JP4728012B2 - バイオセンサ - Google Patents
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これらの分析の手法の1つである固相結合分析には、磁性体粒子を用いる方法がある。磁性体粒子を用いた固相分析の模式図を図9に示す。
図9に示されるように、この分析は、固相91と、第2の分子受容体95と、磁性体粒子Mgと、第1の分子受容体93としての2次抗体と、を用いて行われ、測定対象物94の分析を行う。
第2の分子受容体95は、試料溶液中に存在する抗原、抗体、DNA、RNA等の測定対象物94を選択的に固相91に保持する物質である。第2の分子受容体95としては、測定対象物94に特異的に結合する分子が用いられ、抗原、抗体、DNA、RNA等が用いられる。
第1の分子受容体93は、測定対象物94に特異的に結合するものであり、あらかじめ磁性体粒子Mgに固定される。
特許文献2によれば垂直方向の外部磁場を印加し、これにより磁性体粒子が垂直方向に磁化され、この磁化による素子面での垂直方向の磁場の変化を検知する。
外部磁場の方向と磁場検知素子の磁場の検知方向が異なる場合、例えば特許文献1により開示されている磁気抵抗素子では、理想的な状態では外部磁場による磁気抵抗素子の出力信号変化はゼロであり、磁性体粒子が存在する時のみ出力信号が変化する為、高感度な測定が可能である。しかしながら、外部磁場を印加する方向が少しでもずれると、外部磁場による磁気抵抗素子の出力はゼロにはならず、測定結果に影響する。
本発明の目的は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、磁性体粒子の測定において、高感度で、かつ、ノイズや検知の素子の感度のバラツキの影響が少なく測定精度の高いバイオセンサを提供することにある。
特に、磁性体粒子の磁化が飽和するような交流磁場のみを印加することにより、磁場検知手段の出力信号には3次高調波が現れ、これを測定することにより磁性体粒子を検出することが出来る。
また、半導体ホール素子は感受面での磁束密度に比例した信号を出力するため、磁性体粒子による高調波を正確に検出することが出来る。
磁性体粒子の磁化が飽和し始める磁場に直流磁場を固定し、これに交流磁場を加えることにより、磁場検知手段の出力信号には2次高調波が現れ、これを測定することにより磁性体粒子を検出することができる。すなわち、直流磁場に対して磁場を弱める方向に交流磁場が加わっている時、磁性体粒子の磁化は飽和しないが、強める方向に加わっている時、磁性体粒子の磁化は飽和する。これにより出力信号の交流成分の非対称性が生じ、2次高調波が現れる。交流磁場の振幅が、直流磁場強度の2倍を超えると弱める方向に交流磁場を加えた場合も磁性体粒子の磁化が飽和するようになり、交流成分の非対称性が小さくなり、基本波に対する2次高調波成分の割合が小さくなる。
また、半導体ホール素子は感受面での磁束密度に比例した信号を出力するため、磁性体粒子による高調波を正確に検出することが出来る。
本発明の請求項3によるバイオセンサは、請求項1又は2において、前記定量手段は、前記交流磁場の周波数である基本波の振幅を基準とした、前記高調波成分の振幅の大きさに基づいて、定量することを特徴とする。
磁場発生手段により発生する磁場が一定であれば、ある量の磁性体粒子が存在する時の基本波の振幅と高調波の振幅の比は一定であるから、磁場検出手段の感度がばらついても影響されない。
ノイズを除去することで、より正確な定量が可能である。
本発明の請求項6によるバイオセンサは、請求項1〜5のいずれか1項において、前記磁場検出手段が複数の磁場検知素子がX行Y列(X及びYは自然数である)の2次元に配置されてなる磁気センサであることを特徴とする。
複数の磁場検知素子を用いることにより磁性体粒子の検出を正確に行うことができる。
図1に本実施形態に係るバイオセンサの概略構成を示す。なお、本実施形態のバイオセンサは、従来技術の項で説明したように、第1の分子受容体、測定対象物、及び第2の磁性体分子を介して、固相であるセンサチップに結合した磁性体粒子の量を測定することで、測定対象物の分析を行うものである。
図1のバイオセンサは、分析器本体6と、分析器本体6に抜き差し可能に構成されたカートリッジ5と、を備える。
カートリッジ5は、内底部にセンサチップ1を配置した筺体である。センサチップ1の表面には、第2の分子受容体を配置し、筺体内に磁性体粒子や測定対象物を含有した試料溶液を導入することで、試料溶液の反応を行わせる。センサチップ1は、分析器本体6からの信号により制御されるとともに、試料溶液の反応により第2の分子受容体に特異的に結合した磁性体粒子を検出し、その検出結果を分析器本体6に送る。
図2はセンサチップ1の一部の概略図、図3はセンサチップ1の構成を示すブロック図である。センサチップ1は、本発明の磁場検出手段に相当するホール素子がアレイ状に配置されたホール素子アレイ9と、アレイ選択回路71と、増幅回路81と、を備える。
ホール素子2は、外部から感磁面に対して垂直な磁束が加わると、感磁面における磁束密度に比例した電圧を出力する。アレイ選択回路71は、制御装置64からのホール素子2の選択信号に基づいて、指定されたホール素子を選択し、そのホール素子の出力電圧を増幅回路81に出力する。また、増幅回路81は、ホール素子2の検知信号を増幅し、制御装置64に出力する。例えば、差動増幅回路を備えて構成される。
なお、本発明に係る磁場検出手段は、上述のようなものに限定されない。例えば、センサチップ1に複数のホール素子を設けるのではなく、ホール素子2つでもよい。また、磁場検知素子はホール素子に限定されるものではなく、検出する磁場の変化に対して出力信号がその1次関数となる磁場検出素子であればよい。例えば誘導コイルでもよい。
磁性体粒子Mgは、磁性材料そのものを粒子状にしたものでも、ポリスチレン等のポリマーに磁性材料を含浸させたものでもよい。磁気特性としては磁性体粒子Mgの状態で超常磁性を示し、8kA/m以上の磁場中で磁化が飽和するものが望ましい。磁性体粒子Mg表面は第1の分子受容体93を固定するための固定層が形成されており、その上に第1の分子受容体93を固定する。
分析器本体6は、図1及び図3に示すように、磁場発生手段としてのコイル61及び磁性体コア62と、表示装置63と、制御装置64と、カートリッジ5裏面の電極と接続するコネクタ65と、を備える。
磁性体コア62は、センサチップ1の対向位置に配置され、周囲に巻かれたコイル61に通電することにより、センサチップ1上に存在する磁性体粒子Mgを上向きに引きつける磁場を形成する。コイル61に単一周波数の交流を流すことで、単一周波数の交流磁場が形成される。また、コイル61に単一周波数の交流と直流電流を同時に流すことで、交流磁場と直流磁場が形成される。
制御装置64は、測定実行部64Aと、フーリエ変換部64Bと、ノイズ除去部64Cと、定量部64Dと、記憶装置64FFと、センサチップ制御回路64Eと、磁場発生手段制御回路64Gと、表示装置制御回路64Hと、を備える。
測定実行部64Aは、予め定められた手順に従って、各部に指令を出力することにより測定を進行させる。
前記磁場発生手段制御回路64Gは、測定実行部64Aの指令に基づき磁場発生手段を制御して磁場を発生させ、表示装置制御回路64Hは、定量部64Dの指令に基づき表示制御3を制御して、定量結果を出力させる。
(2次高調波の検出について)
図4は、外部磁場と磁場検出素子の感磁面での磁束密度の関係を磁性体粒子が磁場検知素子上にある場合とない場合についてそれぞれ模式的に示したものである。磁性体粒子が無い場合は、外部磁場と磁束密度は比例し線形であるが、磁性体粒子がある場合は、外部磁場に対して磁束密度は非線形となり、特に磁化が飽和すると、傾きは磁性体粒子が無い場合とほぼ同等になる。
外部磁場としてある単一周波数の交流磁場を印加した時の、磁束密度検知素子の出力を模式的に示したものが図6(a)である。この時交流磁場の振幅は、磁性体粒子の磁化が飽和する大きさに設定してある。磁性体粒子が無い場合出力波形は正弦波であるが、磁性体粒子がある場合、正弦波の凸部がつぶれた歪んだ波形となる。これをフーリエ変換した周波数スペクトルが図6(b)である。磁性体粒子が無い場合は、基本波のみであるが、磁性体粒子がある場合、基本波の3倍の周波数のところに3次高調波が現れる。従って、この3次高調波の有無又は信号強度に基づき、磁性体粒子を定量できる。このとき、さらに基本波信号強度に対する3次高調波信号強度の比を定量に用い、基本波強度を基準にすることでセンサ感度の変動に影響されない信号を得ることができる。なお、この場合も2次高調波の場合と同じくノイズ成分を除去する。
次に、図7のフローチャートを用いて、本実施形態のバイオセンサの動作及びこれを用いた測定対象物の測定方法について説明する。
まず、センサチップ1を内蔵したカートリッジ5に測定対象物及び磁性体粒子を含む溶液を滴下したものを分析器本体6に挿入することで、測定を開始する。
挿入後、ステップS101にて所定の時間静置し、測定対象物を介して磁性体粒子をセンサチップ上に結合させる。次に、ステップS102では結合していない磁性体粒子をコイル61により磁場を印加しセンサチップ表面より引き離す。
最後に、ステップS105で、全ての磁場検知素子の基本波信号強度に対する高調波信号強度の比の積算値或いは平均値を算出し、磁性体粒子量を算出する。算出された磁性体粒子量に基づき、測定対象物の定量を行う為には、予め磁性体粒子量に対する測定対象物の濃度を検量線として準備しておく。
〔実施例1〕
センサチップは0.6umCMOSプロセスにより作製した。感磁面の大きさが約5μm角のホール素子を約15μmピッチで16×16個のアレイとして配置し、アレイ選択回路とホール素子からの信号を増幅する増幅回路を配置した。
次にセンサチップ表面に直径が2.8umのダイナル社製磁性体粒子(商品名:DYNABEADS)を結合させた。これを図1に示すような分析器本体6に挿入し測定を行った。コイル61によりセンサチップ面で磁場強度が直流成分が10kA/m、交流成分が10kA/m(実効値)、交流成分の周波数が625Hzとなるように設定した。基本波信号強度に対する2次高調波信号強度の比を求め、16×16個のホール素子についての前記信号強度の比の平均値を各磁性体粒子量対してプロットしたものが図8である。ここで磁性体粒子量は16×16個のアレイ領域内に結合した磁性体粒子量であり、ホール素子上だけでなくホール素子間上に結合したものも含まれる。図から明らかなように数個から約1万個の磁性体粒子が検出できている。
4 金属配線
5 カートリッジ
6 分析器本体
11 シリコン基板
13 凹部
30 ゲート電極
61 コイル
62 磁性体コア
63 表示装置
65 コネクタ
91 固相
93 第1の分子受容体
94 測定対象物
95 第2の分子受容体
Mg 磁性体粒子
Claims (6)
- 測定対象物と特異的に結合した磁性体粒子の量を測定することにより、前記測定対象物を分析するバイオセンサにおいて、
前記磁性体粒子に向けて少なくとも一部の磁性体粒子の磁化が飽和状態となるような振幅であり且つ単一の周波数からなる交流磁場のみを発生する磁場発生手段と、
前記磁場発生手段により発生した磁場と前記磁性体粒子とにより形成される磁束の磁束密度を検出し、その磁束密度に応じた磁束密度信号を出力する半導体ホール素子からなる磁場検出手段と、
前記磁場検出手段により出力される磁束密度信号の内、前記交流磁場の周波数の3次の高調波成分を抽出する高調波成分抽出手段と、
前記高調波成分抽出手段により抽出された高調波成分の振幅の大きさに基づいて、前記磁性体粒子を定量する定量手段と、を備えることを特徴とするバイオセンサ。 - 測定対象物と特異的に結合した磁性体粒子の量を測定することにより、前記測定対象物を分析するバイオセンサにおいて、
前記磁性体粒子に向けて、少なくとも一部の磁性体粒子の磁化が飽和状態となるような直流磁場と、前記直流磁場の2倍以下の振幅であり且つ単一の周波数の交流磁場と、を発生する磁場発生手段と、
前記磁場発生手段により発生した磁場と前記磁性体粒子とにより形成される磁束の磁束密度を検出し、その磁束密度に応じた磁束密度信号を出力する半導体ホール素子からなる磁場検出手段と、
前記磁場検出手段により出力される磁束密度信号の内、前記交流磁場の周波数の2次の高調波成分を抽出する高調波成分抽出手段と、
前記高調波成分抽出手段により抽出された高調波成分の振幅の大きさに基づいて、前記磁性体粒子を定量する定量手段と、を備えることを特徴とするバイオセンサ。 - 前記定量手段は、前記交流磁場の周波数である基本波の振幅を基準とした、前記高調波成分の振幅の大きさに基づいて、定量することを特徴とする請求項1又は2に記載のバイオセンサ。
- 前記高調波成分抽出手段がフーリエ変換部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のバイオセンサ。
- 前記高調波成分抽出手段から入力される周波数スペクトルの全高調波成分にわたって出現しているノイズを基に、前記交流磁場の周波数の基本波と前記高調波成分抽出手段で抽出する高調波とのノイズを推定しそれぞれのノイズを除去するノイズ除去部を有することを特徴とする請求項4に記載のバイオセンサ。
- 前記磁場検出手段が複数の磁場検知素子がX行Y列(X及びYは自然数である)の2次元に配置されてなる磁気センサであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のバイオセンサ。
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