JP4418865B2 - 新規グルコシル基転移酵素遺伝子 - Google Patents

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Description

本発明はフラボノイド(好ましくはアントシアニン)の二カ所の水酸基にグルコシル基を逐次転移する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子及びその利用に関するものである。
花卉の育種において花色は最も重要な形質の一つであり、花色の多様化は新たな花卉類の需要を拡大する経済的効果を生み出す。目で確認できる形質である花色は多くの遺伝学、生化学、分子生物学的研究の対象となり、今日では花色を担うフラボノイド、特にアントシアニン生合成系に関わる遺伝子がペチュニア、キンギョソウ、アラビドプシス等からクローニングされている。また、花色発現の仕組みが天然物化学及び生理学的解析によって解明されつつある。従って、現在の技術レベルを持ってすれば、従来の育種法では不可能であった新奇な花色や着色パターンを有する新品種や、園芸産業において重要な品目となっているバラ、キク、ユリ等に存在しない花色である青色系の花色を有する品種を分子育種することが可能であると考えられる。
リンドウ、トルコギキョウ、アサガオ、ロベリア、バーベナ、シネラリア等の植物種におけるアントシアニンの蓄積による発色は、基本的にアントシアニンのアグリコン(ペラルゴニジン、シアニジン、ペオニジン、デルフィニジン、ペチュニジン、マルビジン等)の違いに起因し、デルフィニジン系色素の蓄積が青色発現に有効であることが知られている。一方で、ペチュニア、デルフィニウム、チョウマメなどの植物における花色発色の違いは、アントシアニジンへの糖残基及びアシル基の結合様式および結合残基数の違いに起因している。特に芳香族有機酸によるアントシアニン分子のアシル化は、アグリコンと芳香族アシル基の分子内会合によって吸収極大の長波長側へのシフトが起きることから、紫色から青色の発色要因となる。
この芳香族アシル基はアントシアニン・アグリコンに直接結合せず、多くの場合、アントシアニジンに結合しているグルコースなどの糖残基に結合する。エゾリンドウのアントシアニンB環の3'位グルコシル基に結合している芳香族アシル基であるカフェオイル基、そしてチョウマメおよびデイアネラの3'位及び5'位のグルコシル基に結合している芳香族アシル基であるp-クマロイル基は、5位、7位といった他のグルコシル基に結合している芳香族アシル基よりもより近い位置でアントシアニン・アグリコンと重なっていることが報告されている(Yoshida et al., (2000) Phytochemistry 54: 85-92, Saito et al., (1985) Phytochemistry 24: 1583-1586, Terahara et al., (1996) J. Nat. Prod. 59: 139-144, Bloor (2001) Phytochemistry 58: 923-927)。従って、芳香族アシル基により修飾されることにより青色を発現する必須条件として、3'位及び5'位水酸基のグルコシル化があげられる。
B環の水酸基が配糖化されているアントシアニンの化学構造が幾つか報告されており、植物体の発色形質との関係が明らかにされている。アントシアニンB環の水酸基のうち3'位及び5'位がともに配糖化され、さらに芳香族アシル基による修飾を受けたポリアシル化デルフィニジンが蓄積することによりチョウマメの花弁(テルナチン類: Saito et al., (1985) Phytochemistry 24: 1583-1586)、ロベリアの花弁(ロベリニン: Kondo et al., (1989) Tetrahedron Lett., 30: 6055-6058)及びディアネラの果皮(Bloor (2001) Phytochemistry 58: 923-927)は、それぞれ青色に発色している。
アントシアニンB環の水酸基のうち3'位のみが配糖化されているデルフィニジンがさらに芳香族アシル基による修飾を受けたアシル化アントシアニン配糖体が蓄積することにより、リンドウ(ゲンチオデルフィン: Goto et al., (1982) Tetrahedron Lett., 23: 3695-3698)、サイネリア(シネラリン: Goto et al., (1984) Tetrahedron Lett., 25: 6021-6024)、熱帯性スイレン(Nymphaea caerulea)(Fossen and Andersen (1999) Phytochemistry 50: 1185-1188)植物組織は、それぞれ青紫色に発色している。
アントシアニンB環の水酸基のうち3'位のみが配糖化されているシアニジンがさらに芳香族アシル基による修飾を受けたポリアシル化アントシアニンが蓄積することにより、ファレノプシス(Tatsuzawa et al., (1997) Phytochemistry 45: 173-177)、デンドロビウム(Tatsuzawa et al., (1998) Phytochemistry, 51: 125-132)、レリオカトレア(Tatsuzawa et al., (1998) Phytochemistry, 51: 125-132)等のラン科の植物種においては、植物組織が赤紫色に発色している。
アントシアニンB環の水酸基のうち3'位のみがグルクロノシル基により配糖化されているポリアシル化デルフィニジン配糖体(Saito et al., (2002) Phytochemistry 60: 365-373)が蓄積することによりアネモネの植物組織は青紫色に発色している。
アントシアニンB環の水酸基のうち3'位のみが配糖化されているシアニジン(アラタニン: Yoshida et al., (1991) Tetrahedron Lett., 32: 5575-5578)が蓄積することによりダイショ(Dioscorea alata)の植物組織は赤紫色に発色している。
以上の例が示すように、B環の水酸基が配糖化された後に糖残基が芳香族アシル基によってさらに修飾されることで植物体の発色はより青色になる。これらのアントシアニンは全て天然物化学および分光学的手法により構造決定がなされているが、生化学的及び分子生物学的解析が行われているのは、エゾリンドウのアントシアニジンであるデルフィニジンのB環の水酸基のうち3'位のみをグルコシル化する反応を触媒する酵素タンパク質をコードする遺伝子のみである(特許文献1)。
他のフラボノイドの糖転移酵素がクローン化された例は幾つか報告がある。アントシアニジンの3位水酸基へ糖残基を転移する反応を触媒する酵素の遺伝子(Wise et al., (1990) Plant Mol. Biol. 14: 277-279, Ford et al., (1998) J. Biol. Chem. 273: 9224-9233, Yamazaki, M. et al., (2002) Plant Mol. Biol. 48: 401-411)、フラボノールの3位水酸基へガラクトース残基を転移する反応を触媒する酵素の遺伝子(Mato et al., (1998) Plant Cell Physiol. 39: 1145-1155, Miller et al., (1999) J. Biol. Chem. 274: 34011-34019)、アントシアニンの5位水酸基にグルコース残基を転移する反応を触媒する酵素の遺伝子(特許文献2, Yamazaki, M. et al., (1999) J. Biol. Chem. 274: 7405-7411, Yamazaki, M. et al., (2002) Plant Mol. Biol. 48: 401-411)、フラボンの7位水酸基にグルコース残基を転移する反応を触媒する酵素の遺伝子(Hirotani et al., (2000) Planta 210: 1006-1013)、そして、フラボノールの4'位または7位にグルコース残基を転移する反応を触媒するベタニジン5位配糖化酵素の遺伝子(Vogt, T. et al., (1997) Plant 203: 349-361, Vogt, T., (1999) Plant J. 19: 509-519)が挙げられる。
この様に既知の酵素遺伝子は1カ所の水酸基に対して一つの糖残基を転移する反応を触媒する酵素をコードしている。しかしながら、異なる二カ所の水酸基へ逐次的に糖残基を転移する反応を触媒する酵素及び遺伝子に関する報告はなく、また酵素の活性が測定されたことも、酵素が精製されたことも、遺伝子がクローン化されたこともない。
一方、フラボノイドB環の3'位及び5'位を逐次的に水酸化するフラボノイド3',5'位水酸化酵素のクローン化(Holton et al., (1993) Nature 366: 276-279, Toguri, T. (1993) Nielsen and Podivinsky (1997) Plant Sci. 129: 167-174, Kaltenbach, M. (1999) Plant J. 19: 183-193, )、及びアントシアニンB環の3'位及び5'位水酸基を逐次的にメチル化するアントシアニン3',5'位メチル基転移酵素のクローン化(Cacace et al., (2003) Phytochemistry 62: 127-137)が報告されている。
チョウマメの藤色花系統の主要色素はデルフィニジン3-(6-マロニル)グルコシドであり、アントシアニンのB環のグルコシル基転移酵素遺伝子における変異が要因となって、野生型の青色から藤色へと変異している(2002年日本農芸化学会大会要旨集4-2Aa18、2002年、第44回天然物有機化合物討論会要旨集 pp445-450、2002年日本園芸学会秋季大会p200)。この様な例から、アントシアニンの3'位水酸基及び5'位水酸基へ逐次的に糖を転移する活性を有するタンパク質を用いるとアントシアニンの修飾により花の色を変えることができることは明らかであったが、この酵素の性質は明らかではなく、酵素が精製されたり、その遺伝子がクローニングされたこともなかった。
国際公開第01/92509号パンフレット 国際公開第99/05287号パンフレット
本発明は、グルコシル基を転移する活性をもつタンパク質をコードする遺伝子、好ましくは、フラボノイド(アントシアニン)B環の3'位及び5'位水酸基にグルコシル基を逐次的に転移する活性をもつタンパク質をコードする遺伝子を得ることを課題とした。本発明で得られたグルコシル基転移活性をもつタンパク質をコードする遺伝子あるいは同様の遺伝子を植物に導入して、発現させることにより、蓄積するフラボノイドの種類を改変して、花色などの植物体の発色変換することが可能になる。
本発明者は、アントシアニンの3'位及び5'位水酸基に糖を逐次的に転移する反応を触媒する酵素をチョウマメの青色花弁から見いだし、その活性をもつタンパク質をチョウマメの青色花弁から精製した。精製酵素タンパク質の内部部分アミノ酸配列を決定することにより、そのアミノ酸配列をコードする塩基配列を推定し、合成した縮重プライマーを用いたRT-PCRを行ってcDNA断片の増幅を行い、さらにRACE-PCRを行うことにより、遺伝子の5'領域及び3'領域の増幅を行った。PCRで増幅したcDNA断片をプローブに用いてチョウマメ花弁由来cDNAライブラリをスクリーニングすることにより全長をコードするcDNAをクローニングするに至った。得られたクローンの機能解析は大腸菌の組換えタンパク質合成系を利用して得られた酵素液を用いて行った。
本発明は、以上の知見に基づき完成されたものである。
即ち、本発明の第一は、フラボノイドB環の水酸基へ逐次グルコシル基を転移する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子である。
本発明の第二は、上記遺伝子を含んでいるベクターである。
本発明の第三は、上記ベクターにより形質転換された宿主細胞である。
本発明の第四は、上記遺伝子によってコードされるタンパク質である。
本発明の第五は、上記宿主細胞を培養し、又は生育させ、その後、該宿主細胞からフラボノイドB環の水酸基へ逐次グルコシル基を転移する活性を有するタンパク質を採取することを特徴とする該タンパク質の製造方法である。
本発明の第六は、上記遺伝子又はベクターが導入され形質転換された植物である。
本発明の第七は、上記植物と同じ性質を有する該植物の子孫である。
本発明の第八は、上記植物又は該植物の子孫の組織である。
本発明の第九は、上記植物又は該植物の子の切り花である。
本発明の第十は、上記遺伝子又はベクターを植物又は植物細胞に導入し、該遺伝子を発現させることによる、フラボノイドB環の水酸基へ逐次グルコシル基を転移させる方法である。
本発明の第十一は、上記遺伝子又はベクターを植物又は植物細胞に導入し、該遺伝子を発現させることにより、あるいは上記遺伝子を持つ植物において、該遺伝子の発現を抑制することにより、植物体の花の色を調節する方法である。
以下、本発明を詳細に説明する。
(1)遺伝子
本発明の遺伝子は、フラボノイドB環の水酸基へ逐次グルコシル基を転移する活性を有するタンパク質をコードするものである。
ここで「フラボノイド」とは、主としてアントシアニンを意味するが、アントシアニン以外のフラボノイド、例えば、カルコン、オーロン、フラボン、イソフラボン、フラボノール、フラバノンなども含む。
本発明の遺伝子としては、例えば、以下の(A)〜(D)の遺伝子を例示できる。
(A)配列番号2に記載のアミノ酸配列を有し、かつフラボノイドB環の水酸基へ逐次グルコシル基を転移する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子
ここで「配列番号2に記載のアミノ酸配列を有する」とは、配列番号2に記載のアミノ酸配列のみからなるタンパク質だけでなく、このようなタンパク質のN末端又はC末端側に複数のアミノ酸が付加したタンパク質をも含む趣旨である。付加するアミノ酸の個数は、上記グルコシル基転移活性を失わせない範囲であれば特に限定されないが、通常は400個以内であり、好ましくは50個以内である。
(B)配列番号2に記載のアミノ酸配列において一個又は複数個のアミノ酸が付加、欠失及び/又は他のアミノ酸により置換されているアミノ酸配列を有し、かつフラボノイドB環の水酸基へ逐次グルコシル基を転移する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子
このような付加、欠失、置換されているアミノ酸配列を有するタンパク質は、天然のものでもよく、また、人工的なものであってもよい。付加、欠失、置換するアミノ酸の個数は上記グルコシル基転移活性を失わせない範囲であれば特に限定されないが、通常は20個以内であり、好ましくは5個以内である。
(C)配列番号2に記載のアミノ酸配列に対して一定以上の相同性を示すアミノ酸配列を有し、かつフラボノイドB環の水酸基へ逐次グルコシル基を転移する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子
ここで「一定以上の相同性」とは、通常は20%以上の相同性、好ましくは50%以上の相同性、より好ましくは60%以上の相同性、最も好ましくは70%以上の相同性を意味する。
(D)配列番号1に記載の塩基配列で表される核酸、又は配列番号2に記載のアミノ酸配列をコードする核酸の一部又は全部に対して、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする遺伝子であって、かつフラボノイドB環の水酸基へ逐次グルコシル基を転移する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子
ここで「核酸の一部」とは、例えば、コンセンサス配列領域の6個以上のアミノ酸配列をコードする部分などを意味する。
「ストリンジェントな条件」とは、特異的なハイブリダイゼーションのみが起き、非特異的なハイブリダイゼーションが起きないような条件をいい、例えば、温度が50℃、塩濃度が5×SSC(又はこれと同等の塩濃度)といった条件である。なお、適切なハイブリダイゼーション温度は、核酸の塩基配列やその核酸の長さによって異なり、例えば、アミノ酸6個をコードする18塩基からなるDNAフラグメントをプローブとした場合には50℃以下の温度が好ましい。
この様なハイブリダイゼーションによって選択される遺伝子としては、天然のもの、例えば植物由来のもの、例えばロベリアやディアネラ由来の遺伝子が挙げられるが、植物以外の由来であっても良い。また、ハイブリダイゼーションによって選択される遺伝子はcDNAであってもよく、ゲノムDNAであっても良い。
上記遺伝子のうち、天然に存在するものは、後述する実施例に示すように、cDNAライブラリーのスクリーニング等により得ることができる。また、天然には存在しない遺伝子も部位特異的変異誘発法やPCR法などを利用することにより得ることができる。
(2)ベクター
本発明のベクターは、既知の発現ベクターに(1)の遺伝子を挿入することにより作製できる。
ここで使用する既知の発現ベクターは、適当なプロモーター、ターミネーター、複製起点等を含有するものであれば特に限定されない。プロモーターは、例えば、細菌中で発現させるのであれば、trcプロモーター、tacプロモーター、lacプロモーター等が使用でき、酵母中で発現させるのであれば、グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼプロモーター、PH05プロモーター等が使用でき、糸状菌中で発現させるのであれば、アミラーゼプロモーター、trpCプロモーター等が使用でき、動物細胞中で発現させるのであれば、SV40アーリープロモーター、SV40レートプロモーター等が使用できる。
(3)形質転換された宿主細胞
本発明における形質転換された宿主細胞とは、(2)のベクターにより形質転換された宿主細胞である。
宿主細胞は、原核生物、真核生物のいすれでもよい。原核生物としては、例えば、大腸菌(Escherichia coli)、バチルス・スブシルス(Bacillus subtilis)等を用いることができる。真核生物としては、酵母、糸状菌などのほか、動物及び植物の培養細胞を使用することができる。酵母としては、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)等を例示でき、糸状菌としては、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)等を例示でき、動物細胞としては、マウス、ハムスター、サル、ヒト、カイコ等の培養細胞を例示できる。
(2)のベクターにより形質転換する方法は特に限定されず、常法に従って行うことができる。
(4)タンパク質
上記(1)の遺伝子によってコードされるタンパク質も本発明に含まれる。このタンパク質は、例えば、後述する(5)の方法によって製造することができる。
(5)タンパク質の製造方法
本発明のタンパク質の製造方法は、(3)の宿主細胞を培養し、又は生育させ、その後、該宿主細胞からフラボノイドB環の水酸基へ逐次グルコシル基を転移する活性を有するタンパク質を採取することを特徴とするものである。
宿主細胞の培養又は生育は、その宿主細胞の種類に応じた方法に従って行うことができる。
タンパク質の採取は常法に従って行うことができ、例えば、培養物等から濾過、遠心分離、細胞の破砕、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー等により回収、精製することにより、目的のタンパク質を得ることができる。
(6)植物
本発明の植物は、上記(1)の遺伝子又は(2)のベクターが導入され形質転換されたものである。
遺伝子等の導入対象とする植物は特に限定されず、例えば、バラ、キク、カーネーション、キンギョソウ、シクラメン、ラン、トルコギキョウ、フリージア、ガーベラ、グラジオラス、カスミソウ、カランコエ、ユリ、ペラルコニウム、ゼラニウム、ペチュニア、トレニア、チューリップ、イネ、オオムギ、コムギ、ナタネ、ポテト、トマト、ポプラ、バナナ、ユーカリ、サツマイモ、ダイズ、アルファルファ、ルーピン、トウモロコシ、カリフラワー、ロベリアなどを挙げることができる。
(7)植物の子孫
上記(6)の植物の子孫も本発明に含まれる。
(8)植物等の組織
上記(6)の植物又は(7)の植物の子孫の組織も本発明に含まれる。
(9)植物等の切り花
上記(6)の植物又は(7)の植物の子孫の切り花も本発明に含まれる。
(10)グルコシル基の転移方法
上記(1)の遺伝子又は(2)のベクターを植物又は植物細胞に導入し、該遺伝子を発現させることによる、フラボノイドB環の水酸基へ逐次グルコシル基を転移させる方法も本発明に含まれる。
(11)花の色の調節方法
本発明の花の色の調節方法は、上記(1)の遺伝子又は(2)のベクターを植物又は植物細胞に導入し、該遺伝子を発現させることにより、あるいは、上記(1)の遺伝子を持つ植物において、該遺伝子の発現を抑制することにより、植物体の花の色を調節するものである。
(1)の遺伝子の導入及び発現は常法に従って行うことができる。また、(1)の遺伝子の発現抑制も常法(例えば、アンチセンス法やコサプレッション法やRNAi法)に従って行うことができる。
本発明により得られた遺伝子の発現産物を用いることにより、アントシアニンのB環の水酸基二カ所を逐次配糖化させることが出来る。これにより、花などアントシアニンの蓄積により発色している植物組織の改変を行うことが可能になる。
以下実施例に従って、本発明をさらに詳細に説明する。
〔実施例1〕 酵素反応の基質及び標準化合物の調製
(1)植物材料の調製
チョウマメ‘ダブルブルー’(Clitoria ternatea cv. Double blue)(サカタのタネ)および藤色花系統を常法により無菌播種して発根させた後、9cmポリポットに移植してガラス温室にて育苗した。その後、6号または7号の素焼鉢に移植して生育させた。フラボノイド抽出に用いた‘ダブルブルー’の開花花弁は50℃で通風乾燥した後、フラボノイド抽出に用いるまで真空デシケーター内で保存した。藤色花系統の開花花弁は、液体窒素にて瞬間的に凍結し、フラボノイド抽出に用いるまで-80℃で保存した。
(2)各基質および反応産物標品の構造決定
各基質および反応産物標品の構造決定はエレクトロスプレイイオン化質量分析計(ESI-MS)(Bruker Daltonics Esquire3000またはPerlkin Elmer Sciex API-300)および400MHz核磁気共鳴スペクトロメーター(JEOL α-400)を用いた。
(3)デルフィニジン3-(6”-マロニル)グルコシドの単離
デルフィニジン3-(6”-マロニル)グルコシドは藤色花系統のチョウマメ花弁から抽出して精製した。藤色花系統の花弁(生重量212g)を1%トリフルオロ酢酸(TFA)を含む50%メタノールで3回抽出し、約1Lの抽出液を得た。抽出液をロータリーエバポレーターで250mLまで濃縮後、分液漏斗を用いてまずクロロホルム続いて酢酸エチルでそれぞれ3回ずつ抽出して脂溶性物質を取り除いた。水溶性画分をさらにセファデックスLH-20(Pharmacia)を充填したガラスカラム(20 mm i.d.×600 mm)を用いて0.05M TFA水溶液に対してアセトニトリル(MeCN)を20から80%の直線濃度勾配で添加し、約10時間かけて溶出した。溶出液はMeCNの濃度が、5から20、20から30、30から36、36から53、53から80%の5画分に分け取った(それぞれ、フラクションAからEとする)。フラクションBとCはアントシアニンといくつかのフラボノール配糖体が含まれていた。フラクションA、D、Eはフラボノール配糖体とフェノール性物質が含まれていた。アントシアニン類は、Deverosil ODS-10/20(20 mm i.d.×250 mm, 野村化学)カラムを用い、0.05M TFA水溶液に対してMeCNを5から40%の直線濃度勾配(2時間)で添加して溶出し、溶出した化合物を分取した。フラクションBの高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、デルフィニジン3-(2”-ラムノシル-6”-マロニル)グルコシド(8.9 mg)、デルフィニジン3-(2”-ラムノシル)グルコシド(4.2 mg)、デルフィニジン3-グルコシド(8.5 mg)を得た。また、フラクションCのHPLCにより、デルフィニジン3-(6”-マロニル)グルコシド(58.1 mg)、デルフィニジン3-グルコシド(26.0 mg)を得た。
(4)デルフィニジン3-(6”-マロニル)グルコシドのマロニル基転移酵素固定化カラムを用いた合成
デルフィニジン3-グルコシド-6”-マロニル基転移酵素をDEAE TOYOPEARL FPLCにより粗精製し、濃縮した(500μL、タンパク質量:2.14 mg)。次に、あらかじめ1mM HClで膨潤後カップリングバッファー(8.4 mg/mL炭酸水素ナトリウム、29 mg/mL塩化ナトリウム水溶液)で洗浄したCH-Sepharose (Pharmacia、乾燥重量0.35 g)を4mLのカップリングバッファーに懸濁した。タンパク質濃縮液に500μLのカップリングバッファー500μLを加え1mLとした後CH-Sepharose懸濁液に加え、室温で5時間振とうした。遠心分離して回収したCH-Sepharoseを5mLのブロッキングバッファー(30 mg/mL グリシン水溶液(pH 8.3))中で2時間振とうして未反応の反応基をブロックした。カップリングバッファー、洗浄バッファー(29 mg/mL塩化ナトリウム含有0.1mM酢酸バッファー(pH 7.0))、0.5M NaCl含有3.02 mg/mLトリス(pH 7.0)水溶液で順次洗浄した。洗浄後の6”-マロニル基転移酵素固定化CH-Sepharoseは、6”-マロニル基転移酵素活性を有していた。
脱脂綿で栓をしたパスツールピペットに、あらかじめ100mMリン酸バッファー(pH 7.5)で平衡化した6”-マロニル基転移酵素固定化CH-Sepharoseを約1mLつめた。同時にもうひとつのパスツールピペットに0.05M TFAを含む5%MeCNであらかじめ平衡化したSephadex LH-20を約1mLつめ、CH-Sepharoseカラムとほぼ同じ流速が得られるように調整した。また、漏斗内で酸性にしたアントシアニン溶液からアントシアニンをトラップするために、2つのカラムの溶出液を同時に受ける適当な大きさの漏斗に、あらかじめ0.05M TFAを含む5%MeCNで平衡化したSep-Pak C18 Plus (Waters)をつなげ、溶出液を受けた。吸着したアントシアニンを0.05M TFAを含む40%MeCNで溶出し、減圧下ロータリーエバポレーターで濃縮した。濃縮されたサンプルは、HPLCで分取した。HPLCの条件は、Deverosil ODS-10/20(20 mm i.d.×250 mm, 野村化学)カラムを用い、0.05M TFA水溶液に対してMeCNを10から35%の直線濃度勾配(40分)で添加して4 mL/分で溶出した。デルフィニジン3-グルコシド・TFA塩(580μg, 1000 nmol)から変換したデルフィニジン3-(6”-マロニル)グルコシド・TFA塩(201μg, 303 nmol)及び、未反応のデルフィニジン3-グルコシド・TFA塩(245μg, 423 nmol)を回収した。
(5)デルフィニジン3-(6”-マロニル)グルコシドの分子構造の同定
単離及び合成したデルフィニジン3-(6”-マロニル)グルコシドの構造は、LC/MSデータ、マススペクトル、及び400MHz 1H核磁気共鳴スペクトルから同定した。単離及び合成したデルフィニジン3-(6”-マロニル)グルコシドは、Hibiscus syriacusの花弁粗抽出物(Kim et al., (1989) Phytochemistry 28: 1503-1506.)のHPLCで検出されるデルフィニジン3-(6”-マロニル)グルコシドのピークとコクロマトグラフィーで一致した。HPLC条件は、Deverosil ODS-5-UG(3.0 i.d.×250 mm, 野村化学)カラムを用い、0.05M TFA水溶液に対してMeCNを10から35%の直線濃度勾配(45分)で添加して溶出し、PDA検出器で検出した。また、これらのESI-MSスペクトルデータは、m/z 551 [M+H]+に分子イオンが観測され、そのMS/MSスペクトルはm/z 507 [M-CO2+H]+, 465 [M-malonyl+H]+と303 [M-malonylglucosyl+H]+が観測されたことから、マロン酸とグルコース、デルフィニジンの存在が推定された。さらに、単離したデルフィニジン3-(6”-マロニル)グルコシドの、Methanol-d4-10%-TFA-d溶液中における400MHz 1H核磁気共鳴スペクトルは、報告されている値とよい一致を示した(Kidoy et al., (1997) Journal of Food Composition and Analysis 10: 49-54)。これらのことから単離及び合成したアントシアニンの構造をデルフィニジン3-(6”-マロニル)グルコシドと同定した。
(6)デルフィニジン3-(6”-マロニル)グルコシド-3’-グルコシド及びデルフィニジン3-(6”-マロニル)グルコシド-3’,5’-ジグルコシド(テルナチンC5)の酵素合成
デルフィニジン3-(6”-マロニル)グルコシド-3’-グルコシドは、チョウマメ‘ダブルブルー’の花弁由来粗酵素液を用いて、デルフィニジン3-(6”-マロニル)グルコシド及びUDP-グルコース(Sigma)を基質にして酵素合成した。さらに、デルフィニジン3-(6”-マロニル)グルコシド-3’,5’-ジグルコシドは、チョウマメ‘ダブルブルー’の花弁由来粗酵素液を用いて、デルフィニジン3-(6”-マロニル)グルコシド及びUDP-グルコース(Sigma)を基質にして酵素合成した。
デルフィニジン3-(6”-マロニル)グルコシド・TFA塩(17.30 mg)を16.2 mLの0.05M TFAを含む40%MeCN水溶液に溶解した(1.29 mM)。UDP-グルコースは水に溶解して5mM水溶液とした。酵素反応は81バッチに分けて行い、1バッチの反応溶液は、400μLの粗酵素-1mMリン酸バッファー溶液(pH 7.5)(6.0 mg protein/mL)、100μLの1mMリン酸バッファー(pH 7.5)、100μLの蒸留水、200 μLのUDP-グルコース水溶液、及び200μLのデルフィニジン3-(6”-マロニル)グルコシド溶液で構成されている。酵素反応は酵素溶液を添加することにより開始した。反応は30℃で10分間行い、200μLの1M HClを反応溶液に加えて停止させた。81バッチの酵素反応溶液を回収してまとめ、0.45μmのディスクフィルターで濾過後、濾液を予め0.05M TFAを含む5%MeCNで平衡化したSep-Pak C18 Plus(Waters)に通した。吸着したアントシアニン成分を0.05M TFAを含む40%MeCNで溶出し回収した。この溶出液を濃縮後、アントシアニンの濃度が約10mg/mLとなるようにサンプルを調整しHPLCで繰り返し分取した。HPLCの条件は、Deverosil ODS-10/20(20 mm i.d.×250 mm, 野村化学)カラムを用い、0.05M TFA水溶液に対してMeCNを10から35%の直線濃度勾配(40分)で添加して4 mL/分で溶出した。反応溶液中のアントシアニンの溶出時間は以下のとおりである。デルフィニジン3-(6”-マロニル)グルコシド-3’-グルコシド:33.1 分、デルフィニジン3-グルコシド:34.0 分、デルフィニジン3-(6”-マロニル)グルコシド:38.7 分、デルフィニジン3-(6”-マロニル)グルコシド-3’,5’-ジグルコシド(テルナチンC5):27.8 分、デルフィニジン3, 3’-ジグルコシド:28.5 分。単離した各化合物を凍結乾燥したところ、それらの重量(TFA塩)は、デルフィニジン3-(6”-マロニル)グルコシド-3’-グルコシド:6.44 mg、デルフィニジン3-グルコシド:3.05 mg、デルフィニジン3-(6”-マロニル)グルコシド:5.66 mg、デルフィニジン3-(6”-マロニル)グルコシド 3’,5’-ジグルコシド(テルナチンC5):2.78 mg、デルフィニジン3,3’-ジグルコシド:1.06 mgであった。
(7)デルフィニジン3-(6”-マロニル)グルコシド-3’-グルコシドの分子構造の決定
デルフィニジン3-(6”-マロニル)グルコシド-3’-グルコシドの構造は、マススペクトル、UVスペクトル及び400MHz 1H核磁気共鳴スペクトルを解析して決定した。高分解能MALDI-TOF-MSスペクトルで、m/z 713.1563 [M+H]+に分子イオンピークが観測されたことから、組成式はC30H33O20(計算分子量713.1565)と決定された。ESI-MSスペクトルにおいてもm/z 713 [M+H]+が観測されたほか、m/z 713のms/msスペクトルでm/z 669 [M-CO2+H]+, 627 [M-malonyl+H]+, 551 [M-glucosyl+H]+, 465 [M-malonyl-glucosyl+H]+,および303 [M-malonyl-2×glucosyl+H]+が観測された。従って、酵素反応の過程及び基質の構造から、マロニル基と2つのグルコシル基の存在が明らかになった。
UVスペクトルはλmax (logε): 531 (4.46), 348 (3.48), 278 (4.22)であり、アントシアニンに特徴的なスペクトルであった。UVシフト試薬としてAlCl3を加えた場合、531 nmの吸収が569 nmまで長波長シフトしたことから、アントシアニンB環においてフリーの水酸基がオルト位に配置していることが推定された。
Methanol-d4-10%-TFA-d溶液中の1H NMRスペクトルにおいてデルフィニジンB環H-2’及びH-6’由来のシグナルは、3’位の水酸基が置換されたために2’位及び6’位が非対称となりδH 8.05とδH 7.94にそれぞれ観測された。また、2つのグルコースに由来するアノメリックプロトンがδH 5.24とδH 5.01に観測された。1次元NOE差スペクトルにおいて、これらのアノメリックプロトンのシグナルを選択的に照射すると、それぞれδH 8.96 (s, H-4)及びδH 8.05 (d, J=2.1 Hz, H-2’)のシグナルの増大が認められたことから、2つのグルコースはそれぞれ3位及び3’位に結合していると決定された。マロン酸のメチレン由来のシグナルは観測できなかったが、これらはNMR溶媒中の重水素と交換することが報告されている(Kidoy et al., (1997). Journal of Food Composition and Analysis 10: 49-54)。また、3位及び3’位グルコース由来のシグナルを比較した場合、3位水酸基の6位のメチレンプロトンが大きく低磁場シフトしていること、及びデルフィニジン3-(6”-マロニル)グルコシドのスペクトルデータ(Kidoy et al.(1997) Journal of Food Composition and Analysis 10: 49-54)との類似性から、マロン酸は3位グルコースの6位に結合していると決定された。デルフィニジン骨格及びグルコースの他のシグナルはデカップリング実験及び類似化合物とのシグナルの比較から同定した:δH 8.96 (s, H-4)、δH 6.68 (d, J=1.7 Hz, H-6)、δH 6.97 (d, J=1.7 Hz, H-8)、δH 8.05 (d, J=2.1 Hz, H-2’)、δH 7.94 (d, J=2.1 Hz, H-6’);3位グルコース、δH 5.24 (d, J=7.8 Hz, H-1)、δH 3.71 (dd, J=7.8, 9.1 Hz, H-2)、δH 3.55 (t, J=9.1 Hz, H-3)、δH 3.43 (dd, J=9.1, 9.4 Hz, H-4)、δH 3.80 (ddd, J=1.9, 7.2, 9.4 Hz, H-5)、δH 4.54 (dd, J=1.9, 12.0 Hz, H-6a)、δH 4.28 (dd, J=7.2, 12.0 Hz, H-6b);3’位グルコース、δH 5.01 (d, J=7.1 Hz, H-1)、δH 3.59 (dd, J=7.1, 9.6 Hz, H-2)、δH 3.55 (t, J=9.6 Hz, H-3)、δH 3.43 (t, J=9.6 Hz, H-4)、δH 3.57 (ddd, J=1.9, 5.9, 9.6 Hz, H-5)、δH 3.97 (dd, J=1.9, 12.1 Hz, H-6a)、δH 3.77 (dd, J=5.9, 12.1 Hz, H-6b)。以上のことから、デルフィニジン3-(6”-マロニル)グルコシドを基質にして、酵素によるグルコシル基転移反応の結果得られた化合物の構造は、デルフィニジン3-(6”-マロニル)グルコシド-3’-グルコシドと決定された。
(8)デルフィニジン3-(6”-マロニル)グルコシド-3’,5’-ジグルコシド(テルナチンC5)の分子構造の同定
デルフィニジン3-(6”-マロニル)グルコシド-3’,5’-ジグルコシドの構造は、LC/MS/MS、マススペクトル、UVスペクトル及び400MHz 1H核磁気共鳴スペクトルデータから同定した。高分解能MALDI-TOF-MSスペクトルで、m/z 875.2095 [M+H]+に分子イオンピークが観測されたことから、組成式はC36H43O25(計算分子量875.2094)と決定され、デルフィニジン3-(6”-マロニル)グルコシド-3’,5’-ジグルコシドの組成式と一致した。ESI-MSスペクトルにおいてもm/z 875 [M+H]+が観測されたほか、m/z 875のms/msスペクトルで831 [M-CO2+H]+, 789 [M-malonyl+H]+, 713 [M-glucosyl+H]+, 669 [M-glucosyl- CO2+H]+, 627 [M-malonyl -glucosyl +H]+, 551 [M-2×glucosyl+H]+, 465 [M-malonyl -2×glucosyl +H]+, および303 [M-malonyl-3×glucosyl +H]+が観測された。このことはデルフィニジン3-(6”-マロニル)グルコシド-3’,5’-ジグルコシドの部分構造から推定されるフラグメントパターンとよく一致している。
UVスペクトルはλmax (logε): 517 (4.16), 274 (4.21)であり、アントシアニンに特徴的なスペクトルであった。UVシフト試薬としてAlCl3を加えた場合、デルフィニジン3-(6”-マロニル)グルコシド-3’-グルコシドでは観測された第一吸収体(517 nm)の長波長シフトが観測されなかった。このことは、デルフィニジン3-(6”-マロニル)グルコシド-3’,5’-ジグルコシドの構造で、デルフィニジンB環3’位及び5’位がグルコシル化されていることからオルト位に配置したフリーの水酸基がもはや存在せず、従ってアルミニウムイオンが配位できなくなったと考えられる。
Methanol-d4-10%-TFA-d溶液中の1H NMRスペクトルでは、化学的に等価なH-2’とH-6’由来のシングレット(2H)を含むデルフィニジン骨格由来のシグナル及び1つのアシル化されたグルコシル基が観測された他に、化学的に等価な2つのグルコシル基由来のシグナルが観測された。化学的に等価な2つのグルコシル基の存在は、デルフィニジン3-(6”-マロニル)グルコシド-3’,5’-ジグルコシドのB環部分の構造をよくあらわしている。1次元差NOE測定においてアシル化されたグルコシル基のアノメリックプロトン(δH 5.21)を照射すると、デルフィニジンアグリコンのH-4(δH 9.03)シグナルの増大が観測された。さらに、等価な2個分のグルコシル基のアノメリックプロトン(δH 5.07)を照射すると、H-2’及びH-6’(δH 8.26)シグナルの増大が観測された。これらの結果は、デルフィニジン3-(6”-マロニル)グルコシド-3’,5’-ジグルコシドの糖の結合位置と矛盾しない。デルフィニジン骨格及びグルコースの他のシグナルはデカップリング実験及び類似化合物とのシグナルの比較から同定した:δH 9.03 (s, H-4)、δH 6.70 (bs, H-6)、δH 7.06 (bs, H-8)、δH 8.26 (s, H-2’及びH-6’);3位グルコース、δH 5.21 (d, J=7.7 Hz, H-1)、δH 3.70 (dd, J=7.7, 9.0 Hz, H-2)、δH 3.54 (t, J=9.0 Hz, H-3)、δH 3.43 (t, J=9.0 Hz, H-4)、δH 3.77 (ddd, J=1.8, 7.1, 9.0 Hz, H-5)、δH 4.54 (dd, J=1.8, 12.0 Hz, H-6a)、δH 4.29 (dd, J=7.1, 12.0 Hz, H-6b);3’及び6’位グルコース、δH 5.07(d, J=7.4 Hz, H-1)、δH 3.59 (dd, J=7.4, 9.0 Hz, H-2)、δH 3.55 (t, J=9.0 Hz, H-3)、δH 3.43 (t, J=9.0 Hz, H-4)、δH 3.55 (ddd, J=2.3, 6.1, 9.0 Hz, H-5)、δH 3.95 (dd, J=2.3, 12.1 Hz, H-6a)、δH 3.75 (dd, J=6.1, 12.1 Hz, H-6b)。以上のことから酵素的にデルフィニジン3-(6”-マロニル)グルコシドから合成された化合物の構造は、デルフィニジン-3-(6”-マロニル)グルコシド-3’,5’-ジグルコシドと同定された。
(9)アントシアニジン3-(6”-マロニル)グルコシドの酵素合成
チョウマメ‘ダブルブルー’花弁由来の粗酵素中に含まれるマロニルCoA:アントシアニジン3-グルコシド 6”-マロニル基転移酵素活性を利用して、種々のアントシアニジン3-(6”-マロニル)グルコシドをアントシアニジン3-グルコシドから酵素合成した。
予備実験として、アントシアニジン3-(6”-マロニル)グルコシドに、ペラルゴニジン、シアニジン、ペオニジン、デルフィニジン、ペチュニジン、マルビジンの3-グルコシドを選びUDP-グルコース存在下でそれぞれ酵素反応したところ、同一反応条件においてこれらのマロニル化体の生成効率は異なっていた。反応溶液は、2μLの1Mリン酸バッファー(pH 7.5)、4μLの5 mMマロニル-CoA水溶液、2μLの蒸留水、8μLの6.8 mg protein /mL粗酵素溶液と、4μLの0.05 M TFA含有40% MeCN水溶液に1 mg/mLで溶解したアントシアニジン3-グルコシド溶液で構成される。反応は30℃で15分間反応し、4μLの1 M塩酸を加えて停止した。反応産物はHPLCで分析した。HPLC条件は、Deverosil ODS-UG-5(3.0 i.d.×250 mm、野村化学)を用い、溶媒Aを0.05 M TFA含有5%MeCN水溶液、溶媒Bを0.05 M TFA含有80%MeCN水溶液とし、溶媒Aに対して溶媒Bを20分で0から70%まで直線濃度勾配をかけ、流速0.5mL/分で溶出し、検出はPDA検出器で行った。各反応溶液における3-グルコシドと3-(6”-マロニル)グルコシドの比は、ペラルゴニジンでは18.8対81.2、シアニジンでは7.7対92.3、ペオニジンでは9.2対90.8、デルフィニジンでは13.9対86.1、ペチュニジンでは26.5対73.5、マルビジンでは72.1対27.9であった。
次に、ペラルゴニジン、シアニジン、ペチュニジンの3-(6”-マロニル)グルコシドを少量分取する目的で、これらの3-グルコシドを酵素変換した。反応条件は予備実験と同一であるが、反応容積のみ50倍とした。また、このとき用いた粗酵素液のタンパク質濃度は、13 mg/mLであった。反応産物は、高速液体クロマトグラフィーで分取した。分取条件は、Deverosil ODS-10/20(20 mm i.d.×250 mm, 野村化学)カラムを用い、0.05M TFA水溶液に対してMeCNを10から35%の直線濃度勾配(40分)で添加し、流速4 mL/分で溶出した。
ペラルゴニジン3-グルコシド・塩酸塩(1.02 mg, 2.17μmol)の変換によって、ペラルゴニジン3-(6”-マロニル)グルコシド・TFA塩(1.37 mg, 2.16μmol)を得た。シアニジン3-グルコシド・塩酸塩(1.00 mg, 2.06μmol)の変換によって、シアニジン3-(6”-マロニル)グルコシド・TFA(1.02 mg, 1.57μmol)を得た。ペチュニジン3-グルコシド・塩酸塩(1.00 mg, 1.94μmol)の変換によって、ペチュニジン3-(6”-マロニル)グルコシド・TFA(0.80 mg, 1.18μmol)を得た。

さらに、シアニジン、ペチュニジンの3-(6”-マロニル)グルコシドを3’,5’-グルコシル基転移酵素の基質とする目的でより大量の酵素的合成を行った。反応条件は少量分取と同一で、10バッチに分けて反応を行った。用いた粗酵素液のタンパク質濃度は8.9 mg/mLであった。反応産物は少量分取時と同一の条件で、HPLCにより分取した。シアニジン3-グルコシド・塩酸塩(2.05 mg, 4.23μmol)から変換したシアニジン3-(6”-マロニル)グルコシド・TFA塩(1.66 mg, 2.56μmol)及び未反応のシアニジン3-グルコシド・TFA塩(0.61 mg, 1.09μmol)を回収した。ペチュニジン3-グルコシド・塩酸塩(1.95 mg, 3.79μmol)から変換したペチュニジン3-(6”-マロニル)グルコシド・TFA塩(1.08 mg, 1.59μmol)及び未反応のペチュニジン3-グルコシド・TFA塩(0.83 mg, 1.40μmol)を回収した。
(10)アントシアニジン3-(6”-マロニル)グルコシドの分子構造の同定
各反応産物の同定はLC/MSデータ及び、Hibiscus syriacusの花弁粗抽出物(Kim et al., (1989) Phytochemistry 28: 1503-1506)とのコクロマトグラフィー(PDA及びMS同時検出)により行った。HPLC条件は、Deverosil ODS-5-UG (3.0 i.d.×250 mm, 野村化学)カラムを用い、0.05M TFA水溶液に対してMeCNを10から35%の直線濃度勾配(45分)で添加して溶出し、PDA検出器及びMSで検出した。LC/MSデータ(溶出時間, [M+H]+):デルフィニジン3-グルコシド(16.4 分, m/z 465)、シアニジン3-グルコシド(19.1 分, m/z 449)、ペチュニジン3-グルコシド(20.5 分, m/z 479)、ペラルゴニジン3-グルコシド(21.7 分, m/z 433)、デルフィニジン3-(6”-マロニル)グルコシド(22.8 分, m/z 551)、ペオニジン3-グルコシド(23.3 分, m/z 463)、マルビジン3-グルコシド(24.4 分, m/z 493)、シアニジン3-(6”-マロニル)グルコシド(25.6 分, m/z 535)、ペチュニジン3-(6”-マロニル)グルコシド(26.9 分, m/z 565)、ペラルゴニジン3-(6”-マロニル)グルコシド(28.5 分, m/z 519)、ペオニジン3-(6”-マロニル)グルコシド(29.8 分, m/z 549)、マルビジン3-(6”-マロニル)グルコシド(30.8 分, m/z 579)。
(11)シアニジン及びペチュニジン3-(6”-マロニル)グルコシド-3’-グルコシドの酵素合成
チョウマメ‘ダブルブルー’花弁由来の粗酵素中に含まれるUDP-グルコース:アントシアニジン3-(6”-マロニル)グルコシド 3’-グルコシル基転移酵素活性を利用して、シアニジン及びペチュニジン3-(6”-マロニル)グルコシド-3’-グルコシドの酵素合成を行った。反応溶液は、100μLの1Mリン酸バッファー(pH 7.5)、100μLの5 mM UDP-グルコース水溶液、100μLの蒸留水、400 μLの12.1 mg protein /mL粗酵素溶液と、200 μLの0.05 M TFA含有40%MeCN水溶液に1.9 mg/mLで溶解したアントシアニジン3-(6”-マロニル)グルコシド溶液で構成される。反応は30℃で15分間行い、200 μLの1 M塩酸を加えて停止した。反応産物はHPLCで分取した。分取条件は、Deverosil ODS-10/20 (20 i.d.×250 mm, 野村化学)カラムを用い、0.05M TFA水溶液に対してMeCNを10から35%の直線濃度勾配(40分)で添加し、流速4 mL/分で溶出した。シアニジン3-(6”-マロニル)グルコシド・TFA塩(2.53 mg, 3.90μmol)から変換したシアニジン3-(6”-マロニル)グルコシド-3’-グルコシド・TFA塩(1.76 mg, 2.17μmol)及び未反応のシアニジン3-(6”-マロニル)グルコシド・TFA塩(0.75 mg, 1.16μmol)を回収した。ペチュニジン3-(6”-マロニル)グルコシド・TFA塩(1.72 mg, 2.54μmol)から変換したペチュニジン3-(6”-マロニル)グルコシド-3’-グルコシド・TFA塩(1.45 mg, 1.73μmol)および未反応のペチュニジン3-(6”-マロニル)グルコシド・TFA塩(0.43 mg, 0.63μmol)を回収した。
(12)シアニジン及びペチュニジン3-(6”-マロニル)グルコシド-3’-グルコシドの分子構造の決定
シアニジン及びペチュニジン3-(6”-マロニル)グルコシド-3’-グルコシドの分子構造は、マススペクトロメーターを用いて決定した。シアニジン3-(6”-マロニル)グルコシド-3’-グルコシドの高分解能MALDI-TOF-MSスペクトルは、m/z 697.1598 [M+H]+に分子イオンピークが観測されたことから、組成式はC30H33O19(計算分子量697.1616)と決定した。また、ペチュニジン3-(6”-マロニル)グルコシド-3’-グルコシドの高分解能MALDI-TOF-MSスペクトルは、m/z 727.1699 [M+H]+に分子イオンピークが観測されたことから、組成式はC31H35O20(計算分子量727.1722)と決定した。それぞれの組成式、基質の構造、及びアントシアニン3’,5’位グルコシル基転移酵素の反応様式を考慮するとこれらの酵素反応産物の構造は、それぞれシアニジン及びペチュニジン3-(6”-マロニル)グルコシド-3’-グルコシドと決定した。
〔実施例2〕 チョウマメ花弁でのアントシアニンの3'位及び5'位にグルコシル基を転移する酵素活性の測定
100mMリン酸緩衝液(pH 7.5)、0.4mMデルフィニジン3-(6''-マロニル)グルコシドまたはデルフィニジン3-(6''-マロニル)グルコシド-3'-グルコシド、1mM UDP-グルコース及び酵素液8μlを含む反応液20μlを30℃で反応させた。1M塩酸水溶液4μlを加えて反応を停止させ、0.05M TFA含有5%アセトニトリル24μlを加えた後、Millex-LHフィルター(Millipore)によるろ過を行って分析サンプルとした。
アントシアニン3’,5’グルコシル基転移酵素反応産物のHPLC分析は、Deverosil ODS-5-UG (3.0 i.d.×250 mm, 野村化学)カラムを用い、カラム温度30℃で行った。初期溶媒である0.05M トリフルオロ酢酸水溶液に対してアセトニトリルを10から35%の直線濃度勾配(20分)で添加して、流速0.5 mL/分で溶出後、初期溶媒で10分平衡化し、PDAを用いて検出した。本条件による各化合物の溶出時間は以下のとおりである。デルフィニジン3-(6”-マロニル)グルコシド-3’,5’-ジグルコシド(テルナチンC5):10.53 分、デルフィニジン3, 3’-ジグルコシド:9.70 分、デルフィニジン3-グルコシド:12.57 分、デルフィニジン3-(6”-マロニル)グルコシド-3’-グルコシド:13.68 分、デルフィニジン3-(6”-マロニル)グルコシド:15.86 分。
〔実施例3〕 アントシアニン3' 位グルコシル基転移酵素及び5'位グルコシル基転移酵素の精製
チョウマメ(Clitoria ternatea L. cv. Double Blue)の花弁を用い、デルフィニジン3-(6''-マロニル)グルコシドを基質に用いて活性測定を行って、3'位グルコシル基転移酵素(3'GT)の精製を行った。また、デルフィニジン3-(6''-マロニル)グルコシド-3'-グルコシドを基質に用いて活性測定を行って、5'位グルコシル基転移酵素(5'GT)の精製を行った。以下の実験は0〜4℃で行った。TSK gel DEAE-TOYOPEARL 650M(TOSOH)、Mono Q(Amersham Bioscience)及びSuperdex 75 HR(Amersham Bioscience)によるカラムクロマトグラフィーにはFPLC(Pharmacia)を用いた。
(1)粗酵素液の調製
チョウマメの凍結花弁約1 kgを液体窒素存在下で乳鉢及び乳棒で磨砕した。約2 Lの緩衝液A(100mMトリス塩酸(pH7.5)、5mM ジチオスレイトール(DTT)、10μM p-アミジノフェニルフッ化メタンスルフォニル塩酸塩(pAPMSF))、ポリビニルポリピロリドン(PVPP)50g及び適量の海砂を加えて完全に粉砕した。抽出懸濁液を7,000 rpmで10分間遠心した後、上清を四重のガーゼで濾過した。沈殿はさらに抽出緩衝液にて二回抽出を繰り返した。全ての上清を混合した後、1kgのDowex 1×2(100-200 mesh)(Muromachi Technos)を添加して15分間静置した後に、ブフナーロートを用いて濾過した。
(2)硫安分画
濾液(約5 L)を35%飽和硫安で30分間塩析を行った後、不溶物を7,000 rpmで15分間遠心することにより除去した。70%飽和硫安で再び塩析を行い、7,000 rpmで15分間遠心することにより沈殿を得た。沈殿を緩衝液B(20mMトリス塩酸(pH 7.5)、1mM DTT、10μM pAPMSF)に再溶解した後、緩衝液Bで平衡化したSephadex G-25 Fine(70 mm×40 mm i.d.;Amersham Bioscience)カラムを用いて脱塩した。タンパク質画分(約350 mL)を回収して以下のクロマトグラフィーに供した。
(3)FPLCによる陰イオン交換クロマトグラフィー
TSK gel DEAE-TOYOPEARL 650M(TOSOH)をカラム(180 mm × 16 mm i.d.)に充填して、緩衝液Bで平衡化した。カラムへ酵素溶液をアプライし、塩化ナトリウム濃度を45分間で0 mMから200 mMに変化させる直線勾配により溶出させた(流速 8 ml/分)。酵素活性のある画分を集めた(600 mL)のち、90%飽和硫安で塩析を行い、7,000 rpmで15分間遠心することにより沈殿を得た。沈殿を緩衝液C(5mM 2-[N-モルフォリノ]エタンスルフォン酸(MES)(pH 7.0)、1mM DTT、10μM pAPMSF)で再溶解し、緩衝液Cで平衡化したSephadex G-25 Fine(70 mm×40 mm i.d.;Amersham Bioscience)を用いて脱塩した後、タンパク質画分(約35 mL)を回収した。
(4)群特異的アフィニティークロマトグラフィー
REACTIVE YELLOW 86(Sigma)を2本のカラム(120 mm×10 mm i.d)に充填した後、緩衝液Cで平衡化した。各々のカラムへ酵素液をアプライし、緩衝液C 50 mLにてカラムを洗浄した。つづいて、緩衝液D 40 mL(5mM トリス塩酸(pH8.0)、1mM DTT、10μM pAPMSF、10mM ウリジン5'-ジフォスフォグルコース(UDPG;Sigma))により、アフィニティー樹脂に結合したタンパク質を溶出した。活性画分を集めてAmicon Ultra 10,000 MWC0(Millipore)により4mLまで濃縮した。濃縮した酵素溶液を緩衝液E(2mMリン酸ナトリウムカリウム緩衝液(pH7.5)、1mM DTT、10μM pAPMSF)で平衡化したPD-10(Amersham Bioscience)カラムを用いて脱塩した後、タンパク質画分(7 mL)を回収した。
(5)ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィー
Cellulofine HAP(生化学工業)をカラム(75 mm×10 mm i.d.)に充填した後、緩衝液Eで平衡化した。カラムへ酵素液をアプライし、リン酸濃度のステップワイズ勾配(2 mM, 15 mMおよび30 mM)により溶出させた。活性画分を集めてAmicon Ultra 10,000 MWC0(Millipore)により500μLまで濃縮した。濃縮した酵素溶液を緩衝液Bで平衡化したNAP-10(Amersham Bioscience)カラムを用いて脱塩した後、タンパク質画分(1.5 mL)を回収した。
(6)FPLCによる陰イオン交換クロマトグラフィー
Mono Q HR 5/5(50 mm × 5 mm i.d.;Amersham Bioscience)カラムを緩衝液Bで平衡化し、酵素液をアプライし、塩化ナトリウム濃度を60分間で0から250mMに変化させる直線勾配により溶出させた(流速1mL/分)。酵素活性のある画分を集めた(6 mL)後ULTRACENT-30(TOSOH)で約1 mLに濃縮した。これをSDS-ポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE)で分子量を解析した結果、精製3'GTおよび精製5'GTともに約51 kDaに単一のバントとして観察された。
(7)FPLCによるゲル濾過クロマトグラフィー
精製酵素タンパク質の分子量を推定するためにSuperdex 75 HR 10/30(300 mm × 10 mm i.d.;Amersham Bioscience)カラムクロマトグラフィーを行った。緩衝液F(20mM トリス塩酸(pH7.5)、1mM DTT、10μM pAPMSF、0.15M NaCl)で平衡化した後、カラムへ酵素液100 μlをアプライし(流速0.5 mL/分)、溶出液を分取した。各画分におけるグルコシル基転移酵素活性の測定結果から酵素の溶出時間を求め、分子量マーカー(GEL FILTRATION CARIBRATION KIT;Amersham Bioscience)の溶出時間と比較した。その結果、精製3'GTの推定分子量は46kDaであり、精製5'GTの推定分子量は48kDaであった。SDS-PAGEおよびゲル濾過カラムクロマトグラフィーの結果から、精製した両グルコシル基転移酵素は単量体で機能すると考えられた。
〔実施例4〕 精製酵素の基質特異性
各精製酵素のKm値を適応して基質濃度を決定し、酵素活性測定を行った。その結果、精製3'GTのデルフィニジン3-(6''-マロニル)グルコシドに対する活性を100%とした場合、5'位に水酸基がないシアニジン3-(6''-マロニル)グルコシドに対する相対活性は36%であった。エゾリンドウの3'GT(特許文献1参照)はシアニジン配糖体の3'位への配糖化活性を有さないことからチョウマメから精製した3'GTはエゾリンドウの酵素とは異なる性質を持つ酵素であることが推定された。また、既に3'位水酸基がメチル化されているペチュニジン3-(6''-マロニル)グルコシド、および3'位水酸基がグルコシル化されているデルフィニジン3-(6''-マロニル)グルコシド-3'グルコシドに対する相対活性はそれぞれ、277%および198%であったことから、精製3'GTには5'GT活性があることが示唆された。
一方、精製5'GTのデルフィニジン3-(6''-マロニル)グルコシド-3'グルコシドに対する活性を100%とした場合、既に3'位水酸基がメチル化されているペチュニジン3-(6''-マロニル)グルコシドに対する相対活性は122%であった。デルフィニジン3-(6''-マロニル)グルコシドに対する3'GT活性は55%であったことから、精製5'GTには3'GT活性があることが示唆された。
また、3位の糖がマロニル化されていない基質である、デルフィニジン3-グルコシド及びデルフィニジン3,3'-ジグルコシドに対する精製3'GT及び精製5'GTの相対活性は、それぞれ4%および3%と大幅に低下した。
これらの結果から、3'GT活性をもつ酵素および5'GT活性をもつ酵素は同一であるかまたは非常に相同な酵素であることが推定された。
〔実施例5〕 精製酵素タンパク質の内部アミノ酸配列決定
精製3'GT酵素タンパク質100 pmolを凍結乾燥した後、80μLの緩衝液G(20mM トリス塩酸(pH7.5)、10% グリセロール、1% SDS、1% β-メルカプトエタノール)に溶解し、煮沸、放冷後、SDS-PAGEにて分離した後、目的タンパク質断片をリジルエンドペプチダーゼによるゲル内消化処理を行った。逆相HPLCにより消化されたペプチドを分離してペプチドマッピングを行った。得られたピーク画分のうち6つについてプロテインシークエンサー(Procise; Applied Biosystemsなど)で各ペプチドのN末端アミノ酸配列を決定した。以下に、それぞれのペプチドのアミノ酸配列をアミノ基末端からカルボキシル基末端の方向に示す。
アミノ酸配列(lep68);Asn-Ala-Ser-Leu-Asp-Phe-Leu-Pro-Gly-Leu-Ser(配列番号3)
アミノ酸配列(lep63);Asn-Leu-Asn-Leu-Ile-Leu-Val-Gln(配列番号4)
アミノ酸番号(lep95);Ala-Val-Val-Val-Asn-Phe-Phe-Ala(配列番号5)
アミノ酸番号(lep90);Gln-Ile-Val-Gln-Asp-Ala-Ala-Gly(配列番号6)
アミノ酸番号(lep51);Gly-Ile-Glu-Leu-Ala-Val-Ala-Glu(配列番号7)
アミノ酸番号(lep56);Thr-Leu-Asn-Ser-Leu-Gly-Thr-Val(配列番号8)
〔実施例6〕 チョウマメ・アントシアニン3',5'-グルコシルトランスフェラーゼ(Ct3'5'GT)の遺伝子断片の増幅
(1)ディジェネレートプライマーの設計
実施例5で得られた部分アミノ酸配列を基に以下の縮重プライマーを合成した。
lep68_ASLDFLP-Fd:5'-GCi WSi YTi GAY TTY YTi CCi GG-3'(配列番号9)
lep68_ASLDFLP-Rv:5'-CCi GGi ARR AAR TCi ARi SWi GC-3'(配列番号10)
lep90_QIVQDAA-Fd:5'-CAR ATH GTI CAR GAY GCI GC-3'(配列番号11)
lep90_QIVQDAA-Rv:5'-GC IGC RTC YTG IAC DAT YTG-3'(配列番号12)
lep51_GIELAVAE-Fd:5'-GGI ATH GAR YTI GCI GTI GCI G-3'(配列番号13)
lep63_NLNLILVQ-Rv:5'-YTG IAC IAR DAT IAR RTT IAR RT-3'(配列番号14)
lep95_VVVNFFA-Fd:5'-GTI GTI GTI AAY TTY TTY GC-3'(配列番号15)
lep56KTLNSLGT-Fd:5'-AR CAI AAR AAY WSI AAR GGI AC-3'(配列番号16)
lep56KTLNSLGT-Rv:5'-GT ICC YTT ISW RTT YTT ITG YT-3'(配列番号17)
さらに、植物二次代謝産物配糖化酵素(Plant Secondary Product Glycosyltransferase)に高度に保存されている領域PSPG-box(Huges and Huges (1994) DNA Seq., 5: 41-49)のアミノ酸配列を基に以下の縮重プライマーを合成した。
GT-SPR (T/SHCGWNS):5'-IGA RTT CCA ICC RCA RTG IG-3'(配列番号18)
(2)一本鎖cDNAの合成
チョウマメ‘ダブルブルー’(Clitoria ternatea L. cv. Double Blue)の花弁から全RNAを改変CTAB法(Chang et al., 1993, 向井・山本 植物細胞工学シリーズ7 pp.57-62)により調製した。この全RNA50μgからOligotex-dT30 super(Takara)を用い、製造者の推奨する方法にてpoly(A)+RNAを調製した。このpoly(A)+RNAから1st strand cDNA synthesis kit(Amersham Bioscience)を用いて逆転写反応を行い、一本鎖cDNAを合成した。
(3)ディジェネレートRT-PCR
チョウマメ花弁由来一本鎖cDNAを鋳型にし、(1)の縮重プライマーを組み合わせて、ディジェネレートRT-PCRを行った。PCRは、94℃3分反応の後、94℃30秒、50℃45秒、72℃80秒を1サイクルとし、35サイクル反応を行った後、さらに72℃10分反応させた。得られた反応産物を0.8%アガロースゲル電気泳動し、予想されるサイズのDNA断片を回収した後、pGEM-T easy vector kit(Promega)をもちいてTAクローニングし、JM109に形質転換した。得られた幾つかのクローンからQIAprep Spin miniprep kit(Qiagen)を用いてプラスミドを抽出し、サイクルシークエンス反応に用いた。反応産物をABI3100ジェネティックアナライザー(Applied Biosystems)で解析して塩基配列を決定し、各クローンの推定アミノ酸配列に、精製3'GTの内部アミノ酸配列の存在を確認した。
(4)Rapid Amplification of cDNA Ends(RACE)-PCRによる5'及び3'領域の単離
Degenerate PCRにより得られたcDNA断片に特異的なプライマーを合成した。cDNAライブラリーのファージストックを鋳型にして、以下のプライマーを用いてRACE-PCRを行い、5'及び3'領域の増幅を行った。
3'-RACE-PCRにはプライマーとして、T7 promoter primer(5'-GTA ATA CGA CTC ACT ATA GGG C-3')、CtBGT1F:5'-CTT TTG GCC CTC AGT GAA AGT C-3'(配列番号19)及びCtBGT2F:5'-TAC CGC CAC AAG AAG TTG TAG AGG TC-3'(配列番号20)を用いた。
5'-RACE-PCRにはプライマーとしてSK primer(5'-CGC TCT AGA ACT AGT GGA TC-3')、CtBGT1R:5'-GAC TTT CAC TGA GGG CCA AAA G-3'(配列番号21)、CtBGT2R:5'-GAC CTC TAC AAC TTC TTG TGG CGG TA-3'(配列番号22)、及びCtBGT3R:5'-ACC CCA TTG GAA ATA CTC TCA G-3'(配列番号23)を用いた。
PCRは94℃30秒、60℃45秒、72℃90秒を1サイクルとし、30サイクル行い、得られた反応産物を0.8%アガロースゲル電気泳動し、予想されるサイズのDNA断片を回収した後、pGEM-T easy vector kit(Promega)をもちいてTAクローニングし,JM109に形質転換した。得られた幾つかのクローンからQIAprep Spin miniprep kit(Qiagen)を用いてプラスミドを抽出し、サイクルシークエンス反応に用いた。反応産物をABI3100ジェネティックアナライザー(Applied Biosystems)で解析して塩基配列を決定し、各クローンの推定アミノ酸配列に、精製3'GTの内部アミノ酸配列の存在を確認した。
〔実施例7〕 Ct3'5'GTのcDNAのクローニング
(1)cDNAライブラリの作製
チョウマメ‘ダブルブルー’(Clitoria ternatea L. cv. Double Blue)の花弁5.2 gから全RNAを改変CTAB法(Chang et al., 1993)により調製した。この全RNA250μgからOligotex-dT30 super(Takara)を用い、製造者の推奨する方法にてpoly(A)+RNAを調製した。
得られたpoly(A)+RNAから5 μgを鋳型としてZAP-cDNA Synthesis Kit(Stratagene)を用いて二本鎖cDNAを合成し、サイズ分画した後、ファージベクターλZAPIIへのクローニングを行った。さらにGigapack III Gold Packaging Extraction Kit(Stratagene)を用いて、製造者が推奨する方法でλファージcDNAライブラリーを作製した。
(2)cDNAクローンの単離
チョウマメ花弁由来ファージライブラリのプラークリフトはHybond N+ ナイロンメンブレン(Amersham)を用いて作製し、UVでクロスリンクさせた。このフィルターをハイブリダイゼーション緩衝液(5×SSC, 0.5%SDS, 5×デンハルト液)、10μg/mlサケ精子DNA中で60℃で2時間保持した。5'RACEで得られたクローンの全長をプローブにするために、RediPrime II Kit(Amersham)を用いてα32P-dCTPで標識したのち、Qucick Spin Column G25(Roche)を用いて未反応のアイソトープを除去した。プローブをハイブリダイゼーション液中に加えて、さらに60℃で15時間以上のインキュベーションを行った後、洗浄(2×SSC, 1%SDS, 60℃, 20分間)を二回行い、さらに ×SSC, 0.1% SDS及び0.1×SSC, 0.1% SDSで65℃で各10分間ずつ洗浄した。陽性クローンの検出はバイオイメージ解析装置BAS1000(Fuji)でおこなった。二次スクリーニングを経て得られた12個の陽性クローンについて製造者の推奨する方法に従ってin vivo excisionをおこなって、pBluescript SKに変換した後、大腸菌SOLRに組換えた。
(3)酵素遺伝子の塩基配列解析
DNAの塩基配列の決定法は特に限定されるもにではないが、PCRを利用した方法により行った。例えばApplied Biosystems社製の蛍光ダイデオキシターミネーターを含有するBig Dye Terminator Ver. 3.1等を用いて反応を行い、Applied Biosystem社製のオートシークエンサー(例えばABI3100)で塩基配列を決定した。サイクルシークエンス反応には-21M13プライマー、M13Rvプライマー、CtBGT1遺伝子内部配列プライマー5種(配列番号19-23)及び内部配列プライマーCtBGT3F:5'-AAT TGC GCG TTG AGG ATG-3'(配列番号24)、CtBGT4R:5'-TCC AAG GAA CAT TGA GGG-3'(配列番号25))を用いた。
ライブラリーをスクリーニングして単離した12クローンのうち最長の2クローン(pBSCtBGT1DB04及び24)について塩基配列を決定した結果、pBSCtBGT1DB04は、447アミノ酸からなる分子量48.6kDaのタンパク質をコードする1497bpの遺伝子CtBGT1を含んでいた。pBSCtBGT1DB24は、447アミノ酸からなる分子量48.6kDaのタンパク質をコードする1594bpの遺伝子CtBGT1を含んでいた。
CtBGT1遺伝子の推定アミノ酸配列は、FASTAによる相同性解析の結果、Vigna mungoのflavonol 3-O-galactosyltransferaseをコードするクローン(GenBank accession no. AB009370)と60%、Vitis vinifera cv. ShirazのUDP glucose:flavonoid 3-O-glucosyltransferaseをコードするクローン(GenBank accession no. AF000371)と43 %、Petunia x hybridaのUDP-galactose:flavonol 3-O-galactosyltransferaseをコードするクローン(GenBank accession no. AF165148)と 42.7%の相同性を示した。
〔実施例8〕 Ct3'5'GT cDNAがコードするタンパク質の酵素活性測定
(1)pETベクターの構築
CtBGT1遺伝子の発現にはpET30Ek/LIC System(Novagen)を用いて行った。まず、CtBGT1クローンのORF cDNAを増幅するためのプライマーである、pECtBGTF1(5'-gac gac gac aag ATG GAA AAC AAT AAG CAT GTC GT-3'(配列番号26))及びpECtBGTR1(5'-gag gag aag ccc ggt TTA GCT AGA GGA AAT CAT TTC CAC-3'(配列番号27))を用いてPCR反応を行った。
チョウマメ‘ダブルブルー’花弁由来の全RNAから1st strand cDNA synthesis kit (Amesham)を用いて製造者の推奨する方法に従って一本鎖cDNAを合成した。PCR反応液は一本鎖cDNA溶液、1×ExTaqバッファー(Takara)、0.2mM dNTPs混合液(Takara)、プライマー各 0.4pmol/μl、ExTaq DNAポリメラーゼ(Takara)1Uからなる総量50μlに調整した。反応は、95℃で分間反応させた後、95℃・30秒、55℃・45秒、72℃・90秒の反応を30サイクル行い、最後に72℃で7分間処理した。得られたPCR産物を0.8%アガロースゲル電気泳動により分画した後、目的とするサイズのバンドを切り出した。QIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen)を用いてゲルからDNAを精製した。得られたDNAをpET30Ek/LIC(Novagen)に製造者の推奨する方法に従って連結し、pETCtBGT1を得た。得られたpETCtBGT1を大腸菌JM109に形質転換して幾つかのクローンをT7 プロモーター、T7ターミネータープライマー、CtBGT1遺伝子内部配列プライマー7種(配列番号19-25)を用い、BigDye Terminator Ver. 3.1を用いたCycle sequencing Reactionを行った後、ABI3100 Genetic Analyserを用いて塩基配列の決定を行って、PCRによる変異が入っていないことを確認した。塩基配列の決定を行ったpETクローンのうちpETCtBGT1DB3を用いて機能解析を行った。
(2)組換えタンパク質の発現
pETCtBGT1DB3を大腸菌BL21(DE3)(Novagen)に形質転換した。形質転換株はカナマイシン30μg/mlを含むLB培地3mlで37℃で一晩振盪培養した。この培養液500μlをカナマイシン30μg/mlを含むLB培地に加え、600nmにおける吸光度が0.4に達するまで振盪培養した後、イソプロピル-β-D-チオガラクトシド(IPTG)を終濃度0.4mMになるように添加し、25℃で11時間振盪培養した後、冷却遠心(8000rpm, 4℃, 20分間)して菌体を回収した。
(3)組換えタンパク質の部分精製
組換えタンパク質の部分精製にはNi-NTAミニカラム(Qiagen)を用いた。菌体のペレットを、2mlの溶解緩衝液(pH8.0)(50mMリン酸二水素ナトリウム、300mM塩化ナトリウム、10mMイミダゾール)に再懸濁し、10mg/mlリゾチームを500μl、100mMDTTを20μl、100mM pAPMSFを2μl添加して0℃で30分間静置した。懸濁液を超音波破砕機により破壊し、冷却遠心機で分離して、上清を溶解緩衝液で平衡化したNi-NTAミニカラムに添加した。750μlの洗浄緩衝液(pH8.0)(50mMリン酸二水素ナトリウム、300mM塩化ナトリウム、20mMイミダゾール)で二回カラムを洗浄した後、100mMDTTを40μl、100mM pAPMSFを1μl添加した、400μlの溶出緩衝液(pH8.0)(50mMリン酸二水素ナトリウム、300mM塩化ナトリウム、250mMイミダゾール)を二回に分けてカラムに添加して、ヒスチジン・タグ付組換えCtBGT1タンパク質(rCtBGT1)を溶出した。組換えタンパク質溶出液をUltrafree MC(10,000NMWL, Millipore)を用いて濃縮した後、酵素活性測定に用いた。
(4)組換えタンパク質の酵素活性測定と酵素反応産物の同定
組換えアントシアニン3’,5’グルコシル基転移酵素溶液を用い、デルフィニジン3-(6”-マロニル)グルコシドを基質として酵素反応を行った結果、2種類の酵素反応産物が得られた。HPLC分析の条件は、Deverosil ODS-5-UG(3.0 mm i.d.×250 mm, 野村化学)カラムを用い、0.05M TFA水溶液に対してMeCNを10から35%の直線濃度勾配(20分)で添加して溶出し、PDA検出器及びMSで検出した。標準物質とのコクロマトグラフィー及びLC/MS分析により、反応産物をそれぞれデルフィニジン3-(6”-マロニル)グルコシド-3’,5’-ジグルコシド及びデルフィニジン3-(6”-マロニル)グルコシド-3’-グルコシドと同定した。以上の結果より、pETCtBGT1-3クローンの組換え酵素rCtBGT1はUDP-glucose:delphinidin 3-(6''-malonyl)glucoside 3'-O-glucosyltransferase及びUDP-glucose:delphinidin 3-(6''-malonyl)glucoside 3'-glucoside 5'-O-glucosyltransferase活性の両方を持つことがあきらかになった。従って、CtBGT1遺伝子はアントシアニンB環の3'位及び5'位水酸基に逐次グルコシル基を転移する活性がある、UDP-glucose:anthocyanidin 3-(6''-malonyl)glucoside 3',5'-O-glucosyltransferaseをコードしていることが確認された。
配列番号9において、3、6、9、18及び21番目のnはイノシンを表す。
配列番号10において、3、6、15、18及び21番目のnはイノシンを表す。
配列番号11において、9及び18番目のnはイノシンを表す。
配列番号12において、3及び12番目のnはイノシンを表す。
配列番号13において、3、12、15、18及び21番目のnはイノシンを表す。
配列番号14において、4、7、13及び19番目のnはイノシンを表す。
配列番号15において、3、6及び9番目のnはイノシンを表す。
配列番号16において、5、14及び20番目のnはイノシンを表す。
配列番号17において、3、9及び18番目のnはイノシンを表す。
配列番号18において、1、10及び19番目のnはイノシンを表す。

Claims (15)

  1. フラボノイドB環の水酸基へ逐次グルコシル基を転移する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子であって、配列番号1に記載の塩基配列からなる遺伝子。
  2. 配列番号2に記載のアミノ酸配列を有し、かつフラボノイドB環の水酸基へ逐次グルコシル基を転移する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子。
  3. 配列番号2に記載のアミノ酸配列において一個又は複数個のアミノ酸が付加、欠失及び/又は他のアミノ酸により置換されているアミノ酸配列を有し、かつフラボノイドB環の水酸基へ逐次グルコシル基を転移する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子。
  4. 配列番号1に記載の塩基配列で表される核酸に対して、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする遺伝子であって、フラボノイドB環の水酸基へ逐次グルコシル基を転移する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子。
  5. 水酸基が、フラボノイドB環の3'位及び5'位の水酸基である請求項1〜4のいずれか1項に記載の遺伝子。
  6. フラボノイドが、アントシアニンである請求項1〜5のいずれか1項に記載の遺伝子。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の遺伝子を含んでいるベクター。
  8. 請求項7に記載のベクターにより形質転換された宿主細胞。
  9. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の遺伝子によってコードされるタンパク質。
  10. 請求項8に記載の宿主細胞を培養し、又は生育させ、その後、該宿主細胞からフラボノイドB環の水酸基へ逐次グルコシル基を転移する活性を有するタンパク質を採取することを特徴とする該タンパク質の製造方法。
  11. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の遺伝子、又は請求項7に記載のベクターが導入され、形質転換された植物。
  12. 請求項11に記載の植物と同じ性質を有する該植物の子孫。
  13. 請求項11に記載の植物又は請求項12に記載の該植物の子孫の組織。
  14. 請求項11に記載の植物又は請求項12に記載の該植物の子孫の切り花。
  15. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の遺伝子、又は請求項7に記載のベクターを植物又は植物細胞に導入し、該遺伝子を発現させることによる、フラボノイドB環の水酸基へ逐次グルコシル基を転移させる方法。
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