JP4683720B2 - 地震・風に兼用できる制振装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、エネルギ吸収部材として、材料強度が高ひずみ速度感受性を有し、エネルギの吸収過程における温度上昇に対して強度が安定しており、塑性化による加工硬化を殆ど起こさず、十分大きい変形性能を有する亜鉛・アルミニューム合金部材を用い、これを変形させることにより構造物の地震応答振動を軽減する剪断パネル型制振装置の技術分野に属し、更に言えば、実質的に地震及び風に兼用でき、十分大きな制振(又は制震、以下同じ)効果を発揮する制振装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、建築建造物に使用して振動を吸収する制振装置は、大きく分けて
(a)地震時に生じる揺れを低減することを目的とした制振装置、
(b)風等により生じる振動を吸収し、居住性を向上させる制振装置
の2種類が用いられている。
【0003】
前記(a)の地震力を対象とした履歴系の制振装置の分野では、従来、エネルギ吸収部材に極低降伏点鋼を用いた制振装置が多数用いられている。
【0004】
また、鉛を用いた鉛封入型の制振装置も、例えば特許第2647609号、特許第2650153号公報などに記載されて公知である。
【0005】
更に、最近では制振装置のエネルギ吸収部材に好適な超塑性材料として、たとえば特開平11−222643号公報に開示された制振用の亜鉛・アルミニューム合金(Zn−Al合金)を使用することが知られている。この超塑性材料は、加工硬化、ひずみ劣化を起こさない為、安定した耐振性能が長期にわたり持続する性質のものであることが知られている。
【0006】
次に、高層建造物などの居住性の改善を目的として、上記(b)のように主に風による建物の振動を軽減する目的で設置される制振装置には、エネルギ吸収部材として粘性体や粘性系材料等(以下、まとめて粘性系材料と云う)を用いた制振装置が多く公知であり、使用されている。これら粘性系材料を用いた制振装置は、一般的に変形性能には優れている。
【0007】
【本発明が解決しようとする課題】
(I)上記の極低降伏点鋼を用いた履歴系の制振装置は、地震等により一度塑性ひずみ履歴を受けると、極低降伏点鋼自体の加工硬化により降伏荷重が上昇する。そのため2回目以降は、極低降伏点鋼の弾性領域が長くなり、エネルギ吸収性能が低下するなど、エネルギ吸収性能が不安定となる。
【0008】
極低降伏点鋼はまた、塑性ひずみを受けると、機械的性質の劣化を起こすため、継続使用する際の性能把握が困難であり、初期の制振性能を維持できなくなるため、往々にしてエネルギ吸収部材(極低降伏点鋼)を交換する必要がある、等々の問題がある。
【0009】
(II)鉛を用いた鉛封入型制振装置の場合は、鉛自体の室温強度が低く、したがって、極低降伏点鋼を用いた制振装置と同程度の制振性能を実現するためには大量の鉛を必要とする。ところが、鉛は比重が大きいため、結局は制振装置全体の重量が増大し、ハンドリングが悪くなるし、構造物への負荷も大きい。更に、鉛は毒性のある金属であるため、その使用は環境保全のためには好ましくない。その他、鉛を用いた鉛封入型制振装置に関しては、鉛を封入し等体積変形を生じさせる機構が提案されているが、実際には補剛部材の弾性変形が存在するため、完全な等体積変形の実現は難しい。その上、鉛はエネルギ吸収による発熱に関して、熱を伝導、逸散する性質が悪く、繰り返し変形時における強度低下が著しい。そのためダレを発生し易く、封入初期には存在しなかった加力部材との間の隙間が発生し、スリップ型の塑性ひずみ履歴となって耐振性能が不安定になる問題点などが指摘されている。
【0010】
(III) 次に、制振装置のエネルギ吸収部材として、上記特開平11−222643号公報に開示されたような超塑性材料「亜鉛・アルミニューム合金(Zn−Al合金)」を使用する場合には、次の検討事項が克服されねばならない。
【0011】
即ち、この種の超塑性材料は、加工硬化、ひずみ劣化を起こさないため、安定した耐振性能が長期にわたり持続するが、その一方、微細結晶粒組織を有する超塑性材料「室温高速超塑性合金」は金属組織の安定性が失われるため、加力部材(又は加力冶具)との接合手段に「溶接」のように大きな入熱を伴う加工方法を実施できない。また、超塑性材料「室温高速超塑性合金」は、低降伏点鋼に比べて、局部座屈が発生すると「ひずみ集中」を生じ易く、従来の座屈補剛方法を使用できないという問題がある。
【0012】
更に、鉛ほどではないが、超塑性材料はエネルギ吸収の際の発熱によって材料強度が低下するため、放熱対策が重要な課題である。
【0013】
(IV)次に、上記粘性系材料を用いた制振装置は、諸特性の温度依存性が非常に大きく、エネルギ吸収過程での発熱により、数10℃の温度上昇で剛性、減衰特性等が著しく低下するため、ダンピング特性が急激に低下する。
【0014】
夏と冬では粘性系材料が曝される温度が大きく異なるため、制振性能も大きく異なる。そのため粘性系制振装置を構造物へ設置する場所としては、温度変化の激しい外壁周りは適さず、居住スペースに近く温度変化の少ない場所に制限される。
【0015】
粘性系材料は一般的に材料強度が小さいため、装置自体が大型化し、必然、構造物の有効な設置スペースがさらに制限されるという問題がある。
【0016】
(V)なお、現状の制振技術は、地震を対象とした履歴系の制振装置と、風を対象にした粘性系の制振装置とを目的別に使い分けるほかなく、一種類の制振装置で実質的に地震にも風にも兼用でき、十分大きな制振効果を発揮できるものは存在しない。それは以下の理由による。
【0017】
例えば極低降伏点鋼を用いた制振装置を、地震外力に対して塑性化するように設計した場合には、履歴型エネルギ吸収材料の変形性能を安定に確保する目的を優先する結果として、居住性の向上を目的とした風荷重のような極小振幅領域では極低降伏点鋼を弾性領域のまま使うこととなり、エネルギ吸収能力を殆ど発揮できない。
【0018】
逆に、例えば極低降伏点鋼を用いた制振装置を、居住性を対象とし風に対して塑性化するように設計した場合には、より大きな振幅の地震を経験して塑性化した場合には、先に述べたように履歴型のエネルギ吸収材料の変形性能の限界がある問題に加え、機能面では以後、加工硬化により強度が上昇するため、もはや風外力に対しては弾性挙動しか示さなくなり、有効なエネルギ吸収能力が発揮できない、等々の問題が生じてくる。そのため、必ずエネルギ吸収部材の交換を余儀なくされる問題がある。
【0019】
つまり、極低降伏点鋼等を用いた履歴系の制振装置は、建物の居住性の向上を目的とした風外力或いは、建物の地震応答を低減することを目的とした地震外力の両方の機能を兼備させることは不可能である。
【0020】
一方、粘性系材料を用いた制振装置の場合は、材料強度が、ひずみ速度依存性を有しており、変形性能も履歴系の材料に比べて良好であることから、居住性の向上を目的とした風外力に対しても、大地震時の外力に対しても、エネルギ吸収性能を発揮できるが、次のような欠点を有している。
【0021】
大地震の際の大振幅領域では、エネルギ吸収の際の発熱により耐力が急激に低下するため制振性能が不安定である。また、極低降伏点鋼に比べ応力レベルが低いことに加え、上記のように耐力低下の問題から、地震を対象にすると制振装置の必要個数が非常に多くなり、制振装置の設置スペースの確保が非常に難しくなる。つまり、粘性系の制振装置でも、建物の居住性の向上を目的とした風外力、或いは建物の地震応答を低減することを目的とした地震外力の両方の制振機能を兼備させることは至難である。
【0022】
(VI)したがって、本発明の目的は、上述した超塑性材料を制振装置のエネルギ吸収部材に使用する際の課題を全て克服した剪断パネル型制振装置を提供することである。
【0023】
本発明の次の目的は、変形性能に優れ、塑性化による加工硬化を殆ど起こさずしかも高ひずみ速度感受性を有する金属系振動吸収材料をエネルギ吸収部材として用い、その材力特性を最大限に生かすべく工夫した剪断型の制振装置であって、建築構造物における風外力および地震力による振動に対して制振性能が効果的かつ安定に働き、そして、ひずみ履歴を受けてもエネルギ吸収部材の交換が不要である多目的又は多機能の制振装置を提供することである。
【0024】
本発明の更なる目的は、発生するエネルギ吸収部材の発熱を速やかに放散して温度上昇を抑制する放熱手段を具備し、従来不可能であった、風による微小な変形、および地震による大変形の両面において制振性能が常に安定な、制振装置を提供することである。
【0025】
【課題を解決するための手段】
上述した従来技術の課題を解決するための手段として、請求項1記載の発明に係る地震・風に兼用できる制振装置は、
エネルギ吸収部材15として亜鉛・アルミニューム合金部材を用い、該エネルギ吸収部材15を変形させることにより構造物の地震応答振動を軽減する剪断パネル型制振装置であって、
加力部材10,11と可動部材12とを平行四辺形状にピン連結して成る荷重伝達フレームの枠内に、前記亜鉛・アルミニューム合金部材によるエネルギ吸収部材15が、その面外座屈を拘束され、且つ振動伝達方向には前記左右の可動部材12,12と面接触した構成で変形可能に設置されていることを特徴とする。
【0026】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載した地震・風に兼用できる制振装置において、亜鉛・アルミニューム合金部材15によるエネルギ吸収部材15の上辺と、これに面接触する加力部材10,11との間に、エネルギ吸収部材15の変形時の浮き上がり防止部材18が設置されていることを特徴とする。
【0027】
請求項3記載の発明は、請求項1に記載した地震・風に兼用できる制振装置において、補剛リブ19によって補剛され、亜鉛・アルミニューム合金部材によるエネルギ吸収部材15の両面へ面接触してその面外座屈を拘束する拘束板16に放熱フィン20が設けられていることを特徴とする。
【0029】
【発明の実施形態及び実施例】
請求項1〜記載の発明に係る地震・風に兼用できる剪断パネル型制振装置の実施形態を図面に基いて説明する。
【0030】
先ず図1は、柱1と梁2に囲まれたラーメン架構の面内に、V型のブレース3を利用して、剪断パネル型制振装置4を設置した実施形態を示している。地震や風荷重による水平力及び層間変形は、ブレース3を通じて制振装置4へ伝達され減衰される。この剪断パネル型制振装置4の適用はまた、間柱等を利用して水平力及び層間変形を伝達する形式で実施することもできる。
【0031】
図2〜図5に、エネルギを吸収部材15として、材料強度が高ひずみ速度感受性を有し、エネルギを吸収過程における温度上昇に対して強度が安定しており、塑性化による加工硬化を殆ど起さず、十分大きな変形性能を有する亜鉛・アルミニューム合金部材を用い、これを変形させることにより構造物の地震応答振動を軽減する制振装置4の実施形態を示している。
【0032】
この剪断パネル型制振装置は、上部及び下部の加力部材10、11と棒状の2本の可動部材12、12とが平行四辺形(平行四辺形リンク)を形成する形にそれぞれの交点をピン13で連結され、所謂平行リンク機構の変形を呈する荷重伝達フレームが構成されている。
【0033】
図1の例では、上部加力部材10の取付け板10aにブレース3が接合され、下部加力部材11の取付け板11aが下位の梁2へボルト止め等の手段で固定され、もって地震等の水平力と層間変位の伝達を受けて水平方向に平行四辺形の変形を生ずる構成で設置されている。
【0034】
図4と図5に示したように、上部及び下部の加力部材10、11と2本の可動部材12、12とが形成する平行四辺形の枠面内に、正面方向の形状を同形、同大の正方形(又は長方形でも可)に形成したエネルギ吸収部材15が封入されている。
【0035】
より具体的に説明すると、下部加力部材11と一体構造をなし前記エネルギ吸収部材15の前後両面に密接に面接触して面外座屈を拘束する2枚の拘束板16、16と前記2本の可動部材12、12とに囲まれた閉鎖空間内に、前記振動の伝達方向に全面が面接触した構成でエネルギ吸収部材15が剪断変形可能に設置されている。エネルギ吸収部材15の板厚は均等に形成されている。
【0036】
下部加力部材11の内部には、エネルギ吸収部材15の底面が前記ピン13の位置よりも高くなるように底上げする底上げ板17を設置して、その上にエネルギ吸収部材15が設置されている。エネルギ吸収部材15の上辺(上面)と上部加力部材10の水平な下底面との間には、両者間の隙間を埋めて面接触状態を実現し、エネルギ吸収部材15の変形時の浮き上がりを防止する浮き上がり防止部材18が設置されている(請求項2記載の発明)。
【0037】
前記拘束板16の上辺は、エネルギ吸収部材15の上辺と同じ高さとされ、面外座屈拘束効果の実効を完全ならしめている。結局、拘束板16の上辺は、上部加力部材10の下底面と接している。
【0038】
前記拘束板16の外面は、そのほぼ全面に枠状に配置した縦横の補剛リブ19により、エネルギ吸収部材15の面外座屈を拘束することに必要十分な強さで補剛されている。そして、前述したようにエネルギ吸収部材15の両面と面接触している拘束板16の外面の前記補剛リブ19を除くほぼ全面に放熱フィン20が設けられ、変形時にエネルギ吸収部材15が発生する発熱を速やかに放熱する構成とされている(請求項3記載の発明)。
【0039】
この剪断パネル型制振装置の場合、水平荷重を受けた荷重伝達フレームが変形すると、平行四辺形の剪断型変形によって高さ寸法がわずかに縮むが、その際の圧力によって上記面外座屈補剛部材が僅かに歪むことで等容積を保つ。この作用によって全体として緩みや滑りのない力の伝達が可能となるのである。
【0040】
本発明の制振装置は、エネルギ吸収部材15として、上記したように材料強度が高ひずみ速度感受性を有し、エネルギを吸収過程における温度上昇に対して強度が安定しており、塑性化による加工硬化を殆ど起さず、十分大きい変形性能を有する亜鉛・アルミニューム合金を用いることが特徴である
【0041】
ところで、上記の剪断パネル型制振装置のエネルギ吸収部材15に用いた上記「材料強度が高ひずみ速度感受性を有し、エネルギを吸収課程における温度上昇に対して強度が安定しており、塑性化による加工硬化を殆ど起さず、十分大きい変形性能を有する亜鉛・アルミニューム合金」(以下、材料Mと云う)は、強度の高ひずみ速度依存性を有する金属材料であり、ひずみ劣化せず、変形性能に優れ、しかもエネルギ吸収過程における発熱によって強度の低下が少ないエネルギ吸収材料であるから、従来は実質的に不可能であった「風による微少な変形」、および「地震による大変形」の両方に優れたエネルギ吸収能力を発揮し、しかも交換不要な制振装置を提供することができる。
【0042】
前記のエネルギ吸収部材15を組み込んだ制振装置は、風等の低ひずみ速度・小変形の領域では、エネルギ吸収部材15が早期に降伏して塑性化し、エネルギ吸収効果を発揮する。一方、地震等の高ひずみ速度・大変形の領域では、エネルギ吸収部材15が持つ強度ひずみ速度感受性により強度が上昇するため、降伏および塑性化を遅らせることができるため、極めて大きなエネルギ吸収能力を発揮する。しかも従来の履歴型制振装置のように、一度塑性化すると加工硬化を起こすという問題も殆ど無い。従って、この制振装置は、建築構造物に入力する外力レベルに応じたエネルギ吸収能力を発揮する。この概念を図8に示す。前記の材料Mであれば、エネルギ吸収部材15へ塑性ひずみを与える機構は、例えば圧縮−引張、剪断、ねじり或いは曲げ変形など、どのような機構でもかまわない。また、制振装置の構成も、ブレース型、剪断パネル型、間柱タイプなど特に制限されないことがわかる。
【0043】
ここで具体的に「材料強度が高ひずみ速度感受性を有する」とは、ひずみ速度感受性指数mが0.3以上の材料が望ましい。ここで、m=(Lnσ/Lnσ)/(Lnv /Lnv)の形で与えられる。σは、ひずみ速度vのときの材料Mの流動応力であり、σは、ひずみ速度vのときの材料Mの流動応力であり、v>vである。その様子を図9に示す。
【0044】
前記「エネルギ吸収過程における温度上昇に対して強度が安定している材料」とは、同一の変形速度において比較した場合に、100℃付近における材料強度の低下の割合が、室温付近(20℃程度)における材料強度に比べ、30%以内にあることを云う。
【0045】
「塑性化による加工硬化をほとんど起こさない材料」とは、塑性ひずみ履歴による材料強度の上昇が殆ど無いという意味である。
【0046】
さらに、「十分な変形性能を有する材料」とは、室温での静的引張試験における延性が100%以上の材料である。このように巨大な延性を示す材料であれば、エネルギ吸収部材15として大変形を許容できる。
【0047】
以上の条件をすべて満たすエネルギ吸収材料15としては、具体的には室温高速超塑性材料であるZn−Al合金(特開平11−222643号=特許第3674897号など参照)を挙げることができる。
【0048】
上記のエネルギ吸収特性を有する材料Mの欠点としては、溶接ができないため、溶接による力の伝達機構が使えない(Zn−Al合金などの室温高速超塑性合金は、微細結晶粒組織をしていることが特長で、溶接入熱により金属組織の安定性が失われ、ひいてはエネルギ吸収能力が発揮できなくなる)こと、及び加工硬化しない材料であるため、逆に座屈、応力集中には弱いため特別な配慮が必要(加工硬化しない材料であるため、安定した耐振性能が長期にわたり持続する一方、逆にそのことで、座屈変形、応力集中が極端に生じると局部的に変形が集中してしまい、さすがの超塑性材料といえども破壊してしまう。)ことをそれぞれ理解しなければならない。
【0049】
本発明は、上記の点を考慮してなされたものであり、特には、
a)耐力フレームからエネルギ吸収部材15への力の伝達には、溶接以外の荷重伝達機構を用いた。
b)応力集中を回避する形状に加工された上記条件のエネルギ吸収部材15に変形を生じさせる。
a)変形中に生じるエネルギ吸収部材15の座屈を最大限度に補剛できる機構・機能を備えたことを特徴とする、多目的かつ高性能の制振装置である。
【0050】
その他、エネルギ吸収部材15として用いた上記の亜鉛・アルミニューム合金Mは無害な金属であり、鉛に比べて比重が約半分であるから軽量で安全な(環境に優しい)制振装置を提供できる。
【0051】
また、鉛に比較して熱伝導性が良いので、歪みによる材料の温度上昇が少ない利点が有る。とりわけ上述したZn−Al合金の場合は,鉛に比して格段に室温強度、塑性変形能力に優れているので、その性質が制振装置に最適に活用される。そして、エネルギ吸収部材15を放熱フィン20で効果的に冷却し,面外座屈を確実に防止するので、制振装置の耐力低下が最小限度に押さえられ、設計性能を満足し維持する。即ち、本発明の制振装置は、封入したエネルギ吸収部材15に6面から拘束を加える構成であり、亜鉛・アルミニューム合金Mに準等体積変形を生じさせる機構を採用しているので、材料強度が有効に生かされ、耐力が安定している。
【0052】
【実施例の説明】
次に、上記構成の制振装置を使用して行った制振性能試験の実施例を説明する。
試験は水平方向加力試験である。使用したエネルギ吸収部材15は上記のZn−Al合金であり、その大きさ、形状は縦×横×厚さが300×300×10mmの正方形である。試験の条件は、振幅±16mm、1.2Hz、10サイクルまで加力した。試験の結果は、放熱フィン20を持たない制振装置の荷重−変位関係(塑性ひずみ履歴)を図6に示し、放熱フィン20を備えた制振装置の荷重−変位関係を図7に示した。
【0053】
要するに、図7によれば、放熱フィン20を備えた制振装置は、温度上昇の影響は若干見られるものの、放熱フィンを持たない図6のものに比べて、安定した履歴特性を示すことが確認された。
【0054】
更に図10は、極低降伏点鋼による制振装置(白抜き丸)と、本発明の上記材料Mをエネルギ吸収部材15に使用した制振装置(黒丸)それぞれの制振効果の比較を示している。本発明の制振装置は、地震・風の双方に良い制振効果を発揮することが明らかである。
【0055】
【本発明が奏する効果】
請求項1〜に記載した発明に係る地震・風に兼用できる制振装置は、小振幅から大振幅まで、振幅に応じてエネルギ吸収能力が変化し、風荷重を想定した小振幅領域では、低応力で早期に塑性化してエネルギ吸収能力を発揮し、地震を想定した大振幅では、高応力となり、外力に応じた高いエネルギ吸収能力を示し得る理想的な性状を示す。また、大振幅経験後の小振幅領域でも、履歴の再現性は良好であり、多目的で、しかもエネルギ吸収部材の交換不要であり、長期間の安定した使用が可能な制振装置である。
【0056】
即ち、地震時においても優れた変形性能を発揮し、履歴型の制振装置とほぼ同等な応答軽減効果を有するし、また、風力時には、速度感受性のない制振装置に比べて、応答が小さくなっている。これはひずみ速度の減少によって示す制振装置の耐力が小さくなり、早期に塑性化しているため、エネルギ吸収効果が有効に発揮されるためである。
【0057】
その他、本発明の制振装置は、エネルギ吸収過程において発生するエネルギ吸収部材の発熱を速やかに放散して温度上昇を抑制する放熱手段を具備するので、制振性能が常に安定している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る制振装置の適用例を示した立面図である。
【図2】本発明の制振装置の正面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】図2のIV−IV線断面図である。
【図5】図2のV−V線断面図である。
【図6】放熱フィンがない場合の荷重−変位線図である。
【図7】放熱フィンが有る場合の荷重−変位線図である。
【図8】材料Mが入力される外力レベルに応じたエネルギ吸収能力を発揮する様子を示した説明図である。
【図9】材料Mの流動応力の状態を示した説明図である。
【図10】(a)〜(h)は本発明の制振装置の制振効果を示す性能図である。
【符号の説明】
15 エネルギ吸収部材(超塑性材料)
10 上部加力部材
11 下部加力部材
12 可動部材
13 ピン
18 浮き上がり防止部材
19 補剛リブ
16 拘束板
20 放熱フィン

Claims (3)

  1. エネルギ吸収部材として亜鉛・アルミニューム合金部材を用い、該エネルギ吸収部材を変形させることにより構造物の地震応答振動を軽減する剪断パネル型制振装置であって、
    加力部材と可動部材とを平行四辺形状にピン連結して成る荷重伝達フレームの枠内に、前記亜鉛・アルミニューム合金部材によるエネルギ吸収部材が、その面外座屈を拘束され、且つ振動伝達方向には前記左右の可動部材と面接触した構成で変形可能に設置されていることを特徴とする、地震・風に兼用できる制振装置。
  2. 亜鉛・アルミニューム合金部材によるエネルギ吸収部材の上辺と、これに面接触する加力部材との間に、エネルギ吸収部材の変形時の浮き上がり防止部材が設置されていることを特徴とする、請求項1に記載した地震・風に兼用できる制振装置。
  3. 補剛リブによって補剛され、亜鉛・アルミニューム合金部材によるエネルギ吸収部材の両面へ面接触してその面外座屈を拘束する拘束板に放熱フィンが設けられていることを特徴とする、請求項1に記載した地震・風に兼用できる制振装置。
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