以下、この発明をより詳細に説明するために、この発明を実施するための最良の形態について、添付の図面に従って説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による移動体通信端末の構成を示すブロック図である。本発明の移動体通信端末1は、RF部3及びモデム部4を含んで構成される。RF部3は、アンテナ2で受信した信号を増幅し周波数変換して復調部14に復調用信号を出力したり、変調部15からの変調信号を増幅し周波数変換してアンテナ2に出力する。モデム部4は、移動体通信端末1における不図示のオペレーションシステムにより管理、制御されるソフトウエア構成を有し、レイヤ1(物理層)の処理モジュール、レイヤ2(データリンク層)の処理モジュール及びレイヤ3(ネットワーク層)の処理モジュールから構成される。
レイヤ1の処理モジュールにより無線制御部5が形成される。また、無線制御部5は、イベント1x判定部(イベント判定部)6、時間変化量判定部7、セルリセレクション判定部8、接近速度測定部(速度測定部)9、周波数偏差測定部10、ドップラーシフト測定部11、受信電界強度測定部(受信レベル測定部)12、上り送信電力コマンド判定部(コマンド判定部)13、復調部14及び変調部15を含んで構成される。なお、これらの構成部は、通信機能を有するコンピュータである移動体通信端末1のプロセッサに実行される処理プログラムの各処理モジュールをその機能に応じて便宜的に分類したものである。
イベント1x判定部6は、受信電界強度、周波数偏差、ドップラーシフトの各情報又はこれらの組み合わせた条件に基づいて通信中のハンドオーバ先のセルを検出するためのイベント判定を行う。時間変化量判定部7は、受信電界強度の時間変化量を測定し、測定した時間変化量に基づいてイベント1xが必要であるか否かを判定する。セルリセレクション判定部8は、受信電界強度に応じてセルリセレクション判定を行う。
接近速度測定部9は、移動体通信端末の速度をvとし、移動体通信端末と基地局とが結ぶ直線と移動体通信端末の移動方向とがなす角をθとした場合に|v|cosθで表される基地局への接近速度を算出する。周波数偏差測定部10は、無線リンク(Radio Link)に追加した基地局と自端末との周波数偏差を測定する。ドップラーシフト測定部11は、基地局からの下り信号のドップラーシフトを測定する。
受信電界強度測定部12は、受信電界強度(Ec/Io)、希望波受信電力(RSCP:Received Signal Code Power)、パスロスを測定する。上り送信電力コマンド判定部13は、上り送信電力コマンド累積値を保持し、累積値に応じて無線リンクの削除対象となる基地局を判定する。復調部14は、RF部3から入力したアンテナ2の受信信号を復調し、復調信号として周波数偏差測定部10、ドップラーシフト測定部11、受信電界強度測定部12及び上り送信電力コマンド判定部13に出力する。変調部15は、上り送信電力コマンド判定部13からの上り送信電力コマンドを入力して変調し、変調信号としてRF部3に出力する。
なお、以降の説明において、特に基地局と「セル」との関係が明記されていない場合には、当該セルをカバーする基地局を含めて「セル」と称することとする。また、後述するネットワークとは、本発明の移動体通信端末1と無線通信を介して通信接続する外部ネットワークであり、W−CDMA方式の基地局間のハンドオーバを制御する制御局が接続しているものとする。この制御局は、移動体通信端末1から報告される「Measurement Report」に応じて当該端末1のハンドオーバを制御する。
また、説明の簡単のため、図1は本発明における特有な構成を全て記載しているが、本実施の形態1は、従来の移動体通信端末に対して、DCHオープン直後における受信電界強度の瞬時値を測定する受信電界強度測定部12、この瞬時値を用いてイベント判定するイベント1x判定部6のみを追加した構成であってもよい。
次に動作について説明する。
図2は待ち受けセルとモニタセルとの受信電界強度の時間変化を示すグラフであり、図3は実施の形態1による移動体通信端末の発呼開始から通信終了に至るまでの動作を示すフローチャートである。以降では図1から図3までを適宜用いて動作を説明する。
先ず、移動体通信端末1は、発呼開始時に待ち受けセル(Serving Cell)に対して、制御情報用DL共通チャネルであるFACH(Forward Access CHannel)をオープンし(ステップST1)、受信電界強度測定部12が、アンテナ2及び復調部14を介して待ち受けセル及びモニタセルから受信した信号の受信電界強度を測定する(ステップST2)。ここまでの過程が図2中の通信シーケンス開始に相当する。測定された受信電界強度は、セルリセレクション判定部8に出力される。
セルリセレクション判定部8は、受信電界強度測定部12から入力した受信電界強度に基づいてモニタセルを評価してセルリセレクション判定を行う(ステップST3)。このとき、待ち受けセルより受信レベルが高く、図2中に示したような「受信エラーが発生しない受信レベル」を有する適切なモニタセルであれば、ステップST4に移行して当該セルを待ち受けセルとしてセルリセレクションし、適切なセルでなければステップST5の処理に移行する。
ステップST5において、移動体通信端末1は、ユーザ情報や制御情報転送用のチャネルであるDCH(Dedicated CHannel)がオープンされるまで、ステップST3以降のセルリセレクション判定処理を繰り返し実行する。ここまでの過程が図2におけるFACHと記した矢印で示す期間に相当する。
DCHがオープンすると(図2中のDCHと記した矢印で示す期間の始めの時点)、移動体通信端末1の受信電界強度測定部12は、アンテナ2及び復調部14を介して通信中のセルから受信した下り信号の受信電界強度を測定する。このとき、受信電界強度測定部12は、一定時間内の時間平均による平滑化を行った値ではなく、DCHオープン直後の受信電界強度の瞬時値を測定し、イベント1x判定部6に出力する。受信電界強度の瞬時値とは、DCHオープン直後(0ミリ秒)での受信電界強度をいう。
イベント1x判定部6では、通常のイベント判定とは異なるパラメータセット、例えばDCHオープン直後の受信電界強度の瞬時値を用い、DCHオープンからイベント判定のトリガ時間(Time To Trigger)が0ミリ秒の条件で、セルを無線リンクの追加対象と対象とするイベント1Aの判定を行う(ステップST6)。これにより、DCHオープン直後に通信中のセルの受信電界強度が急激に劣化する場合であっても受信品質が劣化する前のタイミングでハンドオーバすることができる。
なお、通常のイベント判定とは、3GPP(3rd Generation Partnership Project)に規定される制御であり、通信中の移動体通信端末1の移動に伴う最適な移行先(ハンドオーバ先)セルを検知するための処理である。また、通常のイベント判定におけるパラメータセットは、最適な移行先セルを検出するための条件であり、例えばモニタセルを無線リンクに追加、削除又は入れ替えする際の判定時間であるイベント判定保護時間等が含まれる。
本実施の形態1によるDCHオープン時におけるイベント判定では、受信電界強度の瞬時値に応じて、例えば上述した通常のイベント判定より短い判定保護時間で低い判定閾値(イベント判定を開始する受信電界強度の閾値)を設定する。つまり、本実施の形態1では、高速移動中の移動体通信端末1を考慮して、DCHオープン直後におけるイベント判定を短くして、可能な限り早く次のセルについてのイベント判定に移行させるパラメータを設定する。
この判定で最適な移行先セルを検出した旨のイベントが発生すれば、イベント1x判定部6は、ネットワーク(ネットワークに接続する制御局)に対して当該セルをハンドオーバ先とするための(無線リンクの追加対象とする旨の)「Measurement Report(イベント1A)」を、RF部3及びアンテナ2を介してレイヤ3メッセージとしてネットワーク側に送信する(ステップST7)。
上述のように、DCHオープン直後のイベント判定に受信電界強度の瞬時値を用いることにより、高速移動時や多数のセルが存在する場合の急峻な受信レベルの変動に対応させることが可能となる。つまり、待ち受けセルの急激な受信レベル変動に対応可能なパラメータセットを用いることにより、図15(b)に示したような高速移動時におけるその急激な受信レベル低下に対しても応答性を早めることができる。
「Measurement Report(イベント1A)」送信後、又は「Measurement Report(イベント1A)」送信がなかった場合、通常のDCHオープン時の動作に移行する。つまり、移動体通信端末1の受信電界強度測定部12は、従来と同様に、上記セルについて受信電界強度(一定時間内の時間平均による平滑化を行った値)を測定(ステップST8)して、イベント1x判定部6に出力する。
イベント1x判定部6は、通常のイベント判定と同様に、3GPPに従いネットワーク側から指定されたトリガ時間(Time To Trigger)(ms)の間、モニタセルの受信電界強度がイベントの発生条件を満たすか否かによってイベント1Aを判定する(ステップST9)。このとき、上記セルの受信電界強度が上記条件を満たせば、当該セルを無線リンク(Radio Link:RL)の追加対象とする周辺セルサーチ結果である「Measurement Report(イベント1A)」をネットワーク側に送信する(ステップST10)。
「Measurement Report(イベント1A)」送信後、又は「Measurement Report(イベント1A)」送信がなかった場合、イベント1x判定部6は、上記と同様に、ネットワーク側から指定されたトリガ時間(Time To Trigger)(ミリ秒)の間、イベント1Bの発生条件を満たす受信電界強度のセルがあるか否かによってイベント1Bを判定する(ステップST11)。このとき、受信電界強度が上記イベント1Bの発生条件を満たすセルがある場合は、当該セルを無線リンクからの削除対象とする周辺セルサーチ結果である「Measurement Report(イベント1B)」をネットワーク側に送信する(ステップST12)。
さらに、「Measurement Report(イベント1B)」送信後、又は「Measurement Report(イベント1B)」送信がなかった場合、イベント1x判定部6は、上記と同様に、ネットワーク側から指定されたトリガ時間(Time To Trigger)(ミリ秒)の間、イベント1Cの発生条件を満たす受信電界強度のセルがあるか否かによってイベント1Cを判定する(ステップST13)。このとき、受信電界強度が上記イベント1Cの発生条件を満たすセルがあれば、当該セルを無線リンクへの入れ替え対象とする周辺セルサーチ結果である「Measurement Report(イベント1C)」をネットワーク側に送信する(ステップST14)。
上述したステップST8からステップST14までの動作は、DCHがクローズされるまで行われる。DCHがクローズされると(ステップST15)、通信中のセルとの通信が終了する。
以上のように、この実施の形態1によれば、従来のハンドオーバのイベント判定に加えて、DCHオープン時において通常のイベント判定とは異なる、DCHオープン直後の受信電界強度の瞬時値、これに応じた判定保護時間や判定閾値を含むパラメータセットを用いてイベント判定を行う。これにより、DCHオープン直後に受信電界強度が急激に劣化する場合でも、受信品質が劣化する前に適切なタイミングでハンドオーバを行うことが可能になることから、発信の成功率を高め、通信品質の向上を図ることができる。
実施の形態2.
本実施の形態2は、FACHオープン直後に受信電界強度の瞬時値を用いてセルリセレクション判定行い、セルリセレクションが可能であれば、発信シーケンスを止めてセルリセレクションを行い、セルリセレクションの完了後に発信シーケンスを継続するものである。
実施の形態2による移動体通信端末の基本的な構成は、上記実施の形態1の図1に示したものと同一であるが、セルリセレクション判定部8及び受信電界強度測定部12によりFACHオープン直後に受信電界強度の瞬時値を用いたセルリセレクション判定が行われる点で異なる。なお、説明の簡単のため、図1は本発明における特有な構成を全て記載しているが、本実施の形態2は、従来の移動体通信端末に対して、上述のように機能する受信電界強度測定部12及びセルリセレクション判定部8のみを追加した構成であってもよい。
次に動作について説明する。
図4は待ち受けセルとモニタセルの受信電界強度の時間変化を示すグラフであり、図5は実施の形態2による移動体通信端末の発呼開始から通信終了に至るまでの動作を示すフローチャートである。以降では図1、図4及び図5を適宜用いて動作を説明する。
先ず、移動体通信端末1は、発呼開始時に待ち受けセルに対しFACHをオープンする(ステップST1a)。受信電界強度測定部12は、アンテナ2及び復調部14を介して待ち受けセル及びモニタセルから受信した信号の受信電界強度を測定する(ステップST2a)。このとき、FACHオープン直後の受信電界強度の瞬時値を測定する。なお、受信電界強度の瞬時値とは、FACHオープン直後、最初の制御情報用UL共通チャネルであるRACH(Random Access CHannel)の信号を送出するまでの期間内(およそ100ミリ秒未満の期間)の受信電界強度である。受信電界強度測定部12により測定された受信電界強度の瞬時値は、セルリセレクション判定部8に出力される。
セルリセレクション判定部8では、受信電界強度測定部12から入力した受信電界強度の瞬時値に基づいてモニタセルを評価してセルリセレクション判定(CR判定)を行う(ステップST3a)。このとき、待ち受けセルより受信レベルが高く、図4中に示したような「受信エラーが発生しない受信レベル」を有する適切なモニタセルであれば、発信シーケンスを一旦停止して(ステップST4a)、当該適切なセルを待ち受けセルとしてセルリセレクションし(ステップST5a)、発信シーケンスを再開する(ステップST6a)。
このように、FACHオープン直後に待ち受けセルより受信電界強度が良いモニタセルが存在する場合、FACHオープンのコマンドをトリガとして即時にセルリセレクションを行うことにより、待ち受け中の受信電界強度の測定周期が長く、FACHオープン時に受信電界強度が最良でないセルでの発呼となることを防止し、直近のセルレベルを使用してセルリセレクションの判定を行うことが可能となる。また、セルリセレクション判定に受信電界強度として瞬時値を用いることにより、高速移動時や多数のセルが存在する場合の急速な受信レベルの変動に対応することが可能となる。
一方、受信電界強度測定部12は、ステップST3aにおいてセルリセレクションなしと判定された場合又はステップST5aでセルリセレクションしてステップST6aで発信シーケンスを再開した後、待ち受けセル及びモニタセルについて受信電界強度を測定する(ステップST7a)。ここでは、3GPPに規定される通常のセルリセレクション判定と同様に、受信電界強度として一定時間内の時間平均による平滑化を行った値を測定して、セルリセレクション判定部8に出力する。
セルリセレクション判定部8では、受信電界強度測定部12から入力した受信電界強度に基づいてモニタセルを評価してセルリセレクション判定を行う(ステップST8a)。このとき、待ち受けセルより受信レベルが高く、図4中に示したような「受信エラーが発生しない受信レベル」を有する適切なモニタセルであれば、ステップST9aに移行して当該セルを待ち受けセルとしてセルリセレクションし、適切なセルでなければステップST10aの処理に移行する。
ステップST10aにおいて、移動体通信端末1は、ユーザ情報や制御情報転送用のチャネルであるDCH(Dedicated CHannel)がオープンされるまで、ステップST7aからステップST9aまでのセルリセレクション判定処理を繰り返し実行する。ここまでの過程が図4におけるFACHと記した矢印で示す期間(通信シーケンス開始からDCHオープンまでの期間)に相当する。
DCHがオープンすると、受信電界強度測定部12は、アンテナ2及び復調部14を介して通信中セルから受信した下り信号の受信電界強度を測定(ステップST11a)して、イベント1x判定部6に出力する。この受信電界強度は、3GPPに規定される通常のDCHオープン後の処理と同様に一定時間内の時間平均による平滑化を行った値を測定する。
イベント1x判定部6では、3GPPに規定される通常のイベント判定と同様に、ネットワーク側から指定されたトリガ時間(Time To Trigger)(ミリ秒)だけ受信電界強度が上記イベント1Aの発生条件を満たすか否かによってイベント1Aを判定する(ステップST12a)。このとき、モニタセルの受信電界強度が上記条件を満たせば、当該セルを無線リンクの追加対象とする周辺セルサーチ結果である「Measurement Report(イベント1A)」をネットワーク側に送信する(ステップST13a)。
以降、上記実施の形態1と同様に、DCHがクローズされるまで、上記イベント1A、無線リンクの削除及び無線リンクへの入れ替えに関するイベント1B及びイベント1Cの判定について、ステップST11aからステップST17aまでの処理が繰り返し行われる。DCHがクローズされると(ステップST18a)、上述のようにして通信中のセルとの通信が終了する。
なお、セルリセレクションはFACH区間でしか行えないが、従来ではセルリセレクションが完了する前に発信のシーケンスが進み、FACHがクローズされDCHがオープンされてしまうことがあった。そこで、本実施の形態2では、セルリセレクション中はFACH区間における発信シーケンスを停止してセルリセレクションを優先的に行うことで、受信品質の良好なセルでの発信を行うことができる。
以上のように、この実施の形態2によれば、FACHのオープン直後の受信電界強度の瞬時値を用い、FACHオープン時に待ち受けセルより受信電界強度が良いモニタセルが存在する場合、FACHオープンのコマンドをトリガとして即時にセルリセレクションを行うので、発信シーケンス開始時において待ち受けセルの受信電界強度が劣化することにより発信シーケンスが滞って発信失敗となることを抑制できる。これにより、受信電界強度が悪い状態での発呼を回避することが可能となり、発信率を向上させることができる。
実施の形態3.
本実施の形態3は、DCHオープン後にモニタセルの受信電界強度の時間変化量を算出し、この時間変化量をイベント報告の指標とするものである。
実施の形態3による移動体通信端末の基本的な構成は、上記実施の形態1の図1に示したものと同一であるが、時間変化量判定部7及びイベント1x判定部6によりDCHオープン後に受信電界強度の時間変化量を用いたイベント判定が行われる点で異なる。なお、説明の簡単のため、図1は本発明における特有な構成を全て記載しているが、従来の移動体通信端末に対してDCHオープン後の受信電界強度測定の前に受信電界強度の時間変化量を算出する時間変化量判定部7及びこの時間変化量を用いてイベント判定するイベント1x判定部6を追加した構成であってもよい。
次に動作について説明する。
図6は実施の形態3による移動体通信端末のDCHオープンから通信終了に至るまでの動作を示すフローチャートであり、図7は通信中セルとモニタセルとにおける受信電界強度の時間変化を示すグラフであり、図7(a)が従来の移動体通信システムの場合を示し、図7(b)は本実施の形態3による場合を示している。以降では、図1、図6及び図7を適宜用いて動作を説明する。
DCHがオープン(ステップST1b)して通信状態に移行すると、受信電界強度測定部12は、アンテナ2及び復調部14を介してモニタセルから受信した信号の受信電界強度を測定し、時間変化量判定部7に出力する。時間変化量判定部7は、受信電界強度測定部12から入力されるモニタセルの受信電界強度の時間変化量を算出し、算出結果が受信電界強度の時間変化量に関する閾値を超えたか否かを判定する。ここで、閾値を超えた場合又は超えなかった場合、その旨がイベント1x判定部6にそれぞれ通知される。
ステップST2bにおいて、イベント1x判定部6では、時間変化量判定部7から閾値を超えた旨の通知を受けると、ステップST3bに移行して当該モニタセルを無線リンクに追加する、若しくは当該モニタセルを無線リンクに入れ替える旨のイベント(イベント1A/1Cあり)をネットワーク側に送信(イベント1A/1C)する。また、ステップST2bにおいて閾値を超えない旨の通知を受けると、イベント1x判定部6は、イベント報告を行わず、受信電界強度測定部12からの受信電界強度の入力待ち状態に移行する。このとき、受信電界強度測定部12は、通常の通信中の動作と同様に、従来と同様に通信中セル及びモニタセルについて受信電界強度(一定時間内の時間平均による平滑化を行った値)を測定(ステップST4b)して、イベント1x判定部6に出力する。
イベント1x判定部6は、通常のイベント判定と同様に、ネットワーク側から指定されたトリガ時間(Time To Trigger)(ミリ秒)の間、イベントの発生条件を満たす受信電界強度のセルがあるか否かによってイベント1Aを判定する(ステップST5b)。このとき、受信電界強度が上記条件を満たすセルがあれば、当該セルを無線リンクの追加対象とする周辺セルサーチ結果である「Measurement Report(イベント1A)」をネットワーク側に送信する(ステップST6b)。
「Measurement Report(イベント1A)」送信後、又は「Measurement Report(イベント1A)」送信がなかった場合、イベント1x判定部6は、上記と同様に、ネットワーク側から指定されたトリガ時間(Time To Trigger)(ミリ秒)の間、イベント1Bの発生条件を満たす受信電界強度のセルがあるか否かによってイベント1Bを判定する(ステップST7b)。このとき、受信電界強度が上記条件を満たすセルがあれば、当該セルを無線リンクからの削除対象とする周辺セルサーチ結果である「Measurement Report」をネットワーク側に送信(イベント1B)する(ステップST8b)。
さらに、「Measurement Report(イベント1B)」送信後、又は「Measurement Report(イベント1B)」送信がなかった場合、イベント1x判定部6は、上記と同様に、ネットワーク側から指定されたトリガ時間(Time To Trigger)(ミリ秒)の間、イベント1Cの発生条件を満たす受信電界強度のセルがあるか否かによってイベント1Cを判定する(ステップST9b)。このとき、受信電界強度が上記イベント1Cの発生条件を満たすセルがあれば、上記条件を満たすセルを無線リンクへの入れ替え対象とする周辺セルサーチ結果である「Measurement Report」をネットワーク側に送信(イベント1C)する(ステップST10b)。
上述した動作はDCHがクローズされるまで行われる(ステップST11b)。DCHがクローズされると通信が終了する。このように、本実施の形態3では、通信状態時に、常にモニタセルの受信電界強度の時間変化量を算出し、受信電界強度の時間変化量が閾値を越えた場合に、無線リンクの追加もしくは無線リンクの入れ替えのイベント報告を行い、イベント報告実施後及びイベント報告がなかった場合は通常の通信中時の動作に移行する。
図7(a)に示すように、従来のイベント報告では、モニタセルの受信電界強度(Ec/Io)が、通信中セルからの受信電界強度の報告範囲(Reporting Range)(dB)(図中、記号Aを付した受信電界強度範囲)の上限を越え、かつその通信状態がトリガ時間(Time To Trigger)(秒)(図中、記号Bを付した期間)続いた場合にイベント報告が行われていた。
これに対して、本実施の形態3では、図7(b)に示すように、モニタセルの受信電界強度を測定し、受信電界強度の時間変化量(=ΔEc/Io/Δt)が閾値を越えたときにイベント報告を行う。このように、モニタセルの受信電界強度の時間変化量を算出することにより、図7(b)のモニタセルの場合のように急激に受信電界強度が良くなるセルを検出することが可能となる。
また、例えば図7(b)に示すように受信電界強度が時間に応じて直線的に変化すると仮定すれば、従来のようにイベント判定のトリガ時間を待たずともその傾きの値(時間変化量)によりイベント判定を行うことが可能となり、従来よりも早いタイミングで無線リンクの追加及び入れ替えのイベント報告を行うことができる。これにより、通信断回数を減少させることが可能となり通信品質の向上が見込まれる。
なお、上記実施の形態3では、モニタセルの受信電界強度の時間変化量に基づいてイベント判定する例を示したが、イベント判定には、モニタセルの受信電界強度の時間変化量ではなく、通信中セルの受信電界強度の時間変化量を用いても良い。この場合、通信中セルが急激に劣化することを検出するために用いられ、通信中セルの受信電界強度の時間変化量が閾値以上となったときに無線リンクの追加もしくは無線リンクの入れ替えの報告を行うことになる。
以上のように、この実施の形態3によれば、受信電界強度の時間変化量を測定してイベント判定を行うので、受信電界強度が急激に強くなるセル、または急激に劣化するセルの検出タイミングが早くなり、通常のモニタセルを無線リンクに追加する場合より早いタイミングで受信品質が良好なセルを無線リンク対象に追加することができ、安定した通信品質を維持することができる。
また、上記実施の形態3において、モニタセル及び/又は通信中セルの受信電界強度の時間変化量を算出して、この算出結果に基づいてイベント判定することで、急激に受信電界強度が良くなるセル及び/又は劣化するセルを検出することができ、従来よりも早いタイミングでモニタセルの無線リンクへの追加及び入れ替えのイベント報告を行うことが可能となる。これにより、通信断回数を減少させることが可能となり通信品質の向上が見込まれる。
実施の形態4.
本実施の形態4は、移動体通信端末と基地局との接近速度を測定し、移動体通信端末の移動に伴って近づく基地局に対してはそのセルを無線リンクの追加対象とし、遠ざかる基地局に対してはそのセルを無線リンクの削除対象とするものである。
なお、接近速度とは、移動体通信端末の速度をvとし、移動体通信端末と基地局とが結ぶ直線と移動体通信端末の移動方向とがなす角をθとするとき、|v|cosθで表される値である。この場合、移動体通信端末が基地局に近づく方向を正に、遠ざかる方向が負となる。
本実施の形態4による移動体通信端末の基本的な構成は、上記実施の形態1の図1に示したものと同一であるが、接近速度測定部9及びイベント1x判定部6により受信電界強度の測定に加えて接近速度を用いてセルの受信レベルを予測してイベント判定が行われる点で異なる。接近速度測定部9は、GPSによる移動体通信端末1の位置情報及び基地局の配置情報を用いて移動体通信端末の基地局方向への移動速度を接近速度として算出しても良い。また、基地局からの下り信号のドップラー周波数推定結果に基づいて移動体通信端末1の基地局方向への移動速度を推定した結果等を接近速度としても良い。
なお、説明の簡単のため、図1は本発明における特有な構成を全て記載しているが、従来の移動体通信端末に対して接近速度測定部9及び接近速度を用いてイベント判定するイベント1x判定部6を追加した構成であってもよい。
また、基地局方向の移動速度を用いたセルの受信レベル予測の例として、受信電界強度が同じレベルのセルが複数あった場合、接近速度が大きい基地局を優先して無線リンクの追加対象とすることや、接近速度の正負のみで無線リンクの追加削除の判定を行うことや、接近速度に応じてイベント判定のパラメータを変更することなどが考えられる。このように、受信電界強度の測定に加え、移動体通信端末1の基地局への接近速度を用いてセルの受信レベルを予測し、この結果を用いて無線リンクの追加及び削除を行うイベント判定を行うことで通信品質を改善することが可能となる。
次に動作について説明する。
図8は、この発明の実施の形態4による移動体通信端末のDCHオープンから通信終了(終話)に至るまでの動作を示すフローチャートである。以降では、図1及び図8を適宜用いて動作を説明する。
接近速度測定部9は、DCHがオープン(ステップST1c)して通信状態に移行すると、例えば不図示のGPSによって自端末1の位置情報及び基地局の配置情報を取得して自端末1の基地局方向への相対移動速度を接近速度として算出(ステップST2c)し、イベント1x判定部6に出力する。また、基地局からの下り信号のドップラー周波数推定結果に基づいて自端末1の基地局方向への移動速度を推定し、基地局への接近速度としてもよい。
次に、受信電界強度測定部12は、アンテナ2及び復調部14を介してモニタセルから受信した信号の受信電界強度を測定(ステップST3c)し、イベント1x判定部6に出力する。イベント1x判定部6では、接近速度測定部9からの接近速度及び受信電界強度測定部12からの受信電界強度を入力すると、先ず受信電界強度に基づいてイベント1Aを判定する(ステップST4c)。このとき、自端末が設定可能な無線リンク数から無線リンクへの追加が可能であり、かつ、処理対象のモニタセルの受信電界強度がイベント1Aの発生を報告すべき受信電界強度以上であれば、当該セルを無線リンクの追加対象とする周辺セルサーチ結果である「Measurement Report(イベント1A)」をネットワーク側に送信する(ステップST6c)。
一方、イベント1x判定部6は、ステップST4cにおいてイベント1Aが発生していないと判定しても、ステップST5cの処理に移行して接近速度に基づいてイベント1Aの判定を行う。例えば、当該モニタセルの基地局への接近速度が、予め定めた閾値(追加速度閾値)より大きい場合、ステップST6cに移行し、当該セルを無線リンクの追加対象とする「Measurement Report(イベント1A)」をネットワーク側に送信する。
また、「Measurement Report(イベント1A)」送信後、又は「Measurement Report(イベント1A)」送信がなかった場合、イベント1x判定部6は、ネットワーク側から指定されたトリガ時間(Time To Trigger)(ミリ秒)の間、イベントの発生条件を満たす受信電界強度のセルがあるか否かによってイベント1Bを判定する(ステップST7c)。このとき、受信電界強度が上記イベント1Bの発生条件を満たすセルがあれば、当該セルを無線リンクからの削除対象とする周辺セルサーチ結果である「Measurement Report(イベント1B)」をネットワーク側に送信する(ステップST9c)。
ステップST7cにおいてイベント1Bが発生していないと判定されても、イベント1x判定部6は、ステップST8cの処理に移行して接近速度に基づいてイベント1Bの判定を行う。例えば、無線リンクからセルの削除が可能であり、かつ、当該モニタセルの基地局への接近速度が予め定めた閾値(削除速度閾値)未満のセルがある場合、ステップST9cに移行し、当該セルを無線リンクの削除対象とする周辺セルサーチ結果である「Measurement Report(イベント1B)」をネットワーク側に送信する。
「Measurement Report(イベント1B)」送信後、又は「Measurement Report(イベント1B)」送信がなかった場合、イベント1x判定部6は、ネットワーク側から指定されたトリガ時間(Time To Trigger)(ミリ秒)の間、イベントの発生条件を満たす受信電界強度のセルがあるか否かによってイベント1Cを判定する(ステップST10c)。このとき、受信電界強度が上記イベント1Cの発生条件を満たすセルがあれば、この条件を満たすセルを無線リンクへの入れ替え対象とする周辺セルサーチ結果である「Measurement Report(イベント1C)」をネットワーク側に送信する(ステップST12c)。
一方、ステップST10cにおいてイベント1Cが発生していないと判定されても、イベント1x判定部6は、ステップST11cの処理に移行して接近速度に基づいてイベント1Cの判定を行う。例えば、無線リンク数から無線リンクへの入れ替えが可能であり、かつ、当該モニタセルの基地局に対する自端末1の基地局方向の移動速度である接近速度が、無線リンクとして既存のセルと入れ替えるための予め定めた閾値(入れ替え追加速度閾値)より大きく、かつ、接近速度が予め定めた閾値(入れ替え削除速度閾値)未満になる基地局がある場合、ステップST12cに移行し、追加対象セルを無線リンクへの入れ替え対象とする周辺セルサーチ結果である「Measurement Report(イベント1C)」をネットワーク側に送信する。
上述した動作はDCHがクローズされるまで行われる(ステップST13c)。DCHがクローズされると通信が終了する。
以上のように、この実施の形態4によれば、受信電界強度の測定に加えて、移動体通信端末1が基地局に向けて近づく若しくは遠ざかる速度(接近速度)を用いてセルの受信レベルを予測し、この結果を用いてイベント判定してモニタセルについての無線リンクの追加及び削除を行うので、通信品質が比較的良好なセルでの通信が可能となり、安定した通信状態を維持することができる。
実施の形態5.
本実施の形態5は、移動体通信端末が要求した送信電力に追従しない基地局を無線リンクの削除対象とするものである。移動体通信端末1が基地局に送信した下り送信電力制御コマンドの追従性が悪い場合、基地局への上り信号の受信品質も劣化すると考えられる。そこで、本実施の形態5では、受信電界強度の測定に加えて、下り送信電力制御コマンドに追従しない基地局の無線リンクを削除することにより、通信品質の向上を図っている。
実施の形態5による移動体通信端末の基本的な構成は、上記実施の形態1の図1に示したものと同一であるが、イベント1x判定部6により自端末1が要求した送信電力に追従するか否かに応じてそのセルを無線リンクからの削除対象とするイベントを判定する点で異なる。なお、説明の簡単のため、図1は本発明における特有な構成を全て記載しているが、本実施の形態5は、従来の移動体通信端末に対して上述のようなイベント判定を行うイベント1x判定部6の機能のみを追加した構成であってもよい。
図9は、この発明の実施の形態5による移動体通信端末のDCHオープンから通信終了(終話)に至るまでの動作を示すフローチャートである。以降では、図1及び図9を適宜用いて動作を説明する。
イベント1x判定部6は、DCHがオープン(ステップST1d)して通信状態に移行すると、基地局数をnとし、各基地局にi=1〜nをそれぞれ設定して自端末1が要求した送信電力に追従するか否かに応じてそのセルを無線リンクからの削除対象とするイベントを判定する。
先ず、イベント1x判定部6は、i=1に対応する基地局に対し(ステップST2d)、自端末1がDPCH(Dedicated Physical CHannel)を介して当該基地局から受信した信号の受信電力(BTS(1)_下りDPCH受信電力)から、この1スロット前に当該基地局BTS(1)へ送信した下り送信電力制御コマンドに対応する、下り信号の受信電力(1スロット前のBTS(1)_下りDPCH受信電力)を減算してその差分であるBTS(1)_下りDPCH受信スロット電力差分を求める(ステップST3d)。
続いて、イベント1x判定部6は、求めたBTS(1)_下りDPCH受信スロット電力差分と、当該基地局BTS(1)に送信した下り送信電力制御コマンドとを比較する(ステップST4d)。このとき、当該コマンドによる電力差分に一致していなかった場合、基地局BTS(1)についての下りTPC(Transmit Power Control)追従指数を減少させる(ステップST5d)。なお、下りTPC追従指数とは、自端末1が基地局に要求した送信電力に対する追従の度合を示す値であればよい。
上記コマンドによる電力差分に一致していた場合、又はTPC追従指数を減少させた後、イベント1x判定部6は、パラメータiが無線リンク数nであるか否かを判定し(ステップST6d)、nに達していなければiを加算して(ステップST7d)、ステップST3dからの処理を繰り返す。
このように、本実施の形態5では、無線リンクした各基地局BTS(i)(i=1〜n)について下り個別CHの受信電力におけるスロット間差分と当該基地局BTS(i)に送信した下り送信電力制御コマンドとを複数フレーム周期(例えば、復号周期)で比較し、両者が一致しない場合には下りTPC追従指数を減少させる。
パラメータiが無線リンク数nに達すると、受信電界強度測定部12は、アンテナ2及び復調部14を介してモニタセルから受信した信号の受信電界強度を測定(ステップST8d)し、イベント1x判定部6に出力する。イベント1x判定部6では、受信電界強度に基づいてイベント1Aを判定する(ステップST9d)。このとき、処理対象のモニタセルの受信電界強度が、イベント報告すべき受信電界強度以上であれば、当該セルを無線リンクの追加対象とする「Measurement Report(イベント1A)」をネットワーク側に送信する(ステップST10d)。
「Measurement Report(イベント1A)」送信後、又は「Measurement Report(イベント1A)」送信がなかった場合、イベント1x判定部6は、ネットワーク側から指定されたトリガ時間(Time To Trigger)(ミリ秒)の間、イベントの発生条件を満たす受信電界強度のセルがあるか否かによってイベント1Bを判定する(ステップST11d)。このとき、受信電界強度が上記イベント1Bの発生条件を満たすセルがあれば、当該セルを無線リンクからの削除対象とする周辺セルサーチ結果である「Measurement Report(イベント1B)」をネットワーク側に送信する(ステップST13d)。
一方、イベント1x判定部6は、ステップST11dにおいてイベント1Bが発生していないと判定しても、ステップST12dの処理に移行して、下りTPC追従指数に基づいてイベント1Bの判定を行う。例えば、無線リンクからセルの削除が可能であり、かつ、処理対象のモニタセルの基地局の下りTPC追従指数が予め定めた閾値以下である場合、ステップST13dに移行して、当該セルを無線リンクからの削除対象とする周辺セルサーチ結果である「Measurement Report(イベント1B)」をネットワーク側に送信する。
また、「Measurement Report(イベント1B)」送信後、又は「Measurement Report(イベント1B)」送信がなかった場合、イベント1x判定部6は、上記と同様に、ネットワーク側から指定されたトリガ時間(Time To Trigger)(ミリ秒)の間、イベントの発生条件を満たす受信電界強度のセルがあるか否かによってイベント1Cを判定する(ステップST14d)。このとき、受信電界強度が上記条件を満たすセルがあれば、当該セルを無線リンクの入れ替え対象とする周辺セルサーチ結果である「Measurement Report(イベント1C)」をネットワーク側に送信する(ステップST16d)。
一方、イベント1x判定部6は、イベント1Cが発生していないと判定しても、ステップST15dの処理に移行して、下りTPC追従指数に基づいてイベント1Cの判定を行う。例えば、所定の無線リンク数に基づいて無線リンクの入れ替えが可能であり、かつ、下りTPC追従指数が予め定めた閾値以下であるセルが存在する場合、ステップST16dに移行して、下りTPC追従指数が予め定めた閾値以下であるセルの代わりに、受信電界強度が上記条件を満たさなかったセルを無線リンクの入れ替え対象とする周辺セルサーチ結果である「Measurement Report(イベント1C)」をネットワーク側に送信する。
上述したステップST2dからステップST16dまでの処理は、DCHがクローズされるまで行われる(ステップST17d)。DCHがクローズされると通信が終了する。このように、受信電界強度によるイベント判定でイベント1B及びイベント1Cが発生しない場合においても、下りTPC追従指数が閾値を下回っていた場合には、その基地局がTPCコマンドに追従しないと判定し、無線リンクからの削除の対象とすることにより、イベント1B及びイベント1Cを発生させる。
以上のように、この実施の形態5によれば、移動体通信端末1が基地局に送信した下り送信電力制御コマンドの追従性により基地局への上り信号の受信状態を推定するので、追従性が良くなく受信品質が良くないと考えられる基地局のモニタセルを無線リンクから削除することができ、通信品質を向上させることができる。
実施の形態6.
本実施の形態6は、移動体通信端末が要求したFBI(FeedBack Information)に対して追従しない基地局を無線リンクからの削除対象とするものである。移動体通信端末1が基地局に送信したFBIへの追従性が良くない場合、この基地局への上り信号の受信品質も良くないと推定することができる。そこで、本実施の形態6では、受信電界強度の測定に加えて、FBIに追従しない基地局の無線リンクを削除することで、通信品質の向上を図っている。
実施の形態6による移動体通信端末の基本的な構成は、上記実施の形態1の図1に示したものと同一であるが、イベント1x判定部6により自端末1が要求したFBIに追従するか否かに応じてそのセルを無線リンクからの削除対象とするイベントを判定する点で異なる。なお、説明の簡単のため、図1は本発明における特有な構成を全て記載しているが、本実施の形態6は、従来の移動体通信端末に対して上述のようなイベント判定を行うイベント1x判定部6の機能のみを追加した構成であってもよい。
図10は、この発明の実施の形態6による移動体通信端末のDCHオープンから通信終了(終話)に至るまでの動作を示すフローチャートである。以降では、図1及び図10を適宜用いて動作を説明する。なお、以降の説明において、基地局は、下り送信ダイバーシチ用の2つのアンテナA,Bを有し、アンテナA,Bから送出するそれぞれの信号が、移動体通信端末1側にて合成後の受信電力が大きくなるように、移動体通信端末1内にてアンテナBの共通チャネルと個別チャネルの位相角を推定し、その結果として移動体通信端末1より通知されるFBIに従い、アンテナBの共通チャネルに対する個別チャネルの位相角を制御するTxDiv Closed Loop Mode1を適用しているものとする。
イベント1x判定部6は、DCHがオープン(ステップST1e)して通信状態に移行すると、無線リンクしている基地局数をnとし、各基地局にi=1〜nをそれぞれ設定して自端末1が要求したFBIに追従するか否かに応じてそのセルを無線リンクからの削除対象とするイベントを判定する。
ここで、イベント1x判定部6は、i=1に対応する通信中の基地局BTS(1)に対し(ステップST2e)、基地局BTS(1)のアンテナBの共通チャネルとアンテナBの下り個別チャネルの位相角(位相差θ)と、アンテナBの共通チャネルと個別チャネルの位相角を基地局BTS(1)に指示するコマンド(FBI)とを複数フレーム周期で比較する(ステップST3e)。このとき、当該コマンドによる位相角に一致しない場合、基地局BTS(1)についてのFBI追従指数を減少させる(ステップST4e)。なお、FBI追従指数とは、自端末1が基地局に要求したFBIに対する追従の度合を示す値であればよい。
上記コマンドによる位相角に一致していた場合、又はFBI追従指数を減少させた後、イベント1x判定部6は、パラメータiが無線リンク数nであるか否かを判定し(ステップST5e)、nに達していなければiを加算して(ステップST6e)、ステップST3eからの処理を繰り返す。
このように、本実施の形態6では、各基地局BTS(i)(i=1〜n)についてのFBIコマンドと、アンテナBの共通チャネルとアンテナBの下り個別チャネルの位相角とを複数フレーム周期(例えば、復号周期)で比較し、両者が一致しない場合にはFBI追従指数を減少させる。
パラメータiが無線リンク数nに達すると、受信電界強度測定部12は、アンテナ2及び復調部14を介してモニタセルから受信した信号の受信電界強度を測定(ステップST7e)し、イベント1x判定部6に出力する。イベント1x判定部6では、受信電界強度に基づいてイベント1Aを判定する(ステップST8e)。このとき、処理対象のモニタセルの受信電界強度が、イベント報告すべき受信電界強度以上であれば、当該セルを無線リンクの追加対象とする「Measurement Report(イベント1A)」をネットワーク側に送信する(ステップST9e)。
「Measurement Report(イベント1A)」送信後、又は「Measurement Report(イベント1A)」送信がなかった場合、イベント1x判定部6は、ネットワーク側から指定されたトリガ時間(Time To Trigger)(ミリ秒)の間、イベントの発生条件を満たす受信電界強度のセルがあるか否かによってイベント1Bを判定する(ステップST10e)。このとき、受信電界強度が上記条件を満たすセルがあれば、当該セルを無線リンクからの削除対象とする周辺セルサーチ結果である「Measurement Report(イベント1B)」をネットワーク側に送信する(ステップST12e)。
一方、イベント1x判定部6は、ステップST10eにおいてイベント1Bが発生していないと判定しても、ステップST11eの処理に移行してFBI追従指数に基づいてイベント1Bの判定を行う。例えば、無線リンクからセルの削除が可能であり、かつ、処理対象のモニタセルの基地局のFBI追従指数が予め定めた閾値以下である場合、ステップST12eに移行して、当該セルを無線リンクからの削除対象とする「Measurement Report(イベント1B)」をネットワーク側に送信する。
また、「Measurement Report(イベント1B)」送信後、又は「Measurement Report(イベント1B)」送信がなかった場合、イベント1x判定部6は、上記と同様に、ネットワーク側から指定されたトリガ時間(Time To Trigger)(ミリ秒)の間、イベントの発生条件を満たす受信電界強度のセルがあるか否かによってイベント1Cを判定する(ステップST13e)。このとき、受信電界強度が上記条件を満たすセルがあれば、当該セルを無線リンクの入れ替え対象とする「Measurement Report(イベント1C)」をネットワーク側に送信する(ステップST15e)。
一方、イベント1x判定部6は、ステップST13eにおいてイベント1Cが発生していないと判定しても、ステップST14eの処理に移行してFBI追従指数に基づいてイベント1Cの判定を行う。例えば、所定の無線リンク数に基づいて無線リンクの入れ替えが可能であり、かつ、FBI追従指数が予め定めた閾値以下であるセルが存在する場合、ステップST15eに移行して、FBI追従指数が予め定めた閾値以下であるセルの代わりに、受信電界強度が上記条件を満たさなかったセルを無線リンクの入れ替え対象とする周辺セルサーチ結果である「Measurement Report(イベント1C)」をネットワーク側に送信する。
上述したステップST2eからステップST15eまでの処理は、DCHがクローズされるまで行われる(ステップST16e)。DCHがクローズされると通信が終了する。このように、受信電界強度によるイベント判定でイベント1B及びイベント1Cが発生しない場合においても、FBI追従指数が閾値を下回っていた場合には、その基地局がFBIコマンドに追従しないと判定し、無線リンクからの削除対象とすることにより、イベント1B及びイベント1Cを発生させる。
以上のように、この実施の形態6によれば、移動体通信端末1が基地局に送信したFBIへの追従性により、基地局の上り信号の受信状態を推定するので、追従性が良くなく受信品質が良くないと考えられる基地局のモニタセルを無線リンクから削除することができ、通信品質を向上させることができる。
実施の形態7.
本実施の形態7は、基地局から上り送信電力制御コマンドによって移動体通信端末に対して要求される上り送信電力が大きい基地局を無線リンクからの削除対象とするものである。このように、上り送信電力制御コマンドにて要求される上り送信電力の大きい基地局のRLを削除することで、移動体通信端末と基地局との間における余分な無線リソースを開放することが可能となる。
実施の形態7による移動体通信端末の基本的な構成は、上記実施の形態1の図1に示したものと同一であるが、イベント1x判定部6及び上り送信電力コマンド判定部13によって、基地局から送信された上り送信電力制御コマンドで自端末1に要求された送信電力の大きさに応じてそのセルを無線リンクからの削除対象とするイベントを判定する点で異なる。なお、説明の簡単のために、図1は本発明における特有な構成を全て記載しているが、本実施の形態7は、従来の移動体通信端末に対して上述のような上り送信電力コマンド判定部13及びイベント1x判定部6のみを追加した構成であってもよい。
図11は、この発明の実施の形態7による移動体通信端末のDCHオープンから通信終了(終話)に至るまでの動作を示すフローチャートである。以降では、図1及び図11を適宜用いて動作を説明する。
上り送信電力コマンド判定部13は、DCHがオープンして通信状態に移行すると(ステップST1f)、現在無線リンクしている基地局数をnとし、各基地局にi=1〜nをそれぞれ設定して自端末1が上り送信電力制御コマンドにより要求された送信電力の大きさに応じてそのセルを無線リンクからの削除対象とするイベントを判定する。
ここで、上り送信電力コマンド判定部13は、i=1に対応する通信中の基地局BTS(1)に対し(ステップST2f)、基地局BTS(1)から受信した上り送信電力制御コマンドが上り信号の送信電力のアップを要求しているかダウンを要求しているかを判定する(ステップST3f)。このとき、上り信号の送信電力のダウンを要求している場合、基地局BTS(1)についての上り送信電力制御コマンド累積値(上り送信電力制御コマンドにより要求された送信電力)を減少させる(ステップST4f)。
また、上り信号の送信電力のアップを要求している場合、基地局BTS(1)についての上り送信電力制御コマンド累積値(上り送信電力制御コマンドにより要求された送信電力)を増加させる(ステップST5f)。
上り送信電力制御コマンド累積値を増加又は減少させた後、上り送信電力コマンド判定部13は、パラメータiが無線リンク数nであるか否かを判定し(ステップST6f)、nに達していなければiを加算して(ステップST7f)、ステップST3fからの処理を繰り返す。上り送信電力制御コマンド累積値は、上り送信電力コマンド判定部13からイベント1x判定部6に出力される。
このように、本実施の形態7では、無線リンクした各基地局BTS(i)(i=1〜n)についての上り送信電力制御コマンドが上り信号の送信電力のアップを要求しているかダウンを要求しているかを複数フレーム周期(例えば、復号周期)で判定し、上り送信電力制御コマンドの要求に応じてその累積値を加減する。
パラメータiが無線リンク数nに達すると、受信電界強度測定部12は、アンテナ2及び復調部14を介してモニタセルから受信した下り信号の受信電界強度を測定し、イベント1x判定部6に出力する(ステップST8f)。イベント1x判定部6では、受信電界強度に基づいてイベント1Aを判定する(ステップST9f)。このとき、処理対象のモニタセルの受信電界強度が、イベント報告すべき受信電界強度以上であれば、当該セルを無線リンクの追加対象とする「Measurement Report(イベント1A)」をネットワーク側に送信する(ステップST10f)。
「Measurement Report(イベント1A)」送信後、又は「Measurement Report(イベント1A)」送信がなかった場合、イベント1x判定部6は、ネットワーク側から指定されたトリガ時間(Time To Trigger)(ミリ秒)の間、イベントの発生条件を満たす受信電界強度のセルがあるか否かによってイベント1Bを判定する(ステップST11f)。このとき、受信電界強度が上記条件を満たすセルがあれば、当該セルを無線リンクからの削除対象とする「Measurement Report(イベント1B)」をネットワーク側に送信する(ステップST13f)。
一方、イベント1x判定部6は、ステップST11fにおいてイベント1Bが発生していないと判定しても、ステップST12fの処理に移行して当該セルの基地局についての上り送信電力制御コマンド累積値に基づいてイベント1Bの判定を行う。例えば、無線リンクからセルの削除が可能であり、かつ、処理対象のモニタセルの基地局の上り送信電力制御コマンド累積値が予め定めた閾値以上である場合、ステップST13fに移行して、当該セルを無線リンクからの削除対象とする「Measurement Report(イベント1B)」をネットワーク側に送信する。
また、「Measurement Report(イベント1B)」送信後、又は「Measurement Report(イベント1B)」送信がなかった場合、イベント1x判定部6は、上記と同様に、ネットワーク側から指定されたトリガ時間(Time To Trigger)(ミリ秒)の間、イベントの発生条件を満たす受信電界強度のセルがあるか否かによってイベント1Cを判定する(ステップST13e)。このとき、受信電界強度が上記条件を満たすセルがあれば、当該セルを無線リンクの入れ替え対象とする周辺セルサーチ結果である「Measurement Report(イベント1C)」をネットワーク側に送信する(ステップST16f)。
一方、イベント1x判定部6は、ステップST14fにおいてイベント1Cが発生していないと判定しても、ステップST15fの処理に移行して当該セルの基地局についての上り送信電力制御コマンド累積値に基づいてイベント1Cの判定を行う。例えば、所定の無線リンク数に基づいて無線リンクの入れ替えが可能であり、かつ、上り送信電力制御コマンド累積値が予め定めた閾値以上であるセルが存在する場合、ステップST16fに移行して、上り送信電力制御コマンド累積値が予め定めた閾値以上であるセルの代わりに、受信電界強度が上記条件を満たさなかったセルを無線リンクの入れ替え対象とする周辺セルサーチ結果である「Measurement Report(イベント1C)」をネットワーク側に送信する。
上述したステップST2fからステップST16fまでの処理は、DCHがクローズされるまで行われる(ステップST17f)。DCHがクローズされると通信が終了する。このように、本実施の形態7では、基地局毎の上り送信電力制御コマンドを、複数フレーム周期(例えば、復号周期)で累積し、受信電界強度によるイベント判定でイベント1B及びイベント1Cが発生しない場合においても、上り送信電力制御コマンドの累積値(上り信号の要求電力)の多い基地局を無線リンクの削除対象とすることにより、イベント1B及びイベント1Cを発生させる。
以上のように、この実施の形態7によれば、上り送信電力制御コマンドにて要求される上り送信電力の大きい基地局の無線リンクを削除するので、移動体通信端末1と基地局との間における余分な無線リソースを開放することができる。
実施の形態8.
本実施の形態8は、周波数偏差の小さい基地局を無線リンクの追加対象とし、周波数偏差の大きい基地局を無線リンクの削除対象とするものである。このように、受信電界強度の測定に加えて周波数偏差を考慮に入れてイベント判定し、無線リンクの追加及び削除を行うことで通信品質を改善することが可能となる。
実施の形態8による移動体通信端末の基本的な構成は、上記実施の形態1の図1に示したものと同一であるが、イベント1x判定部6及び周波数偏差測定部10によって、周波数偏差の小さい基地局を無線リンクの追加対象とし、周波数偏差の大きい基地局を無線リンクの削除対象とするイベントを判定する点で異なる。なお、説明の簡単のため、図1は本発明における特有な構成を全て記載しているが、本実施の形態8は、従来の移動体通信端末に対して上述のようなイベント判定を行うイベント1x判定部6及び周波数偏差測定部10のみを追加した構成であってもよい。
図12は、この発明の実施の形態8による移動体通信端末のDCHオープンから通信終了(終話)に至るまでの動作を示すフローチャートである。以降では、図1及び図12を適宜用いて動作を説明する。
周波数偏差測定部10は、DCHがオープンして通信状態に移行すると(ステップST1g)、モニタセルからの下り信号についてAFC等の影響を含めた自端末1のアンテナ2端での周波数偏差を測定して、イベント1x判定部6に出力する(ステップST2g)。移動体通信端末1の復調部14が待ち受けている周波数fは、キャリアの絶対周波数f0に対して、温度補償型水晶発振器(TcXo)の温度偏差やAFC(Automatic Frequency Control:自動周波数制御)の引き込み誤差が含まれたものとなっている。そこで、基地局からの下り信号の周波数をffとすると、上記温度偏差やAFCの引き込み誤差による周波数偏差は(ff−f)で表せる。
次に、受信電界強度測定部12は、アンテナ2及び復調部14を介して当該モニタセルから受信した下り信号の受信電界強度を測定(ステップST3g)し、イベント1x判定部6に出力する。イベント1x判定部6では、受信電界強度に基づいてイベント1Aを判定する(ステップST4g)。このとき、処理対象のモニタセルの受信電界強度が、イベント報告すべき受信電界強度以上であれば、当該セルを無線リンクの追加対象とする周辺セルサーチ結果である「Measurement Report(イベント1A)」をネットワーク側に送信する(ステップST6g)。
一方、イベント1x判定部6は、ステップST4gにおいてイベント1Aが発生していないと判定しても、ステップST5gの処理に移行して当該セルの基地局からの下り信号における周波数偏差に基づいてイベント1Aの判定を行う。例えば、無線リンクに追加が可能であり、かつ、追加対象のモニタセルの基地局BTSの周波数偏差が予め定めた追加周波数偏差閾値未満である場合、ステップST6gに移行して当該セルを無線リンクの追加対象とする「Measurement Report(イベント1A)」をネットワーク側に送信する。
また、イベント1x判定部6は、「Measurement Report(イベント1A)」送信後、又は「Measurement Report(イベント1A)」送信がなかった場合、ネットワーク側から指定されたトリガ時間(Time To Trigger)(ミリ秒)の間、イベントの発生条件を満たす受信電界強度のセルがあるか否かによってイベント1Bを判定する(ステップST7g)。このとき、受信電界強度が上記条件を満たすセルがあれば、当該セルを無線リンクからの削除対象とする周辺セルサーチ結果である「Measurement Report(イベント1B)」をネットワーク側に送信する(ステップST9g)。
一方、イベント1x判定部6は、ステップST7gにおいてイベント1Bが発生していないと判定しても、ステップST8gの処理に移行して当該セルの基地局からの下り信号における周波数偏差に基づいてイベント1Bの判定を行う。例えば、無線リンクからセルの削除が可能であり、かつ、処理対象のモニタセルの基地局からの下り信号における周波数偏差が予め定めた削除対象周波数偏差閾値以上である場合、ステップST9gに移行して、当該セルを無線リンクからの削除対象とする「Measurement Report(イベント1B)」をネットワーク側に送信する。
また、「Measurement Report(イベント1B)」送信後、又は「Measurement Report(イベント1B)」送信がなかった場合、イベント1x判定部6は、上記と同様に、ネットワーク側から指定されたトリガ時間(Time To Trigger)(ミリ秒)の間、イベントの発生条件を満たす受信電界強度のセルがあるか否かによってイベント1Cを判定する(ステップST10g)。このとき、受信電界強度が上記条件を満たすセルがあれば、当該セルを無線リンクの入れ替え対象とする周辺セルサーチ結果である「Measurement Report(イベント1C)」をネットワーク側に送信する(ステップST12g)。
一方、イベント1x判定部6は、ステップST10gにおいてイベント1Cが発生していないと判定しても、ステップST11gの処理に移行して当該セルの基地局からの下り信号における周波数偏差に基づいてイベント1Cの判定を行う。例えば、当該セルからの下り信号における周波数偏差が予め定めた入れ替え追加周波数偏差閾値未満であり、かつ、無線リンクしている基地局の中に予め定めた入れ替え削除周波数偏差閾値より大きい周波数偏差の基地局がある場合、ステップST12gに移行して、削除対象セルの代わりに、入れ替え追加対象のセルを無線リンクに入れ替える「Measurement Report(イベント1C)」をネットワーク側に送信する。
上述したステップST2gからステップST12gまでの処理は、DCHがクローズされるまで行われる(ステップST13g)。DCHがクローズされると通信が終了する。このように、イベント1Bが発生しなかった場合でも削除基地局と移動体通信端末1の周波数偏差が削除周波数偏差閾値以上になっていた場合にはイベント1B報告を行う。同様に、イベント1Cが発生しなかった場合でも追加基地局と移動体通信端末1の周波数偏差が入れ替え追加周波数偏差閾値以下であり、かつ、削除基地局と移動体通信端末1の周波数偏差が入れ替え削除周波数偏差閾値以上になっていた場合にはイベント1Cの報告を行う。
以上のように、この実施の形態8によれば、受信電界強度の測定に加えて、周波数偏差を考慮に入れたイベント判定を行ってモニタセルの追加及び削除を行うので、通信品質を改善することが可能となる。
なお、本実施の形態8における概念はFACH状態においてセルリセレクションの判定に適用することも可能である。つまり、セルリセレクション判定部8が、モニタセルの基地局からの下り信号における周波数偏差に応じてセルリセレクション判定する。これにより、発信率の向上が見込まれる。
実施の形態9.
本実施の形態9は、ドップラーシフトの小さい基地局を無線リンクの追加対象とし、ドップラーシフトの大きい基地局を無線リンクの削除対象とするものである。移動体通信端末が下り受信信号で観測するドップラーシフトは、基地局で受信する上り信号に対しても同等に加わる。このため、本実施の形態9のように、ドップラーシフトの少ない基地局のセルを無線リンクの追加対象とし、ドップラーシフトの大きな基地局のセルを無線リンクの削除対象とすることにより、上り信号の受信品質の良い基地局を選択することができる。
ドップラーシフトは、キャリアの絶対周波数をf0とし、基地局からの下り信号の周波数をffとすると、(ff−f0)と表すことができる。なお、ドップラーシフトの測定は、基地局毎の下り受信信号を用いて行う。
実施の形態9による移動体通信端末の基本的な構成は、上記実施の形態1の図1に示したものと同一であるが、イベント1x判定部6及びドップラーシフト測定部11によって、ドップラーシフト量の小さい基地局を無線リンクの追加対象とし、ドップラーシフト量の大きい基地局を無線リンクの削除対象とするイベントを判定する点で異なる。なお、説明の簡単のために、図1は本発明における特有な構成を全て記載しているが、本実施の形態9は、従来の移動体通信端末に対して上述のようなイベント判定を行うイベント1x判定部6及びドップラーシフト測定部11のみを追加した構成であってもよい。
図13は、この発明の実施の形態9による移動体通信端末のDCHオープンから通信終了に至るまでの動作を示すフローチャートである。以降では、図1及び図13を適宜用いて動作を説明する。ドップラーシフト測定部11は、DCHがオープン(ステップST1h)して通信状態に移行すると、各基地局からの下り信号についてドップラーシフトを測定(ステップST2h)して、イベント1x判定部6に出力する。
次に、受信電界強度測定部12は、アンテナ2及び復調部14を介して当該モニタセルから受信した下り信号の受信電界強度を測定し、イベント1x判定部6に出力する(ステップST3h)。イベント1x判定部6では、受信電界強度に基づいてイベント1Aを判定する(ステップST4h)。このとき、処理対象のモニタセルの受信電界強度が、イベント報告すべき受信電界強度以上であれば、当該セルを無線リンクの追加対象とする周辺セルサーチ結果である「Measurement Report(イベント1A)」をネットワーク側に送信する(ステップST6h)。
一方、イベント1x判定部6は、ステップST4hにおいてイベント1Aが発生していないと判定しても、ステップST5hの処理に移行して当該セルの基地局におけるドップラーシフトに基づいてイベント1Aの判定を行う。例えば、無線リンクにセルの追加が可能であり、かつ、追加対象のモニタセルの基地局BTSのドップラーシフトが予め定めた追加ドップラーシフト閾値未満である場合、ステップST6hに移行して、当該セルを無線リンクの追加対象とする「Measurement Report(イベント1A)」をネットワーク側に送信する。
また、イベント1x判定部6は、「Measurement Report(イベント1A)」送信後、又は「Measurement Report(イベント1A)」送信がなかった場合、ネットワーク側から指定されたトリガ時間(Time To Trigger)(ミリ秒)の間、イベントの発生条件を満たす受信電界強度のセルがあるか否かによってイベント1Bを判定する(ステップST7h)。このとき、受信電界強度が上記条件を満たすセルがあれば、当該セルを無線リンクからの削除対象とする「Measurement Report(イベント1B)」をネットワーク側に送信する(ステップST9h)。
一方、イベント1x判定部6は、ステップST7hにおいてイベント1Bが発生していないと判定しても、ステップST8hの処理に移行して当該セルの基地局BTSのドップラーシフトに基づいてイベント1Bの判定を行う。例えば、無線リンクからセルの削除が可能であり、かつ、処理対象のモニタセルの基地局BTSのドップラーシフトが予め定めた削除ドップラーシフト閾値より大きい場合、ステップST9hに移行して、当該セルを無線リンクからの削除対象とする「Measurement Report(イベント1B)」をネットワーク側に送信する。
また、「Measurement Report(イベント1B)」送信後、又は「Measurement Report(イベント1B)」送信がなかった場合、イベント1x判定部6は、上記と同様に、ネットワーク側から指定されたトリガ時間(Time To Trigger)(ミリ秒)の間、イベントの発生条件を満たす受信電界強度のセルがあるか否かによってイベント1Cを判定する(ステップST10h)。このとき、受信電界強度が上記条件を満たすセルがあれば、当該セルを無線リンクの入れ替え対象とする「Measurement Report(イベント1C)」をネットワーク側に送信する(ステップST12h)。
一方、イベント1x判定部6は、ステップST10hにおいてイベント1Cが発生していないと判定しても、ステップST11hの処理に移行して当該セルの基地局BTSのドップラーシフトに基づいてイベント1Cの判定を行う。例えば、当該セルの基地局BTSのドップラーシフトが予め定めた入れ替え追加ドップラーシフト閾値未満であり、かつ、無線リンクしている基地局の中に予め定めた入れ替え削除ドップラーシフト閾値より大きいドップラーシフトの基地局がある場合、ステップST12hに移行して、削除対象セルの代わりに、入れ替え追加対象のセルを無線リンクに入れ替える周辺セルサーチ結果である「Measurement Report(イベント1C)」をネットワーク側に送信する。
上述したステップST2hからステップST12hまでの処理は、DCHがクローズされるまで行われる(ステップST13h)。DCHがクローズされると通信が終了する。このように、イベント1Bが発生しなかった場合でも削除対象の基地局と移動体通信端末1のドップラーシフトが削除ドップラーシフト閾値以上になっていた場合にはイベント1B報告を行う。同様に、イベント1Cが発生しなかった場合でも、追加対象の基地局と移動体通信端末1のドップラーシフトが入れ替え追加ドップラーシフト閾値以下であり、かつ、削除対象の基地局と移動体通信端末1のドップラーシフトが入れ替え削除ドップラーシフト閾値以上になっていた場合にはイベント1Cの報告を行う。
以上のように、この実施の形態9によれば、受信電界強度の測定に加えて、ドップラーシフト量を用いたイベント判定によりモニタセルを無線リンクに追加及び削除するので、通信品質を改善することが可能となる。
なお、本実施の形態9における概念はFACH状態においてセルリセレクションの判定に適用することも可能である。つまり、セルリセレクション判定部8が、モニタセルの基地局と自端末1とのドップラーシフトに応じてセルリセレクション判定する。これにより、発信率の向上が見込まれる。
また、図1の構成において、イベント1x判定部6は、上記実施の形態1、上記実施の形態3から上記実施の形態9までに示した、DCHオープン直後の受信電界強度の瞬時値、受信電界強度の時間変化量、下り送信電力の制御コマンドに対する追従性、上り送信電力の制御コマンドに対する追従性、FBIに対する追従性、周波数偏差、ドップラーシフト量のいずれかを組み合わせた条件によりイベント判定を行うようにしてもよい。同様に、セルリセレクション判定部8も、FACHオープン直後の受信電界強度の瞬時値、周波数偏差、ドップラーシフト量のいずれかを組み合わせた条件によりセルリセレクション判定を行うようにしてもよい。