JP4678709B2 - チップストップ機構およびエアゾール式製品 - Google Patents

Description

本発明は、チップストップ機構およびこのチップストップ機構を備えたエアゾール式製品などに関する。

チップストップ機構は、概略、外部空間への放出口を持つ外側部材と容器本体側の出力部に取り付けられる内側部材とからなり、チルト操作（傾動操作）していない静止モード時にはこれらの部材が一体化して当該放出口側の弁作用部を閉じ、また、チルト操作時には外側部材の傾動中心が内側部材のそれからずれて当該外側部材が当該内側部材に対していわば上動し、これにより当該弁作用部を開状態（作動モード）に設定する機能を備えたものである。

なお、この放出口側の弁作用部とは別に、容器本体側には容器内容物に対する出力弁、例えばエアゾール式容器におけるステムガスケット・ステム孔部が設けてある。

すなわち、チップストップ機構を用いる容器の場合、その容器内部と外部空間との間の内容物通路に対して容器側の出力弁とその下流側のチップストップ機構側の出力弁（放出口側の弁作用部）が存在することになる。勿論、これらの弁はともに静止モードでは閉じ、作動時（チルト操作時）には開く。

放出対象の容器内容物は、発泡性（泡状），液状，ペースト状，ジェル状などの各種性状のものである。また、各種内容物を収納したエアゾール式製品も対象とする。

従来のチップストップ機構としては、外部空間への放出口を持つ外側部材を、弾性片を介して容器本体側のマウンティングカップに結合させたものがある。なお、内側部材はステムの出力部に結合されている（例えば、特許文献１参照）。

チルト操作にともない、外側部材および内側部材は容器本体側に対して同じ角度を保ちながら傾動していく。この傾動時の中心は、内側部材がステム位置（＝容器本体の中心）であって、外側部材はステム位置から容器本体の径方向に離れた位置（＝外側部材の一部が当接するマウンティングカップ部分）である。

この回動中心（傾動中心）のずれにより、外側部材が内側部材に対しいわば上動して両者間の弁作用部（＝外側部材の放出口に対する弁作用部）が開き、作動モードとなる。

ここで、外側部材は、マウンティングカップに固定され、静止モードでは（ステムに固定された）内側部材と一体になって放出口の弁作用部を閉状態にしている。このような外側部材が、傾動し、また内側部材に対して上動できる（＝弁作用部を開状態にできる）のは、そのマウンティングカップ側の環状部分を弾性片で構成しているからである。

実開昭６２−１６４９６５号公報

このようなチルト操作対応のチップストップ機構は、作動モードから静止モードへの切換え時における放出部からの内容物の「たれ」の発生を抑え、静止モードにおける内容物の漏洩をより確実に防止できるなどの利点を備えたものである。

一方、外側部材をマウンティングカップに取り付けるため、その形状・サイズごとの外側部材が必要となり、かつ当該外側部材の一部には上述の傾動・上動用の弾性片を形成しなければならないことや、外側部材と内側部材との間の弁作用部を閉状態に付勢するための作用力がもっぱら容器本体側の駆動源（ステム用のコイルスプリングなど）に基づいていることなどの点で、改善の余地を残していた。

そこで、本発明では、外側部材をマウンティングカップなどの容器本体側に取り付けて保持することを止め、その代わりに、外側部材と内側部材との間に静止モード時の両者の一体化を図るためのいわば専用の（放出口シール用の）弾性部材を付加して、チップストップ機構の外側部材の形状・サイズに対する容器本体側からの制約を減らすとともに、当該弾性部材に基づく放出口のシール作用の確実化を図ることを目的とする。

本発明は、この課題を次にようにして解決する。
（１）外部空間への内容物の放出口（例えば後述の放出口１１ａ，５１ａ）を持つ外側部材（例えば後述の外側部材１，５）と、容器本体側の内容物の出力部（例えば後述のステム９５）に取り付けられて当該出力部から続く内容物通路（例えば後述の通路２ｂ，６ｂ）を持つ内側部材（例えば後述の内側部材２，６）とからなり、静止モードのときには、これらの外側部材および内側部材が一体化して当該放出口側の弁作用部（例えば後述の環状のテーパ面２ｄ，弁部材５１ｃ）を閉状態に設定し、チルト操作時には、当該外側部材が前記出力部とは別の離れた容器本体側の一部と当接してからこの当接部分を中心に傾動して当該外側部材が当該内側部材との一体化の状態からずれることにより当該弁作用部を開状態に設定する、チップストップ機構において、前記外側部材を、容器本体側に結合して保持されることのない態様のものとし、前記外側部材と前記内側部材との間に、前記内側部材を前記放出口の方に付勢して、前記一体化および、前記弁作用部の閉状態への設定を図るための弾性部材（例えば後述のコイルスプリング７）を設ける。

本発明は、このような特徴を持つチップストップ機構や、これを取り付けたエアゾール式製品を対象にする。

本発明では、チップストップ機構の外側部材をマウンティングカップなどの容器本体側に取り付けるのではなく、外側部材とその内側部材との間に弾性部材を設けることにより、静止モード時の両部材を一体化し、当該機構の放出口を閉状態に設定している。

そのため、チップストップ機構の外側部材の形状・サイズについての容器本体側からのいわばフリー化を図るとともに、静止モード時の当該機構の放出口に対するシール作用の確実化を図ることができる。

図１乃至図４を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図１はチップストップ機構（その１）の静止モードを示し、図２は図１のチップストップ機構の作動モードを示し、図３はチップストップ機構（その２）の静止モードを示し、図４は図２のチップストップ機構の作動モードを示している。

これらの図において、
１はチップストップ機構（その１）を構成するキャップ状・筒状の外側部材，
１１は外側部材１の構成要素であって後述の内側部材２との間に後述の内容物通過用の内部空間域３を形成する上側筒状部，１１ａは放出口，
１２は上側筒状部１１と強く嵌合した（外側部材１の）構成要素であってチルト操作時には傾動してその一部が後述のマウンティングカップ９２の周回凹状部９２ａに当接する下側筒状部，１２ａは後述のコイルスプリング５の下端側を受ける内縁側上面部分，１２ｂはチルト操作時に当該周回凹状部９２ａに当接してそれ以降の外側部材１の傾動中心となる外縁部，１２ｃは後述の内側部材２の外周面に案内される中央開口部，
２はチップストップ機構（その１）を構成するロケット状・鞘状の内側部材，２ａは後述のステム９５と嵌合する開口部，２ｂは当該開口部の下流側に続く内容物通過用の通路，２ｃは当該通路と後述の内部空間域３とを連通させる孔部，２ｄは上端側に形成されて当該放出口１１ａに対する開閉機能を備えた環状のテーパ面，２ｅは後述のコイルスプリング７の上端側を受ける段部，２ｆは（当該内側部材と一体成形され）上側筒状部１１の内周面に密接することにより内部空間域３の画定部材（シール部材）や外側部材１のガイド部材として作用する環状突部，
３は上側筒状部１１の内周面と内側部材２の外周面との間に形成されて孔部２ｃから放出口１１ａへと至る内容物通過用の内部空間域，
５はチップストップ機構（その２）を構成するキャップ状・筒状の外側部材，
５１は外側部材５の構成要素である上側筒状部，５１ａは上端側に形成された４箇所の放出口，５１ｂは当該放出口を画定している４つの連結部，５１ｃは当該連結部を介して当該上側筒状部とつながり後述の内側部材６（内容物通過用の通路６ｂ）の開口出力部６ｃに対する開閉機能を備えた棒状の弁部材
５２は上側筒状部５１と強く嵌合した（外側部材５の）構成要素であってチルト操作時には傾動してその一部が後述のマウンティングカップ９２の周回凹状部９２ａに当接する下側筒状部，５２ａは後述のコイルスプリング７の下端側を受ける内縁側上面部分，５２ｂはチルト操作時に当該周回凹状部９２ａに当接してそれ以降の外側部材５の傾動中心となる外縁部，５２ｃは後述の内側部材６の外周面に案内される中央開口部，
６はチップストップ機構（その２）を構成する筒状の内側部材，６ａは後述のステム９５と嵌合する開口部，６ｂは当該開口部の下流側に続く内容物通過用の通路，６ｃは当該通路の開口出力部，６ｄは出力側の端部に形成されて下側筒状部５２の内周面に密接しながら案内される環状のシール部，６ｅは後述のコイルスプリング７の上端側を受ける段部，
７は外側部材１，５と内側部材２，６とを一体化するためのコイルスプリング，
９はチップストップ機構が取り付けられる容器本体側，
９１は各種内容物や（エアゾール式製品の場合における）放出用ガスなどを収納した容器本体，
９２は容器本体９１にビード固定されたマウンティングカップ，９２ａはチルト操作時に下側筒状部の外縁部１２ｂ，５２ｂが当接し外側部材１，５の回動中心面として作用する周回凹状部，
９３は容器本体９１とマウンティングカップ９２との間の固定部分をシールするガスケット，
９４はマウンティングカップ９２に固定保持されたハウジング，
９５はコイルスプリング（図示省略）によって上方向に付勢され出口側が内側部材２，６の開口部２ａ，６ａと嵌合して内容物通過用の通路２ｂ，６ｂの上流側通路を提供する形でハウジング９４の内部に保持された傾動可能なステム，
をそれぞれ示している。

ここで、
・外側部材１，５や内側部材２，６の材質は、アルミニウム，ブリキなどの金属，ポリエチレンテレフタレート，ポリブチレンテレフタレート，ポリアセタール，ナイロンなどのプラスチック、
・容器本体９１の材質は、アルミニウム，ブリキなどの金属，ガラス，ポリエチレンテレフタレート，ポリブチレンテレフタレート，ポリアセタール，ナイロンなどのプラスチック、
・マウンティングカップ９２の材質は、ブリキ，アルミニウムなどの金属、
・ハウジング９４やステム９５の材質は、ポリプロピレン，ポリエチレン，ポリアセタール，ナイロンなどのプラスチック、
である。

図示の各チップストップ機構は、外側部材１，５とその内側部材２，６とをコイルスプリング７によって一体化したもの、すなわちこれらの部材間に設けられた当該コイルスプリングの作用で外側部材１，５と内側部材２，６とを互いに上下逆方向に付勢したものである。

この付勢力により、静止モードのとき、外側部材１の放出口１１ａが内側部材２のテーパ面２ｄで閉塞され（図１参照）、また、内側部材６の開口出力部６ｃが外側部材５の弁部材５１ｃで閉塞される（図３参照）。

そして、内側部材２，６と嵌合・固定状態のステム９５は、ハウジング８４内に設けたコイルスプリング（図示省略）の作用により図示の上方向に強く付勢されている。

このとき、ステム側の汎用の弁部分（図示省略）も閉じているので、容器本体９１の内容物の放出口側への移動はこの弁部分で止められる。

なお、図１および図３の静止モードにおいて、外側部材１，５の下側筒状部１２，５２の底面部分はマウンティングカップ９２の周回凹状部９２ａ（の底面）から離間している。

図２や図４のチルト操作にともない、
(1)外側部材１，５および内側部材２，６は、当該外側部材がマウンティングカップ９２の周回凹状部９２ａから離間している最初の間は静止モードの一体化を維持しながら、すなわち外側部材１の放出口１１ａや内側部材６の開口出力部６ｃを閉塞した状態で傾動し、
(2)外側部材１，５（下側筒状部１２，５２）の外縁部１２ｂ，５２ｂが周回凹状部９２ａの底面に当接した後の外側部材１，５および内側部材２，６は、当該外側部材が内側部材２，６に対して上方向にシフトする形で傾動する（図２，図４参照）。

この外側部材の上方向へのシフト動作は、コイルスプリング７の付勢力に抗する、すなわち当該コイルスプリングを縮める動作である。

この後半のシフト・傾動によって、外側部材１の放出口１１ａは内側部材２のテーパ面２ｄから離れ、また、内側部材６の開口出力部６ｃは外側部材５の弁部材５１ｃから離れて、それぞれ静止モードから作動モードへと移行する。

このとき、勿論、ステム側の汎用の弁部分（図示省略）もチルト操作により開状態となっているので、容器本体９１の内容物は、
(a)ステム９５−内側部材２の通路２ｂ−内側部材２の孔部２ｃ−内側部材２と外側部材１との間の内部空間域３−外側部材１の放出口１１ａ（図２参照），
(b)ステム９５−内側部材６の通路６ｂ−内側部材２の開口出力部６ｃ−外側部材５の放出口５１ａ（図４参照），
の各経路により外部空間へ放出される。

なお、上述の後半の傾動の際に外側部材１，５と内側部材２，６との一体化が解除されるのは、外側部材の傾動中心が、それまでのステム９５の位置から、当該外側部材の外縁部１２ｂ，５２ｂとマウンティングカップ９２の周回凹状部９２ａとの当接位置に、シフトするためである。ステム９５に嵌合して固定されている内側部材２，６の傾動中心は最後までステム位置となる。

このように外側部材１，５の傾動中心がシフトする（内側部材の傾動中心はシフトしない）ことにともなう放出口１１ａ，開口出力部６ｃの閉開の切換え感度は、そのシフト距離が長いほど大きくなる。

すなわち、図示のように、チルト操作にともなう外側部材１，５の外縁部１２ｂ，５２ｂの当接部分をマウンティングカップ９２のいわば外側の周回凹状部９２ａとし、当該外縁部がマウンティングカップ中央近くの台状部に当接する場合よりも、静止モードと作動モードとの切換え感度が高くなるようにしている。

なお、図１や図３の静止モードの時点で、外側部材１，５（下側筒状部１２，５２）の底面部分がマウンティングカップ９２の周回凹状部９２ａに略当接するような態様のものにしてもよい。この場合のチルト操作においては最初から上記(2)の傾動状態となる。

また、マウンティングカップ９２の周回凹状部９２ａの環状空間部分の任意の高さの部分に（土星の輪のような）規制部を固定して、当該規制部で、チルト操作時の下側筒状部１２，５２の外縁部１２ｂ，５２ｂを支持するようにしてもよい。

この規制部を周回凹状部９２ａに固定する手法は任意であり、例えば嵌合，接着，溶着などの方法が用いられる。周回凹状部９２ａの底面と当該規制部との間にスペーサを設けてもよい。

また、環状突部２ｆに代えてＯリングを用いるようにしてもよい。この場合、内側部材２の外周面のＯリング対応部分には環状凹部を設けることになる。

以上のチップストップ機構が用いられる製品としては、食品，洗浄剤，清掃剤，消臭剤，制汗剤，忌避剤（殺虫剤），接着剤，塗料，食品，医薬品，医薬部外品，冷却剤，筋肉消炎剤，化粧品，頭髪用品，染毛剤，洗濯のり，消火器，ヘアスタイリング剤，ヘアトリートメント剤，育毛剤，シェービングフォーム，外用薬，液滴状のもの（ビタミンなど），園芸用剤，クリーナー，ウレタンフォーム，潤滑剤などがある。

容器本体の内容物は、油成分，アルコール類，界面活性剤，高分子化合物，懸濁剤，紫外線吸収剤，乳化剤，油性原料，保湿剤，酸化防止剤、金属イオン封鎖剤などである。

油成分としては、シリコーン油，パーム油，ユーカリ油，ツバキ油，オリーブ油，ホホバ油，パラフィン油，ミリスチン酸およびパルミチン酸，ステアリン酸，リノール酸，リノレン酸などのグリセリドなどを用いる

アルコール類としては、エタノールなどの１価の低級アルコール，ラウリルアルコールなどの１価の高級アルコール，エチレングリコールなどの多価アルコールなどを用いる。

界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等の非イオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の両性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウム等のカチオン性界面活性剤などを用いる。

高分子化合物としては、メチルセルロース，ゼラチン，デンプン，カゼインなどを用いる。

その他、サリチル酸メチル，インドメタシンなどの消炎鎮痛剤、安息香酸ナトリウム，クレゾールなどの除菌剤、ヒレスロイド，ジエチルトルアミドなどの害虫忌避剤、酸化亜鉛などの制汗剤、カンフル，メントールなどの清涼剤、エフェドリン，アドレナリンなどの抗喘息薬、スクラロース，アスパルテームなどの甘味料、エポキシ樹脂，ウレタンなどの接着剤や塗料、パラフェニレンジアミン，アミノフェノールなどの染料，リン酸二水素アンモニウム，炭酸水素ナトリウム・カリウムなどの消火剤などを用いる。

エアゾール式製品の放出用ガスには、ＬＰＧ，ジメチルエーテル，フルオロカーボン，炭酸ガス，窒素ガス，圧縮空気，酸素ガス，希ガス，これらの混合ガスなどを用いる。

本発明の、チップストップ機構（その１）の静止モードを示す説明図である。 本発明の、チップストップ機構（その１）の作動モードを示す説明図である。 本発明の、チップストップ機構（その２）の静止モードを示す説明図である。 本発明の、チップストップ機構（その２）の作動モードを示す説明図である。

符号の説明

１：キャップ状・筒状の外側部材
１１：上側筒状部
１１ａ：放出口
１２：下側筒状部
１２ａ：内縁側上面部分
１２ｂ：外縁部
１２ｃ：中央開口部
２：ロケット状・鞘状の内側部材
２ａ：開口部
２ｂ：内容物通過用の通路
２ｃ：孔部
２ｄ：環状のテーパ面
２ｅ：段部
２ｆ：環状突部
３：内容物通過用の内部空間域
５：キャップ状・筒状の外側部材
５１：上側筒状部
５１ａ：４箇所の放出口
５１ｂ：４つの連結部
５１ｃ：棒状の弁部材
５２：下側筒状部
５２ａ：内縁側上面部分
５２ｂ：外縁部
５２ｃ：中央開口部
６：内側部材
６ａ：開口部
６ｂ：内容物通過用の通路
６ｃ：開口出力部
６ｄ：環状のシール部
６ｅ：段部
７：コイルスプリング
９：チップストップ機構が取り付けられる容器本体側
９１：容器本体
９２：マウンティングカップ
９２ａ：周回凹状部
９３：ガスケット
９４：ハウジング
９５：ステム

Claims (2)

1. 外部空間への内容物の放出口を持つ外側部材と、容器本体側の内容物の出力部に取り付けられて当該出力部から続く内容物通路を持つ内側部材とからなり、静止モードのときには、これらの外側部材および内側部材が一体化して当該放出口側の弁作用部を閉状態に設定し、チルト操作時には、当該外側部材が前記出力部とは別の離れた容器本体側の一部と当接してからこの当接部分を中心に傾動して当該外側部材が当該内側部材との一体化の状態からずれることにより当該弁作用部を開状態に設定する、チップストップ機構において、
   前記外側部材を、容器本体側に結合して保持されることのない態様のものとし、
   前記外側部材と前記内側部材との間に、前記内側部材を前記放出口の方に付勢して、前記一体化および、前記弁作用部の閉状態への設定を図るための弾性部材を設けた、
   ことを特徴とするチップストップ機構。
2. 請求項１記載のチップストップ機構を備え、かつ、放出用ガスおよび内容物を収容したエアゾール式製品。

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