JP4691649B2 - 水素貯蔵材料 - Google Patents

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Description

本発明は、所定の温度で水素を放出することができる水素貯蔵材料に関し、例えば、水素化マグネシウムをベースとして、実用レベルの水素放出温度(略400K)を実現した水素貯蔵材料に関する。
近年、オゾン層破壊及び大気汚染等の地球環境問題に対処すべく、石油などの化石燃料に替わるエネルギー源として水素が注目されている。水素を利用した代表例が燃料電池であり、燃料電池は、酸化しやすい水素などの燃料を大気中に豊富に存在している酸素と反応させ、化学反応によって生じる化学エネルギーを、熱に変換することなく、直接電気エネルギーに変換する。また、燃料として水素を用いた場合、酸素との反応生成物は水だけであることから、環境破壊に繋がる虞がなく、今後のエネルギーの主流になっていくものと考えられている。
燃料電池を実用化する場合、水素を一時的に貯蔵し、必要なときに必要量の水素を適切かつ安定的に供給できる能力を備えた水素貯蔵技術が必要である。水素貯蔵技術としては、大別して、炭化水素などを改質して水素を供給する改質方式と、水素を直接供給する純水素方式とが知られている。前者の改質方式は、改質装置が複雑であることと、炭化水素を改質する際に発生する一酸化炭素(CO)が電極触媒である白金(Pt)を被覆するCO被毒が生じるという問題とがある。したがって、効率の向上、一酸化炭素の排出削減の点から、将来的には後者の純水素方式が望ましい。
ところで、水素は密度が極めて低い気体で、高圧(200気圧)下で貯蔵した場合であっても、0.99×1022cm-3の水素しか貯蔵することができない。また、水素を液化する場合には、20Kという超低温まで冷却する必要がある。もちろん、超高圧にすれば室温でも水素を液化することが可能であるが、安全性を確保することが極めて困難である。このように、純水素方式には課題が多く、安全性を確保するとともに、軽量化及び低コスト化を実現することが実用化及び普及化には不可欠である。
そこで、純水素方式の一形態である水素貯蔵材料として、水素化マグネシウム(MgH2 )が注目されている。水素化マグネシウムは、マグネシウム原子(Mg)が2つの水素原子(H)を吸着することにより生成される物質であり、水素貯蔵能(水素重量密度=7.66wt%)が高く、海水中にナトリウム(Na)の次に多量に存在するMgを電解法によって容易かつ低コストで生成することが可能であることから、将来の水素貯蔵材料として有望である。また、燃料電池を車両に搭載するためには軽量かつ小型である必要があるが、この点でも、水素化マグネシウムに不利に働くことはない。
しかしながら、水素化マグネシウムは、その成分であるマグネシウム原子と水素原子とが極めて強固なイオン結合により結合し、熱力学的に非常に安定した状態である。したがって、水素化マグネシウムから水素原子を放出するのに必要な活性化エネルギーが高く(温度換算で573K)、その活性化エネルギーに相当する熱エネルギーを供給する必要があった。つまり、水素化マグネシウムを573K以上になるまで加熱しなければ、水素化マグネシウムから水素原子が放出されることはなく、逆に、常温(300K)では、マグネシウム原子に水素原子が吸着する反応が進行してしまう。
そこで、水素放出温度を下げるべく、メカニカルアロイング法によって、水素化マグネシウムと触媒作用をもつ遷移金属との合金化が行われている。メカニカルアロイング法は、成分金属を溶解することなく、固体の状態で成分金属の粉末を機械的に混合し、化学反応を生じさせて化合物を生成する方法であり、水素化マグネシウムと遷移金属とをメカニカルアロイングすることによって、水素化マグネシウムの組成自体を変化させることなく、図8に示すように、マグネシウム原子100aに2つの水素原子100bが吸着した水素化マグネシウム100に遷移金属101が付着した状態にすることができる(例えば、非特許文献1参照。)。
図9は、従来の水素貯蔵材料のポテンシャル特性を示すグラフであり、図8の構造において、マグネシウム原子から水素原子を離隔するの必要なポテンシャルエネルギーを示す。同図において、横軸はマグネシウム原子,水素原子間の距離を、縦軸はポテンシャルエネルギーを示し、各実線は、遷移金属がスカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)の3d遷移金属の場合におけるポテンシャル特性を、破線は水素化マグネシウム単体の場合におけるポテンシャル特性をそれぞれ示している。同図から明らかなように、水素化マグネシウムに遷移金属を付着することによって、活性エネルギーが減少していることがわかる。つまり、水素化マグネシウムの水素放出温度を「表1」に示すように下げることができる。
Figure 0004691649
合金・化合物論文誌(Journal of Alloys and Compounds),2000年発行,305巻,p246-252
しかしながら、上述したようなメカニカルアロイング法によって、水素化マグネシウムに遷移金属を付着させれば、水素放出温度を下げることができるが、その合金種についての詳細な研究がなされておらず、「表1」に示したように、スカンジウム及びニッケルを用いた場合に水素放出温度を500Kに低下させることができるが、実用レベルの水素放出温度(略400K)を有する合金種については、未だ得られていないのが現状である。
本発明者は、微視的な観点から水素化マグネシウムの合金状態について研究を行った結果、水素化マグネシウムに遷移金属を付着させた従来の場合と、2つの水素化マグネシウムの間に遷移金属を配置(挿入)した場合とで、水素化マグネシウムから放出される水素放出特性が大きく相違するとの知見を得るとともに、その原因が遷移金属の電子配置及びスピン状態に起因していることを解明した。
本発明は、この知見を得てなされたものであり、水素原子とイオン結合可能な複数の第1金属の間に、第1金属とは異なる第2金属を配置する構成とすることにより、第1金属の電子配置及びスピン状態を変化せしめ、第1金属と水素原子との結合力を制御して、その水素放出温度を制御することができる水素貯蔵材料の提供を目的とする。
第1発明に係る水素貯蔵材料は、第1金属−第2金属−第1金属という結合を有し、前記第1金属が水素原子と結合可能なマグネシウム原子からなり、前記第2金属が鉄原子又はマンガン原子からなり、しかも水素原子と結合しないことを特徴とする。
第1発明にあっては、水素原子とイオン結合可能な複数の第1金属の間に、第1金属とは異なる第2金属が配置される。第1金属間に配置した第2金属の影響によって、第1金属の電子配置及びスピン状態が変化し、その変化に起因して第1金属と水素原子との結合力が変化する。これにより、第1金属から水素原子を離隔するために必要な活性化エネルギーが変化して、水素放出温度が変化する。換言すれば、第2金属を複数の第1金属の間に配置することにより、第1金属の電子配置及びスピン状態を変化せしめ、第1金属と水素原子との結合力を制御して、その水素放出温度を制御することができる。
具体的に、本発明にあっては、マグネシウム原子とマグネシウム原子との間に、鉄原子又はマンガン原子が配置されている。鉄原子又はマンガン原子は、マグネシウム原子の電子配列及びスピン状態に及ぼす影響が大きく、マグネシウム原子から水素原子を離隔するために必要な活性化エネルギーを低減させる効果が大きい。例えば、鉄原子がマグネシウム原子の間に配置されている場合、水素原子,マグネシウム原子間の距離を4.5オングストロームに離隔するために必要な活性化エネルギーを2.0eVにまで下げることができ、その水素放出温度を400Kにまで下げることができる。同様に、マンガン原子がマグネシウム原子の間に配置されている場合、活性化エネルギーを1.5eVにまで下げることができ、その水素放出温度をさらに300Kにまで下げることができる。
第2発明に係る水素貯蔵材料は、下地基板の上に第1金属の膜と第2金属の膜とを交互に形成してなり、前記第1金属は水素原子と結合可能なマグネシウム原子からなり、前記第2金属は鉄原子又はマンガン原子からなり、しかも水素原子と結合しないことを特徴とする。
第3発明に係る水素貯蔵材料は、第2発明において、前記第1金属の膜と前記第2金属の膜は、それぞれ2モノレイヤと1モノレイヤであることを特徴とする。
本発明によれば、水素原子とイオン結合可能な複数の第1金属の間に、第1金属とは異なる第2金属が配置される構成としたので、第1金属間に配置した第2金属の影響によって、第1金属の電子配置及びスピン状態が変化し、その変化に起因して第1金属と水素原子との結合力が変化する。したがって、第2金属を複数の第1金属の間に配置することにより、第1金属の電子配置及びスピン状態を変化せしめ、第1金属と水素原子との結合力を制御して、その水素放出温度を制御することができる。
本発明によれば、第2金属が遷移金属であることにより、第1金属単体である場合よりも、第1金属と水素原子との結合力を弱くすることができ、それに起因して、第1金属から水素原子を離隔するために必要な活性化エネルギーが低くなり、水素放出温度を下げることができる。
本発明によれば、マグネシウム原子とマグネシウム原子との間に、マグネシウム原子の電子配列及びスピン状態に及ぼす影響が大きい鉄原子又はマンガン原子が配置される構成としたので、マグネシウム原子から水素原子を離隔するために必要な活性化エネルギーの低減効果が大きい。例えば、鉄原子がマグネシウム原子の間に配置されている場合には、水素原子,マグネシウム原子間の距離を4.5オングストロームに離隔するために必要な活性化エネルギーを2.0eVにまで下げることができ、その水素放出温度を400Kにまで下げることができる。同様に、マンガン原子がマグネシウム原子の間に配置されている場合には、活性化エネルギーを1.5eVにまで下げることができ、その水素放出温度をさらに300Kにまで下げることができる。
本発明によれば、第1金属と水素原子との結合力の調整を担う第2金属を構成する原子の種類によって、第1金属と水素原子との結合力に及ぼす影響の程度が相違することから、第2金属を構成する原子の組成比を調整することで、水素原子の放出温度を特定することができる。
本発明によれば、水素原子とイオン結合された金属からなる水素貯蔵材料を帯電させることによって、金属自体の電子配置及びスピン状態を変化せしめ、その変化に起因して、金属と水素原子との結合力を制御する。正に帯電させた場合には、水素原子とのイオン結合への電子の寄与率が小さくなるため、金属と水素原子との結合力が弱くなる。つまり、金属から水素原子を離隔するために必要な活性化エネルギーが低くなり、水素放出温度を下げることができる。また、金属と合金化するのではなく、水素貯蔵材料自体の特性を変化させることから、重量あたりの水素含有量が低減することはない。
本発明によれば、水素貯蔵材料の帯電量によって金属と水素原子との結合力に及ぼす影響力が相違するので、帯電量を調整することで、水素原子の放出温度を特定することができる。例えば、水素貯蔵材料が水素原子とイオン結合した水素化マグネシウムである場合、水素化マグネシウムからの水素放出温度は、水素化マグネシウムの帯電量の大きさによって決定され、帯電量の大きさに応じて低下する。
本発明によれば、第2金属を複数の第1金属の間に配置することにより、第1金属の電子配置及びスピン状態を変化せしめ、第1金属と水素原子との結合力を制御して、その水素放出温度を制御するとともに、水素貯蔵材料を帯電させることにより、帯電の影響によって、金属自体の電子配置及びスピン状態を変化せしめ、第1金属と水素原子との結合力を制御して、その水素放出温度を制御する。これにより、水素放出温度の制御領域が、それぞれの作用でより広くなり、より様々な用途に利用することが可能になる等、優れた効果を奏する。
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1に係る水素貯蔵材料の構造を示す模式図である。
本発明の実施の形態1に係る水素貯蔵材料1は、2つの水素原子10とイオン結合が可能な複数の第1金属(ここでは、2つのマグネシウム原子11)と第2金属(ここでは、金属原子12)とを含み、金属原子12が2つのマグネシウム原子11の間に配置された構造を有する。金属原子12としては、3d遷移金属のマンガン、鉄が挙げられる。このような水素貯蔵材料1へ水素原子10を供給することにより、水素貯蔵材料1を構成するマグネシウム原子11が水素原子10を吸着して水素化マグネシウム15となり(図2(a))、逆に、所定温度に加熱することにより、水素化マグネシウム15が水素原子10を放出する(図2(b))。つまり、水素貯蔵材料1に対する温度を制御することによって、水素原子10の吸着及び放出を制御することができる。
このような構造の水素貯蔵材料1に対して、それ自体公知の密度汎関数理論(例えば、Physical Review,1964年11月9日発行,136巻,p864-871、Physical Review,1965年11月15日発行,140巻,p1133-1138)に基づいて、マグネシウム原子11へ水素原子10が接近又は離隔するとき、水素原子10のマグネシウム原子11からの距離に対するポテンシャルエネルギーを電子計算機によって算出すると、水素貯蔵材料1が、図3に示すようなポテンシャル特性を有することが判明した。
図3において、各実線は、金属原子12がスカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛の3d遷移金属の場合におけるポテンシャル特性を、破線は水素化マグネシウム単体の場合におけるポテンシャル特性をそれぞれ示している。
水素化マグネシウム単体では、例えば、水素原子10,マグネシウム原子11間の距離を4.5オングストロームに離隔するには3.5eVのエネルギー(活性化エネルギー)が必要であるが、金属原子12としてFeが2つの水素化マグネシウム15,15のマグネシウム原子11,11間に配置されている場合には、2.0eVの活性化エネルギーで水素原子10,マグネシウム原子11間の距離を4.5オングストロームに離隔することが可能となる。さらに、金属原子12としてMnを用いた場合には、1.5eVの活性化エネルギーで水素原子10,マグネシウム原子11間の距離を4.5オングストロームに離隔することが可能となる。つまり、金属原子12を2つの水素化マグネシウム15,15のマグネシウム原子11,11間に配置させることにより、水素化マグネシウム15から水素原子10を離隔するために必要な活性化エネルギーを制御することができる。
これは、鉄原子又はマンガン原子を2つの水素化マグネシウム15の各マグネシウム原子11の間に配置することによって、マグネシウム原子11の電子配置及びスピン状態が変化し、その変化に起因してマグネシウム原子11と水素原子10との結合力が弱くなり、マグネシウム原子11から水素原子10を離隔するために必要な活性化エネルギーが減少したものと推定される。
また、活性化エネルギーと水素放出温度とは、図4に示すような関係を有していることが知られており、この関係に基づいて、水素貯蔵材料1が「表2」に示すような水素放出温度を有することが分かった。特に、金属原子12として鉄原子を用いた場合には、その水素放出温度を400Kに下げることができ、同様にマンガン原子を用いた場合には、その水素放出温度を300Kに下げることができる。このように、例えばマンガン原子を2つの水素化マグネシウム15,15間に配置することによって、常温で水素化マグネシウム15から水素原子10を離隔することができる。つまり、常温で水素原子10を放出することができる水素貯蔵材料とすることができる。
Figure 0004691649
水素貯蔵材料を燃料電池への水素供給源として用いる場合、水素原子を一時的に貯蔵するとともに、必要なときに必要量の水素原子を適切かつ安定的に供給する必要があり、そのために水素貯蔵材料の温度を制御するのが一般的である。したがって、常温より若干高い温度で水素原子が放出される材料が求められており、例えば、マンガン原子を配置した水素貯蔵材料と鉄原子を配置した水素貯蔵材料とを混合し、その組成比に応じて水素放出温度を調整することが可能である。このようにして、利用する用途に適した温度で水素を放出することができる水素貯蔵材料とすることができる。
本実施形態の主旨は、所望の温度にて水素原子が放出される水素貯蔵材料を提供することにあり、2つの水素化マグネシウムの各マグネシウム原子間に金属原子を配置して、従来では困難であった500K未満の温度領域にて水素原子が放出されるように、マグネシウム原子と水素原子とのイオン結合の強度を制御することにある。
次に、本発明の実施の形態1に係る水素貯蔵材料の製造方法について説明する。図5は本発明の実施の形態1に係る水素貯蔵材料の製造方法を説明するための説明図である。以下、金属原子としてマグネシウム原子を用いる場合について説明する。
まず、下地となる基板50の表面に、MBE法によってマグネシウム線51aとマンガン線52aとを交互に照射して(図5(a))、マグネシウム層51とマンガン層52とが交互に積層された多層膜を形成する(図5(b))。マグネシウム層51,マンガン層52の厚みは、それぞれ2モノレイヤ(原子層),1モノレイヤとなるように、マグネシウム線51a及びマンガン線52aの照射圧力、照射時間及び基板温度を適宜調整する。
このようにして、各マンガン層52の上下にマグネシウム層51が配置されることになり、マンガン層52に位置するマンガン原子が、マンガン層52の上側に配置されたマグネシウム層の下側1モノレイヤに位置するマグネシウム原子、及びマンガン層52の下側に配置されたマグネシウム層の上側1モノレイヤに位置するマグネシウム原子の電子配置及びスピン状態に変化を及ぼす。
次に、300K未満の温度環境下で水素原子10を供給することにより、各マグネシウム層51に水素原子10が吸着される。吸着される水素原子数は、マグネシウム層51を構成するマグネシウム原子数の略2倍であり、同体積の気体状態と比較して、多量の水素原子10を貯蔵することが可能となる。また、水素原子10の吸着及び放出が温度によって容易に制御できることから、気体状態の場合と比べて安全性が飛躍的に向上する。
なお、本例では、マグネシウム層とマンガン層とが交互に積層された多層膜を形成したのちに、水素原子を多層膜に供給して、マグネシウム層を構成するマグネシウム原子に水素原子を吸着させるようにしたが、予めマグネシウム原子に水素原子を吸着させた水素化マグネシウム層とマンガン層とが交互に積層された多層膜を形成するようにしてもよい。
また、MBE法を用いて多層膜を形成する方法について説明したが、MBE法に限定されるものではなく、MOCVD法のようなの公知の技術が利用でき、形成する多層膜に好適な方法を適宜選択する。また、固体状態のマンガン原子及びマグネシウム原子を溶融法により溶解して、マンガン原子をマグネシウム原子間に挿入するようにしてもよく、その組成が均一になる手法が好ましい。
(実施の形態2)
図6は実施の形態2に係る水素貯蔵材料の水素放出方法を説明するための説明図である。
実施の形態2に係る水素貯蔵材料の水素放出方法は、マグネシウム原子21が2つの水素原子20とイオン結合した水素貯蔵材料2である水素化マグネシウム25を帯電させる。具体的には、水素化マグネシウム25を構成する電子30を取り去ることによって、水素化マグネシウム25(水素貯蔵材料2)を正に帯電させる。水素化マグネシウム25を帯電させる方法としては、電子線、光及びX線などを照射する電子線照射法、光照射法及びX線照射法のほか、電圧を印加する電圧印加方法などがある。また、電圧印加法には、電極を設置して電圧を印加する方法、及びピエゾ素子を接着して応力を加える方法などがある。
帯電した水素化マグネシウム25に対して、それ自体公知の密度汎関数理論に基づいて、マグネシウム原子21へ水素原子20が接近又は離隔するとき、水素原子20のマグネシウム原子21からの距離に対するポテンシャルエネルギーを電子計算機によって算出すると、水素化マグネシウム25が、図7に示すようなポテンシャル特性を有することが判明した。
図7において、各実線は、水素化マグネシウム25の総電荷量が、素電荷eを単位として、+1、+0.75、+0.50、+0.25である場合のポテンシャル特性を、破線は水素化マグネシウム25が未帯電の場合におけるポテンシャル特性をそれぞれ示している。電荷量は基本的に素電荷eを単位とする整数であり、上述の総電荷量は1つの水素化マグネシウム25あたりの電荷量という意味である。つまり、水素化マグネシウム25の総電荷量が+1とは、1つの水素化マグネシウム25から電子30を1つ取り去ることを意味しており、同様に、総電荷量が+0.75とは、4つの水素化マグネシウム25から電子30を3つ取り去ることを意味しており、また、総電荷量が+0.50、+0.25とは、それぞれ、2つ、4つの水素化マグネシウム25から電子30を1つ取り去ることを意味する。
水素化マグネシウム25が未帯電の場合、例えば、水素原子20,マグネシウム原子21間の距離を4.5オングストロームに離隔するには3.5eVの活性化エネルギーが必要であるが、水素化マグネシウム25の総電荷量が+1に帯電されている場合には、1.2eVの活性化エネルギーで水素原子20,マグネシウム原子21間の距離を4.5オングストロームに離隔することが可能となる。つまり、マグネシウム原子21(水素化マグネシウム25)を帯電させることにより、水素化マグネシウム25から水素原子20を離隔するために必要な活性化エネルギーを制御することができる。
また、上述した活性化エネルギーと水素放出温度との関係(図4参照)に基づいて、帯電した水素化マグネシウム25が「表3」に示すような水素放出温度を有することが分かった。特に、水素化マグネシウム25の総電荷量が+0.50である場合には、その水素放出温度を480Kに下げることができ、同様に、総電荷量が+0.75である場合には、その水素放出温度を360Kに下げることができる。
Figure 0004691649
これは、水素化マグネシウム25を正に帯電させることによって、マグネシウム原子21の電子配置及びスピン状態が変化し、その変化に起因してマグネシウム原子21と水素原子20との結合力が弱くなり、水素原子20を離隔するために必要な活性化エネルギーが減少したためであると推定される。水素化マグネシウム25は、正電荷をもつマグネシウム原子21と負電荷をもつ水素原子20とがイオン結合によって極めて安定な状態にあり、水素原子20は、マグネシウム原子21から脱離する際には電荷をもたない、いわゆる中性になる。したがって、予め水素化マグネシウム25を正に帯電させることにより、水素原子20を中性に近づかせて、マグネシウム原子21,水素原子20間のイオン結合による相互作用を弱めることができる。このようにして、合金化することなく、水素化マグネシウム25の水素放出温度を下げることができる。換言すれば、温度を略一定にしておき、水素貯蔵材料を帯電させることによって、水素貯蔵材料からの水素放出を制御することが可能である。
また、例えば電子線を照射する照射強度及び照射時間を調整することによって、水素化マグネシウム25の総電荷量を調整することができ、水素化マグネシウム25の総電荷量を調整することによって水素放出温度が決定されるため、利用する用途に適した温度で水素原子を放出することができる。特に、水素原子の吸着及び放出に寄与するマグネシウム原子21のみを構成要素とすることから、重量あたりの水素含有量が低減することはない。
本実施形態の主旨は、所望の温度にて水素原子が放出される水素貯蔵材料の水素放出方法を提供することにあり、水素化マグネシウム25を帯電させ、従来では困難であった500K未満の温度領域にて水素原子20が放出されるように、マグネシウム原子21と水素原子20とのイオン結合の強度を制御することにある。
なお、実施の形態1では2つの水素化マグネシウム15のマグネシウム原子11間に金属原子12を配置することにより、実施の形態2では水素化マグネシウム25を帯電させることにより、マグネシウム原子11(21)と水素原子10(20)とのイオン結合の強度を制御するようにしたが、その2つを組み合わせて、マグネシウム原子と水素原子とのイオン結合の強度を制御するようにしてもよい。この場合には、さらに、水素放出温度の制御領域が広くなり、より様々な用途に利用することが可能になる。
また、各実施の形態では、イオン結合が可能な金属原子としてマグネシウム原子の場合について説明したが、同様のイオン結合を有するアルカリ金属及びアルカリ土類金属であってもよく、アルカリ金属及びアルカリ土類金属に吸着した水素の放出温度を制御することができる。
以上、本発明に係る水素貯蔵材料について、具体的な実施の形態を示して説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。当業者であれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、上述した実施の形態に係る発明の構成及び機能に様々な変更又は改良を加えることが可能である。
本発明の実施の形態1に係る水素貯蔵材料の構造を示す模式図である。 水素貯蔵材料への水素原子の吸着と水素貯蔵材料からの水素原子の放出の様子を示す説明図である。 本発明の実施の形態1に係る水素貯蔵材料のポテンシャル特性を示すグラフである。 活性化エネルギーと水素放出温度との関係を示すグラフである。 本発明の実施の形態1に係る水素貯蔵材料の製造方法を説明するための説明図である。 施の形態2に係る水素貯蔵材料の水素放出方法を説明するための説明図である。 施の形態2に係る水素貯蔵材料のポテンシャル特性を示すグラフである。 従来の水素貯蔵材料の構造を示す模式図である。 従来の水素貯蔵材料のポテンシャル特性を示すグラフである。
符号の説明
1,2 水素貯蔵材料
10,20 水素原子
11,21 マグネシウム原子
15,25 水素化マグネシウム
30 電子
50 基板
51 マグネシウム層
52 マンガン層

Claims (3)

  1. 第1金属−第2金属−第1金属という結合を有し、前記第1金属が水素原子と結合可能なマグネシウム原子からなり、前記第2金属が鉄原子又はマンガン原子からなり、しかも水素原子と結合しないことを特徴とする水素貯蔵材料。
  2. 下地基板の上に第1金属の膜と第2金属の膜とを交互に形成してなり、前記第1金属は水素原子と結合可能なマグネシウム原子からなり、前記第2金属は鉄原子又はマンガン原子からなり、しかも水素原子と結合しないことを特徴とする水素貯蔵材料。
  3. 前記第1金属の膜と前記第2金属の膜は、それぞれ2モノレイヤと1モノレイヤであることを特徴とする請求項2に記載の水素貯蔵材料。
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