JP4683185B2 - 磁気粘性流体 - Google Patents

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Description

本発明は、磁気粘性流体に関し、更に詳しくは、分散安定性に優れ、磁性粒子の沈降のない磁気粘性流体に関するものである。
磁気粘性流体とは、磁場を与えると磁性粒子が磁化されて磁界方向に並び、鎖状のクラスタを形成することで、流体の粘性が変化する物質である。このように磁場の強さを調節することで流体としての粘度を調節し、クラッチやダンパ、アクチュエーター等への利用が種々検討されている。
一般に、磁気粘性流体は、粒径が1〜100μmの磁性粒子を、例えば鉱物油、炭化水素、シリコーン油や水等の溶剤に、界面活性剤や分散安定剤を添加して分散させたいわゆるサスペンションである。また同様の構造の流体として、磁性流体と言われるものが、すでに磁気シール等の用途で使用されている。
従来は、分散安定剤としてヒュームドシリカ粒子を用い、磁性粒子として鉄カルボニル粒子をアルファオレフィン等のビヒクルに分散させたものが知られている(特許文献1)。
また添加剤については、チキソトロープ添加剤(分散安定剤)としてシリコーンオリゴマーが有効であることが知られている(特許文献2)。
分散安定剤としては、ポリジメチルシロキサンと(メタ)アクリル酸エステル及び/又は(メタ)アクリル酸の共重合体を用い、分散媒としてポリジメチルシロキサン中に分散させたもの(特許文献3)や有機ベントナイト等の粘土鉱物系分散剤を用いることが有効であることが知られている(特許文献4)。
一方、分散安定であり磁性粒子が沈降しにくい流体として、磁性流体が存在する。
従来、磁性粒子としてマグネタイトを界面活性剤で処理するのと合わせて、有機変性ベントナイト、親油性スメクタイト、表面有機変性カルサイト型沈降炭酸カルシウム、水添ヒマシ油、脂肪酸アマイド、無水シリカ、膨潤性雲母有機複合体の内の少なくとも1種からなる揺変性付与剤(チキソトロピー性付与剤)を添加して得られた磁性流体組成物が知られている(特許文献5)。
また、N−ポリアルキレンポリアミン置換アルケニルコハク酸イミドをフェライト粒子に吸着させることで、高濃度で分散安定な磁性流体が得られることが知られている(特許文献6)。
特開平10−032114号公報 特表平8−502783号公報 特開2001−329285号公報 特開2002−121578号公報 特開平6−215922号公報 特開平8−69909号公報
特許文献1〜4に記載の技術は、磁気粘性流体の課題である磁性粒子の沈降に対し、分散安定剤に関して特徴を持たせた報告であるが、かならずしも、その効果は十分なものであるとは言えない。
さらに、使用中に磁性粒子とダンパ容器等との摩擦により、磨耗が生じやすいという問題がある。
特許文献5又は6記載の技術では、磁気粘性流体の飽和磁化値が十分に高いとは言い難いものである。
本発明はかかる実情に鑑み、分散安定性に優れ、磁性粒子の沈降がない磁気粘性流体を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決するべく鋭意研究の結果、特定の平均粒径を有する金属酸化物粒子と、特定の平均粒径を有する磁性粒子を特定の配合比率で混合して使用することにより、所期の目的が達成できることを見い出し、本発明に到達した。
即ち、本発明の請求項1に係る発明は、分散媒中に磁性粒子を分散してなる磁気粘性流体において、酸化ポリエチレンを磁性粒子に対して0.5〜5重量%含有し、且つ、平均粒径が2nm〜50nmの金属酸化物粒子を含有し、前記磁性粒子の平均粒径が0.1μm〜10μmであり、金属酸化物粒子と磁性粒子との配合割合(重量比)が0.8/100〜15/100であることを特徴とする磁気粘性流体である。
即ち、本発明の請求項2に係る発明は、添加剤として、水添ヒマシ油、アマイドワックスおよびベントナイトの群から選択された少なくとも1種を含有することを特徴とする磁気粘性流体である。
また、本発明の請求項3に係る発明は、分散媒が、炭化水素系溶剤、グリコール系溶剤およびシリコーン系溶剤から選ばれる1種以上であることを特徴とする磁気粘性流体である。
また、本発明の請求項4に係る発明は、磁性粒子が、鉄粒子、窒化鉄粒子、炭化鉄粒子、カルボニル鉄粒子、フェライト粒子、マグネタイト粒子、コバルト粒子、ニッケル粒子の群から選択されたことを特徴とする磁気粘性流体である。
また、本発明の請求項5に係る発明は、金属酸化物粒子が、シリカ粒子、アルミナ粒子、酸化チタン粒子の群から選択されたことを特徴とする磁気粘性流体である。
本発明の磁気粘性流体は、平均粒径が2nm〜50nmの金属酸化物粒子(A)と、平均粒径が0.1μm〜10μmの磁性粒子(B)とから成り、金属酸化物粒子(A)と磁性粒子(B)の配合割合(重量比)が0.8/100〜15/100であることにより、長期にわたり、磁気粘性特性に優れ、良好な分散安定性を維持することができる。
本発明の構成をより詳しく説明すれば、次の通りである。
磁性粒子としては、鉄、窒化鉄、炭化鉄、カルボニル鉄、フェライト、マグネタイト、コバルト、ニッケル等の各粒子の金属粒子、合金粒子および強磁性を示すこれら金属化合物粒子から選ばれる少なくとも1種または2種以上の磁性粒子である。
磁性粒子の平均粒径は、0.1〜10μm、好ましくは0.3〜5μmである。粒径が10μmよりも大きくなると、残留磁化値が大きくなり、磁性粒子同士が凝集してしまい、沈降性が大きくなってしまう。一方、平均粒径が0.1μmよりも小さいと、粘性が高くなりすぎ、磁性粒子の濃度を高くできなくなる。
金属酸化物粒子としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン等の粒子の群から選ばれる1種以上の金属酸化物粒子である。また、これらの金属酸化物粒子は表面処理を行なっていてもよい。
金属酸化物粒子の平均粒径は、2〜50nmであり、好ましくは5〜50nm、より好ましくは5〜30nmである。平均粒径が50nmより大きくなると、磁性粒子同士が凝集してしまい、沈降性が大きくなってしまう。一方、平均粒径が2nmよりも小さいと、粘性が高くなりすぎ、磁性粒子の濃度を高くできなくなる。
金属酸化物粒子のBET比表面積は、100m/g以上が好ましい。より好ましくは100〜300m/gであり、更に好ましくは150〜300m/gである。
金属酸化物粒子(A)と磁性粒子(B)の混合割合(A/B)は、重量比で0.8/100〜15/100である。好ましくは0.8/100〜10/100であり、より好ましくは0.8/100〜3/100である。重量比で0.8/100未満の場合には、金属酸化物粒子の添加効果が不十分となり、磁性粒子の沈降が起こる。一方、15/100を越える場合には、粘度が高くなりすぎて、磁性粒子の濃度を高くできなくなる。
分散媒中の磁性粒子の含有量は、15〜40体積%が好ましく、より好ましくは20〜35体積%である。
磁性粒子の含有量が40体積%よりも多くなると、磁気粘性流体としての粘度が高くなりすぎ、流動性において問題となることがある。一方、15体積%よりも少なくなると、磁気力が不足して十分な磁気粘性を得られない。
本発明における酸化ポリエチレン粒子は、磁性粒子に対して0.5〜5重量%であり、好ましくは0.5〜3重量%であり、より好ましくは0.7〜2重量%である。
酸化ポリエチレン粒子の添加量が0.5重量%未満の場合には、磁気粘性流体としての分散安定性に問題を生じることがある。すなわち、経時的に磁性粒子の沈降が生じる。
一方、酸化ポリエチレン粒子の添加量が5重量%を越える場合には、磁気粘性流体としての粘性が高くなりすぎ、流動性が悪くなってしまうことがある。
また、酸化ポリエチレン粒子の酸価は1.0〜70が好ましく、より好ましくは5.0〜50である。
酸価が1.0未満の場合には、得られた磁気粘性流体としての分散安定性に問題を生じることがある。
一方、酸価が70を越える場合には、磁気粘性流体として粘度が高くなりすぎ、流動性に問題を生じることがある。
さらに、酸化ポリエチレンの分子量は、1000〜5000が好ましく、より好ましくは、1500〜4000である。
分子量が1000未満の場合には、磁性粒子の沈降防止の効果が少ないことがある。
一方、分子量が5000を超える場合には、磁気粘性流体としての粘度が高くなりすぎて、流動性が悪くなってしまうことがある。
本発明においては、水添ヒマシ油、アマイドワックスおよびベントナイトなどの粘性調整剤を含有してもよい。酸化ポリエチレンと共に用いられる水添ヒマシ油は、ヒマシ油の二重結合を水素添加したものであり、熱に対して安定なものである。また、アマイドワックスは、植物油脂肪酸とアミンより合成されたものである。さらに、ベントナイトは、粘土鉱物モンモリロナイトおよび/あるいはその結晶表面に第4級アンモニウム塩や有機アミン塩等で処理したものである。これらの添加量は、酸化ポリエチレンに対して0〜50重量%である。
50重量%を越える場合には、粘度が高くなりすぎてしまい流動性が悪化してしまう。
また、これらの粘性調整剤に加えて界面活性剤を用いることもできる。界面活性剤としては、分散媒と親和性のある官能基を備えたものが好ましく、具体的には、高級脂肪酸のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩やソルビタン脂肪酸エステル等が用いられる。
高級脂肪酸としては、例えば、カプロン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸などが挙げられる。
これら界面活性剤の添加量は、磁性粒子に対して0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜3重量%である。
なお、1重量%未満の場合には、十分な流動性が得られない。一方、5重量%を越える場合には、流体として不安定となる。
また、分散媒としては、炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、グリコール系溶剤およびシリコーン系溶剤を用いることができ、これらは単独で、又は必要に応じ、2種以上組み合わせて用いられる。
本発明に係る磁気粘性流体の粘度は、100mPa・s〜500mPa・sが好ましく、より好ましくは200mPa・s〜400mPa・sである。
本発明に係る磁気粘性流体のチキソトロピー性は、後述する評価法において、5〜30が好ましく、より好ましくは5〜20である。
本発明に係る磁気粘性流体の沈降性は、3mL以下が好ましく、より好ましくは2mL以下である。
本発明に係る磁気粘性流体の飽和磁化値は、150〜300mTが好ましく、より好ましくは170〜300mTである。
本発明に係る磁気粘性流体の調製方法は特に限定はないが、前記各種原料をホモジナイザー、ボールミル、メカニカルミキサー等の高せん断力が与えられる処理機で混合する方法が好ましい。
これら処理機によって、十分に分散させることで、粘性調整剤が有効に働き、分散安定な磁気粘性流体を調製することが可能となる。
<作用>
本発明においては、酸化ポリエチレンとともにシリカ、アルミナ、酸化チタン等の金属酸化物粒子が存在することによって、磁性粒子間に存在してスペーサーとして機能することにより、濃度が高くても分散性に優れ、沈降も抑制されたものとなる。
さらに、使用容器等への磨耗性の少ない磁気粘性流体である。
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて、更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。
尚、以下の記載において、「%」は特に断らない限り「重量%」を表す。
粘度は、E型粘度計(TV−30;東機産業(株)製)を用いて25℃で測定した。
チキソトロピー指数は、上記E型粘度計を用いてせん断速度が38.3S−1の時の粘度に対する3.83S−1時の粘度の比率によって表した。
沈降性は、次の方法で測定した。
100mlのメスシリンダーに磁気粘性流体を50ml入れ、60℃で1ヶ月間放置し、1ヶ月後の上澄み層の容量を測定した。
実施例1
カルボニル鉄(MS3700;商品名 ISP社製)1kg および平均粒径が15nmのシリカ粒子(ファインシールT−32:商品名 トクヤマ製)を10g、酸化ポリエチレン(ハイワックス4052E;商品名 三井化学製)10g、さらにはベントナイト(ハイドロコールONZ;商品名 アライドコロイド製)2gとパラフィン系オイル(スーパーオイルM10)200gを80℃でホモミキサーで30分間混合して、磁気粘性流体を調製した。
得られた磁気粘性流体は、粘度285mPa・s、チキソトロピー指数7であった。沈降性は、1.0mLであった。
実施例2〜5、比較例1〜3
金属酸化物粒子および磁性粒子の種類及び量、酸化ポリエチレンの種類及び量、添加物の種類及び量、更には分散媒の種類及び量を種々変化させた以外は実施例1と同様にして磁気粘性流体の調製を行った。主要製造条件及び特性を表1に示す。
このときの製造条件を表1に、得られた磁気粘性流体の諸特性を表2に示す。
尚、実施例2〜5及び比較例1〜3で使用される商品名のメーカー名は下記のとおりである。
(オイル)
スーパーオイルM10:新日本石油(株)
タービンオイル46:新日本石油(株)
クリセフオイルF22:新日本石油(株)
(酸化ポリエチレン)
ハイワックス4052E:三井化学(株)
ハイワックス4051E:三井化学(株)
ハイワックス2203A:三井化学(株)
ディスパロンTP−203:楠本化成(株)
(水添ひまし油)
SNシックナー4040:サンノプコ(株)
ディスパロン305:楠本化成(株)
(ベントナイト)
エスベンW:(株)ホウジュン
エスベンP:(株)ホウジュン
エスベンNー400:(株)ホウジュン
ハイドロコールONZ:アライドコロイド(株)
(アマイドワックス)
SNシックナー4020:サンノプコ(株)
Figure 0004683185
Figure 0004683185
本発明に係る磁気粘性流体は、磁性粒子の濃度が高く、かつ分散安定性に優れ、磁性粒子の沈降がないため、クラッチやダンパ、アクチュエーター等において有用である。

Claims (5)

  1. 分散媒中に磁性粒子を分散してなる磁気粘性流体において、酸化ポリエチレンを磁性粒子に対して0.5〜5重量%含有し、且つ、平均粒径が2nm〜50nmの金属酸化物粒子を含有し、前記磁性粒子の平均粒径が0.1μm〜10μmであり、金属酸化物粒子と磁性粒子との配合割合(重量比)が0.8/100〜15/100であることを特徴とする磁気粘性流体。
  2. 添加剤として、水添ヒマシ油、アマイドワックスおよびベントナイトの群から選択された少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1記載の磁気粘性流体。
  3. 分散媒が、炭化水素系溶剤、グリコール系溶剤およびシリコーン系溶剤から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気粘性流体。
  4. 磁性粒子が、鉄粒子、窒化鉄粒子、炭化鉄粒子、カルボニル鉄粒子、フェライト粒子、マグネタイト粒子、コバルト粒子、ニッケル粒子の群から選択された粒子である請求項1〜3のいずれかに記載の磁気粘性流体。
  5. 金属酸化物粒子が、シリカ粒子、アルミナ粒子、酸化チタン粒子の群から選択された粒子である請求項1〜4のいずれかに記載の磁気粘性流体。
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