JP4691720B2 - 新規アントシアニジングルコシル基転移酵素遺伝子 - Google Patents

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Description

本発明は、グルコシル基をアントシアニジンの5位の水酸基へ転移させる活性及び/又はグルコシル基をアントシアニジン5-グルコシドの3位の水酸基へ転移させる活性を有するタンパク質をコードする遺伝子及びその利用に関するものである。
植物色素の中で最も多く見られるものがアントシアニンであり、アントシアニンは淡青色から濃赤色まで多くの色を呈する。産業的にも植物の色は最も重要な形質の一つであり、花色の多様化や果実の発色の良さ、着色の安定化・均一化などに見られるように花卉類、果樹類、野菜類において大きな経済的要因となっている。直接、目で確認できる形質であるアントシアニンによる発色は多くの遺伝学、生化学、分子生物学的研究の対象となり、今日ではアントシアニンを含むフラボノイドを含めて、フラボノイド生合成系に関わる遺伝子がペチュニア、キンギョソウ、アラビドプシス等の花卉類やリンゴ、ブドウなどの果実類、ナス、シソ等の野菜類からクローニングされている。また、アントシアニン発現の仕組みが天然物化学及び生理学的解析によって解明されつつある。
これまでに500種近くのアントシアニンが様々な植物種から報告されている。アントシアニジンはアントシアニンの骨格を成すアグリコンであるが、そのままでは植物体内に存在せず、必ず配糖体化された形(アントシアニン)で存在する。配糖体化されることによりアントシアニジンは無毒なアントシアニンになって安定化し、また、水溶性になるので細胞の液胞内に溶けるようになる。アントシアニンは液胞内でフラボン/フラボノールなどの補助色素や金属イオンと分子内会合や分子間会合、金属イオンとの配位結合によって複雑な色素高分子を形成し各植物固有の色を呈する。それ故、アントシアニジンの配糖体化はアントシアニンを形成する最初の反応として重要であり、その後の発色にとって必須の化学反応である。
アントシアニンの水酸基に結合する糖残基はC環の3位、A環の5位、7位、B環の3'位、5’位などに見られるが、これらの糖残基が結合する順序は様々な植物種による報告によって種を越えた植物共通の反応経路であると考えられている。アントシアニジンの水酸基の配糖体化はC環の3位から始まることは多くの植物で知られており、このことから配糖体化の最初の反応過程として一般に認識されている。バラにおいては3位と5位の水酸基に糖残基が結合し、3位から5位の順序で配糖体化が起こると考えられているが、バラの配糖体化を行う糖転移酵素は酵素学的にも分子生物学的にも未だ見つけられていない。
アントシアニジンの3位水酸基へ糖残基を転移させる反応を触媒する酵素(糖転移酵素(配糖体化酵素))の遺伝子はトウモロコシからトランスポゾンを用いて始めて単離された(Fedoroff et al.,(1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81: 3825-3829)。その後、この遺伝子をプローブとして他の植物種から、同種の糖転移酵素の遺伝子が単離されている(Wise et al., (1990) Plant Mol. Biol. 14: 277-279, Ford et al., (1998) J. Biol. Chem. 273: 9224-9233, Yamazaki et al., (2002) Plant Mol. Biol. 48: 401-411)。また、アントシアニンの5位水酸基にグルコース残基を転移させる反応を触媒する酵素の遺伝子は赤シソからディファレンシャル・ディスプレイ法を用いて始めて単離された(特許文献1, Yamazaki et al., (1999) J. Biol. Chem. 274: 7405-7411)。また、この遺伝子を用いてペチュニアからも見つけられた(Yamazaki et al., (2002) Plant Mol. Biol. 48: 401-411)。他のフラボノイドの糖転移酵素がクローン化された例も幾つか報告がある。フラボノールの3位水酸基へガラクトース残基を転移させる反応を触媒する酵素の遺伝子(Mato et al., (1998) Plant Cell Physiol. 39: 1145-1155, Miller et al., (1999) J. Biol. Chem. 274: 34011-34019)、フラボンの7位水酸基にグルコース残基を転移させる反応を触媒する酵素の遺伝子(Hirotani et al., (2000) Planta 210: 1006-1013)、そして、フラボノールの4'位または7位にグルコース残基を転移させる反応を触媒するベタニジン5位糖転移酵素の遺伝子(Vogt et al., (1997) Planta 203: 349-361, Vogt, (1999) Plant J. 19: 509-519)が挙げられる。また、B環の3’位にグルコース残基を転移させる反応を触媒する酵素の遺伝子がリンドウ(特許文献2)から見出されている。アントシアニジンの異なる二カ所の水酸基へ逐次的にグルコース残基を転移させる反応を触媒する酵素の遺伝子としては、3位から5位の水酸基へ逐次的に糖残基を転移させる反応を触媒する酵素の遺伝子がリンドウから単離されている(特許文献3)。バラでは糖残基を転移させる反応を触媒する酵素は今まで知られておらず、酵素の活性が測定されたことも、酵素が精製されたことも、遺伝子がクローン化されたこともない。その大きな原因としてバラの花弁にはタンニン類や他の二次代謝物質が多く存在しており、他の植物で成功した方法を用いても単離が困難であったことがあげられる。また、現在までに約7,000種以上のバラが作出されているが、その赤色のバラ花弁にはアントシアニンであるシアニジンの3位と5位がグルコース残基により配糖体化されたシアニジン3,5-ジグルコシドが普遍的に含まれており、逆に3位のみが配糖体化されたシアニジン3-グルコシドのみを有するバラは報告されていない。
国際公開第99/05287号パンフレット 国際公開第01/92509号パンフレット 特開平10-113184
本発明は、グルコシル基を転移させる活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、好ましくは、既知の順序とは異なる順序でアントシアニジンの5位及び3位の水酸基にグルコシル基を転移させる活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を得ることを課題とした。本発明で得られたグルコシル基転移活性を有するタンパク質をコードする遺伝子あるいは同様の遺伝子を植物に導入して、発現させることにより、蓄積するフラボノイド化合物の種類を改変して、花色や果実などの植物体の発色変換をすることが可能になる。また、バラにおいては本遺伝子を用いたRNAi法、遺伝子破壊法等による遺伝子発現制御と、これまでに報告のあるアントシアニンにおける既知の修飾酵素(糖転移酵素(配糖体化酵素)、アシル化酵素)を遺伝子導入することで、本来バラには存在し得なかったアントシアニンをバラ花弁中で生産させ、これまでにない花色のバラを作出することができる。
本発明者は、アントシアニジンの5位の水酸基へグルコシル基を転移させた後、3位の水酸基へグルコシル基を転移させる反応を触媒する酵素をバラの花弁から見出し、その遺伝子をクローニングした。糖転移酵素に共通して存在する塩基配列に基づき合成した縮重プライマーを用いたRT-PCRを行いcDNA断片の増幅し、その塩基配列を決定した。得られた塩基配列情報を基に遺伝子のタンパク質コード領域をRT-PCRによってクローン化した。得られたクローンの機能解析は大腸菌の組換えタンパク質合成系を利用して得られたタンパク質を用い、その酵素活性を解析した。本発明は、以上の知見に基づき完成されたものである。
即ち、本発明は、以下の〔1〕〜〔16〕を提供するものである。
〔1〕本発明の第一は、グルコシル基をアントシアニジンの5位の水酸基へ転移させる活性及び/又はグルコシル基をアントシアニジン5-グルコシドの3位の水酸基へ転移させる活性を有するタンパク質をコードする遺伝子である。
〔2〕本発明の第二は、以下の(a)〜(d)のタンパク質をコードする〔1〕記載の遺伝子である。
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において一個又は複数個のアミノ酸が付加、欠失及び/又は他のアミノ酸により置換されているアミノ酸配列を有するタンパク質、
(c)配列番号2に記載のアミノ酸配列に対して20%以上の相同性を示すアミノ酸配列を有するタンパク質、
(d)配列番号2に記載のアミノ酸配列に対して70%以上の相同性を示すアミノ酸配列を有するタンパク質、
〔3〕本発明の第三は、配列番号1に記載の塩基配列で表される核酸、又は配列番号2に記載のアミノ酸配列をコードする核酸の一部又は全部に対して、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする遺伝子であって、グルコシル基をアントシアニジンの5位の水酸基へ転移させる活性及び/又はグルコシル基をアントシアニジン5-グルコシドの3位の水酸基へ転移させる活性を有するタンパク質をコードする遺伝子である。
〔4〕本発明の第四は、グルコシル基をアントシアニジンの5位の水酸基へ転移させる活性とグルコシル基をアントシアニジン5-グルコシドの3位の水酸基へ転移させる活性の両者を有するタンパク質をコードする〔1〕〜〔3〕のいずれか記載の遺伝子である。
〔5〕本発明の第五は、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の遺伝子を含んでいるベクターである。
〔6〕本発明の第六は、〔4〕に記載の遺伝子を含んでいるベクターである。
〔7〕本発明の第七は、〔5〕又は〔6〕に記載のベクターにより形質転換された宿主細胞である。
〔8〕本発明の第八は、〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の遺伝子によってコードされるタンパク質である。
〔9〕本発明の第九は、〔7〕に記載の宿主細胞を培養し、又は生育させ、その後、該宿主細胞からグルコシル基をアントシアニジンの5位の水酸基へ転移させる活性及び/又はグルコシル基をアントシアニジン5-グルコシドの3位の水酸基へ転移させる活性を有するタンパク質を採取することを特徴とする該タンパク質の製造方法である。
〔10〕本発明の第十は、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の遺伝子を用いた無細胞タンパク質合成系による該タンパク質の製造方法である。
〔11〕本発明の第十一は、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の遺伝子、又は〔5〕又は〔6〕に記載のベクターが導入され、形質転換された植物である。
〔12〕本発明の第十二は、〔11〕に記載の植物と同じ性質を有する該植物の子孫である。
〔13〕本発明の第十三は、〔11〕に記載の植物又は〔12〕に記載の該植物の子孫の組織である。
〔14〕本発明の第十四は、〔11〕に記載の植物又は〔12〕に記載の該植物の子孫の切り花である。
〔15〕本発明の第十五は、〔4〕に記載の遺伝子、又は〔6〕に記載のベクターを植物又は植物細胞に導入し、該遺伝子を発現させることによる、アントシアニジンの5位の水酸基へグルコシル基を転移させた後、3位の水酸基へグルコシル基を転移させる方法である。
〔16〕本発明の第十六は、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の遺伝子、又は〔5〕又は〔6〕に記載のベクターを植物又は植物細胞に導入し、該遺伝子を発現させることにより、植物体の花色を調節する方法である。
〔17〕本発明の第十七は、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の遺伝子を持つ植物において、該遺伝子の発現を抑制することにより、植物体の花色を調節する方法である。
以下、本発明を詳細に説明する。
(1)遺伝子
本発明の遺伝子は、グルコシル基をアントシアニジンの5位の水酸基へ転移させる活性及び/又はグルコシル基をアントシアニジン5-グルコシドの3位の水酸基へ転移させる活性を有するタンパク質をコードするものである。
本発明の遺伝子としては、例えば、以下の(A)〜(D)の遺伝子を例示できる。
(A)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有し、前記二つの酵素活性のいずれか一方又は両方を有するタンパク質をコードする遺伝子
ここで「配列番号2に記載のアミノ酸配列を有する」とは、配列番号2に記載のアミノ酸配列のみからなるタンパク質だけでなく、このようなタンパク質のN末端又はC末端側に複数のアミノ酸が付加したタンパク質をも含む趣旨である。付加するアミノ酸の個数は、上記グルコシル基転移活性を失わせない範囲であれば特に限定されないが、通常は400個以内であり、好ましくは50個以内である。
(B)配列番号2に記載のアミノ酸配列において一個又は複数個のアミノ酸が付加、欠失及び/又は他のアミノ酸により置換されているアミノ酸配列を有し、かつ前記二つの酵素活性のいずれか一方又は両方を有するタンパク質をコードする遺伝子
このような付加、欠失、置換されているアミノ酸配列を有するタンパク質は、天然のものでもよく、また、人工的なものであってもよい。付加、欠失、置換するアミノ酸の個数は上記グルコシル基転移活性を失わせない範囲であれば特に限定されないが、通常は20個以内であり、好ましくは5個以内である。
(C)配列番号2に記載のアミノ酸配列に対して一定以上の相同性を示すアミノ酸配列を有し、かつ前記二つの酵素活性のいずれか一方又は両方を有するタンパク質をコードする遺伝子
ここで「一定以上の相同性」とは、通常は20%以上の相同性、好ましくは50%以上の相同性、より好ましくは60%以上の相同性、最も好ましくは70%以上の相同性を意味する。
(D)配列番号1に記載の塩基配列で表される核酸、又は配列番号2に記載のアミノ酸配列をコードする核酸の一部又は全部に対して、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする遺伝子であって、かつ前記二つの酵素活性のいずれか一方又は両方を有するタンパク質をコードする遺伝子
ここで「核酸の一部」とは、例えば、コンセンサス配列領域の6個以上のアミノ酸配列をコードする部分などを意味する。
「ストリンジェントな条件」とは、特異的なハイブリダイゼーションのみが起き、非特異的なハイブリダイゼーションが起きないような条件をいい、例えば、温度が50℃、塩濃度が5×SSC(又はこれと同等の塩濃度)といった条件である。なお、適切なハイブリダイゼーション温度は、核酸の塩基配列やその核酸の長さによって異なり、例えば、アミノ酸6個をコードする18塩基からなるDNAフラグメントをプローブとした場合には50℃以下の温度が好ましい。
この様なハイブリダイゼーションによって選択される遺伝子としては、天然の遺伝子、例えば、植物由来の遺伝子、特にバラ由来の遺伝子が挙げられる。また、ハイブリダイゼーションによって選択される遺伝子はcDNAであってもよく、ゲノムDNAであっても良い。
上記遺伝子のうち、天然に存在するものは、後述する実施例に示すように、cDNAライブラリーのスクリーニング等により得ることができる。また、天然には存在しない遺伝子も部位特異的変異誘発法やPCR法などを利用することにより得ることができる。
(2)ベクター
本発明のベクターは、既知の発現ベクターに(1)の遺伝子を挿入することにより作製できる。
ここで使用する既知の発現ベクターは、適当なプロモーター、ターミネーター、複製起点等を含有するものであれば特に限定されない。プロモーターは、例えば、細菌中で発現させるのであれば、trcプロモーター、tacプロモーター、lacプロモーター等が使用でき、酵母中で発現させるのであれば、グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼプロモーター、PH05プロモーター等が使用でき、糸状菌中で発現させるのであれば、アミラーゼプロモーター、trpCプロモーター等が使用でき、動物細胞中で発現させるのであれば、SV40アーリープロモーター、SV40レートプロモーター等が使用できる。
(3)形質転換された宿主細胞
本発明における形質転換された宿主細胞とは、(2)のベクターにより形質転換された宿主細胞である。
宿主細胞は、原核生物、真核生物のいずれでもよい。原核生物としては、例えば、大腸菌(Escherichia coli)、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)等を用いることができる。真核生物としては、酵母、糸状菌などのほか、動物及び植物の培養細胞を使用することができる。酵母としては、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)等を例示でき、糸状菌としては、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)等を例示でき、動物細胞としては、マウス、ハムスター、サル、ヒト、カイコ等の培養細胞を例示できる。
(2)のベクターにより形質転換する方法は特に限定されず、常法に従って行うことができる。
(4)タンパク質
上記(1)の遺伝子によってコードされるタンパク質も本発明に含まれる。このタンパク質は、例えば、後述する(5)の方法によって製造することができる。
(5)タンパク質の製造方法
本発明のタンパク質の製造方法は、(3)の宿主細胞を培養し、又は生育させ、その後、該宿主細胞からグルコシル基をアントシアニジンの5位の水酸基へ転移させる活性及び/又はグルコシル基をアントシアニジン5-グルコシドの3位の水酸基へ転移させる活性を有するタンパク質を採取すること、もしくは無細胞タンパク質合成系などによるタンパク質の製造を特徴とするものである。
宿主細胞の培養又は生育は、その宿主細胞の種類に応じた方法に従って行うことができる。また、無細胞タンパク質合成系によるタンパク質の製造は常法に従って行うことができる。
タンパク質の採取は常法に従って行うことができ、例えば、培養物等から濾過、遠心分離、細胞の破砕、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー等により回収、精製することにより、目的のタンパク質を得ることができる。
(6)植物
本発明の植物は、上記(1)の遺伝子又は(2)のベクターが導入され形質転換されたものである。
遺伝子等の導入対象とする植物は特に限定されず、例えば、バラ、キク、シネラリア、キンギョソウ、シクラメン、ラン、トルコギキョウ、フリージア、ガーベラ、グラジオラス、カスミソウ、カランコエ、ユリ、ペラルゴニウム、ゼラニウム、ペチュニア、チューリップ、イネ、オオムギ、コムギ、ナタネ、ポテト、トマト、ポプラ、バナナ、ユーカリ、サツマイモ、ダイズ、アルファルファ、ルーピン、トウモロコシ、カリフラワー、ロベリア、リンゴ、ブドウ、モモ、カキ、スモモ、柑橘類、などを挙げることができる。
(7)植物の子孫
上記(6)の植物の子孫も本発明に含まれる。
(8)植物等の組織
上記(6)の植物又は(7)の植物の子孫の組織も本発明に含まれる。
(9)植物等の切り花
上記(6)の植物又は(7)の植物の子孫の切り花も本発明に含まれる。
(10)グルコシル基の転移方法
本発明のグルコシル基の転移方法は、上記(1)の遺伝子のうちグルコシル基をアントシアニジンの5位の水酸基へ転移させる活性とグルコシル基をアントシアニジン5-グルコシドの3位の水酸基へ転移させる活性の両者を有するタンパク質をコードするもの、又は上記(2)のベクターのうちグルコシル基をアントシアニジンの5位の水酸基へ転移させる活性とグルコシル基をアントシアニジン5-グルコシドの3位の水酸基へ転移させる活性の両者を有するタンパク質をコードする遺伝子を含んでいるものを、植物又は植物細胞に導入し、該遺伝子を発現させることによる、アントシアニジンの5位の水酸基へグルコシル基を転移させた後、3位の水酸基へグルコシル基を転移させるものである。
(11)花色の調節方法
本発明の花色の調節方法は、上記(1)の遺伝子又は(2)のベクターを植物又は植物細胞に導入し、該遺伝子を発現させることにより、あるいは、上記(1)の遺伝子を持つ植物において、該遺伝子の発現を抑制することにより、植物体の花や果実の色を調節するものである。遺伝子導入の対象とする植物は特に限定されず、例えば、上記(6)で例示した植物を使用できる。また、(1)の遺伝子の抑制対象とする植物は(1)の遺伝子を持つ植物であれば特に限定されない。
(1)の遺伝子の導入及び発現は常法に従って行うことができる。また、(1)の遺伝子の発現抑制も常法(例えば、アンチセンス法やコサプレッション法やRNAi法)に従って行うことができる。
本発明により得られた遺伝子の発現産物を用いることにより、アントシアニジンの5位の水酸基へグルコシル基を転移させた後、3位の水酸基へグルコシル基を転移させることができる。これにより、花や果実などアントシアニンの蓄積により発色している植物組織の改変を行うことが可能になる。
以下実施例に従って、本発明をさらに詳細に説明する。
〔実施例1〕 酵素反応の基質及び標準化合物の調製
(1)植物材料の調製
バラ‘クリムソングローリー’(Rosa hybrida cv. Crimson Glory)(広島バラ園)の苗を、10号ポリポットに移植してガラス温室にて育苗した。その後、アントシアニン抽出に用いた‘クリムソングローリー’の開花花弁は35℃で通風乾燥した後、アントシアニン抽出に用いるまで真空デシケーター内で保存した。
(2)基質および反応産物の決定
酵素反応基質および反応産物の同定は、薄層クロマトグラフィー(TLC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析による標準物質とのコクロマトグラフィーおよび分光学的手法により行った。シアニジン、シアニジン3-グルコシド、シアニジン3,5-グルコシドは市販品(フナコシ(株)製)を用いた。
(3)シアニジン5-グルコシドの単離
バラ乾燥花弁(後述のHPLC(520nm)分析の結果、粗抽出液でシアニジン3,5-ジグルコシドを95%以上含む:生重量100g)を1Lの0.05%塩酸水溶液にて一晩常温で放置し粗抽出液を得た後、石油エーテル、クロロホルム及び酢酸エチルにより分画操作を行った。アンバーライトXAD-7(オルガノ(株)製)を充填したガラスカラム(30 mm i.d.×600 mm)を0.01%塩酸水溶液にて平衡化したのち2倍に希釈した水層画分をカラムに通し、色素を吸着させた。未吸着物質を洗浄した後、0.01%塩酸を含む80%メタノール水溶液にて色素を溶出した。溶出液は乾燥固化させた。
乾燥固化させた色素粉末を0.05%塩酸水溶液に再溶解させ、そこに12%塩酸水溶液を等量加え80℃で20分間加熱し酸加水分解を行った。加熱後、その溶液に等量のイソアミルアルコールを加え激しく攪拌後遠心し、イソアミルアルコール層を取り除いた。これを3回行った後、酢酸エチルを等量加え攪拌後、遠心し水層を分画した。
上述の方法で得られた水層から2回のペーパークロマトグラフィー(ワットマン3MM)を行うことでシアニジン5-グルコシドを単離した。有隅の方法(有隅 山口大学農学部学術報告 第18号1967年)を一部改変し、展開溶媒 2メチル-1-プロパノール:塩酸:水=5:2:4の上清を用い1回目のクロマトを行い3種類(シアニジン3-グルコシド、シアニジン5-グルコシド、シアニジン3,5-ジグルコシド)の色素画分を得た。展開後風乾させ、320nmのUV下で強い蛍光を示す画分(シアニジン5-グルコシド)を2回目のペーパークロマトグラフィーに用いた。展開溶媒 塩酸:酢酸:水=15:3:82を用い展開精製した。1種類の色素画分を得、溶出後、HPLC分析により単一に精製されたことを確認し、その後の酵素反応の基質とした。また、単一でない場合はHPLCによる分取を行った。
HPLCによる分析および分取には逆層カラム Wakosil-II5C18ARカラム(4.6 mm i.d.×250 mm)を用い、カラム温度35℃で行った。流速1ml/minにて0.5%TFA、5%アセトニトリルを含む水溶液(A)に対して5%から25%の0.5%TFAを含むアセトニトリル溶液(B)による直線的濃度勾配で20分間の溶出時間でPDAを用いて検出した。
〔実施例2〕 バラ花弁でのアントシアニンの5位及び3位にグルコシル基を転移する酵素活性の測定
0.1Mトリス-塩酸緩衝液(pH8.0)、0.5mMシアニジンまたはシアニジン5-グルコシドまたはシアニジン3-グルコシド、1mM UDP-グルコース及び粗酵素液30μlを含む反応液 50μlを30℃で反応させた。1M塩酸水溶液10μlを加えて反応を停止させ、クロロホルム:メタノール=2:1を等量加え攪拌後遠心し、上清を凍結乾燥機にて乾燥させHPLC溶媒 A/B=95:5を10μl加え再溶解後遠心し上清を分析サンプルとした。
酵素反応産物のHPLC分析は、上述の方法で行った。本条件による各化合物の溶出時間は以下のとおりである。シアニジン 3,5-ジグルコシド:6.12 分、シアニジン3-グルコシド:9.34 分、シアニジン5-グルコシド:9.72 分、シアニジン:14.17 分。
〔実施例3〕 アントシアニジン5位グルコシル基転移酵素及びアントシアニジン5-グルコシドの3位グルコシル基転移酵素の活性の検出
バラ‘クリムソングローリー’(Rosa hybrida cv. Crimson Glory)‘ローテローゼ(cv. Rote Roze)‘カールレッド’(cv. Carl Red)の花弁をそれぞれ用い、シアニジン、シアニジン5-グルコシドおよびシアニジン 3-グルコシドを基質に用いて活性測定を行った。以下の実験は0〜4℃で行った。
(1)粗酵素液の調製
バラの凍結花弁10gをポリビニルポリピロリドン(PVPP)5gと共に液体窒素存在下で乳鉢及び乳棒で磨砕した。100mlの緩衝液A(100mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)、14mM 2-メルカプトエタノール、1%ポリビニルピロリドンK-30(PVP)、100mM 塩化ナトリウム、5mM EDTA、5mM アスコルビン酸ナトリウム、10%グリセロール、0.1% Triton X-100)を加え、攪拌溶出した。抽出懸濁液を四重のガーゼにて濾過後12,000 rpmで20分間遠心した。
(2)硫安分画
濾液(約100ml)を10%飽和硫安で40分間塩析を行った後、不溶物を12,000 rpmで20分間遠心することにより除去した。70%飽和硫安で再び塩析を行い、12,000 rpmで20分間遠心することにより沈殿を得た。沈殿を最少量の緩衝液B(50mMトリス塩酸(pH 8.0)、14mM 2-メルカプトエタノール)に再溶解した後、緩衝液Bで平衡化したSephadex G-25 Fine(30 mm i.d.×500 mm;Amersham Bioscience)カラムを用いて脱塩した。タンパク質画分(約20ml)を回収して以下のクロマトグラフィーに供した。
(3)オープンカラムよる陰イオン交換樹脂の吸脱着
陰イオン交換樹脂であるDE52(ワットマン製)をカラム(30 mm i.d.×50 mm)に充填して、緩衝液Bで平衡化した。カラムへ2倍希釈した酵素溶液を添加し、緩衝液Bで洗浄後、塩化ナトリウム0.3Mを含む緩衝液Bにより溶出し、粗酵素液とした。
〔実施例4〕 粗酵素液の反応特性
上述の粗酵素液を用い酵素活性測定を行った。HPLC分析は、実施例1および2に記載の方法に従って行った。その結果、シアニジンを基質とした場合、その反応産物はシアニジン5-グルコシド、シアニジン3,5-ジグルコシドおよび極微量のシアニジン3-グルコシドであり、シアニジン3-グルコシドを基質とした場合、シアニジン3,5-ジグルコシドは得られなかった。さらに、シアニジン5-グルコシドを基質とした時シアニジン3,5-ジグルコシドが得られた。基質別の反応結果を図1に示す。つまり、これまで考えられていたアントシアニジンの3位への配糖体化、その後の5位への配糖体化という生合成(Tanaka et al., (1998) Plant Cell Physiol. 39: 1119-1126、Forkmann, (2003) in: Encyclopedia of rose science Vol.1. 256-262, Elsevier academic press, Oxford).とは逆の、最初に5位の配糖体化、そして3位の配糖体化がバラ粗酵素液で検出された。さらにバラ花弁に含まれるペラルゴニジン3,5-ジグルコシドのアグリコンであるペラルゴニジンを基質とした場合もシアニジンと同様の配糖体化反応が起こり、ペラルゴニジン3-グルコシドを基質とした場合はシアニジン3-グルコシド同様、反応産物は得られなかった。
これらの結果から、アントシアニジンの5位の水酸基に対するグルコシルトランスフェラーゼ活性を有する酵素およびアントシアニジン5-グルコシドの3位の水酸基に対するグルコシルトランスフェラーゼ活性を有する酵素がバラ花弁中には存在することが強く示唆された。なお、これらの知見はこれまで一切報告されていない。
〔実施例5〕 バラフラボノイド糖転移酵素遺伝子の遺伝子断片の増幅
(1)RNAの調製
バラ品種、クリムソングローリーの花弁から改変CTAB法(Chang et al., 1993, 向井・山本 植物細胞工学シリーズ7 pp.57-62)により全RNAを調製した。poly(A)+RNAはこの全RNA(250μg)からOligotex-dT30 super(Takara)を用い、製造者の推奨する方法にて調製した。
(2)3’RACE
調製した全RNAを99℃で2分間処理し、氷冷後、First strand cDNA synthesis kit (Pharmacia)を用い、製造者の示した方法によりcDNAを合成した。合成したcDNAを鋳型として、植物二次代謝産物配糖化酵素(Plant Secondary Product Glycosyltransferase)に高度に保存されている領域PSPG-box(Huges and Huges (1994) DNA Seq., 5: 41-49)のアミノ酸配列を基に設計した縮重プライマーGTSPFd[WCICAYTGYGGITGGAAYTC:配列番号3]及びcDNA合成に用いたNot Id(T)18に存在する配列を基に設計したNotIR1[AACTGGAAGAATTCGCGGC:配列番号4]をプライマーとし、PCR反応を行った。PCR反応液は、2μl cDNA,1x Expand HF バッファー(BOEHRINGER MANNHEIM), 0.2mM dNTPs、プライマー各1.6pmol/μl、Expand High Fidelity PCR system 酵素ミックス1.75 unitからなる総体積50μlに調製した。反応は、94℃で2分反応させた後、94℃・30秒、48℃・30秒、72℃・30秒の反応を40サイクル行い、最後に72℃で1分間処理した。得られた反応産物を0.8%アガロースゲル電気泳動し、予想されるサイズのDNA断片を回収した。回収したDNA断片を鋳型に、GTSPFd及びNot Id(T)18に存在する配列を基にNotIR1の3’側に設計したNotR2(GAACGCGGCCGCAGGAAT:配列番号5)をプライマーとしPCR反応を行った。PCR反応液は、2μl cDNA,1x Expand HF バッファー(BOEHRINGER MANNHEIM), 0.2mM dNTPs、プライマー各1.6pmol/μl、Expand High Fidelity PCR system 酵素ミックス1.75 unitからなる総体積50μlに調製した。反応は、94℃で2分反応させた後、94℃・30秒、48℃・30秒、72℃・30秒の反応を40サイクル行い、最後に72℃で1分間処理した。得られた反応産物を0.8%アガロースゲル電気泳動し、予想されるサイズのDNA断片を回収した。回収したDNA産物をpGEM Easy Tベクター(Promega)にクローニングした。このようにして得られたプラスミドのいくつかのクローンをABITM BigDyeTMTerminator cycle sequencing reaction ver.3.1(Applied Biosystem)を用いて反応し、DNA Sequencer model 3100を用いて、全塩基配列を決定した後、BLASTX 検索を行い、糖転移酵素遺伝子に相同性の認められるクローン RhGT fra.42を見出した。
(3)5’RACE
5’RACEに用いた5’末端を有するmRNAに対するcDNAはGeneRacer kit (Invitrogen) を用い、製造者の示した方法に従って合成した。合成したcDNAを鋳型にGeneRacer kitのGeneRacer 5’primer (CGACTGGAGCACGAGGACACTGA:配列番号6)及び RhGT Fra.42の内部配列に設定したプライマー42R1(TTATGCGGGCCCAACATGCC:配列番号7)を用い1st-PCRを行った。PCR反応液は、1μl cDNA、1x LA PCR Buffer II(Takara),0.2mM dNTPs、 3μl GeneRacer 5’primer (10μM)、2μl 42R1(5μM)、2mM MgCl2、Takara LA Taq 2.5 unitからなる総体積50μlに調製した。反応は、94℃で2分反応させた後、94℃・30秒、58℃・30秒、72℃・2分の反応を40サイクル行い、最後に72℃で2分間処理した。この反応液を0.8%アガロース電気泳動にかけ、増幅産物のバンドを切り出し、Qiagen Gel Extraction kit(Qiagen)により増幅産物を回収した。回収した増幅産物を鋳型にGeneRacer kitのGeneRacer 5’Nested primer 及びRhGT Fra.42の内部配列に設定したプライマー42R2(CCACAGCTGAGCCAACTTGG:配列番号8)を用いNeated-PCRを行った。PCR反応液は、1μl cDNA,1x LA PCR Buffer II(Takara),0.2mM dNTPs、1μl GeneRacer 5’primer (10μM)、2μl 42R1(5μM)、2mM MgCl2、Takara LA Taq 2.5 unitからなる総体積50μlに調製した。反応は、94℃で2分反応させた後、94℃・30秒、58℃・30秒、72℃・2分の反応を40サイクル行い、最後に72℃で2分間処理した。この反応液を0.8%アガロース電気泳動にかけ、増幅産物のバンドを切り出し、Qiagen Gel Extraction kit(Qiagen)により増幅産物を回収した。得られたPCR産物をpGEM Easy Tベクター(Promega)にクローニングした。このようにして得られたプラスミドのいくつかのクローンをABITM BigDyeTMTerminator cycle sequencing reaction ver.3.1(Applied Biosystem)を用いて反応し、DNA Sequencer model 3100を用いて、全塩基配列を決定した後、DNASISを用い、コードされるアミノ酸配列を推定した。
〔実施例6〕RhGT Fra.42の全タンパク質コード領域のクローニング及び大腸菌における組換えタンパク質の発現
(1)RhGT Fra.42の全タンパク質コード領域のクローニング
実施例5によって得られたクローンの塩基配列から予想されるタンパク質コード領域をPCRにより増幅後、大腸菌発現用pETベクターにクローニングした。全RNAに対するcDNAをFirst strand cDNA synthesis kit(Pharmacia)を用い、製造者の推奨する方法にてNot I dTプライマーを用い逆転写反応を行い合成した。大腸菌発現用pET30Ek/LIC(Novagen)にクローニングするための配列と実施例5で得られた塩基配列から予想されるタンパク質の開始コドンを含むプライマーRhGTFd(GACGACGACAAGATGGGTGGTGATGCTATAGTTTG:配列番号9)及び終始コドンを含むプライマーRhGTRv(GAGGAGAGCCCGGTTCATTTTTGCTTCCACAGCTGAGCC:配列番号10)を製造者の推奨する方法に従って合成した。PCR反応液は2μl cDNA,1x Expand HF バッファー(BOEHRINGER MANNHEIM), 0.2mM dNTPs、プライマー各1.6pmol/μl、Expand High Fidelity PCR system 酵素ミックス1.75 unitからなる総体積50μlに調製した。反応は、94℃で2分反応させた後、94℃・30秒、55℃・30秒、72℃・2分の反応を40サイクル行い、最後に72℃で2分間処理した。得られた反応産物を0.8%アガロースゲル電気泳動し、増幅産物をQIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen)を用いてゲルからDNAを精製した。得られたDNAをpET30Ek/LIC(Novagen)に製造者の推奨する方法に従って連結した後、大腸菌JM109に形質転換して幾つかのクローンをT7 プロモーター、T7ターミネータープライマーを用い、BigDye Terminator Ver. 3.1を用いたCycle Sequencing Reactionを行った後、ABI3100 Genetic Analyserを用いて塩基配列の決定を行った。塩基配列の決定を行ったpETクローンのうちpETRhGT1は1,422塩基対(この塩基配列を配列番号1に示す。)からなり、473アミノ酸残基(このアミノ酸配列を配列番号2に示す。)からなるタンパク質をコードしていた。このpETRhGT1を用いて機能解析を行った。
(2)組換えタンパク質の発現
pETRhGT1を大腸菌BL21(DE3)(Novagen)に形質転換した。形質転換株はカナマイシン30μg/mlを含むLB培地3mlで37℃で一晩振盪培養した。この培養液500μlをカナマイシン30μg/mlを含むLB培地に加え、600nmにおける吸光度が0.4に達するまで振盪培養した後、イソプロピル-β-D-チオガラクトシド(IPTG)を最終濃度0.4mMになるように添加し、22℃で12時間振盪培養した後、冷却遠心(8000rpm, 4℃, 20分間)して菌体を回収した。
〔実施例7〕 pETRhGT1 cDNAがコードするタンパク質の酵素活性測定
(1)組換えタンパク質の抽出
組換えタンパク質の抽出には、菌体のペレットを、1mlの溶解緩衝液(pH8.0)(100mMトリス塩酸、300mM塩化ナトリウム、14mM 2-メルカプトエタノール0.1% Protease and Phosphatase Inhibitor Cocktails (SIGMA社製))に再懸濁し、超音波破砕機により破壊し、冷却遠心機で分離した。上清を組換えタンパク質液とし、酵素活性測定に用いた。
(2)組換えタンパク質の酵素活性測定と酵素反応産物の同定
組換えpETRhGT1タンパク質を用い酵素反応を行った。組換えタンパク質液30μlを用い〔実施例2〕と同様の方法で行った。HPLCによる分析には逆層カラム Wakosil-II5C18ARカラム(4.6 mm i.d.×250 mm)を用い、カラム温度35℃で行った。流速1ml/minにて0.5%TFA、5%アセトニトリルを含む水溶液に対して5%から20%の0.5%TFAを含むアセトニトリル溶液による直線的濃度勾配で20分間の溶出時間でPDAを用いて検出した。基質別の反応結果を図2に示す。標準物質とのコクロマトグラフィー分析により、反応産物をそれぞれシアニジン3,5-ジグルコシド及びシアニジン5-グルコシドと同定した。さらにシアニジン3-グルコシドを基質とした場合、その反応産物は得られなかった。本条件による各化合物の溶出時間は以下のとおりである。シアニジン 3,5-ジグルコシド:6.31 分、シアニジン3-グルコシド:9.85 分、シアニジン5-グルコシド:10.68 分、シアニジン:16.34 分。以上の結果より、pETRhGT1クローンの組換え酵素はUDP-glucose: cyanidin 5-O-glucosyltransferase及びUDP-glucose: cyanidin 5-O-glucoside 3-O-glucosyltransferase活性の両方を持つことがあきらかになった。従って、RhGT1遺伝子はアントシアニジンの5位及び3位の水酸基に逐次グリコシル基を転移する活性がある、UDP-glucose:anthocyanidin 5,3-O-glucosyltransferaseをコードしていることが確認された。
バラ花弁抽出酵素液による基質別[A. Cy(Cyanidin), B. Cy5G(Cyanidin 5-O-glucoside), C. Cy3G(Cyanidin 3-O-glucoside)]の反応結果を示す。 糖転移酵素活性の認められた1クローンの基質別[D. Cy(Cyanidin), E. Cy5G(Cyanidin 5-O-glucoside), F. Cy3G(Cyanidin 3-O-glucoside)]の反応結果を示す。

Claims (15)

  1. グルコシル基をアントシアニジンの5位の水酸基へ転移させる活性及び/又はグルコシル基をアントシアニジン5-グルコシドの3位の水酸基へ転移させる活性を有するタンパク質をコードする遺伝子であって、以下の(a)〜(b)のタンパク質をコードする遺伝子、
    (a)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質、
    (b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において一個又は数個のアミノ酸が付加、欠失及び/又は他のアミノ酸により置換されているアミノ酸配列を有するタンパク質。
  2. グルコシル基をアントシアニジンの5位の水酸基へ転移させる活性とグルコシル基をアントシアニジン5-グルコシドの3位の水酸基へ転移させる活性の両者を有するタンパク質をコードする請求項1に記載の遺伝子。
  3. 請求項1に記載の遺伝子を含んでいるベクター。
  4. 請求項2に記載の遺伝子を含んでいるベクター。
  5. 請求項3又は4に記載のベクターにより形質転換された宿主細胞。
  6. 請求項1又は2に記載の遺伝子によってコードされるタンパク質。
  7. 請求項5に記載の宿主細胞を培養し、又は生育させ、その後、該宿主細胞からグルコシル基をアントシアニジンの5位の水酸基へ転移させる活性及び/又はグルコシル基をアントシアニジン5-グルコシドの3位の水酸基へ転移させる活性を有するタンパク質を採取することを特徴とする該タンパク質の製造方法。
  8. 請求項1又は2に記載の遺伝子を用いた無細胞タンパク質合成系による該タンパク質の製造方法。
  9. 請求項1若しくは2に記載の遺伝子、又は請求項3若しくは4に記載のベクターが導入され、形質転換された植物であって、花又は果実の発色が変換された植物。
  10. 請求項9に記載の植物の子孫であって、花又は果実の発色が変換されているという性質を有する該植物の子孫。
  11. 請求項9に記載の植物又は請求項10に記載の該植物の子孫の組織。
  12. 請求項9に記載の植物又は請求項10に記載の該植物の子孫の切り花。
  13. 請求項2に記載の遺伝子、又は請求項4に記載のベクターを植物又は植物細胞に導入し、該遺伝子を発現させることによる、アントシアニジンの5位の水酸基へグルコシル基を転移させた後、3位の水酸基へグルコシル基を転移させる方法。
  14. 請求項1又は2に記載の遺伝子、又は請求項3又は4に記載のベクターを植物又は植物細胞に導入し、該遺伝子を発現させることにより、植物体の花色を調節する方法。
  15. 請求項1又は2に記載の遺伝子を持つ植物において、該遺伝子の発現を抑制することにより、植物体の花色を調節する方法。
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