JP4701391B2 - IgA腎症関連抗体の検出法 - Google Patents
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Description
[1]以下の(1)及び(2)からなる群より選択される一以上のステップを含む、試料中のIgA腎症関連抗体の検出法、
(1)ヘモフィルス属(Haemophilus sp.)細菌の外膜タンパク質に特異的に結合するIgA抗体を検出するステップ、及び
(2)ヘモフィルス・パラインフルエンザ(Haemophilus parainfluenzae)の外膜P6タンパク質に特異的に結合するIgA抗体を検出ステップ。
[2]前記ヘモフィルス属(Haemophilus sp.)細菌の外膜タンパク質のアミノ酸配列が、配列番号:1の配列又はそれと実質的に同一の配列であり、
前記ヘモフィルス・パラインフルエンザ(Haemophilus parainfluenzae)の外膜P6タンパク質のアミノ酸配列が、配列番号:2の配列又はそれと実質的に同一の配列である、
ことを特徴とする、上記[1]に記載の検出法。
[3]以下の(1)及び(2)からなる群より選択される一以上のタンパク質を含む、IgA腎症診断用又はIgA腎症研究用試薬、
(1)ヘモフィルス属(Haemophilus sp.)細菌の外膜タンパク質、及び
(2)ヘモフィルス・パラインフルエンザ(Haemophilus parainfluenzae)の外膜P6タンパク質。
[4]前記ヘモフィルス属(Haemophilus sp.)細菌の外膜タンパク質のアミノ酸配列が、配列番号:1の配列又はそれと実質的に同一の配列であり、
前記ヘモフィルス・パラインフルエンザ(Haemophilus parainfluenzae)の外膜P6タンパク質のアミノ酸配列が、配列番号:2の配列又はそれと実質的に同一の配列である、
ことを特徴とする、上記[3]に記載の試薬。
[5]上記[3]又は[4]に記載の試薬と使用説明書とを含む、IgA腎症診断用キット。
[6]抗IgA抗体を更に含む、上記[5]に記載のIgA腎症診断用キット。
[7]以下の(1)又は(2)のステップを含む、IgA腎症に有効な化合物のスクリーニング方法、
(1)ヘモフィルス属(Haemophilus sp.)細菌の外膜タンパク質、及びヘモフィルス・パラインフルエンザ(Haemophilus parainfluenzae)の外膜P6タンパク質からなる群より選択されるタンパク質と、該タンパク質に特異的に結合するIgA抗体とが免疫複合体を形成することに対する、試験化合物の阻害活性を調べるステップ、
(2)ヘモフィルス属(Haemophilus sp.)細菌の外膜タンパク質、及びヘモフィルス・パラインフルエンザ(Haemophilus parainfluenzae)の外膜P6タンパク質からなる群より選択されるタンパク質と、該タンパク質に特異的に結合するIgA抗体との免疫複合体が腎糸球体に結合することに対する、試験物質の阻害活性を調べるステップ。
[8]以下の(1-1)及び(1-2)のステップを含むことを特徴とする、上記[7]に記載のスクリーニング方法、
(1-1)試験化合物の存在下及び非存在下において、ヘモフィルス属(Haemophilus sp.)細菌の外膜タンパク質、及びヘモフィルス・パラインフルエンザ(Haemophilus parainfluenzae)の外膜P6タンパク質からなる群より選択されるタンパク質と、該タンパク質に特異的に結合するIgA抗体とをin vitroで接触させるステップ、
(1-2)前記タンパク質と前記IgA抗体との免疫複合体の形成量を、試験化合物の存在下で前記ステップ(1-1)を実施したときと、試験化合物の非存在下で前記ステップ(1-1)を実施したときとの間で比較するステップ。
[9]以下の(2-1)〜(2-4)のステップを含むことを特徴とする、[7]に記載のスクリーニング方法、
(2-1)ヘモフィルス属(Haemophilus sp.)細菌の外膜タンパク質、及びヘモフィルス・パラインフルエンザ(Haemophilus parainfluenzae)の外膜P6タンパク質からなる群より選択されるタンパク質と、該タンパク質に特異的に結合するIgA抗体との免疫複合体を用意するステップ、
(2-2)試験化合物と前記免疫複合体とを非ヒト動物に投与するステップ、
(2-3)前記非ヒト動物の腎糸球体への前記免疫複合体の結合量を検出するステップ、及び
(2-4)ステップ(2-3)で検出した結合量を、前記免疫複合体のみを非ヒト動物に投与した場合に検出される結合量と比較するステップ。
[10]前記ヘモフィルス属(Haemophilus sp.)細菌の外膜タンパク質のアミノ酸配列が、配列番号:1の配列又はそれと実質的に同一の配列であり、
前記ヘモフィルス・パラインフルエンザ(Haemophilus parainfluenzae)の外膜P6タンパク質のアミノ酸配列が、配列番号:2の配列又はそれと実質的に同一の配列である、
ことを特徴とする、上記[8]又は[9]に記載のスクリーニング方法。
(1)ヘモフィルス属(Haemophilus sp.)細菌の外膜タンパク質に特異的に結合するIgA抗体を検出するステップ
(2)ヘモフィルス・パラインフルエンザ(Haemophilus parainfluenzae)の外膜P6タンパク質に特異的に結合するIgA抗体を検出ステップ
本発明の検出法では、発症に関わる過程を測定対象とすることから、特に早期診断に有用な情報を与える。
OMP:outer membrane protein [Haemophilus sp.], ACCESSION:CAA07454, http://www.ncbi.nlm.nih.gov/(配列番号:1)
一方、OMP P6については、後述の実施例に示すように、本発明者らによって全長アミノ酸配列(配列番号:2)が明らかとなった。尚、以下に示すようにOMP P6はデータベース上に登録されており、その部分アミノ酸配列が示されている。
OMP P6:outermembrane P6 protein homologue [Haemophilus parainfluenzae], ACCESSION:BAA06035, http://www.ncbi.nlm.nih.gov/(配列番号:8)
免疫学的検出法の一例を以下に示す。
(1)まず、不溶性支持体に固定した抗原タンパク質(例えばOMP)を用意する。不溶性支持体としては例えばポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコン樹脂、ナイロン樹脂等の樹脂や、ガラス等の水に不溶性の物質を用いることができる。抗原タンパク質は、それを保有する細菌から抽出、分離することによって得ることができる(Gousset, N et al.,Infect. Immun. 67(1), 8-15 (1999)等を参照できる)。また、各タンパク質の配列情報を利用することによって組換えタンパク質として得ることもできる。即ち、配列番号:1又は配列番号:2のアミノ酸配列をコードする核酸を適当な宿主細胞内で発現させて得られる組換えタンパク質を本発明の検出法に使用できる。このような遺伝子工学的手法によれば目的のタンパク質を均質に且つ大量に得ることが比較的容易である。
配列番号:1又は配列番号:2のアミノ酸配列と実質的に同一の配列を有するタンパク質を抗原タンパク質として用いることもできる。アミノ酸配列に関して使用する用語「実質的に同一」とは、比較される二つのアミノ酸配列間で配列上の相違が比較的小さく且つ配列上の相違が抗原タンパク質の機能、即ち抗原タンパク質が生体中のIgAと結合して免疫複合体を形成し、IgA腎症の原因となることに関して実質的な影響を与えないことを意味する。基準となるアミノ酸配列に対して、抗原タンパク質の機能に実質的な影響を与えない範囲で一部の改変を含んでいるとみることができるアミノ酸配列は実質的に同一なアミノ酸配列である。ここでの「アミノ酸配列の一部の改変」とは、アミノ酸配列を構成する1〜数個のアミノ酸の欠失、置換、若しくは1〜数個のアミノ酸の付加、挿入、又はこれらの組合せによりアミノ酸配列に変化が生ずることをいう。アミノ酸配列の変異の位置は特に限定されず、複数の位置で変異を生じていてもよい。ここでの複数とはアミノ酸配列を構成する全アミノ酸の例えば10%以内に相当する数であり、好ましくは全アミノ酸の5%以内に相当する数である。さらに好ましくは全アミノ酸の1%以内に相当する数である。
二つのアミノ酸が実質的に同一であるか否かは例えば、各アミノ酸配列を含むタンパク質(他の領域の配列は同一)とIgA腎症の患者の血清との反応性を比較することによって判定できる。例えば、比較される二つのタンパク質を用いて反応性を調べたときに反応性に大差がなければ両者の間に実質的な同一性を認定できる。
本発明の他の局面はIgA腎症診断用又はIgA腎症研究用試薬に関する。本発明の試薬は、本発明の検出法における抗原タンパク質として好適に使用され得る。或いは、IgA腎症の発症メカニズムや症状の進展メカニズムなどを研究するための実験ツールとして使用され得る。また、後述のスクリーニング方法における抗原タンパク質として、或いは後述のスクリーニング方法に使用されるIgA抗体を調製するための抗原として本発明の試薬を使用することもできる。
(1)ヘモフィルス属(Haemophilus sp.)細菌の外膜タンパク質
(2)ヘモフィルス・パラインフルエンザ(Haemophilus parainfluenzae)の外膜P6タンパク質
本発明の各方法(IgA腎症特異的抗体の検出法、後述のIgA腎症に有効な化合物のスクリーニング方法)を、キット化した試薬等を用いて実施してもよい。本発明の他の局面はこのような目的に使用されるキットを提供する。例えば、上記の本発明の試薬(IgA腎症診断用又はIgA腎症研究用試薬)、反応用試薬、希釈液、反応容器などをキットに含めることができる。尚、本発明のキットには通常、使用説明書が添付される。キットを用いることによって、本発明の方法をより簡便に且つより短時間で実施することが可能となる。
本発明のキットに、抗原抗体反応や染色等、免疫染色を実施する上で必要な一以上の試薬(例えば非特異的結合を阻害するためのBSA、緩衝液など)や器具などを更に含めてもよい。
本発明は更なる局面としてIgA腎症に有効な化合物のスクリーニング方法を提供する。本発明のスクリーニング方法で選抜された化合物は抗IgA腎症に関する医療措置に対して有効であると期待される。即ち、本発明のスクリーニング方法によって選抜された化合物はIgA腎症に対する薬剤の有力な候補又はそのような薬剤を開発する際の有用な材料となる。選抜された化合物がIgA腎症に対して十分な薬効を有する場合にはそのまま薬剤の有効成分として使用することができる。一方、十分な薬効を有しない場合には化学的修飾などの改変を施してその薬効を高めた上で薬剤の有効成分としての使用に供することができる。勿論、十分な薬効を有する場合であっても、更なる薬効の増大を目的として同様の改変を施してもよい。
(1)ヘモフィルス属(Haemophilus sp.)細菌の外膜タンパク質、及びヘモフィルス・パラインフルエンザ(Haemophilus parainfluenzae)の外膜P6タンパク質からなる群より選択されるタンパク質と、該タンパク質に特異的に結合するIgA抗体とが免疫複合体を形成することに対する、試験化合物の阻害活性を調べるステップ
(2)ヘモフィルス属(Haemophilus sp.)細菌の外膜タンパク質、及びヘモフィルス・パラインフルエンザ(Haemophilus parainfluenzae)の外膜P6タンパク質からなる群より選択されるタンパク質と、該タンパク質に特異的に結合するIgA抗体との免疫複合体が腎糸球体メサンギウム領域に結合(沈着)すること対する、試験物質の阻害活性を調べるステップ
次に、抗原タンパク質とIgA抗体とからなる免疫複合体の形成量を、試験化合物の存在下でステップ(1-1)を実施したときと、試験化合物の非存在下でステップ(1-1)を実施したときとの間で比較する(ステップ(1-2))。その結果、試験化合物の存在下の条件の方が免疫複合体の形成量が少なければ、免疫複合体の形成を阻害する活性を試験化合物が有すると判断し、当該試験化合物を有望な薬剤候補として選抜する。
免疫複合体の形成量は、抗原タンパク質に結合しているIgA抗体の検出によって求めることができる。抗原タンパク質に結合しているIgA抗体の検出には例えば標識化抗IgA抗体を利用できる。即ち、標識化抗IgA抗体を反応させ、特異的に結合した標識量を測定すれば、抗原タンパク質に対して結合したIgA抗体量(即ち免疫複合体形成量)を間接的に算出することができる。
次に、試験化合物と免疫複合体とを非ヒト動物に投与する(ステップ(2-2))。非ヒト動物とは例えばヒト以外の霊長類(サル、チンパンジーなど)、マウス、ラット、ウサギ、ウシ、ウマ、ヒツジ、イヌ、ネコ等である。この中でもマウス又はラットを好適に用いることができる。投与経路は特に限定されず、経口投与、静脈内投与(注射)、皮内投与(注射)、皮下投与(注射)、経皮投与、口腔内投与等から適当なものを選択できる。
試験化合物の投与量、及び免疫複合体の投与量は任意に設定可能である。例えば、非ヒト動物に致死的な影響を与えない範囲で可能な限り最大の投与量とすることができる。
投与回数も任意に設定可能である。例えば、投与回数を1回〜20回の範囲内とする。
(1)ヘモフィルス・パラインフルエンザ菌の外膜タンパク質の調製、及びウエスタンブロット
以下の手順に従い、IgA腎症患者の咽頭より分離培養したH.parainfluenzae 6株より外膜蛋白質を調製し、グラジエントゲルを用いて分離した(Haemophilus parainfluenzae:108-62,108-63,108-64,108-66,111-106,111-107)。まず、一夜培養したH.parainfluenzaeを集菌し、超音波処理に供して菌体を破砕した。続いて菌体破砕液を遠心分離(12000rpm、20分)した。得られた上清を分離し、遠心分離に供した(38000rpm、60分)。得られた沈渣(ペレット)を外膜タンパク質とした。次に、グラジエントゲル(10%〜20%)を用いたSDS-PAGEに外膜タンパク質を供した。
続いて、常法に従い、SDS-PAGE後のゲルよりタンパク質をPVDF膜に転写した後、0.5% ポリビニルピロリドン40(Polyvinylpyrrolidone40:PVP40)でブロッキングを行った。尚、PVDF膜から抽出したサンプルをESI-MS/MSに直接かけることを前提として、ポリビニルピロリドン40(Polyvinylpyrrolidone40)やグリシン等のアミノ酸を使ってブロッキングの条件を検討したところ、0.5%PVP40によるブロッキングが最適であることがわかった。
ブロッキング後のPVDF膜に対して、1次抗体として5人のIgA腎症患者血清および対照として健常人の血清を反応させた(1000倍希釈の血清を使用、室温、一晩)。続いて、非特異的結合成分を洗浄除去(1×PBSによる洗浄、合計3回)した後、2次抗体としてHRP標識ヤギ抗ヒトIgA(HRP-conjugate goat anti-human IgA)抗体を反応させた(室温、60分間)。発色基質(H2O2)を添加して発色させたところ、分子量約38kDと約15kDの位置にIgA患者特異的なバンドが認められた(図1)。これらIgA腎症患者特異的なバンドをPVDF膜より切り出してチューブに移した後、トリプシンを作用させた(on membrane digestion、室温、一晩)。トリプシン消化によって得られたペプチド断片を以下の質量分析に供した。
質量分析はESI-MS/MS(エレクトロスプレイイオン化タンデム質量分析)を用いた。詳細には、上記操作で得られたペプチド断片をLCQ Advantge装置(Themo Finigan社製)で分析し、得られた結果を使用してMS/MS Ion Search(Matrix Science社製)を行った。このようにして決定されたペプチド断片のアミノ酸配列を既報のデータベース(NCBInr)に照合した。その結果、IgA腎症の原因抗原と考えられる2種類のタンパク質(OMP及びOMP P6)が同定された(図2)。OMP(ヘモフィルス属細菌の外膜タンパク質(配列番号:1):outer membrane protein [Haemophilus sp.], ACCESSION:CAA07454, http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)は、IgA腎症患者の血清特異的に検出された約38kDのバンドに含まれていたタンパク質である。同様にOMP P6(ヘモフィルス・パラインフルエンザの外膜P6タンパク質(配列番号:8(部分アミノ酸配列)):Outermembrane P6 protein homologue, Haemophilus parainfluenzae:outermembrane P6 protein homologue [Haemophilus parainfluenzae], ACCESSION:BAA06035, http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)は約15kDのバンドに含まれていたタンパク質である。
同定された抗原タンパク質の中でそれをコードする全塩基配列が既知のもの(OMP)については組換えタンパク質を作製し、以下の試験に使用した。一方、全塩基配列が未知のもの(OMP P6)についてはまず、近縁菌であるH.influenzaeの配列と比較し、PCR用のプレイマーを作製した。
フォワードプライマー:ATGAACAAATTTGTTAAATC(配列番号:4)
リバースプライマー: GTACGCTAACACTGCACGAC(配列番号:5)
これらのプライマーを用いてH.parainfluenzaeのゲノムDNAをテンプレートとしたPCRを行い、その産物をベクターにクローニングし、H.parainfluenzae OMP P6の全長アミノ酸配列及び全長塩基配列の決定を試みた。その結果、これらの配列を決定することに成功した。H.parainfluenzae OMP P6の全長アミノ酸配列及び全長塩基配列をそれぞれ配列番号:2及び配列番号:3に示す。
約38kDaのバンドから検出されたOMPは塩基配列も既知であったため、他のIgA腎症患者においても抗原となっていることを確認する目的で以下の試験を実施した。
(1)組換えタンパク質の作製
OMPを特異的に増幅可能な以下のプライマーを作製した。
フォワードプライマー:ATGAAAAAAACTGCAATC(配列番号:6)
リバースプライマー: TTTAGTACCGTTTACTGC(配列番号:7)
組換えOMPを用いて、患者血清及び健常人血清を一次抗体としたイムノブロットを実施した。尚、イムノブロットの手順は、抗原タンパク質の同定の際のイムノブロットの手順と同様とした。
イムノブロットの結果を図3に示す。全ての患者血清に対して明らかに顕著な反応が見られた。即ち、全ての患者の血清中にOMPを認識する抗体が高率に存在していることを確認した。
以上のように、IgA腎症患者に特異的なバンドをイムノブロット後の膜より切り出し、直接ESI MS/MSで解析することによって、IgA腎症の病因抗原と考えられるタンパク質(抗原タンパク質)を2種類同定することに成功した。換言すれば、IgA腎症の患者の血清中にはこれらの抗原タンパク質に対する抗体が存在することが明らかとなった。この成果より、同定に成功した抗原タンパク質に対するIgA抗体を検出すること(即ち、当該IgA抗体の存否又は存在量を調べること)がIgA腎症の診断に有用な情報を与えると考えられた。
一方、同定に成功したタンパク質の中でOMPについてはその組換えタンパク質を作製して患者血清との反応性を検証したところ、試験した全ての患者の血清中にOMPを認識する抗体が高率に存在することが確認された。この結果は、H.parainfluenzaeの外膜タンパク質であるOMPがIgA腎症の発症に関与していることを強く裏付けるものであり、OMPに対する抗体の存否又は存在量がIgA腎症の有効な診断マーカーとなることが明らかとなった。
本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
Claims (7)
- 以下の(1)及び(2)からなる群より選択される一以上のステップを含む、試料中のIgA腎症関連抗体の検出法、
(1)配列番号:1の配列又はそれと実質的に同一の配列からなる、ヘモフィルス属(Haemophilus sp.)細菌の外膜タンパク質、に特異的に結合するIgA抗体を検出するステップ、及び
(2)配列番号:2の配列又はそれと実質的に同一の配列からなる、ヘモフィルス・パラインフルエンザ(Haemophilus parainfluenzae)の外膜P6タンパク質、に特異的に結合するIgA抗体を検出ステップ。 - 以下の(1)及び(2)からなる群より選択される一以上のタンパク質を含む、IgA腎症診断用又はIgA腎症研究用試薬、
(1)配列番号:1の配列又はそれと実質的に同一の配列からなる、ヘモフィルス属(Haemophilus sp.)細菌の外膜タンパク質、及び
(2)配列番号:2の配列又はそれと実質的に同一の配列からなる、ヘモフィルス・パラインフルエンザ(Haemophilus parainfluenzae)の外膜P6タンパク質。 - 請求項2に記載の試薬と使用説明書とを含む、IgA腎症診断用キット。
- 抗IgA抗体を更に含む、請求項3に記載のIgA腎症診断用キット。
- 以下の(1)又は(2)のステップを含む、IgA腎症に有効な化合物のスクリーニング方法、
(1)配列番号:1の配列又はそれと実質的に同一の配列からなる、ヘモフィルス属(Haemophilus sp.)細菌の外膜タンパク質、及び配列番号:2の配列又はそれと実質的に同一の配列からなる、ヘモフィルス・パラインフルエンザ(Haemophilus parainfluenzae)の外膜P6タンパク質からなる群より選択されるタンパク質と、該タンパク質に特異的に結合するIgA抗体とが免疫複合体を形成することに対する、試験化合物の阻害活性を調べるステップ、
(2)配列番号:1の配列又はそれと実質的に同一の配列からなる、ヘモフィルス属(Haemophilus sp.)細菌の外膜タンパク質、及び配列番号:2の配列又はそれと実質的に同一の配列からなる、ヘモフィルス・パラインフルエンザ(Haemophilus parainfluenzae)の外膜P6タンパク質からなる群より選択されるタンパク質と、該タンパク質に特異的に結合するIgA抗体との免疫複合体が腎糸球体に結合することに対する、試験物質の阻害活性を調べるステップ。 - 以下の(1-1)及び(1-2)のステップを含むことを特徴とする、請求項5に記載のスクリーニング方法、
(1-1)試験化合物の存在下及び非存在下において、配列番号:1の配列又はそれと実質的に同一の配列からなる、ヘモフィルス属(Haemophilus sp.)細菌の外膜タンパク質、及び配列番号:2の配列又はそれと実質的に同一の配列からなる、ヘモフィルス・パラインフルエンザ(Haemophilus parainfluenzae)の外膜P6タンパク質からなる群より選択されるタンパク質と、該タンパク質に特異的に結合するIgA抗体とをin vitroで接触させるステップ、
(1-2)前記タンパク質と前記IgA抗体との免疫複合体の形成量を、試験化合物の存在下で前記ステップ(1-1)を実施したときと、試験化合物の非存在下で前記ステップ(1-1)を実施したときとの間で比較するステップ。 - 以下の(2-1)〜(2-4)のステップを含むことを特徴とする、請求項5に記載のスクリーニング方法、
(2-1)配列番号:1の配列又はそれと実質的に同一の配列からなる、ヘモフィルス属(Haemophilus sp.)細菌の外膜タンパク質、及び配列番号:2の配列又はそれと実質的に同一の配列からなる、ヘモフィルス・パラインフルエンザ(Haemophilus parainfluenzae)の外膜P6タンパク質からなる群より選択されるタンパク質と、該タンパク質に特異的に結合するIgA抗体との免疫複合体を用意するステップ、
(2-2)試験化合物と前記免疫複合体とを非ヒト動物に投与するステップ、
(2-3)前記非ヒト動物の腎糸球体への前記免疫複合体の結合量を検出するステップ、及び
(2-4)ステップ(2-3)で検出した結合量を、前記免疫複合体のみを非ヒト動物に投与した場合に検出される結合量と比較するステップ。
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