ところで、物体の属性情報としては、識別情報の他にも、例えば機能,サイズ,所有者などを示す情報がある。また、この種の詳細情報とは別に、物体の属するカテゴリを示すカテゴリ情報もある。そこで光タグには、このような多様な情報を送信することが求められる。
しかし、従来技術では、送信すべき情報の多様化に十分対応できない。すなわち、LEDの点滅速度を速くし、かつ高速点滅に対応した高速タグリーダを用いることで、多様な情報を送受信することは可能であるが、そうすると、既存のタグリーダつまり低速点滅に対応した低速タグリーダではいかなる情報も受信できなくなる。また、高速タグリーダは露光時間が短いため、情報を受信できるエリアが狭くなる点も問題となる。
それゆえに、この発明の主たる目的は、多様な情報を広範囲にかつ低速タグリーダでも受信可能に送信できる、光学式タグを提供することである。
第1の発明に従う光タグは、情報を光の点滅として送信する光タグ(10)であって、単一の発光素子(16)、情報として第1情報および第2情報を記憶する記憶手段(12)、および第1情報および第2情報に従って発光素子を低速点滅および高速点滅させる点滅手段(14)を備える。
第1の発明では、第1情報および第2情報は、記憶手段によって記憶される。点滅手段は、記憶された第1情報および第2情報に従って、単一の発光素子を低速点滅および高速点滅させる。従って、第1情報および第2情報が同時に送信される。第1情報は、詳細情報よりも広範囲に到達し、低速タグリーダで検出できる。一方、第2情報は、高速タグリーダで検出できる。
第1の発明によれば、第1情報および第2情報を含む多様な情報の送信が可能となり、特に第1情報を広範囲にかつ低速タグリーダでも受信可能に送信できる。
第2の発明に従う光タグは、第1の発明に従属し、点滅手段は、第1情報および第2情報を各々が点灯期間および消灯期間で構成される低速点滅波形および高速点滅波形にそれぞれ変換し、そして高速点滅波形を低速点滅波形の点灯期間のみに分散重畳する。
第2の発明では、第1情報および第2情報は、低速点滅波形および高速点滅波形にそれぞれ変換される。ここで、低速点滅波形は点灯期間および消灯期間で構成され、高速点滅波形もまた点灯期間および消灯期間で構成される。高速点滅波形は、低速点滅波形の点灯期間だけに分散的に重畳される。
第2の発明によれば、低速点滅波形の振幅(点灯時と消灯時の輝度差)が大きいので、第1情報の到達範囲が広がる。
第3の発明に従う光タグは、第1の発明に従属し、点滅手段は、第1情報を点灯期間および減光期間で構成される低速点滅波形に変換し、第2情報を点灯期間および消灯期間で構成される高速点滅波形に変換し、そして高速点滅波形を低速点滅波形の点灯期間および減光期間に連続重畳する。
第3の発明では、第1情報および第2情報は、低速点滅波形および高速点滅波形にそれぞれ変換される。ここで、高速点滅波形は点灯期間および消灯期間で構成されるのに対し、低速点滅波形は点灯期間および減光期間で構成される。高速点滅波形は、低速点滅波形の点灯期間および減光期間を通して連続的に重畳される。
第3の発明によれば、高速点滅を常時行うので、第2情報の送信速度が向上する。
第4の発明に従う光タグは、情報を光の点滅として送信する光タグ(10a)であって、異なる波長の光を発する2つの発光素子(16a,16b)、情報として第1情報および第2情報を記憶する記憶手段(12)、および第2情報に従って2つの発光素子のいずれかを高速点滅させる点滅手段(14a)を備え、点滅手段は点滅対象を第1情報に従って点滅手段の点滅速度よりも遅い速度で切り換えることを特徴とする。
第4の発明では、第1情報および第2情報は、記憶手段によって記憶される。点滅手段は、2つの発光素子のいずれかを第2情報に従って高速点滅させる。このとき点滅対象は、第1情報に従って点滅手段の点滅速度よりも遅い速度で切り換えられる。従って、2つの発光素子にそれぞれ対応する2つの波長の両方をその透過帯域に含む第2のフィルタ(22)が適用された高速タグリーダ(20)で第2情報を検出でき、同時に、これら2つの波長の一方をその透過帯域に含む第1のフィルタ(32)が適用された低速タグリーダ(30)で第1情報を検出できる。
第4の発明によれば、第1情報および第2情報を含む多様な情報の送信が可能となり、特に第1情報を広範囲にかつ低速タグリーダでも受信可能に送信できる。
第5の発明に従う光タグは、情報を光の点滅として送信する光タグ(10b)であって、単一の発光素子(16)、情報として第1情報および第2情報を記憶する記憶手段(12)、および低速点滅モードでは第1情報に従って発光素子を低速点滅させかつ高速点滅モードでは第2情報に従って発光素子を高速点滅させる点滅手段(14b)を備え、点滅手段は低速点滅モードで動作中に所定の外的作用を検知したとき高速点滅モードに移行することを特徴とする。
第5の発明では、第1情報および第2情報は、記憶手段によって記憶される。点滅手段は、低速点滅モードでは第1情報に従って発光素子を低速点滅させ、高速点滅モードでは第2情報に従って発光素子を高速点滅させる。従って、低速点滅モードでは第1情報が送信され、高速点滅モードでは第2情報が送信される。第1情報は、第2情報よりも広範囲に到達し、低速タグリーダで検出できる。一方、第2情報は、高速タグリーダで検出できる。
そして、低速点滅モードで動作中に所定の外的作用が検知されると、高速点滅モードに移行する。従って、受信側は、低速タグリーダで第1情報を検出した後、必要があれば送信側つまり光タグないしは光タグが設けられた物体に所定の外的作用を及ぼすことによって、高速タグリーダで詳細情報をさらに検出できる。なお、具体的な外的作用としては、振動,接触,光,音などがある。
第5の発明によれば、第1情報および第2情報を含む多様な情報の送信が可能となり、特に第1情報を広範囲にかつ低速タグリーダでも受信可能に送信できる。また、所定の外的作用に応じて、第1情報を送信する低速点滅モードから第2情報を送信する高速点滅モードへのモード切り替えを行うので、受信側は、まず第1情報を受信し、もし興味があれば接触など外的作用を光タグに及ぼすことで、光タグから第2情報をさらに受信することができる。
なお、好ましい実施例では、点滅手段は高速点滅モードが一定時間継続すると低速点滅モードに復帰する。これにより、通常は低速点滅モードで広範囲に第1情報を送信し、所定の外的作用を受けたとき高速点滅モードに移行して第2情報を一定期間送信するので、多様な情報を受信側の必要に応じて効率よく送信できる。
また、第2情報の情報量は第1情報の情報量よりも多い。これにより、高速点滅を通して詳細な情報を送信できる。
また、第1情報および第2情報はマンチェスタ符号化方式に従って符号化されている。これにより、精度の高い送受信が簡単に行える。
第6の発明に従うロボットシステム(1)は、任意の物体(2)に設けられ、当該物体に関連する情報を光の点滅として送信する光タグ(10)と、当該物体に関連して運動するロボット(8)とからなるロボットシステムであって、光タグは、単一の発光素子(16)、情報としてカテゴリ情報および詳細情報を記憶する記憶手段(12)、およびカテゴリ情報および詳細情報に従って発光素子を低速点滅および高速点滅させる点滅手段(14)を備え、ロボットは、光の低速点滅からカテゴリ情報を検出しかつ発光素子の位置情報を生成する低速タグリーダ(30)、光の高速点滅から詳細情報を検出する高速タグリーダ(20)、低速タグリーダによってカテゴリ情報が検出されたとき高速タグリーダによって詳細情報が検出されたか否かを判別する第1判別手段(S73)、第1判別手段の判別結果が未検出を示すとき低速タグリーダによって検出されたカテゴリ情報に基づいて詳細情報の要否を判別する第2判別手段(S75)、および第2判別手段によって詳細情報が必要と判別されたとき当該ロボット自身を低速タグリーダによって生成された位置情報に基づいて物体に向かって移動させるための運動制御手段(86,S77)を備える。
第6の発明では、光タグにおいて、物体のカテゴリ情報および詳細情報が記憶手段によって記憶され、点滅手段は、記憶されたカテゴリ情報および詳細情報に従って、単一の発光素子を低速点滅および高速点滅させる。ロボットにおいては、低速タグリーダが、光の低速点滅からカテゴリ情報を検出し、かつ発光素子の位置情報を生成する。一方、高速タグリーダは、光の高速点滅から詳細情報を検出する。
低速タグリーダによってカテゴリ情報が検出されると、高速タグリーダによって詳細情報が検出されたか否かが第1判別手段によって判別される。この判別結果が未検出を示せば、低速タグリーダによって検出されたカテゴリ情報に基づいて、詳細情報の要否が第2判別手段によってさらに判別される。詳細情報が必要と判別されると、このロボットは、低速タグリーダによって生成された位置情報に基づいて、運動制御手段によって物体に向かって移動される。従って、低速タグリーダでカテゴリ情報を検出した後に、必要があればカテゴリ情報の送信元である物体に接近することで、高速タグリーダで詳細情報を検出できる。
第6の発明によれば、光タグが低速点滅および高速点滅を通してカテゴリ情報および詳細情報を同時に送信するので、ロボットは、多様な情報を広範囲で受信できる。特に、カテゴリ情報の到達範囲内でかつ属性情報の到達範囲外に位置しているとき、カテゴリ情報から詳細情報の要否を判別して、必要であればカテゴリ情報の到達範囲内に移動するので、詳細情報の到達範囲外に位置していても必要に応じて詳細情報を取得できる。
第7の発明に従うロボットシステム(1a)は、振動検知手段(98)を有する物体(2a)に設けられ当該物体の属性情報を光の点滅として送信する光タグ(10b)と、当該物体に関連して運動するロボット(8a)とからなるロボットシステムであって、光タグは、単一の発光素子(16)、情報としてカテゴリ情報および詳細情報を記憶する記憶手段(12)、および低速点滅モードではカテゴリ情報に従って発光素子を低速点滅させかつ高速点滅モードでは詳細情報に従って発光素子を高速点滅させる点滅手段(14b)を備え、ロボットは、光の低速点滅からカテゴリ情報を検出しかつ発光素子の位置情報を生成する低速タグリーダ(30)、光の高速点滅から詳細情報を検出する高速タグリーダ(20)、低速タグリーダによってカテゴリ情報が検出されたとき高速タグリーダによって詳細情報が検出されたか否かを判別する第1判別手段(S73)、第1判別手段の判別結果が未検出を示すとき低速タグリーダによって検出されたカテゴリ情報に基づいて詳細情報の要否を判別する第2判別手段(S75)、および第2判別手段によって詳細情報が必要と判別されたとき当該ロボット自身を低速タグリーダによって生成された位置情報に基づいて物体に接触させるための運動制御手段(86,S77a)を備え、点滅手段は低速点滅モードで振動検知手段によって振動が検知されたとき高速点滅モードに移行することを特徴とする。
第7の発明では、光タグにおいて、物体のカテゴリ情報および詳細情報が記憶手段によって記憶される。点滅手段は、低速点滅モードではカテゴリ情報に従って発光素子を低速点滅させ、高速点滅モードでは詳細情報に従って発光素子を高速点滅させる。ロボットにおいては、低速タグリーダが、光の低速点滅からカテゴリ情報を検出し、かつ発光素子の位置情報を生成する。一方、高速タグリーダは、光の高速点滅から詳細情報を検出する。
低速タグリーダによってカテゴリ情報が検出されると、高速タグリーダによって詳細情報が検出されたか否かが第1判別手段によって判別される。この判別結果が未検出を示せば、低速タグリーダによって検出されたカテゴリ情報に基づいて、詳細情報の要否が第2判別手段によってさらに判別される。詳細情報が必要と判別されると、運動制御手段が、低速タグリーダによって生成された位置情報に基づいて、このロボットを物体に接触させる。点滅手段は、かかる接触の結果生じた振動が検知手段によって検知されたとき、低速点滅モードから高速点滅モードに移行する。従って、低速タグリーダでカテゴリ情報を検出した後に、必要があればカテゴリ情報の送信元である物体に接触することで、高速タグリーダで詳細情報を検出できる。
第7の発明によれば、光タグが低速点滅モードではカテゴリ情報を送信しかつ高速点滅モードでは詳細情報を送信するので、ロボットは、多様な情報を広範囲で受信できる。特に、通常は光タグが低速点滅モードで動作し、ロボットは、カテゴリ情報から詳細情報の要否を判別して、必要であれば物体に接触することで光タグのモードを高速点滅モードに移行させるので、必要に応じて詳細情報を取得できる。
第8の発明に従う光タグシステム(1)は、情報を光の点滅として送信する光タグ(10a)と、光タグによって送信された情報を受信する受信装置(8)とからなる光タグシステムであって、光タグは、異なる波長の光を発する2つの発光素子(16a,16b)、第1情報および第2情報を記憶する記憶手段(12)、および第2情報に従って2つの発光素子のいずれかを高速点滅させる点滅手段(14a)を備え、点滅手段は点滅対象を第1情報に従って点滅手段の点滅速度よりも遅い速度で切り換えることを特徴する。また、受信装置は、2つの発光素子にそれぞれ対応する2つの波長を共に透過する第1フィルタ(22)を通して光の高速点滅から第2情報を検出する高速タグリーダ(20)、および2つの発光素子にそれぞれ対応する2つの波長のいずれかを透過する第2フィルタ(32)を通して光の低速点滅から第1情報を検出する低速タグリーダ(30)を備える。
第8の発明では、光タグにおいて、第1情報および第2情報は記憶手段によって記憶され、点滅手段は2つの発光素子のいずれかを第2情報に従って高速点滅させる。このとき点滅対象は、第1情報に従って点滅手段の点滅速度よりも遅い速度で切り換えられる。一方、受信装置において、光の高速点滅からは、2つの発光素子にそれぞれ対応する2つの波長を共に透過する第1のフィルタを有する高速タグリーダが第2情報を検出し、かつ2つの波長のいずれかを透過する第2のフィルタを有する低速タグリーダが第1情報を検出する。
第8の発明によれば、第1情報および第2情報を含む多様な情報の送信が可能となり、特に第1情報を広範囲にかつ低速タグリーダでも受信可能に送信できる。また、高速点滅を常時行うので、第2情報の送信速度が向上する。
この発明によれば、多様な情報を広範囲に、かつ低速タグリーダでも受信可能に送信することができる。
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
図1を参照して、この実施例の移動ロボットシステムは、重畳タグ10が設けられた物体2と、高速タグリーダ20が設けられた移動ロボット4と、低速タグリーダ30が設けられた移動ロボット6と、高速タグリーダ20および低速タグリーダ30が設けられた移動ロボット8とを含む。
図2(A)を参照して、重畳タグ10は、物体2の識別情報を記憶したROM12を含む。ROM12内の識別情報は、カテゴリ(例えば“容器”,“ボール”など)を示すカテゴリ情報と、識別子(ID)や所有者などを示す詳細情報とに区分される。これらのカテゴリ情報および詳細情報は、マンチェスタ符号化方式に従って符号化されている。なお、マンチェスタ符号化では、連続した“0”または“1”の長い列が生じないように符号化が行われる。この結果、受信側で符号化データからクロックを復元することができ、これにより安価で精度のよい伝送が可能となる。点滅制御回路14は、ROM12内のカテゴリ情報および詳細情報に応じてLED16を点滅させる。この点滅制御処理は、図3に示す手順に従う。なお、LED16は赤外線を発するが、可視光を発するものでもよい。
図3を参照して、まずステップS1でカテゴリ情報および詳細情報を読み込む。続くステップS3では、カテゴリ情報および詳細情報を低速点滅情報および高速点滅情報にそれぞれ変換する。この変換処理では、高速点滅および低速点滅の速度比は10対1である。
詳しくは、カテゴリ情報は“01011…”のようなビット列で構成されており、“0”および“1”を消灯期間および点灯期間にそれぞれ割り当てることで、カテゴリ情報に対応する低速点滅情報が得られる。一方、詳細情報は“1101001101011010011…”のようなビット列で構成されており、同様の割り当てを行うことで、詳細情報に対応する低速点滅情報が得られる。
ここでは、詳細情報は10ビットを1単位とし、この10ビットには7ビットの情報本体(IDなど),スタートビット,ストップビットおよびパリティビットが含まれる。このため、詳細情報の10ビットに相当する期間がカテゴリ情報の1ビットに相当する期間と一致するように、高速点滅および低速点滅の速度比を10対1としている。以下では、高速点滅の速さを100Hz、低速点滅の速さを10Hzとする。
続くステップS5では、カテゴリ情報に対応する低速点滅情報に、詳細情報に対応する高速点滅情報を重畳する。詳しくは、低速点滅情報の点灯期間に、高速点滅情報を分散的に割り当てる。つまり、高速点滅情報は、詳細情報の10ビットに相当する期間を単位として分割され、分割された高速点滅情報が低速点滅情報の点灯期間に順番に挿入される。この結果、低速点滅情報の点灯期間は、高速点滅情報によって置換される。なお、ステップS3の変換処理で点滅速度比を10対1とした結果、過不足のない割り当てができる。
そしてステップS7で、重畳された点滅情報に従いLED16を点滅させる。この結果、LED16からは、図6(A)の波形に従って点滅する光が発せられる。
図2(B)を参照して、移動ロボット4に搭載された高速タグリーダ20は、イメージセンサ26を含む。物体2のLED16から発せられた光は、光フィルタ22およびレンズ24を通り、イメージセンサ26の撮像面上で結像する。イメージセンサ26は、かかる光学像をLED16の高速点灯よりも十分速い速度(例えば400fps)で捕捉し、捕捉された光学像に対応する画像信号を出力する。
移動ロボット4の高速画像処理回路28は、イメージセンサ26から出力される画像信号を処理する。この画像処理は、図4に示される手順に従って、例えば400fpsで実行される。図4を参照して、まずステップS21でイメージセンサ26の出力信号つまり原画像を取り込み、次のステップS23で、取り込まれた原画像を二値化する。そしてステップ25で、二値化された原画像(以下“二値画像”)からLED16に対応する領域を検出する。
この後、ステップS27で、検出された領域の位置情報を生成する。ステップS29では検出領域内に含まれる二値画像の点滅を検出し、ステップS31ではこの検出結果つまり図6(B)に示す点滅情報から詳細情報を復号する。ここでは処理速度がLED16の点滅速度よりも十分速いため、図6(A)の原波形と同一の波形を有する点滅情報(図6(B)参照)が得られ、この点滅情報から詳細情報を復号できる。そしてステップS33で、生成された位置情報および復号された詳細情報を出力する。
高速画像処理回路28の出力つまり詳細情報および位置情報は、RAM48に一時記憶される。CPU44は、RAM48内の情報を参照して、例えば物体2に接近する,物体2に接触するといった指令を、必要に応じて運動制御回路46に与える。運動制御回路46は、与えられた指示に従って図示しない駆動機構を制御し、この結果、移動ロボット4は、例えば物体2に向かって移動し、あるいは物体2に接触する。
図2(C)を参照して、移動ロボット6に搭載された低速タグリーダ30は、イメージセンサ36を含む。物体2のLED16から発せられた光は、光フィルタ32およびレンズ34を通り、イメージセンサ36の撮像面上で結像する。イメージセンサ36は、かかる光学像を、LED16の高速点滅よりも十分遅く、かつ低速点滅よりも十分速い速度(例えば40fps)で捕捉し、捕捉された光学像に対応する画像信号を出力する。
低速画像処理回路38は、イメージセンサ36から出力される画像信号を処理する。この画像処理は、図5に示される手順に従い、例えば40fpsで実行される。図5を参照して、まずステップS51でイメージセンサ36の出力信号つまり原画像を取り込み、次のステップS53で、取り込まれた原画像を二値化する。そしてステップ55で、二値化された原画像(以下“二値画像”)からLED16に対応する領域を検出する。
この後、ステップS57で、検出された領域の位置情報を生成する。ステップS59では検出領域内に含まれる二値画像の点滅を検出し、ステップS61ではこの検出結果つまり図6(C)に示す点滅情報からカテゴリ情報を復号する。そしてステップS63で、生成された位置情報および復号されたカテゴリ情報を出力する。
なお、ここでは処理速度が高速点滅よりも十分遅くかつ低速点滅よりも十分速いため、図6(A)の原波形における高速点滅期間は、ほの暗い連続点灯として検出される。この結果、ステップS3(図3参照)で生成された低速点滅情報と相似の波形を有する点滅情報(図6(C)参照)が得られ、この点滅情報からカテゴリ情報を復号できる。
ステップS63における低速画像処理回路38の出力つまりカテゴリ情報および位置情報は、RAM68に一時記憶される。CPU64は、RAM68内の情報を参照して、例えば物体2に接近する,物体2に接触するといった指令を、必要に応じて運動制御回路66に与える。運動制御回路66は、与えられた指示に従って図示しない駆動機構を制御し、この結果、移動ロボット6は、例えば物体2に向かって移動し、あるいは物体2に接触する。
図2(D)を参照して、移動ロボット8に搭載された高速タグリーダ20は、図2(B)のものと同様に構成され、詳細情報および位置情報を出力し、また、低速タグリーダ30は、図2(C)のものと同様に構成され、カテゴリ情報および位置情報を出力する。高速タグリーダ20の出力情報および高速タグリーダ20の出力情報は、RAM88に一時記憶される。
CPU84は、RAM88内の情報を参照して、例えば物体2に向かって移動する,物体2に接触するといった指令を、必要に応じて運動制御回路86に与える。運動制御回路86は、与えられた指示に従って図示しない駆動機構を制御し、この結果、移動ロボット8は、例えば物体2に向かって移動し、あるいは物体2に接触する。
以上のように構成された移動ロボットシステム1は、例えば以下のように動作する。
図1を参照して、物体2に設けられた重畳タグ10から光の高速点滅として送信される詳細情報は高速タグリーダ20によって受信され、同じく重畳タグ10から光の低速点滅として送信されるカテゴリ情報は低速タグリーダ30によって受信される。この場合、両タグリーダの露光時間の関係から、境界線C1および境界線C2がそれぞれ詳細情報およびカテゴリ情報の到達限界となる。ここで、境界線C1は重畳タグ10を中心とする半径r1の円周であり、境界線C2は同じ重畳タグ10を中心とする半径r2(>r1)の円周である。
従って、高速タグリーダ20のみを有する移動ロボット4は、境界線C1内に位置する限り詳細情報を受信できる。また、低速タグリーダ30のみを有する移動ロボット6は、境界線C2内に位置する限りカテゴリ情報を受信できる。
そして、高速タグリーダ20および低速タグリーダ30を共に備える移動ロボット8は、境界線C2内に位置する限りカテゴリ情報を受信でき、境界線C1内に位置している場合には詳細情報をさらに受信できる。従って、移動ロボット8は、両境界線C1およびC2の間の領域に位置しているとき、まず低速タグリーダ30でカテゴリ情報を受信し、その結果、もし物体2に興味があれば境界線C1の内側へと移動した後、高速タグリーダ20で詳細情報を受信することができる。このような動作を行う場合、移動ロボット8のCPU84は、図7のフローに従う処理を実行する。なお、このフロー図に対応するプログラムは、ROM82に記憶される。
図7を参照して、まずステップS71でカテゴリ情報の受信の有無を判別し、YESであればステップS73で、詳細情報の受信の有無をさらに判別する。ここでもYESであれば(このとき物体2は境界C1の内側にある)ステップS81に移り、カテゴリ情報および/または詳細情報を利用して所定の処理例えば物体2を動かすなどの処理を実行する。その後、ステップS71に戻る。
ステップS73でNOであれば(このとき物体2は境界C1およびC2の間にある)、ステップS75に移って詳細情報が必要か否かを判別する。ここでNOであれば、すなわち既に詳細情報を入手していれば、ステップS81に移って、所定の処理を実行する。ステップS75でYESであれば、ステップS77で移動処理を実行し、続くステップS79では、詳細情報の受信の有無を判別する。ステップS79でNOであればステップS77に戻り、YESであればステップS81に移って所定の処理を実行する。
なお、上記の移動処理では、RAM88内の位置情報(図5のS57を参照)に基づいて、物体2に向かって移動するようCPU84が運動制御回路86に指示し、この指示に応じて運動制御回路86が図示しない駆動機構を制御する。これにより移動ロボット8は、物体2に向かって移動し、境界C1の内側に入れば詳細情報の受信が可能となる。
以上から明らかなように、この実施例では、重畳タグ10は、物体2に設けられ、この物体2の属性情報を光の点滅として送信する。詳しくは、属性情報をカテゴリ情報と詳細情報とに区分し、カテゴリ情報および詳細情報に従って単一のLED16を重畳的に低速点滅および高速点滅させる。従って、重畳タグ10からは、カテゴリ情報および詳細情報が同時に送信される。詳細情報は、境界線C1の位置まで到達し、高速タグリーダ20によって検出される。カテゴリ情報は境界線C1よりも遠い境界線C2の位置まで到達し、低速タグリーダ30によって検出される。
これにより、カテゴリ情報および詳細情報を含む多様な情報の送信が可能となり、特にカテゴリ情報を広範囲にかつ低速タグリーダ30でも受信可能に送信できる。
また、低速タグリーダ30は、カテゴリ情報を検出したとき、物体2の位置情報を生成する。移動ロボット8は、低速タグリーダ30および高速タグリーダ20を有し、低速タグリーダ30によってカテゴリ情報が検出されると、高速タグリーダ20によって詳細情報が検出されたか否かを判別し(S73)、この判別結果が未検出を示せば、低速タグリーダ30によって検出されたカテゴリ情報に基づいて、詳細情報の要否を判別する(S75)。詳細情報が必要と判別されると、移動ロボット8は、低速タグリーダ30によって生成された位置情報に基づいて、物体2に向かって移動する(S77)。従って、低速タグリーダ30でカテゴリ情報を検出した後に、必要があればカテゴリ情報の送信元つまり物体2に接近することで、高速タグリーダ20で詳細情報を検出できる。
なお、この実施例では、高速点滅情報は低速点滅情報の点灯期間にのみ割り当てられた(図6(A)参照)が、図8(A)に示す要領で、これを全期間に渡って割り当てることもできる。図8(A)を参照して、低速点滅情報の“0”期間においてLED16を消灯する代わりに減光し、かかる減光期間にも高速点滅情報を割り当てる。この場合の点滅制御処理を図9に示す。
図9を参照して、ステップS1およびS3は、図3のものと同様であり、説明を省略する。ステップS5aの重畳処理では、低速点滅情報の点灯期間(つまり非減光期間)および減光期間に高速点滅情報を連続的に割り当てる。ステップS7では、図8(A)のような波形を有する重畳点滅情報に従ってLED16を点滅させる。
図6(A)の波形では詳細情報を間欠的にしか送信できないが、図8(A)の波形によれば、これを連続的に送信することができる。
高速タグリーダ20はLED16の点滅から図8(B)の高速点滅情報を検出し、低速タグリーダ30は同じLED16の点滅から図8(C)の低速点滅情報を検出する。なお、高速タグリーダ20および低速タグリーダ30の処理は、二値化(S23,S53)の際の閾値などを除いて、図4および図5と同様である。
これにより、詳細情報をより高速に送信することが可能となる。
また、この実施例では、移動ロボット8は、高速点滅検出用および低速点滅検出用の2組の光学系(光フィルタ22および32,レンズ24および34,ならびにイメージセンサ26および36)を備えているが、フレームレート変換を行うことで、一方の光学系を省略できる。この場合の移動ロボット8の構成を図10に示す。
図10の低速タグリーダ30aは、図2(C)の低速タグリーダ30において、光フィルタ32,レンズ34およびイメージセンサ36の代わりにフレームレート変換回路40を備える。他の構成要素は、図2(C)のものと同様である。フレームレート変換回路40へは、高速タグリーダ20のイメージセンサ26から画像信号が与えられる。フレームレート変換回路40は、与えられた画像信号のフレームレートを低速画像処理回路38に適合する値に変換する。このフレームレート変換処理は、図11のフローチャートに従う。
図11を参照して、まずステップS91で変数mに1をセットし、続くステップS93では画像信号をフレームレートf1(例えば400fps)でフレームメモリIm(図示せず)に取り込む。次に、ステップS95で変数mをインクリメントし、そしてステップS97で変数mが定数n(例えば10)と一致するか否かを判別して、NOであればステップS93に戻る。
ステップS97でYESであればステップS99に移って、n個のフレームメモリI1〜Inの平均画像を生成し、生成された平均画像をフレームレートf2(=f1/n)で出力する。出力後、ステップS91に戻る。
この結果、画像信号のフレームレートは、例えば400fpsから40fpsに変換される。低速画像処理回路38は、フレームレート変換後の画像信号を処理する。これにより、移動ロボット8は、より簡単な構成で、図7に示す処理を行うことができる。
また、この実施例では、重畳タグ10は、ただ1つのLED16を用いてカテゴリ情報および詳細情報を送信したが、図12に示す重畳タグ10aのように、互いに異なる波長の光を発する2つのLED16aおよび16bを用いてこれらを送信してもよい。なお、受信側の構成は、光フィルタ(22,32)の透過波長を除き、図2(B)〜図2(D)と同じでよい。
図12の点滅制御回路14aの処理は、図13に示す手順に従う。図13を参照して、ステップS1およびS3は、図3のものと同様である。ステップS5bでは、点滅制御回路14aは、低速点滅情報の“0”期間と“1”期間とで発光させるLEDを切り換える。すなわち、低速点滅情報の“0”に対応する消灯期間は高速点滅情報に従ってLED16a(第1LED)のみを駆動し、低速点滅情報の“1”に対応する点灯期間は高速点滅情報に従ってLED16b(第2LED)のみを駆動する。これにより、LED16aおよび16bからは、図14(A)の波形に従って点滅する光および図14(B)の波形に従って点滅する光がそれぞれ発せられる。
この場合、高速タグリータ20側の光フィルタ22は、LED16aおよび16bの両方の光を透過させ、一方、低速タグリータ30側の光フィルタ32は、LED16aの光のみを透過させる。このため、高速タグリータ20では図14(C)に示す高速点滅情報が検出され、一方、低速タグリーダ30では図14(D)に示す低速点滅情報が検出される。
これによっても、詳細情報をより高速に送信することが可能となる。
この発明の他の実施例を図15〜図19により説明する。まず図15を参照して、この実施例の移動ロボットシステム1aは、図1の移動ロボットシステム1において、物体2および移動ロボット8に代えて物体2aおよび移動ロボット8aを備える。物体2aには、重畳タグ10の代わりに可変速タグ10bが設けられる。他の構成要素は、図1と同様である。
図16(A)を参照して、物体2aは、可変速タグ10bに加え、振動検知回路98およびCPU94を備える。可変速タグ10bは、重畳タグ10(図2(A)参照)において、点滅制御回路14に代えて点滅制御回路14bを含む。点滅制御回路14bは、“低速点滅モード”および“高速点滅モード”の2つの動作モードを有し、低速点滅モードではカテゴリ情報に従ってLED14を低速点滅させ、高速点滅モードでは詳細情報に従ってLED14を高速点滅させる。このため、LED14からは、高速点滅情報または低速点滅情報が送信される。
振動検知回路98は物体2aの振動を検知し、CPU94はこの検知結果に関連して点滅制御回路14bに動作モードの切り換えを命じる。なお、ROM92にはCPU94が動作するためのプログラムが記憶され、RAM96はCPU94に作業領域を提供する。
図16(B)を参照して、移動ロボット8aは、図2(D)と同様の構成を有する。ただし、ROM92内のプログラムがROM82内のそれと一部相違し、このため、図2(D)のものとは異なる動作をする。
以上のよう構成された移動ロボットシステム1aは、次のように動作する。図15を参照して、境界C1およびC2は、図1と同様、高速点滅情報および低速点滅情報の到達限界を示す。いま、物体2aに設けられた可変速タグ10bからは低速点滅情報が送信されており、移動ロボット8aは境界およびC2の間の領域に位置している。このため、移動ロボット8aは、低速タグリーダ30で低速点滅情報を受信し、受信された低速点滅情報を復号することで、物体2aのカテゴリを知ることができる。
こうして認識されたカテゴリから物体2aを興味ある対象と判断すれば、移動ロボット8aは、物体2aに向かって移動し、物体2aに接触する。接触の結果、物体2aに振動が生じる。
図16(A)を参照して、物体2aに生じた振動は振動検知回路98によって検知され、振動検知を示す信号がCPU94に伝えられる。信号を受けたCPU94は、低速点滅モードから高速点滅モードへの切り換えを点滅制御回路14bに命令する。応じて点滅制御回路14bは、カテゴリ情報に従ってLED16を低速点滅させる動作から、詳細情報に従ってLED16を高速点滅させる動作に移行する。これにより、LED16の出力は、図17に示すように、振動検出を境として低速点滅情報から高速点滅情報に切り換わる。
物体2aの近傍に位置する移動ロボット8aは、こうして可変速タグ10bから送信される高速点滅情報を高速タグリーダ20で受信し、受信された高速点滅情報を復号することで、物体2aの詳細情報を知ることができる。そして、認識された詳細情報に基づいて、物体2aを移動させるなどの動作を行う。
CPU94は、高速点滅モードへの切り換えから所定時間(例えば10秒)が経過すると、低速点滅モードへの復帰を点滅制御回路14bに命令する。応じて点滅制御回路14bは、詳細情報に従ってLED16を高速点滅させる動作から、カテゴリ情報に従ってLED16を低速点滅させる動作に移行する。
以上のような動作を行うにあたり、物体2aのCPU94は図18に示すフローに従う処理を実行し、また、移動ロボット8aのCPU84は図19に示すフローに従う処理を実行する。なお、これらのフロー図に対応するプログラムは、ROM92およびROM82にそれぞれ記憶される。
図18を参照して、物体2aのCPU94は、まずステップS111で動作モードを低速点滅モードに設定する。続くステップS113では、振動検知回路98によって振動が検知されたか否かを判別し、NOであればステップS111に戻る。ステップS113でYESであれば、ステップS115で動作モードを高速点滅モードに設定し、そしてステップS117に移る。ステップS117では、ステップS115の設定処理から所定時間が経過したか否かを判別し、YESであればステップS111に戻る。
図19を参照して、ステップS71〜S75,S79およびS81は、図7のものと同様であり、説明を省略する。ステップS77aでは、移動ロボット8aのCPU84は、物体2aに向かって移動する処理および物体2aに接触する処理を実行する。
以上から明らかなように、この実施例では、物体2aは、振動を検知する振動検知回路98を有する。可変速タグ10bは、物体2aの属性情報としてカテゴリ情報および詳細情報を記憶し、低速点滅モードではカテゴリ情報に従って単一のLED16を低速点滅させ、高速点滅モードでは詳細情報に従って同じLED16を高速点滅させる。従って、低速点滅モードではカテゴリ情報が送信され、高速点滅モードでは詳細情報が送信される。カテゴリ情報は、境界線C1の位置まで到達し、高速タグリーダ20によって検出される。カテゴリ情報は境界線C1よりも遠い境界線C2の位置まで到達し、低速タグリーダ30によって検出される。
これにより、カテゴリ情報および詳細情報を含む多様な情報の送信が可能となり、特にカテゴリ情報を広範囲にかつ低速タグリーダ30でも受信可能に送信できる。
また、可変速タグ10bは、低速点滅モードで動作中に振動が検知されると、高速点滅モードに移行する。低速タグリーダ30は、カテゴリ情報を検出したとき、物体2aの位置情報を生成する。移動ロボット8aは、低速タグリーダ30および高速タグリーダ20を有し、低速タグリーダ30によってカテゴリ情報が検出されると、高速タグリーダ20によって詳細情報が検出されたか否かを判別し(S73)、この判別結果が未検出を示せば、低速タグリーダ30によって検出されたカテゴリ情報に基づいて、詳細情報の要否を判別する(S75)。詳細情報が必要と判別されると、移動ロボット8aは、低速タグリーダ30によって生成された位置情報に基づいて、物体2aに向かって移動しかつ物体2a接触する(S77a)。従って、低速タグリーダ30でカテゴリ情報を検出した後に、必要があればカテゴリ情報の送信元つまり物体2aに接近および接触することで、高速タグリーダ20で詳細情報を検出できる。
なお、以上では、任意の物体に設けられ、その物体の属性情報を光の点滅として送信する光タグについて説明したが、光の点滅として送信する情報はどのような情報でもよい。一般には、送信すべき情報として第1情報および第2情報を記憶し、記憶された第1情報および第2情報に従ってLEDなどの発光素子を低速点滅および高速点滅させればよい。この場合、第2情報の情報量を第1情報の情報量よりも多くすることが好ましく、これにより高速点滅を通して詳細な情報を送信できる。