JP4698163B2 - 低アルカリ性固化材組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、低アルカリ性固化材組成物に関するものであり、さらに詳しくは関東ローム、シルト、汚泥、有機質土などの軟弱土壌に対して土質安定処理効果を発揮し、且つ、処理後の土壌pHが10以下の低アルカリ性となる低アルカリ性固化材組成物に関するものである。
土木工事、湖沼・河川・海洋の浚渫等で発生する軟弱な土壌は、原位置での利用、搬送などを行うために固化材による安定処理によって、用途に合わせて十分な強度を保たせた状態にする必要がある。
土質安定処理(固化処理)は、固化材と土粒子とのイオン交換反応やポゾラン反応によって土の力学的・水理学的性質を改善する方法である。主として関東ローム、粘土質土壌には石灰系組成物、シルト、砂質系土壌にはセメント系組成物が用いられている。
これらの組成物は基本的に高アルカリ性であるため、改良土壌のpH上昇によるアルカリ公害、湖沼・河川・海洋へのアルカリの流出による汚染が問題となっている。
酸化マグネシウムに半水石膏を加えさらに塩化マグネシウム、酸性材を加える技術が提案されている(特許文献1参照)が土質安定処理効果が低い。また、酸化マグネシウムと硫酸アルミニウム及び/又は硫酸鉄を加えた系が開示されており(特許文献2参照)、また、酸化マグネシウム、高炉水砕スラグ、粉末状の無機 酸を加えて成る土質安定処理材が開示されている(特許文献3参照)がいずれもpHを中性サイドに近づけると著しく処理土の強度が落ちて土質安定処理材として使用できないのが現状である。
特開2004−43698号 特開2000−109829号 特開平10−316967号公報
そこで、軟弱土壌に対して土質安定処理効果を発揮し、且つ、従来の石灰系固化材、セメント系固化材のような高アルカリ性の固化材ではなく、アルカリの溶出が少ない自然環境に優しい固化材の開発が求められていた。
本発明の目的は、関東ローム、シルト、汚泥、有機質土などの軟弱土壌に対して土質安定処理効果を発揮し、且つ、処理後の土壌pHが10以下の低アルカリ性となる低アルカリ性固化材組成物を提供することである。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、マグネシアを主成分とする粉末と水酸化アルミニウムを主成分とする粉末を混合して得られる固化材組成物が低アルカリ性であり、優れた土質安定処理効果を示すとともに、固化処理後の土壌のpHを10以下に低減できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、前記課題を解決するための本発明の請求項1は、マグネシアを主成分とする粉末と、金属アルミニウムのアルカリエッチングまたはアルマイト処理(硫酸系陽極酸化処理)で副生するアルミスラッジを乾燥、粉砕して得られる水酸化アルミニウムを主成分とする粉末を混合比が、質量比で10:90〜80:20で混合して得られる、軟弱土壌に対して土壌安定化効果を発揮し、且つ処理後の土壌のpHが10以下となることを特徴とする低アルカリ性固化材組成物である。
本発明の請求項2は、マグネシアを主成分とする粉末と、金属アルミニウムのアルカリエッチングまたはアルマイト処理(硫酸系陽極酸化処理)で副生するアルミスラッジを乾燥、粉砕して得られる水酸化アルミニウムを主成分とする粉末を混合比が、質量比で10:90〜80:20で混合して得られる低アルカリ性固化材組成物全体100質量部に対して、さらに二水石膏、半水石膏、無水石膏、硫酸アルミニウム、硫酸鉄の中から選ばれた1種以上を必須成分として100質量部以下の割合で添加して得られる、軟弱土壌に対して土壌安定化効果を発揮し、且つ処理後の土壌のpHが10以下となることを特徴とする低アルカリ性固化材組成物である。
(削除)
本発明の請求項3記載の低アルカリ性固化材組成物は、請求項1あるいは請求項2記載の低アルカリ性固化材組成物において、マグネシアを主成分とする粉末が、酸化マグネシウムとして60質量部以上含有した軽焼マグネシアを粉砕して得られた粉末であることを特徴とする。
(削除)
本発明の請求項1記載の低アルカリ性固化材組成物は、マグネシアを主成分とする粉末と、金属アルミニウムのアルカリエッチングまたはアルマイト処理(硫酸系陽極酸化処理)で副生するアルミスラッジを乾燥、粉砕して得られる水酸化アルミニウムを主成分とする粉末を混合比が、質量比で10:90〜80:20で混合して得られる、軟弱土壌に対して土壌安定化効果を発揮し、且つ処理後の土壌のpHが10以下となることを特徴とするものであり、
マグネシアを主成分とする粉末の土壌を固化する能力及びマグネシアのpHが石灰やセメントと比べて低いことと、水酸化アルミニウムを主成分とする粉末の粒子を凝集させる効果及びpH上昇抑制効果によって、軟弱土を容易に安定処理でき、かつ処理後の土壌のpHを低くする、という顕著な効果を奏する。
前記粉末の混合比が、質量比で10:90〜80:20であるので、水酸化アルミニウムを主成分とする粉末のpH上昇を抑制する効果によりマグネシアを主成分とする粉末によるpHの上昇を10以下に抑えることが可能となる、というさらなる顕著な効果を奏する。
水酸化アルミニウムを主成分とする粉末が、金属アルミニウムのアルカリエッチングまたはアルマイト処理(硫酸系陽極酸化処理)で副生するアルミスラッジを乾燥、粉砕して得られる水酸化アルミニウムを主成分とする粉末であるので、このものは、一般に粒子径が小さく、または非晶質水酸化アルミニウムであるので反応性が良く、また大半が埋立処理などによって廃棄処分されている産業副産物の有効利用を図ることができる、というさらなる顕著な効果を奏する。
本発明の請求項2記載の低アルカリ性固化材組成物は、マグネシアを主成分とする粉末と、金属アルミニウムのアルカリエッチングまたはアルマイト処理(硫酸系陽極酸化処理)で副生するアルミスラッジを乾燥、粉砕して得られる水酸化アルミニウムを主成分とする粉末を混合比が、質量比で10:90〜80:20で混合して得られる低アルカリ性固化材組成物全体100質量部に対して、さらに二水石膏、半水石膏、無水石膏、硫酸アルミニウム、硫酸鉄の中から選ばれた1種以上を必須成分として100質量部以下の割合で添加して得られる、軟弱土壌に対して土壌安定化効果を発揮し、且つ処理後の土壌のpHが10以下となることを特徴とするものであり、
各種石膏は安定処理初期の強度発現に寄与し、硫酸アルミニウム、硫酸鉄は高含水比の軟弱土のハンドリング改善に効果があり、さらにこれらは酸性又は弱酸性であるため、改良後の土壌pHを低減させるので、固化材組成物の性能向上及びpHの抑制が可能とである、という顕著な効果を奏する。
前記粉末の混合比が、質量比で10:90〜80:20であるので、水酸化アルミニウムを主成分とする粉末のpH上昇を抑制する効果によりマグネシアを主成分とする粉末によるpHの上昇を10以下に抑えることが可能となる、というさらなる顕著な効果を奏する。
水酸化アルミニウムを主成分とする粉末が、金属アルミニウムのアルカリエッチングまたはアルマイト処理(硫酸系陽極酸化処理)で副生するアルミスラッジを乾燥、粉砕して得られる水酸化アルミニウムを主成分とする粉末であるので、このものは、一般に粒子径が小さく、または非晶質水酸化アルミニウムであるので反応性が良く、また大半が埋立処理などによって廃棄処分されている産業副産物の有効利用を図ることができる、というさらなる顕著な効果を奏する。
(削除)
本発明の請求項3記載の低アルカリ固化材組成物は、請求項1あるいは請求項2記載の低アルカリ性固化材組成物において、マグネシアを主成分とする粉末が、酸化マグネシウムとして60質量部以上含有した軽焼マグネシアを粉砕して得られた粉末であるので、水和反応性に富み、優れた土質安定処理効果を確実に得ることができる、というさらなる顕著な効果を奏する。
(削除)
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の低アルカリ性固化材組成物は、マグネシアを主成分とする粉末の土壌を固化する能力と、水酸化アルミニウムを主成分とする粉末の粒子を凝集させる効果によって土壌を固化する。
マグネシアは、軟弱土中の水と接すると水和反応によって水酸化マグネシウム微粒子を生成し、その際に土壌粒子間の空隙を埋め、土壌の緻密化を促す。また、生成した水酸化マグネシウムと土壌成分(高反応性の珪酸・アルミニウム化合物など)との反応によってマグネシウムとの複合化合物を形成し、土壌の物性改善が行われることによって、固化処理後の土壌が安定化する。
土壌と固化材との混合の際に生成する水酸化マグネシウムは、水に対する溶解度が小さい(0.0009g/100gH2O(18℃))ので、アルカリの溶出が少なくpHが10〜11程度となる。
しかし、このままではpHが高いので、pH上昇を抑制する効果を有する水酸化アルミニウムを主成分とする粉末を混合する。水酸化アルミニウムの構成元素であるアルミニウムは両性金属であるため、系全体のpHの変動を抑制する効果を有している。よって、マグネシアと併用することによって、マグネシアを単独で使用した時よりもpHを低くすることが可能となる。
水酸化アルミニウムは、粒子を凝集させる効果を有しているため、各粒子間の凝集力を高め、より土壌の安定処理効果を高める働きをする。
さらに、水酸化アルミニウムは、マグネシアと反応することによって、アルミン酸マグネシウム化合物を形成し固化強度を増大させる働きを有していると推察される。
以上のように、マグネシアを主成分とする粉末と水酸化アルミニウムを主成分とする粉末を組み合わせることによって土質安定処理効果を有する低アルカリ性固化材組成物が得られる。
アルカリによる環境汚染の問題によってpHの抑制を求められた場合、マグネシアを主成分とする粉末と、非晶質水酸化アルミニウムを主成分とする粉末の混合比を、質量比で10:90〜80:20とすることにより、安定処理後の土壌pHを確実に10以下に低減することが可能となるので好ましい。
マグネシアを主成分とする粉末が範囲未満の場合、マグネシアを主成分とする粉末の含有量が少なすぎるため、土質安定処理効果が期待できなくなる。また、マグネシアを主成分とする粉末の割合が前述の範囲を超える場合は、安定処理後の土壌pHが10を超えてしまう恐れがあり好ましくない。
本発明で使用するマグネシアを主成分とする粉末は、酸化マグネシウムを主成分として含有し、かつ60質量部以上含有した軽焼マグネシアを粉砕して得られた粉末であることが好ましい。酸化マグネシウムの含有量が60質量部を下回る場合は、土質安定処理に寄与する成分が少なすぎるため、安定処理能力の低下が起きてしまうので、好ましくない。
マグネシアは、焼成の度合によって軽焼、重焼に分けられる。炭酸マグネシウムの低温焼成物である軽焼マグネシアは活性が高く水和反応性に富むため、当該固化材組成物の原料として使用した場合、優れた土質安定処理効果を確実に得ることができるので、本発明において好ましく使用できる。
なお、マグネシアを主成分とする粉末の粒度はどのような粒度でも構わないが、反応性を考慮した場合、使用するマグネシアを主成分とする粉末は、平均粒径80μm以下の粒度であることがより好ましい。
本発明で使用する水酸化アルミニウムを主成分とする粉末は、金属アルミニウムのアルカリエッチングまたはアルマイト処理(硫酸系陽極酸化処理)で副生するアルミスラッジを乾燥、粉砕して得られる水酸化アルミニウムを主成分とする粉末であることが好ましい。
これは、アルミニウム工業におけるアルカリエッチングまたはアルマイト処理(硫酸系陽極酸化処理)工程において、陽極酸化工程で発生する、アルミニウム分を含有する廃液を中和処理する際に発生する高含水アルミニウムスラッジを脱水・乾燥した後に粉砕して得られるもので、中和の際のpHをコントロールすることにより結晶化した水酸化アルミニウムまたは非晶質水酸化アルミニウムを選択して得ることが出来る。
非晶質水酸化アルミニウムを使用すると反応性が良いので前述した効果を早期に期待するにはより好都合な材料である。また、これらアルミスラッジは、大半が埋立処理などによって廃棄処分されているので高含水アルミスラッジの再利用法として産業副産物の有効利用を図ることができるという点からも好ましい。
なお、水酸化アルミニウムを主成分とする粉末の粒度は、マグネシアを主成分とする粉末と同様の理由から、平均粒径80μm以下の粒度であることがより好ましい。
本発明の低アルカリ性固化材組成物100質量部に対して、さらに、二水石膏、半水石膏、無水石膏、硫酸アルミニウム、硫酸鉄の中から選ばれた1種以上を必 須成分として100質量部以下の割合で添加することによって、初期の強度発現への寄与、高含水比の軟弱土のハンドリング改善、改良後の土壌pH低減が可能であり、本発明の他の低アルカリ性固化材組成物を得ることができる。
本発明の低アルカリ性固化材組成物100質量部に対して、これらの材料を100質量部を超えて多く添加した場合は、固化材組成物中のマグネシアの含有量が少なすぎて安定処理効果が低下する恐れがあり、好ましくない。
一方、本発明の低アルカリ性固化材組成物100質量部に対するこれらの材料の下限値は関東ローム、シルト、汚泥、有機質土などの軟弱土壌の種類などによって異なるので、特に限定されるものではなく、軟弱土壌の初期のハンドリングの改善効果が発現するように決めることが好ましい。
本発明で用いる二水石膏、半水石膏、無水石膏などの各種石膏は軟弱土の構成成分であるSiO2 、Al23 、Fe23 成分とポゾラン反応を生じ強度の発現に寄与するため、初期のハンドリングの改善に効果がある。
本発明で用いる硫酸アルミニウム、硫酸鉄は、無機凝集剤として微細な土粒子の凝集体形成に寄与するので、各種石膏と同様にハンドリングの改善に効果がある。
本発明で用いるこれらの材料は、酸性又は弱酸性の化合物であるため、改良後の土壌pHをさらに低減させることが可能となる。
また、浚渫土などの含水比が120〜180%程度の高含水比の軟弱土を改良する場合、さらに植物性天然多糖類の一種であるグアガムを本発明の請求項1から請求項3のいずれかに記載の低アルカリ性固化組成物100質量部に対し1〜10質量部添加すると高含水軟弱土中の自由水を吸水し強度の発現ならびにハンドリングを著しく改善することが出来る。
以下、実施例および比較例によって本発明の低アルカリ性固化材組成物の具体例およびその効果を説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
表1に示した配合割合に従って、軽焼マグネシア粉末(酸化マグネシウム含有量68.0質量%、最大粒径2mm以下、平均粒径15μm)、およびアルマイト処理(硫酸系陽極酸化処理)で副生する硫酸廃液を、アルミニウム金属のNaOHによるアルカリエッチング老化液で中和した際に生成したスラッジを乾燥・粉砕して得られた非晶質水酸化アルミニウムを主成分として含有する粉末(以下、非晶質水酸化アルミ粉末と呼ぶ、最大粒径2mm以下、平均粒径20μm)を混合して、本発明の低アルカリ性固化材組成物2を得た。
(実施例2〜5)
表1に示した配合割合に従って、実施例1と同様にして前記軽焼マグネシア粉末および前記非晶質水酸化アルミ粉末を混合して、本発明の低アルカリ性固化材組成物3〜5を得た。
(比較例1)
前記非晶質水酸化アルミ粉末のみを用いて比較の固化材組成物1を得た。
(比較例2)
前記軽焼マグネシア粉末のみを用いて比較の固化材組成物6を得た。
(実施例5〜11)
表1に示した配合割合に従って、前記軽焼マグネシア粉末、前記非晶質水酸化アルミニウム粉末、および、二水石膏(工業製品、最大粒径2mm以下に調整)を混合し、本発明の低アルカリ性固化材組成物7〜13を得た。
(比較例3)
表1に示した配合割合に従って、実施例5と同様にして前記軽焼マグネシア粉末、前記非晶質水酸化アルミニウム粉末、および、前記二水石膏を混合し、比較の固化材組成物14を得た。
(実施例12〜14)
表1に示した配合割合に従って、前記軽焼マグネシア粉末、前記非晶質水酸化アルミニウム粉末、および、半水石膏(工業製品、最大粒径2mm以下に調整)を混合し、本発明の低アルカリ性固化材組成物15〜17を得た。
(比較例4)
表1に示した配合割合に従って、実施例12と同様にして前記軽焼マグネシア粉末、前記非晶質水酸化アルミニウム粉末、および、前記半水石膏を混合し、比較の固化材組成物18を得た。
(実施例15〜17)
表1に示した配合割合に従って、前記軽焼マグネシア粉末、前記非晶質水酸化アルミニウム粉末、および、無水石膏(工業製品、最大粒径2mm以下に調整)を混合し、本発明の低アルカリ性固化材組成物19〜21を得た。
(比較例5)
表1に示した配合割合に従って、実施例15と同様にして前記軽焼マグネシア粉末、前記非晶質水酸化アルミニウム粉末、および、前記無水石膏を混合し、比較の固化材組成物22を得た。
(実施例18〜20)
表1に示した配合割合に従って、前記軽焼マグネシア粉末、前記非晶質水酸化アルミニウム粉末、および、無水硫酸アルミニウム(試薬特級)を混合し、本発明の低アルカリ性固化材組成物23〜25を得た。
(比較例6)
表1に示した配合割合に従って、実施例18と同様にして前記軽焼マグネシア粉末、前記非晶質水酸化アルミニウム粉末、および、前記無水硫酸アルミニウムを混合し、比較の固化材組成物26を得た。
(実施例21〜23)
表1に示した配合割合に従って、前記軽焼マグネシア粉末、前記非晶質水酸化アルミニウム粉末、および、硫酸第一鉄一水和物(試薬特級)を混合し、本発明の低アルカリ性固化材組成物27〜29を得た。
(比較例7)
表1に示した配合割合に従って、実施例18と同様にして前記軽焼マグネシア粉末、前記非晶質水酸化アルミニウム粉末、および、前記硫酸第一鉄一水和物を混合し、比較の固化材組成物30を得た。
Figure 0004698163
(本発明の固化材組成物および比較の固化材組成物の一軸圧縮強度、含水比、湿潤密度、乾燥密度、pHの評価)
栃木県葛生町で採取した土は、関東ロームであり、密度1.396g/cm3、乾燥密度0.656g/cm3 、含水比112.7質量%(外比)、一軸圧縮強度155kN/m2 、pH6.8であった。
この土に対し、表1に記載の固化材組成物1〜30を土壌1m3当り100kgの割合で添加してよく混合した後、処理土を採取して一軸圧縮強度試験用供試体を作成した。
供試体の寸法は直径50mm、高さ100mm、成形は1.5kgランマーによる突き固めを25回/3層で行った。養生期間は20℃湿空中7日間で、供試体の一軸圧縮強度はJIS A 1216「土の一軸圧縮試験方法」に従って測定した。
作成した供試体の一軸圧縮強度(kN/m2)、含水比(質量%、外比)、湿潤密度(g/cm3)、乾燥密度(g/cm3)の測定結果を表2に示す。
一軸圧縮強度測定後の供試体は、良く解きほぐした後に、地盤工学会基準「土懸濁液のpH試験方法」に従ってpHを測定した。測定結果を表2に示す。
Figure 0004698163
前記軽焼マグネシア粉末と前記非晶質水酸化アルミ粉末を質量比で20:80〜80:20の割合で配合した本発明の低アルカリ性固化材組成物2〜5を用いた場合(実施例1〜4)は、安定処理後の土壌pHが10以下であり、且つ高い土質安定処理効果を示した。
それに対して、前記非晶質水酸化アルミ粉末のみの比較の固化材組成物1を用いて安定処理した場合(比較例1)は、安定処理後のpHは低かったが、安定処理効果が低かった。また、前記軽焼マグネシア粉末のみの比較の固化材組成物6を用いて安定処理した場合(比較例2)は、安定処理効果の面では優れていたが、pHが10を超えてしまった。
前記軽焼マグネシア粉末と前記非晶質水酸化アルミ粉末を質量比で25:75〜80:20の割合で配合した組成物100質量部に、前記二水石膏を25、70質量部添加した本発明の低アルカリ性固化材組成物7〜13を用いた場合(実施例5〜11)は、土に固化材組成物を添加した際に、実施例1〜4の本発明の低アルカリ性固化材組成物2〜5を添加した場合よりも土の物性が大幅に変化し、モールドへの突固めが容易であった。安定処理後の土壌pHは10よりも低く、水質基準値であるpH8.6以下を示すものもあった。土質安定処理効果も優れていた。
それに対して、前記軽焼マグネシア粉末と前記非晶質水酸化アルミ粉末を質量比で50:50の割合で配合した組成物100質量部に、前記二水石膏を200質量部添加した比較の固化材組成物14を用いた場合(比較例3)は、安定処理後のpHは低かったが、安定処理効果が低かった。
前記軽焼マグネシア粉末と前記非晶質水酸化アルミ粉末を質量比で40:60〜60:40の割合で配合した組成物100質量部に、前記半水石膏、または前記無水石膏を25、70質量部添加した本発明の低アルカリ性固化材組成物15〜17、19〜21を用いた場合(実施例12〜17)は、前記二水石膏を使用した本発明の低アルカリ性固化材組成物7〜13の場合と同様の効果を示した。それに対して、前記軽焼マグネシア粉末と前記非晶質水酸化アルミ粉末を質量比で50:50の割合で配合した組成物100質量部に、前記半水石膏、または前記無水石膏を200質量部添加した比較の固化材組成物18、22を用いた場合(比較例4、5)も、前記二水石膏を使用した比較の固化材組成物14の場合と同様に安定処理効果が低かった。
前記軽焼マグネシア粉末と前記非晶質水酸化アルミ粉末を質量比で40:60〜60:40の割合で配合した組成物100質量部に、前記無水硫酸アルミニウム、または前記硫酸第一鉄一水和物を25、70質量部添加した本発明の低アルカリ性固化材組成物23〜25、27〜29を用いた場合(実施例18〜23)は、硫酸塩添加により土粒子の凝集作用が増したことにより、安定処理時に使用した器具類へ処理土の付着が低減した。安定処理効果については、無水硫酸アルミニウム、または硫酸第一鉄一水和物の添加量が増えるに従って若干低下する傾向が見られるが、実施例の範囲での添加量であれば特に問題の無い程度であると考えられる。pHについては、硫酸塩の添加効果によりpH9.0を下回る値となった。
それに対して、前記軽焼マグネシア粉末と前記非晶質水酸化アルミ粉末を質量比で50:50の割合で配合した組成物100質量部に、前記無水硫酸アルミニウム、または前記硫酸第一鉄一水和物を200質量部添加した比較の固化材組成物26、30を用いた場合(比較例6、7)は、pHが7.0よりも低い値となった。しかし、安定処理効果は低く固化材として使用できる性能は有していなかった。
本発明の低アルカリ性固化材組成物は、マグネシアを主成分とする粉末と水酸化アルミニウムを主成分とする粉末を混合して得られるため、マグネシアの水硬性と土壌中の成分との反応、水酸化アルミニウムの粒子を凝集させる作用によって軟弱土壌を容易に固化することができ、かつ固化材中の水酸化アルミニウムのpH上昇抑制効果によりpHを10以下に抑えることができるので、アルカリ汚染による自然環境破壊を防ぐことが可能であるという、顕著な効果を奏するものであり、また、本発明の他の低アルカリ性固化材組成物は、マグネシアを主成分とする粉末と水酸化アルミニウムを主成分とする粉末を混合して得られる低アルカリ性固化材組成物全体100質量部に対して、さらに二水石膏、半水石膏、無水石膏、硫酸アルミニウム、硫酸鉄の中から選ばれた1種以上を必須成分として100質量部以下の割合で添加してなるので、各種石膏は安定処理初期の強度発現に寄与し、硫酸アルミニウム、硫酸鉄は高含水比の軟弱土のハンドリング改善 に効果があり、さらにこれらは酸性又は弱酸性であるため、改良後の土壌pHを低減させるので、固化材組成物の性能向上及びpHの抑制が可能とである、という顕著な効果を奏するものであり、
さらに、利用技術が少なく大半が埋立処理などによって廃棄処分されている産業副産物である金属アルミニウムのアルカリエッチングまたはアルマイト処理(硫酸系陽極酸化処理)で副生するアルミスラッジを乾燥、粉砕して得られる水酸化アルミニウムを主成分とする粉末を原料に使用することができるため、産業副産物の再利用技術として社会に大きく貢献するものであり、産業上の利用価値が非常に高い。

Claims (3)

  1. マグネシアを主成分とする粉末と、金属アルミニウムのアルカリエッチングまたはアルマイト処理(硫酸系陽極酸化処理)で副生するアルミスラッジを乾燥、粉砕して得られる水酸化アルミニウムを主成分とする粉末を混合比が、質量比で10:90〜80:20で混合して得られる、軟弱土壌に対して土壌安定化効果を発揮し、且つ処理後の土壌のpHが10以下となることを特徴とする低アルカリ性固化材組成物。
  2. マグネシアを主成分とする粉末と、金属アルミニウムのアルカリエッチングまたはアルマイト処理(硫酸系陽極酸化処理)で副生するアルミスラッジを乾燥、粉砕して得られる水酸化アルミニウムを主成分とする粉末を混合比が、質量比で10:90〜80:20で混合して得られる低アルカリ性固化材組成物全体100質量部に対して、さらに二水石膏、半水石膏、無水石膏、硫酸アルミニウム、硫酸鉄の中から選ばれた1種以上を必須成分として100質量部以下の割合で添加して得られる、軟弱土壌に対して土壌安定化効果を発揮し、且つ処理後の土壌のpHが10以下となることを特徴とする低アルカリ性固化材組成物。
  3. マグネシアを主成分とする粉末が、酸化マグネシウムを60質量%以上含有した軽焼マグネシアを粉砕して得られた粉末であることを特徴とする請求項1あるいは請求項2記載の低アルカリ性固化材組成物。
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