にすると水分との反応性が高く、また、高温になっても水分を離しにくい性質となることが分かる。水和物と付着水からの水分は280℃以上の加熱でメタホウ酸ナトリウムから除去し、粉末のメタホウ酸ナトリウムの280℃以上まで保持されている水分は圧延粉砕で水分をアルミニウムと反応させ除去することができる。
(3A)の工程における残留水分とアルミニウムとの反応は、密閉容器内の圧力変化(上昇)が生じなくなった時点又は圧力が減少する時点まで継続させることが好ましい。(3A)の工程においては、上記の通りアルミニウムと水分とが反応し、水素ガス生成により圧力が上昇するが、上記反応が終了すると水素ガスによる圧力上昇が終息する。つまり、圧力変化(上昇)の終息又は圧力が減少するまでは上記反応は終了していないため、その時点まで(3A)の工程を継続させることが好ましい。換言すると、密閉容器内の圧力上昇の終息又は圧力減少をもって(3A)の工程の終了と判断することができる。
圧延粉砕に用いる粉砕媒体としては、例えば、ボール状、ロッド状などの形状のものが挙げられ、中でも、ボール状が好ましい。ボール状とする場合、ボールの径としては、装入するアルミニウムの粒径よりも大きい径とすることが好ましい。また、粉砕媒体の材質に関しては、セラミック製、ステンレスなどの既存のものを適宜選択可能である。中でも、セラミック製ボールとすると金属の汚染がない。そのため、粉砕媒体としてはセラミック製ボールとすることが好ましく、具体的にはアルミナ製ボールとすることが好ましい。
(1A)の工程において装入するアルミニウムの質量が、(3A)の工程で密閉容器内の残留水分と反応するアルミニウムの質量以上、かつ、残留水分との反応及び水素化ホウ素ナトリウムの生成の反応に必要な全アルミニウム量の質量以下である場合、全アルミニウム量に対する不足分のアルミニウムを追加装入する工程を、(3A)の工程の直後に設けることができる。ここで、「(3A)の工程の直後」における「直後」とは、(3A)の工程終了後、(4A)の工程が開始されるまでの間を意味する。
(3A)の工程に後に追加装入する不足分のアルミニウムの質量は、全反応に必要なアルミニウムの質量に対する不足分、すなわち、上述した、すべての反応に必要な全アルミニウムの質量「A」(=(1+0.828×C/100)×0.547×Eと)から(1A)で装入したアルミニウムの質量を引いた質量である。そして、(4A)の工程を進行させる際には、(1A)〜(3A)の工程で無水化されたメタホウ酸ナトリウムと、新たに追加装入したアルミニウムとを粉砕媒体で圧延粉砕しながら水素雰囲気中で反応させ、水素化ホウ素ナトリウムを生成させる。
[(4A)の工程]
本実施形態においては、以上の(3A)の工程終了後、次の(4A)の工程を設けることで水素化ホウ素ナトリウムを生成することができる。砕媒体間に挟まれて塑性変形し、さらには、アルミニウムの表面を覆う表面酸化被膜が破れて、水素雰囲気下でアルミニウムの新規表面が無水化されたメタホウ酸ナトリウムと接触・衝突することで反応が進行する。水素化ホウ素ナトリウムが生成されるに従い、反応容器内の水素が減量するが、水素ガス圧を高めることで反応速度が増大する。ここでの反応は以下の反応式で示される。なお、圧延粉砕においては、アルミニウムより硬度の高い粉砕助剤を装入してもよい。粉砕助剤が原料のアルミニウム、メタホウ酸ナトリウムより硬ければアルミニウムに圧入されやすく粉砕速度が向上すると共に固体のメタホウ酸ナトリウム及び水素化ホウ素ナトリウムの物質移動を容易にして反応速度を向上させる。粉砕助剤としては、例えは酸化アルミニウムが好ましい。
4Al+6H+3NaBO→3NaBH+2Al
(4A)の工程においては、密閉容器は、(1A)〜(3A)で用いた密閉容器をそのまま用いてもよいし、別の密閉容器を用いてもよい。すなわち、(1A)〜(3A)の工程と、(4A)の工程は、1つの密閉容器内の工程として進めてもよいし、2つの別の密閉容器内での工程としてもよい。特に、2つの別の密閉容器内での工程とする場合、(2A)の工程で気化する全水分と反応するアルミニウムの質量を考慮し、(4A)の工程で不足するアルミニウムを、(3A)と(4A)との工程の間に追加装入する工程を設けることが好ましい。追加装入するアルミニウムの質量は、上述のようにして求めることができる。
(4A)の工程で保持する水素ガス圧は0.3〜10MPaの範囲とすることが好ましく、1〜10MPaの範囲とすることがより好ましい。水素ガス圧を0.3〜10MPaとすることにより、水素化ホウ素ナトリウムの生成効率に優れるとともに、耐圧性に優れた反応容器、器具等を要することがなく、設備コストの増大を抑えることができる。
(4A)の工程において、反応を十分に進行させるため、加熱温度は200〜550℃とすることが好ましい。加熱温度を200〜550℃とすることで、十分な反応速度が得られ、水素化ホウ素ナトリウムの生成効率に優れるとともに、生成した水素化ホウ素ナトリウムの昇華が抑えられ十分な回収率が得られる。
(4A)における、圧延粉砕に用いる粉砕媒体は(3A)の工程において説明した粉砕媒体と同じである。
なお、圧延粉砕は、粉砕媒体を撹拌することにより行われるが、そのときの撹拌速度が高速であるほど、撹拌媒体の質量が大きいほど、又は反応温度が高いほど、反応までのタイムラグを短くすることができる。
以上の(1A)〜(4A)の工程により、水素化ホウ素ナトリウムを生成することができる。
<第2の実施形態>
第2の実施形態の水素化ホウ素ナトリウムの製造方法は、(1B)水分を含むメタホウ酸ナトリウムと、アルミニウムとを密閉容器内に装入する工程、(2B)密閉容器内を200℃以上に加熱保持し、メタホウ酸ナトリウム及びアルミニウムの付着水分と、メタホウ酸ナトリウムの水和水を放出気化させると共に、密閉容器内を脱気して水分を除去する工程、(3B)密閉容器内を280〜550℃に加熱して、メタホウ酸ナトリウムとアルミニウムとを粉砕媒体により圧延粉砕し、密閉容器内の残留水分をアルミニウムと反応させ水素ガスと酸化アルミニウムに転換する工程、を順次含むことを特徴としている。
第2の実施形態において、第1の実施形態との大きな違いは、(2B)の工程において、メタホウ酸ナトリウム及びアルミニウムの付着水分及びメタホウ酸ナトリウムの水和水を放出気化させると共に、密閉容器を脱気して水分を除去する点である。第2の実施形態においては、(2B)の工程において水分を除去するため、(3B)の工程において残留する水分が第1の実施形態の(3A)の工程における残留する水分よりも少ない。そのため、第2の実施形態においては、水分と反応させるアルミニウムの量を減じることができ、原料となるアルミニウムの必要最小限の質量が第1の実施形態とは異なる。
以下に、各工程において説明する。
[(1B)の工程]
(1B)の工程は、水分を含むメタホウ酸ナトリウムと、アルミニウムとを密閉容器内に装入する工程である。(1B)の工程では、主に原料を準備・装入する工程であり、密閉容器内を非酸化性ガスで満たさない点において(1A)の工程とは異なる。原料となる、メタホウ酸ナトリウム及びアルミニウム自体は第1の実施形態と同様である。
第2の実施形態においては、上記の通り、(2B)の工程で脱気して水分を除去するため、(3B)の工程において残留する水分が少ない。そのため、(1B)の工程において装入するアルミニウムの質量は、第1の実施形態よりも少なくすることができる。具体的には、第1の実施形態では、原料のメタホウ酸ナトリウムと等モルで反応すると仮定したときのアルミニウムの質量「B」に対して1+0.828×C/100より大きい割合のアルミニウム質量を原料とすることが好ましいのに対して、第2の実施形態においては、1−C/100と同等の割合の質量のアルミニウムを原料としてよい。
従って、(1B)の工程におけるアルミニウムの質量を、(1B)の工程で装入した質量のメタホウ酸ナトリウムに室温から600℃の熱重量減少率分の質量を引いた残りのメタホウ酸ナトリウムと等モルで反応すると仮定したアルミニウムの質量と同等とすることが好ましい。
なお、「・・・メタホウ酸ナトリウムと等モルで反応すると仮定したアルミニウムの質量と同等」における「同等」とは、等しい場合のみならず、±5%の差がある場合を含むことを意味する。
以上の(1B)の工程の終了直後から次の(2B)の工程に移行することができるし、任意の時間が経過後に(2B)の工程を開始してもよい。
[(2B)の工程]
(2B)の工程は、密閉容器内を200℃以上に加熱保持し、メタホウ酸ナトリウム及びアルミニウムの付着水分と、メタホウ酸ナトリウムの水和水を放出気化させると共に密閉容器内を脱気して水分を除去する工程である。本工程においては、メタホウ酸ナトリウム及びアルミニウムの付着水分と、メタホウ酸ナトリウムの水和水を気化するのであるが、脱気して水分を除去する点で第1の実施形態の(2A)の工程とは異なる。脱気は、例えば、密閉容器に真空ポンプや吸引ポンプなどを接続し、密閉容器内のガスを吸引することにより行うことができる。脱気は原料を装入したのちから連続的に行うことが望ましい。
その他、本工程における加熱温度の好適条件は、第1の実施形態の(2A)の工程と同様である。
[(3B)の工程]
(3B)の工程は、密閉容器内を280〜550℃に加熱して、メタホウ酸ナトリウムとアルミニウムとを粉砕媒体により圧延粉砕し、密閉容器内の残留水分をアルミニウムと反応させ水素ガスと酸化アルミニウムに転換する工程である。本工程は、第1の実施形態における(3A)の工程と同じであり、好ましい態様も同じであるので説明を省略する。なお、第1の実施形態に(3A)の工程の説明において、(3A)を(3B)と読み替えることで、第2の実施形態の(3B)の工程の説明としてそのまま妥当する。
本実施形態においては、以上の(3B)の工程終了後、次の(4B)の工程を設けることで水素化ホウ素ナトリウムを生成することができる。
以上、本実施形態においては、(1B)〜(3B)の工程により、水分を含むメタホウ酸ナトリウムを原料として使用しても、水素化ホウ素ナトリウムを効率良く製造することができる。そして、(1B)〜(3B)の工程により得られたメタホウ酸ナトリウムを用い、例えば、以下の(4B)の工程により水素化ホウ素ナトリウムを生成することができる。なお、(4B)の工程は、(3B)の工程終了後、引き続き行ってもよいし、別の容器に移してから行ってもよい。
[(4B)の工程]
(4B)の工程は、密閉容器内を200〜550℃に加熱し、かつ、水素ガス圧を0.3〜10MPaとしつつ、メタホウ酸ナトリウムとアルミニウムとを粉砕媒体により圧延粉砕する工程である。本工程は、第1の実施形態における(4A)の工程と同じであり、好ましい態様も同じであるので説明を省略する。なお、第1の実施形態に(4A)の工程の説明において、(4A)を(4B)と読み替えることで、第2の実施形態の(4B)の工程の説明としてそのまま妥当する。
以上の(1B)〜(4B)の工程により、水素化ホウ素ナトリウムを生成することができる。
以上の第1及び第2のいずれの実施形態においても、メタホウ酸ナトリウム及びアルミニウムは、それぞれを別々に密閉容器内に順次装入してもよいし、それらを含む混合物として装入してもよい。混合物として装入する場合、(1A)又は(1B)の工程の前に、メタホウ酸ナトリウムとアルミニウムとを混合して混合物を得る工程を設け、(1A)又は(1B)の工程において、メタホウ酸ナトリウムとアルミニウムとを当該混合物の形態で反応容器に装入することが好ましい。事前にアルミニウムとメタホウ酸ナトリウムを混合し、混合された状態の原料を使用することで、メタホウ酸ナトリウムが圧延粉砕の工程でアルミニウムの中に打ち込まれ易くなりアルミニウムの新規表面の発生度合いが大きくなって反応速度を大きくすることができる。
また、アルミニウムとメタホウ酸ナトリウムとを混合物とする場合、事前に分散混合し、圧力をかけてペレットとすることもできる。ペレットは、粉体であるよりも湿気を吸いにくくハンドリングに優れるなどの利点がある。
次いで、本実施形態において用い得る密閉容器に一例について示すが、本実施形態においては以下のものに限定されるものではない。
図3に示す密閉容器10は、丸底の有底円筒状の容器本体12と、容器本体12を密閉する、脱着可能な円盤状の蓋部14とを有する。容器本体12の下部外側には、温度調節可能なヒーター16が配置され、容器本体12の内容物はヒーター16により加熱される。また、容器本体12の上端面には、蓋部14と密着して内部の気密性を確保するためのO−リング18が配されており、蓋部14が閉じられたとき、蓋部14は容器本体12に対してO−リング18と密着した状態となる。図3において、容器本体12の内部には多数の粉砕媒体40が投入された状態を示している。
蓋部14はその中央に開口部を有するとともに、開口部近傍に円筒部が立設され、円筒部の上側にはモーター20が配設されている。モーター20の回転軸には撹拌部22Aを複数有する撹拌棒22が装着されており、蓋部14を容器本体12に装着したとき、撹拌棒22の先端は容器本体12内部の下方領域まで達する。つまり、モーター20を駆動させたとき、撹拌棒22が回転し、容器本体12の内容物が撹拌される。そして、容器本体12に原料を投入して撹拌棒22を回転させたとき、多数の粉砕媒体40の存在により原料は圧延粉砕される。
蓋部14には、さらに、容器本体12の内部と連通するパイプ24及びパイプ30が具備されており、パイプ24は、水素ガス供給バルブ26を介して水素ガス供給源(図示せず)に、排気バルブ28を介して真空ポンプ(図示せず)に接続されている。すなわち、水素ガス供給バルブ26を開状態とすると水素ガスが12内に供給され、排気バルブ28を開状態とすると容器本体12内が脱気される。また、パイプ30は圧力計32に接続されており、圧力計32により容器本体12内の圧力を知ることができる。
以下、実施例により本実施形態を更に詳しく説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
なお、以下において、実施例1〜2、参考例1〜2、及び比較例1〜2が第1の実施形態に対応し、実施例3〜5が第2の実施形態に対応する。
[実施例1]
(a)(1A)の工程
粉砕して、目開き100μmの篩にかけたメタホウ酸ナトリウム粉末を室温から600℃のTG測定を行った。水分による重量減少率は5.3%であった。この水分を含むメタホウ酸ナトリウム1.962gと、その質量のメタホウ酸ナトリウムと等モルのアルミニウムに対して5.5%増加させた平均粒径30μmのアルミニウム1.133gとを混合した後、常温下で、図3に示す密閉容器内に装入した。次いで、密閉容器内を真空ポンプに接続して脱気した後、水素ガス(非酸化性ガス)で満たした。
(b)(2A)の工程
密閉容器内を300℃に加熱し、メタホウ酸ナトリウム及びアルミニウムの付着水分と、メタホウ酸ナトリウムの水和水とを放出させ気化した。このときの加熱時間は40分であった。
(c)(3A)の工程
密閉容器内を300℃に加熱するとともに、密閉容器内の撹拌棒を回転させ、粉砕媒体として直径5mmのアルミナ製ボールを用い、撹拌回転速度:1150rpmで圧延粉砕をして、密閉容器内の残留水分をアルミニウムと反応させ水素ガスと酸化アルミニウムに転換することで残留水分を除去した。なお、本工程の終了は密閉容器内の圧力上昇が生じなくなった時点で撹拌を終了させ、冷却した。撹拌時間は63分であった。
(d)(4A)の工程
水素ガスバルブを開状態として密閉容器内を水素ガスで満たし、310℃に加熱しつつ、粉砕媒体により5時間圧延粉砕した。このときの初期の水素ガス圧は0.81MPaであった。
以上のようにして、水素化ホウ素ナトリウムを得た。
(4A)の工程終了後、反応率を水素ガス圧の減少から計算した。減少量は最大ガス圧から、反応条件での最少圧力との差を算出し、水素ガス体積(モル量)に換算して算出した。その結果、反応率は35%であった。また、以下に示すようにして、反応生成物中の水素化ホウ素ナトリウムの含有率をヨウ素滴定法により求めたところ34%であった。
〜ヨウ素滴定法〜
(1)試料(反応生成物)50mgを0.1mgの桁まで量り取り、秤量瓶に採取した。
(2)(1)で採取した試料を200ml共栓付三角フラスコに移した。この共栓付三角フラスコに濃度20g/LのNaOH溶液40mlを加え、水浴上で加温して未反応のアルミニウム粉末を完全に分解した。
(3)室温まで冷却後、0.05Mヨウ素溶液20.0mlをホールピペットで加え,栓をして暗所で15分間放置した。
(4)塩酸3mlを加えてよく振り混ぜた後、0.1Mチオ硫酸ナトリウムで滴定を行った。
(5)滴定の終了はヨウ素の紫色が無色に変化した時点とした。
(6)試料を添加しないで空試験を行い,水素化ホウ素ナトリウム含有率を計算により求めた。含有率の計算に用いた式を以下に示す。
〈水素化ホウ素ナトリウム含有率を求める計算式〉
NaBH (質量%) = {(A−B)×0.1×f×37.83/8}/C×100
上記式中の変数及び定数は以下の通りである。
A :空試験の0.1M チオ硫酸ナトリウム溶液滴定値(ml)
B :試料液の0.1M チオ硫酸ナトリウム溶液滴定値(ml)
f :0.1Mチオ硫酸ナトリウム溶液のファクター
C :試料採取量(mg)
37.83:水素化ホウ素ナトリウムの分子量(g/mol)
8 :1mol/L水素化ホウ素ナトリウム溶液の規定度(N)
[実施例2]
(a)(1A)の工程
粉砕して、目開き100μmの篩にかけたメタホウ酸ナトリウム粉末を室温から600℃のTG測定を行った。水分による重量減少率は5.3%であった。この水分を含むメタホウ酸ナトリウム1.970gと、その質量のメタホウ酸ナトリウムと等モルのアルミニウムに対して4.4%増加させた平均粒径10μmのアルミニウム1.125gとを混合した後、常温下で、図3に示す密閉容器内に装入した。密閉容器を閉めて、密閉容器内を真空ポンプに繋ぎ脱気した。次いで、密閉容器内を水素ガスで満たし、0.5MPaとした。
(b)(2A)の工程
密閉容器内を500℃に加熱し、メタホウ酸ナトリウム及びアルミニウムの付着水分と、メタホウ酸ナトリウムの水和水とを放出させ気化した。
(c)(3A)の工程
密閉容器内を500℃に加熱するとともに、密閉容器内の撹拌棒を回転させ、粉砕媒体として直径5mmのアルミナ製ボールを用い、撹拌回転速度:250rpmで圧延粉砕をして、密閉容器内の残留水分をアルミニウムと反応させ水素ガスと酸化アルミニウムに転換することで残留水分を除去した。なお、本工程の終了は密閉容器内の圧力上昇が生じなくなった時点で撹拌を終了させた。撹拌時間は48分であった。
(d)(4A)の工程
密閉容器内を水素ガスで満たし、510℃に加熱しつつ、撹拌回転速度300rpmで粉砕媒体により70分圧延粉砕した。(4A)の工程の反応初期の水素ガス圧は0.97MPaであった。
以上のようにして、水素化ホウ素ナトリウムを得た。なお、本実施例の(2A)〜(4A)の工程は、図4に示す一連の工程に相当する。
(4A)の工程終了後、反応率を水素ガス圧の減少から計算した。減少量は最大ガス圧から、反応条件での最少圧力との差を算出し、水素ガス体積(モル量)に換算して算出した。その結果、反応率は32%であった。また、反応生成物中の水素化ホウ素ナトリウムの含有率を実施例1と同様にして求めたところ33%であった
[実施例3]
(a)(1B)の工程
粉砕して、目開き100μmの篩にかけたメタホウ酸ナトリウム粉末を室温から600℃のTG測定を行った。水分による重量減少率は4.2%であった。この水分を含むメタホウ酸ナトリウム1.980gと、その質量のメタホウ酸ナトリウムと等モルのアルミニウムに対して4.3%増加させた平均粒径30μmのアルミニウム1.980gを混合した後、常温下で、図3に示す密閉容器内に装入した。次いで、密閉容器内を真空ポンプに接続して真空にした後、0.1MpaのArで満たした、次いで、再度、1torr>の真空ポンプに接続して真空にした。
(b)(2B)の工程
密閉容器内を395℃に加熱し、メタホウ酸ナトリウム及びアルミニウムの付着水分と、メタホウ酸ナトリウムの水和水とを放出させ気化させ、真空脱気した。脱気後冷却した。
(c)(3B)の工程
水素ガスバルブを開状態として密閉容器内を水素ガスで満たし、310℃に加熱するとともに、5mmφのSUS304ステンレススチールボールを粉砕媒体として用い密閉容器内の撹拌棒を1150rpmで回転させ、圧延粉砕し、残留水分をアルミニウムと反応させ水素ガスと酸化アルミニウムに転換することで残留水分を除去した。なお、本工程の終了は密閉容器内の圧力上昇が生じなくなった時点で撹拌を終了させた。撹拌時間は1分であった。
(d)(4B)の工程
(3B)の工程に引き続き310℃に加熱しつつ、撹拌回転速度1150rpmで粉砕媒体により約5時間圧延粉砕した。このときの反応初期の水素ガス圧は0.75MPaであった。
以上のようにして、水素化ホウ素ナトリウムを得た。
(4B)の工程終了後、反応率を水素ガス圧の減少から計算した。減少量は最大ガス圧から、反応条件での最少圧力との差を算出し、水素ガス体積(モル量)に換算して算出した。その結果、反応率は37%であった。
[実施例4]
(a)(1B)の工程
粉砕して、目開き100μmの篩にかけたメタホウ酸ナトリウム粉末を室温から600℃のTG測定を行った。水分による重量減少率は7.8%であった。この水分を含むメタホウ酸ナトリウム1.971gと、その質量のメタホウ酸ナトリウムと等モルのアルミニウムに対して0.1%増加させた平均粒径30μmのアルミニウム1.079gを混合した後、常温下で、図3に示す密閉容器内に装入した。次いで、密閉容器内を真空ポンプに接続して真空にした後、0.1MpaのArで満たした。次いで、再度、1torr>の真空ポンプに接続して真空にした。
(b)(2B)の工程
密閉容器内を302℃に加熱し、メタホウ酸ナトリウム及びアルミニウムの付着水分と、メタホウ酸ナトリウムの水和水とを放出させ気化させ、真空脱気した。加熱脱気時間は40分であった。脱気後冷却した。
(c)(3B)の工程
水素ガスバルブを開状態として密閉容器内を水素ガスで満たし、310℃に加熱するとともに、実施例1と同じ粉砕媒体を用い密閉容器内の撹拌棒を600rpmで回転させ、圧延粉砕し、残留水分をアルミニウムと反応させ水素ガスと酸化アルミニウムに転換することで残留水分を除去した。なお、本工程の終了は密閉容器内の圧力上昇が生じなくなった時点で撹拌を終了させた。撹拌時間は8分であった。
(d)(4B)の工程
(3B)の工程に引き続き310℃に加熱しつつ、撹拌回転速度1150rpmで粉砕媒体により約5時間圧延粉砕した。このときの反応初期の水素ガス圧は0.806MPaであった。水素ガス圧の減少は2段となった。2段目の反応速度の増加は密閉反応容器の壁に層状に付着した未反応層が脱落して圧延粉砕の反応が再度加速したことによる。
以上のようにして、水素化ホウ素ナトリウムを得た。
(4B)の工程終了後、反応率を水素ガス圧の減少から計算した。減少量は最大ガス圧から、反応条件での最少圧力との差を算出し、水素ガス体積(モル量)に換算して算出した。その結果、反応率は43%であった。なお、本実施例の(2B)〜(4B)の工程は、図5に示す一連の工程に相当する。
[実施例5]
(a)(1B)の工程
粉砕して、目開き100μmの篩にかけたメタホウ酸ナトリウム粉末を室温から600℃のTG測定を行った。水分による重量減少率は4.2%であった。この水分を含むメタホウ酸ナトリウム0.760gと、その質量のメタホウ酸ナトリウムと等モルのアルミニウムに対して1.0%増加させた平均粒径30μmのアルミニウム0.42gを混合した後、常温下で、図3に示す密閉容器内に装入した。次いで、密閉容器内を1torr>の真空ポンプに接続して真空にした。
(b)(2B)の工程
密閉容器内を230℃に加熱し、メタホウ酸ナトリウム及びアルミニウムの付着水分と、メタホウ酸ナトリウムの水和水とを放出させ気化させ、真空脱気した。脱気後冷却した。
(c)(3B)の工程
水素ガスバルブを開状態として密閉容器内を水素ガスで満たし、280℃に加熱するとともに、5mmφのSUS304ステンレススチールボールを粉砕媒体として用い密閉容器内の撹拌棒を1150rpmで回転させ、圧延粉砕し、残留水分をアルミニウムと反応させ水素ガスと酸化アルミニウムに転換することで残留水分を除去した。なお、本工程の終了は密閉容器内の圧力上昇が生じなくなった時点で撹拌を終了させた。撹拌時間は3.5分であった。
(d)(4B)の工程
(3B)の工程に引き続き238℃に加熱しつつ、撹拌回転速度1150rpmで粉砕媒体により約7時間圧延粉砕した。このときの反応初期の水素ガス圧は0.65MPaであった。
以上のようにして、水素化ホウ素ナトリウムを得た。
(4B)の工程終了後、反応率を水素ガス圧の減少から計算した。減少量は最大ガス圧から、反応条件での最少圧力との差を算出し、水素ガス体積(モル量)に換算して算出した。その結果、反応率は38%であった。
以上の実施例1〜5より、水分を含むメタホウ酸ナトリウムを原料として使用しても、十分な生成効率で水素化ホウ素ナトリウムを生成することができたことが分かる。
[参考例1]
(a)(1A)の工程
粉砕して、目開き100μmの篩にかけたメタホウ酸ナトリウム粉末を室温から600℃のTG測定を行った。水分による重量減少率は5.3%であった。この水分を含むメタホウ酸ナトリウム1.963gと、無水メタホウ酸ナトリウムとしたときの等モルの平均粒径30μmのアルミニウム1.020gとを混合した後、常温下で、図3に示す密閉容器内に装入した。次いで、密閉容器内を真空ポンプに接続して脱気した後、水素ガス(非酸化性ガス)で満たした。
(b)(2A)の工程
密閉容器内を300℃に加熱し、メタホウ酸ナトリウム及びアルミニウムの付着水分と、メタホウ酸ナトリウムの水和水とを放出させ気化した。このときの加熱時間は40分であった。
(c)(3A)の工程
密閉容器内を310℃に加熱するとともに、密閉容器内の撹拌棒を回転させ、粉砕媒体として直径5mmのアルミナ製ボールを用い、撹拌回転速度:1150rpmで圧延粉砕をして、密閉容器内の残留水分をアルミニウムと反応させ水素ガスと酸化アルミニウムに転換することで残留水分を除去した。なお、本工程の終了は密閉容器内の圧力上昇が生じなくなった時点で撹拌を終了させ、冷却した。撹拌時間は76分であった。
(d)(4A)の工程
水素ガスバルブを開状態として密閉容器内を水素ガスで満たし、310℃に加熱しつつ、粉砕媒体により5時間圧延粉砕した。このときの初期の水素ガス圧は0.801MPaであった。
以上のようにして、水素化ホウ素ナトリウムを得た。
(4A)の工程終了後、反応率を水素ガス圧の減少から計算した。減少量は最大ガス圧から、反応条件での最少圧力との差を算出し、水素ガス体積(モル量)に換算して算出した。その結果、反応率は22%であった。また、反応生成物中の水素化ホウ素ナトリウムの含有率を実施例1と同様にして求めたところ23%であった。参考例1においては、原料のアルミニウムの量が、実施例1〜5と比較して少ないため、反応率が低かったと考えられる。
[参考例2]
(a)(1A)の工程
粉砕して、目開き100μmの篩にかけたメタホウ酸ナトリウム粉末を室温から600℃のTG測定を行った。水分による重量減少率は7.8%であった。この水分を含むメタホウ酸ナトリウム1.980gと、その質量のメタホウ酸ナトリウムと等モルのアルミニウムに対して0.3%減少させた平均粒径30μmのアルミニウム1.080gとを混合した後、常温下で、図3に示す密閉容器内に装入した。次いで、密閉容器内を真空ポンプに接続して脱気した後、水素ガス(非酸化性ガス)で満たした。
(b)(2A)の工程
密閉容器内を500℃に加熱し、メタホウ酸ナトリウム及びアルミニウムの付着水分と、メタホウ酸ナトリウムの水和水とを放出させ気化した。このときの加熱時間は60分であった。
(c)(3A)の工程
密閉容器内を500℃に加熱するとともに、密閉容器内の撹拌棒を回転させ、粉砕媒体として直径5mmのアルミナ製ボールを用い、撹拌回転速度:300rpmで圧延粉砕をして、密閉容器内の残留水分をアルミニウムと反応させ水素ガスと酸化アルミニウムに転換することで残留水分を除去した。なお、本工程の終了は密閉容器内の圧力上昇が生じなくなった時点で撹拌を終了させ、冷却した。撹拌時間は65分であった。
(d)(4A)の工程
水素ガスバルブを開状態として密閉容器内を水素ガスで満たし、510℃に加熱しつつ、粉砕媒体により1時間圧延粉砕した。このときの初期の水素ガス圧は1.05MPaであった。
以上のようにして、水素化ホウ素ナトリウムを得た。
(4A)の工程終了後、反応率を水素ガス圧の減少から計算した。減少量は最大ガス圧から、反応条件での最少圧力との差を算出し、水素ガス体積(モル量)に換算して算出した。その結果、反応率は16%であった。参考例2においては、原料のアルミニウムの量が、参考例1よりもさらに少ないため、反応率が低かったと考えられる。
なお、参考例1及び2は、第1の実施形態における(1A)〜(3A)の工程を含むにもかかわらず反応率が低かったのは、上記の通り原料のアルミニウムが少ないためである。原料が少ないと反応率が低くなるのは当然のことであり、本実施形態の(1A)〜(3A)の工程による効果を否定するものではない。なお、参考例1において、(1A)の工程で用いるアルミニウムの量を増やすか、又は(3A)の工程の直後にアルミニウムの不足分を追加することで反応率を高くすることができる。
[比較例1]
(a)(1A)の工程
粗く粉砕して目開き100μmの篩にかけ、篩上のメタホウ酸ナトリウムを室温から600℃のTG測定を行った。水分による重量減少率は3.7%であった。この水分を含むメタホウ酸ナトリウム1.942gと、その質量のメタホウ酸ナトリウムと等モルのアルミニウム重量に対して3.2%増加させた平均粒径30μmのアルミニウム1.096gを混合した後、常温下で、図3に示す密閉容器内に装入した。次いで、密閉容器内を真空ポンプに接続して脱気した。
(b)(2A)の工程
水素ガスバルブを開状態として密閉容器内を水素ガスで満たし、密閉容器内を308℃に加熱し、メタホウ酸ナトリウム及びアルミニウムの付着水分と、メタホウ酸ナトリウムの水和水とを放出させ気化させた。
(c)(3A)の工程
308℃に加熱するとともに、5mmφのアルミナ製ボールを粉砕媒体として用い密閉容器内の撹拌棒を1150rpmで回転させ、圧延粉砕し、残留水分をアルミニウムと反応させ水素ガスと酸化アルミニウムに転換することで残留水分を除去した。なお、本工程の終了は密閉容器内の圧力上昇が生じなくなった時点で撹拌を終了させた。撹拌時間は57分であった。
(d)(4A)の工程
(3A)の工程に引き続き310℃に加熱しつつ、撹拌回転速度300rpmで粉砕媒体により約5時間圧延粉砕した。このときの反応初期の水素ガス圧は0.795MPaであった。
以上のようにして、水素化ホウ素ナトリウムを得た。
(4A)の工程終了後、反応率を水素ガス圧の減少から計算した。減少量は最大ガス圧から、反応条件での最少圧力との差を算出し、水素ガス体積(モル量)に換算して算出した。その結果、反応率は3.7%であった。比較例1においては、粒径100μm超のメタホウ酸ナトリウムを原料としているため反応率が低かったと考えられる。
[比較例2]
(a)(1A)の工程
粉砕して、目開き100μmの篩にかけたメタホウ酸ナトリウム粉末を室温から600℃のTG測定を行った。水分による重量減少率は5.3%であった。この水分を含むメタホウ酸ナトリウム1.979gと、その質量のメタホウ酸ナトリウムと等モルのアルミニウムに対して2.2%少ない平均粒径30μmのアルミニウム1.059gを混合しないで、常温下で、図3に示す密閉容器内に装入した。次いで、密閉容器内を真空ポンプに接続して脱気した後、水素ガス(非酸化性ガス)で満たした。
(b)(2A)の工程
密閉容器内を230℃に加熱し、メタホウ酸ナトリウム及びアルミニウムの付着水分と、メタホウ酸ナトリウムの水和水とを放出させ気化した。このときの加熱時間は40分であった。
(c)(3A)の工程
密閉容器内を230℃に加熱するとともに、密閉容器内の撹拌棒を回転させ、粉砕媒体として直径5mmのアルミナ製ボールを用い、撹拌回転速度:300rpmで圧延粉砕をして、密閉容器内の残留水分をアルミニウムと反応させ水素ガスと酸化アルミニウムに転換することで残留水分を除去した。なお、本工程の終了は密閉容器内の圧力上昇が生じなくなった時点で撹拌を終了させ、冷却した。撹拌時間は168分であった。
(d)(4A)の工程
水素ガスバルブを開状態として密閉容器内を水素ガスで満たし、230℃に加熱しつつ、粉砕媒体により17時間圧延粉砕した。このときの初期の水素ガス圧は0.66MPaであった。
以上のようにして、水素化ホウ素ナトリウムを得た。
(4A)の工程終了後、反応率を水素ガス圧の減少から計算した。減少量は最大ガス圧から、反応条件での最少圧力との差を算出し、水素ガス体積(モル量)に換算して算出した。その結果、反応率は13%であった。比較例2においては、(3A)の工程における加熱温度が低温(230℃)であるため反応率が低かったと考えられる
以上の実施例から水分を含むメタホウ酸ナトリウム粉末から水分を脱水に要する時間は、加熱温度を高くするほど、また撹拌速度を高速にするほど、反応開始までのタイムラグが短くなることが分かる。また、同じ容器内で加熱真空脱気するとさらに短くなることが分かる。
次いで、図4及び図5を参照して、本実施形態の水素化ホウ素ナトリウムの製造方法と、従来の水素化ホウ素ナトリウムの製造方法とにおいて、製造に要する時間を比較する。図4は、本実施形態の製造方法における工程((2A)〜(4A)の工程)の過程を示し、図5は反応容器内で事前に加熱脱気する工程が踏まれている。図4及び図5において、横軸は時間を示し、縦軸はグラフによって異なり、水素ガス圧力(MPa)、容器内温度(℃)又は撹拌回転数(rpm)を示す。
図4においては、開始から500℃までの昇温期間の約1時間までが(2A)の工程であり、その後、圧延粉砕の250rpmの撹拌を開始してから最高圧力0.97Mpaに達するまでの48分間が(3A)の工程であり、さらにその後、撹拌回転数を300rpmとして水素ガス圧力が低下し始めてから約1時間が(4A)の工程である。すなわち、密閉容器への原料投入から水素化ホウ素ナトリウムの生成終了まで約3時間であることが分かる。
一方、図4においては、グラフの時間軸数値0.0より前が、メタホウ酸ナトリウムの付着水及び水和水を加熱脱気する工程である。そして、その後、水素ガスを満たし、加熱し、圧延粉砕して原料粉末に残る水分を脱水している。図5の(2A)の加熱脱気工程は長くなるが、(3B)の圧延粉砕脱水工程は図4の(3A)の工程に比べて大幅に短くなっておりトータルの工程時間は大きく変わらない。その後、圧延粉砕して原料混合物を反応させて水素化ホウ素ナトリウムを生成している。

Claims (12)

  1. (1A)水分を含み、粒径が100μm以下のメタホウ酸ナトリウムと、アルミニウムとを密閉容器内に装入した後、又は装入する前に前記密閉容器内を非酸化性ガスで満たす工程、
    (2A)前記密閉容器内を200℃以上に加熱保持し、前記メタホウ酸ナトリウム及び前記アルミニウムの付着水分と、前記メタホウ酸ナトリウムの水和水とを放出させ気化する工程、
    (3A)前記密閉容器内を280〜550℃に加熱して前記メタホウ酸ナトリウムと前記アルミニウムとを粉砕媒体により圧延粉砕し、前記密閉容器内の残留水分を前記アルミニウムと反応させ水素ガスと酸化アルミニウムに転換する工程、
    を順次含む、水素化ホウ素ナトリウムの製造方法。
  2. 前記(3A)の工程の後に、(4A)前記密閉容器内を200〜550℃に加熱し、かつ、水素ガス圧を0.3〜10MPaとしつつ、前記メタホウ酸ナトリウムと前記アルミニウムとを粉砕媒体により圧延粉砕する工程をさらに含む、請求項1に記載の水素化ホウ素ナトリウムの製造方法。
  3. 前記(1A)の工程におけるアルミニウムの質量を、以下の質量X1及び質量Y1の和よりも大きい質量とする、請求項1又は2に記載の水素化ホウ素ナトリウムの製造方法。
    質量X1:前記(1A)の工程で装入した質量のメタホウ酸ナトリウムと等モルで反応すると仮定したアルミニウムの質量
    質量Y1:前記(1A)の工程におけるメタホウ酸ナトリウムの熱重量測定による常温から600℃までの重量減少率に0.828と質量X1とを乗じた質量
  4. 前記(1A)の工程において装入するアルミニウムの質量が、前記(3A)の工程で前記密閉容器内の残留水分と反応するアルミニウムの質量以上、かつ、前記残留水分との反応及び水素化ホウ素ナトリウムの生成の反応に必要な全アルミニウム量の質量以下であって、前記全アルミニウム量に対する不足分のアルミニウムを追加装入する工程を、前記(3A)の工程の直後に設ける、請求項1〜3のいずれか1項に記載の水素化ホウ素ナトリウムの製造方法。
  5. (1B)水分を含み、粒径が100μm以下のメタホウ酸ナトリウムと、アルミニウムとを密閉容器内に装入する工程、
    (2B)前記密閉容器内を200℃以上に加熱保持し、前記メタホウ酸ナトリウム及び前記アルミニウムの付着水分と、前記メタホウ酸ナトリウムの水和水を放出気化させると共に、前記密閉容器内を脱気して水分を除去する工程、
    (3B)前記密閉容器内を280〜550℃に加熱して、前記メタホウ酸ナトリウムと前記アルミニウムとを粉砕媒体により圧延粉砕し、前記密閉容器内の残留水分をアルミニウムと反応させ水素ガスと酸化アルミニウムに転換する工程、
    を順次含む、水素化ホウ素ナトリウムの製造方法。
  6. 前記(3B)の工程の後に、(4B)前記密閉容器内を200〜550℃に加熱し、かつ、水素ガス圧を0.3〜10MPaとしつつ、前記メタホウ酸ナトリウムと前記アルミニウムとを粉砕媒体により圧延粉砕する工程をさらに含む、請求項5に記載の水素化ホウ素ナトリウムの製造方法。
  7. 前記(1B)の工程におけるアルミニウムの質量を、前記(1B)の工程で装入した質量のメタホウ酸ナトリウムに室温から600℃の熱重量減少率分の質量を引いた残りのメタホウ酸ナトリウムと等モルで反応すると仮定したアルミニウムの質量と同等とする、請求項5又は6に記載の水素化ホウ素ナトリウムの製造方法。
  8. 前記(1A)又は(1B)の工程におけるアルミニウムの平均粒径が1μm以上10mm以下である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の水素化ホウ素ナトリウムの製造方法。
  9. 前記(1A)又は(1B)工程の前に、水分を含むメタホウ酸ナトリウムとアルミニウムとを混合して混合物を得る工程を設け、前記(1A)又は(1B)の工程において、水分を含むメタホウ酸ナトリウムとアルミニウムとに代え、前記混合物を用いる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の水素化ホウ素ナトリウムの製造方法。
  10. 前記混合物がペレットである、請求項9に記載の水素化ホウ素ナトリウムの製造方法。
  11. 前記粉砕媒体がセラミック製ボールである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の水素化ホウ素ナトリウムの製造方法。
  12. 前記(3A)又は(3B)の工程における残留水分とアルミニウムとの反応を、前記密閉容器内の圧力変化が生じなくなった時点又は圧力が減少する時点まで継続させる、請求項1〜11のいずれか1項に記載の水素化ホウ素ナトリウムの製造方法。
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