JP4693554B2 - 温度測定装置及び温度測定方法 - Google Patents

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Description

本発明は、プラズマを発生して成膜する時に適切な温度を測定する温度測定装置及び温度測定方法に関する。
成膜方法には、蒸着等のPVD(Physical Vapor Deposition)や、熱分解によって成膜する熱CVD、成膜用のガスをプラズマ状態に活性化して成膜するプラズマCVD等のCVD(Chemical Vapor Deposition)があり、基板に成膜を行う際には、ガス圧、電力とともに基板温度の制御が重要な要素である。
温度測定方法には、熱電対を用いた温度測定方法や放射温度計を用いた温度測定方法がある。
熱電対を用いた基板表面の温度測定方法では、チャンバー内に導入した熱電対の先端を基板に蒸着させて温度を計測する。このような測定方法をプラズマの発生に電界(電磁界)を使用するプラズマCVDに適用する場合には、電界の擾乱をふせぐため、基板の裏側に熱電対の先端部を密着させている。しかし、CVDチャンバー内の反応ガスによって熱電対が急速に劣化するため、成膜の初期段階しか正確に測定できない欠点を持っている。例えば、アルメル:クロメルの熱電対及びタングステン:レニウムの熱電対では炭化、白金を含む場合には、熱電対の水素吸収により正確な温度を測定できなくなる。また、基板との熱的接触の確保をはかるために熱電対先端を蒸着させる方法は、基板を回転させる場合、実際の工業製品を成膜する際には使用することができない。
これに対し、特許文献1では、非接触な放射温度計を用いている。特許文献1の放射温度測定方法によれば、S偏光の放射率とP偏光の放射率とを測定してこれらの放射率比を求め、事前に測定された放射率比と放射率との関係から、温度を測定している。
また、放射温度計以外にも、基板からの熱輻射光を利用して非接触で温度を測定する方法として、以下のような技術がある。
プランク輻射の光を分光解析したとき、その輻射強度が最大となる波長λm、測定対象物の絶対温度T、プランクの熱輻射式から求められる定数Cの間にはλm・T=Cの関係式が成り立つことがウィーンの変移則として知られている。これを半導体処理に応用して基板温度を評価する技術が特許文献2に示されている。
特開平9−33352号公報 特開2001−289714号公報
熱電対を用いて、基板の温度を測定する場合には、熱電対が接触型なので、上記問題がある。これに対し、放射温度計は、温度上昇に伴って増大するプランク放射による赤外線強度を非接触で測定し、プランクの輻射式やステファン・ボルツマンの法則を利用して温度を計測するので再利用が可能である。このような測定方法では、あらかじめ、別途に基板の放射率を測定しておき、基板の放射率に基づいて実測した放射率から温度を求めており、比較的安価な装置で簡便に基板の温度を測定できる。
しかしながら、単波長の放射温度計をCVD基板温度測定に使用する際には以下の問題点がある。
プラズマが生じるCVDにおいて、測定される発光強度(主に赤外線)の中には、基板の熱輻射のみならず、プラズマからの輻射も含まれるため実際の基板温度よりも高く評価してしまう。あらかじめ測定した基板の放射率を初期値として固定されているため、成膜とともに放射率が変わるような成膜では、正確に測定することができない。例えば、膜厚にしたがってその表面での放射状態が変化する膜を堆積する場合、単純に発光強度のみから正確な温度は読み取ることが困難になり、特にCVDのように徐々に堆積する際に膜厚が変わってしまうので放射状態が変わり、正確な温度を読み取ることができなかった。さらに受光する放射光の強度のみによって温度を算出しているため、基板表面に対する見込み角や、チャンバーの覗き窓の汚れが測定温度に影響を与える。
これに対して、2波長以上に分光した赤外線強度を測定する放射温度計の場合、その分光輝度比およびプランクの輻射式により温度を評価するので、輻射率の変化や、のぞき窓の見込み角、汚れの影響を減少させることができる。しかし、測定された分光輝度には黒体輻射のみならずプラズマによる発光が重畳されていることは単波長の放射温度計場合と同様である。特に熱フィラメントプラズマ、DCプラズマ、RFプラズマはそれぞれ状態が大きく異なるのでそれぞれの基板の温度を比較して成膜状態を比較することはできない。
特許文献2の方法についてもCの値が理論値2878μm・Kより大きくずれることがないので2800K以下では、熱輻射光の波長が1μm以上となり、シリコン基板などのように波長1μm以上の光に対して透過性の基板の温度を正しく測定できない。
本発明は、基板に膜を形成する際に使用可能であると共に、基板の熱輻射以外の放射の影響を除いた温度を測定することができる温度測定方法を提唱することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る温度測定装置は、
プラズマ雰囲気で加熱される基板の温度を測定する温度測定装置であって、
予め、前記基板からの熱輻射による放射輝度が、輝度計の計測誤差以下の状態のプラズマ発光のスペクトルを測定するスペクトル計測手段と、
前記スペクトル計測手段によって前記測定されたスペクトルのうち、プラズマ誘起電力が変化させても各波長の放射輝度比が変化しない波長領域を選定する選定手段と、
前記基板に関するプランクの放射式或いはその近似式と前記スペクトルを線形結合した式を、前記選定された波長領域において、前記基板の熱輻射と前記プラズマ発光が重畳したスペクトルに非線形最小自乗法によりフィッティングするフィッティング手段と、
前記基板の加熱処理している際に、前記フィッティング手段の前記フィッティングに基づいて前記基板の温度を算出する基板温度算出手段と、
を備えることを特徴とする。
本発明の温度測定装置では、前記基板温度算出手段は、前記フィッティングに基づいて基板の放射率算出するようにすることができる。
尚、本発明の温度測定装置では、前記選定手段における選定後、前記基板からの熱輻射による分光放射輝度が分光輝度計の計測誤差以下の状態のプラズマ発光のうちの最も輝度の高いスペクトルを決定するスペクトル決定手段をさらに備え、前記フィッティング手段の前記フィッティングは、前記基板に関するプランクの放射式或いはその近似式と、前記スペクトル決定手段によって決定されたスペクトルを線形結合した式を、前記基板の熱輻射と前記プラズマ発光が重畳したスペクトルに、前記選定された波長領域で、非線形最小自乗法によりフィッティングさせることで行われてもよい。
また、本発明の温度測定装置では、前記基板温度算出手段は、前記プラズマ雰囲気中でCVDによって前記基板に膜を成膜する際の前記基板の温度を算出するようにしてもよい。
また、本発明の温度測定装置は、既知の放射率をもつ膜材料の成膜を予め行うことで、前記膜の成膜時の放射率の絶対値を較正してもよい。
上記目的を達成するために、本発明の第2の観点に係る温度測定方法は、
プラズマ雰囲気で加熱される基板の温度を測定する温度測定方法であって、
前記基板からの熱輻射による放射輝度が、輝度計の計測誤差以下の状態のプラズマ発光のスペクトルを測定するスペクトル計測処理と、
前記測定されたスペクトルのうち、プラズマ誘起電力が変化させても各波長の放射輝度比が変化しない波長領域を選定する選定処理と、
前記基板に関するプランクの放射式或いはその近似式と前記スペクトルを線形結合した式を、前記選定された波長領域において、前記基板の熱輻射と前記プラズマ発光が重畳したスペクトルに非線形最小自乗法によりフィッティングさせて、前記基板の温度を算出する温度算出処理と、
を含むことを特徴とする。
尚、本発明の温度測定方法では、前記温度算出処理では、前記フィッティングにより、基板の放射率算出するようにしてもよい。
また、本発明の温度測定方法では、前記基板からの熱輻射による分光放射輝度が、分光輝度計の計測誤差以下の状態のプラズマ発光のうちの最も輝度の高いスペクトルを決定するスペクトル決定処理を含み、
前記温度算出処理における前記フィッティングは、前記基板に関するプランクの放射式或いはその近似式と前記スペクトル決定処理で決定されたスペクトルを線形結合した式を、前記基板の熱輻射と前記プラズマ発光が重畳したスペクトルに、前記選定された波長領域で、非線形最小自乗法によりフィッティングさせることで行われるようにしてもよい。
また、本発明の温度測定方法では、前記基板は、前記プラズマ雰囲気中でCVDによって成膜されるようにしてもよい。
また。本発明の温度測定方法は、既知の放射率をもつ膜材料の成膜を予め行うことで、前記膜の成膜時の放射率の絶対値を較正してもよい。
本発明は、基板に膜を形成する際に使用可能であると共に、基板の熱輻射以外の放射の影響を除いた温度を測定することができる。これにより成膜過程で条件を適切に変化させ、成膜の歩留まり、製品の信頼性を向上させることが可能となる。特に、成膜状態によって放射率変化の大きいCVD成膜の際に効果的である。
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る温度測定装置及び温度測定方法の概要を示す説明図である。
本実施形態の温度測定装置及び温度測定方法は、プラズマを生じるCVDによる基板の成膜に適用される温度測定装置及び温度測定方法であり、基板の放射能変化を温度と放射率に自由度を持たせたプランクの輻射式と、プランク輻射が計測誤差以下の温度で測定したスペクトルを線形結合した式を、両者が重畳している成膜過程時の基板からの輻射光に対して、非線形最小自乗法によりフィッティングを行い、基板温度ならびに放射率を同時に評価するものである。
このような、温度測定装置及び温度測定方法によれば、成膜過程における基板温度の逐次計測できるので、基板温度情報をフィードバックして基板の成膜を制御することを可能とし、特に温度に対する成膜条件がシビアな膜の製造に好適である。
本実施形態におけるプラズマCVD装置の温度測定装置は、具体的には、図1に示すように、(1)予め基板温度のノイズとなるプラズマ輻射を測定するために、分光輝度計によるプラズマ輻射のスペクトルの計測処理S1と、(2)フィッティングに要する波長領域の選定処理S2と、(3)プラズマ輻射スペクトルの決定処理S3と、(4)プランクの放射則による理論式とプラズマ輻射のスペクトルの線形結合させた式を非線形最小自乗法によって測定スペクトルにフィッティングさせるフィッティング処理S4の四処理を含んで、評価を行う。
以下に、基板に成膜する際の温度を測定する温度測定装置の温度測定方法を具体例を用いて説明する。
基板の成膜には、図2に示すようなDCプラズマCVD装置を用いる。
図2は、DCプラズマCVD装置10の要部を示す図である。
このDCプラズマCVD装置10は、チャンバー11を備えている。チャンバー11内には、上面が回転するとともに上面に電圧を出力するアノード電極として機能する回転テーブル18と、回転テーブル18の上方に配置されたカソード電極19と、チャンバー11内に反応ガス(原料ガス)を供給する管としてメタン供給管21と、水素供給管22と、真空ポンプに接続されチャンバー11内を圧力を制御する配管23と、を備える。また、DCプラズマCVD装置10は、チャンバー11外にも、回転テーブル18及びカソード電極19の間に所定の電圧を印加して、回転テーブル18及びカソード電極19の間にプラズマを生じさせる電源20と、図示しない水素供給管22に水素ガスを供給する水素ボンベとポンプ、及びメタン供給管21にメタンガスを供給するメタンボンベとポンプと、を備えている。回転テーブル18の上面には、載置された基板12を保持する保持部が設けられ、回転テーブル18での回転とともに基板12を回転させながら、基板12にアノード電圧を供給するよう設定されている。またチャンバー11の一方の壁面には、基板12を視認できるような測定用窓14が設けられ、チャンバー11の他方の壁面には、基板12を視認できるような測定用窓15が設けられる。測定用窓14,15の窓材は、測定する光の波長域の範囲(可視波長域を含む)での透過率が高く且つほぼ一定なもの(例えば溶融石英ガラス)を使用している。
温度測定装置は、分光輝度計(放射スペクトル計)16と、分光輝度計16でのフィッティングの際に用いられる放射温度計17と、比較に用いられる、回転テーブル18上に配置される基板12の温度を測定する熱電対24と、熱電対24に接続されたA/Dコンバータ25と、分光輝度計16によって測定されたデータ情報に基づいて予めプログラミングされた演算を行って基板12の正確な温度を算出し、この基板12の温度に基づいて基板12の表面温度を最適化するためDCプラズマCVD装置10の制御を行う制御回路26と、を備えている。制御回路26は、分光輝度計16と、放射温度計17及び熱電対24とそれぞれ接続されている。分光輝度計16は、測定用窓14から放射された光の分光輝度の測定を行う。放射温度計17は、測定用窓15を介して基板12からの放射強度を測定する。分光輝度計16及び放射温度計17は、ともに測定用窓14、15でごくわずかに反射される基板12からの輻射が互いに干渉しないような位置に設けられている。制御回路26は、分光輝度計16及び放射温度計17での計測を継続的且つ連続的に行い、計測されたデータ並びにデータを演算処理したデータの通信を行う。具体的には、分光輝度計16の分光輝度データは測定時刻とともに制御回路26に記録されるようにする。基板12の温度の上昇過程においては発光状態の経時時変化がおおきいため、スペクトルのS/N(シグナル/ノイズ)比が良好な範囲で、できるだけ高速で密に測定を行う。このため分光輝度計16は測定速度が速い、受光素子に半導体アレイを使用したものが望ましい。
一般に導電性をもつ基板12の多くは、ある程度までは天頂角が大きいほど放射率が高いことが知られていることから、分光輝度計16の取り付け設定角(天頂角)αはある程度高いほうが望ましい。また、天頂角αが低いと測定経路に、プラズマ発光の放射輝度が高い領域を横切って測定することになる。このため、分光輝度計の天頂角αは60°から80°が望ましい。本実施形態では、天頂角αを65°としている。
また、絶対値で放射率を求める必要がある際には、放射率の較正を行う必要がある。炭化水素を原料ガスに用いる際には基板に安定で既知の放射率をもつ煤状の炭化物(図16に示す花弁状のグラフェンシート構造の炭素薄膜、カーボンナノチューブ、アセチレン煤など)を形成することにより放射率を較正することができる。
基板12は、例えば30mm角にカットされたn型低抵抗シリコン基板(抵抗率が0.03Ωcm以下であり、 (100)面、厚さ0.5mm)を用いた。基板12は、分光輝度計16の測定限界(例えば1000nm以下)の波長域に対して不透過であればシリコン基板に限らなくてもよい。スペクトルはチャンバー11に備わる石英ガラスの測定用窓14より、天頂角65°の方向で、且つ基板12の中央からの水平距離が550mmに配置した分光輝度計16により測定を行った。分光輝度計16の測定角βは1°とし、分光輝度計16での基板12上の測定エリアは約φ90mmとしたが、分光輝度計16のレンズと絞りを調節することにより、測定視野は、基板12上で基板12の大きさより充分に小さい範囲に限定することができる。
測定に使用する分光輝度計16は、可視波長域(例えば波長380nm〜780nm)まで絶対分光放射輝度[単位:W/sr・m2・nm]で測定を行うことができる。分光輝度計16については、チャンバー11外からの迷光が進入しないようにチャンバー11の測定用窓14と分光輝度計16のレンズの間の光路を可視波長域に対して不透明の暗幕で覆っている。
(1)分光輝度計によるプラズマ輻射スペクトルの計測処理S1
このプラズマ輻射スペクトルの計測処理S1において、まず配管23から真空引きを行ってチャンバー11内の気圧を減圧(例えば0.1Torr以下)してチャンバー11内を排気してから、反応ガスを供給する管のうちの水素供給管22から水素ガスを導入する。水素ガスがチャンバー11内の内圧を1Torrにしたところで、カソード電極19とアノード電極である回転テーブル18との間にプラズマ誘起電力を供給してプラズマを発生させる。プラズマ誘起電力の制御は電流によって操作するが、定電流として電圧変調してもよい。この後、徐々に水素ガスを引き続き導入するとともに電流を上昇させて水素ガスによるチャンバー11内の圧力が30Torr、プラズマ電流2Aとなったところで10分保持してプラズマを安定化させる。その後、プラズマ電流を0.01A/secで上昇させるとともに図3に示すスペクトルの計測を行った。このとき、同時に、水素供給管22から流量500sccmの水素ガス、メタン供給管21から流量55sccmのメタンガスを導入しチャンバー11内のガス分圧を上昇させた。また、チャンバー11内の圧力、プラズマ電流の電流値が所定の条件に達して以後は、回転テーブル18を基板12とともに所定の回転速度(例えば1rpm)で回転させながら2時間の成膜を行う。
スペクトルの計測は、後述するように、まずプラズマの立ち上げの折りに、基板12の温度からの熱輻射の分光放射輝度が分光輝度計16の測定誤差より小さいスペクトルをプラズマ輻射として計測し、熱輻射が測定スペクトルに重畳されはじめてからプラズマ輻射スペクトルを用いて後述するフィッティングを行う。そこで、プラズマ輻射スペクトルの計測は熱輻射がスペクトルに影響を及ぼさず、かつプラズマ発光の強度がもっとも大きくなるスペクトルを選択するため、プラズマ立ち上げの折り、計測装置の能力が許す範囲でできるだけ連続的にスペクトルを計測する。
チャンバー11内の圧力とカソード電極19と回転テーブル18との間に供給されるプラズマ用電流の電流値が所定の条件に達した後、分光輝度計16で所定間隔(例えば1分ごと)に測定しこれを非線形最小自乗法によりスペクトルのフィッティングによって基板温度、放射率を評価した。また、あらかじめ放射率を露出されたシリコン基板の放射率である0.6に固定した放射温度計17で基板12の温度を測定し、これを後述する非線形最小自乗法によるフィッティングの際の初期値として使用する。
(2)フィッティングに要する波長領域の選定処理S2
図2で分光輝度計16により測定される放射輝度スペクトルは、基板12からの黒体輻射による光にプラズマ発光の光、およびプラズマ光が基板12で反射された光が重なり合った構造を持つ。よって、本実施形態では、温度、放射率の評価は、プランク輻射の式またはその近似式とプラズマ輻射スペクトルを線形結合した式を、実測スペクトルに非線形最小自乗フィッティングすることにより評価する。尚、本実施形態ではプラズマ発光(およびその基板12からの反射光)によるスペクトルの分光放射輝度は、フィッティングに使用する領域において、プラズマ誘起電力が変化させても各波長の分光放射輝度比が変化しないと仮定する。なお、プラズマ輻射光は、発光メカニズムが異なる連続スペクトルと線スペクトルが重畳されている。例えば線スペクトルはプラズマ中の原子(分子)の電子が励起状態から基底状態、あるいは励起状態からより低い励起状態へと遷移するときに発する放射光であるのに対して、連続スペクトルはプラズマ中の自由電子がイオンに補足されるときに放出される光(再結合放射)と、自由電子がイオンのそばを通過して軌道が曲げられるときに発する光と、2個の原子が再結合して分子となるときに発生する光とによって構成される。このように、発光メカニズムが異なるスペクトルが重畳された領域では、プラズマ誘起電力を変化させても各波長の分光放射輝度比が変化しないことが期待できない。このため連続スペクトルと線スペクトルが重畳している領域はフィッティング範囲から除去する。
また、基板12やCVDチャンバー11内のガスの影響を避けるために、
反応ガスの分子運動による輻射吸収がある波長領域はフィッティング範囲外とする。
当該温度測定方法では、フィッティング範囲において、基板もしくはCVDにより成膜中の基板に対して、灰色体近似(分光放射率が波長に対して独立)が成り立つと仮定する。この仮定が成り立つ波長範囲を別途に評価を行う。
これを評価する方法のひとつとして真空加熱炉内で基板を加熱して、その際の熱輻射光のスペクトルを測定し、これとプランクの輻射式とのずれから分光放射率を評価する方法がある。この方法により各温度における相対的な分光放射率に分散がないことを確認することができる。
またもう一つの方法として、基板の分光透過率と分光反射率から基板の分光吸収率を計算し、キルヒホッフの第二法則により、これを放射率と等価とみなして評価する方法がある。
上述の条件は、原料ガスの種類、濃度比、基板材料がかわることによって変化するため、成膜条件によって、フィッティング波長範囲を調整する必要がある。また、さらに成膜ごとに計測初期段階においてフィッティングの推定誤差が最小となるように波長範囲を調整することが望ましい。なお、基板12の選択例としては、分光輝度計16の測定範囲内(例えば1μm以下)の波長の電磁波の透過率が0に近い基板12を採用する。つまり、基板12の背面から基板12を透過して出射されるノイズとなる放射スペクトルが発生しないような基板を選択する。そして、基板12の分光輝度計の測定範囲(例えば600nm以上)での反射率が正常分散であり、プラズマ光の反射スペクトルに大きな影響を与えないことが好ましい。
図3は、スペクトルの測定結果を示す図であり、図4は、水素ガス、メタンガスを供給して炭素膜を成膜したときのスペクトルの放射輝度を示す図である。図5は、可視近傍の水素の発光スペクトルの相対強度を示す図である。
前述のプラズマ電流を2Aとしてプラズマを安定化してから、印加電力の電流制御で電流を2Aから3.7Aまで0.01A/secで電流上昇させた際に互いに異なるプラズマ電流値において23回測定したスペクトルを、分光放射輝度W[742nm]の値で規格化、つまり各スペクトルでの742nmの値を互いに等しくさせて重ね合わせたものを示している。
実際の各々のスペクトルの放射輝度は図4で示されるようにプラズマ電流の増大に応じて経時的に0.45W/sr・m2から1W/sr・m2と大きく変化しているが、図3から明らかなように、各スペクトルは一部の波長を除いてほぼ相似形でスペクトルの形状はほとんど変化がないことが確認できる。
しかし、図3の747nmから755nmの範囲と761nmから771nmの範囲でスペクトル形状が重ならないため、その波長領域を最適化フィッテイング範囲から除外する。また、図3の波長領域には主要反応ガスである水素のバルマー系列Hα(図5参照)の線スペクトルが放射輝度に強く影響を及ぼすため、フィッティングにはその660nm以下のスペクトルをフィッティングの対象から外した。
次に水素以外の炭化水素系分子、ラジカルによる線スペクトルについての検証を行った。図6は、660nm〜800nmの波長領域における炭化水素系発光源による線スペクトルのうちの顕著な発光源を示す図である。
線スペクトルのうち771.4nmのC2の線スペクトルは、アーク放電など電流密度が高いプラズマでみられるピークであり、成膜過程でのスペクトル中に一時的に現れる可能性があるので771.4nmをフィッティングの対象から外した。また、708.3nmのC2の線スペトルは、一酸化炭素ガスの10〜100Torrでの放電に見られる線スペクトルでありチャンバー11内は原料ガスである水素H2/メタンCH4に満たされており、酸素が希薄であることから一酸化炭素の線スペクトルはほとんど現れないので影響がない。
また、実施例のプラズマ輻射スペクトルならびに成膜過程でのスペクトルの両方で一酸化炭素の線スペクトルと判断できるものは確認できなかった。659.9nmと667.7nmのC2スペクトルについては炭化水素系のプラズマ中によく見られる線スペクトルであり、図3ではその波長領域でスペクトルはほぼ重なっているが、プラズマ誘起電力の変化によって、これらがずれていく可能性が高いためフィッティング範囲から除去する。
本実施形態では以上を総合して678nm−746nm(領域I)、756nm−760nm(領域II)、772nm−780nm(領域III)をフィッティング範囲とする。
この領域(I)、(II)、(III)では、ガスの分子運動による輻射吸収バンドの影響は問題とならない。例えば、水素ガスの熱輻射は1000℃程度では分子振動による熱輻射を行わないことが知られている。また、メタンガスについては、一般に熱放射性ガスであるとみなされるが、その輻射、吸収バンドは離散的で670−800nmの光に対してはほぼ透明である。
図7に、シリコン基板と後述する実施例1,2で成膜された花弁状のグラフェンシートの炭素薄膜(図16参照)或いはダイヤモンド膜を成膜した基板の分光放射率を、キルヒホッフの第2法則に基づいて評価した結果を示す。シリコン基板表面の反射率、シリコン基板の透過率、シリコン基板での吸収率の和は1になり、吸収率=放射率となると設定してある。シリコンの基板12は1μm以下の波長に対する透過率が0%であり、シリコンの基板12、ダイヤモンドの反射率については波長670nmから800nmで、分散がほとんどないため、計算される放射率は灰色近似が成り立つことが確認できる。また、花弁状のグラフェンシートの炭素薄膜を成膜した基板の放射率は1であり、黒体とみなせることが確認できる。
(3)プラズマ輻射スペクトルの決定処理S3
プラズマ輻射スペクトルの決定処理S3は、基板12からの熱輻射がスペクトルに重畳されない状態で、基板12の温度で測定したスペクトルのうちで、放射輝度が大きいもの選択する。このため、プラズマ立ち上げの折り、計測装置の能力が許す範囲でできるだけ連続的にスペクトル、または必要とする分光放射輝度計測することが望ましい。
プラズマ輻射スペクトルの決定の条件の例を以下に示す。
フィッテイングする波長領域でもっとも長波長の分光放射輝度W(λhigh)と、線スペクトル上でなく、それより短波長の放射分光輝度W(λlow)の比(W(λlow)/W(λhigh))が単調減少し始める直前のスペクトルデータを採用する。
前述の放射分光輝度比,(W(λlow)/W(λhigh))が最大となるスペクトルをプラズマ輻射スペクトルとして採用する
また、制御回路26によるプログラム処理により、計測と上述の条件判定を自動で連続的に行うことにより迅速にプラズマ輻射スペクトルの取得を簡便に行うことが可能となる。
図8には、具体例の波長678nmと780nmでの分光放射輝度比率であるW(678nm)/W(780nm)の時間変化を示している。
分光放射輝度比率であるW(678nm)/W(780nm)は、定常状態からプラズマ電流を0.01A/secで上昇させて、水素供給管22から水素ガス、メタン供給管21からメタンガスを導入して成膜を開始してから、170秒までは、ほぼ一定の値をとるが、その後、徐々に単調減少していることがわかる。この単調減少は基板温度が上がるに従って、プランク輻射がプラズマ発光に重畳し、長波長側分光放射輝度W(780nm)の分光放射輝度が相対的に強くなったためである。プラズマ輻射スペクトルは、分光放射輝度比率であるW(678nm)/W(780nm)が単調減少し始める直前の時刻170sのスペクトルをプラズマ輻射スペクトルWrising(λ)とする。これは、プランク輻射がオーバーラップしていない状態でもっとも絶対輝度が高いスペクトルほどS/N(シグナル/ノイズ)が高いためである。
(4)スペクトルのフィッティング処理S4
下記プランクの放射式(1)と決定されたプラズマ輻射・スペクトルとの線形結合したフィッティング式(3)により、測定スペクトルを再現することを眼目とする。いうまでもなく輻射スペクトルの表式はプランクの放射式(1)だけでなく、その近似式である下記ウィーンの式(2)を使用しても同様のことが可能である。
Figure 0004693554
Figure 0004693554
Figure 0004693554
但し、h:プランク定数
c:光速
k:ボルツマン定数
λ:波長
T:温度
ε:係数
cp :係数
一般に最小二乗法は誤差の平方和を最小にするようにしたときにもっともモデルへの当てはまりがよいとする、パラメータ推定のための統計モデルであり、誤差が正規分布するなどの幾つかの条件が満たされる場合にはこれが最尤推定法になる。よって成膜過程で分光輝度計によって測定された、波長λi (i=0,1,….N-1)に対する分光放射輝度データmiが、真の値を中心として正規分布すると仮定すれば、最小自乗法によりパラメータ(ε, T, cp)を得ることができる。
このときモデル式に線形性があれば、パラメータは解析的に求めることができるが、上式(3)は非線形な式であるので、数値的な反復計算によってもとめる必要がある。Wrising(λ)は、λに対して一意できまる物理量であるので、入力変数の組を下記の式(4)と定義する。
Figure 0004693554
このとき測定データmiを近似するW(λi)は、下記の式(5)のように書き改めことができる。
Figure 0004693554
ここで、セミコロン以下はパラメータをあらわしている。最小自乗法によって測定データとモデル式の残差の二乗和は下記の式(6)のように書ける。
Figure 0004693554
式(6)の左辺を最小とする(ε, T, cp)を求める方法は、が線形であれば、回帰分析の手順に従って、切片と傾きの最小二乗推定量を求めることができる。しかし、が非線形の場合には、最小二乗推定量ε, T, cpを見出すためには、式(3)をε, T, cpについて偏微分した2つの正規方程式について反復法を用いて解くことになる。いくつかの反復法の中でSASなどの統計ソフトで標準的に用いられているのがテーラー展開法を用いた線型化法の方法で、ガウス・ニュートン法ともいわれている。これは、与えられた初期値(ε0, T0, cp 0)から、反復計算の過程で線形回帰分析を使い、が極小値を与える(ε, T, cp) を漸次的に求めていく方法である。このほかにも、シンプレックス(simplex)法、マルクァート(Marquardt)法など多数の非線形回帰計算法がある。本実施例ではシンプレックス法による非線形最小自乗法を使用した。
最初のフィッティングに使用する初期値については、成膜がまだほとんど進んでいないことから、放射率については基板12自体の値、温度に関しては放射温度計17による測定値を参考にすることができる。またプラズマ輻射スペクトルに掛かる係数Cの初期値はプラズマ輻射スペクトルを計測したときの印加電力とフィットされるスペクトルを取得したときの印加電力の比から推定が可能である。本実施例では各々の初期値をT=1050K、c=1.5としてフィッティングを行った。また2回目以降のフィッティングについては前回のフィッティングによって得られたパラメータを初期値としてフィッティングを行うことで、フィッティングに要するマシンパワーを最小に抑えることができる。このようなスペクトルの測定とフィッティングを連続で行うことによりCVD成膜時の基板温度変化、放射率変化をリアルタイムで計測することが可能となる。
前記具体例では、スペクトルの測定は全圧、電流値が所定の圧力に達した後、1分間隔で測定を繰り返した。スペクトルに式(3)の関数を最小自乗法によりフィットさせた結果を図9に示す。点線のスペクトルはフィッティングに使用したプラズマ輻射スペクトルである。
基板12の温度が1050Kから1150Kまで変化することによりプランク輻射によって大きくスペクトル形状が変化しているが、常に良好なフィッティングを示していることがわかる。またこのように良好なフィッティングを行えることは、シリコンの基板12に関してこの温度域での分光放射率の分散がわずかであることを示している。
図10は、花弁状グラフェンシート構造の炭素薄膜を成膜する際にDCプラズマCVD装置10の分光輝度計16で測定された放射率を示す図である。図11は、図10の放射率に基づいて本発明における上述の計測処理S1、選定処理S2、決定処理S3、フィッティング処理S4を行った花弁状グラフェンシート構造の炭素薄膜を成膜する際の基板12の評価温度と、比較例として、同時に測定した放射温度計17のみによる基板12の評価温度を示す図である。放射温度計17のみの場合は、放射率を0.6に固定した。なお、4800秒までは、基板12を1rpmで回転させ、それ以降は回転を停止して成膜した。また水素ガス、メタンガスをチャンバー11内に導入し、プラズマ輻射スペクトルを測定した時刻を0としており、300秒までは、印加電力を上昇させ、300秒以後は、印加電力を固定して成膜を行った。
上述の測定方法に基づいて測定条件を調節することにより、花弁状グラフェンシート構造の炭素薄膜を成膜した過程の放射率の時間変化は、図10に示されるようになり、基板12の温度は、図11に示すようになる。
成膜の初期過程においては放射率がダイナミックに振動しているが、成膜過程の後半では時間とともにシリコンの基板12上に放射率が1に近い値をもつ花弁状グラフェンシート構造の炭素薄膜が成膜することにより放射率が増大していく。成膜初期における放射率の振動については後述の実施例2で説明する。
花弁状グラフェンシート構造の炭素薄膜の成膜では放射率の増大は成膜時間を長くしてもある一定の値で飽和する。これは花弁状グラフェンシート構造の炭素薄膜の膜厚が増大し、基板12からのプランク輻射がすべて花弁状グラフェンシート構造の炭素薄膜に由来するようになるためである。この飽和値は分光輝度計16の測定角度、窓材の赤外線透過率などによって決まり、窓の汚れなどによりよっても影響をうける。しかし、花弁状グラフェンシート構造の炭素薄膜の真の放射率の値は一定の値をとることが期待できるため、飽和値を定期的に測定し、放射率の値を較正することにより測定系や成膜装置の固有条件によらない物理量としての放射率を評価することが可能となる。
また放射率が上昇する過程において放射率で0.05、基板12の温度で5℃程度の誤差を生じるが、これは基板12を回転させながら成膜するために、成膜状態のムラが放射率、測定温度の差に反映するためである。この誤差は、4800秒以後の測定で示されるように回転を止めて測定を行うことにより放射率で0.02以下、基板12の温度で2℃以下となる。
放射率が増加していく過程においては、印加電力が定値であるにもかかわらず、基板12の温度が徐々に低下していることが観察される。これは、フィッティング式(3)からもわかるように、放射率の増大により基板12から逃げる輻射エネルギーが増大するため、実際に温度が低下していくためと考えられる。
上記実施例1では、比較例として放射率を固定した放射温度計17のみによる測定を行った。
変形例では、放射温度計17の代わりにDCプラズマCVD装置10の熱電対24を比較例として用いた。その他の条件は、実施例1と実質的に同じである。
図12は、花弁状グラフェンシート構造の炭素薄膜を成膜する際にDCプラズマCVD装置10の分光輝度計16で測定された放射率を示す図である。図13は、図12の放射率に基づいて本発明における上述の計測処理S1、選定処理S2、決定処理S3、フィッティング処理S4を行った花弁状グラフェンシート構造の炭素薄膜を成膜する際の基板12の評価温度と、比較例として、同時に測定した熱電対24による基板12の評価温度を示す図である。
図12は、花弁状グラフェンシート構造の炭素薄膜を成膜する際にDCプラズマCVD装置10の分光輝度計16で測定された放射率を示す図である。図13は、本発明における上述の計測処理S1、選定処理S2、決定処理S3、フィッティング処理S4を行った花弁状グラフェンシート構造の炭素薄膜を成膜する際の基板12の評価温度と、比較例として、同時に測定した放射温度計17のみによる基板12の評価温度を示す図である。
したがって、放射温度計17では、本発明の評価温度よりも100〜250℃ほど高温に測定してしまい、熱電対24では、本発明の評価温度よりも80〜100℃ほど低温に測定してしまう結果となった。本発明では、プラズマ輻射による放射率への影響を排除し、より正確な温度を測定することが可能となった。
基板12上に成膜された花弁状グラフェンシート構造の炭素薄膜は極めて良好な電子放出性をもたらし、電界放出素子のカソード電極として適用することが可能であることが確認された。
前述の花弁状グラフェンシート構造の炭素薄膜の成膜条件より、プラズマに印加する電力を下げて成膜温度(基板12の温度)を下げることによりシリコンの基板12上にダイヤモンド膜を成膜することができる。
図14は、DCプラズマCVD装置10の分光輝度計16でダイヤモンドを成膜した際の放射率の変化を示す図である。
図15は、ダイヤモンドを成膜した際の基板12の温度変化を示す図である。 図15については、図16の花弁状グラフェンシート構造の炭素薄膜の場合と同様に、放射温度計17による測定温度を併記してある。
花弁状グラフェンシート構造の炭素薄膜の成膜過程にみられた放射率の振動は、ダイヤモンド成膜ではより振幅が大きく、その減衰についても、花弁状グラフェンシート構造の炭素薄膜では放射率が飽和している5000秒後においてもなお振動が確認できる。花弁状グラフェンシート構造の炭素薄膜成膜に必要な基板12の温度がダイヤモンド成膜に比べて高いことからも、このような振動はダイヤモンドに特有のものであり、花弁状グラフェンシート構造の炭素薄膜成膜の初期過程ではダイヤモンドが堆積していると判断できる。
基板12上に成膜されたダイヤモンド膜は極めて良好な電子放出性をもたらし、電界放出素子のカソード電極として適用することが可能であるすことが確認された。
可視光波長域に対して透過性の高いダイヤモンドが徐々に成膜され続けることによってその膜厚が変調し、このダイヤモンド膜が光学的に干渉して放射率に振幅をもたらしたと思われる。このような振動領域では正確な温度測定は期しがたいが、その振動の周期から成膜速度と成膜ダイヤモンドの屈折率を評価できる。
干渉現象は温度や放射率の計測に障害となるが、そのかわりに薄膜の成膜速度を計算することが可能である。分光輝度計16の測定角度Φを考慮にいれれば、振動1周期の間に成長する厚さΔdは下記の式(7)のように示すことができる。
Figure 0004693554
ここでnは薄膜の屈折率である。上で述べたように薄膜はダイヤモンドであり、フィッティングパラメータの1周期は、フィッティング範囲の平均波長の光によるものと等しいと仮定すれば、Δdは150nmと評価できる。1周期はだいたい600秒であるので例えば、図12の成膜初期のダイヤモンドの成膜速度はほぼ0.9μm/hourと評価できる。
以上のように、本実施形態では、CVDにより原料ガスから生成物を堆積させる際に、堆積物の状態やプラズマ輻射に依存することなく基板温度ならびに成膜面の射出率を成膜過程でリアルタイムに計測を行うことが可能となる。これにより成膜過程で条件を適切に変化させ、成膜の歩留まり、製品の信頼性を向上させることが可能となる。特に、花弁状グラフェンシート構造の炭素薄膜、ダイヤモンド膜やカーボンナノチューブなどの成膜状態によって放射率変化の大きいCVD成膜の際に効果的な手段である。
本発明の実施形態に係る温度測定装置及び温度測定方法の概要を示す説明図である。 DCプラズマCVD装置の要部を示す図である。 スペクトルの測定結果を示す図である。 スペクトルの放射輝度を示す図である。 可視近傍の水素の発光スペクトルの相対強度を示す図である。 炭化水素系発光源による線スペクトルを示す図である。 シリコン基板ならびにダイヤモンド又は花弁状グラフェンシート構造の炭素薄膜を成膜した基板の放射率を示す図である。 具体例での分光放射輝度比の時間変化を示している。 最小自乗法によりフィットさせた結果を示す図である。 花弁状グラフェンシート構造の炭素薄膜を成膜する際の放射率を示す図である。 本発明における花弁状グラフェンシート構造の炭素薄膜を成膜する際の基板の温度及び比較例として放射率を固定して放射温度計のみによって測定された基板の温度を示す図である。 本発明の変形例における花弁状グラフェンシート構造の炭素薄膜を成膜する際の放射率を示す図である。 本発明における花弁状グラフェンシート構造の炭素薄膜を成膜する際の基板の温度及び比較例として熱電対のみによって測定された基板の温度を示す図である。 ダイヤモンドの成膜する際の放射率を示す図である。。 ダイヤモンドの成膜する際の基板の温度を示す図である。 花弁状グラフェンシート構造の炭素薄膜を拡大したSEM写真を示す図である。
符号の説明
10・・・DCプラズマCVD装置、11・・・チャンバー、12・・・基板、14,15・・・測定用窓、16・・・分光輝度計、17・・・放射温度計、S1・・・プラズマ輻射スペクトルの計測処理、S2・・・フィッティングに要する波長領域の選定処理、S3・・・プラズマ輻射スペクトルの決定処理、S4・・・フィッティング処理

Claims (10)

  1. プラズマ雰囲気で加熱される基板の温度を測定する温度測定装置であって、
    予め、前記基板からの熱輻射による放射輝度が、輝度計の計測誤差以下の状態のプラズマ発光のスペクトルを測定するスペクトル計測手段と、
    前記スペクトル計測手段によって前記測定されたスペクトルのうち、プラズマ誘起電力を変化させても各波長の放射輝度比が変化しない波長領域を選定する選定手段と、
    前記基板に関するプランクの放射式或いはその近似式と前記スペクトルを線形結合した式を、前記選定された波長領域において、前記基板の熱輻射と前記プラズマ発光が重畳したスペクトルに非線形最小自乗法によりフィッティングするフィッティング手段と、
    前記基板に加熱処理している際に、前記フィッティング手段の前記フィッティングに基づいて前記基板の温度を算出する基板温度算出手段と、
    を備えることを特徴とする温度測定装置。
  2. 前記基板温度算出手段は、前記フィッティングに基づいて該基板の放射率を算出することを特徴とする請求項1に記載の温度測定装置。
  3. 前記選定手段における選定後、前記基板からの熱輻射による分光放射輝度が分光輝度計の計測誤差以下の状態のプラズマ発光のうちの最も輝度の高いスペクトルを決定するスペクトル決定手段をさらに備え、
    前記フィッティング手段の前記フィッティングは、前記基板に関するプランクの放射式或いはその近似式と、前記スペクトル決定手段によって決定されたスペクトルを線形結合した式を、前記基板の熱輻射と前記プラズマ発光が重畳したスペクトルに、前記選定された波長領域で、非線形最小自乗法によりフィッティングさせることで行われていることを特徴とする請求項1又は2に記載の温度測定装置。
  4. 前記基板温度算出手段は、前記プラズマ雰囲気中でCVDによって前記基板に膜を成膜する際の前記基板の温度を算出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の温度測定装置。
  5. 既知の放射率をもつ膜材料の成膜を予め行うことで、前記膜の成膜時の放射率の絶対値を較正することを特徴とする請求項4に記載の温度測定装置。
  6. プラズマ雰囲気で加熱される基板の温度を測定する温度測定方法であって、
    前記基板からの熱輻射による放射輝度が、輝度計の計測誤差以下の状態のプラズマ発光のスペクトルを測定するスペクトル計測処理と、
    前記測定されたスペクトルのうち、プラズマ誘起電力を変化させても各波長の放射輝度比が変化しない波長領域を選定する選定処理と、
    前記基板に関するプランクの放射式或いはその近似式と前記スペクトルを線形結合した式を、前記選定された波長領域において、前記基板の熱輻射と前記プラズマ発光が重畳したスペクトルに非線形最小自乗法によりフィッティングさせて、前記基板の温度を算出する温度算出処理と、
    を含むことを特徴とする温度測定方法。
  7. 前記温度算出処理では、前記フィッティングにより、該基板の放射率を算出することを特徴とする請求項6に記載の温度測定方法。
  8. 前記基板からの熱輻射による分光放射輝度が、分光輝度計の計測誤差以下の状態のプラズマ発光のうちの最も輝度の高いスペクトルを決定するスペクトル決定処理を含み、
    前記温度算出処理における前記フィッティングは、前記基板に関するプランクの放射式或いはその近似式と前記スペクトル決定処理で決定されたスペクトルを線形結合した式を、前記基板の熱輻射と前記プラズマ発光が重畳したスペクトルに、前記選定された波長領域で、非線形最小自乗法によりフィッティングさせることで行われることを特徴とする請求項6又は7に記載の温度測定方法。
  9. 前記基板は、前記プラズマ雰囲気中でCVDによって成膜されることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の温度測定方法。
  10. 既知の放射率をもつ膜材料の成膜を予め行うことで、前記膜の成膜時の放射率の絶対値を較正することを特徴とする請求項9に記載の温度測定方法。
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