JP4679962B2 - 光センシングシステム - Google Patents
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Description
表面プラズモンセンサは、表面プラズモン共鳴(以下、SPRと記載する)を用いて金属薄膜上の物質の誘電率を測定するもので、感度が高いことと、その場で観察ができることなどから、近年、物質センサとして頻繁に用いられている。
この表面プラズモンセンサ(以下、SPRセンサと記載する)は、金属薄膜上の物質の誘電率(または、屈折率)をモニタすることにより、この誘電率の変化で金属薄膜上の物質の量を測定する。SPRは、金属表面の電子の励振モードである。この励振モードと外部から入力した電磁波を既知の構成を用いて結合させ、その励振モードの波数変化を反射光の強度変化としてとらえる。
この従来のSPRセンサは、被検試料を接触させる表面プラズモン励起用の金属薄膜3が一面に設けられたプリズム2を有するセンサ部1と、該センサ部1の金属薄膜3に光を照射する光源4、偏光子5及びレンズ6からなる光照射部7と、金属薄膜3で反射した光の強度変化を検出する受光部8とを備えて構成されている。このSPRセンサを用いて特定物質の量をセンシングする場合には、センサ部1の金属薄膜3の表面に特定の反応試薬をコーティングする。次に、この部分をセンサプローブとして誘電体内部から金属薄膜3に対し、その全反射角以上の角度で特定の波長の光を入射する。光の入射角を変え、入射角による反射率の変化を調べると、ある特定の入射角において金属薄膜3での吸収が起こり、全反射を起こさなくなる。この特定の入射角は、金属とそれに接している物質の誘電率によって固有の値となる。SPRセンサは、この原理を用いて金属に接している物質の量を求めることができる。
この際、特定の角度のみが、SPRのために全反射せず、暗線(図7中、符号9)のピークとなって現れる。図8は、典型的なSPRスペクトルを示すグラフである。このグラフ上に示された暗線のピークの位置を測定するのがSPRセンサの仕組みである。
例えば、光源として、ガスレーザ、固体レーザといった、大型機器を必要とするものを採用している場合があった。
また、受光部は、現在、エリアセンサあるいはラインセンサが広く使用されており、これがSPRセンサの装置構成の大型化や、コストを押し上げる大きな要因になっている。
しかし、エリアセンサやラインセンサは一般に高価であり、低コスト化が困難である。
エリアセンサ(あるいはラインセンサ)の受光素子は、CCD素子、CMOS素子等であるが、SPR測定に使用されるプローブ光は波長700nm以上の赤外光であるため、通常のカラーフィルターやローパスフィルターが使用されている素子では測定に対応できず、特殊で高価な素子を使用せざるを得ない、といった事情がある。
また、エリアセンサ(あるいはラインセンサ)を受光部に採用したSPRセンサは、エリアセンサ(あるいはラインセンサ)の大きさで測定範囲が決まるため、エリアセンサ(あるいはラインセンサ)に、センサチップから一定の開き角(一般的には5〜7°程度)で反射される光を受光できる程度の大きさが必要であり、これが、受光部の大型化を招いていた。エリアセンサ(あるいはラインセンサ)のサイズに起因する受光部の大型化が、装置全体の大型化の大きな要因になっていた。また、測定範囲の確保のために、サイズが要求されるエリアセンサ(あるいはラインセンサ)を、上述の測定波長の光の受光に対応できる特殊な受光素子で構成せねばならないため、低コスト化は困難であった。
これに鑑みて、本発明者等は、角度スペクトルの取得にエリアセンサ(あるいはラインセンサ)を使用しないセンサ構造について、以下の2つの案(第1検討例、第2検討例)を検討した。
但し、第1検討例は実用的では無く、第2検討例は被検試料に要求される条件が厳しいなど、汎用性に乏しいといった問題があり、いずれも、問題の根本的な解決に至らないものであった。
受光部を、単一画素の受光素子(ここではPD素子)の空間的な移動(走査)によって、金属薄膜からの反射光の角度スペクトルを取り込むように構成した。
この場合は、受光素子自体の低コストを図れるものの、以下の(a)〜(c)のような問題があり、実用的では無い。
(a)受光部を大型化させずに、空間分解能を向上させるためには、受光素子のサイズを小さくせざるを得ない。しかし、受光素子のサイズを小さくすると、感度が低下して、測定精度が低下してしまう。
(b)空間分解能を向上させるために、SPRセンサのセンサチップから受光部までの距離を大きくすると、光量不足、装置の大型化、角度スペクトルの走査時間の延長、といった問題が発生する。
(c)反射光から、測定に用いていない光を充分に除去しないと、S/N比が著しく低下する。
光源からの放射光を平行光でセンサ部に入射させ、予め設定した数カ所(例えば3箇所)で、センサ部からの反射光強度を測定するように構成した。センサ部への平行光の入射角度は固定しておく。この構成では、各測定点での反射光強度の測定値から数学的処理によってSPRスペクトルを推定し、SPR角度を決定する。つまり、各測定点での反射光強度の測定値からSPR角度を推定できる。反射光強度を測定する各測定点は、理論上、あるいは、経験上、SPR角度と考えられる角度(あるいは、それに近い角度)を選定する。
この検討例のSPRセンサでは、光源から放射された光がほぼ全て受光部に入るので、感度や光量(光量不足)の問題も発生しない。また、測定に要する時間も高速であった。
しかし、このセンサ構造では、測定サンプル(被検試料)の状態によって測定精度が大きく影響を受ける。例えば、被検試料に散乱体が混入していたり、溶媒の光吸収率が大きい、などといった要因によって、SPRスペクトルの形状が異なる場合は、測定精度が極端に低下する。このため、例えば、物質の濃度の測定では、前処理として被検試料から不純物を取り除くといった作業も必要となり、結果的に、測定対象の被検試料が限定されてしまう。
この第2検討例のSPRセンサの原理を様々な被検試料(例えば、散乱体が混入しているもの、溶媒の光吸収率が大きいもの等を含む)の測定に幅広く応用できるようにするためには、取得する角度情報の増加が必要である。しかし、測定角度の増加のために、センサ部に照射するビームの本数を増やすとなると、装置の複雑化及び大型化が避けられない。さらに、測定に用いるビームの平行度が充分で無いために、測定角度を増加しても、測定精度の向上に限界があることも判明した。
第2検討例のSPRセンサは、平行光を用いて、前もって決めておいた特定角度の反射率を求める方式である。この第2検討例については、高い感度を確保できる。しかしながら、適用範囲が狭く、測定精度にも改善が必要、といった、問題も抱えている。
請求項1に係る発明は、光源からの出力光を検体に照射し、検体からの反射光から検体に係る情報を取得する光センシングシステムにおいて、前記検体が設けられるセンサ部と、該センサ部の検体に照射する光を出力する光源と、この光源からの出力光を前記センサ部に導くための光ファイバと、前記センサ部に固定して設けられ、前記光ファイバからの放射光を前記検体に照射する平行ビームとして前記センサ部に入射させる屈折率分布型のロッド型レンズであるコリメートレンズと、前記平行ビームが前記検体から反射した反射光の強度を測定するための受光部と、前記光ファイバを、前記コリメートレンズに対して、該コリメートレンズの光軸に垂直の方向に相対移動させることで、前記平行ビームのセンサ部への入射角度を変更する入射角度変更機構とを具備し、前記入射角度変更機構は、予め設定しておいた原点位置から終点位置まで、光ファイバを、コリメートレンズの光軸に直交する特定の1方向に連続的に移動するようになっていることを特徴とする光センシングシステムである。
請求項2に係る発明は、前記センサ部が、被検試料を接触させる表面プラズモン励起用の金属薄膜が設けられたプリズムを有するものであることを特徴とする請求項1記載の光センシングシステムである。
請求項3に係る発明は、前記入射角度変更機構は、該入射角度変更機構によってコリメートレンズに対して相対移動される光ファイバの位置情報を出力する光ファイバ位置検出手段を具備し、前記光ファイバ位置検出手段に、前記受光部から入力される受光データを、前記光ファイバ位置検出手段から出力される位置情報に対応付けて記憶する記憶手段が接続されていることを特徴とする請求項1又は2記載の光センシングシステムである。
請求項4に係る発明は、前記入射角度変更機構が、光ファイバを原点位置から終点位置まで連続的に移動する動作中に、前記記憶手段が、3つ以上の入射角度に対応する受光データを前記受光部から取得して、入射角度に対応付けて記憶するようになっていることを特徴とする請求項3記載の光センシングシステムである。
請求項5に係る発明は、前記記憶手段の前記受光部からの受光データの取り込みが、前記センサ部への平行ビームの入射角度を検出するエンコーダからの信号をトリガとして行われるようになっていることを特徴とする請求項3又は4に記載の光センシングシステムである。
請求項6に係る発明は、前記光ファイバが偏波保持光ファイバであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光センシングシステムである。
さらに、半導体レーザやLEDといった小型かつ安価な光源の使用、光源からの出力光のコリメートレンズへの導光を光ファイバの使用によって極めて単純かつ安価な構成で実現することで、一層の小型化、低コスト化を実現できる。また、構造の単純化により、取り扱い性も良好である。また、全体を一体化した、可搬性の良好な可搬型装置とすることも可能である、といった効果が得られる。
ここでは、本発明を、表面プラズモンセンシングシステム(以下、SPRセンシングシステムとも言う)に適用した例を説明する。
図1において、符号11は、この実施形態のSPRセンシングシステムである。
SPRセンシングシステム11は、被検試料を接触させる表面プラズモン励起用の金属薄膜12aが設けられたプリズム12bを有するセンサ部12と、該センサ部12の金属薄膜12aに照射する光を出力する光源13と、この光源13からの出力光が入射される光ファイバ14と、光ファイバ14の出射端14a(センサ部12側の端部。光源13とは逆側の端部)とセンサ部12のプリズム12bとの間に配置されて、光ファイバ14の出射端14aからの出射ビームをセンサ部12(詳細にはプリズム12b)に入射させるコリメートレンズ15と、このコリメートレンズ15からセンサ部12に入射されて前記金属薄膜12aで反射した光の強度変化を検出する受光部16と、前記光ファイバ14(詳細には出射端14a)をコリメートレンズ15の光軸に対して垂直の方向に移動させることで、測定用ビームのセンサ部12に対する入射角度を変更する入射角度変更機構17(以下、ファイバ移動機構とも言う)とを備えた概略構成になっている。
なお、センサ部12の金属薄膜12aは、プリズム12bに着脱可能なセンサチップに形成されている。すでに述べたように、センサチップの金属薄膜12aには、特定の蛋白質、糖などと結合する試薬が塗布されている。SPR測定を行う被検試料の交換は、例えば前記チップの交換によって簡単に行える。
また、ここでは、センサチップが測定ビームの照射対象であるセンサチップ(詳細には金属薄膜)が、本発明に係る検体として機能する。
採用可能な光源13としては、半導体レーザ等のコヒーレント光源、あるいは、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)、ランプ等のインコヒーレント光源のいずれでも良い。
光ファイバ14としては、周知の応力付与型偏波保持光ファイバを採用し(以下、光ファイバ14を、偏波保持光ファイバ14とも言う)、出射端14aからコリメートレンズ15にP偏光の光が出射されるようにしてある。この偏波保持光ファイバ14は、所謂PANDA型光ファイバ(PANDA:Polarization-maintaining AND Absorption reducing)であり、符号14bはコア部、14cはクラッド部、14dは応力付与部である。この偏波保持光ファイバ14は、光源13からの入射光の内、直線偏光以外の偏光状態の光を直線偏光に変換する、偏光フィルタの如く機能させることができる。
SPR測定用の光ビームは、光ファイバ14の出射端14aから、コリメートレンズ15を介してセンサ部12(詳細にはプリズム12b)に入射されて、金属薄膜12aに照射される。前記コリメートレンズ15のセンサ部12に対する位置は固定である。
但し、受光素子16aは、センサ部12の金属薄膜12aに対する位置、向きを固定しておく。
図2(c)は、光ファイバ14の出射端14aを、コリメートレンズ15の光軸(O−O’)に対して、図2(a)とはコリメートレンズ15の光軸(O−O’)を介して反対の方向に距離d2だけずらした場合を示す。この場合も、θ2の傾斜角度を以て、光ファイバ14の光軸14pからコリメートレンズ15の光軸(O−O’)の側に傾斜するように偏向された平行ビーム18が形成される。
なお、図2(b)の光ファイバ14の出射端14aの配置位置は、光ファイバ14の光軸14pを、コリメートレンズ15の光軸(O−O’)と一致させた場合を示す。この場合は、コリメートレンズ15の光軸(O−O’)と同軸に延在する平行ビーム18が形成される。
センサ部12に対する平行ビーム18の入射角度を変えるための構成としては、例えば、回転ステージやゴニオステージなどを用いて光ファイバ14の角度を変える方式も考えられるが、これらステージ装置はステージ単体の角度分解能が不充分である。カム、クランク等を用いて角度分解能を上げることも可能であるが、装置構成が複雑かつ高価になり、また、操作も複雑となる。
これに対して、本発明に係るSPRセンシングシステム11のように、コリメートレンズ15に対する光ファイバ14の相対移動(コリメートレンズ15の光軸に垂直の方向への移動)で平行ビーム18の偏向をコントロールする方式では、余計な部品が必要無く、装置の単純化、それによる低コスト化の点で優れており、角度分解能も高い。また、光ファイバ14の移動のための、光ファイバ移動機構17の各構成部材の移動距離も小さくて済むので、SPR測定を高速で行うことができ、しかも、振動などによる精度誤差の発生も大きく低減できるために測定精度を安定確保できるといった利点もある。
このため、このSPRセンシングシステム11では、受光部16の小型化及び低コスト化を実現でき、SPRセンシングシステム11の装置全体の小型化及び低コスト化を容易に実現できる。
また、受光部16は、安価な単一画素の受光素子16aを用いて構成すれば良いので、エリアセンサあるいはラインセンサを用いた従来構成の受光部に比べて、大幅な低コスト化を図れることは言うまでも無い。
図1に例示したファイバ移動機構17は、光ファイバ14の出射端14aを移動する駆動源としてのモータ17a(電動モータ)と、駆動回路17bと、前記モータ17aの駆動用のドライバー17cと、エンコーダ17dとを具備した概略構成になっている。
前記エンコーダ17dは、例えばロータリーエンコーダであり、精密ネジの回転量(予め設定しておいた基準位置からの回転量)を検知し、この回転量に係る情報を入射角度変更機構(ファイバ移動機構17)によってコリメートレンズ15に対して相対移動される光ファイバ14の位置情報として出力する光ファイバ位置検出手段として機能する。
記憶回路16bは、エンコーダ17dとも接続されており、エンコーダ17d(光ファイバ位置検出手段)から入力される角度情報(前述の回転量)をトリガ信号として、受光部16から受光素子16aでの測定データ(反射光強度に係るデータ)を取り込み、角度情報(前述の回転量。換言すれば平行ビーム18の照射角度)と対応付けて記憶する記憶手段として機能する。
一つの検体(センサチップ)について、測定精度の確保に鑑みて、3以上の照射角度(換言すれば、平行ビーム18のセンサ部12への入射角度)について、それぞれに対応する反射光強度の測定データを取得することが好ましい。
このSPRセンシングシステム11では、モータ17aの駆動によって、光ファイバ14(詳細には出射端14a)を連続的に移動(コリメートレンズ15の光軸に対して直交方向の移動)させながら、エンコーダ17dからの信号をトリガとして、受光部16での光量測定を連続的(詳細には、トリガ信号の入力の度に、測定値を取り込むこと)に行うといったことも可能である。但し、この場合、一回分の測定を、予め設定しておいた原点位置から、コリメートレンズ15の光軸に直交する特定の1方向への移動で行うようにする。測定精度の確保に鑑みて、一回分の測定で、3以上の照射角度(換言すれば、平行ビーム18のセンサ部12への入射角度)について、それぞれに対応する反射光強度の測定データを取得することが好ましい。
また、ファイバ移動機構17としては、上述したように、モータ17aの駆動によって光ファイバ14を移動する構成に限定されず、例えば、前述した精密ネジの回転を手動で行えるようにした構成(以下、手動操作方式とも言う)も採用可能である。手動操作方式も、エンコーダ17dとの組み合わせで、回転角度を検知できるようにしたものを意味する。
この利点は、センサ部12に固定したコリメートレンズ15に対して、該コリメートレンズ15の光軸に垂直の方向に光ファイバ14を相対移動して、センサ部12への測定用ビームの入射角度を変更する、本発明に係る入射角度変更機構17の構成に起因するものである。この利点は、入射角度変更機構17としては、例えば、ステッピングモータを利用したもの等も採用できるが、本発明に係る各種構成の入射角度変更機構17について共通して言えるものである。
なお、表2は、ピエゾ素子を利用した方式(表2中の「ピエゾ」)、ステッピングモータを利用した方式(表2中の「ステッピングモータ」)、直流モータとエンコーダとを組み合わせた方式(表2中の「モータ・エンコーダ」)について、位置分解能、誤差、ダイナミックレンジを纏めたものである。この表2から、直流モータとエンコーダとを組み合わせた方式の位置分解能、誤差(精度)、ダイナミックレンジが、ステッピングモータを使用した方式と同等レベルであることが明らかである。
光ファイバ14(偏波保持光ファイバ)を用いて、光源13からの出力光をコリメートレンズ15に導く構成は、コリメートレンズ15からセンサ部12に照射される平行ビーム18の収束性を良好に確保し、測定用光ビームのスポットサイズを小さくできる点で有効である。
例えば、光ファイバ14を用いずに、光源13からの出力光を、直接、コリメートレンズに入射すると、コリメート後のビームのスポットサイズが極端に大きくなるか、あるいは、ビームの収束性が著しく劣化する。
(ビーム径について)
SPRセンサにおいて、測定用ビーム径を小さくすることは重要である。なぜならば、ビームサイズが大きくなると、ビームが照射されるセンサチップも大きくせざるを得なくなるからである。これは、被測定物(被検試料)の量を少なくするために、測定部分は小さいことが、強く望まれるためである。
(ビームの収束性について)
また、ビームの収束性が劣ると、センサ部へ入射するビームの入射角度が厳密に一つの角度ではなく、角度幅を持つこととなる。このことは、角度分解能の低下に直結するため、測定精度上、重要な問題である。
ここで、光ファイバ14を用いて光源13からの出力光をコリメートレンズ15に導く構成の採用が有利な理由を、半導体光源を用いた場合で説明する。
半導体光源を用いた場合、センサ部12に入射する平行ビームを形成するには、凸レンズを用いるしかない。例えば、ロッド型レンズ(ファイバレンズ)に対しては物理結合できない(後述のように、ロッド型レンズであるコリメートレンズ15は、スポットサイズの小さい平行ビームの形成に有利である)ため、半導体光源からの出力光をロッド型レンズに直接入射して測定用の平行ビームを得る、といった構成を採ることはできない。
凸レンズを用いると、焦点距離の制約により、該凸レンズでコリメート後のビーム径が原理的に大きくなるという問題が発生する。
原理的には、複数の凸レンズを利用することによって、ロッド型レンズに光を導くことは可能であるが、必要なレンズの材料費、レンズ位置を調整する手間を考えると、非現実的である。
したがって、出射端14aからの出射ビームを、直接、屈折率分布型のロッド型レンズに結合できる光ファイバ14を、光源13からの出力光の導光に光ファイバ14を採用することが、構成の単純化、装置の小型化、低コスト化の点で有利である。
ビームの収束性が劣化するのは、一般に、半導体光源のもつ開口が非常に大きいためである。光ファイバでも、開口数(NA)が大きく、ニアフィールドパターン(NFP)が大きなものについて、同様のことが言える。
本発明者等が検討した結果、ビーム径w(μm)と開口数(NA)との積が1.2μm(つまり、w×NA=1.2(μm))となるように作製した光ファイバ(例えば、ビーム径10μmのときにNA=0.12)では、レンズによって良好な収束性を持つ平行光が得られることを確認した。このように、良好な収束性を持つ平行光が得られる結果、充分な角度分解能を確保できることも確認できた。
ビーム径の大型化と収束性の劣化とを両方とも解消するには、光源からの出力光を、測定用の平行ビームを形成するためのレンズに導光するための導波路が、w×NA=1.2(μm)の条件を満たすものに限られる。換言すれば、w×NA=1.2(μm)を満たす導波路であれば、小さいビーム径でかつ収束性の良いビームを形成できる。
したがって、このSPRセンシングシステム11は、従来構成のSPRセンサ(SPRセンシングシステム)に比べて、大幅な小型化、低コスト化を実現できる。
また、空間型レンズを使用した場合には、レンズの、光源及びセンサ部に対する位置調整に手間が掛かるが、前記SPRセンシングシステム11ではこのような手間が発生しないなど、取り扱い性が良好であるといった利点がある。受光部16の受光素子16aの設置位置は固定であり、一箇所で足りる。しかも、前述した第2検討例のように、SPR角度を予測し、予測位置の複数箇所に受光素子を配置するといった手間は不要である。このため、受光素子16aの設置位置の設定、受光部16の組み立てに要する手間を格段に省力化でき、この点でも、取り扱い性が良好であると言える。
さらに、全体を一体化した、可搬性の良好な可搬型装置とすることも可能である、といった利点もある。
上述の実施形態で例示した、センサ部12に固定したコリメートレンズ15に対して、光ファイバ14の出射端14aをファイバ移動機構17で相対移動する構成は、静止状態のセンサ部12及びコリメートレンズ15に対して、入射角度変更機構(ファイバ移動機構17)によって、光ファイバ14の出射端14aが相対移動される構成を意味する。但し、本発明はこれに限定されず、装置機体に固定した光ファイバ14の出射端14aに対して、センサ部12と該センサ部12に固定したコリメートレンズ15と受光部16とからなるセンサユニットを、出射端14aの光軸に垂直の方向に相対移動するようにした構成も採用可能である。
この場合、入射角度変更機構として、ファイバ移動機構17に代えて、前記センサユニットを光ファイバ14の出射端14aに対して相対移動するもの(センサユニット移動機構)を採用する。但し、ファイバ移動機構17を採用した装置構成の方が、センサユニット移動機構を採用した装置構成に比べて、構成が単純で済み、小型化、低コスト化の点で有利である。
Claims (6)
- 光源からの出力光を検体に照射し、検体からの反射光から検体に係る情報を取得する光センシングシステムにおいて、
前記検体が設けられるセンサ部と、
該センサ部の検体に照射する光を出力する光源と、
この光源からの出力光を前記センサ部に導くための光ファイバと、
前記センサ部に固定して設けられ、前記光ファイバからの放射光を前記検体に照射する平行ビームとして前記センサ部に入射させる屈折率分布型のロッド型レンズであるコリメートレンズと、
前記平行ビームが前記検体から反射した反射光の強度を測定するための受光部と、
前記光ファイバを、前記コリメートレンズに対して、該コリメートレンズの光軸に垂直の方向に相対移動させることで、前記平行ビームのセンサ部への入射角度を変更する入射角度変更機構
とを具備し、
前記入射角度変更機構は、予め設定しておいた原点位置から終点位置まで、光ファイバを、コリメートレンズの光軸に直交する特定の1方向に連続的に移動するようになっていることを特徴とする光センシングシステム。 - 前記センサ部が、被検試料を接触させる表面プラズモン励起用の金属薄膜が設けられたプリズムを有するものであることを特徴とする請求項1記載の光センシングシステム。
- 前記入射角度変更機構は、該入射角度変更機構によってコリメートレンズに対して相対移動される光ファイバの位置情報を出力する光ファイバ位置検出手段を具備し、
前記光ファイバ位置検出手段に、前記受光部から入力される受光データを、前記光ファイバ位置検出手段から出力される位置情報に対応付けて記憶する記憶手段が接続されていることを特徴とする請求項1又は2記載の光センシングシステム。 - 前記入射角度変更機構が、光ファイバを原点位置から終点位置まで連続的に移動する動作中に、
前記記憶手段が、3つ以上の入射角度に対応する受光データを前記受光部から取得して、入射角度に対応付けて記憶するようになっていることを特徴とする請求項3記載の光センシングシステム。 - 前記記憶手段の前記受光部からの受光データの取り込みが、前記センサ部への平行ビームの入射角度を検出するエンコーダからの信号をトリガとして行われるようになっていることを特徴とする請求項3又は4に記載の光センシングシステム。
- 前記光ファイバが偏波保持光ファイバであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光センシングシステム。
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