JP4695578B2 - 半導体放射線検出器および陽電子放出型断層撮像装置 - Google Patents
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Description
ここで、使用される半導体素子としては、いくつかの種類があるが、核医学診断装置で使用するγ線を感度よく測定するという点で実効原子番号が大きく、また取扱いの点で室温動作可能である半導体材料を用いたものが好適であり、具体的には、テルル化カドミウム(CdTe)やテルル化亜鉛カドミウム(CdZnTe)などが挙げられる。
一方、0.5mm厚の半導体素子を積層した半導体放射線検出器は、放射線エネルギーの正確さを示すエネルギー分解能や、放射線の入射時刻の精度を示す時間分解能といった特性に関して、1.0mm厚の半導体放射線検出器よりも優れた特性を示した。したがって、半導体素子を薄く形成したことによって特性が悪化するわけではないことが確認できた。
また、電極板に磁性をもたせることで、電磁ピンセット等を用いたハンドリングを行うことができ、半導体素子と電極板とを積層するための工程や基板へ半導体放射線検出器を実装する際等の取扱いが容易となって、生産性の向上、組立コストの低減を図ることができる。
(第1実施形態)
本実施形態の半導体放射線検出器(以下では単に、検出器という)1は、図1に示すように、4枚の半導体素子11と、半導体素子11の間および半導体素子11の両端に配置された電極板12C,12Aとを有して積層構造とされており、本実施形態の特徴的構成である切欠部13が電極板12C,12A(図2(b)参照)に形成されている。
切欠部13は、電極板12Cをプレス成形する際に、同時に打ち抜かれることで形成される。本実施形態では、切欠部13が、電極板12Cの上下左右に所定の間隔を置いて計4つ形成されている。電極板12Cは、半導体素子11に接する部分の外形状が半導体素子11の外形に沿って線状に形成されており、内側に4つの切欠部13を備えた、全体として四角い枠状を呈したものとなっている。
なお、電極板12Cの外形寸法は、半導体素子11と同じ大きさであっても差し支えない。また、電極板12Cの厚さは、10μmから100μm程度で、主に50μm程度とされることが望ましい。
本実施形態では、電極板12C,12Aの中央部に十字状に切り残された交差部分12dが半導体素子11に対して接着されるように、図1,図2(a)(c)に示すように、半導体素子11のカソードCおよびアノードAが形成される面の中央部に導電性接着剤14がそれぞれ塗布される。
なお、導電性接着剤14の塗布位置は、半導体素子11を電極板12C,12Aで保持することのできる位置であれば交差部分12dに限られることはなく、例えば、図2(a)に示すように、電極板12Cの対角部11b,11b等としてもよい。
ここで、半導体素子11と隣接する半導体素子11’との間には、電極板12Aが配置されており、この電極板12Aには切欠部13が形成されているので、1次電子Eが隣接する半導体素子11’へ向けて飛び出しても、電極板12Aの切欠部13をそのまま通過して、隣接する半導体素子11’の半導体材料11a’に入射される確率が高まる。つまり、飛び出した1次電子Eが電極板12Aによって吸収される確率が小さくなる。
そこで、本実施形態の検出器1に、線源強度2500kBqの137Csの662keVγ線を使用して、キャリヤ電荷量を測定し、感度の測定を行った。検出器1は、線源から200mm離れた位置に設置した。その結果、662keVのピークの計数は1時間で10056回であった。
比較例として、図3(c)に示すような切欠部13の形成されていない電極板EBを使用した検出器を用意し、これを線源から200mm離れた位置に設置して同様に感度の測定を行った。なお、この比較例の検出器は、電極板EBが異なるだけであり、同一の体積を有する半導体材料11aを使用した。
このことから、本実施形態の検出器1と比較例の検出器とを、計数によって比較評価すると、本実施形態の検出器1は、比較例の検出器に比べて、12%の感度の向上が認められた結果となった。
図6に示すように、本実施形態のPET撮像装置30は、中央部分に円柱状の計測空間31aを有する撮像装置31、被検体(被検診者)Hを支持して長手方向に移動可能なベッド32、データ処理装置(コンピュータ等)33、および表示装置34を主として備えて構成される。
撮像装置31は、図7,図8(a)(b)に示すような、ユニット基板U(プリント基板)を周方向に多数配置しており、被検体Hは、図6に示すように、ベッド32に載せられてユニット基板Uによって取り囲まれる計測空間31a内に挿入される。
また、コンデンサ26、抵抗27、アナログASIC28およびデジタルASIC29を電気的に接続する複数の接続配線(図示せず)が、ASIC基板20B内に設けられている。アナログASIC28は、検出器1から出力されたアナログ信号(γ線検出信号)を処理する、特定用途向けのLSIの一種である。アナログASIC28は、個々の検出器1ごとに信号処理回路を設けている。これらの信号処理回路は、対応する一つの検出器1から出力されたγ線検出信号(放射線検出信号)を入力してγ線の波高値を求めるようになっている。
PET検査を実行する検査者(診療放射線技師や医師)は、検査の目的に応じて必要な情報(断層像を得たい領域(撮像領域或いは関心領域)、スライス数、スライス間隔、吸収線量等)を、データ処理装置33を介して入力する。この場合、表示装置34に図示しない情報入力画面を表示させて、必要なデータを、キーボードやマウス等により入力する。その後、ベッド32を長手方向に移動させて、被検体Hの検査部位(例えば癌の患部)が所定の位置に来るまで被検体Hを計測空間31a内に挿入する。そして、PET撮像装置30を作動させる。
また、比較例として、図3(c)に示すような切欠部13の形成されていない電極板EBを使用した図示しない検出器を多数用意し、これをPET撮像装置30の配線基板24上に取り付け、同様に感度の測定を行った。なお、この比較例の検出器は、電極板EBが異なるだけであり、同一の体積を有する半導体材料11aを使用した。
このように16%の感度の向上が得られることから、PET撮像装置30においては、被検体Hの検査時間(測定時間)を感度の向上分、つまり、16%短縮することが可能となる。
(1)検出器1の積層構造を構成する電極板12C(12A)には、半導体素子11に接する領域に切欠部13が形成されているので、電極板12C(12A)に形成された切欠部13を、γ線の入射による光電効果で生じた1次電子Eの通過空間として利用することができる。つまり、光電効果で生じた1次電子Eが電極板12C(12A)へ向けて飛び出しても、その1次電子Eは切欠部13を通じて、隣接する半導体素子11(図3(b)では半導体素子11’、以下同じ)へ入射されるようになり、電極板12C(12A)によって吸収される確率が小さくなる。したがって、従来であれば電極板12C(12A)で消滅していたであろう1次電子Eを隣接する半導体素子11に入射させることができる。これによって、隣接する半導体素子11でキャリヤを生成する1次電子Eを増加させることができ、これを有効な信号として使用することができる。したがって、γ線(放射線)検出の感度が向上するようになる。
(2)電極板12C(12A)に形成された切欠部13は、半導体素子11に接する領域に形成されているので、電極板12C(12A)の切欠部13以外の部分によって半導体素子11を好適に保持することができる。
(3)電極板12C(12A)に磁性をもたせてあるので、電磁ピンセット等を用いたハンドリングを行うことができ、半導体素子11と電極板12C(12A)とを積層するための工程や配線基板24への検出器1の実装時における取扱いが容易となって、生産性の向上、組立コストの低減を図ることができる。
特に、本実施形態のように、PET撮像装置30において使用される小型積層タイプの検出器1においては、電極板12C(12A)の面積が小さくなると、吸着による真空ピンセット等を用いて電極板12C(12A)を取り扱うことが困難となるため、電極板12C(12A)に磁性をもたせることで、電磁ピッセット等によるコントロールが可能となり効果的である。
(4)図4(a)〜(c)に示した検出器1Aにおいては、切欠部13’が多数設けられる一方、電極板12C1の切り残された部分の面積が、検出器1(図1参照)における電極板12Cの切り残された部分の面積よりも大きくなっているので、電極板12C1の剛性が高く、半導体素子11の保持性に優れている。また、切欠部13’を電極板12C1に打ち抜く際にも変形等を生じ難く、電極板12C1の形状維持に優れている。したがって、感度に優れるとともに、寸法精度の高い検出器1Aが得られる。
(5)図5(a)〜(c)に示した検出器1Bでは、半導体素子11に接する部分の面積を最小限の面積とすることができ、より一層感度を向上させることができる。また、電極板12C2の縦板部12e,12eは、半導体素子11の左右両側縁部を覆う長さを有しているので、半導体素子11の左右両側縁部の接触等による損傷等を防止することができる。
(6)検出器1を用いたPET撮像装置30においては、検出器1の感度が向上することによって、放射性薬剤の量の低減や測定時間の短縮を図ることができる。また、検査時間(測定時間)の短縮によって、検査人数(測定人数)の増加が見込めるので、経済効果が高く、コストの低減も図ることができる。
また、薄い半導体素子11を複数積層して構成される検出器1を用いているので、電子やホールの移動距離が短縮でき、エネルギー分解能や入射時刻の認識精度が向上し、また半導体素子11の体積占有率を大きく取れて検出器1の体積も増大できる等の利点を備えており、PET撮像装置30の性能を向上させることができる。
本発明の第2実施形態である半導体放射線検出器を説明する。本実施形態の検出器1Dは、図9に示すように、切欠部13が形成された電極板12C,12Aが、積層されて隣合う半導体素子11,11の間にのみ配置される構成となっており、検出器1Dの両側に配置される電極板12Bが、切欠部13の形成されていない面板状のものを用いている点が異なっている。
(7)本実施形態の検出器1Dは、前記したPET撮像装置30に用いた場合に特に効果的である。つまり、前記したようにPET撮像装置30では、検出器1Dを配線基板24上に多数設ける必要があるので、検出器1Dから隣接する他の検出器1Dへの1次電子Eの入射が抑制されることで、検出器1D個々の検出精度が向上するようになり、エネルギー分解能および位置分解能の精度を向上することができる。
本発明の第3実施形態である半導体放射線検出器を説明する。本実施形態の検出器1Eは、図10に示すように、積層方向に複数の半導体素子11が電気的接続によってひとつのまとまりとなって構成される、計2つの検出器集合体11A,11Bを有している点が異なっている。
検出器1Eは、半導体素子11と、切欠部13を有する電極板12A3,12A4と、切欠部13を有しない電極板12Bとが交互に積層されてなり、中央に配置される電極板12Bを境にして、2つの検出器集合体11A,11Bが構成されている。本実施形態では、中央の電極板12Bが2つの検出器集合体11A,11Bの共有の電極となっている。
すなわち、検出器集合体11Aを例にとって説明すると、前記した図3(b)に示すように、γ線の入射による光電効果で生じた1次電子Eが、半導体材料11a内でキャリヤを生成する前に、隣接する半導体素子11’側(検出器集合体11A内の隣接する半導体素子11’)へ向けて飛び出しても、切欠部13をそのまま通過して、隣接する半導体素子11’の半導体材料11a’に入射され、隣接する半導体素子11’で有効な電気信号として取り出される。したがって、検出器集合体11A内において1次電子Eによるキャリヤが生成され、これによって、検出器集合体11A内における感度が向上するようになる。
(8)本実施形態では、切欠部13の形成された電極板12A3,12A4と切欠部13の形成されていない電極板12Bとを交互に配置することによって、電極板12Bを境として2つの検出器集合体11A,11Bを構成することができ、各検出器集合体11A,11Bから別個のγ線検出信号を出力することのできる検出器1Eを構成することができる。
そしてこのような検出器1Eを用いたPET撮像装置30によれば、電極板12Aと電極板12Bとの積層を交互にするという安価な構成で、エネルギー分解能、位置分解能に優れたPET撮像装置30が得られるようになる。
なお、前記各実施形態では、半導体材料11aとしてCdTeを用いたものについて説明したが、これに限定されるものではなく、種々の物質を使用することができる。また、半導体素子11の積層個数は任意に設定することができる。
また、電極板12C,12Aに、他の部分よりも肉厚の薄くされた薄膜部を形成し、光電効果で生じた1次電子Eをこの薄膜部を通じて隣接する半導体素子11,11’へ入射させるように構成してもよい。なお、薄膜部は、切欠部13,13’とともに形成してもよく、また、切欠部13,13’に代えて形成するようにしてもよい。
1A,1B,1D,1E 半導体放射線検出器(検出器)
11,11’ 半導体素子
11A,11B 検出器集合体
11a,11a’ 半導体材料
12C,12A 電極板
12B 電極板
12A1 電極板
12A2 電極板
12C1 電極板
12C2 電極板
12a 突出部
12b 突出部
13 切欠部
13’ 切欠部
13’’ 切欠部
14 導電性接着剤
20A 検出モジュール
20B ASIC基板
24 配線基板
30 PET撮像装置
A アノード電極
C カソード電極
U ユニット基板
Claims (8)
- 入射した放射線を電気信号に変換する半導体素子と、金属製の電極板とが導電性接着剤によって交互に複数接着されて積層構造とされた半導体放射線検出器であって、
前記積層構造を構成する少なくともひとつの前記電極板には、前記半導体素子に接する領域に切欠部が形成されていることを特徴とする半導体放射線検出器。 - 前記切欠部が形成された前記電極板は、積層されて隣合う前記半導体素子の間にのみ配置されることを特徴とする請求項1に記載の半導体放射線検出器。
- 入射した放射線を電気信号に変換する半導体素子と、金属製の電極板とが導電性接着剤によって交互に複数接着されて積層構造とされ、かつ、積層方向に複数の前記半導体素子が電気的接続によりひとつのまとまりとなって構成される検出器集合体が、積層方向に複数構成されてなる半導体放射線検出器であって、
隣合う前記検出器集合体の間に配置される前記電極板を除いたその他の前記電極板の少なくともひとつには、前記半導体素子に接する領域に切欠部が形成されていることを特徴とする半導体放射線検出器。 - 前記切欠部を有した前記電極板は、前記検出器集合体内で積層されて隣合う前記半導体素子の間にのみ配置されることを特徴とする請求項3に記載の半導体放射線検出器。
- 前記電極板は、磁性を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の半導体放射線検出器。
- 前記切欠部が形成された前記電極板は、前記半導体素子に接する部分が枠状に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の半導体放射線検出器。
- 前記切欠部が形成された前記電極板は、前記半導体素子に接する部分が、前記半導体素子との積層方向から視て、田の字型またはH型に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の半導体放射線検出器。
- 請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の半導体放射線検出器を用いた陽電子放出型断層撮像装置であって、
複数の前記半導体放射線検出器が取り付けられた配線基板を有し、被検体を支持するベッドが挿入される計測領域を取り囲み、前記計測領域の周囲に配置された複数のプリント基板と、
複数の前記半導体放射線検出器から出力された放射線検出信号を基に得られた情報を用いて画像を生成する画像情報作成装置と、を備えた陽電子放出型断層撮像装置。
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