JP4695221B1 - 平鋼の制御冷却方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 必要且つ安定した冷却能を得るため膜沸騰冷却を適用する。平鋼固有の問題である両側部と中央部の冷却速度の差異に伴う金属組織の不均一性を解決するため、1次冷却として圧延直後中央部のみスプレイにより冷却し両側部と温度差を発生させる。2次冷却の沸騰冷却において該温度差を縮小し、所望変態温度においてほぼ均等に誘導する。3次冷却として温水より引き上げ空冷し、所望のパーライト又はベイナイトを誘導する。2次冷却における異常や不均等な冷却を防止するため長辺面を垂直にして並進・斜行させる。
【選択図】 図4
Description
冷却台の構造はウォーキング・ビーム式やフラットコンベア式が多用されている。冷却により発生する反りを防止するため冷却台上で平鋼を表裏反転させることもある。
例えば特許文献1には、幅両端部を遮断したジェット水冷により全幅ほぼ同一温度に誘導する方法が開示されている。
特許文献2には、圧延直後の並進する棒列の強制冷却に際して、金属組織の均一化と曲がり防止のため棒鋼を棒軸回りに螺旋自転させつつミスト・スプレイ冷却を施す方法が開示されている。平鋼の制御冷却を開発するに当たり大いに参考になるが、平鋼の側部と中央部の差異の解消にはヒントが掴めない。
圧延後の線材は巻取機によりリングに形成されて走行するコンベア上に落下し、水平平行リング列となって冷媒中を浸漬走行する。冷媒は沸騰水であり熱伝達率αの値は230〜300kcal/m2h℃で、空冷の数倍の冷却能を持ち、各種の高強度材が生産されている。
特許文献5には前記方法・設備を使用して高強度せん断補強筋を製造する方法が開示されている。平鋼の高強度化を指向する場合、本制御冷却方法は大いに参考になる。しかし長方形断面に起因する不均等冷却に対してその問題解決の指針は得られない。
特許文献6には、平鋼の熱延後の冷却に際して、支持部材との接触による局所冷却を防止するため、製品を絶えず変位させることが開示されている。これは平鋼の加速冷却を検討する際参考になる。
特許文献7には、スラブの冷却床を縮小する目的で、冷却を早めるようスラブを垂直状態(短辺面を水平)にして水槽中に浸漬する方法が開示されている。これも平鋼の加速冷却を検討する際参考になる。
特許文献8には、厚板の冷却において局所接触冷却によるムラを防止するため板を垂直状態で空冷する方法が開示されている。これも平鋼の加速冷却を検討する際参考になる。
ここで側部とは平鋼の幅端面から板厚と同程度の長さのほぼ正方形部分(図3−31)と定義し、中央部(図3−32)とは両側部の間の部分と定義する。
温水は95℃以上に維持する。その理由は膜沸騰が安定するからである。温水中に浸漬された平鋼は膜沸騰冷却を受ける。該冷却は500℃以上においては極めて安定した伝熱を示し、且つ適度の冷却能(平均熱伝達率α≒240kcal/m2h℃)を持つ。中央部の冷却速度Rcは厚さt(m)に対応して次式より算出される。
Rc=2×α×(平鋼温度−温水温度)/比熱/密度/厚さ
≒0.067/t (℃/s) −−−(1)
両側部の冷却速度Rsは、垂直面と水平面の伝熱の差が絡み(2)式となる。
Rs≒1.4Rc −−−−−−−−−(2)
鋼種に依存するS曲線上に冷却線を描くことにより得られる金属組織を予測することができる。例えば厚さ10mmに対して0.2%(質量%であり、以下同様)C−1.0%Mn−1.0%Crの鋼種の場合、平準化温度を約500℃に誘導し以後空冷すると、フェライト変態、パーライト変態を概ね抑制し、ベイナイトを得ることが容易になる。
2次冷却に続いて変態の一部を構成する。伝熱性は小さい(α=50〜80)ので精密な制御はあえて必要としないが、ベイナイトに誘導する場合は変態時間が長いので3次冷却としての必要充分な保持時間は設定しておく。
平鋼の沸騰冷却を観察すると、図3Aに示すように約1mm厚の沸騰膜34が揺れ動きながら膜の外面から気泡35が穏やかに形成され上昇する。長辺面は垂直であるから上昇流の影響を受けるが短辺面では気泡35の離脱が多少緩やかである。水平状態の短辺面は垂直の長辺面よりも伝熱は小さくなり、両側部の冷却は少し緩和され都合良い。温水33中で平鋼1を垂直に立てる理由の一つとなっている。しかし1.5倍の差を解消することはとてもできない。
2次冷却は沸騰冷却であるから全面概ね同一の熱伝達率の冷却を受ける。その結果、既述の表面積比の関係で両側部は中央部よりも約1.5倍の速度で冷却される。より正確には、垂直面(長辺面)の熱伝達率は水平面(短辺面)のそれよりも少し大きいので、側部の冷却速度は実測で中央部の約1.4倍となった。両部位間の温度差は徐々に減少し、ある段階で断面内ほぼ均等に、その後は逆転する。
ここで平準化温度を検討する。単純冷却なら冷却速度の異なる両部位は温水中で一瞬だけ同一温度になるが、実際には変態発熱が絡み多少複雑になる。また平準化温度の許容幅を考慮すると平準化はある時間幅を持つ。どの段階で3次冷却に移行させるかは微妙な影響を持つ。
1次冷却において側部と中央部の温度差は100℃前後が無難である。例として10mm厚の平鋼において圧延直後の温度を900℃とし、スプレイ冷却により中央部を690℃、側部は790℃とし、沸騰冷却における側部と中央部の速度差を1.4倍とすると、35秒で平準化され約460℃になる。
1次冷却において、スプレイ冷却を受ける平鋼の姿勢は水平でも垂直でも良い。作業上それぞれ一長一短がある。
供試材の鋼種は、0.2%C−0.8%Si−1.5%Mn−1.0%Crである。圧延中間材から厚さ10mm×幅50mm×長さ400mmの試験片を切り出した。角部はCカットした。上記試験片を920℃に加熱し、端部を把持して900℃において98℃の温水中に浸漬冷却した。その際試験片軸を水平、長辺面を垂直に深さ200mmに保持した。初めに変態に関わる約500℃までの冷却速度を把握するため浸漬時間を30〜60秒とし、浸漬前後の温度差から算出した。長辺面中央部で6.7℃/s、側部で約9℃/s、その比は約1.4となった。80秒を越えると底辺面の角から核沸騰が起こり、それが伝搬して急却された。核沸騰では熱伝達率は数倍に増加する。
浸漬時間 中央部温度 中央部金属組織
40秒 610℃ フェライト+パーライト
50 540 ベイナイト+フェライト(少)+パーライト(少)
60 500 ベイナイト+フェライト(少)
90 120 マルテンサイト+ベイナイト+フェライト(少)
長時間の浸漬でマルテンサイトが増加する理由は、ベイナイト変態途上で膜沸騰から核沸騰への遷移により急冷され未変態部がマルテンサイト変態に移行するからである。従って主体組織をパーライトやベイナイトとする場合、膜沸騰冷却の途中で引き上げて3次冷却として空冷することが不可欠となる。
中央部を約730〜760℃に冷却、その時側部は約830〜860℃になった。測温では表面の復熱を観察して冷却停止約4秒後とし、その後浸漬冷却した。引き上げ時の測温において位置によりバラツキを示したが概ね20℃以下で均等に近くなっていた。その後空冷した。
浸漬時間 中央部温度 主組織 抗張力 降伏力 伸び
30秒 540℃ ベイナイト 860MPa 760 16%
35 510 ベイナイト 920 820 14%
40 490 ベイナイト 990 910 11%
上記実験で500℃近辺で冷却速度が低下しているのは変態発熱による。
Claims (3)
- 熱間仕上圧延後の平鋼を制御冷却する方法において、1次冷却として圧延直後の直進する平鋼にスプレイ冷却を施すに当たり長辺面中央部の冷却を両側部よりも強くして両者に温度差を発生させ、次いで所定長さに切断したのち圧延直進パスから横方向に順次移送し、2次冷却として1次冷却された平鋼の長辺面を垂直にして温水中に浸漬して並列・並進させつつ所定時間だけ膜沸騰冷却を施して前記温度差を平準化し、その後3次冷却として該平鋼を温水中より引き上げて空冷処理することを特徴とする平鋼の制御冷却方法。
- 平準化したときの温度が600℃〜400℃の間の所望温度になるよう1次冷却の強さと2次冷却の時間を設定することを特徴とする請求項1に記載した平鋼の制御冷却方法。
- 温水中で並進させる方法が、浸漬された平鋼を1本毎に仕切り且つ該平鋼のタオレを防止する仕切り爪を保有したクロス・コンベアにより該平鋼を並列させつつ平鋼軸と直交方向に移動させると共に、該平鋼を積載するローラーコンベアにより該平鋼を軸方向に移動させることより並進・斜行させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した平鋼の制御冷却方法。
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