JP4685316B6 - 複合材料のホルダ付きパンタグラフの集電弓 - Google Patents
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Description
【0001】
本発明の分野
本発明は、パンタグラフに関するものであって、該パンタグラフは、「カテナリー」と呼ばれる固定した電気導体から、停車中または運行中の鉄道車両への集電のために使用されるものである。本発明は、より特徴的には、パンタグラフの集電弓に関するものであって、該集電弓は、カテナリーとの電気接触を目的とした前記すり板と、該すり板を支えることを目的とした前記集電弓のホルダとを含んでいる。
【0002】
従来の技術
鉄道車両に使用されるパンタグラフは、典型的には、可動の支持装置と集電弓とを含む。支持装置は、集電弓を支え、また、それを一般的に銅線であるカテナリーと接触させることを可能にし、このように、運行中または停車中の車両の方へカテナリーの電流の移動を確実に行う。集電弓は、一般的に炭素質の材料製であるすり板と、ホルダと、電気接続の手段とを含む。すり板は、典型的には黒鉛製であり、また、銅または銅を主成分とした合金を含浸することができる。
【0003】
ホルダは、一般的に鋼製またはアルミニウム製であり、該ホルダは、剛性の支えであり、すり板の機械的性能を高めるものである。すなわち、すり板だけでは、両端の角(つの)まで固定することを可能にするのに十分な機械的特性を有さず、また、カテナリーとの接触によって引起こされる衝撃には十分には耐えられない。これらの機械的応力は、すり板に裂け目の形成をもたらす可能性があり、該裂け目は、すり板の破断へと導く可能性があるものである。ホルダは、通常は、該ホルダを支持装置に機械的に固定するための手段を備えている。
【0004】
すり板とホルダの接合は、多くの場合、ろう付けによって実現されている。ろう付けは、すり板が十分に真っ直ぐであることが必要であるという不都合を呈し、これは、典型的には加工作業を含んだ平坦化作業によって得られることができるものであるが、該平坦化作業は、生産においてコスト超過となるものである。ろう付けは、本来、長く、費用のかかる作業でもあり、なぜなら、該作業は、部品の錆落とし、パッシベーション、サンドブラスト、および錫引き等の、いくつもの中間作業をもたらすからである。
【0005】
本出願人は、したがって、ホルダと集電弓の製造を単純化することを可能にする手段を追求した。
【0006】
(本発明の説明)
本発明によるパンタグラフの集電弓のホルダは、全体もしくは一部分が、繊維および有機の結着剤を含む少なくとも一つの有機の複合材料から成ることを特徴とする。
【0007】
提起された問題への解決法の追求において、本出願人は、ホルダ用にある材料を利用することを思いついたが、該材料とは、鋳型に入れる際、および接合する時に柔らかく、そして、適切な処理によって後で硬化することのできるものである。そのような方法によって、本材料は、磨耗板の表面の凹凸に、より容易にぴったり一致することができ、このように、すり板を平らにする追加作業に頼ることを避けるのである。一旦硬化すると、材料は、全体の機械的特性を著しく高め、そして、金属製の材料に頼ることを避けるのである。
【0008】
好ましくは、すり板に接触するホルダの部分は少なくとも、前記複合材料から成る。部品の数を制限して接合を単純化するために、ホルダは、完全に前記複合材料から成ることができる。
【0009】
本発明は、パンタグラフの集電弓も目的としており、該パンタグラフの集電弓は、本発明によるすり板(言い換えると磨耗板)とホルダとを含む。
【0010】
本発明は、本発明による集電弓を少なくとも一つ含むパンタグラフも目的としている。
【0011】
本発明は、本発明の集電弓の製造方法も目的としている。
【0012】
(図面)
図1は、カテナリーと接触している従来技術の典型的な集電弓を示している:
a)側面図;b)底面図である。図2は、従来技術の典型的な集電弓を、集電弓の長手方向に対する横断面図で表されている(図1の平面図A−A)。
【0013】
図3は、本発明による集電弓を、概略的に表している:a)側面図;b)集電弓の長手方向に対する横断面図。
【0014】
図4は、本発明による集電弓を示している:a)側面図;b)上面図。図5は、横断面B−Bに従ってみた集電弓を示すものである。図6は、図4の集電弓の一端を示しており、縦断面A−Aの平面図に従ったものである。破線は、典型的な端の角の輪郭の図を示しており、該角は集電弓の端に固定されるものである。
【0015】
図7は、本発明による集電弓の製造方法の過程を示している。構成要素は、横断面で認められている。
【0016】
従来技術の集電弓(1)は、図1と2に表されているようなものであるが、典型的には、すり板(2)、ホルダ(3)、固定手段(4)、電気接続の手段(5)、そして、損傷と磨耗の検出手段(6)とを含む。利用においては、すり板はカテナリー(10)と接触させられるが、これは、これら、二つの構成要素の間で電気エネルギーの伝達を可能にするためである。ホルダは、典型的には、中空の形鋼から得られる。ホルダ(3)は、すり板(2)の機械的性能を、該すり板が黒鉛を主成分とするときに向上させて、そして、手段(4)を使ってパンタグラフに集電弓を固定することを可能にする。すり板とホルダの間の結合は、典型的には、二つの部品の間の接触面(7)の突き合わせ溶接と、縁(8)の塑性変形を使った機械的締付けとを含む。集電弓は、一般的には、端の角(9)を備えており、該角は機械的な固定手段(90)によって固定されている。
【0017】
本発明の詳細な説明
本発明によるパンタグラフの集電弓(1)のホルダ(3)は、全体もしくは一部分が、繊維および有機の結着剤を含む少なくとも一つの有機の複合材料を含むことを特徴とするものである。
【0018】
前記複合材料は、好ましくは、少なくとも300℃の熱まで変化しない。有機の結着剤は、好ましくはポリマー樹脂であり、またさらに好ましくは、熱硬化性のポリマー樹脂である。繊維は、有機繊維(アラミド繊維等)かあるいは、無機繊維(ガラス繊維、炭素繊維、ホウ素繊維、またはセラミック繊維等)かであることができる。例えば、前記複合材料は、ガラス繊維を持ったフェノール樹脂であることができる。繊維は、それらの特性を有利に組み合わせるために、組成の点で異なることができる。
【0019】
繊維は、短く(すなわち典型的には2と20mmの間に含まれる長さ)も、長く(すなわち典型的には20mmを超える長さ)もあり得る。長い繊維の場合には、これらの繊維は、ホルダの繊維とほぼ同じ長さのロービングから成ることができる。ロービングは、基礎の糸のよりあわせであり、これらの糸は、ほぼ平行なように並べられ、また、ねじれなしでまとめられたものである。長い繊維は、結着剤の破断の場合に、断片の分離を避けるという利点がある。
【0020】
好ましくは、結着剤と繊維は電気の不導体であり、このことにより、カテナリーとホルダの間の電気アーク現象を減らすことが可能となる。電気アークは、カテナリーがすり板のすぐ近くにあるにもかかわらず接触していないとき、生じる可能性がある。これらの電気アークは、衝撃点で、集電弓を損なう可能性がある。
【0021】
ホルダ(3)の底(30)の厚みEは、典型的には1と10mmの間に含まれ、集電弓の大きさと複合材料の組成に従うものである。ホルダの側面(31)は底(30)よりも薄いことが可能である。ホルダ(3)は、側面(31)を含まないこともできる。
【0022】
本発明によるホルダ(3)は、すり板(言い換えると磨耗板)(2)を受けるのに適している。
【0023】
本発明は、すり板(2)とホルダ(3)を含むパンタグラフの集電弓(1)も目的としており、ホルダ(3)が、全体もしくは一部分が、繊維および有機の結着剤を含む少なくとも一つの有機の複合材料から成ることを特徴とする。
【0024】
すり板(2)は、黒鉛であることができ、場合により金属が含浸されており、または、全体もしくは一部分に、C/C複合材料を含むことができ、場合によっては金属が含浸している。含浸用金属は、銅、または銅を含む合金(黄銅や青銅等)、もしくは、鉛、または鉛を含む合金でありうる。
【0025】
炭素/炭素複合材料(C/C)は、固い材料であり、該材料は、炭素の結着剤に浸った炭素繊維(言い換えると「繊維から成る被覆用素材」)を含んでいるものである。炭素繊維は、例えば、ピッチ繊維、ポリアクリロニトリル由来の繊維、またはビスコース由来の繊維等である。これらの繊維は、様々な形状で外観を示すことができるが、それらは、2Dや3Dの織物、単一方向の層、または不統一繊維のような形状である。
【0026】
炭素の結着剤は、様々な技術に従って得ることができるが、それらの技術とは、ついで熱分解されて繊維の周りに炭素分子の骨格構造を残す、炭素の豊富な液体の浸透によるものであり、この作業は必要なだけ繰り返される(典型的には3または4回)、ガスの分解を容易にする熱力学の条件において炭素の豊富なガスの浸透によって、繊維上にピロカーボンの堆積を残すもの、もしくは、これら二つの技術の組合わせによるようなものである。
【0027】
金属の含浸は、液体の状態の金属が、黒鉛またはC/C複合材料の残留性の多孔質体に浸透することにより(すなわち、多孔質体は、複合材料の炭素の、結着剤の構成の段階のあと開かれた状態のままである)、また、浸透した金属が固まることによって得ることができる。浸透は、一般的には、オートクレーブで、高い圧力(典型的には20から200バール)で行われるが、これは、液体金属の多孔質体への適切な浸透を確実に行うためである。
【0028】
一般的に、集電弓は、機械的固定手段(4,11)、および/または電気接続の手段(51,52)も含むことになる。複合材料が電気絶縁体であるとき、電気接続の手段は、すり板によって集められた電気エネルギーの効果的な伝達を可能にする。例えば、電気の接続は、少なくとも一つのねじ(52)によって得ることができるが、該ねじは、一方では、すり板に入り込み、また他方では、少なくとも一つの接続用脚(51)と電気接続しているものであり、該接続用脚は、一般的に金属製の脚である。
【0029】
本発明による集電弓は、さらに、すり板の損傷および/または磨耗を検出するための手段(6,61,62)を含むことができ、図4から6に示されるとおりである。これらの手段は、一般的に配管(62)を含むが、該配管は、典型的には金属製、黒鉛製、またはC/C複合材料製のチューブ(61)であって、その中で、既知の技術に従った検出用流体が循環することができる。チューブ(61)は、典型的には、すり板(2)内に整備され、かつすり板(2)のすり面(20)にほぼ縦断方向に平行の、孔の中かあるいは、ホルダ(3)と接触しているすり板(2)の表面内に準備されたほぼ縦断方向の溝の中に位置づけられているが、前記該溝は、一般的には、すり面(20)の反対側の面(21)の中心部分にある。配管(62)は、チューブ(61)を含まないで、気密性の手段および/または補完する内壁を使って前記孔または前記溝によって形成されることができる。
【0030】
集電弓(1)は、端の角(9)を備えることができるが、該角は、機械的固定手段(9,91)によって固定されており、開口部(9)およびねじ(91)のようなものである。
【0031】
図7を参照すると、本発明による製造方法は、鋳型(100)を使用し、該鋳型は鋳型胴部(101,102)と対向鋳型(103)とを含んでいる(図7A)。本発明によると、前記方法は、好ましくは以下を含む:
−すり板(2)の鋳型(100)への挿入(図7B);
−(「プレプレグ」と呼ばれる)繊維と樹脂の混合物(110)の、すり板(2)への付着(図7C);
−対向鋳型(103)を利用してのプレプレグのプレス加工であり、該プレプレグが均等に行きわたるように、そして、すり板と樹脂の間に密着が確保するようにする(図7D);
−重合による複合材料の硬化の作業。この過程は、使用される樹脂に適合する工程の順に従って、炉の中での加熱によって実現することが可能である。実際には、集電弓を鋳型の中で「未加工の」ままにしておきながら、硬化の過程を実行することは有利であり、このことによって、製品の最終的な形状をコントロールすることが可能となる;
−このように得られた集電弓を鋳型から取り出す。(図7E)。
【0032】
鋳型から取り出す作業を容易にするために、鋳型(また特に鋳型のボディ)は、分離式かつ相補型の部品(101,102)から成ることができる。
【0033】
本方法は、鋳型にすり板を挿入する前に、鋳型の準備または配置の作業を含むこともでき、該作業において、鋳型(100)の胴部(101,102)から対向鋳型(103)が引き離される。この作業は、鋳型の胴部の形成(例えば、相補型部品(101,102)の接合によるもの)、および/または、鋳型からの取り出しを容易にすることを目指す製品の適用を含むこともできる。
【0034】
本方法は、電気接続の手段(51,52)、機械的固定手段(4,11)、および/または端の角(9)の固定作業を含むことができる。
【0035】
本発明による方法は、本発明によるホルダと集電弓の単純で迅速な製造を可能にするという利点がある。該方法は同じく、ホルダとすり板の間の緊密な接触を作り出すことも可能にするが、この緊密な接触は、これらの部品の間の接合点に高い付着力および気密性を付与するのに適している。
【0036】
本発明は、本発明によるすり板(2)を少なくとも一つ含むパンタグラフも目的としている。
【0037】
(試験)
本出願人は、本発明による集電弓の機械的強度が、非常に高いことを指摘した。典型的には、長いガラス繊維を持つフェノール樹脂を用いて、また約2mmの厚みのホルダの底(30)を用いて、本発明による集電弓は、それらの中心で400kgの負荷を、壊れることなく支えることができた(三点試験に従ったが、該試験は、ホルダを二つの支点の上に乗せること、そして、その上側に与えられた重さをその中心に印加することにある)。さらに、すり板(試験において黒鉛製)と樹脂の間の接合点は、非常に強く、非常に高い付着力を確保していた。40kgの衝突のサイクルは2秒毎で12時間続くものであるが、接合を損なわなかった。最後に、運転状態で、試験にかけられた集電弓は、フェノール樹脂の場合にはおよそ300℃の温度に持ちこたえていたが、これは大部分の応用に明らかに十分なものである。
【0038】
(利点)
本発明によるホルダは、軽く、耐腐食性があり、カテナリーとホルダの間の電気アーク現象をおさえるという利点もある。
【0039】
本発明によるホルダの、特定の輪郭の実現期間は、押出し加工によって一般的に得られる従来技術の金属製ホルダ(典型的には鋼製またはアルミニウム製)の実現に通常は必要な期間よりも、明らかに短い。
【0040】
本発明は、ホルダとパンタグラフの集電弓の形状の変更を容易にし、また多様な形状に非常に適している。
【0041】
本発明によるホルダと集電弓は、少量からの生産に容易に適する。
【0042】
すり板の破断の場合には、本発明のホルダは、集電弓、すなわちすり板/ホルダ全体の一体性を維持することができる。
【0043】
本発明による集電弓は、高い気密性をも有する。とりわけ、本発明による集電弓は、すり板とホルダの間に水が浸透する危険性を排除することを可能にするが、この危険性は、金属製のホルダを含む、また、はんだ付け、ろう付けまたは接着によって接合される従来技術の集電弓において生じる可能性があるものであり、またそれはとくに、凍結の場合に集電弓の破損を導く可能性があるからである。
本発明の分野
本発明は、パンタグラフに関するものであって、該パンタグラフは、「カテナリー」と呼ばれる固定した電気導体から、停車中または運行中の鉄道車両への集電のために使用されるものである。本発明は、より特徴的には、パンタグラフの集電弓に関するものであって、該集電弓は、カテナリーとの電気接触を目的とした前記すり板と、該すり板を支えることを目的とした前記集電弓のホルダとを含んでいる。
【0002】
従来の技術
鉄道車両に使用されるパンタグラフは、典型的には、可動の支持装置と集電弓とを含む。支持装置は、集電弓を支え、また、それを一般的に銅線であるカテナリーと接触させることを可能にし、このように、運行中または停車中の車両の方へカテナリーの電流の移動を確実に行う。集電弓は、一般的に炭素質の材料製であるすり板と、ホルダと、電気接続の手段とを含む。すり板は、典型的には黒鉛製であり、また、銅または銅を主成分とした合金を含浸することができる。
【0003】
ホルダは、一般的に鋼製またはアルミニウム製であり、該ホルダは、剛性の支えであり、すり板の機械的性能を高めるものである。すなわち、すり板だけでは、両端の角(つの)まで固定することを可能にするのに十分な機械的特性を有さず、また、カテナリーとの接触によって引起こされる衝撃には十分には耐えられない。これらの機械的応力は、すり板に裂け目の形成をもたらす可能性があり、該裂け目は、すり板の破断へと導く可能性があるものである。ホルダは、通常は、該ホルダを支持装置に機械的に固定するための手段を備えている。
【0004】
すり板とホルダの接合は、多くの場合、ろう付けによって実現されている。ろう付けは、すり板が十分に真っ直ぐであることが必要であるという不都合を呈し、これは、典型的には加工作業を含んだ平坦化作業によって得られることができるものであるが、該平坦化作業は、生産においてコスト超過となるものである。ろう付けは、本来、長く、費用のかかる作業でもあり、なぜなら、該作業は、部品の錆落とし、パッシベーション、サンドブラスト、および錫引き等の、いくつもの中間作業をもたらすからである。
【0005】
本出願人は、したがって、ホルダと集電弓の製造を単純化することを可能にする手段を追求した。
【0006】
(本発明の説明)
本発明によるパンタグラフの集電弓のホルダは、全体もしくは一部分が、繊維および有機の結着剤を含む少なくとも一つの有機の複合材料から成ることを特徴とする。
【0007】
提起された問題への解決法の追求において、本出願人は、ホルダ用にある材料を利用することを思いついたが、該材料とは、鋳型に入れる際、および接合する時に柔らかく、そして、適切な処理によって後で硬化することのできるものである。そのような方法によって、本材料は、磨耗板の表面の凹凸に、より容易にぴったり一致することができ、このように、すり板を平らにする追加作業に頼ることを避けるのである。一旦硬化すると、材料は、全体の機械的特性を著しく高め、そして、金属製の材料に頼ることを避けるのである。
【0008】
好ましくは、すり板に接触するホルダの部分は少なくとも、前記複合材料から成る。部品の数を制限して接合を単純化するために、ホルダは、完全に前記複合材料から成ることができる。
【0009】
本発明は、パンタグラフの集電弓も目的としており、該パンタグラフの集電弓は、本発明によるすり板(言い換えると磨耗板)とホルダとを含む。
【0010】
本発明は、本発明による集電弓を少なくとも一つ含むパンタグラフも目的としている。
【0011】
本発明は、本発明の集電弓の製造方法も目的としている。
【0012】
(図面)
図1は、カテナリーと接触している従来技術の典型的な集電弓を示している:
a)側面図;b)底面図である。図2は、従来技術の典型的な集電弓を、集電弓の長手方向に対する横断面図で表されている(図1の平面図A−A)。
【0013】
図3は、本発明による集電弓を、概略的に表している:a)側面図;b)集電弓の長手方向に対する横断面図。
【0014】
図4は、本発明による集電弓を示している:a)側面図;b)上面図。図5は、横断面B−Bに従ってみた集電弓を示すものである。図6は、図4の集電弓の一端を示しており、縦断面A−Aの平面図に従ったものである。破線は、典型的な端の角の輪郭の図を示しており、該角は集電弓の端に固定されるものである。
【0015】
図7は、本発明による集電弓の製造方法の過程を示している。構成要素は、横断面で認められている。
【0016】
従来技術の集電弓(1)は、図1と2に表されているようなものであるが、典型的には、すり板(2)、ホルダ(3)、固定手段(4)、電気接続の手段(5)、そして、損傷と磨耗の検出手段(6)とを含む。利用においては、すり板はカテナリー(10)と接触させられるが、これは、これら、二つの構成要素の間で電気エネルギーの伝達を可能にするためである。ホルダは、典型的には、中空の形鋼から得られる。ホルダ(3)は、すり板(2)の機械的性能を、該すり板が黒鉛を主成分とするときに向上させて、そして、手段(4)を使ってパンタグラフに集電弓を固定することを可能にする。すり板とホルダの間の結合は、典型的には、二つの部品の間の接触面(7)の突き合わせ溶接と、縁(8)の塑性変形を使った機械的締付けとを含む。集電弓は、一般的には、端の角(9)を備えており、該角は機械的な固定手段(90)によって固定されている。
【0017】
本発明の詳細な説明
本発明によるパンタグラフの集電弓(1)のホルダ(3)は、全体もしくは一部分が、繊維および有機の結着剤を含む少なくとも一つの有機の複合材料を含むことを特徴とするものである。
【0018】
前記複合材料は、好ましくは、少なくとも300℃の熱まで変化しない。有機の結着剤は、好ましくはポリマー樹脂であり、またさらに好ましくは、熱硬化性のポリマー樹脂である。繊維は、有機繊維(アラミド繊維等)かあるいは、無機繊維(ガラス繊維、炭素繊維、ホウ素繊維、またはセラミック繊維等)かであることができる。例えば、前記複合材料は、ガラス繊維を持ったフェノール樹脂であることができる。繊維は、それらの特性を有利に組み合わせるために、組成の点で異なることができる。
【0019】
繊維は、短く(すなわち典型的には2と20mmの間に含まれる長さ)も、長く(すなわち典型的には20mmを超える長さ)もあり得る。長い繊維の場合には、これらの繊維は、ホルダの繊維とほぼ同じ長さのロービングから成ることができる。ロービングは、基礎の糸のよりあわせであり、これらの糸は、ほぼ平行なように並べられ、また、ねじれなしでまとめられたものである。長い繊維は、結着剤の破断の場合に、断片の分離を避けるという利点がある。
【0020】
好ましくは、結着剤と繊維は電気の不導体であり、このことにより、カテナリーとホルダの間の電気アーク現象を減らすことが可能となる。電気アークは、カテナリーがすり板のすぐ近くにあるにもかかわらず接触していないとき、生じる可能性がある。これらの電気アークは、衝撃点で、集電弓を損なう可能性がある。
【0021】
ホルダ(3)の底(30)の厚みEは、典型的には1と10mmの間に含まれ、集電弓の大きさと複合材料の組成に従うものである。ホルダの側面(31)は底(30)よりも薄いことが可能である。ホルダ(3)は、側面(31)を含まないこともできる。
【0022】
本発明によるホルダ(3)は、すり板(言い換えると磨耗板)(2)を受けるのに適している。
【0023】
本発明は、すり板(2)とホルダ(3)を含むパンタグラフの集電弓(1)も目的としており、ホルダ(3)が、全体もしくは一部分が、繊維および有機の結着剤を含む少なくとも一つの有機の複合材料から成ることを特徴とする。
【0024】
すり板(2)は、黒鉛であることができ、場合により金属が含浸されており、または、全体もしくは一部分に、C/C複合材料を含むことができ、場合によっては金属が含浸している。含浸用金属は、銅、または銅を含む合金(黄銅や青銅等)、もしくは、鉛、または鉛を含む合金でありうる。
【0025】
炭素/炭素複合材料(C/C)は、固い材料であり、該材料は、炭素の結着剤に浸った炭素繊維(言い換えると「繊維から成る被覆用素材」)を含んでいるものである。炭素繊維は、例えば、ピッチ繊維、ポリアクリロニトリル由来の繊維、またはビスコース由来の繊維等である。これらの繊維は、様々な形状で外観を示すことができるが、それらは、2Dや3Dの織物、単一方向の層、または不統一繊維のような形状である。
【0026】
炭素の結着剤は、様々な技術に従って得ることができるが、それらの技術とは、ついで熱分解されて繊維の周りに炭素分子の骨格構造を残す、炭素の豊富な液体の浸透によるものであり、この作業は必要なだけ繰り返される(典型的には3または4回)、ガスの分解を容易にする熱力学の条件において炭素の豊富なガスの浸透によって、繊維上にピロカーボンの堆積を残すもの、もしくは、これら二つの技術の組合わせによるようなものである。
【0027】
金属の含浸は、液体の状態の金属が、黒鉛またはC/C複合材料の残留性の多孔質体に浸透することにより(すなわち、多孔質体は、複合材料の炭素の、結着剤の構成の段階のあと開かれた状態のままである)、また、浸透した金属が固まることによって得ることができる。浸透は、一般的には、オートクレーブで、高い圧力(典型的には20から200バール)で行われるが、これは、液体金属の多孔質体への適切な浸透を確実に行うためである。
【0028】
一般的に、集電弓は、機械的固定手段(4,11)、および/または電気接続の手段(51,52)も含むことになる。複合材料が電気絶縁体であるとき、電気接続の手段は、すり板によって集められた電気エネルギーの効果的な伝達を可能にする。例えば、電気の接続は、少なくとも一つのねじ(52)によって得ることができるが、該ねじは、一方では、すり板に入り込み、また他方では、少なくとも一つの接続用脚(51)と電気接続しているものであり、該接続用脚は、一般的に金属製の脚である。
【0029】
本発明による集電弓は、さらに、すり板の損傷および/または磨耗を検出するための手段(6,61,62)を含むことができ、図4から6に示されるとおりである。これらの手段は、一般的に配管(62)を含むが、該配管は、典型的には金属製、黒鉛製、またはC/C複合材料製のチューブ(61)であって、その中で、既知の技術に従った検出用流体が循環することができる。チューブ(61)は、典型的には、すり板(2)内に整備され、かつすり板(2)のすり面(20)にほぼ縦断方向に平行の、孔の中かあるいは、ホルダ(3)と接触しているすり板(2)の表面内に準備されたほぼ縦断方向の溝の中に位置づけられているが、前記該溝は、一般的には、すり面(20)の反対側の面(21)の中心部分にある。配管(62)は、チューブ(61)を含まないで、気密性の手段および/または補完する内壁を使って前記孔または前記溝によって形成されることができる。
【0030】
集電弓(1)は、端の角(9)を備えることができるが、該角は、機械的固定手段(9,91)によって固定されており、開口部(9)およびねじ(91)のようなものである。
【0031】
図7を参照すると、本発明による製造方法は、鋳型(100)を使用し、該鋳型は鋳型胴部(101,102)と対向鋳型(103)とを含んでいる(図7A)。本発明によると、前記方法は、好ましくは以下を含む:
−すり板(2)の鋳型(100)への挿入(図7B);
−(「プレプレグ」と呼ばれる)繊維と樹脂の混合物(110)の、すり板(2)への付着(図7C);
−対向鋳型(103)を利用してのプレプレグのプレス加工であり、該プレプレグが均等に行きわたるように、そして、すり板と樹脂の間に密着が確保するようにする(図7D);
−重合による複合材料の硬化の作業。この過程は、使用される樹脂に適合する工程の順に従って、炉の中での加熱によって実現することが可能である。実際には、集電弓を鋳型の中で「未加工の」ままにしておきながら、硬化の過程を実行することは有利であり、このことによって、製品の最終的な形状をコントロールすることが可能となる;
−このように得られた集電弓を鋳型から取り出す。(図7E)。
【0032】
鋳型から取り出す作業を容易にするために、鋳型(また特に鋳型のボディ)は、分離式かつ相補型の部品(101,102)から成ることができる。
【0033】
本方法は、鋳型にすり板を挿入する前に、鋳型の準備または配置の作業を含むこともでき、該作業において、鋳型(100)の胴部(101,102)から対向鋳型(103)が引き離される。この作業は、鋳型の胴部の形成(例えば、相補型部品(101,102)の接合によるもの)、および/または、鋳型からの取り出しを容易にすることを目指す製品の適用を含むこともできる。
【0034】
本方法は、電気接続の手段(51,52)、機械的固定手段(4,11)、および/または端の角(9)の固定作業を含むことができる。
【0035】
本発明による方法は、本発明によるホルダと集電弓の単純で迅速な製造を可能にするという利点がある。該方法は同じく、ホルダとすり板の間の緊密な接触を作り出すことも可能にするが、この緊密な接触は、これらの部品の間の接合点に高い付着力および気密性を付与するのに適している。
【0036】
本発明は、本発明によるすり板(2)を少なくとも一つ含むパンタグラフも目的としている。
【0037】
(試験)
本出願人は、本発明による集電弓の機械的強度が、非常に高いことを指摘した。典型的には、長いガラス繊維を持つフェノール樹脂を用いて、また約2mmの厚みのホルダの底(30)を用いて、本発明による集電弓は、それらの中心で400kgの負荷を、壊れることなく支えることができた(三点試験に従ったが、該試験は、ホルダを二つの支点の上に乗せること、そして、その上側に与えられた重さをその中心に印加することにある)。さらに、すり板(試験において黒鉛製)と樹脂の間の接合点は、非常に強く、非常に高い付着力を確保していた。40kgの衝突のサイクルは2秒毎で12時間続くものであるが、接合を損なわなかった。最後に、運転状態で、試験にかけられた集電弓は、フェノール樹脂の場合にはおよそ300℃の温度に持ちこたえていたが、これは大部分の応用に明らかに十分なものである。
【0038】
(利点)
本発明によるホルダは、軽く、耐腐食性があり、カテナリーとホルダの間の電気アーク現象をおさえるという利点もある。
【0039】
本発明によるホルダの、特定の輪郭の実現期間は、押出し加工によって一般的に得られる従来技術の金属製ホルダ(典型的には鋼製またはアルミニウム製)の実現に通常は必要な期間よりも、明らかに短い。
【0040】
本発明は、ホルダとパンタグラフの集電弓の形状の変更を容易にし、また多様な形状に非常に適している。
【0041】
本発明によるホルダと集電弓は、少量からの生産に容易に適する。
【0042】
すり板の破断の場合には、本発明のホルダは、集電弓、すなわちすり板/ホルダ全体の一体性を維持することができる。
【0043】
本発明による集電弓は、高い気密性をも有する。とりわけ、本発明による集電弓は、すり板とホルダの間に水が浸透する危険性を排除することを可能にするが、この危険性は、金属製のホルダを含む、また、はんだ付け、ろう付けまたは接着によって接合される従来技術の集電弓において生じる可能性があるものであり、またそれはとくに、凍結の場合に集電弓の破損を導く可能性があるからである。
Claims (2)
- 全体もしくは一部分が、繊維および有機物の結着剤を含む少なくとも一つの有機の複合材料を含むパンタグラフの集電弓のホルダ(3)と、すり板(2)とを備えるパンタグラフの集電弓の製造方法であり、以下を含むことを特徴とする、集電弓の製造方法:
−すり板(2)の鋳型(100)への挿入であって、該鋳型は、鋳型胴体(101,102)と対向鋳型(103)とを含んでいる;
−繊維と樹脂の混合物、または「プレプレグ」、(110)の、すり板(2)への付着;
−対向鋳型(103)を使ってのプレプレグのプレス加工であって、該プレプレグが均等に行きわたるように、そして、すり板と樹脂の間に密着を確保するようにするものである;
−重合による複合材料の硬化作業;
−集電弓を、鋳型から取り出す。 - 前記鋳型が、分離式かつ相補型の部品(101,102)から成ることを特徴とする、請求項1に記載の集電弓の製造方法。
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