JP4674910B2 - ラマン分光法による結晶多形の自動判定方法及びその装置 - Google Patents
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Description
結晶多形は溶解度、溶解速度、融解温度、融解熱、格子エネルギー、酸塩基解離定数などの物理的、化学的性質が異なるため、バイオアベイラビリティー、生体内での有用性、安定性等に影響する。
結晶多形の形態や分子状態を調べる方法としては、X線回折法、熱分析法、IRスペクトル法、ラマン分光法、NMR法、マイクロバランスによる水蒸気吸着測定法、顕微鏡法などが挙げられる。
また、医薬品などの有機化合物は蛍光を発生することがあり、目的の結晶のスペクトルが蛍光に隠れて判別できない場合や、ベースラインが高くなり解析に供することが困難な場合があった。
さらに、各ウェル内の結晶のラマンスペクトルを取得する作業や、得られた大量のスペクトルデータの解析に長時間を要することから、測定、解析について操作の自動化や簡略化が求められた。
せ、反応終了後もマグネティックスターラーチップがウェル内に存在している状態でマグネティックスターラーチップ上にも結晶を析出させる場合と、[2]反応物中に異物(マルチウェルプレート上に存在し得る結晶以外の物質)すなわちマグネティックスターラーチップを含まずウェル底面に結晶を析出させる場合がある。
前記マルチウェルプレートにハロゲン照明光を照射する。このとき、[1]ウェル内にマグネティックスターラーチップを含む場合および結晶が不透明な場合には落射照明となり、[2]結晶が透明な場合には透過照明となる。この照射下に、ウェル底面の中央付近を低倍
率対物レンズが設置された光学顕微鏡に接続した電荷結合素子で観察する。
オートフォーカス機能により結晶位置の高さ(Z)を確定するとともに、拡大された結晶の画像を前記電荷結合素子で撮影する。この低倍率対物レンズによる撮影画像をコンピュータで二値化による画像処理を行なう。二値化による画像処理によって結晶の位置(座標)及び面積を特定しコンピュータに記録する。
続いて、低倍率対物レンズを高倍率対物レンズに自動交換する。低倍率対物レンズを用いて記録された座標位置に基づいて、光学顕微鏡の観察領域の中心に結晶が配置されるようにマルチウェルプレートを前記XYZ移動ステージによって移動する。高倍率対物レンズの焦点を結晶表面にオートフォーカスし、拡大された結晶の画像を前記荷電結合素子で撮影する。この高倍率対物レンズによる撮影画像をコンピュータで二値化による画像処理を行ない、結晶の詳細な位置を計測してコンピュータに記録する。
得られたラマンスペクトルを判定する。結晶以外にマルチウェルプレート上に存在し得る物質であるウェル及びマグネティックスターラーチップについて予め取得しておいたラマンスペクトルと比較し、前記得られたラマンスペクトルが、これら結晶以外の物質のラマンスペクトルと同等であると判断した場合は、再度結晶の位置特定を行う。
して蛍光の発生を回避する。このとき、一般的に近赤外レーザを用いることによって蛍光の発生が回避できる。
得られたスペクトルを多変量解析によって分類する。コンピュータに取り込んだスペクトログラムを解析ソフトウェア(多変量解析用の市販のコンピュータプログラムとしては、米国InfoMetrix社製のPirouetteがある。)を用いて解析し、結晶形を自動判定する。
また、結晶形が既知である場合は、予めラマンスペクトルを取得しSIMCA法によって予測モデルを作成する。予測モデルの各クラスごとに主成分分析を行い、未知試料のスペクトルを各クラスと比較して一番適合するクラスに割り当てる。
さらに、得られたスペクトルをラマンスペクトルデータベースや取得済みの物質のスペクトルと比較することにより物質同定を行うことが可能である。
結晶判定条件、ラマン分光分析条件、ラマンスペクトルなどの測定結果、および、多変量解析による結晶多形判定結果をレポート形式にしてまとめる。
蛍光の発生によりスペクトルが得られなかった場合は、レーザプレ照射や波長切替機能によって蛍光を回避し、スペクトルを再取得することが可能である。
また、測定の全過程を自動化し、得られたスペクトルデータを自動判定することによって、測定操作を簡易化し、結晶判定に要する時間を短縮することが可能となる。
そこで、各ウェル内にポリテトラフルオロエチレン製の平型マグネティックスターラーチップを入れた96ウェルプレート内でスルファニルアミドを反応させた後、各ウェル上にスルファニルアミドの結晶を析出させて上記のスクリーニングを行った。
また、96ウェルプレート36の下方には、前記[2]透明結晶を測定する場合の照射手段として必要なハロゲン透過照明光38が配置されている。
4は波長可変型)と分光器29はそれぞれ光ファイバ5, 6, 7および28によってラマン光学系システム27に接続されている。顕微鏡部と励起レーザ照射部1, 2, 3, 4、分光器29はファイバ長さの範囲で任意の場所に設置することが可能である。
34 およびXYZ移動ステージ37と接続している。さらに、コンピュータは多変量解析のソフトウェア45とラマンスペクトルデータベース46を内包している。
まず、XYZ移動ステージ37にスルファニルアミドの結晶が析出した石英ガラス製の96ウェルプレート36を設置する。
制御用コンピュータ47のXYZ移動ステージ制御部44からの指令によって、XYZ移動ステージ37を駆動し、観察領域にウェルの中心が入るように自動的に96ウェルプレート96を移動する。ハロゲン照明光32(または38)を照射し、低倍率対物レンズ33で拡大したウェル内の結晶について、オートフォーカス機能により結晶位置の高さ(Z)を確定するともに、拡大された画像を電荷結合素子39で撮影し、コンピュータ47で二値化処理する。二値化処理によって結晶のおよその位置、面積を計算し、コンピュータ47に記録する。結晶画像、二値化処理画像を図4に示す。
7)を通じてラマン光
学系システム27にレーザ光を導入する。レーザ光は自動波長切替部41によりプリズムを移動して4波長とも同じ光路を通るように反射させ、レーザ光と中心波長が合うように自動波長切替部41において自動的に選択したバンドパスフィルタ12(または13, 14, 15)を通過し、フラットミラー17、および、自動波長切替部41において自動的に選択したビームスプリッタ18(または20, 23, 25)によって反射させて光学顕微鏡内に導入する。レーザ光は高倍率対物レンズ34によって集光されて結晶を照射する。レーザ光により結晶から発生したラマン散乱光は高倍率対物レンズ34によって集光され、ラマン光学系システム27内に戻る。
得られたラマンスペクトルを、予め取得した石英製の96ウェルプレート36、ポリテトラフルオロエチレン製平型マグネティックスターラーチップのラマンスペクトルと比較する。ウェルプレートやマグネティックスターラーチップのスペクトルと同等であると判断される場合は、再度結晶の位置特定を行う。
プレ照射を行っても蛍光が減少しない場合は、波長自動切替部41で励起レーザ1(または2, 3)をレーザ2(または3, 4)に変更して蛍光の発生を回避する。蛍光が発生し、近赤外レーザに波長を変更して測定を行った場合のラマンスペクトルを図6に示す。
光学顕微鏡の観察領域に上記以外のウェル底面の中央付近が来るようにXYZ移動ステージ37を移動し、上記の作業を繰り返すことによってウェルプレート36上のウェル内に析出した結晶のスクリーニングを行う。
例えば、HCA法によって解析する場合、図7のようなデンドログラム表示されグループに分けた結晶形候補を視覚的に捉えることができる。
また、予め結晶形α、β、γのラマンスペクトル図8を取得し、SIMCA法によって予測モデルを作成した場合は、結晶のスペクトルは予測モデルの各クラスと比較して一番適合するクラスに割り当てられる。解析結果は図9の三次元図のように視覚的に捉えることができる。また、これらの解析結果は、図10のようにテーブル表示で示すこともできる。
以上の測定、解析の条件および求められたラマンスペクトルなどの測定結果、多変量解析による結晶多形判定結果をレポート形式にまとめて報告する機能により、簡便、短時間で96ウェルプレート上の結晶の判定を行うことが可能となる。
2 励起レーザ照射部
3 励起レーザ照射部
4 励起レーザ照射部
5 光ファイバ
6 光ファイバ
7 光ファイバ
8 ミラー
9 ミラー
10 ミラー
11 ミラー
12 バンドパスフィルタ
13 バンドパスフィルタ
14 バンドパスフィルタ
15 バンドパスフィルタ
16 励起レーザ用シャッタ
17 フラットミラー
18 ビームスプリッタ
19 ノッチフィルタ
20 ビームスプリッタ
21 ノッチフィルタ
22 ノッチフィルタ
23 ビームスプリッタ
24 ノッチフィルタ
25 ビームスプリッタ
26 ラマン散乱光用シャッタ
27 ラマン光学系システム
28 光ファイバ
29 分光器
30 冷却電荷結合素子検出器
31 ハーフミラー
32 ハロゲン落斜照明光
33 低倍率対物レンズ
34 高倍率対物レンズ
35 ターレット
36 ウェルプレート
37 XYZ移動ステージ
38 ハロゲン透過照明光
39 電荷結合素子
40 ラマンスペクトル取得部
41 自動波長切替部
42 画像取得部
43 顕微鏡制御部
44 XYZ移動ステージ制御部
45 多変量解析ソフトウェア
46 ラマンスペクトルデータベース
47 制御用コンピュータ
Claims (7)
- 目的の化合物をマルチウェルプレートの各ウェル上で任意の条件で析出させて結晶を得る工程と、
結晶の析出した前記マルチウェルプレートを顕微ラマン分光装置のXYZ移動ステージ上に設置し、コンピュータに前記マルチウェルプレート上の各ウェルの水平(XY)位置を認識させて、ウェル底面を基準とした高さ(Z)を設定する工程と、
前記マルチウェルプレート上の任意設定したウェルに自動的に移動し、ハロゲン照明光を照射する工程と、
前記ウェル底面の中央付近を低倍率対物レンズが設置された光学顕微鏡に接続した電荷結合素子で観察し、オートフォーカス機能により結晶位置の高さ(Z)を確定するとともに、拡大された結晶の画像を前記電荷結合素子で撮影する工程と、
前記低倍率対物レンズにより撮影された結晶の撮影画像をコンピュータで二値化による画像処理を行ない、前記二値化による画像処理によって結晶の位置(座標)及び面積を特定してコンピュータに記録する工程と、
前記二値化による画像処理によって結晶の位置(座標)及び面積を特定してコンピュータに記録できなかった場合は、前記二値化による画像処理を実施した箇所を中心とし、X,Y方向に任意に設定した移動距離および移動点数に従い、前記XYZ移動ステージをX,Y方向に自動的に操作してウェル内をマッピングし、結晶位置高さ(z)確定、撮影、二値化による画像処理を繰り返して、結晶の位置(座標)及び面積を特定してコンピュータに記録する工程と、
前記二値化による画像処理によって結晶の位置(座標)及び面積を特定してコンピュータに記録できた場合には、前記光学顕微鏡の低倍率対物レンズを高倍率対物レンズに自動交換し、低倍率対物レンズを用いて記録された座標位置に基づいて、光学顕微鏡の観察領域の中心に結晶が配置されるように前記マルチウェルプレートを前記XYZ移動ステージによって移動する工程と、
前記高倍率対物レンズの焦点を結晶表面にオートフォーカスし、拡大された結晶の画像を前記荷電結合素子で撮影する工程と、
前記高倍率対物レンズによる結晶の撮影画像をコンピュータで二値化による画像処理を行ない、結晶の詳細な座標位置を計測してコンピュータに記録する工程と、
前記高倍率対物レンズを用いて記録された結晶の詳細な座標位置に基づいて、光学顕微鏡の観察領域の中心に結晶が配置されるように前記マルチウェルプレートを前記XYZ移動ステージによって移動する工程と、
ハロゲン照明光のシャッタを自動で閉じるとともにラマン測定用の励起レーザ光のシャッタを自動で開いて結晶にレーザ光を照射し、前記レーザ照射光により発生するラマン散乱光をラマン光検出部で検出し、分光器でラマン散乱光を分光分析する工程と、
前記分光分析により得られたラマンスペクトルを、結晶以外にマルチウェルプレート上に存在し得る物質であるウェル及びマグネティックスターラーチップについて予め取得しておいたラマンスペクトルと比較し、前記結晶以外の物質のラマンスペクトルと同等であると判断した場合は、再度、低倍率対物レンズで撮影を行ない、前記二値化による画像処理によって結晶の位置(座標)及び面積を特定できなかった場合以降と同じ作業を繰り返して、結晶の位置特定を行ない、ラマンスペクトルを取得する工程と、
前記分光分析により得られたラマンスペクトルが、前記結晶以外の物質のラマンスペクトルと同等ではないと判断された場合は、結晶のラマンスペクトルを検出したものと判断し、前記分光分析により得られたラマンスペクトルを多変量解析によって分類するために、コンピュータに取り込んだスペクトログラムを解析ソフトウェアによって解析し、結晶形を自動判定する工程、
とからなるラマン分光法による結晶多形の自動判定方法。 - 目的の化合物をマルチウェルプレートの各ウェル上で任意の条件で析出させて結晶を得る工程において、
反応物中に結晶以外にマルチウェルプレート上に存在し得る物質であるマグネティックスターラーチップが存在していない状態で、ウェル底面に結晶を析出させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の自動判定方法。 - 目的の化合物をマルチウェルプレートの各ウェル上で任意の条件で析出させて結晶を得る工程において、
各ウェル内で化合物を円形、平型のマグネティックスターラーチップで撹拌して反応させ、反応終了後もマグネティックスターラーチップがウェル内に存在している状態で、マグネティックスターラーチップ上にも結晶を析出させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の自動判定方法。 - 前記マルチウェルプレート上の任意設定したウェルに自動的に移動し、ハロゲン照明光を照射する工程において、
前記ウェル内の結晶が透明な場合は、ハロゲン照明光の照射を透過照明とすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自動判定方法。 - 前記マルチウェルプレート上の任意設定したウェルに自動的に移動し、ハロゲン照明光を照射する工程において、
前記ウェル内にマグネティックスターラーチップを含む場合および結晶が不透明な場合は、前記ハロゲン照明光の照射を落射照明とすることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の自動判定方法。 - ベースラインが高く蛍光が発生したと認識された場合は、励起レーザ波長を変更して蛍光の発生を回避するか、もしくは、結晶に一定時間励起レーザを照射し(プレ照射)、蛍光が消失してからラマン分光測定を行うようにしたことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4又は請求項5に記載の自動判定方法。
- 目的の化合物を各ウェル上で任意の条件で析出させて結晶を得るためのマルチウェルプレートと、
結晶の析出した前記マルチウェルプレートがXYZ移動ステージ上に設置される顕微ラマン分光装置と、
前記XYZ移動ステージ上に設置された前記マルチウェルプレート上の各ウェルについて、
水平(XY)位置とウェル底面を基準とした高さ(Z)を記録するコンピュータと、
前記マルチウェルプレート上の任意設定したウェルに自動的に移動し、ハロゲン照明光を照射するハロゲン照射装置と、
前記マルチウェルプレートのウェルに向けて設置され、低倍率対物レンズと高倍率対物レンズが自動交換される光学顕微鏡と、
前記光学顕微鏡に接続されてウェル底面の中央付近を観察し、オートフォーカス機能により結晶位置の高さ(Z)を確定するとともに、拡大された結晶の画像を撮影する電荷結合素子とからなり、
前記コンピュータは、前記低倍率対物レンズによる結晶の撮影画像の二値化による画像処理によって結晶の位置(座標)及び面積を特定して記録するものであり、
前記XYZ移動ステージは、前記コンピュータによる前記二値化による画像処理によって結晶の位置(座標)及び面積を特定できなかった場合、任意に設定した条件に従って自動的に操作されてウェル内をマッピングし、撮影、二値化による画像処理を繰り返して結晶の位置(座標)及び面積を特定して検出するものであり、
前記光学顕微鏡は、前記二値化による画像処理によって結晶の位置(座標)及び面積を特定してコンピュータに記録できた場合において、低倍率対物レンズが高倍率対物レンズに自動交換され、低倍率対物レンズを用いて記録された座標位置に基づいて、光学顕微鏡の観察領域の中心に結晶が配置されるように前記マルチウェルプレートを前記XYZ移動ステージによって移動させるものであり、
前記荷電結合素子は、前記高倍率対物レンズの焦点を結晶表面にオートフォーカスして拡大された結晶の画像を撮影するものであり、
前記コンピュータは、前記高倍率対物レンズによる結晶の撮影画像を二値化による画像処理を行ない、結晶の詳細な座標位置を計測して記録するものであり、
前記マルチウェルプレートは、前記高倍率レンズを用いて記録された結晶の詳細な座標位置に基づいて、光学顕微鏡の観察領域の中心に結晶が配置されるように前記XYZ移動ステージによって移動させられるものであり、
前記ハロゲン照射装置のハロゲン照明光のシャッタが自動で閉じられるとき、前記顕微ラマン分光装置のラマン測定用の励起レーザ光のシャッタが自動で開かれて、結晶にレーザ光が照射されるものであり、
前記顕微ラマン分光装置は、前記レーザ照射光により発生するラマン散乱光をラマン光検出部で検出して、分光器でラマン散乱光を分光分析するものであり、
前記コンピュータは、前記分光分析により得られたラマンスペクトルを、結晶以外にマルチウェルプレート上に存在し得る物質であるウェル及びマグネティックスターラーチップについて予め取得しておいたラマンスペクトルと比較し、前記結晶以外の物質のラマンスペクトルと同等であると判断した場合は、再度、低倍率対物レンズで撮影を行なって、結晶位置及び面積を特定できなかった場合以降と同じ作業を繰り返して、結晶の位置特定を行なうものであり、
前記コンピュータは、前記分光分析により得られたラマンスペクトルが前記結晶以外の物質のラマンスペクトルと同等ではないと判断された場合には、結晶のラマンスペクトルを検出したものと判断し、前記コンピュータに取り込んだスペクトログラムを解析ソフトウェアによって多変量解析し、結晶形を自動判定するようにしたラマン分光法による結晶多形の自動判定装置。
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