JP4698181B2 - 窒化物半導体レーザ素子 - Google Patents

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本発明は、III−V族系窒化物半導体からなる半導体レーザ素子に関する。
III−V族系窒化物半導体レーザ素子を用いた短波長光源は、光記録媒体を対象とした情報の読み出しレートや書き込みレートを向上させる技術として注目されている。また、その発光輝度を向上させるための技術開発が盛んであり、窒化物半導体レーザ素子の活性層を、1以上の井戸層と障壁層が積層された量子井戸構造とする技術が検討されている。
量子井戸構造とする利点は、活性層における電子やホールの状態密度関数ρを人工的に狭く制御できることにあり、これによって、バルク型のような量子井戸構造でない活性層構造とした場合に比してレーザ素子の発振閾値が大幅に引き下がるため、素子の発光輝度が飛躍的に向上すると考えられている。
ところで、このような量子井戸構造の活性層をもつ半導体レーザ素子では、活性層に近接して設けられた半導体層中のp型不純物が活性層内に拡散して、素子の発振閾値を上昇させてしまうという問題がある。そこで、このようなp型不純物の活性層への拡散防止を目的として、図4に示すように、活性層407とp型窒化物半導体層(p型光ガイド層409)との間にn型窒化物半導体層(拡散防止層414)を設ける技術がある(例えば、特許文献1参照。)。
特開平10−200214号公報(第2頁)
しかしながら、この特許文献1に記載の技術を用いて窒化物半導体レーザ素子を作製しても、素子の発振閾値を十分に安定して引き下げることができず、また、100mW以上の高出力で連続駆動させた場合に駆動電流が経時的に上昇してしまうため動作寿命が短いという課題がある。
本発明は、窒化物半導体レーザ素子における上記課題を解決するものであり、発振閾値が安定して低く、また、100mW以上の高出力にて連続駆動させても駆動電流が経時上昇しないIII−V族系窒化物半導体レーザ素子を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明のIII−V族系窒化物半導体レーザ素子は、基板と、前記基板の上に設けられた、n型不純物がドープされた下部クラッド層と、前記下部クラッド層の上に設けられた、導電性不純物がドープされていないアンドープ型の下部隣接層と、前記下部隣接層の上に設けられた、アンドープ型の障壁層と当該障壁層を上下に挟むアンドープ型の井戸層とからなる量子井戸活性層と、前記量子井戸活性層の上に設けられた、アンドープ型の上部隣接層と、前記上部隣接層の上に接して設けられた、n型不純物がドープされた第1の層と、前記第1の層の上に設けられた、アンドープ型の第2の層と、前記第2の層の上に設けられた、p型不純物がドープされた第3の層と、前記第3の層の上に設けられた、p型不純物がドープされた上部クラッド層と、を備え、前記量子井戸活性層中で最下段の井戸層が前記下部隣接層に接し、最上段の井戸層が前記上部隣接層と接しているIII−V族系窒化物半導体レーザ素子であって、前記下部クラッド層のバンドギャップエネルギーEclと、前記下部隣接層のバンドギャップエネルギーEnlと、前記量子井戸活性層の井戸層のバンドギャップエネルギーEwと、障壁層のバンドギャップエネルギーEbと、前記上部隣接層のバンドギャップエネルギーEnuと、前記第1の層のバンドギャップエネルギーE1と、前記第2の層のバンドギャップエネルギーE2と、前記第3の層のバンドギャップエネルギーE3と、前記上部クラッド層のバンドギャップエネルギーEcuとが、以下の関係式(1)を満たし、前記量子井戸活性層中で最上段の井戸層と前記第3の層との距離Lが、50nm以上200nm以下であり、前記上部隣接層が単層構造であり、前記第1の層が、前記上部隣接層に接しており、且つ、前記第1の層の層厚が5nm以上50nm以下であり、前記第1の層のバンドギャップエネルギーE1が、前記上部隣接層のバンドギャップエネルギーEnuより大きく、且つ、前記第2の層のバンドギャップエネルギーE2以下であることを特徴とする。
〔数1〕
Ew<Ecl、Enl、Eb、Enu、E1、E2、Ecu<E3 ・・・(1)
なお、上記『ドープ』とは、導電性不純物の半導体結晶中への意図的な添加を意味し、ドープされた半導体層とは、導電性不純物が意図的に添加されている半導体層を意味する。
また、上記『アンドープ型』とは、導電性不純物を意図的に添加していない半導体結晶の状態を意味するものであり、C、H、O、Clなどの不純物や、導電性にほとんど影響を与えない程度(濃度が約5×1016/cm3未満)の導電性制御不純物が、結晶成長時に不可避的に混入したような半導体結晶であってもこれに含まれる。
本発明のIII−V族系窒化物半導体レーザ素子にかかる上記構成であると、第3の層のバンドギャップエネルギーを、活性層中の井戸層よりも大幅に高く設定しているため、活性層に注入される電子のオーバーフローを防止し、活性層へのキャリアの注入効率を向上させて、素子の発振閾値を引き下げることができる。
さらに、上記構成であると、活性層をアンドープ型としているため、不純物の添加に起因した結晶性の低下が引き起こされることがない。これにより、活性層の耐久性が高くなるため、100W以上の高出力なレーザ発振によって光エネルギー密度を増大させても、結晶性が急激に劣化して駆動電流値が経時上昇することがない。
また、上記構成であると、第3の層中にp型不純物がドーピングされているため、第3の層の導電性が高い。これにより、pドープ上部クラッド層から活性層への正孔(ホール)注入が円滑になる、すなわち活性層へのキャリアの注入効率が向上するため、素子の発振閾値が引き下がる。
また、上記構成であると、n型不純物がドープされた第1の層を、pドープの第3の層と活性層との間に設けることにより、素子中のpn接合位置が安定して、結晶成長時に発生しうる成長条件の摂動への耐性が高くなるため、素子を歩留まりよく作製することができる。
また、pドープ層には、若干ではあるがレーザ光を吸収してしまう性質があり、レーザ光の光分布が大きい活性層近傍にpドープ層を設けると導波損失を引き起こしてしまう。また、窒化物半導体は結晶構造がウルツァイトであって等方的でないため、結晶内部に電界が存在しており、活性層とのバンドギャップ差が大きな半導体層が活性層近傍に配されると、活性層のバンドが曲げられてしまい、バンドフラット状態を得ることができず、活性層におけるキャリアの再結合確率が低下する。
しかしながら、本発明にかかる上記構成であると、第3の層の下面と活性層の最上段に設けられた井戸層の上面との距離(L)が50nm以上であるため、顕著な導波損失を引き起こすことがなく、また活性層のバンドフラット状態を十分に得ることができる。他方、離間間隔(L)の上限が200nm以下であるため、pドープ上部クラッド層から活性層へのホール注入が距離的に困難となることもない。
また、この構成であると、nドープの第1の層を5nm以上の層厚とするため、当該層にn型の導電性を確立させることができ、活性層の上下をnドープ層で挟み込んで活性層をバンドフラット状態とすることができる。他方、層厚を50nm以下としてn型不純物の含有量を制限しているため、pドープ上部クラッド層から活性層へのホール注入が、当該第1の層によって電気的に阻害されることがない。
また、第1の層のバンドギャップエネルギーが上部隣接層のそれよりも大きいと、活性層へのキャリア注入効率が向上する。
上記本発明のIII−V族系窒化物半導体レーザ素子は、さらに、前記下部クラッド層と前記下部隣接層との間に下部ガイド層が設けられ、当該下部ガイド層のバンドギャップエネルギーEglが以下の関係式(2)を満たす構成とすることができる。また、上記本発明のIII−V族系窒化物半導体レーザ素子は、さらに、前記第3の層と前記上部クラッド層との間に上部ガイド層が設けられ、当該上部ガイド層のバンドギャップエネルギーEguが以下の関係式(3)を満たす構成とすることができる。
〔数2〕
Ew<Egl<Ecl ・・・(2)
〔数3〕
Ew<Egu<Ecu ・・・(3)
これらの構成であると、光ガイド層を設けることで活性層の光閉じ込め係数が増加するため、素子の発振閾値をさらに引き下げることができる。
上記本発明のIII−V族系窒化物半導体レーザ素子は、前記距離Lと、前記量子井戸活性層中で最上段の井戸層と前記第1の層との距離Dとが、以下の関係式(4)を満たす構成とすることができる。
〔数4〕
2D≦L ・・・(4)
上記本発明のIII−V族系窒化物半導体レーザ素子は、さらに、前記下部隣接層または前記上部隣接層の層厚が0.5nm以上である構成とすることができる。
活性層の上下0.5nm程度の範囲ではキャリアが量子的に染み出すことがあるが、本発明にかかる上記構成であると、活性層の上下に接して設けられている下部隣接層または上部隣接層の層厚を0.5nm以上として、導電性不純物をドープさせた半導体層を活性層から0.5nm以上離して設けているため、このような染み出しキャリアが捕縛されてキャリアの注入効率が低下することがない。
本発明によると、III−V族系窒化物半導体レーザ素子中のpn接合位置が安定し、さらに、活性層の結晶性が低下しにくく、キャリアの注入効率が向上するため、レーザ素子の発振閾値を安定して引き下げることができ、また、100mW以上の高出力にて連続駆動させた場合であっても駆動電流が経時上昇することがない。
本発明の窒化物半導体レーザ素子かかる最良の形態について、参考の形態1,4,5,7、実施の形態2,3,6に基づき説明する。
参考の形態1〉
図1は、本発明の参考の形態1におけるIII−V族系窒化物半導体レーザ素子の断面模式図である。図1で示すように、この窒化物半導体レーザ素子は、n型GaN基板100と、この基板の一方主面に接して設けられた、ケイ素(Si)をドープさせたnドープGaN層101(厚さ0.5μm)と、このGaN層101の上に接して設けられた、ケイ素をドープさせたnドープAl0.07Ga0.93N下部クラッド層102(厚さ2μm)と、この下部クラッド層102の上に接して設けられた、ケイ素をドープさせたnドープGaN下部ガイド層103(厚さ0.1μm)と、この下部ガイド層103の上に接して設けられた、導電性不純物をドープさせていないアンドープ型のGaN下部隣接層104(厚さ20nm)と、この下部隣接層104の上に接して設けられた活性層105(その詳細は後述する)と、この活性層105の上に接して設けられたアンドープ型のGaN上部隣接層106(厚さ20nm)と、この上部隣接層106の上に接して設けられた、第1の層としてのnドープGaN層107(厚さ20nm)と、この第1の層107の上に接して設けられた、第2の層としてのアンドープ型のGaN層108(厚さ30nm)と、この第2の層108の上に接して設けられた、第3の層としてのpドープAl0.2Ga0.8N層109(厚さ15nm)と、この第3の層の上に接して設けられた、マグネシウム(Mg)をドープさせたpドープAl0.1Ga0.9N上部クラッド層110(厚さ0.6μm)と、この上部クラッド層110の上に接して設けられた、マグネシウムをドープさせたpドープGaNコンタクト層111(厚さ0.1μm)と、このコンタクト層111の上に接して設けられたp側電極121と、上記基板の一方主面と反対側の基板裏面に設けられたn側電極120とを備えている。
また、上部クラッド層110とコンタクト層111は、共振器方向に延伸したストライプ状のリッジストライプ型導波路をなしている。そして、当該リッジストライプ構造以外の部分が絶縁膜122で埋め込まれて、電流狭窄が実現されている。なお、リッジストライプの幅は1.6μmであり、共振器長は600μmである。また、素子の前面にはAR(anti−reflective)コーティングが、後面にはHR(hydroreflective)コーティングが施されている。
上述したそれぞれのnドープ層にドープさせたケイ素の濃度は、5×1016〜5×1018/cm3の範囲にあり、pドープ層にドープさせたマグネシウムの濃度は2×1018〜2×1020/cm3の範囲にある。
本実施例1で、第1の層107にドープさせるケイ素濃度は5×1017/cm3であるが、5×1016〜5×1018/cm3の範囲で濃度を変更してもよく、1×1017/cm3〜2×1018/cm3の範囲とすることが好ましい。また、上記第3の層109にドープさせたマグネシウム濃度は1×1020/cm3であるが、5×1019〜2×1020/cm3の範囲で濃度を変更してもよい。このようなドーピング濃度範囲であると、ドープさせた導電性不純物によって層自体の導電型を確立することができ、素子におけるpn接合位置が十分に安定する一方、不純物含有に起因する層の結晶性低下が引き起こされず、活性層への有効なキャリア注入も阻害されることがない。
なお、n型不純物としては、上記ケイ素(Si)に限らず、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、硫黄(S)、酸素(O)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)等のIV族、もしくはVI族元素を用いることができるが、不純物含有による窒化物半導体層の結晶性低下を比較的起こしにくい、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)のいずれかを選択することが好ましい。
最下段や最上段の井戸層131に隣接する層(下部隣接層104、上部隣接層106)は、上記のようにアンドープ型とする必要がある。これは、活性層からその上下に隣接する層へとキャリアが量子的に染み出すことがあり、上下に隣接する層が導電性不純物を含有していると染み出しキャリアをその層中に捕縛してしまい、キャリア注入効率を低下させるためである。また、この染み出しの範囲は約0.5nmであるため、下部隣接層104や上部隣接層106の層厚をそれぞれ少なくとも約0.5nmに、好ましくは1nm程度以上に設定した。
第1の層107と第2の層108との組成は、上記GaNに限るものではないが、上記構造のようにこれら2層の組成を一致させると、積層による層間の格子歪みが発生しにくくなるため、電気的特性のばらつきが少なくなり、かつ層の結晶性が高くなる結果、素子の動作寿命を向上できるので好ましい。
基板としては、積層する窒化物半導体層に対する格子不整合を抑制する側面から上記のようにGaN基板とすることが最も好ましいが、これに代えて、AlGaN、SiC、スピネル、Ga23、サファイアまたはZrB2等からなる基板を用いてもよい。
下部クラッド層102や上部クラッド層110は超格子構造であってもよい。また、その組成としては上記に限定するものではなく、例えば0.05以上0.15以下の範囲でxが規定されるAlxGa1-xNとすることができる。なお、xをこのような範囲に規定する理由としては、xが0.05未満であると、活性層との屈折率差が減少し、光閉じ込めが悪化し、動作電流が増大してしまうことがあげられる。また、xが0.15以上であると、低抵抗の結晶が得られにくく、動作電圧が上昇してしまうことがあげられる。
ここで、活性層105の詳しい構造について、活性層とその近傍層にかかる素子構造を示す図2を参照しながら説明する。この活性層105は、アンドープ型のIn0.15Ga0.85N井戸層131(厚さ4nm)とアンドープ型のGaN障壁層132(厚さ8nm)とが、井戸層、障壁層、井戸層、障壁層、井戸層の順で積層されてなる井戸数3の多重量子井戸構造であり、最下段の井戸層が下部隣接層104の上に接して、また、最上段の井戸層の上に接して上部隣接層106が設けられている。
なお、障壁層のバンドギャップエネルギーが井戸層よりも大きくなるように調整する限り、井戸層や障壁層は上記組成に限るものではなく、InxGa1-xN(0≦x<1)、AlxGa1-xN(0≦x<1)、InGaAlN、GaN1-xAsx(0<x<1)、GaN1-xx(0<x<1)またはこれらの化合物などからなる窒化物半導体としてもよい。
また、活性層をこのような多重量子井戸構造(MQW構造)とすると、素子の発振閾値が引き下がるため好ましいが、1の障壁層が最下段の井戸層の上に接し、かつ上部隣接層106の下に接して設けた単一量子井戸構造(SQW構造)とすることを排除するものではない。
図3は、本参考の形態1にかかる窒化物半導体レーザ素子の活性層周辺における各層のバンドギャップエネルギーを示す分布図である。本発明の半導体レーザ素子では、この図3で示すように、下部クラッド層102のバンドギャップエネルギーEclと、下部隣接層104のバンドギャップエネルギーEnlと、井戸層131のバンドギャップエネルギーEwと、障壁層132のバンドギャップエネルギーEbと、上部隣接層106のバンドギャップエネルギーEnuと、第1の層107のバンドギャップエネルギーE1と、第2の層108のバンドギャップエネルギーE2と、第3の層109のバンドギャップエネルギーE3と、上部クラッド層110のバンドギャップエネルギーEcuとが、以下の関係式(1)を満たしている。
〔数5〕
Ew<Enl、Eb、Enu、E1、E2<Ecl、Ecu<E3 ・・・(1)
また、下部ガイド層103のバンドギャップエネルギーEglと、井戸層131のバンドギャップエネルギーEwと、下部クラッド層102のバンドギャップエネルギーEclとが以下の関係式(2)を満たしている。
〔数6〕
Ew<Egl<Ecl ・・・(2)
上記構造のIII−V族系窒化物半導体レーザ素子を、有機金属気相成長法(MOCVD法)などの公知の結晶成長方法や、フォトレジストマスクを用いたエッチング処理によるリッジストライプ構造の形成方法を用いて作製した。
[実施例1]
本実施例1は、上記構造からなるIII−V族系窒化物半導体レーザ素子である。このレーザ素子を大気圧(1.01325×105Pa)の室温(25℃)下にて駆動させたところ、閾値電流値が約30mAであり、スロープ効率が約1.7W/Aであり、出力を120mW時としたときの駆動電流値が約100mAであった。
また、60℃の雰囲気下にて、パルス条件をデューティー30%とし、高出力である120mWに設定したエージング試験を行ったところ、当該試験開始から24時間経った後でも駆動電流値の増大はほとんど観察されず、5mA以下の増加量に抑えられていた。そして、試験開始から1000時間経っても、そこからさらに駆動電流値が上昇することはなかった。
本実施例1にかかるこのような素子特性値は、結晶成長毎にウエハ内でばらつくこと無く、作製した全ての素子において安定して得られた。
[比較例1]
本比較例1は、第1の層107がアンドープ型であること以外は上記実施例1と同様のレーザ素子である。この比較例1にかかるレーザ素子は、作製した素子毎の特性値のばらつきが非常に大きく、最良の特性値が得られた素子であっても、閾値電流値が約35mA、スロープ効率が約1.4W/Aであり、出力を120mW時としたときの駆動電流値が約120mA以上であった。また、エージング試験によって、試験開始から24時間後の駆動電流値が初期値から10mA以上も大幅に増大することが観察された。そして、試験時間をさらに延ばすと、駆動電流値の増大率は緩やかになるものの、駆動電流値の上昇が続き、安定した動作電流を得ることができなかった。
[比較例2]
本比較例2は、第2の層108を有さず、第1の層107の上に接して第3の層109が設けられていること以外は上記実施例1と同様のレーザ素子であり、活性層の周辺が上述した従来の技術にかかるレーザ素子(図4参照)と実質的に同様の構造を有している。この比較例2にかかるレーザ素子は、閾値電流値が約35mA、スロープ効率が約1.0W/Aであり、出力を120mW時としたときの駆動電流値が約160mAであった。また、エージング試験によって、試験開始から24時間後の駆動電流値が初期値から10mAも増大することが観察された。そして、試験時間をさらに延ばすと、駆動電流値の増大率は緩やかになるものの、駆動電流値の上昇が続き、安定した動作電流を得ることができなかった。
[比較例3]
本比較例3は、第1の層107がアンドープ型であり、活性層105にn型不純物を濃度1×1017〜1×1018/cm3でドープさせたこと以外は上記実施例1と同様のレーザ素子である。この比較例3にかかるレーザ素子は、閾値電流値が約50mA、スロープ効率が約1.4W/Aであり、出力を120mW時としたときの駆動電流値が約135mAであった。また、エージング試験によって、試験開始から24時間後の駆動電流値が初期値から15mA以上も増大することが観察された。そして、試験時間を延ばすと、さらなる駆動電流値の上昇が観察された。
[比較例4]
本比較例4は、活性層105にn型不純物を濃度1×1017〜1×1018/cm3でドープさせたこと以外は上記実施例1と同様のレーザ素子である。この比較例4にかかるレーザ素子は、上記比較例3と同様の素子特性値を示すことが観察された。
[比較例5]
本比較例5は、第1の層107と第2の層108とを有さず、上部隣接層106の上に接して第3の層109が設けられていること以外は上記実施例1と同様のレーザ素子である。この比較例5にかかるレーザ素子は、上記比較例1ほどではないものの、作製した素子毎の特性値のばらつきが大きく、最良の特性値が得られた素子であっても、閾値電流値が約35mA、スロープ効率が約1.0W/Aであり、出力を120mW時としたときの駆動電流値が約120mA以上であった。また、エージング試験によって、試験開始から24時間後の駆動電流値が初期値から5〜10mAも増大することが観察された。
[比較例6]
本比較例6は、第3の層109がアンドープ型であること以外は上記実施例1と同様のレーザ素子である。この比較例6にかかるレーザ素子の閾値電流値は約100mAであった。また、その他の素子特性に関しても、比較例中で最も悪い値を示した。
以上より、比較例1〜6では閾値電流値が約35mA以上となるのに対し、実施例1では30mAにまで引き下げられることが判った。さらに、各比較例のスロープ効率が約1.4W/A以下となるのに対し、実施例1では1.7W/Aにまで向上できることが判った。また、各比較例では出力を120mW時としたときの駆動電流値が約120mA以上となるのに対し、実施例1では100mAとより低電流で駆動できることが判った。
また、各比較例ではエージング試験から24時間後に駆動電流値が5mAよりも大きく増加してしまうのに対し、実施例1ではその上昇が5mA以下に抑えられ、その後1000時間経ってもそれ以上はほとんど上昇しないことが判った。
また、各比較例では作製した素子特性のばらつきが大きくなるのに対し、実施例1では結晶成長毎にウエハ内でばらつくこと無く、作製した全ての素子において安定して得られることが判った。
これらのことから、本参考の形態1にかかる窒化物半導体レーザ素子であると、発振閾値が安定して低く、また、連続駆動させても駆動電流が経時的に上昇しないことが判った。
ここでさらに、各比較例と実施例1とを詳細に比較し、本参考の形態1において、前述の優れた素子特性が得られた理由について考察する。
まず、活性層にn型不純物がドーピングされている比較例3や比較例4では、その閾値電流値が約50mAであり、実施例1(約30mA)よりも大幅に増加していた。また、エージング試験の開始後24時間には、これらの比較例3や4では15mA以上も駆動電流値が増大しており、実施例1(約5mA以下)と比べてエージング特性が不安定であった。これらのことから、レーザ素子の駆動閾値を引き下げ、またエージング特性を向上させるには、障壁層や井戸層は、いずれも不純物がドープされていないアンドープ層とすることが重要と考えられる。
これら比較例3や比較例4の素子特性が実施例1よりも劣る理由としては、活性層に不純物がドーピングされることで、アンドープ型の場合と比べて活性層の結晶性が低下することがあげられる。また、本発明のようにレーザの高出力化を目的の1つとした場合にはレーザ光のエネルギー密度が当然に高くなるが、このように活性層の結晶性が低下していると、連続駆動に対して駆動電流値が増大してしまう等の素子特性の劣化が顕著に生じることがあげられる。
次に、比較例6と実施例1とに基づいて考察する。Al0.2Ga0.8Nからなる第3の層109をアンドープ型とした比較例6では、その閾値電流値が約100mAであり、実施例1(約30mA)と比べると閾値電流値の激しい増大が観察された。このことから、当該第3の層にp型不純物をドーピングさせておくことが重要と考えられる。
この比較例6の素子特性が実施例1よりも劣る理由としては、この第3の層は、活性層中の井戸層よりも大幅に高いバンドギャップエネルギーに設定することで、活性層に注入される電子のオーバーフローを防止しているが、これと同時に、pドープ上部クラッド層よりもバンドギャップエネルギーを高く設定しているため、当該第3の層中にp型不純物がドーピングされて導電性が高められていない状態では、pドープ上部クラッド層から活性層への正孔(ホール)注入が困難になることがあげられる。
次に、比較例1と実施例1とに基づいて考察する。第1の層107をアンドープ型とした比較例1では、素子特性のばらつきが激しく、最良の特性を示したものであっても実施例1よりも劣る特性値を示した。これらのことから、第1の層にはn型不純物をドーピングしておくことが重要と考えられる。
この比較例1の素子特性が激しくばらつく理由としては、第1の層をアンドープ型とすることで、素子中で最近接するpドープ層とnドープ層が、互いに大きく離れて配置している第3の層109とnドープGaNガイド層103になってしまい、素子構造的に、素子中のpn接合位置が決まりにくくなる。この場合、pn接合の位置がいずれにあるかにより活性層の動作に大きな影響を与えるため、結晶成長時に発生しうる通常レベルの成長条件の摂動であっても、素子特性の決定に対して非常に大きな影響を及ぼしてしまうことがあげられる。
なお、本発明者らがさらに検討したところ、第1の層をpドープ型とすることによりpドープ層とnドープ層とを近接させた場合には、スロープ効率が1.0W/A以下にまで悪化することが判った。これは、pドープ層には若干ではあるがレーザ光を吸収してしまう性質があり、レーザ光の光分布が大きい活性層近傍にpドープ層を設けると導波損失となるためである。
次に、比較例5と実施例1とに基づいて考察する。第1の層107と第2の層108とを設けず、上部隣接層106の上に接して第3の層109を設けた比較例5では、比較例1ほどではないものの、その素子特性のばらつきが激しく、最良の特性を示したものであっても実施例1よりも劣る特性値を示し、特にスロープ効率の悪化(1.0W/A)が顕著であった。これらのことから、第1の層107と第2の層108とを設け、第3の層109を活性層から少なくとも50nm以上離して配置することが重要と考えられる。
この比較例5のスロープ効率が特に悪化した理由としては、活性層105と第3の層109との近接配置による悪作用、すなわち、上述したような、レーザ光の光分布が大きい活性層近傍にpドープ層を設けることに起因した導波損失があげられる。また、窒化物半導体は結晶構造がウルツァイトであって等方的でないため、結晶内部に電界が存在しており、活性層とのバンドギャップ差が大きな第3の層が活性層近傍に配されると、活性層のバンドが曲げられてしまい、活性層がバンドフラット状態を得られない結果、活性層におけるキャリアの再結合確率が低下することもあげられる。
なお、活性層がアンドープ型であると特にこのような悪作用を受けやすく、また、この第3の層109のようにAl原子を含む窒化物半導体と、この活性層105のようにIn原子を含む窒化物半導体とが接合すると、大きなバンド曲がりが生じてしまうため、上述のように第3の層109の下面と活性層の最上段に配された井戸層の上面との距離(L)を少なくとも50nm以上として、この悪作用を低減させることが重要である。また、この離間間隔(L)は200nm以下とすることが好ましい。これは200nmよりも離して両層を配置すると、pドープ上部クラッド層110から活性層へのホール注入が距離的に困難となるためである。
さらに、レーザ素子におけるスロープ効率の悪化は、低出力レーザとする場合にはその影響は低いが、本発明のように100mW以上もの高出力を得ることを目的とする場合には非常に大きな問題となる。それゆえ、本参考の形態1のように、pドープ層と活性層との距離を十分にとりつつ、それらの間にnドープの第1の層107を配して活性層の上下をnドープ層で挟み込む素子構造とすることによって、アンドープ型の活性層を採用しながらも、活性層をバンドフラット状態とすることが好ましい。
ここで、活性層の上下をnドープ層で挟み込むことによって活性層をバンドフラット状態とするには、少なくともnドープの第1の層107を5nm以上の層厚として、第1の層にn型の導電性を確立させる必要がある。他方、pドープ上部クラッド層110から活性層へのホール注入を電気的に阻害させないためには、第1の層107の層厚を50nm以下としてn型不純物の含有量を制限しておく必要がある。
さらに上部隣接層106の層厚を変更してもよいが、上下をnドープ層で挟み込むことによって活性層のバンドフラット状態を得るには、第1の層107の下面と活性層の最上段に配された井戸層の上面との距離(D)と、第3の層109の下面と活性層の最上段に配された井戸層の上面との距離(L)とが以下の関係式(4)を満たすようにして、第1の層を配することが好ましい。
〔数7〕
2D≦L ・・・(4)
なお、当該D値としては、60nm以下が好ましく、30nm以下がより好ましい。ただし、上述したように、活性層から量子的に染み出してくるキャリアが捕縛されてしまうことを避けるためには、この上部隣接層106の層厚は少なくとも約0.5nm以上とする必要がある。
次に、比較例2と実施例1とに基づいて考察する。第2の層108を設けず、第1の層107の上に接して第3の層109を設けた比較例2では、特にスロープ効率の悪化(1.0W/A)が顕著であった。このことから、nドープの第1の層107とpドープの第3の層109との間に、アンドープ型の第2の層108を設けることが重要と考えられる。
この比較例2のスロープ効率が特に悪化した理由としては、nドープの第1の層107とpドープの第3の層109とが接して配置されることにより、それらの界面付近において多くのレーザ光が吸収されてしまうことがあげられる。
以上説明したように、nドープのクラッド層、アンドープ型の活性層、nドープの第1の層、アンドープ型の第2の層、バンドギャップエネルギーの大きいpドープの第3の層、pドープのクラッド層がこの順に積層され、活性層と第3の層との離間間隔が50nm〜200nmである本参考の形態1にかかる窒化物半導体レーザ素子であると、発振閾値が低く、スロープ効率が高く、エージング特性に優れた素子を安定して得ることができるため、100mW以上の高出力で単一横モード発振可能なレーザ素子が実現する。
〈実施の形態2〉
本実施の形態2は、第1の層107の組成がAl0.05Ga0.95Nであること以外は、上記参考の形態1と同様の窒化物半導体レーザ素子である。この構成であると、第1の層107のバンドギャップエネルギーが上部隣接層106のそれよりも大きくなり、活性層へのキャリア注入効率が向上するため、素子の閾値が参考の形態1よりもさらに引き下がる。
ここで、当該第1の層の組成は上記Al0.05Ga0.95Nに限らず、AlxGa1-xN(式中のxは、0<x<1の範囲を満たす実数)で表されるAl原子を含有した組成とすることができるが、第1の層のバンドギャップエネルギーが第2の層のそれよりも大きくなると、このエネルギーギャップを超えられない正孔(ホール)が第2の層中にたまり、活性層へのホールの注入効率が低下してしまうため、第1の層のバンドギャップエネルギーが第2の層のそれ以下となる範囲でそれぞれの組成比を調整しておくことが好ましい。
〈実施の形態3〉
本実施の形態3は、活性層105中の障壁層132、上部隣接層106および下部隣接層104の組成がIn0.03Ga0.97Nであること以外は、上記参考の形態1と同様の窒化物半導体レーザ素子である。この構成であると、まず、第1の層107のバンドギャップエネルギーが上部隣接層106のそれよりも大きくなるため、活性層へのキャリア注入効率が向上する。さらに、井戸層131近傍の層の屈折率が増大するので、活性層への光閉じ込め係数が向上する。これにより、参考の形態1よりもさらに一層素子の閾値が引き下がる。
なお、当該障壁層132、上部隣接層106および下部隣接層104の組成は上記In0.03Ga0.97Nに限るものではなく、InxGa1-xN(式中のxは、0<x≦0.5の範囲を満たす実数)で表されるものとしてもよいが、屈折率を大きくして、活性層への光閉じ込めを効率化させるには、xの値を0.001以上とすることが好ましい。他方、xの値は井戸層のIn組成よりも0.05以上小さい値とすることが望ましい。これは、xがこの範囲を超えると、井戸層へのキャリアの閉じ込めが不十分になるおそれがあるためである。
参考の形態4〉
本実施の形態4は、第1の層107が少なくとも2層以上のnドープGaN層からなり、2のnドープGaN層の間にアンドープ型のGaN層が設けられていること以外は、上記参考の形態1と同様の窒化物半導体レーザ素子である。この構成であっても、上記参考の形態1と同様の優れた素子特性が発揮される。
なお、当該2層以上のnドープ層やアンドープ型の層の組成は、それらのバンドギャップエネルギーを井戸層よりも大きく、第3の層よりも小さく規定する限り、上記GaNに限るものではなく、AlxGayInzN(式中のx、y、zは、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1を満たす実数)で表されるものとしてもよい。
参考の形態5〉
参考の形態5は、第3の層109と上部クラッド層110との間に、膜厚5〜30nmのGaNからなるpドープの上部ガイド層(p型不純物濃度:2×1018〜1×1020/cm)が設けられており、当該上部ガイド層のバンドギャップエネルギーEguが以下の関係式(3)を満たすこと以外は、上記参考の形態1と同様の窒化物半導体レーザ素子である。
〔数8〕
Ew<Egu<Ecu ・・・(3)
この構成であると、活性層の光閉じ込め係数を増加させ、素子の発振閾値をさらに引き下げることができる。
なお、本実施の形態5は、このpドープガイド層を、第2の層よりもエネルギーギャップが小さくなく、p型クラッド層よりもエネルギーギャップが小さい層とする限り、上記膜厚5〜30nmのGaNからなる層とした場合と同様に優れた素子特性が発揮される。
〈実施の形態6〉
本実施の形態6は、活性層105中の障壁層132が、GaN層とIn0.03Ga0.97N層とからなる2重構造、あるいは、In0.03Ga0.97N層とGaN層とIn0.03Ga0.97N層とからなる3重構造であること以外は、上記実施の形態3と同様の窒化物半導体レーザ素子である。
この構成であると、活性層への光閉じ込め係数が上記実施の形態3と同程度にまで向上する。さらに、GaN層を介装させることにより、InGaN層を連続して積層させた場合に発生するメモリー効果に起因した組成ずれを抑制できるため、活性層中にInGaN層を含ませつつも、素子特性のばらつきをさらに少なくする、すなわち作製歩留まりを向上させることができる。
参考の形態7〉
参考の形態7は、第1の層107がIn0.03Ga0.97N層であること以外は、上記参考の形態1と同様の窒化物半導体レーザ素子である。この構成であっても、上記参考の形態1と同様の優れた素子特性が発揮される。
ここで、当該第1の層の組成は上記In0.03Ga0.97Nに限らず、InxGa1-xN(式中のxは、0<x<1の範囲を満たす実数)で表されるIn原子を含有した組成とすることができるが、第1の層のバンドギャップエネルギーが上部隣接層のそれよりも小さくなると、電子が第1の層中にたまりやすくなり、活性層へのキャリアの注入効率が低下してしまうため、第1の層のバンドギャップエネルギーが上部隣接層のそれ以上となる範囲でそれぞれの組成比を調整しておくことが好ましい。
〈その他の事項〉
(1)本発明のIII−V族系窒化物半導体レーザ素子を構成する各窒化物半導体層は、上記参考の形態1,4,5,7、実施の形態2,3,6にて示した組成に限るものではなく、上述した相対的な物性関係を満たす限り、AlGaInN(式中のx、y、zは、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1、を満たす実数)とすることができる。また、窒素元素のうち約10%以下(ただし、六方晶系であること)をヒ素(As)、リン(P)、アンチモン(Sb)のいずれかの元素で置換した組成としてもよい。
ここで、nドープの第1の層107、アンドープの第2の層108、pドープの第3の層109をInxGa1-xN(式中のxは、0<x≦1を満たす実数)とすると、一般的な活性層の組成であるInGaNから、元素比率を変えるだけで連続的に各層を形成できるため、界面でのキャリア再結合の影響を抑えることができる。
他方、これらの層をAlxGa1-xN(式中のxは、0≦x≦1を満たす実数)とすると、その組成をInxGa1-xN(式中のxは、0<x≦1を満たす実数)とした場合よりも各層の成長条件がさらに安定する。その結果、個々の素子におけるバンドギャップや電気的特性の制御性が一層高まり、かつウエハ内での面内分布を均一化するため、素子の製造歩留まりを一層向上することができる。また、pドープのクラッド層の組成がAlGaN系であり、活性層の組成がInGaN系であることが多いため、pドープのクラッド層との格子定数差から生じる格子歪みを緩和することができる。
(2)上記参考の形態1では、第2の層108のバンドギャップエネルギーE2よりも上部クラッド層110のバンドギャップエネルギーEcuが大きい分布図(図3)を示したが、上述したように第3の層によって活性層に注入される電子のオーバーフローを防止できる限り、活性層周辺における各層のバンドギャップエネルギーの分布はこれに限るものではなく、例えばE2がEcuよりも大きいようなエネルギー分布としてもよい。
(3)上部クラッド層110の半導体組成をAlpGa1-pN(式中のpは、0<p≦1を満たす実数)とし、第3の層109の半導体組成をAlqGa1-qN(式中のqは、0<q≦1を満たす実数)とする場合には、これらのパラメータpとqが、q≧p+0.05の関係を満たすことが好ましい。これは、第3の層によって活性層に注入される電子のオーバーフローを防止するには、第3の層においてpクラッド層よりもAl原子の含有率を大きくする必要があり、この含有率差を0.05以上とすると高温下での駆動電流値の上昇を十分に抑制できるためである。
また、qの絶対値としては0.1〜0.3が好ましい。これは、Al組成比を0.3以下とすると駆動電圧値が低減する傾向があり、0.1以上とすると高温にしたときの駆動電流値の上昇が抑制される傾向があることによる。
(4)本発明にかかる活性層は、多重量子井戸構造あるいは単一量子井戸構造をとる限り、井戸層の数を1〜10層の範囲で変更することができ、2〜4層で十分な長寿命を発揮できることを確認している。なお、低閾値でのレーザ発振に十分な利得を得るためには、活性層の総厚を10〜70nmの範囲としておくことが好ましい。
また、障壁層のバンドギャップエネルギーを隣接する井戸層よりも大きくして、井戸層に注入されたキャリアを十分に閉じ込めることができる限り、活性層中に含まれる複数の障壁層のバンドギャップエネルギーは互いに異なっていてもよい。
以上説明したように、本発明によると、III−V族系窒化物半導体レーザ素子中のpn接合位置が安定し、また、活性層の結晶性が低下しにくく、キャリアの注入効率が向上するため、レーザ素子の発振閾値を安定して引き下げることができ、また、100mW以上の高出力にて連続駆動させても駆動電流が経時上昇することがない。よって、レーザ素子の長寿命化にも利用できるので、その産業上の利用可能性は大きい。
図1は、本発明の一例である窒化物半導体レーザ素子の断面模式図である。 図2は、図1で示された窒化物半導体レーザ素子の活性層周辺のより詳しい構造を示す断面模式図である。 図3は、図1で示された窒化物半導体レーザ素子の活性層周辺における各層のバンドギャップエネルギーを示す分布図である。 図4は、従来の技術にかかる窒化物半導体レーザ素子の断面模式図である。
符号の説明
100 n型GaN基板
101 n型不純物をドープさせたGaN層
102 n型不純物をドープさせた下部クラッド層
103 n型不純物をドープさせたGaNガイド層
104 アンドープ型GaN下部隣接層
105 活性層
106 アンドープ型GaN上部隣接層
107 n型不純物をドープさせた第1の層
108 アンドープ型GaN第2の層
109 p型不純物をドープさせた第3の層
110 p型不純物をドープさせた上部クラッド層
111 p型不純物をドープさせたGaNコンタクト層
120 n型電極
121 p型電極
122 絶縁膜
131 アンドープ型InGaN井戸層
132 アンドープ型GaN障壁層

Claims (7)

  1. 基板と、
    前記基板の上に設けられた、n型不純物がドープされた下部クラッド層と、
    前記下部クラッド層の上に設けられた、導電性不純物がドープされていないアンドープ型の下部隣接層と、
    前記下部隣接層の上に設けられた、アンドープ型の障壁層と当該障壁層を上下に挟むアンドープ型の井戸層とからなる量子井戸活性層と、
    前記量子井戸活性層の上に設けられた、アンドープ型の上部隣接層と、
    前記上部隣接層の上に接して設けられた、n型不純物がドープされた第1の層と、
    前記第1の層の上に設けられた、アンドープ型の第2の層と、
    前記第2の層の上に設けられた、p型不純物がドープされた第3の層と、
    前記第3の層の上に設けられた、p型不純物がドープされた上部クラッド層と、
    を備え、
    前記量子井戸活性層中で最下段の井戸層が前記下部隣接層に接し、最上段の井戸層が前記上部隣接層と接している
    III−V族系窒化物半導体レーザ素子であって、
    前記下部クラッド層のバンドギャップエネルギーEclと、
    前記下部隣接層のバンドギャップエネルギーEnlと、
    前記量子井戸活性層の井戸層のバンドギャップエネルギーEwと、障壁層のバンドギャップエネルギーEbと、
    前記上部隣接層のバンドギャップエネルギーEnuと、
    前記第1の層のバンドギャップエネルギーE1と、
    前記第2の層のバンドギャップエネルギーE2と、
    前記第3の層のバンドギャップエネルギーE3と、
    前記上部クラッド層のバンドギャップエネルギーEcuとが、
    以下の関係式(1)を満たし、
    前記量子井戸活性層中で最上段の井戸層と前記第3の層との距離Lが、50nm以上200nm以下であり、
    前記上部隣接層が単層構造であり、
    前記第1の層が、前記上部隣接層に接しており、且つ、前記第1の層の層厚が5nm以上50nm以下であり、
    前記第1の層のバンドギャップエネルギーE1が、前記上部隣接層のバンドギャップエネルギーEnuより大きく、且つ、前記第2の層のバンドギャップエネルギーE2以下である、
    ことを特徴とするIII−V族系窒化物半導体レーザ素子。
    〔数1〕
    Ew<Ecl、Enl、Eb、Enu、E1、E2、Ecu<E3 ・・・(1)
  2. 前記下部クラッド層と前記下部隣接層との間に下部ガイド層がさらに設けられ、
    当該下部ガイド層のバンドギャップエネルギーEglが以下の関係式(2)を満たす
    ことを特徴とする請求項1記載のIII−V族系窒化物半導体レーザ素子。
    〔数2〕
    Ew<Egl<Ecl ・・・(2)
  3. 前記第3の層と前記上部クラッド層との間に上部ガイド層がさらに設けられ、
    当該上部ガイド層のバンドギャップエネルギーEguが以下の関係式(3)を満たす
    ことを特徴とする請求項1記載のIII−V族系窒化物半導体レーザ素子。
    〔数3〕
    Ew<Egu<Ecu ・・・(3)
  4. 前記距離Lと、前記量子井戸活性層中で最上段の井戸層と前記第1の層との距離Dとが、以下の関係式(4)を満たす
    ことを特徴とする請求項1記載のIII−V族系窒化物半導体レーザ素子。
    〔数4〕
    2D≦L ・・・(4)
  5. 前記下部隣接層または前記上部隣接層の層厚が0.5nm以上である
    ことを特徴とする請求項1記載のIII−V族系窒化物半導体レーザ素子。
  6. 前記第1の層にドープされたn型不純物がケイ素であり、前記第3の層にドープされたp型不純物がMgである
    ことを特徴とする請求項1記載のIII−V族系窒化物半導体レーザ素子。
  7. 前記第1の層がInx1Ga1−x1N(式中のx1は0≦x1≦0.5の範囲を満たす実数)からなり、
    前記第2の層がInx2Aly2Ga1−(x2+y2)N(式中のx2は0≦x2≦0.5、y2は0≦y2≦0.5の範囲を満たす実数)からなり、
    前記第3の層がAly3Ga1−y3N(式中のy3は0<y3≦1の範囲を満たす実数)からなる
    ことを特徴とする請求項1記載のIII−V族系窒化物半導体レーザ素子。
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