JP4689934B2 - 対基板作業システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子回路の組立てにおける部品装着作業等、回路基板に対して行う作業である対基板作業を行うためのシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
部品装着作業等の対基板作業は、電子回路の組み立ての際に行われる作業である。対基板作業は、1つの装置によってなされるのではなく、複数の対基板作業装置が回路基板の搬送経路に複数配置され、1枚の回路基板に対して、各装置が順に各装置に定められた対基板作業を実行することによってなされることが多い。そのような作業においては、各対基板作業装置は、回路基板に対して作業を行うために、その回路基板についての各種情報、例えば、作業プログラム,基板形状データ等の基板種に関連付けられる情報、基板の区分領域ごとの作業可否に関するデータ等の基板個々に関連付けられる情報等を必要とし、何らかの方法によって、それらの情報を各装置が受け取るようにされることが要求される場合がある。
【0003】
回路基板に関するデータを各装置が受け取るための技術として、例えば、特開2000−124676号公報に記載された技術が存在する。この技術は、複数の対基板作業装置のうちの先頭に配置された装置に基板情報を読み取らせ、その読み取った情報を、各対基板作業装置が、作業が行われる回路基板の搬送に対応させて、順繰りに下流側の装置に転送するというものである。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−124676号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効果】
上記従来技術では、基板情報は、回路基板の搬送に対応して順繰りに転送される。そのため、例えば、各対基板作業装置が、その回路基板に対する作業の段取りを行なおうとする場合、上流側の装置の作業完了を待たなければならず、システムの稼動ロスを小さくすることに限界があった。
【0006】
そこで、本発明は、段取り替え等による稼動ロスの小さい対基板作業システム、および、対基板作業方法を得ることを課題としてなされたものであり、本発明によって、下記各態様の対基板作業システム、対基板作業方法が得られる。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも本発明の理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的特徴およびそれらの組合わせが以下の各項に記載のものに限定されると解釈されるべきではない。また、一つの項に複数の事項が記載されている場合、それら複数の事項を常に一緒に採用しなければならないわけではない。一部の事項のみを選択して採用することも可能である。
【0007】
なお、以下の各項において、(1)項に、(4)項,(5)項,(9)項,(10)項および(11)項の技術的特徴を付加し、さらに、「基板搬送経路」をコンベア装置を主体として構成されたものに限定し、そのコンベア装置を回路基板の幅に応じて幅が調整されるものに限定し、「基板種依拠情報」が回路基板の幅に関する基板形状情報を含むものに限定し、かつ、(12)項の技術的特徴を付加したものが請求項1に、請求項1に(13)項の技術的特徴を付加したものが請求項2に、相当する。
【0008】
(1)電子回路を構成する回路基板に対して予定された作業を行う対基板作業装置が基板搬送経路に沿って複数配置され、複数の回路基板を、順次、上流側の前記対基板作業装置から下流側の前記対基板作業装置に搬送しつつ、各々の前記対基板作業装置が回路基板に応じた作業を行うことによって、前記複数の回路基板の各々に対して、その各々に設定された対基板作業を行う対基板作業システムであって、
前記複数の対基板作業装置のうちの1つのものである基板ID認定装置に設けられ、前記複数の回路基板の各々の基板IDを認定する基板ID認定部と、
認定された基板IDと、前記複数の回路基板の各々に関する作業情報であってその基板IDに関連付けられたID関連情報との少なくとも一方を含む基板情報を、前記基板ID認定装置による基板ID認定の都度、前記複数の対基板作業装置のうちの前記基板ID認定装置より下流に配置されたものの中の1以上のものである基板情報利用装置に配信する基板情報配信部と、
前記基板情報利用装置の各々に設けられ、(a)配信された前記基板情報を順序付けて記憶する基板情報記憶部と、(b)その基板情報記憶部に記憶された記憶内容に基づいて前記複数の回路基板の作業順序を認識する作業順序認識部と、(c)認識した作業順序に従って、前記基板情報記憶部に記憶された基板情報を参照して、作業を行う回路基板に対する作業内容を決定する作業内容決定部とを備えた装置制御部と
を含むことを特徴とする対基板作業システム。
【0009】
本項に記載の態様のシステムは、平たく言えば、いずれかの対基板作業装置によって回路基板の基板IDが認定された都度、下流側の対基板作業装置に対してその回路基板に関する基板情報を配信し、基板情報が配信された対基板作業装置が、順序付けて記憶された基板情報に基づいて、作業を行う回路基板の順序を認識するとともに、次に行う作業の内容を決定することを可能としたシステムである。上流側の対基板作業装置から回路基板の搬送に対応して順繰りに基板情報が転送されるのではなく、上流側のある装置による基板ID認定の都度、基板情報が配信されるため、例えば、その基板情報を利用する下流側の対基板作業装置においては、回路基板の搬送とは異なるタイミングで段取替え等の準備作業を行うことができ、システムの稼動ロスを小さくすることができる。また、予め作成されている生産計画を参照するのではなく、システムに供給される実際の回路基板に応じて作業順序が認識されるため、確実な対基板作業が行える。
【0010】
本項に記載の態様のシステムにおいて、基板IDと関連付けられたID関連情報が記憶されている装置は、特に限定されない。例えば、本システムが、システム全体を制御するシステム制御装置を備える場合、そのシステム制御装置に上記ID関連情報が記憶されていてもよく、また、ID関連情報が配信される場合には、基板IDを認定する機能を有する基板ID認定装置に、ID関連情報が記憶されていてもよい。
【0011】
本システムでは、基板情報を配信する装置は限定されない。例えば、上記システム制御装置を備える場合には、基板ID認定装置からの情報を受け取ったシステム制御装置が基板情報を利用する基板情報利用装置に対して配信してもよく、また、基板ID認定装置自身が基板情報を配信してもよい。
【0012】
複数の対基板作業装置のうち、1つのものが基板ID認定装置しての機能を有することが望ましく、また、できるだけ上流側に配置された、好ましくは最上流に配置された対基板作業装置が基板ID認定装置としての機能を有することが望ましい。基板ID認定装置は、基板ID認定を行うことを主たる目的とする認定専用の装置であってもよく、また、回路部品装着作業、高粘性流体塗布作業といった作業を主目的とする装置が、基板ID認定の機能を併せ持つものであってもよい。
【0013】
(2)前記複数の対基板作業装置として、回路基板にクリームはんだを印刷するあるいは接着剤を塗布する高粘性流体塗布装置、電子回路を構成する電子回路部品を回路基板に装着する部品装着装置、それら装置の少なくとも1つのものによる対基板作業の結果を検査する作業結果検査装置、それらの装置間の回路基板の搬送を主目的とする搬送装置、当該対基板作業システムに回路基板を搬入する搬入装置、当該対基板作業システムから回路基板の搬出する搬出装置から選ばれる1種以上の装置を含む(1)項に記載の対基板作業システム。
【0014】
本発明の対基板作業システムは、構成する対基板作業装置が限定されるものではなく、本項に記載されたような電子回路の組立てにおける各種作業を行う装置を含んで構成されるものであればよい。例えば、クリームはんだ印刷装置、接着剤塗布装置,部品装着装置等の作業種の異なる主作業を行う対基板作業装置と、それらを連結する基板搬送装置とを含んで、実装一貫ラインを構成するようなシステムであってもよく、また、例えば、複数の部品装着装置のみが連結されて構成された回路部品装着システムのように、1種の主作業のみが行われるシステムであってもよい。列挙した装置の中でも、部品装着装置は、作業内容を決定するにあたって基板情報を利用せざるを得ないことが多く、本発明は、部品装着装置を含んで構成されるシステムに適用された場合において、特にメリットが大きい。
【0015】
(3)前記基板情報が少なくとも前記基板IDを含む(1)項または(2)項に記載の対基板作業システム。
【0016】
本発明のシステムにおいては、基板IDを利用した管理を行う。例えば、基板種が同じであっても個々の回路基板ごとに作業内容を変更せざるを得ない場合等に、基板IDに基づいた管理が有利である。配信される基板情報は、認定された基板IDと、前記複数の回路基板の各々に関する作業情報であってその基板IDに関連付けられたID関連情報との少なくとも一方を含むものであるが、本項に記載の態様のように、基板IDを配信することにより、基板IDに基づく管理が容易となる。その場合、例えば、基板IDとそのIDに関連付けられたID関連情報との両者を配信する態様とすることができ、また、例えば、基板IDのみを配信し、配信された側の基板情報利用装置が、配信された基板IDをキーとして、当該装置内部あるいは装置外部に格納されている情報の中から、そのIDに関連するID関連情報等を読み出す等して、そのID関連情報等を利用する態様とすることもできる。
【0017】
本発明は、上記態様ではなく、配信される基板情報の中に、基板IDを含まない態様とすることもできる。例えば、基板ID認定装置によって認定された基板IDをキーとしてそのIDに関連するID関連情報を読み出す等した後、そのID関連情報のみを配信する態様である。かかる態様においても、配信されたID関連情報を基板情報利用装置において順序付けて記憶しておくことにより、その記憶内容に基づいて作業を決定することができる。
【0018】
(4)前記基板情報が少なくとも前記ID関連情報を含み、そのID関連情報が、回路基板の種類に依拠して予め設定された基板種依拠情報を含む(1)項ないし(3)項のいずれかに記載の対基板作業システム。
【0019】
本項に記載の態様のように、ID関連情報に基板種依拠情報を含ませることができる。基板種が変更される場合は、対基板作業装置において段取替えを行う必要がある場合が多く、基板種依拠情報は、段取替えに有用な情報となる。
【0020】
(5)前記基板種依拠情報が、回路基板の幅等に関する基板形状情報、前記基板情報利用装置の各々の動作プログラム等に関するプログラム情報、回路基板が複数の領域に区画されたものである場合の基板区画情報から選ばれる少なくとも1つのものを含む(4)項に記載の対基板作業システム。
【0021】
本項は、基板種依拠情報の具体的な態様に関する項である。例えば、システムにおける回路基板の搬送は、コンベア装置等から構成される基板搬送装置によって行われる場合が多く、その場合、コンベア幅等を決定するために、回路基板の幅等の基板形状情報は有用な情報である。また、各対基板作業装置は、基板種に応じたプログラムにしたがって動作する。作業する基板種が変更されれば、段取替えにおいて、それに応じたプログラムをロードする等の段取替え作業を行う必要がある。したがって、プログラム名称等のプログラムを特定できる情報、プログラム自体等のプログラム情報は、段取替えに有用な情報である。また、回路基板は、自身が区画されることによって、複数の子基板が集合した状態であるものも多い。例えば、マルチ基板と呼ばれるような、1つの電子回路となる回路基板の区画部分である単位基板部が複数配置されてなる回路基板がそれに該当する。マルチ基板である場合、それの動作プログラムがいくつかの部分プログラムに分割されていることもある。後に詳しく説明するように、回路基板によっては、いずれかの単位基板部に対する作業をスキップしたい場合もあり、基板区画情報は、その場合等に有用な情報である。
【0022】
(6)前記基板情報が少なくとも前記ID関連情報を含み、そのID関連情報が、前記複数の対基板作業装置のいずれかのものであって基板個別情報認識装置として機能するものによって認識された基板個別情報を含む(1)項ないし(5)項のいずれかに記載の対基板作業システム。
【0023】
ID関連情報には、基板種に依拠するもののほかに、本項に記載のように、回路基板ごとの基板個別情報を含ませることができる。回路基板に個別な情報に基づいて作業内容を決定するような場合においては、基板個別情報取得し、その取得した情報を基板情報利用装置に配信することにより、基板個々への対応が可能なシステムを構築できる。基板個別情報は、回路基板自体に表示等されているものを検出等することによって認識されるものでもよく、また、基板個別情報認識装置内部あるいはそれの外部に格納されたデータ等を読み出す等して認識されるものであってもよい。
【0024】
(7)前記基板個別情報が、回路基板が複数の領域に区画されたものである場合において、それぞれの区画領域に対する前記基板情報利用装置の各々による作業の要否に関する領域別作業要否情報と、回路基板に対する各区画領域の相対位置に関する領域別相対位置情報との少なくとも一方を含む(6)項に記載の対基板作業システム。
【0025】
例えば、前述したマルチ基板の場合にあっては、いずれかの単位基板部が不良認定されたときに、その単位基板部にいわゆるバッドマークと呼ばれる不良表示子が付されことがある。その場合、その単位基板部に対して対基板作業を行わないことが望まれる。領域別作業要否情報は、上記バッドマーク等を認識することによって得られた情報である。また、例えば、マルチ基板の場合、回路基板に対する各単位基板部の相対位置に対応して作業を行わなければならない場合もあり、その場合、1つの対基板作業装置によって認識された相対位置に関する情報を他の対基板作業装置において利用すれば、対基板作業装置ごとにその情報を認識することを省略できるため、システムの生産性を向上させることができる。具体的には、対基板作業装置内における回路基板の位置を認識するための基準マークとは別に、単位基板部に関する基準マークを付した場合に、基板個別情報認識装置で両者を認識して両者の位置関係等を取得し、基板個別情報認識装置の下流側に位置する対基板作業装置においては、単位基板部に関する基準マークの認識を省略する等の態様である。なお、上記マルチ基板の場合だけでなく、例えば、回路基板の一部分、例えば、ある回路部品が装着される部分等において特に位置精度の高い作業が要求される場合に、その一部分の位置を個別に認識するための個別マーク(ローカルマークとも呼ぶことができる)が付されることがある。この個別マークの認識を下流側の装置において省略するような場合において、回路基板自体の位置を認識するための基準マークに対する上記個別マークの相対位置に関するデータ等も、上記領域別相対位置情報の一態様である。
【0026】
(8)前記基板ID認定装置が、前記基板個別情報認識装置として機能する(6)項または(7)項に記載の対基板作業システム。
【0027】
基板個別情報を認識する基板個別情報認識装置は、いずれの対基板作業装置であってもよいが、本項に記載の態様のように、基板ID認定装置が基板個別情報認識装置としての機能を有する場合、基板個別情報を他の基板情報と同時に配信することを容易に行うことが可能である。
【0028】
(9)前記基板情報記憶部が、前記配信された基板情報を配信された順に記憶するものであり、前記作業順序認識部が、その記憶された順序から前記作業順序を認識するものである(1)項ないし(8)項のいずれかに記載の対基板作業システム。
【0029】
本発明において、基板情報を順序付けて記憶する具体的な方法は、特に減退されるものではない。例えば、作業順序を示す番号とともに記憶するするような方法であってもよい。本項に記載の態様のように、例えば、先入れ先だしメモリ的な記憶部とすれば、作業順序をカウントするカウンタが不要であり、簡便な記憶部となる。また、作業が終了した回路基板に関する情報を削除する等して記憶内容を更新すれば、基板情報記憶部を小さな記憶容量のものとすることができる。
【0030】
(10)前記装置制御部が、回路基板に対する作業の変更に対応して、前記基板情報記憶部に記憶された記憶内容を変更する記憶内容変更部を備えた(1)項ないし(9)項のいずれかに記載の対基板作業システム。
【0031】
例えば、システムにおける対基板作業が順調に行われず、何らかの事態が発生し、その後の対基板作業の変更を余儀なくさせられる場合もある。本項に記載の態様では、基板情報記憶部に記憶された作業順序,基板情報等の記憶内容を変更できることから、作業変更に容易に対応可能なシステムが構築できる。
【0032】
(11)前記記憶内容変更部が、当該対基板作業システムからの回路基板の除去に対応して、前記基板情報記憶部に記憶されているその除去された回路基板についての基板情報を削除する基板除去対応部を有する(10)項に記載の対基板作業システム。
【0033】
例えば、1つの対基板作業装置の不調等により、ある回路基板への作業が中止された場合に、その回路基板をシステムから取り除く必要がある場合もある。本項に記載の態様によれば、かかる事態に対して柔軟に対応し、システムにおけるその後の作業を適正化させることができる。
【0034】
(12)当該対基板作業システムが、前記複数の対基板作業装置のいずれかにおいて回路基板が除去された場合に、そのいずれかの対基板作業装置の下流側に配置された前記基板情報利用装置の各々に、その除去された回路基板に関する除去情報を配信する基板除去情報配信部を含み、
前記基板除去対応部が、その基板情報配信部から配信された除去情報に基づいて、前記除去された回路基板についての基板情報を削除するものである(11)項に記載の対基板作業システム。
【0035】
回路基板の除去情報を配信する基板除去情報配信部の具体的な態様が限定されるものではない。例えば、オペレータによって回路基板が除去された場合、オペレータが、除去された旨を、当該除去された回路基板が除去された時に存在していた対基板作業装置に入力する場合、その対基板作業装置がその情報を下流側の装置に配信するような態様であってもよい。また、その装置から前述のシステム制御装置にその情報が転送され、システム制御装置から下流側の対基板作業装置に配信される態様であってもよい。さらに、オペレータがシステム制御装置に除去された旨を入力し、それに基づいて除去情報を各対基板作業装置に入力する態様であってもよい。なお、オペレータによる操作を必要とせず、対基板作業装置自体が、除去されたことを自動的に検出する機能を備えるものであってもよい。
【0036】
(13)前記基板情報が前記基板IDを含みかつ前記除去情報が前記除去された回路基板の前記基板IDを含み、前記基板除去対応部が、前記基板情報記憶部に記憶された基板情報の基板IDと、前記配信された除去情報が含む基板IDとを照合して、該当する基板IDを有する基板情報を削除するものである(12)項に記載の対基板作業システム。
【0037】
本項に記載の態様によれば、例えば、基板IDをキーとするマッチングにより、容易に、作業を行い得なくなった回路基板についての作業を取りやめさせることができ、システムの稼動に大きな影響を及ぼすことを回避できる。
【0038】
(14)前記記憶内容変更部が、個々の回路基板について発生する作業内容の変更に対応して、前記基板情報記憶部に記憶されている基板情報のうちのその作業内容変更を要する回路基板についての基板情報の内容を変更する作業内容変更対応部を有する(10)項ないし(13)項のいずれかに記載の対基板作業システム。
【0039】
例えば、システムに何らかの事態が発生した場合、その事態の契機となった回路基板を除去するまでもないが、その回路基板についてのその事態発生後における下流側の対基板作業装置による作業の内容を変更せざるを得ない場合もある。本項に記載の態様は、かかる場合において有効な態様である。
【0040】
(15)前記作業内容の変更が、前記複数の対基板作業装置のいずれかによる作業エラーの発生に伴って発生するものであり、
当該対基板作業システムが、その作業エラーが発生した対基板作業装置の下流側に配置された前記基板情報利用装置の各々に、その作業エラーに関する作業エラー情報を配信する作業エラー情報配信部を含み、
前記作業内容変更対応部が、その作業エラー情報配信部から配信された作業エラー情報に基づいて、前記作業内容の変更を要する回路基板についての基板情報を変更するものである(14)項に記載の対基板作業システム。
【0041】
作業エラーにおける作業変更には種々のものが含まれる。例えば、以後の対基板作業が必要ではなくなった回路基板に対して、対基板作業装置をただスルーさせるような場合が該当する。また、例えば、前述のマルチ基板の場合、いずれかの単位基板部において作業ミス等が発生して、以後その単位基板部に対する他の作業を省略させる必要がある等の場合も、本項に記載の態様によれば、容易に対処できる。なお、作業エラー情報は、作業エラーが発生した対基板作業装置により配信させるようにしてもよく、また、その装置から前述のシステム制御装置に情報を転送し、システム制御装置によって配信されるようにしてもよい。また、作業エラー情報は、前述の基板除去情報と同様、オペレータによる操作を検出して作業エラー情報が認識されてもよく、また、対基板作業装置が自動的に作業エラーを検出して認識されてもよい。
【0042】
(16)前記基板情報が前記基板IDを含みかつ前記作業エラー情報が前記作業内容の変更を要する回路基板の前記基板IDを含み、前記作業内容変更対応部が、前記基板情報記憶部に記憶された基板情報の基板IDと、前記配信された作業エラー情報が含む基板IDとを照合して、該当する基板IDを有する基板情報を変更するものである(15)項に記載の対基板作業システム。
【0043】
本項に記載の態様によれば、例えば、基板IDをキーとするマッチングにより、ある回路基板について作業内容の変更が生じた場合であっても、システムの稼動に大きな影響を及ぼすことなく、その回路基板についてのその後の作業の変更を容易に行うことができる。
【0044】
(17)基板ID認定部が、回路基板に予め付された基板ID表示子を認識することと、定められた条件に従って回路基板に基板ID表示子を付与することとの少なくとも一方を行うものである(1)項ないし(16)項のいずれかに記載の対基板作業システム。
【0045】
基板IDを利用した作業管理は、基板IDを表示する表示子を付すことにより、容易に行うことができる。本項に記載の態様は、基板ID表示子を管理のための手段として採用する場合に有効な態様である。基板ID表示子は、具体的には、バーコード、パターンコード等を採用すればよい。バーコードを採用する場合、基板ID認定部における回路基板に予め付された基板IDの認識は、例えば、バーコードラベルに描かれたバーコードをバーコードリーダにて読み取ることによって行えばよい。回路基板への基板ID表示子の付与は、例えば、その回路基板のIDを表すバーコードが描かれたバーコードラベルを貼り付けることによって行えばよい。バーコードラベルを貼り付ける場合、そのラベルのバーコードは、定められた条件に従うもの、例えば、ラベルが貼られる回路基板に予定されている基板IDを表すものとすればよい。
【0046】
(18)基板ID表示子が、2次元バーコードである(17)項に記載の対基板作業システム。
【0047】
2次元バーコード(「2次元コード」と称することもできる)は、情報量に比較してその大きさを小さくできる。例えば、外形が正方形等をなすものもあり、そのようなものは、比較的小さなカメラの視野内に容易に収まる。対基板作業装置では、回路基板の表面に付された基準マークをCCDカメラ等の撮像デバイスで撮像し、その撮像データを画像処理することによって、回路基板の当該装置内における位置を認識する。そのような認識装置を備える場合、2次元バーコードをID表示子として採用すれば、その撮像装置で2次元バーコード撮像して、その回路基板の基板IDを認識する態様を採用することが可能であり、別途認識装置を必要としないというメリットがある。
【0048】
(19)前記基板情報利用装置のうちの少なくとも1以上のものが、基板IDを認識する基板ID認識部を備えた認識部装備装置とされた(1)項ないし(18)項のいずれかに記載の対基板作業システム。
【0049】
本項に記載の態様のように、基板情報利用装置が基板ID認識機能を有している場合、例えば、ある回路基板に対して基板情報利用装置が作業を行う際、その基板情報利用装置が自ら認識した基板IDに基づいて、既に配信されて記憶されている基板情報の確認を行うことができ、確実性の高い対基板作業を行うことができる。
【0050】
(20)前記基板情報が、前記基板IDを含み、前記認識部装備装置の前記装置制御部が、前記基板ID認識部による基板IDの認識結果と前記基板情報記憶部に記憶された基板情報の基板IDとを照合して、作業を行う回路基板の確認を行う基板確認部を備えた(19)項に記載の対基板作業システム。
【0051】
基板情報に基板IDが含まれる場合、基板情報記憶部に記憶されている基板IDと自ら認識した基板IDとをマッチングさせることにより、容易に、これから作業を行おうとする回路基板の確認ができる。
【0052】
(21)前記基板確認部が、前記作業内容決定部による作業内容の決定の後に回路基板の確認を行うものである(21)項に記載の対基板作業システム。
【0053】
本発明の目的の1つは、段取替えの迅速性を達成することにある。この目的に鑑みれば、作業を行う対基板作業装置に作業に供される回路基板が供給された後に段取替えを行うのではなく、その回路基板が供給される前に、予め記憶された基板情報に基づいて段取替えを行い、段取替えが終了した後に、上記確認を行うことが望ましい。本項に記載の態様では、段取替えの迅速性を損なうことなく、確実な対基板作業を行い得るシステムが構築できる。
【0054】
(31)電子回路を構成する回路基板に対して予定された作業を行う対基板作業装置が基板搬送経路に沿って複数配置された対基板作業システムを用い、複数の回路基板を、順次、上流側の前記対基板作業装置から下流側の前記対基板作業装置に搬送しつつ、各々の前記対基板作業装置が回路基板に応じた作業を行わせることによって、前記複数の回路基板の各々に対して、その各々に設定された対基板作業を行う対基板作業方法であって、
前記複数の対基板作業装置のうちの1つのものである基板ID認定装置によって行われ、前記複数の回路基板の各々の基板IDを認定する基板ID認定工程と、
認定された基板IDと、前記複数の回路基板の各々に関する作業情報であってその基板IDに関連付けられたID関連情報との少なくとも一方を含む基板情報を、前記基板ID認定装置による基板ID認定の都度、前記複数の対基板作業装置のうちの前記基板ID認定装置より下流に配置されたものの中の1以上のものである基板情報利用装置に配信する基板情報配信工程と、
前記基板情報利用装置の各々によって行われるところの、(a)配信された前記基板情報を順序付けて記憶する基板情報記憶工程と、(b)記憶された記憶内容に基づいて前記複数の回路基板の作業順序を認識する作業順序認識工程と、(c)認識した作業順序に従って、前記記憶された基板情報を参照して、作業を行う回路基板に対する作業内容を決定する作業内容決定工程と
を含むことを特徴とする対基板作業方法。
【0055】
本項に記載の対基板作業方法は、平たく言えば、いずれかの対基板作業装置によって回路基板の基板IDが認定された都度、下流側の対基板作業装置に対してその回路基板に関する基板情報を配信し、配信された対基板作業装置において、順序付けて記憶された基板情報に基づいて、その装置が作業を行う回路基板の順序を認識するとともに、次に行う作業の内容を決定することが可能な対基板作業方法である。上流側の対基板作業装置から順繰りに基板情報が転送されるのではなく、基板ID認定の都度、基板情報が配信されるため、例えば、その基板情報を利用する対基板作業装置において、回路基板の搬送に先立って段取替えを行うことができ、システムの稼動ロスを小さくすることができる。
【0056】
なお、明細書が冗長となり過ぎることに配慮して詳しい説明は省略するが、本発明の対基板作業方法においても、上記対基板作業システムの場合と同様に、(2)項ないし(21)項の各々に対応する項を作成することができる。本発明の対基板作業方法は、(2)項ないし(21)項に記載された技術的特徴により本項に記載された態様に限定を加えた態様にて実施することも可能である。
【0057】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態について、電子回路を構成する回路部品を回路基板に装着する部品装着作業(対基板作業の一種である)を行う回路部品装着システムを例にとって詳しく説明する。なお、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではなく、その実施形態の他、前記〔発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効果〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。
【0058】
<回路部品装着システムの構成>
実施形態の回路部品装着システムは、図1に示すように、システム全体のベース部となるシステムベース10と、システムベース10上に、隣接しかつ整列して配置された複数(8つ)の部品装着装置12(対基板作業装置の一種である)と、システムベース10および部品装着装置12とは別体をなし、本システムを統括して制御するシステム制御装置13とを含んで構成されている。部品装着装置12は、ハード的には互いに略同じ構成のものであり、それらの並ぶ方向は、回路基板が搬送される方向とされている。なお、本システムの説明において、部品装着装置12が並ぶ方向を左右方向とし、それに直交する方向を前後方向と呼ぶ。つまり、図における左前方が本システムの前方である。本システムの左方が上流側と、右方が下流側とされており、回路基板は、左方に位置する部品装着装置12から右方に位置する部品装着装置12に向かって搬送され、順次、各装置における部品装着作業が実行される。
【0059】
図2は、2つの部品装着装置12が配置された部分を拡大して示すものであり、右側の部品装着装置12は、外装板等を取り除いて示してある。この図が示すように、各々の部品装着装置12は、装着装置本体14と、装着装置本体14に設けられた各機能部分、すなわち、電子回路部品を供給する部品供給デバイスとしてのテープフィーダ(以下、「フィーダ」と略す)16を複数配設可能な部品供給部18と、回路基板を搬送する機能を有して作業領域内に回路基板を固定可能な基板固定部としての機能をも有する基板保持部20と、フィーダ16から供給される電子回路部品(以下、「部品」と略す)を取出して、その部品を基板保持部20に固定された回路基板に装着する部品取出装着部22とを含んで構成されている。また、部品供給部18と基板保持部20との間には、撮像デバイスとしてのCCDカメラを有して取出された部品を撮像するための部品撮像装置24を備えている。さらに、各々の部品装着装置12は、図示を省略する装着装置制御装置26(図5参照)を有し、その装着装置制御装置26により、上記各機能部分が制御されつつ動作する。また、部品装着装置12の各々は、上部に入出力装置としての操作・表示パネル28を備え、この操作・表示パネル28は、装着装置制御装置26につながっており、各種指令、情報等についてのオペレータ入力の受け付け、部品装着装置12のステータス等に関する情報の表示等を行う。
【0060】
部品供給部18に配設されているフィーダ16は、フィード機構部40とリール保持部42とに概ね区分できる。リール保持部42には、テープ化された電子部品である電子部品テーピングが巻回されたリール46が保持される。詳細な機構の説明については省略するが、フィード機構部40は、内部に駆動源を有し、リール46から延び出すテーピングは、このフィード機構部40によって、装着作業に対応して部品保持ピッチずつ送られるとともに、カバーテープが剥がされ、部品は、部品供給位置において1つずつ供給される。
【0061】
基板保持部20は、図3に示す基板搬送ユニット70を主体に構成される。基板搬送ユニット70は、詳しい説明は省略するが、コンベア装置を主体とするものであり、前部コンベア72および後部コンベア74の2つのコンベア装置を含んで構成されている。前部コンベア72および後部コンベア72は、それぞれ、2つの向かい合うコンベアレール76,78,80,82を備えており、それぞれのコンベアレール76,78,80,82は、図示を省略するコンベアベルトがコンベアモータ84によって周回する構造とされており、回路基板86は、そのコンベアベルトに支承されて移送される。基板搬送ユニット70は、複数の部品装着装置12の各々に備わっており、それらは、本システムにおいて、一直線上に位置する。各部品装着装置12の基板搬送ユニット70は、互いに協調して回路基板を搬送可能とされている。すなわち、これら基板搬送ユニット70は、本システムにおける基板搬送装置を構成しているのである。なお、コンベアレール76以外のコンベアレール78,80,82は、コンベア幅調整モータ88によって前後方向に移動可能とされており、コンベア幅を自由に調整できるとともに、前部コンベア72と後部コンベア74との一方による幅の大きな回路基板の搬送が可能とされている。
【0062】
コンベアモータ84を制御駆動することによって、作業領域内に移送されきた回路基板86は、設定された停止位置に停止させられる。基板搬送ユニット70は、下部に、図示を省略する昇降装置によって昇降可能な回路基板支持板90を有し、この支持板90の上面には、図示を省略する支持ピンが任意の位置に変更可能に設けられており、支持板90が上昇させられることで、その支持ピンに支持されて回路基板86が上昇し、コンベアベルトとの係合を解かれるとともに、コンベアレール76,78,80,82の一部分と支持ピン90とに挟持されて、回路基板86が設定された位置に固定される。固定の解除は、支持板90を下降させればよい。このような構成から、基板搬送ユニット70は、部品装着装置12における基板固定部として機能するのである。
【0063】
図4に示すように、部品取出装着部22は、装着ヘッド100と、装着ヘッド移動装置102とを含んで構成される。装着ヘッド100は、詳しい説明は省略するが、下部に部品保持デバイスとしての吸着ノズル104を有する概して軸状をなす装着ユニット106を複数(8つ)備えている。装着ユニット106は、ユニット保持体108によって、一円周上に等ピッチで、昇降可能にかつ回転可能に保持されている。装着ユニット106は、ヘッド駆動機構110によって、間欠回転させられるとともに、一停止位置である昇降ステーションにおいて下降・上昇させられ、別の停止位置である自転ステーションにおいて自転させられる。昇降ステーションに位置する装着ユニット106により、部品の吸着による取出、吸着解除による回路基板への装着が行われ、また、自転ステーションに位置する装着ユニット106により、保持されている部品の姿勢の変更、補正が行われるのである。
【0064】
装着ヘッド移動装置102は、XYロボット型の移動装置であり、装着ヘッド100を前後方向に移動させるYスライド装置112と、左右方向に移動させるXスライド装置114とを含んで構成される。Yスライド装置112は、装置本体14の一部をなすビーム116に設けられ、Y軸モータ118の駆動により、ボールねじ機構を介して、Yスライド120をYガイド122に沿って移動させる装置であり、Xスライド装置114は、Yスライド120に設けられ、X軸モータ126の駆動により、ボールねじ機構を介して、Xスライド128をXガイド130に沿って移動させる装置である。装着ヘッド100は、そのXスライド128に設けられている。この装着ヘッド移動装置102により、装着ヘッド100は、部品供給部18と基板保持部20において固定された回路基板とにわたって、移動させられる。なお、Xスライド128には、その下部に、撮像デバイスとしてのCCDカメラを有して回路基板に付された基準マーク等を撮像する基準マーク等撮像装置132が設けられており、この撮像装置132は、装着ヘッド100とともに、装着ヘッド移動装置102によって移動させられる。
【0065】
部品装着装置12の各々は、図5にブロック図を示す装着装置制御装置26を有している。なお、図5は、本発明に関係の深いところのみを示している。装着装置制御装置26は、コンピュータ150を主体とする制御装置であり、コンピュータ150は、PU(プロセッシングユニット)152と、ROM154と、RAM156と、入出力インターフェース158と、それらを互いに接続するバス160を有している。入出力インターフェース158には、それぞれの駆動回路162を介して、部品供給部18に配設された各フィーダ16、基板搬送ユニット70、装着ヘッド100、装着ヘッド移動装置102が、それぞれ接続されている。また、部品撮像装置24および基準マーク等撮像装置132が、それらによって得られた撮像データに対して種々の認識結果を取得可能なまでのデータ処理を行う画像処理ユニット164を介して接続されている。操作・表示パネル28も、入出力インターフェース158に接続されている。本システムは、部品装着装置12の各々が各種信号をやり取りし合って動作を行うためため、入出力インターフェース158には、他の部品装着装置12が接続されている。また、装着装置制御装置26のホスト的な役割を示すシステム制御装置13も接続されており、それとの間でも信号,情報等の通信が可能とされている。
【0066】
なお、ROM154には、部品装着装置12の基本動作プログラム等が記憶されており、また、RAM156には、基板情報等の各種データが記憶される。例えば、装着対象となる回路基板についての装着部品順序データ,部品装着位置データ等を含む装着プログラム等のアプリケーションプログラム等は、システム制御装置13から転送されて記憶される。本発明に関係の深いデータの詳細については、後述する。
【0067】
システム制御装置13は、ブロック図は省略するが、PU,ROM,RAM,入出力インターフェース等を含むコンピュータを主体とし、キーボード等の入力装置,モニタ等の表示装置等を含む装置であり、各部品装着装置12との各種信号,データのやり取りを行う通信機能を有してシステム全体を統括して管理する役割を担うとともに、システムに必要な各種データのデータベースとしての役割を担っている。格納されているデータ、部品装着装置12との通信等の本発明に関係の深い内容に関しては、後に詳しく説明する。
【0068】
部品装着装置12の装着作業のための動作を、以下に簡単に説明する。まず、基板搬送ユニット70によって、回路基板は上流側から移送され、設定された停止位置に停止させられる。その位置でその回路基板が固定保持される。詳しく説明すれば、基板種に応じたコンベア幅にコンベア72,74の幅が調整されたあるいは調整されていることが確認された後、上流側の部品装着装置12のコンベア72,74と協調して、回路基板が移送される。回路基板の移送は、例えば、長さ方向の中心が基板搬送ユニット70の基板搬送方向における略中心に位置するように、コンベアモータ84を制御駆動して行われる。コンベア72,74に回路基板が進入したことは、センサによって確認され、コンベアベルトが、その進入時点から、基板種に応じた回路基板の長さに基づく量だけ周回させられるのである。
【0069】
回路基板が固定保持された後、装着ヘッド移動装置102によって、マーク等撮像装置132が、回路基板に付された基準マークの上方に移動させられ、基準マークを撮像する。その撮像データから、保持された回路基板の固定位置のずれが検出される。次に、装着ヘッド100が部品供給部18の上方に移動させられ、装着プログラムおいて定められた取出順序に従って、部品が吸着ノズル104に吸着保持される。詳しくは、昇降ステーションに位置する装着ユニット106が、装着対象とされた部品を供給するフィーダ16の部品供給位置48の上方に位置させられて、その位置でその装着ユニット106が下降させられ、先端に保持された吸着ノズル104に負圧が供給されて、その部品を吸着保持する。そして装着ユニット106が間欠回転させられ、次の装着ユニット106に関する同様の部品取出動作が行われる。このようにして、装着ヘッド26が備える装着ユニット106について、順次、部品取出動作が行われる。なお、取出対象となる部品を供給するフィーダ16によるその部品についての部品供給動作は、装着ユニット106の部品取出動作に先立って行われる。
【0070】
次に、部品を保持した装着ヘッド100は、部品撮像装置24の上方に移動させられる。その位置において、部品撮像装置24は、保持された部品を一視野内に収めて撮像する。得られた撮像データにより、それぞれの部品の保持姿勢におけるずれが検出される。装着ヘッド100は、回路基板の上方に移動させられるのであるが、その移動の途中で、自転ステーションに位置する装着ユニット106が、それが保持する部品に設定された装着方位,検出された部品のずれ量に基づいて、適正な回転位置まで自転させらる。この自転動作は、最初に装着される電子部品を保持する装着ユニット106が昇降ステーションに位置するまで装着ユニット106の間欠回転を繰り返す間に、自転ステーションに位置する装着ユニット106に対して行う。自転ステーションに位置しなかった装着ユニット106については、装着動作における間欠回転の際に行われる。
【0071】
続いて、装着ヘッド100は、回路基板の上方まで移動させられ、装着プログラムにおいて定められた装着順序に従って、回路基板の表面に、保持された部品が装着される。詳しくは、まず、昇降ステーションに位置する装着ユニット106が、装着プログラムにおいて定められた装着位置の上方に位置させられる。このとき、検出された回路基板のずれ量,部品のずれ量に基づいて、装着ヘッド100の移動位置が適正化される。その適正化された位置において、装着ユニット106が所定距離下降させられ、吸着ノズル104に若干の正圧が供給されて、保持した電子部品が配線板の表面に装着される。続いて装着ユニット106が間欠回転させられ、次の装着ユニット106に関する同様の部品装着動作が行われる。このようにして、部品を保持する装着ユニット106について、順次、部品装着動作が行われる。予定されたすべての部品の装着が終了するまで、装着ヘッド100が部品供給部18と回路基板との間を往復させられて、部品取出動作、部品装着動作が繰り返し行われる。
【0072】
なお、部品装着装置12は、検査機能をも有している。設定により任意に検査態様を変更できるが、例えば、複数回連続して部品吸着ミスを発生させた装着ユニット106によって装着された部品、あるいは、部品撮像装置24による部品撮像において閾値を超える量の保持姿勢が検出された部品に関しては、装着後に基準マーク等撮像装置132がその部品の上方からその部品を撮像し、撮像データからその部品の装着位置および姿勢を検査するようにされている。ある一定量を超える装着位置あるいは姿勢のずれが生じている場合は、その装着作業が不適正なものであったことが認識されるのである。
【0073】
当該部品装着装置12に予定されたすべての部品の装着作業が終了した後、回路基板の固定が解除される。当該部品装着装置12による装着作業が完了した回路基板は、基板搬送ユニット70によって、下流側へ移送される。下流側に配置された部品装着装置12についても同様の装着作業が行われ、すべての部品装着装置12による装着作業が完了して、1枚の回路基板に対する本システムによる部品装着が完了する。このように、本システムでは、回路基板を次々に上流側から下流側に向かって複数の部品装着装置12の各々にわたって順次搬送し、複数の部品装着装置12の各々にその各々に定められた装着作業を実行させることによって部品の装着を行う。そして、複数の回路基板を、次々に、上流側の部品装着装置12に搬入することで、次々に各回路基板に対する装着を行って、下流側の部品装着装置12から装着が完了した回路基板が、次々に搬出される。なお、本システムへの回路基板の搬入,搬出は、最も上流側のおよび最も下流側の部品装着装置12のそれぞれの傍らに、コンベア装置を主体とする基板搬入装置,基板搬出装置をそれぞれ配置し、それらの装置によって行えばよい。
【0074】
<回路基板>
本発明の理解を容易にするために、本実施形態では、図6に示すような回路基板に対する部品装着作業を行うこととする。その回路基板86は、いわゆるマルチ基板と呼ばれる基板であり、それぞれが回路基板86における区画領域となる4つの子基板が集合したものである。詳しくは、長方形をなす4つの単位基板部180が、基板搬送方向に並ぶとともに、図における右側である基板搬送方向における下流側から順に基板部{1},基板部{2},基板部{3},基板部{4}と番号付けられて配置されている。4つの単位基板部180の各々は、互いに同じ回路を構成するものであり、同じ部品が各単位基板部180の同じ装着位置に装着される。
【0075】
回路基板86は、基準マークとして、2種のものが付されている。その1種のものは、回路基板86の対角位置(図における右下および左上)に位置する全体基準マーク(以下「全体マーク」と略す)182であり、この全体マーク182をマーク等撮像装置132によって撮像することにより、その撮像データから、固定保持された場合の回路基板86の位置のずれが検出される。もう1種の基準マークは、各単位基板部180ごとに対角位置に付された単位基板部基準マーク(以下、「個別マーク」と略す)184であり、ローカルマークの一種として機能し、各単位基板部180における部品装着位置の基準となるマークである。回路基板製造における誤差等に起因して、各単位基板部180の全体マーク182に対する相対位置は、若干ではあるがバラつく。個別マーク184は比較的狭い領域についての基準マークであることから、個別マーク184を基準とすることにより、位置精度の高い装着作業が可能となる。
【0076】
また、回路基板86には、いずれかの単位基板部180が不良であることを示すバッドマーク186が付される場合がある。バッドマーク186は、各単位基板部180における一定位置に付される。図においては、右(下流側)から3番目である基板部{3}にバッドマーク186が付されている。バッドマーク186が付されている単位基板部180は、装着作業を行わないようにされる。
【0077】
さらに、回路基板86には、基板ID表示子としての2次元バーコード(以下、「2次元コード」と略す)188が付されている。2次元コード188は、それが付されたラベルが回路基板の表面に貼り付けられることによって、回路基板86に付されているのである。2次元コード188は基準マーク等撮像装置132によって撮像され、その撮像データを画像処理することによって、それが付された回路基板の基板IDが認識される。2次元コード188は、回路基板86の下流側前方(図における右下)のコーナ部に付され、回路基板の下流側端からの位置および前方端からの位置が、いずれの基板種においても一定とされている。なお、本実施形態において作業に供される回路基板においては、2つの全体マーク182の一方が2次元コード188の近傍に位置し、それらが基準マーク等撮像装置132の一視野に収まるようにされている。
【0078】
<部品装着作業>
次に、本回路部品装着システムによる部品装着作業を、本発明に関係の深いところを中心に説明する。図7に、データの流れおよび処理に関する機能ブロック図を示す。説明は、適宜、この機能ブロック図を参照しつつ行う。本システムは、上流側から順に装着装置{1},装着装置{2}・・・と番号付けられた複数の部品装着装置12を含んで構成されているが、最上流側に配置された部品装着装置12(装着装置{1})が、基板ID認定装置の一種である基板ID認識装置200として機能する。基板ID認識装置200の下流側に配置された他の部品装着装置12(装着装置{2},{3}・・・)は、いずれも基板情報利用装置202として機能する。基板ID認識装置200および基板情報利用装置202は、システム制御装置13に、データ通信バス204を介して接続されており、各種データのやり取りがなされる。なお、部品装着作業は、複数種にわたる複数の回路基板が、順次、本システムに供給されて行われるものとする。また、説明を単純化するために、基板搬送ユニット70の前部コンベア72(以下、単に「コンベア72」と略す)のみを使用して部品装着作業が行われるものとする。
【0079】
i)基板ID認識装置における作業
最初に、最上流に配置された部品装着装置12(以下、「基板ID認識装置200」と呼ぶ)による作業を、図8に示す基板ID認識装置作業のフローチャートを参照しつつ説明する。まず、ステップ1(以下「S1」と略す。他のステップも同様とする)において、基板ID認識装置200の上流側に設けられた基板搬入装置(図示は省略)から基板ID認識装置200への、回路基板の搬入が開始される。いかなる回路基板が搬入されるか不明であるため、どのような幅の回路基板が搬入されてもよいように、基板ID認識装置200のコンベア72は、そのコンベア幅が基板搬入装置のコンベアの幅に追従する方式とされている。詳しい説明は省略するが、コンベアレール78の上流端部に光電センサが設けられ、基板搬入装置のコンベアレールの下流側端の位置を検出できるようになっており、回路基板が搬入される時点でコンベアレールの位置が整合させられるのである。
【0080】
次いで、S2において、回路基板が基板ID認識位置に停止させられる。先に説明したように、基板ID表示子としての2次元コード188は、回路基板の下流側端および前方端からの位置がいずれの回路基板においても一定の位置に付されており、回路基板が、コンベア72に進入した時点の位置から一定の短い距離だけ移送されて、停止させられるのである。次に、S3において、基板ID認識位置に回路基板を停止させた状態で、基準マーク等撮像装置132により2次元コード188が撮像される。そして、S4において、その撮像データに対して画像処理を行って、その回路基板の基板IDが取得される。本実施形態では、基板ID認識装置200において、基準マーク等撮像装置132、装着装置制御装置26(装置制御部の主体をなす。以下、「装置制御部26」と称す。)のS2〜S4を実行する部分等を含んで、基板ID認定部としての基板ID認識部210が構成されているのである。また、S2〜S4の工程を含んで基板ID認定工程の一種である基板ID認識工程が構成されているのである。
【0081】
取得された基板IDは、S5において、システム制御装置13が備える基板情報配信部212に送信される。基板情報配信部212は、データベース部214から、その基板IDをキーとして、その回路基板の作業に必要な作業情報を受け取る。詳しく説明すれば、データベース部214は、基板ID−基板種データファイル216,基板種別作業情報データファイル218および装着プログラムデータファイル220等の作業情報データファイルを有しており、これらに格納されている必要な作業情報を検索等して、その作業情報を基板情報配信部212に転送するのである。
【0082】
さらに詳しく説明すれば、基板ID−基板種データファイル216には、図9に示すように、基板IDに対応する基板種のデータが格納されており、まず、そのファイル216から、基板IDが認識された回路基板の基板種が検索される。基板種別作業情報データファイル218には、図10に示すように、基板種ごとの基板形状データ(基板形状情報)としての基板幅および基板長さ、基板区画情報としての単位基板部180の数、プログラム情報としての部品装着装置12ごとの装着プログラム名等が格納されている。それらの情報は基板種に依拠した基板依拠情報であり、データベース部214は、それら基板依拠情報の中から、検索された基板種についての作業情報を検索して、基板情報配信部212に転送するのである。基板ID認識装置200に関しては、さらに、検索された基板依拠情報に属する基板ID認識装置200についての装着プログラム名(図10における装着装置1の欄に記載されているもの)をキーとして、装着プログラムデータファイル220の中から該当する装着プログラムを検索し、その装着プログラムをも基板情報配信部212に転送する。
【0083】
基板情報配信部212が入手した基板種依拠情報は、基板IDとともにストックされ、また、検索された装着プログラムとともに基板ID認識装置200が備える作業内容決定部230に返信される。つまり、S6において、基板ID認識装置200は、基板種依拠情報等を受信するのである。次いで、S7において、作業内容決定部230は、送られてきた基板依拠情報等に基づいて、作業内容を決定する。具体的には、基板依拠情報の中に含まれる基板長さデータに基づいて、回路基板の作業位置までの移送距離(例えば、基板ID認識位置から回路基板が装置の中央に位置するまでの移送距離)の決定等が行われる。続いて、S8において、決定された作業内容,送られてきた装着プログラム等に基づいて基板ID認識装置200による装着作業が行われ、装着作業が終了した後、S9において、下流側の部品装着装置12の回路基板搬入準備が完了したことを確認して、回路基板が搬出される。S1〜S9は、回路基板が基板ID認識装置200に供給される度に繰り返し行われる。
【0084】
S8の基板ID認識装置200による装着作業の内容を、図11に示すフローチャートを参照しつつ、さらに詳しく説明する。装着作業では、まず、S11において、回路基板が前述の決定された移送距離に基づいて移送されて固定保持される。続いて、S12において、回路基板に付されている全体マーク182が基準マーク等撮像装置132によって撮像され、さらに、S13において、個々の単位基板部180に付されている個別マーク184が基準マーク等撮像装置132によって撮像される。続くS14において、それらの撮像データを画像処理して、領域別相対位置情報としての回路基板に対する各単位基板部180の位置ずれ、詳しくは、全体マーク182によって規定される回路基板座標における各単位基板部180の位置のずれ量が取得される。続いて、S15において、バッドマーク186が付されている可能性のある箇所が基準マーク等撮像装置132によって撮像される。次に、S16において、バッドマーク186が付されている場合は、画像処置を行うことにより、領域別作業要否情報としての装着不可単位基板部の基板部番号が取得される。これら単位基板部位置ずれ量および装着不可単位基板部番号は、個々の回路基板に関する基板個別情報である。これらの基板個別情報は、S17において、システム制御装置13の基板情報配信部212に送信される。
【0085】
次いで、S18において、装着不可単位基板部の基板部番号を参照しつつ、また、個別マーク184の撮像に基づく各単位基板部180の位置ずれ量に基づいた補正を行いつつ、前述したような動作によって基板ID認識装置200における個々の部品の装着が行われる。予定された部品の装着が完了した後、S19において、回路基板の固定保持が解除されて装着作業が終了する。
【0086】
本実施形態では、基板ID認識装置200は、基板個別情報認識装置としての機能をも有している。すなわち、基準マーク等撮像装置132、装置制御部26のS12〜S16を実行する部分等を含む基板個別情報認識部232を有しているのである。また、S12〜S16を実行する工程を含んで基板個別情報認識工程が構成されているのである。
【0087】
ii)基板情報の配信と記憶
前述のように、基板ID認識装置200からシステム制御装置13の基板情報配信部212へ認識された基板IDが送信され、基板情報配信部212には、データベース部214によって検索されたその基板IDに関連する基板種依拠情報がその基板IDとともにストックされている。また、基板ID認識装置200から基板情報配信部212へは、基板個別情報も送信されている。本実施形態において、基板種依拠情報および基板個別情報は、基板IDと関連付けられるID関連情報として、その基板IDとともに、基板情報を構成する。基板情報は、基板情報配信部212によって、基板ID認識装置200の下流側に配置された他の部品装着装置12(以下、「基板情報利用装置202」と称す)の各々配信される。この基板情報の配信は、基板ID認識装置200による基板IDの認定の都度、詳しくは、回路基板の搬送のタイミングとは関係なく、基板ID認識装置200が1つの回路基板に対する作業が行われる都度行われる。
【0088】
各基板情報利用装置202は、装着装置制御装置26(装置制御部の主体をなす。以下、「装置制御部26」と称す。)に基板情報記憶部234を備え、配信された基板情報は、各々の基板情報記憶部234が受信する。基板情報記憶部234は、作業順配列データファイル236を備え、基板情報は、この作業順配列データファイル236に、配信された順に記憶される。記憶される基板情報は、図12に示すように、基板IDと、それにリンクされたID関連情報であり、基板幅、基板長さ、当該基板情報利用装置202についての装着プログラム名、装着不可単位基板部番号(図では、バッドマークと表示。「0」はバッドマークが付されていないことを表している)、単位基板部位置ずれ量等である。説明を単純化するために、装着プログラム名において、例えば「PB0x」の「x」は装着装置番号を省略している。また、例えば、基板ID「010002」(基板種はAAAである)の「3」は、4つある単位基板部180のうち、基板部{3}にバッドマークが付され、基板部{3}については装着作業を要しないことを示している。単位基板部位置ずれ量は、各単位基板部180の基板搬送方向におけるずれ量とその方向に直交する方向におけるずれ量のみを表示してあり、回路基板の装着表面に平行な面内の回転ずれについては省略している。なお、単位基板部位置ずれ量は、基板種依拠情報である単位基板部数に基づいて、格納領域が割当てられるようにされている。
【0089】
図では、たくさんの回路基板に対する基板情報を記載しているが、作業順序データファイル236は、先入れ先だしメモリ的な機能を有しており、実際には、基板ID認識装置200から当該基板情報利用装置202までに存在する回路基板に関するもののみが記憶されている。詳しく言えば、新たに受信した基板情報は、最後尾に格納され、当該基板情報利用装置202による作業が終了した場合は、先頭の基板情報から消去されることで、記憶内容が更新されるのである。したがって、先頭に格納されているものは、現在行っているあるいはこれから行おうとする回路基板についての基板情報となっている。
【0090】
本実施形態においては、上述したところの、基板情報配信部212によって基板IDおよびID関連情報を基板情報利用装置に配信する工程が、基板情報配信工程に該当し、また、基板情報記憶部234によって基板情報を順序付けて記憶する工程が、基板情報記憶工程に該当する。
【0091】
iii)基板情報利用装置における作業
各基板情報利用装置202においては、回路基板ごとに、図13に示すフローチャートに従った作業が行われる。1つの回路基板に対する作業が完了した後、S21において、作業に供される次の回路基板を検索するために、装置制御部26が備える作業順序認識部250によって、作業順配列データファイル236が参照される。具体的には、作業順序認識部250は、記憶された基板情報の順序から作業順序を認識し、記憶された基板情報の中の先頭に記憶されたものを次に作業を行う回路基板として認定する。このS21を実行する工程を含んで、作業順序認識工程が構成されているのである。
【0092】
次に、S22において、装置制御部26が備える作業内容決定部252が、認定された回路基板についての基板情報に基づいて、詳しくは、基板情報に含まれる装着プログラム名を参照して、実行する装着プログラムを変更する必要がある否かが判断される。先に作業を行っていた回路基板の基板種とこれから作業を行う回路基板の基板種とが同じ場合は、装着プログラムの変更を要しない。基板種が互いに異なる場合は、段取替えとして、その装着プログラム名の装着プログラムをダウンロードする。装着プログラムは、システム制御装置13のデータベース部214の中にある装着プログラムデータファイル220に存在しており、装着プログラム名のデータおよび装着プログラムの送受信は、基板情報配信部212を介して行われる。次に、S23において、作業内容決定部252は、基板情報の中の装着不可単位基板部番号を参照し、バッドマークが付されている場合には、それが付された単位基板部についての部品装着作業をスキップするように、装着プログラムの一時的な修正を行う。基板情報利用装置において、バッドマークの撮像認識を要しないことから、基板情報利用装置による作業の迅速化が図られている。
【0093】
次いで、S24において、作業内容決定部252は、基板情報の中の基板幅のデータに基づいて、自身が備える基板搬送ユニット70のコンベア72の幅を決定する。さらに、S25において、基板長さのデータの基づいて、作業位置に回路基板を位置させるためのコンベア72の移送距離を決定する。本実施形態では、上記S22からS25までの作業内容決定部252によって行われる工程を含んで、基板情報記憶部に記憶された基板情報を参照して、作業を行う回路基板に対する作業内容を決定する作業内容決定工程が構成されている。
【0094】
各種作業内容の決定の後、S26において、上記決定されたコンベア幅にコンベア72が調整され(基板種の変更がない場合は、実際にはコンベア幅は変更されない)、上流側の部品装着装置12の基板搬出準備が整っていることが確認された上で回路基板の搬入が開始され、回路基板は上記決定された移送距離だけ移送されて停止させられる。作業位置に位置する状態で、S27において、当該基板情報利用装置202による装着作業が行われる。予定された装着作業が終了した後、S28において、基板情報記憶部234により、作業順配列データファイル236が更新され、次に作業を行う回路基板に関する基板情報がファイルの先頭にくるようにされる。次にS29において、下流側の部品装着装置12あるいは図示を省略する基板搬出装置の回路基板搬入準備が完了したことを確認して、、回路基板が搬出される。S21〜S29は、回路基板が基板情報利用装置202に供給される度に繰り返し行われる。
【0095】
S27の基板情報利用装置202による装着作業の内容を、図14に示すフローチャートを参照しつつ、さらに詳しく説明する。装着作業では、まず、S31において、回路基板が固定保持される。続いて、S32において、回路基板に付されている全体マーク182が、基準マーク等撮像装置132によって撮像される。前述したように、全体マーク182の1つのものの近傍には、基板ID表示子としての2次元コード188が付されており、その全体マーク188の1つのものを撮像する際に、2次元コード188が同時に撮像される。次のS33において、2次元コード188の撮像データを画像処理することにより、基板IDが認識される。本基板情報利用装置202においては、S33を実行する装置制御部26の部分、基準マーク等撮像装置132等を含んで、基板ID認識部254が構成されている。すなわち、基板情報利用装置202は、基板ID認識部254を備えた認識部装備装置とされているのである。次いで、S33において、装置制御部26が備える基板確認部256により、基板情報記憶部234に記憶されている回路基板の基板IDと認識した基板IDとが照合され、作業位置に固定保持されている回路基板が適切な回路基板であることが確認される。照合の結果、予定された回路基板と異なる回路基板であると認定された場合には、当該基板情報利用装置202は停止させられ、オペレータによる所定の対応作業(説明は省略)が行われる。
【0096】
予定されている回路基板である場合には、S35において、全体マーク182の撮像データを画像処理することにより、回路基板の固定位置のずれ量が取得され、そして、そのずれ量と基板情報の中の単位基板部位置ずれ量とに基づいて、各単位基板部ごとの部品装着のための装着位置の補正値が決定される。基板ID認識装置200によって取得したデータを利用するため、基板情報利用装置において新たにそのデータを取得する必要がなく、その基板情報利用装置による作業の迅速化が図られている。
【0097】
次いで、S36において、上記決定された装着位置の補正値に基づいた補正を行いつつ、前述したような動作によって基板情報利用装置202における個々の部品の装着が行われる。予定された部品の装着が完了した後、S37において、回路基板の固定保持が解除されて装着作業が終了する。
【0098】
以上説明したように、本実施形態では、基板情報利用装置としての部品装着装置が、自身に、回路基板の作業順序を認識するための情報および作業内容を決定するための情報を保有しており、回路基板の搬送のタイミング、すなわち、上流側の部品装着装置の状況と関係なく、自らが作業内容を決定できる。これにより、例えば、段取替え等を迅速に行うことが可能となっている。
【0099】
これまでに説明した上記実施形態では、1つの回路基板に対する作業が終了した後に、次に作業する回路基板についての作業内容決定に関係する工程(S21〜S25)を行うようにされている。上記形態は、発明の理解を容易にするために、単純化した一実施形態であり、上記形態に代え、例えば、ある回路基板に対する装着作業を行っている最中に、次の回路基板に対する作業内容の決定を行うようにしてもよい。つまり、基板情報利用装置202は、回路基板の搬送のタイミングに関係なく配信された基板情報を、回路基板の搬入に先立って自身に記憶しているため、作業内容の決定の時期が、他の部品装着装置12等による制限を受けないのである。また、次の回路基板に対する作業内容の決定だけではなく、例えば、次の次、あるいはそれ以上後に作業を行う回路基板に対する作業内容を決定するものであってもよい。その場合、例えば、決定した作業内容に関するデータを、装置制御部26内に、順番付けてストックするようにすればよい。基板情報利用装置202は、基板情報記憶部234の記憶内容に基づいて、自身で回路基板の作業順序を認識できるため、自身の装着作業の合間等、処理能力に余裕がある時期に、1以上の回路基板の作業内容の決定を行うことも可能なのである。このように、本発明によれば、段取替え等の部品装着作業に先立つ準備作業を行う時期がフレキシブルなものとすることができ、システムの稼動ロスを小さくすることができるのである。
【0100】
iv)回路基板の除去および作業エラー
本実施形態の回路部品装着システムにおいても、イレギュラな事態が生じ得る。例えば、その1つが、システム内に存在する回路基板が、システム外へ除去されるとことである。例えば、いずれかの部品装着装置12が装着作業中に故障したような場合等に、回路基板の除去が行われる。何らかの理由で、オペレータにより、いずれかの部品装着装置12から回路基板がシステム外へ除去された場合、オペレータは、その部品装着装置12が備える操作・表示パネル28から、回路基板が除去された旨の入力操作を行う。装置制御部26は、その操作信号をトリガとして、作業を行っていた回路基板の基板IDを含む除去情報を、システム制御装置13が備える基板除去情報配信部258に送信する。すなわち、本実施形態では、各部品装着装置12は、基板除去情報認識部260を有しており、その基板除去情報認識部260は、装置制御部26の上記処理を行う部分、操作・表示パネル28等を含んで構成されているのである。
【0101】
基板除去情報配信部258は、受信した除去情報を、その部品装着装置12の下流側に配置された部品装着装置12である基板情報利用装置202に配信する。基板情報利用装置202は、制御装置部26に、作業の変更に対応して基板情報記憶部234に記憶された記憶内容を変更する記憶内容変更部262を備えている。記憶内容変更部262は除去情報を受け取り、記憶内容変更部262が備える基板除去対応部264は、除去情報が含む基板IDと基板情報記憶部234に記憶されている基板情報に含まれる基板IDとを照合し、該当する基板IDに対応する基板情報を削除する。以上のような処理を行うことで、システムから回路基板が除去された場合であっても、除去された部品装着装置12の下流側に配置された基板情報利用装置202において、作業順序を誤認することが防止される。
【0102】
イレギュラな事態のもう1つは、部品装着装置12の装着作業における作業エラーである。例えば、複数の単位基板部180のいずれかにおいて作業エラーが発生した場合、該当する単位基板部180は不良となり、その後の部品装着装置による作業を行う必要がない。そこで、本実施形態では、作業エラーの発生に伴う作業内容の変更にも対応できるようにされている。具体的には、前述したように、部品装着装置12は検査機能を有し、部品の装着位置のずれ等が認識できるようになっており、装着位置ずれを伴う部品装着作業が行われた単位基板部180を、装着不要単位基板部と認定し、その単位基板部の装着作業をスキップさせるようにされているのである。
【0103】
いずれかの部品装着装置において、ある回路基板のある部品の装着が、複数回連続して部品吸着ミスを発生させた装着ユニット106によるもの、あるいは、部品撮像装置24による部品撮像において閾値を超える量の保持姿勢が検出されたものである場合に、装着後に基準マーク等撮像装置132が、装着された部品の上方からその部品を撮像する。そして、撮像データからその部品の装着位置および姿勢が検査される。所定量を超える装着位置あるいは姿勢のずれが生じている場合は、装置制御部26によって、その部品の装着が不適正なものであったことが認識され、その部品の存在する単位基板部180が、装着不要単位基板部として認定される。認定の後、装置制御部26は、その回路基板の基板IDと装着不要単位基板部とされた単位基板部の番号とを含む作業エラー情報を、システム制御装置13が備える作業エラー情報配信部268に送信する。すなわち、本実施形態では、各部品装着装置12は、作業エラー情報認識部270を有しており、その作業エラー情報認識部270は、装置制御部26の上記処理を行う部分、基準マーク等撮像装置132等を含んで構成されているのである。
【0104】
作業エラー情報配信部268は、受信した作業エラー情報を、その部品装着装置12の下流側に配置された部品装着装置12である基板情報利用装置202に配信する。基板情報利用装置202は、制御装置部26の記憶内容変更部262は作業エラー情報を受け取り、記憶内容変更部262が備える作業内容変更対応部272は、作業エラー情報に含まれる基板IDと基板情報記憶部234に記憶されている基板情報に含まれる基板IDとを照合し、該当する基板IDに対応する基板情報の装着不可単位基板部の基板部番号を記憶する部分に、作業エラー情報が含む装着不要単位基板部の基板部番号を追加する。以上のような処理を行うことで、いずれかの部品装着装置12に上記作業エラーが発生した場合であっても、その部品装着装置12の下流側に配置された基板情報利用装置202において、不要な作業をスキップし、効率の良い装着作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態である回路部品装着システムの全体を示す斜視図である。
【図2】実施形態の回路部品装着システムを構成する部品装着装置の内部構造を示す斜視図である。
【図3】部品装着装置に設けられた基板搬送ユニットを示す斜視図である。
【図4】部品装着装置の部品取出装着部を示す斜視図である。
【図5】部品装着装置が備える装着装置制御装置のブロック図である。
【図6】実施形態の回路部品装着システムにおいて装着作業に供される回路基板を模式的に示す図である。
【図7】実施形態の回路部品装着システムの本発明に関係の深い部分を示す機能ブロック図である。
【図8】基板ID認識装置における作業の流れを示すフローチャートである。
【図9】基板ID−基板種データファイルに格納されているデータを示すテーブルである。
【図10】基板種別作業情報データファイルに格納されているデータを示すテーブルである。
【図11】基板ID認識装置における装着作業の流れを示すフローチャートである。
【図12】作業順配列データファイルに記憶されている基板情報を示すテーブルである。
【図13】基板情報利用装置における作業の流れを示すフローチャートである。
【図14】基板情報利用装置における装着作業の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
12:部品装着装置(対基板作業装置) 13:システム制御装置 18:部品供給部 20:基板保持部 22:部品取出装着部 26:装着装置制御装置(装置制御部) 70:基板搬送ユニット 72,74:コンベア装置 86:回路基板 132:基準マーク等撮像装置 164:画像処理ユニット 180:単位基板部 182:全体基準マーク 184:単位基板部基準マーク 186:バッドマーク 188:2次元バーコード 200:基板ID認識装置(基板ID認定装置) 202:基板情報利用装置 210:基板ID認識部(基板ID認定部) 212:基板情報配信部 214:データベース部 216:基板ID−基板種データファイル 218:基板種別作業情報データファイル 232:基板個別情報認識部 234:基板情報記憶部 236:作業順配列データファイル 250:作業順序認識部 252:作業内容決定部 254:基板ID認識部 256:基板確認部 258:基板除去情報配信部 260:基板除去情報認識部 262:記憶内容変更部 264:基板除去対応部 268:作業エラー情報配信部 270:作業エラー情報認識部 272:作業内容変更対応部

Claims (2)

  1. 電子回路を構成する回路基板に対して予定された作業を行う対基板作業装置が、コンベア装置を主体として構成された基板搬送経路に沿って複数配置され、複数の回路基板を、順次、回路基板の幅に応じて幅が調整された前記コンベア装置よって、上流側の前記対基板作業装置から下流側の前記対基板作業装置に搬送しつつ、各々の前記対基板作業装置が回路基板に応じた作業を行うことで、前記複数の回路基板の各々に対して、その各々に設定された対基板作業を行う対基板作業システムであって、
    前記複数の対基板作業装置のうちの1つのものである基板ID認定装置に設けられ、前記複数の回路基板の各々の基板IDを認定する基板ID認定部と、
    その基板ID認定部によって基板IDが認定された回路基板に関する作業情報であってその認定された基板IDに関連付けられたその回路基板の幅に関する基板形状情報を含む基板情報を、前記基板ID認定装置による基板ID認定の都度、前記複数の対基板作業装置のうちの前記基板ID認定装置より下流に配置されたものである基板情報利用装置の各々に配信する基板情報配信部と、
    前記基板情報利用装置の各々に設けられ、(a)配信された前記基板情報を配信された順に記憶する基板情報記憶部と、(b)その基板情報記憶部に記憶された順序から前記複数の回路基板の作業順序を認識する作業順序認識部と、(c)認識した作業順序に従って、前記基板情報記憶部に記憶された基板情報を参照して、前記コンベア装置の幅の決定を含むところの、これから作業を行う回路基板に対する作業内容の決定を行う作業内容決定部と、(d)当該対基板作業システムからの回路基板の除去に対応して、前記基板情報記憶部に記憶されているその除去された回路基板についての基板情報を削除する基板除去対応部とを備えた装置制御部と
    を含み、
    当該対基板作業システムが、
    前記複数の対基板作業装置のいずれかにおいて回路基板が除去された場合に、そのいずれかの対基板作業装置の下流側に配置された前記基板情報利用装置の各々に、その除去された回路基板に関する除去情報を配信する基板除去情報配信部を含み、
    前記基板除去対応部が、その基板除去情報配信部から配信された除去情報に基づいて、前記除去された回路基板についての基板情報を削除するものである対基板作業システム。
  2. 前記基板情報が前記基板IDを含みかつ前記除去情報が前記除去された回路基板の前記基板IDを含み、前記基板除去対応部が、前記基板情報記憶部に記憶された基板情報の基板IDと、前記配信された除去情報が含む基板IDとを照合して、該当する基板IDを有する基板情報を削除するものである請求項1に記載の対基板作業システム。
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