第1の発明は、スイッチング素子、被加熱体を加熱する誘導加熱コイル、および共振コンデンサを有する高周波インバータと、前記高周波インバータに任意の電圧で電力を供給する昇降圧手段と、前記昇降圧手段に電力を供給する電源と、前記高周波インバータおよび前記昇降圧手段を制御する制御手段と、前記高周波インバータの電流検出を行う電流検出手段とを備え、前記制御手段は、前記昇降圧手段に降圧動作を行わせ、前記高周波インバータの駆動周波数を順次変更して前記被加熱体の駆動周波数−電流特性を取得するとともに、前記駆動周波数−電流特性における谷間の周波数で前記高周波インバータの駆動を開始し、前記駆動周波数を下げながら前記被加熱体を加熱するための前記昇降圧手段の制御電圧を決定することにより、スイッチング素子を破壊することなく、正確に被加熱体の特性を把握することが可能となり、誘導加熱装置内部の温度上昇をできるだけ抑えた最適な条件で高周波インバータを駆動することが可能となる。
第2の発明は、特に、第1の発明において、前記高周波インバータの駆動の開始から前記高周波インバータの入力電力が極大値となるまでの駆動周波数の変化の度合いにより前記被加熱体の抵抗の大小を判別する材質判別手段をさらに備え、前記材質判別手段が前記被加熱体の材質判別を行っている間、前記昇降圧手段は降圧動作とすることにより、スイッチング素子が破壊に至ることなく、自由に高周波インバータに供給する電圧を可変することができるため、被加熱体の材質を正確に把握することが可能となる。したがって、被加熱体に最も適した電圧で高周波インバータを駆動して誘導加熱することが可能となり、誘導加熱装置内部の温度上昇も抑えることが可能である。
第3の発明は、特に、第1の発明において、制御手段が昇降圧手段の制御電圧を上げる制御と、高周波インバータの駆動周波数を下げる制御のいずれも行っていない場合に電流検出手段により検出される電流が所定閾値以上増加すると、制御手段は昇降圧手段の制御電圧を下げる制御、または、高周波インバータの駆動周波数を上げる制御を行うことにより、被加熱体と誘導加熱コイルとの相対的な位置が変化して磁気結合が良くなったことによって電流が増加し、スイッチング素子のロスが大となって破壊に至る場合があるため、電流を下げる制御を行うことによって機器の破壊を防止することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における誘導加熱装置を示している。
図に示すように、本実施の形態における誘導加熱装置は、高周波インバータ1と、この高周波インバータ1に任意の電圧で電力を供給する昇降圧手段7と、昇降圧手段7に電力を供給する電源6と、高周波インバータ1および昇降圧手段7を制御する制御手段9とを備えている。そして、前記制御手段9は、高周波インバータ1の制御目的に応じて昇降圧手段7の制御内容を演算し、高周波インバータ1に供給する電圧を可変するようにしている。
前記高周波インバータ1は、スイッチング素子2、調理鍋などの被加熱体5を加熱する誘導加熱コイル3、および誘導加熱コイル3と直列接続された共振コンデンサ4を有している。
また、本実施の形態における誘導加熱装置は、被加熱体5の材質判別を行う材質判別手段8および高周波インバータ1の電流検出を行う電流検出手段10をも備えているものである。
上記の構成において、誘導加熱装置の駆動について説明する。
電源6は、商用の単相100Vまたは200Vの交流電源をダイオードブリッジで直流化した直流電源を用いる場合が多いが、それに限定するものではない。電源6によって供給された電力は昇降圧手段7に送られる。昇降圧手段7は、電源6より供給された電力の電圧を所定の電圧まで昇圧または降圧する。
昇降圧手段7によって昇降圧された電源は、高周波インバータ1に送られる。高周波インバータ1は、スイッチング素子2、誘導加熱コイル3、共振コンデンサ4を有し、昇降圧手段7よって供給された電源をスイッチング素子2によって電流経路を切り替えて誘導加熱コイル3に高周波電流を供給する。誘導加熱コイル3からは高周波磁界が発生し、被
加熱体5内には電磁誘導による渦電流が流れ、そのジュール熱のために被加熱体5が加熱され、調理などが行えるものである。
図2に示すように、誘導加熱コイル3と共振コンデンサ4の共振周波数をfcとすると、インバータ駆動周波数がfc/2、fc/3の時にそれぞれ第2高調波、第3高調波による共振が起こり、図のような駆動周波数−電流特性となる。この駆動周波数−電流特性は、被加熱体5によって共振ピークの山の高さや中心となる周波数や山のすそ野の広がり方などがそれぞれ異なる。それぞれの被加熱体5で十分な入力電力が得られ、かつ高周波インバータ1を保護するためにどの周波数帯で駆動させるのがよいかはこの駆動周波数−電流特性によって決まる。
被加熱体5の材質判別は、誘導加熱コイル3および共振コンデンサ4に流れる共振電流、スイッチング素子2の電圧、誘導加熱コイル3および共振コンデンサ4に流れる共振電流周波数、共振コンデンサ4の電圧、電流を検出する電流検出手段10の検出値といったそれらの組み合わせによって被加熱体5の材質判別が可能である。材質判別を行う材質判別手段8は、高周波インバータ1や昇降圧手段7を制御する制御手段9と兼用しても良い。
材質判別を行うための高周波インバータ1の制御方法について説明する。図3に示すように、被加熱体5の材質によって共振周波数や入力電力の山の高さが異なっている。この特性を利用して、高周波インバータ1は共振点であるfc、またはfc/2、fc/3よりも高い周波数で、ピークの山の谷間にあたる周波数より駆動を始める。高周波インバータ1の駆動周波数をピークの山の谷間とすることで、高周波インバータ1の駆動開始直後に急激に電力が入り、高周波インバータ1の破壊に至ることを避ける。また、共振点よりも高い周波数の山の谷間としたのは、共振点よりも低い周波数で入力電力が大きくなるとスイッチング素子2のロスが大となって破壊に至るためである。
材質判別の一例を説明する。山の谷間の周波数から高周波インバータ1を駆動し、駆動周波数を下げていくと、図3のように、低抵抗金属の入力電力の方が先に入力電力が大となる。すなわち、低抵抗金属の場合は高周波インバータ1の駆動周波数を少し下げるだけで入力電力が大となるのに対して、駆動周波数を大きく下げなければ入力電力が大とはならない金属も存在する。したがって、被加熱体5が低抵抗金属であるかそうでないかがわかる。
それぞれの材質の判別は、図4に示すような材質判別の閾値を基準に判別される。その閾値の設計は次の通りである。誘導加熱コイル3の入力インピーダンスが大きく、インバータ電流が小さいと検出された場合、鉄などの高抵抗金属であることが判別される。さらに、誘導加熱コイル3の入力インピーダンスが小さく、インバータ電流が大きいと検出され、高周波インバータ1の駆動周波数が高いと検出された場合、固有抵抗が小さく、共振周波数の高いアルミニウムなどの低抵抗金属であることが判別される。無負荷の場合は、誘導加熱コイル3の入力インピーダンスが小さく、インバータ電流が大きいと検出され、さらに、駆動周波数が低いと検出されることから判別される。
他にも材質を判別する方法としては、高周波インバータ1の入力電流やスイッチング素子2にかかる電圧、共振コンデンサ4の電圧などから判別することが可能である。例えば、アルミニウムなどの低抵抗金属の場合は、入力電流に対して共振コンデンサ4の電圧が高くなり、鉄系の場合は入力電流に対して共振コンデンサ4の電圧が低いという傾向があるからである。
このようにして、被加熱体5が低抵抗金属であるアルミニウムや銅などの場合は高周波
インバータ1の駆動周波数を高周波化し、抵抗を大きくすることで低抵抗金属を加熱することができ、高抵抗金属の場合は低抵抗金属を加熱する駆動周波数よりも低い周波数で高周波インバータ1を駆動することで高周波インバータ1のロスを小さくするといったことが可能となる。また、材質に応じて誘導加熱コイル3や共振コンデンサ4の容量を切り替えるといったことも可能となる。
ここで、被加熱体5を加熱するまでの流れを整理すると、高周波インバータ1は駆動周波数−電流特性におけるピークの谷間の駆動周波数で高周波インバータ1の駆動を開始し、駆動周波数を下げていく。その際、被加熱体5の材質を材質判別手段8によって判別する。被加熱体5の材質が判別されると、その材質の駆動周波数−電流特性に最も適した駆動周波数にて被加熱体5の加熱制御に移行する。加熱制御を開始する駆動周波数は、それぞれの材質であまり入力電力が大きくならない駆動周波数とし、そこから駆動周波数を徐々に下げていくことで入力電力を増加させていく。これは、入力電力を一気に上昇させると機器の破壊につながるからである。
被加熱体5の材質と駆動周波数−電流特性については既に説明したが、この駆動周波数−電流特性は被加熱体5と誘導加熱コイル3の相対的な位置によっても変化する。被加熱体5の中心と誘導加熱コイル3の中心が水平方向で一致し、かつ、その垂直方向の距離が短いほど駆動周波数−電流特性における山のピークの中心周波数は高くなる。したがって、たとえ材質は違っても被加熱体5と誘導加熱コイル3の相対的な位置によってはピークの中心にあたる周波数は同じになることがある。但し、ピークの山の高さは材質によって異なるので、十分なパワーが得られるとは限らない。
したがって、次のようなケースが考えられる。材質判別制御中、被加熱体5が誘導加熱コイル3との相対的な距離が離れた状態に置かれている場合、その同じ被加熱体5が誘導加熱コイル3との相対的な距離が最も短い距離にあるときと比べて低い周波数で材質を判別することとなり、材質判別を間違えてしまう。そして高周波インバータ1は、その間違えた材質で最も効率よく加熱できるパラメータで加熱を開始する。その後、被加熱体5が中心に置かれた場合にスイッチング素子2のロスが大となる駆動周波数で高周波インバータ1を駆動しているため、機器内部に熱がこもって機器を破壊する。それを避けるために入力電力を下げてロスを小さくした場合、被加熱体5を加熱する電力が下がり、火力感がなくなるために使い勝手の悪い誘導加熱装置となってしまう。
これまで、高周波インバータ1に供給する電圧は商用の単相100Vまたは200Vの交流電源をダイオードブリッジで直流化した直流電源を用いる場合が多く、それをさらに昇圧手段によって昇圧していた。このような構成の場合、被加熱体5を加熱する場合には問題ないが、高周波インバータ1の駆動周波数と電流の関係から被加熱体5の材質を判別する際には問題があった。
つまり、高周波インバータ1には電源6より低い電圧で電力を供給することができないため、通常は、図2や図3に示した駆動周波数−電流特性の山の右すそ野部分を把握するにとどまる。したがって、被加熱体5の材質によって異なる入力電力の山の高さまでは把握することができない。入力電力の山の高さを知ることによって、使用者が望む入力電力を得るには高周波インバータ1に入力する電力に必要な電圧がわかる。高周波インバータ1に供給する電圧によって、駆動周波数−電流特性の山の高さは変わるからである。高周波インバータ1に供給する電圧を高くすると、駆動周波数−電流特性の山が高くなる代わりに昇降圧手段7のロスが大きくなり、高周波インバータ1の電力制御も難しくなるため、高周波インバータ1に供給する電圧は必要最低限にすることが理想的である。したがって、入力電力の山の高さを知ることによって昇降圧手段7のロスが少なく、入力電力をきめ細かく制御することができる。
また、入力電力の山の中心である共振周波数がわかると、スイッチング素子2の破壊を防止することができる。すなわち、高周波インバータ1を駆動して被加熱体5を加熱する際、図2に示したような駆動周波数−電流特性の山の谷から制御を開始し、駆動周波数を下げていくことによって徐々に入力電力を増加させていき、使用者の要望する入力電力まで増加させていく。つまり、駆動周波数−電流特性の山の右側斜面を利用して制御を行っている。その理由は、駆動周波数−電流特性の山の左側で高周波インバータ1を駆動させると、スイッチング素子2のロスが増大して破壊に至るからである。したがって、入力電力を増加させていく制御において、高周波インバータ1の駆動周波数を下げていく際に駆動周波数−電流特性の山の中心である共振周波数を超えない範囲で制御することによって、スイッチング素子2の破壊を防ぐことができる。よって、機器の破壊を防止し、使い勝手の良い誘導加熱装置を提供することができる。
また、これまでの誘導加熱装置では、電源6から高周波インバータ1に供給される電力は、昇圧手段はあっても降圧手段がなかったために電源6の電圧以下にすることができなかった。そのため、高周波インバータ1を電源6の電圧そのままで駆動したとしても、動作点を駆動周波数−電流特性の山の左側で動作させると山が十分に高いためにスイッチング素子2のロスも大きくなり破壊に至る。
本実施の形態では、電源6の電圧を昇降圧手段7によって降圧させることができるため、駆動周波数−電流特性の山を十分に低くすることができる。このため、動作点を駆動周波数−電流特性の山の左側で動作させても山が十分に低く、スイッチング素子2のロスが小さいために破壊に至ることがない。したがって、被加熱体5ごとに異なる駆動周波数−電流特性の山の高さと共振周波数を正確に知ることができる。
これによって、被加熱体5や制御しようとする電力に応じて高周波インバータ1に供給する電圧を昇降圧手段7によって調節することによって機器内部のロスを減らし、ハイパワーでの連続運転時間を長くすることができ、強火を必要とする調理における調理性能などを向上させた誘導加熱装置を実現することができる。また、電力制御の分解能を上げることができ、調理では炊飯や煮込みなどのオート調理メニュー機能を実現して使い勝手の良い誘導加熱装置を実現することができる。
なお、本実施の形態では、高周波インバータ1と昇降圧手段7が分離されている構成を挙げたが、これに限定するものではなく、高周波インバータ1の一部が昇降圧手段7の一部を兼ねていても同様の効果が得られる。
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2における誘導加熱装置について説明する。実施の形態1と同一部分は説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
実施の形態1で説明したように、被加熱体5によって駆動周波数−電流特性の山が異なる。したがって、その被加熱体5を加熱するのに最適な高周波インバータ1の駆動周波数やデューティは被加熱体5の材質によって変更する必要がある。
被加熱体5の材質判別は材質判別手段8によって行われるが、その方法については既に説明した。この制御方法は被加熱体5がどのような材質のものであっても良いように制御方法を決定している。そのため、材質によってはスイッチング素子2のロスが大となるような場合もある。そのため、スイッチング素子2が破壊に至ることがないような方法で材質判別が行われるため、その材質判別の方法には制約がある。
そこで、昇降圧手段7は、電源6より供給された電力の電圧を所定の電圧まで昇圧または降圧するが、本実施の形態では、被加熱体5の材質判別を行う材質判別手段8が被加熱体5の材質判別を行っている間、昇降圧手段7は降圧動作としているものである。
これにより、駆動周波数−電流特性の山の高さを低くし、スイッチング素子2のロスを小さくすることができる。また、ロスの絶対値が小さいため、材質判別制御によってスイッチング素子2のロスが大きくなったとしてもスイッチング素子2が破壊に至ることがなくなる。このため、被加熱体5の材質を正確に把握することが可能となる。したがって、被加熱体5に最も適した電圧で高周波インバータ1を駆動して誘導加熱することが可能となり、誘導加熱装置内部の温度上昇も抑えることが可能である。
なお、昇降圧手段7は、被加熱体5を加熱する場合は昇圧動作する。これにより、高周波インバータ1に同電力を供給する場合に電流を減らすことが可能となり、高周波インバータ1を構成する各部品の部品定格を下げることが可能となり、部品の小型化と低コスト化を可能としてより安価で小型の製品とすることで使用者に便益をもたらすようにしている。
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3における誘導加熱装置について説明する。実施の形態1と同一部分は説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
本実施の形態では、高周波インバータ1の電流検出を行う電流検出手段10を備え、制御手段9は、昇降圧手段7を降圧動作として高周波インバータ1の駆動周波数を順次変更して、駆動周波数と電流の関係を取得し、その関係より被加熱体5を加熱するのに必要な電圧を演算し、昇降圧手段7の制御電圧を決定するものである。
つまり、昇降圧手段7を降圧動作として高周波インバータ1の駆動周波数を順次変更していく材質判別制御において、電流検出手段10で検出した電流とそのときの高周波インバータ1の駆動周波数より共振周波数および共振の山の高さに関する情報を取得し、その駆動周波数−電流の関係に最も適した駆動周波数とデューティで高周波インバータ1を駆動するようにしている。
誘導加熱装置全体として理想的な高周波インバータ1の駆動は、昇降圧手段7は非動作とし、電源6の電圧がそのまま高周波インバータ1に供給され、高周波インバータ1は第3高調波の共振を利用して、fc/3より高い周波数、すなわち第3高調波の山の右側領域を動作点として使用者の求める入力電力に制御されることが望ましい。この状態で動作させると、同一電力では最もロスが少なくなる。
しかしながら、上記条件では使用者の求める電力が十分に得られない場合、昇降圧手段7を動作させて昇圧することによって駆動周波数−電流の山の高さを必要な高さまで上げることによって電力を増加させる。昇降圧手段7の昇圧比によって高周波インバータ1に供給できる電圧は限界があるため、あとは高周波インバータ1の駆動周波数を変更することによって使用者の求める電力まで駆動周波数を下げていく。その際、高周波インバータ1の動作点が駆動周波数−電流の山の右側で動作するものとし、山の頂点を越えないように制御される。頂点を越える場合は、動作点を第2高調波の共振の山に変更することで十分な電力が得られるようになる。
これにより、被加熱体5が磁気結合した状態での誘導加熱コイル3と共振コンデンサ4の共振の山が小さい。このため、スイッチング素子2のロスが大きくなるような条件で動作させたとしてもスイッチング素子2のロスとしては小さく破壊には至らない。したがっ
て、スイッチング素子2を破壊することなく、正確に被加熱体5の特性を把握することが可能となり、誘導加熱装置内部の温度上昇をできるだけ抑えた最適な条件で高周波インバータを駆動することが可能となる。
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4における誘導加熱装置について説明する。実施の形態1と同一部分は説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
被加熱体5の材質によって駆動周波数−電流の山の高さは異なる。昇降圧手段7によって高周波インバータ1に供給する電圧を上げることによって山の高さを高くすると昇降圧手段7のロスが増えるため、必要最低限の高さにとどめることによってロスを低減することができる。
必要な山の高さは、使用者の設定した誘導加熱装置の火力設定によっても異なるため、本実施の形態では、昇降圧手段7の制御電圧は、使用者の設定した火力設定に応じて変更するようにしたものである。
これにより、火力設定が低くい場合には山が小さくても所定のパワーが入るため昇降圧手段7の制御電圧を低くしてスイッチング素子2のロスを低減し、火力設定が高い場合には昇降圧手段7の制御電圧を高くして山を大きくして所定のパワーを得るようにしている。したがって、無駄なスイッチング素子のロスを低減することができる。
(実施の形態5)
次に、本発明の実施の形態5における誘導加熱装置について説明する。実施の形態1と同一部分は説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
本実施の形態では、制御手段9は、駆動周波数と電流の関係より、被加熱体5を加熱するのに適した高周波インバータ1の駆動周波数およびデューティを決定して誘導加熱を行うようにしたものである。すなわち、駆動周波数−電流の特性より、使用者の設定した火力設定を満たす電力を得るためには第3高調波の山で十分か、あるいは第2高調波の山が必要なのかがわかる。したがって、それらの条件から被加熱体5を加熱するのに適した高周波インバータ1の駆動周波数およびデューティを決定して誘導加熱を行うものである。
これにより、被加熱体5毎に異なる駆動周波数と電流を得て、その被加熱体5を誘導加熱するのに最適な電源電圧と、高周波インバータの駆動周波数およびデューティを選択することが可能となり、無駄なスイッチング素子のロスを低減して、誘導加熱装置内部の温度上昇を抑えることが可能となる。
(実施の形態6)
次に、本発明の実施の形態6における誘導加熱装置について説明する。実施の形態1と同一部分は説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
実施の形態3で説明してきたように駆動周波数−電流の関係より、駆動周波数が決まればそのときの電流値がわかる。したがって、本実施の形態では、制御手段9は、駆動周波数と電流の関係より、高周波インバータ1の駆動周波数の可変範囲を決定するようにしたものである。
これにより、被加熱体5が移動した場合に、駆動周波数が大きな範囲で変更されることを防止し、高周波インバータ1を構成するスイッチング素子2のロスが大きくなるような動作状態になることを防ぎ、機器の故障を防止することができる。
例えば、駆動周波数−電流特性を調べる時に被加熱体5は誘導加熱コイル3の中心に置かれていたとする。その場合、その被加熱体5の材質としては最も高い周波数のところに共振周波数fcがある。その情報を持ったまま、被加熱体5の加熱に移行する。そして、加熱中に被加熱体5が誘導加熱コイル3の中心からずれた場合は、図5に示すように、駆動周波数−電流の山は左方向にずれていく。それは、高周波インバータ1を同じ駆動周波数で動作させた場合には入力電力は小さくなっていくことになる。入力電力を同じ値で維持するには駆動周波数を下げていく必要がある。その際、駆動周波数を大きく下げた後、被加熱体5が急に誘導加熱コイル3の中心に戻ってきた場合には駆動周波数−電流の山も右方向に移動し、その結果、場合によっては山の左側に動作点が来てスイッチング素子2のロスが急増し、スイッチング素子2の破壊に至る可能性がある。したがって、被加熱体5が移動しても、高周波インバータ1の駆動周波数に制限を設け、上記のような場合でも動作点が山の左側に移動しないようにすることで機器の安全性を高めることができる。
(実施の形態7)
次に、本発明の実施の形態7における誘導加熱装置について説明する。実施の形態1と同一部分は説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
実施の形態6で説明したように、被加熱体5の材質によって駆動周波数−電流の関係は決まるが、昇降圧手段7によって高周波インバータ1に供給される電圧によって山の高さが変わり、被加熱体5と誘導加熱コイル3の相対的な距離によって山は左右に移動する。
山の高さについては昇降圧手段7の制御値より予測可能であるが、被加熱体5と誘導加熱コイル3の位置関係については把握することができない。したがって、被加熱体5と誘導加熱コイル3の位置関係が変わり、図5のように、駆動周波数−電流の関係が変化しているにもかかわらず、変化する前の駆動周波数−電流の関係より昇降圧手段7の制御電圧、高周波インバータ1の駆動周波数の可変範囲など、制御値が決定されてしまうと、急激にスイッチング素子2のロスが増大してスイッチング素子2が破壊に至る可能性がある。
したがって、本実施の形態では、被加熱体5の材質判別を行う材質判別手段8による被加熱体5の変更検知により、少なくとも、昇降圧手段7の制御電圧、高周波インバータ1の駆動周波数と電流の関係、および高周波インバータ1の駆動周波数可変範囲のいずれかをクリアするようにしている。
これにより、間違った情報を元にして制御することを防ぎ、負荷に応じた制御電圧や駆動周波数を再設定することで機器を安定して動作させることが可能となる。
(実施の形態8)
次に、本発明の実施の形態8における誘導加熱装置について説明する。実施の形態1と同一部分は説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
実施の形態3で説明したように、被加熱体5が決まると駆動周波数−電流の特性が決まる。そして、昇降圧手段7の制御電圧がわかると、駆動周波数−電流特性の山の高さが決まる。被加熱体5が誘導加熱コイル3との相対的な位置関係が変わらなければ、駆動周波数−電流特性が決まる。
したがって、被加熱体5と誘導加熱コイル3の相対的な位置関係が変わらなければ、高周波インバータ1の駆動周波数を変更する際、昇降圧手段7の制御電圧および駆動周波数と駆動周波数−電流特性より電流検出手段10で検出される電流値を推定することができる。しかし、実際の電流が推定値より所定閾値以上ずれている場合、被加熱体5と誘導加
熱コイル3の相対的な位置関係が変わったことを意味する。
本実施の形態では、制御手段9が高周波インバータ1の駆動周波数を変更する際、昇降圧手段7の制御電圧および駆動周波数から電流検出手段10で検出される電流を推定し、実際の電流が推定値より所定閾値以上ずれている場合、少なくとも、昇降圧手段7の制御電圧、駆動周波数と電流の関係、および高周波インバータ1の駆動周波数可変範囲のいずれかをクリアするようにしている。
これにより、被加熱体5がずれたことによって動作点が変わり、使用者が求めている入力電力が得られなくなることを防ぎ、使用者の要求する入力電力を確保するために被加熱体5の位置を変更することを促して所定の入力電力を供給することを可能とするものである。
特に、推定された値よりも電流が小さい場合、被加熱体5は誘導加熱コイル3との距離が離れていることを意味し、その後、被加熱体5が誘導加熱コイル3に近づいた際に急激に電流が増加し、スイッチング素子2のロスが急激に増えて破壊に至ることを防止し、機器の安全性を高めることができる。また、駆動周波数−電流特性を取得する際に、被加熱体5が既に誘導加熱コイル3の中心からずれている場合、図5のような駆動周波数−電流特性となるため、同様に加熱中に被加熱体5が誘導加熱コイル3に近づいた際に、急激に電流が増加し、スイッチング素子2のロスが急激に増える。これらを防止するため、推定された電流と実際の電流のずれが大きい場合には、上記の危険を回避するために、少なくとも、昇降圧手段7の制御電圧、駆動周波数と電流の関係、および高周波インバータ1の駆動周波数可変範囲のいずれかをクリアすることによって、間違った情報を元にして制御することを防ぎ、機器の安全性を高めることができる。
(実施の形態9)
次に、本発明の実施の形態9における誘導加熱装置について説明する。実施の形態1と同一部分は説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
制御手段9が昇降圧手段7の制御電圧を上げる、あるいは高周波インバータ1の駆動周波数を下げる制御を行った場合、駆動周波数−電流特性が変わらなければ電流は増加する。これは、高周波インバータ1の動作点を駆動周波数−電流特性の山の右側で駆動しているためである。
しかし、制御手段9が昇降圧手段7の制御電圧を上げる制御と、高周波インバータ1の駆動周波数を下げる制御のいずれも行っていない場合に電流が所定閾値以上増加すると、実施の形態8で説明したと同様に、被加熱体5が誘導加熱コイル3に近づいていることを意味する。そのとき、急激に電流が増加し、スイッチング素子2のロスが急激に増える。
そのため、本実施の形態では、前記状態時には、制御手段9は昇降圧手段7の制御電圧を下げるまたは高周波インバータ1の駆動周波数を上げる制御を行うものである。
これにより、被加熱体5と誘導加熱コイル3との相対的な位置が変化して磁気結合が良くなったことによって電流が増加し、スイッチング素子2のロスが大となって破壊に至る場合は、電流を下げる制御を行うことによって機器の破壊を防止することができる。
(実施の形態10)
次に、本発明の実施の形態10における誘導加熱装置について説明する。実施の形態1と同一部分は説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
被加熱体5が誘導加熱コイル3の中心からずれて置かれた場合、または被加熱体5と誘導加熱コイル3間の垂直方向の距離が伸びた場合、図5のように駆動周波数−電流特性の山は左に移動することは既に説明した。その場合、実施の形態8、実施の形態9で説明したように被加熱体5と誘導加熱コイル3の相対的な距離が近づいた場合にスイッチング素子2のロスが急激に増えることが予想される。
したがって、本実施の形態では、制御手段9が被加熱体5の位置ずれを検出した場合には閾値を所定閾値より小さくすることにより、スイッチング素子2の破壊を防止する。すなわち、被加熱体5がずれることによって同じ入力電力とするためには高周波インバータ1の駆動周波数を下げる必要があり、その駆動周波数が下がった状態から被加熱体5が中心位置に戻ってきた場合には高周波インバータ1を構成するスイッチング素子2が急激にロスが大きくなって破壊される現象に陥ってしまう可能性が高まる。しかし、それを防止するために、その兆候である電流の増加量の変化で回避制御する条件を厳しくすることで、そのような状態を早期に発見しそれを回避する能力を高めることが可能となり、スイッチング素子2の破壊を防止している。
(実施の形態11)
次に、本発明の実施の形態11における誘導加熱装置について説明する。実施の形態1と同一部分は説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
駆動周波数−電流の特性は、昇降圧手段7から高周波インバータ1に供給される電圧によって変化する。したがって、昇降圧手段7の制御電圧が安定していない間は駆動周波数−電流特性も定まらず、制御が困難となる。
したがって、本実施の形態では、制御手段9は、昇降圧手段7が制御電圧に達していない場合は、高周波インバータ1の駆動周波数を変更せず、制御電圧が安定してから駆動周波数を変更して入力電力を制御するものである。
これにより、使い勝手の良い誘導加熱装置を提供することができる。すなわち、高周波インバータ1の駆動周波数を変更することによって入力電力が変動してしまうため、一定以上の制御電圧がない場合には駆動周波数を固定し、高周波インバータ1へ供給される電源を安定させることによって電力制御が容易となり、使い勝手の良いものとなる。
上記した各実施の形態1〜11の構成は、必要に応じて適宜組み合わせることが可能であり、各実施の形態そのものに限定されるものではない。