JP4672158B2 - 超音波装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、超音波装置に関し、特に、検査対象物を構成する物質の音速が不均一であることに起因する受波信号の遅延時間分布の補正に適用して有効な技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の超音波装置として、特に、デジタル信号処理を主体とした超音波装置は、例えば特開平6−313764号公報(以下、文献1と記す)に記載されるように、複数個の振動子からなる探触子と、振動子に所定の時点で送波パルス電圧を供給する送波部及び各振動子が出力する受波信号を増幅する増幅器並びに増幅後の受波信号をデジタル信号に変換するA/D変換器からなる送受信部と、デジタル化された受波信号の周波数を低周波に移動する波形変換部と、低周波に移動された受波信号を累加する累加部と、各振動子毎に累加された受波信号に位相差を揃えるための遅延を与えるデジタル遅延部と、遅延後の受波信号を加算処理した後にlog圧縮やフィルタリング処理等の画像処理を行う信号処理部と、座標変換や補間等のスキャン変換を行い表示用の超音波像を生成し表示装置の表示面上に表示させる表示部とから構成されていた。
【0003】
デジタル遅延部は、隣接する振動子が受波した受波信号間の位相差を計測し、2つの受波信号の位相差を揃えるための遅延量を演算する相関器と、該相関器が計算した遅延量を受波信号に与える遅延部とから構成されていた。
【0004】
この文献1に記載の超音波装置では、まず、送受信部がオーバーサンプリングした受波信号に対して、波形変換部が受波信号の周波数を低周波へ移動した後に、累加部が累加算処理を行うことによって、探触子が受波した反射パルスの取り込み精度に係わるA/D変換の実効的精度を向上させていた。
【0005】
次に、デジタル遅延部が各振動子に対応する受波信号に対して予め設定された遅延時間(初期遅延時間)を与えることによって、焦点位置となる目標物体から各振動子位置に至るまでの遅延時間差を補正していた。ただし、このときデジタル遅延部が与える初期遅延時間は、測定対象を均一媒質とみなした場合の遅延時間差であった。この後に、相関器が隣接する振動子が受波した受波信号間の位相差を揃えるための遅延量を計算し、デジタル遅延部が相関器で計算された遅延量を受波信号に与えることによって、測定対象が不均一媒質であることに起因する受波信号の位相差すなわち各振動子が受波した反射パルスのパルス波面の歪みを補正し、超音波画像の分解能を向上させていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、前記従来技術を検討した結果、以下の問題点を見いだした。
従来の超音波装置は、前述するように、相関器によって隣接する振動子間の相関演算を行い、この相関演算により得られた遅延時間で初期遅延時間を補正した遅延を受波信号に与えることによって、測定対象が不均一媒質であることに起因するパルス波面の歪みを補正する構成となっていた。従って、従来の超音波装置では、受波信号に初期遅延時間を与えた超音波画像と、補正によって得られる超音波画像との間には1フレーム分の時間遅れが生じることとなっていた。このために、パルス波面の歪みを正確に補正するためには、解析的に得られた初期遅延時間と同じ状態での超音波計測すなわち測定対象と探触子との相対的な位置変動を抑えた状態での超音波計測を行う必要があった。
【0007】
しかしながら、一般的な超音波計測では、検者は測定対象に当接させた探触子を移動させながら関心領域を探り、所望の超音波画像を得るようにしていた。このために、従来の超音波装置では、相関器による遅延補正の有無を制御する選択スイッチを設け、この選択スイッチを検者に操作させることによって、探触子の移動中における遅延補正を停止させる構成となっていたので、検者にかかる負担が大きくなってしまうという問題があった。
【0008】
また、従来の超音波装置は、例えば、中空構造である人体等を測定対象とする医用の超音波装置では、反射パルス強度が小さく受波信号のS/Nが小さい領域においても媒質不均一に係わる補正を行う構成となっていた。しかしながら、受波信号のS/Nの低下した領域では、正確な相関演算を行うことができないので、パルス波面のズレすなわち歪みを大きくしてしまい、不均一媒質による影響以上に画像の質を低下させてしまうという問題があった。
【0009】
本発明の目的は、検者にかかる負担を低減させることが可能な超音波装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、診断効率を向上することが可能な超音波装置を提供することにある。
本発明のその他の目的は、不均一媒質を超音波が伝搬することによるパルス波面の歪み補正の有無を自動的に選択することが可能な超音波装置を提供することにある。
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面によって明らかになるであろう。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、下記のとおりである。
【0012】
(1)超音波信号を送受波する複数の振動子からなる探触子と、該振動子が受波した受波信号にそれぞれの振動子位置で受信する目標物体からの波面の入射時刻に対応する遅延を与えるデジタル遅延手段と、デジタル遅延後の受波信号間の位相差を補正する位相差補正手段と、該位相差補正後の受波信号を加算し超音波像を生成する信号処理手段とを有する超音波装置において、
前記相差補正手段は、前記受波信号の強度を計測する手段と、前記受波信号の強度の計測結果に基づいて前記相差の補正領域を可変する手段とを備え、前記位相差補正手段は前記補正領域内の受波信号間の位相差を補正し、さらに、前記補正領域を示すフレーム像を前記超音波像と同一の表示画面に表示させる手段を備える。
【0013】
(2)(1)記載の超音波装置において、前記相差補正手段は、前記探触子と前記測定対象との相対的な位置変動を監視する手段と、該監視出力に基づいて前記相差補正の有無を選択する手段と、前記受波信号の強度を計測する手段と、前記受波信号の強度の計測結果に基づいて前記相差の補正領域を可変する手段とを備える。
【0015】
前述した(2)の手段によれば、目標物体に対する探触子の移動を監視する監視手段の監視出力に基づいて、判定手段が相差補正の有無を判定する。この判定の後に、相差補正手段が測定対象を媒質均一とした遅延時間を設定するかあるいは媒質不均一に起因するパルス波面のずれを補正した遅延時間を設定するかを制御する構成となっているので、不均一媒質を超音波が伝搬することによるパルス波面の歪み補正の有無を自動的に選択することができる。
【0016】
このように、検者は機器操作等を行うことなく受波信号に初期遅延時間を与えた超音波画像と、補正によって得られる超音波画像との間に1フレーム分の時間遅れが生じることを防止した超音波像を得ることができるので、検者に負担をかけることなく、測定対象が不均一媒質であることに起因するパルス波面の歪み補正に伴う超音波画像の画質低下を防止できる。その結果、超音波計測に係わる診断時間を短縮することができるので、検者は診断効率を向上することができる。
【0017】
前述した(1)の手段によれば、まず、強度計測手段が位相差補正に値する受波信号強度の部分を検索し、この結果に基づいて、補正領域可変手段が超音波像中での補正領域を特定し、この特定された補正領域に属する超音波ビーム及び探触子の当接位置からの深度を特定する。次に、位相差補正手段が特定された補正領域内のみの受波信号間の位相差を補正するので、受波信号のS/Nの低下した領域でのパルス波面のズレ補正に伴う画像の低下を防止できる。また、補正領域可変手段が特定した特定領域内のみの相関演算を行う構成となるので、不均一媒質を超音波が伝搬することによるパルス波面の歪み補正に伴う演算負荷を低減することができる。その結果、速やかに測定対象部位の超音波像を得ることが可能となるので、診断効率を向上することができ、検者にかかる負担を低減させることができる。
【0018】
このとき、フレーム表示手段が補正領域を示すフレームを超音波像と共に表示することによって、検者は自動的に設定された補正領域を検証しつつ超音波計測を行うことが可能となる。
【0019】
前述した()または()の手段によれば、目標物体に対する探触子の移動を監視する監視手段の監視出力に基づいて、判定手段が相差補正の有無を判定する。この判定の後に、相差補正手段が測定対象を媒質均一とした遅延時間を設定するかあるいは媒質不均一に起因するパルス波面のずれを補正した遅延時間を設定するかを制御する構成となっている。一方、強度計測手段が位相差補正に値する受波信号強度の部分を検索し、この結果に基づいて、補正領域可変手段が超音波像中での補正領域を特定し、該特定領域の超音波ビーム及び探触子の当接位置からの深度を特定する。次に、位相差補正手段が特定された補正領域内の受波信号間の位相差を補正する。その結果、不均一媒質を超音波が伝搬することによるパルス波面の歪み補正の有無を自動的に選択することができると共に、受波信号のS/Nの低下した領域でのパルス波面のズレ補正に伴う画像の低下を防止できるという効果を奏することができる。
【0020】
このとき、フレーム表示手段が補正領域を示すフレームを超音波像と共に表示することによって、検者は自動的に設定された補正領域を検証しつつ超音波計測を行うことが可能となる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、発明の実施の形態(実施例)とともに図面を参照して詳細に説明する。なお、発明の実施の形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0022】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1の超音波装置の概略構成を説明するための図であり、101は振動子、102は送受信手段、103はデジタル遅延手段、104は信号処理手段、105は表示手段、106は変動推定手段、107は変動量判定手段、108は零遅延誤差発生手段、109は補正遅延量演算手段、110は第1の遅延誤差選択手段を示す。ただし、振動子101、送受信手段102、デジタル遅延手段103、信号処理手段104及び表示手段105は、周知の機構及び手段を用いる。また、以下の説明では、本願発明を測定対象が人体や動物等の生体となる医用の超音波装置に適用した場合について説明するが、本願発明の適用範囲は医用に限定されることはなく、測定対象が非生体であり物体の構造等を破壊することなく調べるための超音波装置にも適用可能なことはいうまでもない。
【0023】
図1において、変動推定手段106は、時系列に生成される超音波像間の相関演算によって、超音波像の動きから測定対象である図示しない被検体に対する振動子101すなわち該振動子101が複数配列された探触子の位置変動を推定し、該変動量を変動量判定手段107に出力する手段である。変動推定手段106は、例えば、MPEGにおける動き補償として知られるオプティカルフローと称される方法に基づいて、時間的に連続する2画像間の画像輝度の移動を順次検出することにより、被検体に対する探触子の位置変動を推定する。
【0024】
なお、以下にオプティカルフローについて、説明する。探触子の位置が変動すると超音波ビームが横切る断面の位置が変動し、画像もそれにつれて移動する。すなわち、超音波画像として描出された各種臓器やスペックルの輝度パターンは、探触子の移動と共に移動していくこととなる。従って、時系列の2画像間で移動する臓器などを検出するには、1枚目の画像における任意の1画素に対応した画素を2枚目の画像から見つけ出すことを行う必要がある。
【0025】
このために、まず、1枚目の画像から任意の小領域を選び出す。この選び出す領域(小領域)は、ハードウエア処理に適合させるために矩形とし、8×8画素や16×16画素のように、ある程度超音波画像で描出された構造物を含むような大きさにする。この選び出した小領域は、S1(x,y,t)で表す。ただし、x,yがこの小領域の座標、tが画像を収集した時刻、S1は小領域の画素値を示す。
【0026】
次に、2枚目の画像からも1枚目の画像と同様にして、小領域S2(x+a,y+b,t+Δt)を選ぶ。ただし、a,bは1枚目から選び出した領域の位置からのx,y方向のずらし量、Δtは1枚目の画像と2枚目の画像とを取得した時間間隔を示す。
【0027】
次に、これら小領域同士の輝度差の絶対値の合計S0(a,b,t)=Σ|S1−S2|を計算する。そして、a,bを増加しながらS0が最小となるa,bの組み合わせを調べる。このとき、領域ずらし量a=A,b=BでS0が最小となったとき、領域S1と領域S2との輝度パターンは最もよく一致しており、x,y方向にA,B画素だけ平行移動していることが分かる。ここで、探触子が平行にしか移動していなければ、これで探触子の位置変位が判明したことになる。
【0028】
しかしながら、超音波画像は媒質の性質により、ほとんど信号を検出することができない領域が小領域内に含まれることもあるので、信号が検出できなかった領域は真っ暗な像として描出する。また、探触子は媒質表面の湾曲に沿って動かす(移動させる)ことが一般的であり、このためには探触子を回り込ませるように回転させながら移動させることもしばしばである。
【0029】
このために、小領域を1個所しか選ばなければこれらの問題点に対処できないため、実施の形態1では、複数の小領域で上記と同様の処理を行う。例えば、2個所の小領域による処理では、その内の1個所が真っ暗な領域であっても、残りの1個所の領域によって、探触子の平行移動を推定できることとなる。また、2個所以上の検出可能な領域があれば、回転を含む探触子の移動量を検出することができる。
【0030】
なお、実施の形態1の変動推定手段106は信号処理手段104から出力される超音波像に基づいて、探触子の移動を推定する構成としたが、これに限定されることはなく、例えば、探触子に周知の各速度センサを取り付けこの各速度センサ出力を監視することによっても、探触子の移動を間接的に推定することも可能である。また、探触子と被検体との相対的な移動量を直接計測することとしてもよいことはいうまでもなく、例えば、探触子の本体部分に配置した発信器から放射される電磁波や光を、超音波装置本体に配置した受信器で受信して発振器位置を特定することができる。
【0031】
変動量判定手段107は、変動推定手段106からの変動量に基づいて探触子の移動の有無を判定する手段であり、例えば、判定の基準となる判定境界値を格納する周知のメモリと、該判定境界値と変動量とを比較する周知の比較回路とから構成される。この構成によって、変動量判定手段107は、変動量が多い場合には図示しない検者が探触子を移動させていると判定し、一方変動量が少ない場合には検者が探触子を静止させていると判定してその判定結果を第1の遅延誤差選択手段110に出力する構成となっている。すなわち、実施の形態1の変動量判定手段107は、被検体に対する探触子の位置変動の度合いを判定する際に、変動推定手段106からの変動量が目的とする臓器位置を探るための探触子移動に起因するものか、目的とする病変部の状態等を探るための探触子の移動に起因するものであるか、あるいは被検体の呼吸や拍動等の体動に伴うものであるかを勘案した判定を行う構成となっている。なお、変動量判定手段107による判定動作の詳細については、後述する。
【0032】
零遅延誤差発生手段108は、媒質均一とした場合の受波動作における超音波ビームの走査線方向及び焦点位置を設定するために必要となる振動子101毎の遅延時間(以下、初期遅延と記す)を格納する図示しない記憶手段から読み出した遅延時間を格納する手段であり、読み出した遅延時間を第1の遅延誤差選択手段110に出力する。
【0033】
補正遅延量演算手段109は、デジタル遅延手段103から出力される隣接振動子間の遅延時間差すなわち媒質不均一に起因するパルス波面のずれを補正するために必要となる時間差に基づいて、受波信号に与える遅延量を演算する周知の手段であり、得られた遅延時間差を第1の遅延誤差選択手段110に出力する構成が従来と異なる。この補正遅延量演算手段109は、例えば、デジタル遅延手段103が各振動子101に対応する受波信号に与えた遅延量(ここでは、初期遅延となる)に対して、デジタル遅延手段103から出力された遅延時間差を累積した遅延時間を加算することによって、媒質不均一に起因するパルス波面のずれを補正する遅延時間を演算する。
【0034】
第1の遅延誤差選択手段110は、変動量判定手段107からの出力に基づいて、零遅延誤差発生手段108から出力される遅延時間と補正遅延量演算手段109から出力される遅延時間との何れか一方の遅延時間をデジタル遅延手段103に出力する手段である。この第1の遅延誤差選択手段110がデジタル遅延手段103に出力する遅延時間を切り替えることによって、被検体を媒質均一として設定した受波整相を行うか、あるいは適応像再生と称される媒質不均一に起因したパルス波面のずれを補正した受波整相を行うかの選択を可能とする。
【0035】
次に、図2に実施の形態1の変動量判定手段の動作を説明するための図を示し、以下、図2に基づいて実施の形態1の超音波装置の動作を説明する。ただし、図2の(a)は判定に使用する境界値が単一の場合の図であり、図2の(b)は判定に使用する境界値が2つの場合の図である。
【0036】
超音波計測の開始が指示されると、送受信手段102を形成する送波整相手段から振動子101の駆動信号である送波信号が各振動子101に供給され、図示しない被検体に超音波(送波パルス)が送波される。ただし、このとき各振動子101に供給される送波信号は、被検体を媒質均一として設定された遅延時間が与えられた信号であり、各振動子101から照射された超音波が予め設定された超音波ビーム方向に設定された信号である。
【0037】
被検体内で反射され振動子101に入射した超音波(反射パルス)は、振動子101によって電気信号であるアナログの受波信号に変換された後に、送受信手段102に出力される。送受信手段102は、前述の文献1に示すように、まず入力されたアナログの受波信号をオーバーサンプリングのA/D変換によってデジタルの受波信号に変換する。次に、送受信手段102は、デジタルの受波信号の周波数を低周波へ移動した後に、累加算処理しデジタル遅延手段103に出力することによって、各振動子101が受波した反射パルスの取り込み精度であるA/D変換時の実効的精度を向上させた受波信号をデジタル遅延手段103に出力する。
【0038】
デジタル遅延手段103は、送受信手段102からの受波信号に対して初期遅延として設定された遅延を与えた信号を信号処理手段104に出力すると共に、初期遅延を与えた信号の内で隣接する振動子101に対応する信号間での相関値すなわち信号間の位相差を補正するために必要な遅延量を補正遅延量演算手段109に出力する。信号処理手段104は遅延処理後の信号を加算処理によって、超音波ビームを形成する。
【0039】
この超音波ビームは信号処理手段104に順次格納される。1画面分の超音波ビームの走査が終了した時点で、信号処理手段104はlog圧縮やフィルタリング処理等の画像処理を行い、得られた超音波像を表示手段105に出力することによって、超音波画像として表示手段105の表示画面上に表示する。このとき、信号処理手段104は、表示手段105に出力したものと同じ超音波像を変動推定手段106に出力する。
【0040】
変動推定手段106は、今回の超音波走査で得られた超音波像と前回の超音波走査で得られた超音波像とから、被検体の拍動等に代表される体動等を含む被検体と探触子との相対的な位置変動量を推定し、得られた変動量を変動量判定手段107に出力する。ここで、図2の(a)の判定曲線201に示すように、変動量が予め設定された判定境界値よりも大きい場合には、変動量判定手段107は「確からしくない」として「0(ゼロ)」を第1の遅延誤差選択手段110に出力する。一方、変動量が予め設定された判定境界値よりも小さい場合には、変動量判定手段107は「確からしい」として「1」を第1の遅延誤差選択手段110に出力する。ただし、図2の(b)の判定曲線202に示すように、2つの判定境界値1,2を設け、変動量が増加時においては判定境界値2よりも大きい判定境界値1を使用し、変動量が減少時においては判定基準値1よりも小さい判定基準値2を使用することによって、判定基準値にヒステリシスを有した特性を持たせることができるので、変動量が判定境界値に近い場合の判定出力を安定させることができる。すなわち、超音波走査毎に判定結果が交播してしまう等の問題を防止することができる。
【0041】
変動量判定手段107から出力された判定結果(判定信号)が入力される第1の遅延誤差選択手段110は、判定結果が「確からしくない」すなわち「0(ゼロ)」の場合には、零遅延誤差発生手段108からの遅延時間すなわち媒質均一とした場合の受波動作における超音波ビームの走査線方向及び焦点位置を設定するために必要となる振動子101毎の遅延時間を読み出し、デジタル遅延手段103に出力する。この場合のデジタル遅延手段103での遅延処理は、媒質均一とした遅延処理となる。
【0042】
一方、変動量判定手段107の判定結果が「確からしい」すなわち「1」の場合には、第1の遅延誤差選択手段110は、デジタル遅延手段103から出力される隣接振動子間の遅延時間差を補正する遅延時間すなわち補正遅延量演算手段109からの遅延時間をデジタル遅延手段103に出力する。この場合のデジタル遅延手段103での遅延処理は、媒質不均一に起因するパルス波面のずれを補正する遅延処理となる。
【0043】
図3は実施の形態1のデジタル遅延手段の概略構成を説明するための図であり、301はデジタル遅延回路、302は相関手段、303は遅延データ手段を示す。
図3において、デジタル遅延回路301は各振動子101が受波した受波信号に受波整相のための遅延時間を与える周知の回路であり、例えば、受波信号を時系列に格納する周知のメモリと、遅延データ手段303からの遅延時間に基づいてメモリからの受波信号の読み出しアドレスを制御する周知の読み出し制御手段とから構成される。
相関手段302はデジタル遅延回路301から出力される遅延処理後の隣接振動子間での受波信号の遅延時間差を演算する周知の相関器からなる手段であり、得られた遅延時間差は補正遅延量演算手段109に出力される。なお、相関手段302による遅延時間差の演算動作については、後述するデジタル遅延手段103の動作説明で詳述する。
【0044】
まず、図3に基づいて、実施の形態1の相関手段301による遅延時間差の演算動作を説明する。
初期遅延時間を与えた後の受波信号は、それぞれ
cos(ω(t+τ1) ・・・・(式1)
cos(ω(t+τ2) ・・・・(式2)
と表される。ただし、τ1及びτ2はそれぞれ隣接する振動子が受波した受波信号に与える遅延時間を示し、ωは2π×画像化する受波信号の中心周波数を示す。また、以下の説明では、説明を簡単にするために、ωを中心周波数と記す。
【0045】
ここで、式1,2の時間差τ1−τ2を求めることができるならば、式2をcos(ω(t+τ2+τ1−τ2))=cos(ω(t+τ1))と補正して、式1と等しくできる。したがって、式1,2を複素変換した後に、2つの信号間の位相差からτ1−τ2を求めることができる。
【0046】
まず、式1を複素表示すると、
(εj( ω t+ θ 1)+ε-j( ω t+ θ 1))/2 ・・・・(式3)
となり、式2を複素表示すると、
(εj( ω t+ θ 2)+ε-j( ω t+ θ 2))/2 ・・・・(式4)
となる。ただし、θ1=ωτ1,θ2=ωτ2である。
【0047】
次に、複素ミキシングのために、式3及び式4に
εj ω t ・・・・(式5)
を乗算すると、式3は、
(εj(2 ω t+ θ 1)+ε-j θ 1)/2 ・・・・(式6)
となり、式4は、
(εj(2 ω t+ θ 2)+ε-j θ 2)/2 ・・・・(式7)
となる。
【0048】
次に、この式6,7にローパスフィルタ処理を施して、高周波成分を除去すると、式6,7はそれぞれ下記の式8,9となる。
ε−jθ1 ・・・・(式8)
ε−jθ2 ・・・・(式9)
この式8の複素共役と式9との乗算を行うと、
εj( θ 1- θ 2)/4 ・・・・(式10)
となる。
【0049】
次に、この式10の実部と虚部との逆正接演算を計算すると、
tan-1(sin(θ1−θ2)/cos(θ1−θ2))・・・(式11)
となり、この式11からθ1−θ2が求められる。ここで、
(θ1−θ2)/ω ・・・・(式13)
に示すように、式11をωで除算することによって、隣接する振動子間の遅延時間差すなわち補正量であるτ1−τ2を求めることができ、この補正量が補正遅延量演算手段109に出力される。
【0050】
この後に、補正遅延量演算手段109が初期遅延から補正量をそれぞれ減算することによって、媒質不均一に起因するパルス波面のずれを補正した遅延時間を演算し、得られた遅延時間が第1の遅延誤差選択手段110を介して遅延データ手段303に設定される。ここで、デジタル遅延回路301が遅延データ手段303に設定された遅延時間を読み出し、この読み出した遅延時間に基づいてメモリからの受波信号の読み出しアドレスを制御することによって、媒質不均一に起因するパルス波面のずれを補正した受波信号を得ることが可能となる。
【0051】
以上説明したように、実施の形態1の超音波装置では、変動推定手段106と変動量判定手段107とからなる被検体に対する探触子の移動を監視する監視手段の監視出力に基づいて、第1の遅延誤差選択手段110が媒質均一とした遅延時間をデジタル遅延手段103に設定するか、あるいは媒質不均一に起因するパルス波面のずれを補正した遅延時間を設定するかを制御する構成となっているので、不均一媒質を超音波が伝搬することによるパルス波面の歪み補正の有無を自動的に選択することができる。すなわち、検者の機器操作等によらずに受波信号に初期遅延時間を与えた超音波画像と、補正によって得られる超音波画像との間に1フレーム分の時間遅れが生じることを防止できるので、検者に負担をかけることなく、測定対象が不均一媒質であることに起因するパルス波面の歪み補正に伴う超音波画像の画質低下を防止できる。その結果、診断効率を向上することができる。
【0052】
なお、実施の形態1の超音波装置では、変動量判定手段107での判定境界値を予め設定した1以上の固定値としたが、これに限定されることはなく、例えば、信号処理手段から出力される信号強度に応じて判定境界値を変動させてもよい。
また、実施の形態1の変動量判定手段107における判定動作を周知のファジー論理を用いた判定としてもよい。
【0053】
(実施の形態2)
図4は本発明の実施の形態2の超音波装置の概略構成を説明するための図であり、401は領域検出手段、402は検出領域判定手段、403は第2の遅延誤差選択手段を示す。ただし、以下の説明では、実施の形態1の超音波装置と構成が異なる領域検出手段401、及び検出領域判定手段402についてのみ詳細に説明する。
【0054】
図4において、領域検出手段401は信号処理手段104から出力される超音波像の内で、深度補正後の信号強度の大きい領域を特定する手段であり、例えば、超音波ビームの走査方向の信号分布での信号強度の最も大きい領域と、超音波の深度方向の信号分布での信号強度の最も大きい領域とが交差する領域を検出領域として、その座標情報を検出領域判定手段402に出力する。なお、領域検出手段401の詳細については、後述する。
【0055】
検出領域判定手段402は、領域検出手段401からの座標情報に基づいて、動的に第2の遅延誤差選択手段403の切り替えを制御する手段であり、例えば、座標情報に基づいて全超音波ビームの内で検出領域内にある超音波ビームを特定する手段と、検出領域内にある超音波ビームの内で検出領域内にある深度を特定する手段とを備え、その特定出力に基づいて第2の遅延誤差選択手段403の切り替えを制御する制御信号を出力する構成となっている。実施の形態2の超音波装置では、検出領域判定手段402が第2の遅延誤差選択手段403の切り替えを制御して、遅延データ手段303に与える遅延時間を零遅延誤差発生手段108から出力される初期遅延時間と、補正遅延量演算手段109から出力される補正後の遅延時間とを動的に切り替えることによって、媒質不均一に起因するパルス波面のずれを補正する領域を選択する構成となっている。
【0056】
次に、図5にBモード像と検出領域との関係を説明するための図を示し、以下、図5に基づいて実施の形態2の超音波装置の動作を説明する。ただし、以下の説明では、検出領域判定手段402によって選択される領域である検出領域の大きさが、予め設定されている場合についてその補正動作を説明する。
【0057】
前述する実施の形態1の超音波装置と同様に、超音波計測の開始が指示されると、送受信手段102を形成する送波整相手段から振動子101の駆動信号である送波信号が各振動子101に供給され、図示しない被検体に送波パルスとして超音波が送波される。
【0058】
被検体内で反射され振動子101に入射した反射パルスは、振動子101によって電気信号であるアナログの受波信号に変換された後に、送受信手段102に出力される。送受信手段102では、まず入力されたアナログの受波信号はオーバーサンプリングのA/D変換によってデジタルの受波信号に変換され、このデジタルの受波信号の周波数が低周波へ移動された後に、累加算処理されてデジタル遅延手段103に出力される。
【0059】
デジタル遅延手段103では、送受信手段102からの受波信号に対して初期遅延として設定された遅延が与えられた後に、信号処理手段104に出力されて加算処理により超音波ビームが形成されると共に、初期遅延を与えた信号の内で隣接する振動子101に対応する信号間での相関値が補正遅延量演算手段109に出力される。
【0060】
超音波ビームは信号処理手段104に順次格納され、1画面分の超音波ビームの走査が終了した時点で、信号処理手段104はlog圧縮やフィルタリング処理等の画像処理を行い、得られた超音波像501を表示手段105に出力することによって、超音波画像として表示手段105の表示画面上に表示される。このとき、信号処理手段104は、表示手段105に出力したものと同じ超音波像501を領域検出手段401に出力する。
【0061】
領域検出手段401では、図5に示すように、まず、超音波ビームの走査方向の信号強度分布502と、超音波の深度方向の信号強度分布503とが計算される。ただし、図5に示す信号強度分布502,503は、信号処理部104から出力される超音波像の超音波ビームの走査方向及び深度方向のそれぞれの軸方向上の反射パルス強度をそれぞれ加算したものとなっている。従って、一般的な超音波装置では、超音波像501の信号強度分布502,503と輝度投影とは比例するものとなっている。
【0062】
次に、領域検出手段401では、信号強度分布502,503から最も信号強度が大きい座標位置が特定されると共に、その周辺の領域が選択領域504,505として特定され、この選択領域504,505の座標情報すなわち選択領域504,505とが交差する検出領域の座標情報が検出領域判定手段402に出力される。ただし、このときの検出領域の大きさは、例えば、信号強度分布から検出される超音波ビームの走査方向と深度方向との交点位置を中心とする予め設定された大きさの領域である。
【0063】
検出領域判定手段402では、領域検出手段401からの座標情報に基づいて、超音波ビーム特定手段が全超音波ビームの内で選択領域内にある超音波ビームを特定すると共に、深度特定手段が検出領域内にある超音波ビーム内で選択領域内の深度を特定し、この選択領域内の受波整相期間においては、補正遅延量演算手段109から出力される補正後の遅延時間がデジタル遅延手段103の遅延データ手段303に出力されるように第2の遅延誤差選択手段403を切り替え、選択領域外の受波整相期間においては、零遅延誤差発生手段108から出力される初期遅延時間がデジタル遅延手段103の遅延データ手段303に出力されるように制御されることとなるので、受波信号のS/Nの低下した領域でのパルス波面のズレ補正に伴う画像の低下を防止できる。
【0064】
また、実施の形態2の超音波装置では、予め設定された大きさの検出領域内のみの相関演算を行う構成となるので、相関手段302を当該超音波装置を構成する情報処理装置上で動作するプログラムで実現した場合には、相関値を得るための演算負荷を低減させることができ、演算速度を向上させることが可能となる。その結果、速やかに測定対象部位の超音波像を得ることが可能となるので、診断効率をさらに向上することができ、検者にかかる負担をさらに低減させることができる。ただし、本願発明を適用した相関手段302の演算時間は、従来の超音波装置では20〜30秒程度を要したものが、1秒弱に短縮できる。
【0065】
一方、専用の演算器で相関手段302を構成するように、ハード構成で相関手段302を実現した場合には、予め設定された検出領域内を通る超音波ビーム数に対応した数の相関手段302と、この相関手段302の接続先を切り替えるスイッチ群とを備え、スイッチ群を切り替えることによって相関手段302の接続先を変化させることによって、比較的回路規模大きい相関手段302の数を低減できるので、超音波装置を小型化できるという格別の効果を得ることが可能となる。
【0066】
以上説明したように、実施の形態2の超音波装置では、まず、強度計測手段として動作する領域検出手段401が位相差補正に値する受波信号強度の部分を検出(検索)する。次に、この検出結果に基づいて、補正領域可変手段としても動作する領域検出手段401が、超音波像中での補正領域を特定し、この特定された補正領域に属する超音波ビーム及び探触子の当接位置からの深度を特定する。
【0067】
次に、位相差補正手段として動作する相関手段302、補正遅延量演算手段109、零遅延誤差発生手段108、第2の遅延誤差選択手段402及び検出領域判定手段402が、特定された補正領域内のみの受波信号間の位相差を補正するので、受波信号のS/Nの低下した領域でのパルス波面のズレ補正に伴う画像の低下を防止できる。また、領域検出手段401が検出した検出領域内のみの相関演算を行う構成となるので、不均一媒質を超音波が伝搬することによるパルス波面の歪み補正に伴う演算負荷を低減することができる。その結果、速やかに測定対象部位の超音波像を得ることが可能となるので、診断効率を向上することができ、検者にかかる負担を低減させることができる。
【0068】
以上に説明した実施の形態2の超音波装置では、領域検出手段401は、信号処理手段104からの信号強度分布502,503を直接計測することとしたが、例えば、図6に示すように、領域検出手段401が超音波ビーム走査方向の信号強度分布502に対する重み付けを行う関数601と周知の積算器603とを備え、信号強度分布502と重み付け関数601とを積算器603で積算して得られた信号強度分布604に基づいて、最も信号強度が大きい座標位置を特定すると共にその周辺の領域を選択領域606として、この選択領域606の座標情報を検出領域判定手段402に出力する。同様に、領域検出手段401が深度方向の信号強度分布503に対する重み付けを行う関数602と積算器603とを備え、信号強度分布503と重み付け関数602とを積算器603で積算して得られた信号強度分布605に基づいて、最も信号強度が大きい座標位置を特定すると共にその周辺の領域を選択領域607として、この選択領域607の座標情報を検出領域判定手段402に出力することによって、重み付け関数601,602で設定した特性に従った検出領域を設定することが可能となる。図6に示す重み付け関数601,602は、それぞれの方向の信号強度の内で中央部分の重み付けを最も大きくし、中央部分から離れるに従って重み付けを小さくすることによって、検者が一般的に画像の中央部を注目するという性質に基づいた補償を行う構成としている。ただし、重み付け関数601,602はこれに限定されることはなく、例えば、本願発明を周知のカラードプラに適用した場合には、血流等の移動が検出される領域の重み付けを小さくした関数を設定することによって、受波信号に初期遅延時間を与えた超音波画像と、補正によって得られる超音波画像との間に1フレーム分の時間遅れを生じることとなる領域が検出領域となる可能性を大きく低減させることができるので、検者に負担をかけることなく、測定対象が不均一媒質であることに起因するパルス波面の歪み補正に伴う超音波画像の画質低下を防止でき、その結果、診断効率を向上することができる。
【0069】
また、信号強度の最大領域以外の他の1以上の領域を選択領域としてもよいことはいうまでもなく、例えば、超音波走査で得られたBモード像と複数の検出領域との関係を説明するための図7の(a)に示すように、まず、領域検出手段401は超音波ビームの走査方向及び深度方向の信号強度分布502,503を計算する。次に、領域検出手段401は、超音波ビームの走査方向の信号強度分布502と深度方向の信号強度分布503とのそれぞれに対して、信号強度分布502,503の山となる部分の座標位置を特定すると共に、その周辺の領域を選択領域701〜705として特定する。次に、検出領域の位置関係と各検出領域の信号強度との関係を説明するための図7の(b)に示すように、領域検出手段401は、超音波ビームの走査方向の選択領域701〜703と深度方向の選択領域704,705とが交差する検出領域(斜線で示す領域)を特定した後に、それぞれの検出領域の信号強度の合計を計算する。ただし、図7の(b)に示す番号は、各検出領域の信号強度が大きい順に示したときの順番である。
【0070】
次に、選択された検出領域を説明するための図7の(c)に示すように、領域検出手段401は、各検出領域の内で信号強度が最も大きい検出領域すなわち順番が「1」である検出領域を選択し、その検出領域の座標を検出領域判定手段402に出力する。この検出領域の座標情報に基づいて、検出領域判定手段402は、入力された検出領域内にある超音波ビームを全超音波ビームの内から特定すると共に、検出領域内にある超音波ビーム内で選択領域内の深度を特定し、この検出領域内の受波整相期間においては、補正遅延量演算手段109から出力される補正後の遅延時間がデジタル遅延手段103の遅延データ手段303に出力されるように第2の遅延誤差選択手段403を切り替え、選択領域外の受波整相期間においては、零遅延誤差発生手段108から出力される初期遅延時間がデジタル遅延手段103の遅延データ手段303に出力されるように制御されるので、前述した効果を得ることができる。
【0071】
また、領域検出手段401が2以上の任意の数の検出領域を選択可能とすることによって、パルス波面の歪み補正に適さない領域を除きつつ十分なS/Nを確保可能な領域を増やすことができるので、超音波像の画質を更に向上できるという効果がある。
【0072】
また、予め選択領域とする信号強度を設定しておき、この設定強度以上の選択領域が交差する検出領域を全て選択領域とするようにしてもよいことはいうまでもない。
【0073】
さらには、実施の形態2の領域検出手段401が予め選択領域としない信号強度を設定しておき、この設定強度以下の領域を全て選択領域としないようにしてもよいことはいうまでもない。
【0074】
さらには、実施の形態2の超音波装置に、実施の形態1に示す変動推定手段106及び変動量判定手段107とを設け、変動量判定手段107の出力が「確からしい」場合すなわち被検体が媒質不均一と判定された場合についてのみ、検出領域の遅延時間を補正遅延量演算手段109から出力される遅延時間とすることによって、前述した効果に加えて、補正によって得られる超音波画像との間に1フレーム分の時間遅れが生じることに起因する超音波画像の画質低下を防止できるという効果を得ることができる。
【0075】
(実施の形態3)
図8は本発明の実施の形態3の超音波装置の概略構成を説明するための図であり、領域検出手段801が表示手段105に検出領域の情報を出力する構成が異なるのみで、他の構成は実施の形態2の超音波装置と同様となるので、実施の形態3では、その構成が異なる領域検出手段801と表示手段105について詳細に説明する。
【0076】
領域検出手段801は、実施の形態2の領域検出手段401と同様に、信号処理手段104から出力される超音波像の内で、深度補正後の信号強度の大きい領域を特定する手段であり、例えば、超音波ビームの走査方向の信号分布での信号強度の最も大きい領域と、超音波の深度方向の信号分布での信号強度の最も大きい領域とが交差する領域を検出領域として、その座標情報を検出領域判定手段402に出力する。また、領域検出手段801は、検出領域の座標情報と信号処理手段104から出力される超音波像とに基づいて、検出領域を超音波像に示すフレーム像を生成し、表示手段に出力する手段であり、表示手段105が超音波像と共にフレーム像を表示用の画像に変換して同一表示面上に表示させる構成となっている。
【0077】
従って、実施の形態3の超音波装置では、測定対象等の体動等に伴って反射パルスの強度すなわち受波信号強度が変化した場合には、領域検出手段801から出力される検出領域が変化することとなるが、その場合であっても表示手段105の表示画面上に表示される検出領域を示すフレーム像を検出領域の変動に追従して移動させることが可能となるので、実施の形態2の効果に加えて、検者は自動的に設定された検出領域を認識しつつ診断を行うことが可能となる。すなわち、検者は、装置が自動的に決定した検出領域が妥当であるかを検証しつつ超音波計測を行うことができる。
【0078】
なお、本実施の形態の超音波装置では、デジタル遅延を行う遅延手段のみによって受波整相を行う構成としたが、これに限定されることはなく、例えば、周知の遅延線の切り替えによる遅延とデジタル遅延とを組み合わせた超音波装置に適用した場合であっても、前述した効果を得ることができることはいうまでもない。
【0079】
また、本願発明は、リニア型、リニアコンベックス型及びコンベックス型等のように、複数個の振動子101を有する全ての超音波装置に適用可能なことはいうまでもない。
【0080】
さらには、以上の説明では、受波動作について説明したが、本願発明は送波についても適用可能であり、この場合には、補正遅延量演算手段109が相関手段302から出力される位相時間差である相関値に基づいて、送波時の初期遅延時間を補正しこの補正値を次の超音波送波時の遅延時間として、送受信手段102を形成する送波整相手段に設定することによって実現可能である。
【0081】
以上、本発明者によってなされた発明を、前記発明の実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、前記発明の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは勿論である。
【0082】
【発明の効果】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、下記の通りである。
(1)検者にかかる負担を低減させることができる。
(2)診断効率を向上することができる。
(3)不均一媒質を超音波が伝搬することによるパルス波面の歪み補正の有無を自動的に選択することができる。
(4)装置が自動的に選択した補正領域を検証しつつ超音波計測できる。
(5)媒質不均一に係わる補正に要する負荷を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1の超音波装置の概略構成を説明するための図である。
【図2】実施の形態1の変動量判定手段の動作を説明するための図である。
【図3】実施の形態1のデジタル遅延手段の概略構成を説明するための図である。
【図4】本発明の実施の形態2の超音波装置の概略構成を説明するための図である。
【図5】本発明の実施の形態2の超音波装置におけるBモード像と検出領域との関係を説明するための図である。
【図6】本発明の実施の形態2の超音波装置におけるBモード像と検出領域との関係を説明するためのその他の図である。
【図7】本発明の実施の形態2の超音波装置におけるBモード像と検出領域との関係を説明するためのその他の図である。
【図8】本発明の実施の形態3の超音波装置の概略構成を説明するための図である。
【符号の説明】
101…振動子、102…送受信手段、103…デジタル遅延手段、104…信号処理手段、105…表示手段、106…変動推定手段、107…変動量判定手段、108…零遅延誤差発生手段、109…補正遅延量演算手段、110…第1の遅延誤差選択手段、301…デジタル遅延回路、302…相関手段、303…遅延データ手段、401,801…領域検出手段、402…検出領域判定手段、403…第2の遅延誤差選択手段。

Claims (2)

  1. 超音波信号を送受波する複数の振動子からなる探触子と、該振動子が受波した受波信号にそれぞれの振動子位置で受信する目標物体からの波面の入射時刻に対応する遅延を与えるデジタル遅延手段と、デジタル遅延後の受波信号間の位相差を補正する位相差補正手段と、該位相差補正後の受波信号を加算し超音波像を生成する信号処理手段とを有する超音波装置において、
    前記相差補正手段は、前記受波信号の強度を計測する手段と、前記受波信号の強度の計測結果に基づいて前記相差の補正領域を可変する手段とを備え、前記位相差補正手段は前記補正領域内の受波信号間の位相差を補正し、
    さらに、前記補正領域を示すフレーム像を前記超音波像と同一の表示画面に表示させる手段を備えたことを特徴とする超音波装置。
  2. 請求項1記載の超音波装置において、
    前記相差補正手段は、前記探触子と前記測定対象との相対的な位置変動を監視する手段と、該監視出力に基づいて前記相差補正の有無を選択する手段と、前記受波信号の強度を計測する手段と、前記受波信号の強度の計測結果に基づいて前記相差の補正領域を可変する手段とを備えたことを特徴とする超音波装置。
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