JP4694707B2 - 座の前後位置調整装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、椅子の座の前後位置調整装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の回転椅子には、背凭れに寄り掛かる座者の荷重により、背凭れが後方に揺動し、かつ座が傾動するとともに前後動するようにしたものがある。このような機構のものは、座者の座り心地を改善し、疲労感をなくすという利点がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
近年のパソコン等のOA機器の普及により、回転椅子において、上述のような座の傾動機構ばかりでなく、背凭れや肘掛けに対する座の前後位置を微妙に調節して、机上のパソコンのキーボード使用時における座者の背凭れ及び肘掛けに対する関係位置を最適に保ちたいという要求が生じている。これは、座者の体格の相違による個人差に基づくものである。
【0004】
本発明は、上述の問題点に鑑み、簡単な構造により、かつ簡単な操作で、座の前後位置を調整しうるようにした座の前後位置調整装置を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1) 椅子の支基上の座板取付金具に、左右両側に位置し、かつ前後方向を向くレールを、座板の左右下部を摺動可能に案内するように設け、前記座板及び前記座板取付金具の一方には第1係合部、同じく他方には、前記第1係合部が前後方向の複数位置で上下方向に弾性係合する第1被係合部を設け、かつ前記座板における着座時に着座者の体重により下方に弾性撓曲する可撓部分と、それに対向する前記座板取付金具との一方には第2係合部、同じく他方には、常時は前記第2係合部から離間し、前記座板の可撓部分が着座者の体重により下方に弾性撓曲することにより、前記第2係合部が前後方向の複数位置で上下方向に係合可能な第2被係合部を設ける。
【0006】
(2) 上記(1)項において、座板取付金具における左右のレールの前部内側に第1被係合部を設け、それに対向する座板の下面に第1係合部を設ける。
【0007】
(3) 上記(1)または(2)項において、座板の後部中央下面に第2係合部を設け、それに対向する座板取付金具における左右のレール間の後部中央に第2被係合部を設ける。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明装置の一実施形態を備えるキャスター付き回転椅子の分解斜視図で、図2は、肘掛けを取り除いた状態の回転椅子の側面図である。
これらの図に示すように、キャスター付きの脚(1)の上面中央に、支基(2)が回転自在に装架されている。支基(2)の後部において左右方向に延びる横軸(3)には、背凭れ(4)の左右を支持し、その下端から前方に延びる背杆(5)の先端に設けた左右方向を向く軸筒(6)が軸着されている。座板取付金具(7)の後部左右の軸受部(8)には、背凭れ(4)の背杆(5)の中間位置に設けられた耳片(9)が回動可能に収容され、軸受部(8)の外端には、肘掛け支柱(10)の下端部が取り付けられている。
【0009】
座板取付金具(7)の前端部には、下方に突出する耳片(11)が設けられ、耳片(11)は、支基(2)の前部に設けた前後方向を向く長孔(12)に、ピン(図示略)により取り付けられている。
【0010】
図1及び図3に示すように、座板取付金具(7)は、後部の左右方向に延びる横杆(13)の左右端部に、前後方向に延びる断面上向コ形のレール(14)を、強固に溶接して構成されている。
【0011】
横杆(13)は、鋼板を断面上向きコ字状に曲げ、その前後の縁を水平方向外側に曲げてフランジ(13a)としたもので、左右の両端部付近を上部から切り欠き、この切り欠き部分に、レール(14)をはめ込んで溶接してある。
【0012】
前後のフランジ(13a)の左右方向中央部分、ことに後端のフランジ(13a)は、フランジ幅を減じられており、この減幅フランジ部分(13b)が、後述する座板(18)の後部裏面に形成された突起(23)に係合する第2被係合部を構成している。
【0013】
レール(14)も、同様に鋼板を断面上向きコ字状に曲げて形成されており、その内側端は、内向き水平に曲げてフランジ(14a)が形成されており、フランジ(14a)の前端部付近には、左右方向を向く多数段の凹溝(15)(図示の場合7段)が、前後方向に並べて設けられている。この凹溝(15)は、後述する座板(18)の突起(21)に係合する第1被係合部を構成している。
【0014】
レール(14)の前部及び後部において、その底面には、大径孔(16a)と、これに引き続いて後方に向かって延びる小径の長孔(16b)とからなる取付孔(16)が穿設されている。
なお、レール(14)の前部の内側には、前述の耳片(11)が設けられている(図1〜4参照)。
【0015】
図1に示す座(17)の下部における座板(18)は、人が着座することで左右方向中央が下方に弾性変形する程度の弾性を有する材料で形成されている。
この座板(18)は、図6に示すように、その裏面に、レール部(7)の外側の立ち上がり部の内側に接する位置に、前後方向に長く延びる突条(20)を備えている。
【0016】
また、図5及び図6に示すように、座板取付金具(7)のレール(14)に穿設した取付孔(16)に対応して突設した取付軸(19)が、下方に向けて突設されている。この取付軸(19)に螺入されるワッシャ付きボルト(19a)(図6〜9参照)の径は、取付孔(16)の大径孔(16a)よりも若干小径とされている。また、取付軸(19)の径は、長孔(16b)の幅と同じか、若干小径とされている。
【0017】
座板(18)の下面の前部付近には、座板取付金具(7)のレール(14)の凹溝(15)に対応する左右位置に、第1係合部を構成する左右2個の波形の突起(21)が形成されている。図6に示すように、突起(21)の両脇はスリット状に切り欠かれており、突起(21)が弾性をもって凹溝(15)に係合できるようにされている。
【0018】
座板(18)の下面の後部には、その左右方向中央に複数個の下方に突出する鋸歯状の突起(23)(図示の例では5個の突起)が前後に並べて形成されている。これらの突起(23)が、第2係合部を構成する。
【0019】
さらに、図5及び図6に示すように、座板(18)の後部には、座板取付金具(7)の横杆(13)の後部に対応する左右方向中央位置にストッパ(22)が形成されている。
【0020】
座板(18)の取り付けに当たっては、座板(18)の下面に突設された突条(20)を、レール(14)の外側の立ち上がり部の内側に接するようにして挿入するとともに、取付軸(19)のワッシャ付きボルト(19a)を、座板取付金具(7)の取付孔(16)の大径孔(16a)に上方より挿通する。
【0021】
このような挿通状態から、座板(18)を後方に引くと、座板(18)の突条(20)はレール(14)により案内されて、座板(18)は後方に移動し、取付軸(19)は取付孔(16)の長孔(16b)にはまり込んで、図7に示す組付け状態となる。
【0022】
この状態では、座板(18)の前部裏面の波状の突起(第1係合部)(21)は、人が着座していなくても、座板取付金具(7)の前部の凹溝(第1被係合部)(15)に嵌合しているが、後部の鋸歯状の突起(第2係合部)(23)は、減幅フランジ部分(第2被係合部)(13b)から上方に離れている。
【0023】
座(17)の前後位置の調節に当たっては、図8及び図9に示すように、座(17)すなわち座板(18)の前端を後方に押すと、弾性を有する波状の突起(第1係合部)(21)と凹溝(第1被係合部)(15)との嵌合が1個ずつずれて行き、図8に示す位置、ついには図9に示す位置まで、座板(18)すなわち座(17)が後方に移動する。
この移動状態を図2に想像線により示している。
【0024】
前述のように、人が着座していない状態では、後部の鋸歯状の突起(第2係合部)(23)は、減幅フランジ部分(第2被係合部)(13b)から上方に離れている。この状態は、座板(18)の後部を左右方向に切断して示す図10及び座板(18)及び横杆(13)の部分断面を示す図11から明らかである。
【0025】
人が着座した状態では、図12に示すように座板(17)の左右方向中央部分は弾性的に大きく下方に撓んで、後部の鋸歯状の突起(第2係合部)(23)は、減幅フランジ部分(第2被係合部)(13b)に係合する。この状態は、図13からも明らかである。
【0026】
なお、突起(23)の鋸歯形状は、その斜めの部分が減幅フランジ部分(13b)の曲がりの部分(Rの部分)に適合し、垂直の部分が減幅フランジ部分(13)の切断端部に適合するので有利である。
【0027】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、簡単な機構で、容易に座の前後位置の調節を行うことができる。ことに、座は、単にこれをそのまま前後方向に押したり引いたりするだけで、第1係合部と第1被係合部との係合が歩進的にずれて行くことにより、容易に前後位置の調節がなされ、人が着座すると、第2係合部と第2被係合部との係合により、その前後位置に確定され、着座中に座が前後にずれることはない。
【0028】
請求項2記載の発明によれば、座板を支持するレールに、また、操作をする手に近い位置に第1被係合部を設けたので、第1係合部と第1被係合部との係合を歩進的にずらせる作動が確実になされる。
【0029】
請求項3記載の発明によれば、着座する人の臀部という体重がもっとも加わる部分に第2被係合部を設けたので、座の係止作用が確実に果たされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明装置の一実施形態を備えた回転椅子の分解斜視図である。
【図2】図1に示す椅子の、一部を破断して示す側面図である。
【図3】同じく、座板取付金具の平面図である。
【図4】同じく、座板取付金具のレールの前部の拡大側面図である。
【図5】同じく、座板の縦断側面図である。
【図6】同じく、座板の底面図である。
【図7】同じく、座板と座板取付金具との縦断側面図で、座板が前方位置にある状態を示す図である。
【図8】同じく、座板と座板取付金具との縦断側面図で、座板が中間位置にある状態を示す図である。
【図9】同じく、座板と座板取付金具との縦断側面図で、座板が後方位置にある状態を示す図である。
【図10】同じく、座板を後方から見た概略縦断背面図で、人が着座する前の座板と座板取付金具の横杆とが離れている状態を示す図である。
【図11】同じく、座板と横杆との部分拡大縦断側面図で、人が着座する前の座板と座板取付金具の横杆とが離れている状態を示す図である。
【図12】同じく、座板を後方から見た概略縦断背面図で、人が着座したときの座板と座板取付金具の横杆とが係合している状態を示す図である。
【図13】同じく、座板と横杆との部分拡大縦断側面図で、人が着座したときの座板と座板取付金具の横杆とが係合している状態を示す図である。
【符号の説明】
(1)脚
(2)支基
(3)横軸
(4)背凭れ
(5)背杆
(6)軸筒
(7)座板取付金具
(8)軸受部
(9)耳片
(10)肘掛け支柱
(11)耳片
(12)長孔
(13)横杆
(13a)フランジ
(13b)減幅フランジ部分(第2被係合部)
(14)レール
(14a)フランジ
(15)凹溝(第1被係合部)
(16)取付孔
(16a)大径孔
(16b)長孔
(17)座
(18)座板
(19)取付軸
(19a)ワッシャ付きボルト
(20)突条
(21)突起(第1係合部)
(22)ストッパ
(23)突起(第2係合部)
Claims (3)
- 椅子の支基上の座板取付金具に、左右両側に位置し、かつ前後方向を向くレールを、座板の左右下部を摺動可能に案内するように設け、前記座板及び前記座板取付金具の一方には第1係合部、同じく他方には、前記第1係合部が前後方向の複数位置で上下方向に弾性係合する第1被係合部を設け、かつ前記座板における着座時に着座者の体重により下方に弾性撓曲する可撓部分と、それに対向する前記座板取付金具との一方には第2係合部、同じく他方には、常時は前記第2係合部から離間し、前記座板の可撓部分が着座者の体重により下方に弾性撓曲することにより、前記第2係合部が前後方向の複数位置で上下方向に係合可能な第2被係合部を設けたことを特徴とする座の前後位置調整装置。
- 座板取付金具における左右のレールの前部内側に第1被係合部を設け、それに対向する座板の下面に第1係合部を設けた請求項1記載の座の前後位置調整装置。
- 座板の後部中央下面に第2係合部を設け、それに対向する座板取付金具における左右のレール間の後部中央に第2被係合部を設けた請求項1または2記載の座の前後位置調整装置。
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