JP4693084B2 - 非破壊的に高温部材の到達温度を推定する方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高温環境下で使用される構造部材(本明細書では高温部材あるいは高温部品という)の到達最高温度を非破壊的に推定する方法に関する。さらに詳述すると、本発明は、ガスタービン高温部品保守技術に係り、特に動翼の寿命管理に不可欠なメタル温度の推定方法の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
発電用ガスタービンの高効率化を実現するには燃焼ガスの高温化が有効であることから、動翼、静翼、燃焼器などの高温部品には厳しい運転条件が課せられる。特に、高速回転する動翼、中でも高圧高温のガスが最初に吹き付けられる初段動翼においては、厳しい条件と高い安全性とが課せられる。したがって、通常は、設計に基づく高い安全率が見込まれた交換時間を基に部品交換等を行うことが推奨されている。
【0003】
しかしながら、燃焼ガスの高温化に対応する目的で高温部品には耐熱性・耐久性に優れる高級な材料が使用されるため、部品単価は高いものとなる。そこで、このような高価な部品を適切な寿命まで使用すべく、定量的な余寿命評価技術の開発の必要性が経済的観点から強く望まれている。特に、的確な余寿命評価を行う上での重要なパラメータの1つとして、定格運転時におけるメタル表面の最高到達温度を把握することが重要となっており、そのような条件で使用される高温材料の到達温度を求めることが望まれている。
【0004】
かかる要望に応えるものとしては、従来、破壊試験による組織観察によってタービン動翼等の最高到達表面温度を推定することが行われている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、組織観察のために破壊された動翼は、そのままの状態では再使用することができなくなり不経済である。また、非破壊計測法として、赤外線放射温度計の利用も検討されているが、この技術を実機に適用するには稼働中の動翼からの赤外線を観測するため、ガスタービンケーシングに窓を新たに設けなければならなく、実現が困難であるし、雰囲気温度などに阻害されて正確に動翼表面温度を測定することは困難である。
【0006】
そこで、本発明は、高温部材の使用時に到達した最高温度を非破壊的に推定する方法を提供することを目的とする。特に、動翼の寿命管理に不可欠な定格運転時のメタル温度を、ガスタービンを改良することなく、ガスタービン停止時の室温状態において非破壊的に推定することを可能とする高温部材の到達温度推定方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するため、本発明者らが種々研究・実験した結果、強磁性となり得る組成を有する構造部材が高熱を受けるとき、磁性が生じ、更にその磁化に関する物理的現象例えば透磁率はそれまでに達した最高温度によって一律に決まってしまい、透磁率の数値が温度履歴に反映していることを知見するに至った。より具体的には、例えばニッケルベースの超合金基材にメタルコーティングを施したタービン動翼等の高温部品では、製造時には磁性を帯びていなくても、高温雰囲気下で使用されると、高熱の影響を受けてメタルコーティングが強磁性体となり、しかもその強磁性は到達最高温度に応じて強さが変化し、ある程度の間例えば100時間程度は残留していることがわかった。更に、この発明が対象とするコバルト、ニッケルあるいはフェライトの少なくともいずれか1つを主成分とする耐熱材料、なかでも表層にCoCrAlYのコーティングあるいはそのコーティングに更にAlパックが施されたガスタービン動翼材料については、実験により、磁性が応力には依存しないことが明らかになった。即ち、このような材料では、磁性は熱履歴に依存し、応力に依存しないことを知見するに至った。
【0008】
請求項1記載の発明はかかる知見に基づくものであって、CoCrAlYのコーティングあるいは層が高熱を受ける面あるいは高熱の影響を受ける層に施された高温環境下で使用される構造部材の高温雰囲気下での使用時に到達した最高温度を非破壊的に推定する方法において、前記構造部材が高温雰囲気下で使用された後の前記CoCrAlYのコーティングあるいは層の磁化に関する物理量を室温状態で測定し、前記磁化に関する物理現象の変化量から、前記CoCrAlYのコーティングあるいは層と同じ材料を使って求められた温度と磁化に関する物理的現象の変化量との相関を示す検定曲線を利用して前記構造部材の高温雰囲気での使用時の到達最高温度を非破壊的に推定するようにしている。ここで、磁化に関する物理的現象としては、透磁率の採用が好ましいが、これに特に限定されるものではなく、その他の磁化に関する物理的現象例えば渦電流やMTによっても、温度との相関をとることができる。
【0009】
したがって、CoCrAlYのコーティングあるいは層と同じ材料を使って、熱処理温度と磁化に関する物理的現象の変化量例えば透磁率との相関を示す検定曲線を求めておけば、この検定曲線を利用して測定透磁率から測定対象構造部材の到達した最高温度を求めることができる。透磁率の数値は最高温度の高さと時間に反映しており、それまでに達した最高温度によって一律に決まってしまう。そこで、ガスタービンを試運転し、その後に動翼を取り外して室温状態でその透磁率を計測すれば、動翼の最高到達温度を一義的に精度よく推定することができる。
また、請求項2記載の発明は、高温環境下で使用される構造部材の高温雰囲気下での使用時に到達した最高温度を非破壊的に推定する方法において、測定対象となる前記構造部材とは別体のCoCrAlYの試験体を前記構造部材の高熱を受ける面に貼付または埋設し、前記構造部材が高温雰囲気下で使用された後の前記試験体の磁化に関する物理量を室温状態で測定し、前記磁化に関する物理現象の変化量から、前記CoCrAlYの試験体と同じ材料を使って求められた温度と磁化に関する物理的現象の変化量との相関を示す検定曲線を利用して前記構造部材の高温雰囲気下での使用時の到達最高温度を非破壊的に推定するようにしている。この場合には、構造部材が強磁性となり得る組成・材質でないときにも、貼付した試験体の透磁率の変化を測定するだけで、構造物が到達した最高温度を推定することができる。
【0010】
また、請求項記載の発明は、請求項記載の高温環境下で使用される構造部材の到達最高温度推定方法において、構造部材がCoCrAlYのコーティングあるいはそのコーティングに更にAlパックが表層に施されたガスタービン動翼であり、試運転後に室温状態でその透磁率を測定することで定格運転時の到達最高温度を推定するようにしている。この場合、製造時にはタービン動翼の基材と共に磁性を示していないメタルコーティングが、高温雰囲気下で使用されることによって、磁性が生じて強磁性体となる。しかも、この磁性は熱履歴にのみ依存し、応力には依存しない。このことから、コーティングの磁性は到達最高温度に依存した温度履歴情報として記憶され、100時間程度は維持される。したがって、定格運転条件で試運転した後に室温状態でその透磁率を測定することで定格運転時の到達最高温度を推定することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の高温部材の到達最高温度非破壊推定方法を一実施態様に基づいて詳細に説明する。
【0013】
この高温環境下で使用される構造部材の到達最高温度推定方法は、CoCrAlYのコーティングあるいは層が高熱を受ける面あるいは高熱の影響を受ける層に施された高温環境下で使用される構造部材の高温雰囲気下での使用時に到達した最高温度を非破壊的に推定する方法であって、前記構造部材が高温雰囲気下で使用された後の前記CoCrAlYのコーティングあるいは層の磁化に関する物理量を室温状態で測定し、前記磁化に関する物理現象の変化量から、前記CoCrAlYのコーティングあるいは層と同じ材料を使って求められた温度と磁化に関する物理的現象の変化量との相関を示す検定曲線を利用して前記構造部材の高温雰囲気での使用時の到達最高温度を非破壊的に推定するようにしたものである。ここで、磁化に関する物理的現象としては、本実施形態では透磁率を採用しているが、これに特に限定されるものではなく、その他の磁化に関する物理的現象例えば渦電流や磁気誘導波形の歪みによっても、温度との相関をとることができる。
【0014】
温度と透磁率の検定曲線は、測定対象となる高温部品・部材と同じ材料またはこれと同等の部材(以下、対比試験体と呼ぶ)を使って、所定の温度範囲で異なる温度毎に一定時間例えば10時間程度熱処理した結果得られた透磁率と熱処理温度との相関をプロットすることによって得られる。例えば、ガスタービンの動翼の表面が定格運転時にどの位の温度に達しているかを測定しようとする場合には、動翼(またはこれと同等の部材)を対比試験体とし、この対比試験体の磁性を測定して温度と透磁率に関する検定曲線を作成しておく。このときに行う熱処理は、想定される燃焼ガス温度との関係から、例えば図1に示すように一定温度範囲でかつ必要な温度差毎に行えば足りる。
【0015】
ここで、強磁性となり得る組成を有する高温部材としては、例えばコバルト、ニッケルあるいはフェライトの少なくともいずれか1つを主成分とする耐熱材料が代表的なものとして挙げられるが、これに特に限定されるものではない。また、この高温部材は、高温部品全体が強磁性となり得る材料で構成されても良いが、少なくとも高熱を受ける面例えば表面若しくは高熱の影響を受ける層に強磁性となり得る組成物を有する層構造でも良い。例えば、ガスタービン動翼のような場合には、ニッケル超合金IN738LCやニッケル超合金一方向凝固(Directionally Solidified、DS)材から成る基材の表層にCoCrAlYのコーテイングあるいはそのコーティングに更にAlパックが施されおり、CoCrAlYのコーテイング層部分が定格運転時に強磁性となるものである。また、強磁性となり得る材料は、高温部材そのものを構成する必要はなく、高温部材とは別体の試験体として、高熱を受ける面などに部分的に貼付したり、埋設することも可能である。この場合には、試験体の透磁率を測定して、試験体あるいはそれと同じ材料を用いて得た検定曲線から試験体の到達温度を推定し、更には該試験体が貼付されている高温部材の表面温度をも推定することができる。この方法は、高温部材が強磁性となり得ない材質で構成される高温部材の到達温度を推定する場合に有用である。
【0016】
斯様にして求めた熱処理温度と透磁率との相関を示す検定曲線を利用して、高熱が与えられた後の測定対象高温部品の透磁率を測定し、測定透磁率から測定対象構造部材の到達した最高温度を求めることができる。透磁率の数値は温度履歴に反映しており、それまでに達した最高温度によって一律に決まってしまう。そこで、ガスタービンを試運転し、その後に動翼を取り外して室温状態でその透磁率を計測すれば、この測定透磁率から検定曲線を用いて動翼の最高到達温度を一義的に精度よく推定することができる。尚、コーティングの磁気計測は例えば低透磁率測定計を使用して行う。
【0017】
【実施例】
以下に本発明の到達最高温度非破壊推定方法を用いてガスタービンの初段動翼が定格運転時に到達した最高温度を推定する手法を説明する。
【0018】
1.試験片の作製
初段動翼材料の磁気的物性測定用に初段動翼と同じ材質の試験片を作製した。
1100℃級ガスタービン初段動翼の基材に用いられているニッケル超合金IN738LC,1300℃ガスタービン初段動翼の基材に用いられているニッケル超合金一方向凝固(Directionally Solidified、DS)材、および耐食コーティングに用いられるCoCrAlY それぞれ単体の試験片を加工した。そして、IN738LCおよびCoCrAlY の試験片を人工的に劣化させるために、大気中において2個ずつ950℃および1000℃の熱時効試験に供じ、熱時効材を作製した。尚、試験片の形状および個数を表1に、ニッケル基合金の化学組成を表2に、耐食コーテイングCoCrAlYの化学組成を表3にそれぞれ示す。
【0019】
【表1】
Figure 0004693084
【0020】
【表2】
Figure 0004693084
【0021】
【表3】
Figure 0004693084
【0022】
2.初段動翼材料の磁気的物性
2.1 磁気的物性の測定
まず、ガスタービン動翼の製造時の状態に匹敵する未時効材の比透磁率をμメータにより測定した結果を表4に示す。この結果は、試験片の両平面部中心にμメータプローブを押し付けて測定した結果である。表4から、ニッケル基超合金およびCoCrAlY の磁性は無視できるほど小さく、即ち、加熱処理しない状態では磁性を示していないことが分かる。ここで、ニッケル基合金は大気中に曝さなければ(コーティングされていれば)、製造時と同じく非磁性のままであるが、曝されると表層に酸化膜が生成されて磁化されるものと考えられる。しかし、基材となるIN738LCの熱時効材では高温(950℃,1000℃)での加熱処理直後には顕著な磁性が見られず、500時間加熱処理した以降で試験片表層が酸化して磁性が生じていた。因みに、測定対象を不規則な曲面形状を有する動翼とした場合、測定影響領域が狭く、リフトオフ変化による信号の減衰が少ないμメータの使用が適している。μメータによる透磁率測定は、試験片に磁気誘導原理で透磁率に比例した電圧を発生させるものである。透磁率に比例した信号と同時に渦電流が発生してその影響に応じた信号も出力されるが、位相検波回路で渦電流に起因する信号分を除去することによて透磁率のみに比例する信号を取り出すことにより、感度良く測定できる。
【0023】
【表4】
Figure 0004693084
【0024】
次いで、試験片の熱時効材の比透磁率を測定した。その結果を図1に示す。尚、測定においては、動翼の定期検査での非破壊評価を見据えた物性データの取得であるため、室温でデータを取得した。比透磁率の測定は、簡易的に磁性を評価できる低透磁率計(μメータ)と振動試料型磁力計(Vibrating Sample Magnetometer、VSM)を用いた。なお、熱時効材表面に付着した酸化膜のため、抵抗測定が不可能であったため、試験片を研磨した後、比透磁率を測定した。
【0025】
図1にはCoCrAlY に対するμメータの出力値(比透磁率相当)の平均値を示す。この図からCoCrAlY の磁性は、試験温度1000℃の熱時効材は950℃の熱時効材より比透磁率が高いことが判った。また、両者の比透磁率は試験時間とともに上昇傾向を示す。IN738LCおよびCoCrAlY に磁性が生じたのは、それぞれの主成分であるNiおよびCoが強磁性元素であり、それらの化合物の結晶構造が磁化し易い結晶構造に変化したことが原因と考えられる。
【0026】
2.2 熱処理温度と比透磁率の相関性
図1に示す測定結果から、CoCrAlY は熱処理により磁性が変化し、熱処理温度に応じて磁性が強くなることが観測された。さらに、温度と比透磁率との関係を考察するため、CoCrAlYの単体の試験片(CoCrAlY 材)およびニッケル超合金基材にコーティング溶射した円盤試験片(コート材)に対し、温度を850℃から1050℃まで変化させ、10時間の熱処理を実施した。各試験片に対するμメータの出力値を図2の(a),(b)に示す。単体のCoCrAlY 材に関しては、図2の(a)に示すように、参考のためVSM による測定で得られた初期比透磁率も載せている。今回用いたμメータは、平面部が3mmφ以上で、かつ厚さが1.5mm以上ある試験片に対して、出力値が比透磁率に相当するように調整されている。しかしながら、図2の(b)に示すように、コート材のCoCrAlYコーティングは0.2mmと薄いため、出力値は実際の比透磁率と大きく異なっていた。しかし、図2より、熱処理温度の上昇に伴い、CoCrAlY 材の磁性は強くなることが判った。即ち、コーティング試験片においては、非コーティング面(基材となるIN738LCが露出している面)では磁性に変化が見られなかったのに対し、コーティング面では磁性が強くなることを確認することができた。このことから、10時間程度の加熱処理下では、仮にコーティングに欠損等が生じて基材が露出していたとしても、基材は磁性をもつことがないのでその影響はなく、測定された透磁率は全てCoCrAlYコーティングからのものであると言える。コーティングの欠損等により露出した基材が磁性を生じるのは500時間程度経過してからである。
【0027】
以上の結果は、定格運転時の初段動翼メタル温度が同図の温度範囲内にあり、Co化合物の磁性が応力に影響されなければ、ガスタービン停止時に初段動翼の磁性を測定することにより、定格運転時におけるコーティングの温度分布を推定することが可能となることを示唆している。
【0028】
そこで、CoCrAlYの透磁率の応力による影響を調べるため,クリープ試験を実施し,比透磁率をμメータにより測定した。試験条件は以下に示す通りである。
温度:975℃
応力:50MPa,100MPa
時間:50hrs
比較のため,クリープ試験と同じ温度制御の熱時効試験も実施した。磁気測定を中心部で軸方向に2点、周方向に等間隔で4点の計8箇所で実施した。それぞれの試験片の比透磁率を図3に示す。図3から判るように応力による影響は無視できるほど小さいものであった。よって、実際に使われた動翼の透磁率を測定し、その測定値から透磁率と温度との検定曲線を利用して動翼の到達最高温度を推定する方法は実機に対して十分適用可能であることが判明した。
【0029】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、本実施例ではタービン動翼に適用した例を示したが、これは一例にすぎず、高温雰囲気下で使用されるタービン動翼以外の高温部材あるいは構造物にも適用可能であることはいうまでもない。この場合には、測定対象物全体が強磁性となり得る材料で構成されている必要はなく、高熱を受ける面例えば表面や高熱の影響を受ける領域に層などとして、更には全面的である必要はなく、部分的であっても良く、到達最高温度を推定するためだけに設けられられるものであっても良い。
【0030】
また、本実施形態では、磁化に関する物理的現象として透磁率を測定するようにしているがこれに特に限定されず、場合によっては渦電流法や磁気法などによって得られる磁化に関する物理的現象を用いるようにしても良い。渦電流法は、磁性体に交流磁界を与えて電磁誘導により渦電流を発生されてそれがつくる鎖交磁束を測定するものである。渦電流がつくる磁束は磁性材料の透磁率を反映しているものなので、透磁率の変化が渦電流や磁束の変化としてECT出力に影響を与えるため、これら出力と温度との相関を示す検定曲線を作成しておけば、これら出力から到達温度を推定することができる。また、磁気法の1つとしては、例えばNLH(Non linear harmonic)法が挙げられる。このNLH法は、磁性体に交流磁界をかけると、磁気誘導波形に歪みが生じることを利用して、磁性体の磁性に関連する信号を出力するものである。この歪んだ波形は加えた磁界を基本波として奇数倍の高調波を含む。交流磁界を加え、測定された磁気誘導波形の第三次高調波の振幅は磁性体の磁性に相関性があるため、振幅から磁性の程度を決定することができる。この場合にも、透磁率の変化が磁気誘導によって生じる磁束ひいてはNLHの出力に影響を与えるため、これら出力と温度との相関を示す検定曲線を作成しておけば、これら出力から到達温度を推定することができる。
【0031】
更に、本実施形態では、ニッケル超合金IN738LCの基材にCoCrAlYのコーテイング層を形成した1100℃級ガスタービン初段動翼を例に挙げて主に説明しているが、これに特に限られず、NiCoCrAlYやCoNiCrAlYなどの耐食コーティングについても適用可能であるし、また、アルミパックのような非磁性材料(比透磁率が1に近く、強い磁性を示さない材料)で覆われた1300℃ガスタービン初段動翼のようなものでも適用可能である。アルミパックの透磁率は真空とほぼ等しいため、アルミパックの有無によらず、CoCrAlY の磁性が顕著であれば本手法は有効である。
【0032】
更に、対比試験体の厚みと測定対象構造部材(実機)の強磁性体となる部分の厚みとが無視できないほどに異なる場合には、透磁率と温度との相関を示す検定曲線に補正が必要となる。この場合には、コーティング(強磁性体となる部分)の厚みと透磁率(μメータの出力値)との相関関係と、測定対象構造部材(実機)の強磁性体となる部分の厚みとを利用して、検定曲線を補正することができる。ここで、実機の強磁性体となる部分の厚みは、実機と同じ材料を使い、厚みを変えて一定温度で熱処理温度をしたときの透磁率と強磁性体となる部分の厚みとの相関を示す検定曲線を求め、製造過程で実機に対し前述の検定曲線を求める際の熱処理と同じ温度の熱処理を加え、そのときの透磁率を測定することにより検定曲線から求めることができる。
【0033】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明の高温環境下で使用される構造部材の到達最高温度推定方法によると、高温環境下で使用される構造部材の到達最高温度を非破壊的に正確に推定することができる。このことは、ガスタービン動翼のような極めて高価な部品を適切な寿命まで使用することを可能とする定量的な余寿命評価を成す上で効果的である。
【0034】
即ち、ガスタービン停止後の室温状態での動翼等の磁気計測により、これまで明らかにされていない定格運転時における動翼等の表面メタル温度を明らかにすることが可能となる。このため、動翼などの余寿命評価の高精度化およびガスタービンの性能評価に関する知見を得ることができるし、その他の高温環境下で使用される構造部材についても同様に温度を推定することができる。しかも、動翼等を破壊する必要がないので既設のガスタービン設備を改良することなく温度データを得ることが可能となり経済的である。
【0035】
特に、磁化に関する物理的現象の変化量として透磁率を採用する場合には、得られる検出信号も極めて明瞭なものとなり、測定が容易となる。
【0036】
更に、高温環境下で使用される構造部材の高温雰囲気下での使用時に到達した最高温度を非破壊的に推定する方法において、測定対象となる構造部材とは別体のCoCrAlYの試験体を構造部材の高熱を受ける面に貼付または埋設し、構造部材が高温雰囲気下で使用された後の試験体の磁化に関する物理量を室温状態で測定し、磁化に関する物理現象の変化量から、CoCrAlYの試験体と同じ材料を使って求められた温度と磁化に関する物理的現象の変化量との相関を示す検定曲線を利用して構造部材の高温雰囲気下での使用時の到達最高温度を非破壊的に推定するようにしている場合には、構造部材が強磁性となり得る組成・材質でないときにも、貼付した試験体の透磁率の変化を測定するだけで、構造物が到達した最高温度を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 CoCrAlY熱時効材の比透磁率を熱処理温度毎に示すグラフである。
【図2】 CoCrAlYの比透磁率の熱処理温度依存性を示すグラフで、(a)はCoCrAlY材、(b)はコート材の測定結果を示す。
【図3】 CoCrAlYの透磁率の応力による影響を調べる試験結果を示すグラフで、比透磁率と応力との関係を示している。

Claims (4)

  1. CoCrAlYのコーティングあるいは層が高熱を受ける面あるいは高熱の影響を受ける層に施された高温環境下で使用される構造部材の高温雰囲気下での使用時に到達した最高温度を非破壊的に推定する方法において、前記構造部材が高温雰囲気下で使用された後の前記CoCrAlYのコーティングあるいは層の磁化に関する物理量を室温状態で測定し、前記磁化に関する物理現象の変化量から、前記CoCrAlYのコーティングあるいは層と同じ材料を使って求められた温度と磁化に関する物理的現象の変化量との相関を示す検定曲線を利用して前記構造部材の高温雰囲気での使用時の到達最高温度を非破壊的に推定することを特徴とする高温環境下で使用される構造部材の到達最高温度推定方法
  2. 高温環境下で使用される構造部材の高温雰囲気下での使用時に到達した最高温度を非破壊的に推定する方法において、測定対象となる前記構造部材とは別体のCoCrAlYの試験体を前記構造部材の高熱を受ける面に貼付または埋設し、前記構造部材が高温雰囲気下で使用された後の前記試験体の磁化に関する物理量を室温状態で測定し、前記磁化に関する物理現象の変化量から、前記CoCrAlYの試験体と同じ材料を使って求められた温度と磁化に関する物理的現象の変化量との相関を示す検定曲線を利用して前記構造部材の高温雰囲気下での使用時の到達最高温度を非破壊的に推定することを特徴とする高温環境下で使用される構造部材の到達最高温度推定方法
  3. 前記磁化に関する物理的現象は透磁率であることを特徴とする請求項1または2記載の高温環境下で使用される構造部材の到達最高温度推定方法
  4. 前記構造部材は前記CoCrAlYのコーティングあるいはそのコーティングに更にAlパックが表層に施されたガスタービン動翼であり、試運転後に室温状態でその透磁率を測定することで定格運転時の到達最高温度を推定することを特徴とする請求項1記載の高温環境下で使用される構造部材の到達最高温度推定方法
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