以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態によるインクジェットヘッド100の概略構成図である。インクジェットヘッド100は平面視において一方向に長尺な形状を有している。なお、本実施形態において主走査方向とはインクジェットヘッド100の平面視において長尺な方向であり、副走査方向とは平面視において主走査方向に垂直な方向である。そして、下方向とはインクジェットヘッド100から吐出されるインクの吐出方向であり、上方向とは下方向と逆の方向である。
インクジェットヘッド100は、下面にノズル8が形成された流路ユニット140と流路ユニット140にインクを供給するインクリザーバ130とを有している。インクリザーバ130は、3つの板材から構成された積層体で、上リザーバ131、リザーバベース132及び下リザーバ133を有している。上リザーバ131、リザーバベース132、下リザーバ133及び流路ユニット140のいずれも平面視において概略的に長方形の形状を有しており、その長辺が主走査方向に沿っている。これらの部材は、上方から下方へと、上リザーバ131、リザーバベース132、下リザーバ133及び流路ユニット140の順に積層されている。
インクジェットヘッド100はヘッドカバー110を有している。ヘッドカバー110は、一方の面が下方向に開口した概略的に箱形の形状を有している。ヘッドカバー110は、リザーバベース132の上面に設置された上リザーバ131等の部品を覆うようにリザーバベース132上に設置されている。ヘッドカバー110の上面にはインク供給弁111が設けられており、インク供給弁111を通じてインクリザーバ130の内部に形成されたインク流路135にインクが供給される。なお、インク流路135の詳細については後述する。
ヘッドカバー110の2つの側面には、部分的に切り欠かれた切り込み110aが形成されている。切り込み110aは、ヘッドカバー110の上下方向に沿って側面の下端から側面の中央近傍に亘って、ヘッドカバー110の側面が欠けている部分である。切り込み110aは長方形の形状を有しており、その長辺は主走査方向に沿っている。また、短辺はヘッドカバー110の側面の下端から上方向に沿っている。ヘッドカバー110が被された状態で、インクジェットヘッド100の側面から切り込み110aを通じてヘッドカバー110の内部がヘッドカバー110の外部へと現れている。インクジェットヘッド100の側面においてヘッドカバー110の内部にはヒートシンク150が設けられている。本実施形態においてはヒートシンク150に形成された平坦突出部150aが切り込み110aを通じてヘッドカバー110の外部から目視される。なお、ヒートシンク150の詳細については後述する。
インクジェットヘッド100はインクジェットプリンタ等のインクジェット方式を用いるあらゆる文字・画像記録装置に適用される。例えばインクジェットヘッド100がインクジェットプリンタに適用される場合には、インクジェットヘッド100の平面視において長手方向が主走査方向に、短手方向が副走査方向にそれぞれ沿うように配置される。そして、外部から画像データが入力され、流路ユニット140の下面に形成されたノズル8に対向する位置に印刷用紙が搬送されると、駆動素子からの駆動信号に従ってノズル8からインクが吐出され、印刷用紙に文字、画像等が形成される。インクジェットヘッド100に使用されるインクは、例えばインクジェットプリンタに設けられたインクカートリッジから、インク供給弁111に接続されたインクチューブを介して供給される。
図2は、ヘッドカバー110及びヒートシンク150が取り外された状態におけるインクジェットヘッド100の斜視図である。
インクリザーバ130の上方には制御基板170が固定されている。制御基板170は、概略的に主走査方向について長尺な長方形の形状を有している。副走査方向について制御基板170の長さと上リザーバ131の長さとはほぼ同じである。制御基板170の上面には各種のIC(Integrated Circuit)チップやコンデンサ等の電子部品が固定されており、多数の配線が施されている。制御基板170には、これらの電子部品や配線によって各種のプロセッサや記憶装置が構築されている。制御基板170上に構築された記憶装置にはインクジェットヘッド100を制御するためのプログラムを示すデータや一時的な作業用のデータが記憶されている。制御基板170上に構築されたプロセッサは、これらのデータに基づいてインクジェットヘッド100の動作を制御する。
制御基板170の上面には4つのコネクタ170aが固定されている。コネクタ170aは制御基板170上に構築された各種のプロセッサや記憶装置と電気的に接続されている。コネクタ170aのうちの2つは、制御基板170上で副走査方向について一方の端部に沿って、残りの2つは他方の端部に沿って固定されている。また4つのコネクタ170aは、副走査方向について互いに対向しないように、制御基板170上で主走査方向について等間隔に配列されている。つまり4つのコネクタ170aは、平面視において制御基板170上に千鳥状に配列されている。
インクリザーバ130(上リザーバ131、リザーバベース132及び下リザーバ133)の副走査方向に関する側面には、駆動素子としての4つのドライバIC160が固定されている。ドライバIC160のうちの2つは上リザーバ131の副走査方向について一方の側面において、残りの2つは他方の側面において、各コネクタ170aの下方の近傍にそれぞれ固定されている。
各コネクタ170aの側面にはFPC(Flexible Printed Circuit)162の一端が接続されている。FPC162は可撓性のシート状の部材であり、内部に配線が施されている。FPC162は、コネクタ170aからインクリザーバ130の側面に沿って下方へと向かい、下リザーバ133まで達している。FPC162の他端は下リザーバ133の側面に形成された開口から下リザーバ133と流路ユニット140との間へと挿入されており、流路ユニット140の上面に貼り合わされたアクチュエータユニット120(後述)に接続されている。
4枚のFPC162のそれぞれにはドライバIC160が1つずつ接続されている。ドライバIC160は、各FPC162の表面において、コネクタ170aから下リザーバ133までの領域内に接続されている。ドライバIC160は、後述のようにインクジェットヘッド100からのインク吐出を制御するベアチップである。ドライバIC160は主走査方向について長尺で副走査方向について扁平な形状を有している。
インクリザーバ130の副走査方向について両方の側面のそれぞれには、上リザーバ131の側面から突出した規制部131aが形成されている。規制部131aはインクリザーバ130の各側面について2つずつ形成されている。一方の側面に形成されている2つの規制部131aは、他方の側面に沿って延在する2枚のFPC162と平面視において対向する位置に形成されている。つまり各側面には、規制部131aとFPC162及びドライバIC160とが主走査方向に沿って交互に配置されている。
インクリザーバ130の上面にはインク供給口131bが形成されている。インク供給口131bはヘッドカバー110の上面に設けられたインク供給弁111に連通している。
図3(a)は、ヘッドカバー110が取り外された状態におけるインクジェットヘッド100の側面図である。図3(a)には、ヒートシンク150、FPC162及び制御基板170が取り外された状態が示されている。図3(b)はヒートシンク150を示している。図3(a)には、インクジェットヘッド100にヒートシンク150が設置される位置が破線で示されている。
図3(a)に示されているように、2つのドライバIC160は、上リザーバ131の側面に弾性部材161を介して固定されている。インク供給口131bは、上リザーバ131の上面に形成されている。
インクジェットヘッド100は、2枚のヒートシンク150を有している。ヒートシンク150はアルミニウム等の金属からなる平板状の部材である。2枚のヒートシンク150のそれぞれは副走査方向について流路ユニット140の両端に設けられており、主走査方向及び上下方向の両方向に沿って延在している。ヒートシンク150はインクリザーバ130と対向する表面を有している。
図3(b)に示されているように、ヒートシンク150には平坦突出部150a及び突起部150bが形成されている。平坦突出部150aは、ヒートシンク150の一方の表面内に含まれる1つの閉じた領域が、副走査方向について突出したものである。平坦突出部150aは、図3(b)に示されているように主走査方向について長尺な長方形の形状を有している。平坦突出部150aは主走査方向及び上下方向に沿って平坦である。突起部150bはヒートシンク150の下端から下方向へと突出している。ヒートシンク150の下端には、主走査方向に沿って5つの突起部150bが形成されている。
ヒートシンク150においてインクリザーバ130と対向する表面の一部はドライバIC160に当接している。ドライバIC160から発生する熱は、ヒートシンク150との当接面を通じてヒートシンク150に移動する。これによって、ドライバIC160からの放熱が促進される。なお、ヒートシンク150の材質は、空気より熱伝導率の大きい材料であれば金属以外のものでもよい。これによってドライバIC160から直接外気へと放熱される場合と比べて放熱の効率が良くなる。
ところで、副走査方向について流路ユニット140の上面の幅はインクリザーバ130の下面の幅より大きい。そして、インクリザーバ130は流路ユニット140の副走査方向について中央に配置されている。したがって、流路ユニット140の副走査方向について両端の近傍にはインクリザーバ130の下面と当接していない領域が存在する。この領域に凹部141が形成されている。凹部141はヒートシンク150に形成された突起部150bの形成位置に対応する位置に形成されている。また、凹部141は、ヒートシンク150の突起部150bとちょうど嵌まり合うような大きさ及び形状に形成されている。
図4(a)及び(b)はヒートシンク150及び流路ユニット140の部分拡大図である。図4(a)は、ヒートシンク150の突起部150bと流路ユニット140の凹部141とが嵌まり合う際の様子を示す図である。ヒートシンク150が流路ユニット140上に設置される際にヒートシンク150の各突起部150bが流路ユニット140の各凹部141に嵌め合わされる。各突起部150bと各凹部140とがそれぞれ嵌合されることにより、ヒートシンク150は流路ユニット140の上面にほぼ垂直に立設される。これにより、流路ユニット140の副走査方向に関して外側から外力が加えられても、ヒートシンク150が位置ずれしたり変形したりすることが抑制されている。
図4(b)は、ヒートシンク150において図3(b)の二点鎖線L1及びL2で囲まれる領域の拡大斜視図である。図4(b)は部分的にヒートシンク150の断面P1を含んでいる。この断面は、図3(b)において二点差線L1及び副走査方向の両方に沿って平行である。つまりこの断面は、平坦突出部150aの表面及び流路ユニット140の上面の両方に垂直である。
ヒートシンク150は、上端から平坦突出部150aに至る平坦部150e、下端から平坦突出部150aに至る平坦部150f及び平坦突出部150aの3つの部分からなる。平坦部150e及び150f(第1及び第2の平坦部のいずれか一方)は、副走査方向に垂直な同じ平面に沿って延在している。平坦突出部150a(第1及び第2の平坦部の他方)は、平坦部150e及び150fと比べて、副走査方向について流路ユニット140の中央よりも外側に位置している。つまり、図1において平坦突出部150aは図に向かって右奥へと突出している。本実施形態では、互いに対向する平坦突出部150aは、両端面間の間隔がちょうど流路ユニット140の副走査方向の幅とほぼ等しく構成されている。これにより、複数のインクジェットヘッド100が並ぶヘッドユニットとして装置に組み込む際に、不要にサイズが増大するのが抑制され、ヘッドユニットのコンパクト化に寄与する。
平坦突出部150aは折り曲げ部150c及び150dを介して平坦部150e及び平坦部150fと連結している。折り曲げ部150cは、平坦突出部150aの上端からインクリザーバ130側に副走査方向に沿って折れ曲がり、そこからさらに上方へ折れ曲がって平坦部150eの下端に連結している。折り曲げ部150dは、平坦突出部150aの下端からインクリザーバ130側に副走査方向に沿って折れ曲がり、そこからさらに下方へ折れ曲がって平坦部150fの上端に連結している。平坦突出部150aは、例えば金属製の平板にプレス加工が施されることによって形成される。
図5は、主走査方向及び上下方向の両方向に沿った断面を示すインクリザーバ130の縦断面図である。上リザーバ131の内部にはインク流路135が形成されている。また、上リザーバ131の上面にはインク流路135の一方の開口であるインク供給口131bが形成されており、上リザーバ131の下面にはインク流路135の他方の開口であるインク通過口131eが形成されている。インク供給口131bは、上リザーバ131の主走査方向について一端の近傍に形成されている。インク通過口131eは、上リザーバ131の主走査方向及び副走査方向の両方向について中央の近傍に形成されている。
インク流路135においてその一端から他端までの経路は以下のように形成されている。インク流路135はまずインク供給口131bから下方向に向かっている。そして上リザーバ131の下面近傍において上リザーバ131の下面に沿って延在する延在領域135aに連通している。上リザーバ131の下面には、可撓性のフィルム部材131dが変位可能に融着されている。フィルム部材131dの上面は、延在領域135aの下壁面の一部を構成している。フィルム部材131dが自由に変位することによって、インク流路135内に充填されたインクに発生する圧力波による衝撃が吸収される。
延在領域135aは延在領域135bと連通している。延在領域135bは延在領域135aの上方に形成されており、延在領域135aの延在面に平行に延在している。延在領域135aと延在領域135bとはフィルタ131cによって区画されており、フィルタ131cのフィルタ目を通じて互いに連通している。
インク流路135は、主走査方向について延在領域135bの両端のうち、上リザーバ131の中央に近い方の一端から上方向に上リザーバ131の上面近傍まで向かう。そして、上リザーバ131の上面近傍において主走査方向について上リザーバ131の中央へと折れ曲がり、上リザーバ131の上面に沿って上リザーバ131の中央へと向かう。上リザーバ131の中央近傍へと達すると、下方へと折れ曲がって上リザーバ131の下面へと向かい、上リザーバ131の下面においてインク通過口131eと連通している。
リザーバベース132の内部にはインク流路136が形成されている。リザーバベース132の上面にはインク流路136の一方の開口が形成されており、インク通過口131eと連通している。リザーバベース132の下面にはインク流路136の他方の開口であるインク通過口132aが形成されている。インク流路136はインク通過口131eからインク通過口132aに向かって下方向に延在している。
下リザーバ133の内部にはインク流路137が形成されている。下リザーバ133の上面にはインク流路137の一方の開口が形成されており、下面には他方の開口である複数のインク通過口133aが形成されている。インク通過口133aは流路ユニット140に対向しており、流路ユニット140の上面に形成されたインク供給口140aと連通している。なお、インク供給口140aの詳細については後述する。
インク流路137は以下の3つの部分からなる。第1の部分は、下リザーバ133の上下方向について中央近傍に、主走査方向に沿って延在している部分である。第2の部分は、第1の部分から上方へとインク通過口132aまで延在している部分である。第3の部分は、第1の部分から下方へとインク通過口133aのそれぞれまで延在している部分である。上記の第2の部分は、平面視においてインク流路136と重なる位置に形成されている。上記の第3の部分は、平面視においてインク通過口133aのそれぞれと重なる位置に形成されている。
このようにインクリザーバ130に形成されたインク流路135〜137を通じて、インク供給口131bから供給されたインクが流路ユニット140に流入する。流路ユニット140に到達するまでにインク流路135の半ばに設けられたフィルタ131cをインクが通過する。その際にインク内の不純物がフィルタ131cによって濾過される。
図6(a)、図6(b)及び図6(c)は、それぞれ図3(a)のVa−Va線、Vb−Vb線及びVc−Vc線に沿った断面図である。図6(b)及び図6(c)のそれぞれはこれらの断面図の部分拡大図を含んでいる。また、図6(a)〜図6(c)は同一の部品を示している部分を多く含んでいるため、これらの図において上リザーバ131、リザーバベース132、下リザーバ133、制御基板170及びコネクタ170aを示す符号の付記が適宜省略されている。なお、図6にはヘッドカバー110、ヒートシンク150、FPC162及び制御基板170が設置された状態の断面が示されている。
上リザーバ131の副走査方向に関する両側面は主走査方向に沿って以下のような領域を含んでいる。例えば、両側面のいずれにもドライバIC160も規制部131aも配置されていない領域Aである。または、一方の側面に規制部131aが形成されており他方の側面にドライバIC160が配置されている領域Bである。あるいは、ドライバIC160及び規制部131aの両方が配置されているが、これらが配置されている側面が領域Bとは逆の領域Cである。
図6(a)〜図6(c)は、上記の領域A〜Cのそれぞれの断面を示している。これらの図に示されているように、上リザーバ131は、副走査方向について上リザーバ131の中央部分を構成する上リザーバ本体131hと副走査方向について上リザーバ本体131hの両側のそれぞれに設けられた支持部131gとを有している。上リザーバ本体131hは、内部にインク流路135が形成されている部分である。支持部131gは、副走査方向について両方向に向かって上リザーバ本体131hから水平に延在している部分である。支持部131gにおいてヒートシンク150に最も近い端部の近傍は、上下方向のそれぞれに突出している。これらのうち、支持部131gの下方向に突出した部分は、上リザーバ131の全体を支えるようにリザーバベース132と当接している。このとき、上リザーバ本体131hの下面に融着されているフィルム部材131dとリザーバベース132の上面との間には間隙が形成され、フィルム部材131dがインクの圧力波に応じて上下方向に自由に変形できるようになっている。なお、上方向に突出した部分は、上リザーバ131を構造的に補強するリブとなっている。
上リザーバ131は、図5の左半分の領域において、上リザーバ本体131h及び支持部131gの両方からなる構造を有している。一方、図5の右半分の領域においては上リザーバ本体が形成されていないが、副走査方向について両方向に向かって延在する支持部131gが形成されている。つまり主走査方向について全ての領域に亘って支持部131gが上リザーバ131に形成されている。
図6(a)は上記の通りドライバIC160も規制部131aも配置されてない領域の断面図である。上リザーバ本体131hの両側に配置された支持部131gのそれぞれには、ヒートシンク150への対向面131jが形成されている。対向面131jは副走査方向に垂直な平面に沿って延びており、その下端はリザーバベース132に当接している。
図6(b)は、上記の通り、ドライバIC160及び規制部131aが上リザーバ131の両側面に配置されている領域の断面図である。図6(b)には、ドライバIC160の周辺を示す部分拡大図が含まれている。図6(b)において、支持部131gには、副走査方向について垂直であり且つヒートシンク150に対向する対向面131l及び131iが形成されている。対向面131lは支持部131gの上部に形成されており、対向面131lと対向面131jとは副走査方向に垂直な同じ平面に沿っている。対向面131iは、支持部131gの下部に形成されている。対向面131iは、副走査方向について対向面131lよりもヒートシンク150から離隔している。つまり、対向面131i及び131lの間には段差が形成されている。なお、支持部131gの下端は、リザーバベース132に当接しており、上リザーバ131を支えている。
対向面131iには弾性部材161が固定されている。弾性部材161は例えばスポンジのように外力を受けて変形する弾性材料からなり、概略的に直方体の形状を有している。弾性部材161とヒートシンク150との間にはドライバIC160が設置されている。つまりドライバIC160は、弾性部材161を介して支持部131gとヒートシンク150とに挟持されている。上記の通り、ドライバIC160においてヒートシンク150に対向する面はヒートシンク150に当接しており、ドライバIC160からの発熱がヒートシンク150を通じて放熱される。
ドライバIC160と弾性部材161との間にはFPC162が挟み込まれている。FPC162は、インクリザーバ130(上リザーバ131、リザーバベース132及び下リザーバ133)の側面に沿って上下方向に延在している。FPC162の一端はコネクタ170aに接続されており、他端は流路ユニット140と下リザーバ133との間に挿入されている。
弾性部材161の厚みは、対向面131iに固定されたとき、ヒートシンク150側の表面が対向面131lよりもヒートシンク150側に位置するように設定されている。このとき、常に弾性部材161がFPC162を介してドライバIC160を平坦突出部150aに押し付けて付勢するような大きさに調整されている。換言すると、ヒートシンク150と対向面131iとの間の距離は、弾性部材161が副走査方向について圧縮される距離に調整されている。これによってドライバIC160が確実にヒートシンク150に当接するため、ドライバIC160がヒートシンク150を通じて確実に放熱される。
なお、ドライバIC160が熱硬化性接着剤等でヒートシンク150に接着されていてもよい。このとき熱硬化性接着剤は、ドライバIC160におけるヒートシンク150との当接面に塗付されていないことが好ましい。例えば、ドライバIC160の当該当接面及び当接面に平行な面の間に形成されたドライバIC160の側面とヒートシンク150とに跨るように接着剤が塗布されていることが好ましい。熱硬化性接着剤を挟むとドライバIC160からの熱がヒートシンク150に伝わりにくくなるからである。
図6(c)は、上記の通り、ドライバIC160及び規制部131aが、上リザーバ131の両側面に、図6(b)とは逆に配置されている領域の断面図である。図6(c)には、規制部131aの周辺を示す部分拡大図が含まれている。支持部131gには副走査方向に垂直であり且つヒートシンク150に対向する対向面131k及び131mが形成されている。対向面131mは支持部131gの上部に形成されており、対向面131mと対向面131jとは副走査方向に垂直な同じ平面に沿っている。対向面131kは支持部131gの下部に形成されている。対向面131kは、副走査方向について対向面131mよりもヒートシンク150に接近している。つまり、対向面131k及び131mの間には段差が形成されている。なお、支持部131gの下端は、上述の対向面131iと同様に、リザーバベース132に当接して上リザーバ131を支えている。
規制部131aは、支持部131gに一体に形成されており、対向面131mに沿った平面から対向面131kまで突出した突出部である。ここで、対向面131kとヒートシンク150との離隔距離dは所定の大きさに調整されている。以下は、規制部131a及び離隔距離dについてのさらに詳細な説明である。
インクジェットヘッド100がプリンタに取り付けられる場合などにインクジェットヘッド100が把持されるとき、インクジェットヘッド100は、その短尺な方向について手で挟まれることとなる。このときヒートシンク150には直接、あるいはヘッドカバー110を介して外力Fが印加される。この外力Fの方向は副走査方向についてインクジェットヘッド100の外側から内側へと向かう方向である。
図7は、図6に示されている断面におけるドライバIC160及び規制部131a近傍の部分拡大図である。図7(a)及び図7(b)はヒートシンク150に外力Fが印加されてない状態を示し、図7(c)及び図7(d)はヒートシンク150に外力Fが印加されている状態を示している。また、図7(a)及び図7(c)は、支持部131gとヒートシンク150とが弾性部材161を介してドライバIC160を挟持している第1の位置の断面図を示しており、図7(b)及び図7(d)は、ドライバIC160が挟持されていない第2の位置の断面図を示している。
外力Fによりヒートシンク150の全体が副走査方向に沿ってインクジェットヘッド100の内側へと移動すると、ドライバIC160が弾性部材161へとさらに押し付けられることとなる。なお、特に断りのない場合には以下において、ヒートシンク150自体の撓みの量は、ヒートシンク150の全体が副走査方向に移動する移動量と比べて無視できるほど小さいものとする。
ドライバIC160が弾性部材161に押し付けられると、弾性部材161は外力Fが印加されていない状態よりもさらに圧縮される。このように弾性部材161が圧縮されて変形することにより、外力Fが変化する場合でもその変化が緩やかになるためドライバIC160に印加される力の変化も緩やかになる。また、ドライバIC160に印加される圧力が分散される。したがって、ドライバIC160に過大な負荷がかかるのが防止される。
しかし、外力Fが大きくなり、弾性部材161がそれ以上縮むことができない限界まで圧縮されると、弾性部材161が外力Fの変化を吸収したり圧力を分散したりすることができなくなる。したがってこのような場合、ドライバIC160に過大な負荷がかかり、ドライバIC160が破損するおそれもある。
規制部131aは、ドライバIC160に過大な負荷がかかるのを防止するためのものである。規制部131aは、上記の通り支持部131gとヒートシンク150とがドライバIC160を挟持していない第2の位置(図7(b)及び図7(d))に形成されている。規制部131aに形成された対向面131kが図7(d)のようにヒートシンク150に当接することにより、ヒートシンク150と支持部131gとの離隔距離が第1の位置(図7(a)及び図7(c))においてある大きさ以下にならないようにヒートシンク150の移動が規制される。ここで離隔距離とは、支持部131gとヒートシンク150との間の副走査方向に関する距離のうち、最も小さいものをいう。
そして、外力Fが印加されていない図7(b)の状態において、支持部131gとヒートシンク150との離隔距離dが以下のように調整されている。図7(c)が、弾性部材161が限界まで圧縮されている状態を示しているとする。また、図7(c)の状態において支持部131gとヒートシンク150との離隔距離(最小離隔距離)がbであり、外力Fが印加されていない図7(a)の状態での支持部131gとヒートシンク150との離隔距離がaであるとする。このとき、距離dはa−bより小さくなるように調整されている。
このように距離dがa−bよりも小さくなるように調整されていることにより、ヒートシンク150に外力Fが印加された場合であってもドライバIC160が挟持されている位置において支持部131gとヒートシンク150との距離がb以下になることがない。つまり外力Fの印加によってヒートシンク150が移動しても弾性部材161が限界まで圧縮される前に、ヒートシンク150が規制部131aに当接する。したがってそれ以上外力Fが大きくなっても、ヒートシンク150から印加される力は対向面131kに印加される力に分散される。これによってドライバIC160に過大な負荷がかかるのが防止される。
ところで、ヒートシンク150が撓みやすい材質や形状を有している場合には、外力Fの印加によって第2の位置においてヒートシンク150が距離dだけ移動し、ヒートシンク150が支持部131gに当接したとしても、第1の位置においてヒートシンク150が距離dよりも大きく支持部131gに近づくことが起こり得る。ヒートシンク150が撓む場合には、第1の位置において、ヒートシンク150の全体が移動して支持部131gに近づくのみならず、撓みによってより大きく支持部131gに近づくことがあり得るからである。ヒートシンク150は主走査方向に沿って長尺であるため、副走査方向に垂直な断面において凸形状を有するように撓むよりも、平面視において凸形状を有するように撓むことが多い。
しかし、本実施形態のヒートシンク150には、折り曲げ部150c及び150dが形成されている。折り曲げ部150c及び150dはいずれも主走査方向に沿って延在している。このため、ヒートシンク150には、平面視において凸形状を有するような撓みが生じにくい。したがって、外力Fの印加によって第2の位置においてヒートシンク150が距離dだけ移動した際に、第1の位置においてヒートシンク150が距離dよりも大きく支持部131gに近づくことが生じにくくなる。つまり、より確実にドライバIC160への過大な負荷を回避することが可能である。
また、図3(a)及び(b)や図4(a)に示されているとおり、ヒートシンク150が流路ユニット140に固定される場合には、ヒートシンク150の突起部150bが流路ユニット140の凹部141に嵌め合わされる。したがってヒートシンク150が流路ユニット140に確実に固定されると共に、ヒートシンク150が撓むのがより確実に防止され得る。
また、本実施形態においてドライバIC160と規制部131aとは、図2や図3(a)に示されているとおり、インクリザーバ130の副走査方向について互いに対向する側面上に、主走査方向に沿って交互に配置されている。つまり、規制部131aが主走査方向について一部の領域にのみ集中して形成されているなどの場合と比べて、規制部131aとドライバIC160とが均一に分布している。また、4つのドライバIC160のうちの2つは、2つの規制部131aによって主走査方向についてそれぞれ挟まれることになる。したがって、ヒートシンク150に外力Fが印加された際に、ヒートシンク150からの力がより均一に規制部131aに分散される。このため、より確実にドライバIC160への過大な負荷を回避することが可能である。
以下は流路ユニット140及びアクチュエータユニット120についての説明である。図8(a)は流路ユニット140の上面図である。流路ユニット140の上面にはアクチュエータユニット120が貼り合わされている。アクチュエータユニット120の形状は台形であり、その1対の平行対向辺が主走査方向に平行になるように配置されている。また、主走査方向に平行な2本の仮想直線のそれぞれに沿って2つずつ、つまり合計4つのアクチュエータユニット120が、全体として千鳥状に流路ユニット140上に配列されている。流路ユニット140上で隣接し合うアクチュエータユニット120の斜辺同士は、副走査方向について部分的にオーバーラップしている。
流路ユニット140の内部にはインク流路の一部であるマニホールド流路5が形成されている。流路ユニット140の上面には複数のインク供給口140aが形成されており、マニホールド流路5の一端は各インク供給口140aに連通している。インク供給口140aは、流路ユニット140の長手方向に平行な2本の直線のそれぞれに沿って5個ずつ、合計10個形成されている。インク供給口140aは、4つのアクチュエータユニット120が配置された領域を避ける位置に形成されている。
図8(b)は、図8(a)のB−B線に沿った断面図である。なお図8(b)の断面図には流路ユニット140やアクチュエータユニット120だけでなく、インクリザーバ130やヒートシンク150も描かれている。図8(b)に示されているようにインク供給口140aは下リザーバ133に形成されたインク通過口133aに連通している。マニホールド流路5にはインク供給口140aを通じてインクリザーバ130からインクが供給される。
図8(b)に示されているように、下リザーバ133と流路ユニット140とは、インク供給口140aとインク通過口133aとが連通している位置を除いて離隔している。アクチュエータユニット120は下リザーバ133と流路ユニット140との間に形成された空間に配置されており、下リザーバ133の下面と対向している。そしてアクチュエータユニット120の上面にFPC162が接続されている。
図9は、図8(a)の一点鎖線で囲まれた領域の拡大上面図である。なお、説明の都合上、図9にはアクチュエータユニット120が二点鎖線で示されている。また、本来破線で示されるべき流路ユニット140の内部や下面に形成されているアパーチャ12やノズル8などが実線で示されている。
流路ユニット140内に形成されたマニホールド流路5からは、複数本の副マニホールド流路5aが分岐している。これらの副マニホールド流路5aは、流路ユニット140の内部であって各アクチュエータユニット120に対向する領域に互いに隣接して延在している。図9に示されているように、2つのアクチュエータユニット120が隣接するところでは、1つのマニホールド流路5がこれら2つのアクチュエータユニット120に共有されており、その両側に4つずつの副マニホールド流路5aが分岐している。
流路ユニット140は、複数の圧力室10がマトリクス状に形成されている圧力室群9を有している。圧力室10は、角部にアールが施されたほぼ菱形の平面形状を有する中空の領域である。圧力室10は流路ユニット140の上面に開口するように形成されている。これらの圧力室10は、流路ユニット140の上面におけるアクチュエータユニット120に対向する領域のほぼ全面に亘って配列されている。従って、これらの圧力室10によって形成された各圧力室群9はアクチュエータユニット120とほぼ同一の大きさ及び形状の領域を占有している。また、各圧力室10の開口は、流路ユニット140の上面にアクチュエータユニット120が接着されることで閉塞されている。
本実施形態では、複数の圧力室10が、主走査方向に沿って互いに等間隔に並んでおり、全部で16列の圧力室列を構成している。また、各圧力室列は、それぞれを構成する圧力室10の数が圧力室群9の外形形状に対応した数となっている。アクチュエータユニット120の長辺に対応する圧力室列から、その短辺に対応する圧力室列に向かって圧力室10の数が少なくなっている。
アクチュエータユニット120の上面における各圧力室10に対向する位置には後述のような個別電極35がそれぞれ形成されている。個別電極35は圧力室10より一回り小さく、圧力室10とほぼ相似な形状を有しており、アクチュエータユニット120の上面における圧力室10と対向する領域内に収まるように配置されている。
流路ユニット140には多数のノズル8が形成されている。これらのノズル8は、流路ユニット140の下面における副マニホールド流路5aと対向する領域を避ける位置に配置されている。また、これらのノズル8は、流路ユニット140の下面におけるアクチュエータユニット120と対向する領域内に配置されている。そして、それぞれの領域内のノズル8は、流路ユニット140の長手方向に平行な複数の直線に沿って等間隔に配列されている。
なお、これらのノズル8は、流路ユニット140の長手方向に平行な仮想直線上にこの仮想直線と垂直な方向から各ノズル8の形成位置を射影した射影点が、印字の解像度に対応した間隔で等間隔に途切れずに並ぶような位置に形成されている。これによって、インクジェットヘッド100は、流路ユニット140におけるノズル8が形成された領域の長手方向についてのほぼ全領域に亘って、印字の解像度に対応した間隔で途切れずに印字できるようになっている。
流路ユニット140の内部には、多数のアパーチャ(しぼり)12が形成されている。これらのアパーチャ12は、圧力室群9と対向する領域内に配置されている。本実施形態のアパーチャ12は、水平面に平行な一方向に沿って延在している。
流路ユニット140の内部には、各アパーチャ12、圧力室10及びノズル8を互いに連通させるような連通孔が形成されている。これらの連通孔は、互いに連通し、個別インク流路32を構成している(図10参照)。各個別インク流路32は副マニホールド流路5aと連通している。マニホールド流路5に供給されたインクは副マニホールド流路5aを通じて各個別インク流路32へと供給され、ノズル8から吐出される。
流路ユニット140及びアクチュエータユニット120の断面構造について説明する。図10は、図9のX―X線に沿った縦断面図である。この図10は、ノズル8からインクを吐出するための単位素子の断面構造を示している。この単位素子は、流路ユニット140内に形成された1つの個別インク流路32と、後述の個別電極35で確定される1つの吐出アクチュエータとを含んでいる。
流路ユニット140は、複数のプレートが積層された積層構造を有している。これらのプレートは、流路ユニット140の上面から順に、キャビティプレート22、ベースプレート23、アパーチャプレート24、サプライプレート25、マニホールドプレート26、27、28、カバープレート29及びノズル8プレート30である。これらのプレートには多数の連通孔が形成されている。各プレートは、これらの連通孔が互いに連通して個別インク流路32及び副マニホールド流路5aを構成するように、位置合わせして積層されている。図10に示されているように、圧力室10は流路ユニット140の上面に、副マニホールド流路5aは内側中央部に、ノズル8は下面にと、個別インク流路32を構成する各部分が異なる位置に互いに近接して配設され、圧力室10を介して副マニホールド流路5aとノズル8とが連通孔により連通される構成を有している。
各プレートに形成された連通孔について説明する。これらの連通孔には、次のようなものがある。第1に、キャビティプレート22に形成された圧力室10である。第2に、圧力室10の一端から副マニホールド流路5aへと連通する流路を構成する連通孔Aである。連通孔Aは、ベースプレート23(圧力室10の入り口)からサプライプレート25(副マニホールド流路5aの出口)までの各プレートに形成されている。なお、連通孔Aには、アパーチャプレート24に形成されたアパーチャ12が含まれている。
第3に、圧力室10の他端からノズル8へと連通する流路を構成する連通孔Bである。連通孔Bは、ベースプレート23(圧力室10の出口)からノズル8プレート29までの各プレートに形成されている。第4に、ノズル8プレート30に形成されたノズル8である。第5に、副マニホールド流路5aを構成する連通孔Cである。連通孔Cは、マニホールドプレート26〜28に形成されている。
このような連通孔が相互に連通し、副マニホールド流路5aからのインクの流入口(副マニホールド流路5aの出口)からノズル8に至る個別インク流路32を構成している。
副マニホールド流路5aに供給されたインクは、以下の経路でノズル8へと流出する。まず、副マニホールド流路5aから上方向に向かって、アパーチャ12の一端部に至る。次に、アパーチャ12の延在方向に沿って水平に進み、アパーチャ12の他端部に至る。そこから上方に向かって、圧力室10の一端部に至る。さらに、圧力室10の延在方向に沿って水平に進み、圧力室10の他端部に至る。そこから3枚のプレートを経由して斜め下方に向かい、さらに直下のノズル8へと進む。
アクチュエータユニット120は、図11に示されているように、圧電層41、42、43、44からなる積層構造を有している。これらの圧電層41〜44はそれぞれ15μm程度の厚みを有している。アクチュエータユニット120全体の厚みは60μm程度である。圧電層41〜44のいずれの層も複数の圧力室10を跨ぐように延在している(図9参照)。これらの圧電層41〜44は、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックス材料からなる。
アクチュエータユニット120は、Ag−Pd系などの金属材料からなる個別電極35及び共通電極34を有している。個別電極35は上述のようにアクチュエータユニット120の上面における圧力室10と対向する位置に配置されている。個別電極35の一端は、圧力室10と対向する領域外に引き出されてランド36が形成されている。このランド36は例えばガラスフリットを含む金からなり、厚みが15μm程度で凸状に形成されている。また、ランド36は、FPC162に設けられた図示されていないコンタクトと電気的に接合されている。
インクジェットヘッド100が例えばプリンタに設置される場合には、制御基板170上に構築された制御部はプリンタが有する主制御部と電気的に接続される。制御基板170上の制御部はプリンタの主制御部の指示に従ってインク吐出に対応する電圧パルスを供給するようドライバIC160に指示する。ドライバIC160はその指示に従って、FPC162を通じてインク吐出に対応する駆動信号としての電圧パルスを個別電極35に供給する。
共通電極34は圧電層41と圧電層42との間の領域に面方向のほぼ全面に亘って介在している。すなわち、共通電極34は、アクチュエータユニット120に対向する領域内の全ての圧力室10に跨るように延在している。共通電極34の厚さは2μm程度である。共通電極34は図示しない領域において接地され、グランド電位に保持されている。
図11に示されているように、上記の2つの電極は、最上層の圧電層41のみを挟むように配置されている。圧電層における個別電極35と共通電極34とに挟まれた領域は活性部と呼称される。本実施形態のアクチュエータユニット120においては、最上層の圧電層41のみ活性部を含んでおり、その他の圧電層42〜44は活性部を含んでいない。すなわち、このアクチュエータユニット120はいわゆるユニモルフタイプの構成を有している。
個別電極35に選択的に所定の電圧パルスが供給されることにより、この個別電極35に対応する圧力室10内のインクに圧力が加えられる。これによって、個別インク流路32を通じて、対応するノズル8からインクが吐出される。すなわち、アクチュエータユニット120における各圧力室10に対向する部分は、各圧力室10及びノズル8に対応する個別の圧電アクチュエータ50(吐出アクチュエータ)に相当する。このように、アクチュエータユニット120には、個別電極35の数と同数の圧電アクチュエータ50が作りこまれている。本実施形態において1回の吐出動作によってノズル8から吐出されるインクの量は3〜4pl(ピコリットル)程度である。
以下、上記の実施形態における規制部131aに替わるその他の実施形態について説明する。図12(a)〜(d)はこのようなその他の実施形態を示す図である。なお、図12(a)〜(d)は、ヒートシンクに外力Fが印加されていない場合のヒートシンク及び支持部を示す図である。
図12(a)は、規制部131aとは形状の異なる規制部231aを有する支持部231gの第2の位置の近傍を示している。なお、図12(a)の実施形態に係るインクジェットヘッドにおいて、図12に示されている部分以外の構成は上記の実施形態と同様である。以下の他の実施形態においても同様である。
支持部231gには、副走査方向に垂直であり且つヒートシンク150に対向する対向面231m及び231kが形成されている。対向面231mは、副走査方向について対向面131jと同じ位置に配置されている(図6(a)参照)。対向面231kは対向面231mより副走査方向についてヒートシンク150の近くに位置している。規制部231aは、支持部231gに一体に形成されており、対向面231mに平行な平面から対向面231kまで突出した突出部である。なお、この場合、対向面231kはヒートシンク150に当接していてもよい。
図12(b)は、第2の位置において規制部がヒートシンクに形成されている場合を示している。図12(b)に係るヒートシンク250はヒートシンク150と異なり、規制部250gを有しているが、その他の構造はヒートシンク150と同様である。ヒートシンク250は平坦突出部250aを有している。平坦突出部250aは、副走査方向に垂直な平面に沿って延在しており、ヒートシンク250のその他の部分よりも副走査方向についてインクジェットヘッド100の外側へと突出している。平坦突出部250aにおいて支持部331gに対向する表面は、副走査方向に垂直な対向面250m及び250kからなる。対向面250kは対向面250mよりも副走査方向について支持部231gに近い位置に配置されている。規制部250gは、対向面250mに平行な平面から対向面250kまで突出した突出部であり、ヒートシンク250と一体に形成されていても、熱伝導性の良い別の部材が固定されたものでもよい。
一方で、図12(b)に係る支持部331gの断面形状は、図6(a)に係る支持部131gの断面形状と同様である。つまり、支持部331gには規制部となる突出部が形成されていない。
図7(c)の状態において支持部131gとヒートシンク150との離隔距離(最小離隔距離)がbであり、外力Fが印加されていない図7(a)の状態での支持部131gとヒートシンク150との離隔距離がaであるとき、ヒートシンク250と支持部331gとの離隔距離d1は、a−bより小さくなるように調整されている。
図12(c)は、第2の位置において支持部にもヒートシンクにも副走査方向について突出する突出部が形成されていない場合を示している。図12(c)に係る支持部431gには、ヒートシンク150への対向面431mが形成されている。対向面431mの副走査方向に関する位置は、図6(a)における対向面131jと同じである。また、図12(c)に係る実施形態の支持部431g以外の構成は図1〜図11によって示される構成と同様である。つまり、図12(c)に係る支持部431g及びヒートシンク150のいずれにも、副走査方向について突出する突出部が形成されていない。
しかし、支持部431gの上端は、図6(a)に示されている支持部131gの上端よりも上方に位置している。そして、支持部431gの上端は、ヒートシンク150の折り曲げ部150cよりもさらに上方に位置している。つまり、支持部431gの上端の近傍は、ヒートシンク150が副走査方向についてインクジェットヘッド100の内側へとある程度以上移動するのを規制している。
ここで、図7(c)の状態において支持部131gとヒートシンク150との離隔距離(最小離隔距離)がbであり、外力Fが印加されていない図7(a)の状態での支持部131gとヒートシンク150との離隔距離がaであるとき、ヒートシンク150と支持部431gとの離隔距離d2は、a−bより小さくなるように調整されている。
図12(d)に示された支持部531g及びヒートシンク150の断面形状は、図6(a)に示された支持部131g及びヒートシンク150の断面形状とほぼ同様である。支持部531gにはヒートシンク150への対向面531mが形成されている。対向面531mの副走査方向に関わる位置は、図6(a)における支持部131gに形成された対向面131jと同じである。しかし、図12(d)に係る実施形態においては、ヒートシンク150及び支持部531gのいずれとも別体の規制部材550が設置されている。規制部材550は、例えば概略的に直方体の形状を有する部材であって、対向面531m上に固定されている。規制部材550は、ヒートシンク150が副走査方向についてインクジェットヘッド100の内側へとある程度以上移動するのを規制している。
ここで、図7(c)の状態において支持部131gとヒートシンク150との離隔距離(最小離隔距離)がbであり、外力Fが印加されていない図7(a)の状態での支持部131gとヒートシンク150との離隔距離がaであるとき、ヒートシンク150と支持部531gとの離隔距離d3は、a−bより小さくなるように調整されている。
以上の実施形態によると以下の効果が奏される。図12(a)の規制部231aによると、外力Fがヒートシンク150に印加されていないときにも、対向面231kはヒートシンク150に当接している。これによって副走査方向についてインクジェットヘッド100の内側へとヒートシンク150がこれ以上移動するのが規制されている。したがって第1の位置(図6(b)参照)においてヒートシンク150がそれ以上支持部131gに近づくのが防止され、ドライバIC160に過大な負荷がかかるのが防止される。
図12(b)〜(d)の実施形態によると、第2の位置において支持部とヒートシンクとの離隔距離d1〜d3がそれぞれ上記のように調整されているため、第1の位置において弾性部材161が限界まで圧縮される前にヒートシンク150の移動が規制される。したがって、ドライバIC160に過大な負荷がかかるのが防止される。
以上は、本発明の好適な実施の形態についての説明であるが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、課題を解決するための手段に記載された内容の限りにおいて様々な変更が可能なものである。
例えば、上記の実施形態において、ドライバIC160はインクリザーバ131の一部である支持部131gに支持されている。しかし、インクリザーバ131以外の別の支持部材が設けられており、その支持部材にドライバIC160が支持されていてもよい。
また、上記の実施形態において、ヒートシンク150の撓みが小さいと想定されているが、無視できないほど撓みが大きい場合に本発明が適用されてもよい。このような場合には、ヒートシンク150の移動のみならずヒートシンク150の撓みによって第2の位置において支持部131gとヒートシンク150が接近する。したがって、撓みによってヒートシンク150が支持部131gに接近しても、ある程度以上は接近しないように規制部材が配置されていればよい。つまり、第1の位置において弾性部材161が限界まで圧縮されることのないように、第2の位置においてヒートシンク150の撓み及び移動の両方が規制されていればよい。
また、上述の各実施形態の第1の位置において、支持部131gの側面は、副走査方向の外側に突出した対向面131lと、ヒートシンク150の平坦突出部150aに対向し、対向面131lより副走査方向の内側に位置する対向面131iとから構成され、これら2つの対向面131i、131lのうち、対向面131lを含む支持部131gの側端部が、対向面131lと平坦突出部150aに続く上部の平坦部150eと対向する位置まで上方向に突出していてもよい。つまり、支持部131gの側面を構成する2つの対向面131i、131lのうち、よりヒートシンク150側に近接している対向面131lが、例えば図13(a)に示されているように、ヒートシンク150の上方の平坦部150eと対向するところまで延びていてもよい。
このとき、図7(c)と同様に、支持部131g(対向面131l)とヒートシンク150(平坦突出部150a)との離隔距離(最小離隔距離)が、図13(b)に示されているように、b、あるいは、それ以上となるように構成されている。例えば、平坦部150eや下方の平坦部150fからの平坦突出部150aの突出量をb、あるいは、これ以上とする。さらに、2つの対向面131i、131l間の離隔距離を、対向面131lと平坦部150eとが当接していても、弾性部材161が圧縮変形の限界まで達しておらず、変形に多少の余裕を残している距離としておけばよい。
ここで、ヒートシンク150に外力が加えられたとき、上述の第2の位置に構成された規制部131aに加えて、ドライバIC160に隣接して配置されることになる対向面131lと平坦部150eとの当接部によって、破損に繋がるような力がドライバIC160に及ぶことがより確実に回避される。なお、この構成では、外力によって、初めに規制部131aがヒートシンク150に当接する。外力の大きさによっては、これに続いて対向面131lと平坦部150eとの当接部での当接が生じるという2段階のステップを踏むことになる。