JP4686548B2 - タッピン式のねじ込み体 - Google Patents

Description

本発明は、タッピンねじ山を備え、周回するねじ山リブが少なくとも１つの切屑溝によってねじ山歯に分割されており、さらに、少なくともねじ山の長さ方向の部分領域に位置する非線形の外套面を備え、ねじ山歯断面形状は送り方向で傾斜しているねじ込み体に関するものである。

ねじ山は、一般的な機械工作の設計要素として広く普及している。通常、ねじ山は円筒状に構成されている。そのほか、たとえば送油パイプ用の円錐状のねじ山も普及している。多数の様々なねじ山断面形状が知られており、規格に定められている。１つの工作物のねじ山断面形状は変化していないのが普通であり、すなわち、ねじ山先頭部におけるねじ山断面形状は、ねじ山終端部におけるねじ山断面形状と同一である。しかしながら、たとえばナットのねじ山にネジのねじ山を挿入するのを容易にするために、ねじ山溝とねじ山歯で構成されるねじ山断面形状の、ねじ山の少なくとも部分領域で流れるように変化している形状構成が好都合になり得るような例外も考えられる。

しかしながら、ねじ山に関わる特殊な幾何学的状況がとりわけ生じるのは、特に、ねじ込み可能な人工股関節カップなどで生じるような、湾曲している面のねじ山の場合である。この場合、シェル本体の外套形状に関しては、たとえば内球、半球、超球、円錐球、放物線、円環、楕円、およびこれらに類似する幾何学形状が知られている。このような種類のねじ付きカップを製造するための切削による製造方法では、部分的に、必然的に流れるように変化していくねじ山断面形状の歪みが生じるが、このような歪みは多くのケースでは意図されておらず、望ましいものでもない。特に、部分フランク角（ねじ山歯のそれぞれの辺の角度）が非対称なねじ山歯を利用する場合、その結果として生じるねじ山歯の傾斜方向によっては、カップ赤道部からカップ極部へと向かう方向で、歯の高さが流れるように増加ないし減少するという現象が起こり、その結果、極部に近いねじ山先頭部で大きすぎるねじ山歯が生じるか、または、ほとんど消滅状態に近いねじ山歯が生じるかのいずれかとなる。前者の場合、極端に大きいねじ山歯は、カップをねじ込むために非常に大きい力が必要となり、ないしは、インプラントを完全に骨と接触するまでねじ込めないということにつながる。後者の場合、きわめて不十分な一次固定しか実現されないことになる。いずれの場合にもインプラントが緩むという危険があり、このような緩みは、結果的に、患者の再度の手術を意味することになる。

さらに別の問題は、湾曲した外套面をもつねじ込み体の場合、相応に開口している窩洞へねじ込むときに、個々のねじ山歯が（しばしば想定されるように）同時に食い込むのではないという点にあり、あるいは、ねじ込み方向で見て前方に位置するねじ山先頭部が最初に食い込むという点にある。むしろ、たとえば４つのねじ山リブ周回部を備える球面状の股関節カップの場合、赤道部のほうから見て第２の周回部が最初に食い込み、それに続いて第１および第３の周回部が食い込むことになる。その後で初めて、前述した３つの周回部がすでにほぼ食い込んでしまってから、第４の周回部が窩洞と接触する。その時点で、第１から第３の周回部の歯は、切削された溝の中で強制的に案内されているので、第４のねじ山周回部も、その侵入方向に関して、この強制を受けることになる。すると、ねじ山歯断面形状が傾斜している場合、ねじ山歯断面形状の側へと変位するスライドが生じる。

有限要素法を用いた計算モデルにより、カップ極部のほうに向かってねじ山歯を過剰傾斜させることによって、上記よりも好都合なインプラントと骨の支持部の間の荷重伝達が
得られることが知られている。これは、かかとを地面に着けながら歩行するときの運動サイクルにおける主荷重ベクトルの空間位置、および移植された股関節カップの相対位置の結果として生じるものである。しかし、ねじ山歯断面形状が相応にカップ極部へと向う方向に傾斜していて、切屑溝のねじれ方向が通常のようにねじ山のねじれ方向と一致していると、ねじ山歯と切屑溝の間の片側にカップ極部へと向う方向で形成される切削エッジが、作用を発揮することができなくなる。ねじ込みトルクの好ましくない高い値が、この問題の帰結となる。

上に述べたような事実関係は、少なくとも部分的に欧州特許第０８９８４７０号明細書の対象とされており、したがって公の場で一般に周知となっている。同文献では、特定のねじ山断面形状を得るために、相応に適合化されたピッチの変化をもつねじ山を、ねじ込みプロセス中にねじ山リブ列のすべての歯について同一の推進方向が生じるように構成することが提案されている。このような構成は、医療技術の分野ではすでに人工股関節カップで成功裡に活用されている。この場合、対応するパテントファミリーの保護権は、１つの製造者によって独占使用されている。しかしながら、このような種類のねじ込み体を旋盤技術で製造するためには、ＣＮＣ制御部が可変ねじ山ピッチのプログラミングを可能にする旋盤が必要である。

したがって、ねじ山歯の非対称の部分フランク角を備えた、少なくとも部分領域で湾曲もしくは屈曲した外套面に位置するねじ山を有するとともに、従来のねじ込み体に比べて低減されたねじ込みトルクを有している、比較的旧式の、もしくは相応の装備を有していないＣＮＣ機械でも切削により製造することが可能なねじ込み体、ないしは、従来に代わるねじ込み体を（たとえば股関節カップの形態で）提供することが課題である。

タッピンねじ山を備え、周回するねじ山リブが少なくとも１つの切屑溝によってねじ山歯に分割されており、さらに、少なくともねじ山の長さ方向の部分領域に位置する非線形の、特に湾曲および／または屈曲した外套面を備え、ねじ山歯断面形状は送り方向で傾斜しているねじ込み体において、上記の課題は本発明によれば、切屑溝が、ねじ山のピッチ角の方向と反対向きに延びる角度で、ねじ山歯を分断していることによって解決される。

本発明によるねじ込み体では、切屑溝とねじ山歯の間に形成される切削エッジは、推進方向と反対を向いているほうのねじ山歯の側へと移っており、ないしは、切屑溝の傾き方向またはねじれ方向は、ねじ山のねじれ方向と反対向きに延びており、切屑溝のねじれ角はねじ山のピッチ角よりも大きい。このような種類の形態は、特定の用途にとって好ましい。なぜなら、それによってねじ込みに必要な力が、それ以外の特性へマイナスの影響を及ぼすことなく、明らかに低減されるからである。

切屑溝はねじ込み体で斜めに延びているのが好ましい。本発明の別の好ましい実施形態では、切屑溝はねじれを有している。切削エッジは、赤道部のほうを向いている、ねじ込み体の後側のフランクに配置されるのが好都合である。さらに、ねじれ角ないし斜角は、ねじ山のピッチ角よりも大きいのが好都合である。本発明の別の発展例では、ねじ込み体はインプラントとして具体化され、別の有利な実施形態では人工股関節カップとして具体化される。

工学の分野では右巻のねじ山がスタンダードである。左巻のねじ山は、たとえば相応の向きのねじり荷重が生じるとねじ山結合が緩むことが予想される場合のような、特別な用途に留保されている。それに対して一般には、ねじ接合を右回りに締め付け、左回りに緩
めることを期待する態度が深く根付いている。あらゆるねじ蓋やねじキャップはそのように構成されており、たとえばタッピンねじなどもそうである。ねじ込み体（たとえば人工股関節カップ）でも、その事情は変わらない。ねじ込み体が切屑溝によってタッピン式に設計されている場合、この切屑溝はしばしばニュートラルに延びており、すなわちゼロ度のねじれ角で延びている。その場合、それぞれのねじ山歯の横断面は、ねじ山のピッチ角に基づいてごくわずかだけ正の切削面を形成する。いくつかのタッピンねじは若干左にねじれた、または左方に向かって若干斜めに延びる切屑溝を有しているが、このような切屑溝は、ねじ山のピッチ角を補償するものにすぎず、その切削面はニュートラルに位置決めされている。左にねじれた切屑溝は、たとえば貫通孔のねじ山の場合に、切削時に発生する切屑が下方に向かって運び出されるべきタップの場合に知られている。

人工股関節カップでは右ねじしか知られていない。ねじ山歯は、大半の製品において、カップ軸に対して垂直に延びている。このような股関節カップが、湾曲または屈曲した外套輪郭と、まっすぐに延びる切屑溝と、一定のねじ山ピッチとを有している場合、ねじ込みプロセス中の力は、切屑溝によってねじ山歯に形成される切削面のところで、およびその程度の差こそあれニュートラルに延びる切削エッジのところで、少なくとも理論上では均等に分散される。しかし、ねじ込み中に操作者によって軸方向に及ぼされる圧着力（見積りでおよそ５０から１００Ｎ）のせいで、切削力は、ねじ山歯の極側に位置する切削エッジのほうへ大半が変位する。それならば、正の切削角をもつ切削エッジを備えるように、この側を構成するのがきわめて有意義である。それにより、必要なねじ込み力を明らかに減らすことができるからである。このことは、明瞭なねじれ角を有する右にねじれた切屑溝によって、簡単なやり方で具体化可能である。

これまで、湾曲した外套面とニュートラルに延びるねじ山歯で、左向きの切屑溝を備えている３種類の人工股関節カップが市場に出ている。これはＢｒｅｈｍ社のモデルＭＣ、Ｚｉｍｍｅｒ社のモデルＭＴ、およびＤｅＰｕｙ社のモデルＰＡＣである。最初に挙げたものでは斜角は１５°であり、他の両者は１０°である。その場合、主として作用する切削エッジのすくい角は鈍角（専門用語では「負」）であり、したがって、不都合に挟まれやすく粒状表面になりやすい、全体として受け入れ難い切削挙動につながる。

湾曲した外套面と一定のねじ山ピッチで、ねじ山歯断面形状が極部に向かって傾いていると、まったく別の状況が生じる。その場合、出願人は、歯の極側のフランクがねじ込みプロセスのときにほぼ送られることなく切削面に沿って摺動し、それに対して赤道側のフランクが、カップ軸から半径方向に離れて中実の材料に入り込むように送られることを見いだしている。そして後者のフランクが切屑溝の左向きのねじれまたは左向きの傾きによって、ないし、ねじ山のピッチ角と反対向きに延びる切屑溝のねじれ角もしくは斜角によって、正のすくい角または著しく正のすくい角をもつ切削エッジを備えていれば、所要のねじ込み力がきわめて大幅に低減される。その場合、適当な硬質発泡材へのねじ込み実験における断面は平滑であり、縁部の破断や粒状表面の発生がない。そのうえ、インプラントの装着点を容易に感じ取れるほど触感性が向上する。

次に、より良い理解を得るために、２つの図面を参照しながら本発明について詳しく説明する。ここでは、湾曲した外套面を備える模式的なねじ込み体の例として、それぞれ簡略化して図示された股関節カップを援用している。

図１は、従来技術に基づく人工股関節カップ１の模式的な図面を、若干拡大した縮尺で示している。図示した例は、湾曲したシェル外套の球形の輪郭を有している。ただ１つの切屑溝８によって中断された、４つの周回する歯リブ３，４，５および６を見ることができる。他の切屑溝は簡略化の理由から省略してある。この股関節カップの中心軸は一点鎖
線２で図示されており、切屑溝の中心は一点鎖線７で図示されている。この両者の間には負の斜角αが形成されている。この斜角は、その角度の大きさに関して、ねじ山のピッチ角に呼応しており、その結果、切屑溝によってねじ山歯に形成される切削エッジは、ねじ込みのときの送り方向に関して、ねじ山リブの長さ方向に対して横向きに延びており、すなわちニュートラルに延びている。

図２には、本発明に基づく同じ大きさと形の人工股関節カップ９が示されている。先ほどと同じく、簡略化の理由からただ１つの切屑溝１６しか描き込まれていない。ねじれの図示も、図面製作上のコストを省くために省略してある。４つの周回部１１，１２，１３および１４で構成されるねじ山は、カップ極部に向かって傾いた非対称の歯断面形状を有している。この傾斜方向は、かなり前のところで説明したように、インプラントと骨の支持部との間で伝達されるべき力の均等化をもたらす。切屑溝は、その角度に関して、ねじ山ピッチの角度と反対方向を向いている。切屑溝は、一点鎖線で示されたその中心線１５により、股関節カップの軸１０に対して４５°の角度αをなしている。ねじ山リブに形成される切削エッジは、ねじ山リブの後側で、カップ赤道部のほうを向いたねじ山歯フランクに位置しており、切屑溝が大きく傾いて延びていることにより、それぞれ大幅に正のすくい角を有している。従来技術に比べて好都合な切削エッジの配置によって、この切削エッジは正のすくい角との関連で完全な有効性を発揮し、そのようにして、ねじ込みトルクの明らかな低下をもたらすと同時に、締め過ぎに対する余裕の増大をもたらす。

このように本発明によって、ねじ山のねじれ方向に対して反対向きになった切屑溝の傾き方向またはねじれ方向に基づき、明らかに改善されたねじ込み挙動と締め過ぎ挙動とを有するとともに、緩み率の低下を期待することができる、ねじ山領域に位置する湾曲および／または屈曲した外套面と、ねじ込み方向に傾斜したねじ山歯断面形状とを備える、タッピンねじ山を備えたねじ込み体が提供される。本発明によるねじ込み体は、技術的な問題なしに、かつ時間的な付加コストなしに製造可能である。

従来技術に基づくねじ山を備えた人工股関節カップである。 カップ極部に向かって傾斜したねじ山歯断面形状と、切屑溝の負の斜角とを備える本発明の股関節カップである。

Claims (7)

1. タッピンねじ山を備え、周回するねじ山リブが少なくとも１つの切屑溝によってねじ山歯に分割されており、さらに、少なくともねじ山の長さ方向の部分領域に位置する非線形の外套面を備え、ねじ山歯断面形状が送り方向で傾斜しているねじ込み体において、
   前記切屑溝は、前記ねじ山のピッチ角の方向と反対向きに延びる角度で前記ねじ山歯を分断していることを特徴とするねじ込み体。
2. 前記切屑溝は斜めに延びていることを特徴とする請求項１に記載のねじ込み体。
3. 前記切屑溝はねじれを有していることを特徴とする請求項１に記載のねじ込み体。
4. 前記ねじ込み体は、赤道部のほうを向いている前記ねじ込み体の後側のフランクに配置された切削エッジを有していることを特徴とする請求項１から３までのいずれか１項に記載のねじ込み体。
5. 前記切削溝が延びる角度は前記ねじ山の前記ピッチ角よりも大きいことを特徴とする請求項１から４までのいずれか１項に記載のねじ込み体。
6. 前記ねじ込み体はインプラントとして具体化されていることを特徴とする請求項１から５までのいずれか１項に記載のねじ込み体。
7. 前記ねじ込み体は人工股関節カップとして具体化されていることを特徴とする請求６に記載のねじ込み体。

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