JP4672119B2 - 核磁気共鳴映像装置用高周波コイル及び核磁気共鳴映像装置 - Google Patents
核磁気共鳴映像装置用高周波コイル及び核磁気共鳴映像装置 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気共鳴映像装置用高周波コイル及び磁気共鳴映像装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
核磁気共鳴イメージング装置(以下、「MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置」という)は、静磁場空間に配置された被検体に対し、励起用磁場(RF磁場)及び傾斜磁場を印加することで取得される核磁気共鳴信号(NMR(Nuclear Magnetic Resonance)信号)に基づき、当該被検体に関する核磁気共鳴イメージング画像(断層像)を再構成する装置である。
【0003】
このようなMRI装置は、例えば図15に示すように、ガントリ1内に撮影空間部2を備えている。この撮影空間部2周囲には、その中心軸Lを共軸として、強力な静磁場を形成する主磁石3、RF磁場を印可する高周波コイル(励起手段)4、及び傾斜磁場コイル(傾斜磁場印加手段)5の各々が配置されている。被検体は図示しない天板上に載置され、この撮影空間部2内に導入される。なお、図15における符合4aは、高周波コイル4と傾斜磁場コイル5のカップリングを防止するためのRFシールドである。
【0004】
また、この図15に示すようなMRI装置のほか、従来においては、図16に示すように、上記撮影空間部2の一部に開口部2aが設けられた、いわゆる「オープン型」と呼ばれるMRI装置も提供されている。これによれば、検査を受ける被検体に圧迫感を生じさせることがなく、また、上記開口部2aを利用することによりMRI検査と並行して医師等による手術や直接の検査を行うことができる等、多くの利点を享受することができる。
【0005】
このようなオープン型MRI装置においては、主磁石3が、図16に示すように、図中上部にN極主磁石3N、図中下部にS極主磁石3S、そしてこれらを結合する磁気回路3C等から構成され、垂直方向に磁場を発生させるようなもの(オープン型磁石ともいう。)が利用される。また、これに伴い、高周波コイル4としては、高周波磁場の方向が、上記した垂直方向に一致する静磁場方向に直角な方向(つまり、水平方向)となるようにするため、図17に示すような8の字型コイル4´が利用されている。この8の字型コイル4´は、その二組が、図16に示すように上下それぞれで向かい合わせとなるように配置される。オープン型MRI装置では、このような構成をとることにより、開放性を維持する工夫がなされている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような構成となるオープン型MRI装置では、次のような問題があった。すなわち、上記8の字型コイル4´を利用する形態にあっては、図16に併せて示すように、被検体が位置する領域すなわち撮影空間部2を越えた外側へ、高周波磁場を放射するロスの発生が避けられない。したがって、送信効率の低下や受信感度の低下を招いていた。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、静磁場が垂直方向にかけられる開放性の高い磁気共鳴映像装置に用いる高周波コイルにおいて、その開放性を維持したまま、送信効率の低下や受信感度の低下を防ぐことができる磁気共鳴装置用高周波コイルを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために以下の手段をとった。
【0009】
すなわち、請求項1記載の核磁気共鳴映像装置用高周波コイルは、静磁場空間中に配置された被検体に対し傾斜磁場を印加するとともに励起用磁場を印加することにより発生する核磁気共鳴信号を受信して当該被検体に関する核磁気共鳴画像及び核磁気共鳴スペクトルを取得する核磁気共鳴映像装置に用いられる磁気共鳴映像装置用高周波コイルであって、二つの導体板と、前記導体板の各々について、その両端が当該導体板の周縁部及びその近傍の略対称位置となる一端と他端とにそれぞれ接続される導体線路と、該導体線路に直列に接続されるコンデンサ素子とから構成され、前記導体板の周縁部に、当該導体板に略垂直に立設された縁部が設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項2又は3記載の核磁気共鳴映像装置用高周波コイルは、請求項1記載の同コイルにあって、前記導体板はその各々が複数の導体板片に分割された二つの薄導体板から構成され、該二つの薄導体板は容量性素子又は容量性部材で互いに結合されていることを特徴とし(請求項2)、前記導体線路は、その延在する方向が互いに直交する少なくとも二組の導体線路から構成され、前記少なくとも二組の導体線路が交差する地点に結合導体が設けられていることを特徴とする(請求項3)ものである。
【0011】
さらに、上記したような核磁気共鳴映像装置用高周波コイルは、前記導体線路が設けられた面が互いに対向するように配置された前記二つの導体板における当該導体線路に対し容量結合又は誘導結合されたケーブルを備え、前記導体板の周縁部に、当該導体板に略垂直に立設された縁部が設けられている核磁気共鳴映像装置として用いられて好適である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下では、本発明の第一の実施の形態について図を参照しつつ説明する。図1は、本発明の各実施形態に係るMRI装置の構成例を示す概要図である。なお、図15や図16において使用した符合は、以下参照する図面において、同一の対象を指示する場合にも使用する。
【0013】
図1において、MRI装置は、図示しない寝台及びガントリ1´等から構成される。寝台は、被検体を載置する天板を備えている。この天板は、その載置された被検体の体軸方向(紙面垂直方向)に沿って移動可能となっており、その移動によって、当該被検体をガントリ1´の撮影空間部2に挿入可能となっている。また、この撮影空間部2周囲には、主磁石3、高周波コイル(MRI装置用高周波コイル)40及び図示しない傾斜磁場コイル(傾斜磁場印可手段)が備えられている。
【0014】
主磁石3は撮影空間部2に強力な静磁場を形成するものであって、図1に示すように、N極主磁石3N、S極主磁石3S及びこれらを結合する磁気回路3Cから構成されている。この構成により本第一実施形態における主磁石3は、撮影空間部2において、図中上下方向(垂直方向)に静磁場を印加することになる。
【0015】
また、傾斜磁場コイルは、撮影空間部2内で定義される直交3軸(x,y,z)の各々について、異なる磁場 (Gx,Gy,Gz)を印加するコイルである。この傾斜の度合いは傾斜磁場電源系(不図示)により設定される。すぐ後に述べる高周波コイル40により受信したNMR信号に関する位置定位は、上記した傾斜の度合いに基づいて、行うことが可能となる。なお、この傾斜磁場コイルについては、図1において図示されていないが、図16を参照してわかるとおり、その配置位置は、後述する円形導体板401とN極主磁石3Nとの間及び円形導体板402とS極主磁石3Sとの間となる。また、磁場調整用のシムコイルも同位置に設けられる。
【0016】
ちなみに、上記撮影空間部2には、主磁石3が上述したような構成となることより、開口部2aが設けられており、これにより被検体に圧迫感を与えることなく、また、MRI検査中、被検体に対して医師等による手術を行うことが可能となっている。
【0017】
一方、高周波コイル40は、上記静磁場中にある被検体内において、核磁気共鳴吸収を生じさせるためのRF磁場(励起用磁場)を印加するコイルである。この高周波コイル40は後述する電力分配器409及びデュプレクサ410を介して、電力送信器411に接続され、駆動されるようになっている。また、本第一実施形態における高周波コイル40は前記デュプレクサ410を介して受信器412にも接続され、NMR信号の受信用としても用いられる。
【0018】
図2及び図3は、上記高周波コイル40のより詳細な構成例の概要を示す図である。高周波コイル40は、図2(a)に示すような円形導体板401及び402から構成されている(図2においては一方のみを示している)。また、この円形導体板401及び402の各々においては、図2(b)又は図1に示すように、該円形導体板401及び402の周縁上の一端と他端とに、該円形導体板401及び402の径方向にわたって設けられる導体線路405及び406の両端が接続されている。また、この導体線路405及び406には、コンデンサ素子403及び404が直列に接続されている。
【0019】
このような構成となる二つの円形導体板401及び402は、図1に示すように、撮影空間部2(ないし被検体)を挟んで図中上下に、また、上部に位置する円形導体板401は上記主磁石3を構成するN極主磁石3Nの下方となるよう、かつ、下部に位置する円形導体板402はS極主磁石3Sの上方となるように配置される。つまり、高周波コイル40(≒円形導体板401及び402)は、N極主磁石3NとS極主磁石3Sとの間に配置される。また、図1に示すとおり、上記円形導体板401及び402の各々は、そのそれぞれに設けられた上記導体線路405及び406が互いに対向するように配置される。
【0020】
この際、上記導体線路405及び406には、図3に示すように、上下各位置に配置された円形導体板401及び402の各々に応じて、給電ケーブル407及び408が接続される。また、これら給電ケーブル407及び408は、図1においても示した電力分配器409、デュプレクサ410及び電力送信器411に順次接続される。このうち、デュプレクサ410には、やはり図1に示した受信器412が接続されている。
【0021】
上記導体線路405及び406と給電ケーブル407及び408との接続は、図4に示すような形態とすることが可能である。すなわち、図4(a)においては、上記給電ケーブル407又は408たる同軸ケーブル4Aは、その芯線に直列に接合された整合用コンデンサ4Bを経て、同調用コンデンサ4Cに結合される。同軸ケーブル4Aからみたコイル側のインピーダンスとの整合は、これら整合用コンデンサ4B及び同調用コンデンサ4Cの二つのコンデンサを調整することにより行われる。
【0022】
一方、図4(b)においては、給電ケーブル407又は408たる同軸ケーブル4Dは、整合用コンデンサ4Eを直列に接続した誘導結合用導体4Fを、上記円形導体板401又は402と導体線路405又は406とにより形成される空間内に挿脱する構成となるものである。このような場合においては、整合調整は上記整合用コンデンサ4Eにより、また、同調は上記誘導結合用導体4Fの挿脱、又は同調用コンデンサ4Gの調整により行われることになる。なお、図4(a)のような場合は容量性結合、図4(b)のような場合は誘導性結合、とそれぞれいえる。
【0023】
以上述べたような回路構成、すなわち電力分配器409等を備える構成により、円形導体板401及び402上における導体線路405及び406には、各々逆方向に流れる電流が供給されることになり、またこのことから、撮影空間部2には一様な方向の磁場がかけられることになる。
【0024】
すなわち、電力送信器411から送られた電力は、デュプレクサ410を介して電力分配器409に送られ、この電力分配器409では、図3に示すように、0°及び180°の位相の異なる電力を、導体線路405及び406のそれぞれに供給することになる。
【0025】
またしたがって、導体線路405及び406周囲に発生する磁場は、図1に示す符合A及びBのようなもの、すなわち円形導体板401及び402の面に平行で導体線路405及び406の延在する方向に垂直な方向であって、円形導体板401又は402面と導体線路405又は406とにより挟まれた空間では紙面手前側から向こう側へ、導体線路405の下方領域又は導体線路406の上方領域ではその逆へ、という方向の磁場が発生することとなり、結果、撮影空間部2には図中Y方向に一様な磁場が印加されることになる。なお、この磁場の方向は、上記主磁石3による垂直方向の磁場に垂直な方向(つまり、水平方向(=Y方向))となる。
【0026】
なお、このような作用を実現するためには、上記のような回路構成に代えて、導体線路405及び406のそれぞれに関し、互いに反対方向から電力が供給されるよう給電ケーブルを接続する形態としてもよい。この場合においては、上記電力分配器409によるような位相反転を行う必要はなく、互いに同位相の電力を供給すればよい。
【0027】
ちなみに本第一実施形態における高周波コイル40は、上述したように、受信用コイルとしても作用し、デュプレクサ410の作用により受信時、送信時を切り替えるようにする。
【0028】
以上述べたような本第一実施形態に係るMRI装置によれば、上記した通り、図1中Y方向に磁場を印加することが可能となるが、この際、従来例において問題であった高周波磁場の外部への放射に係るロスは生じ難いことが明白である。これは、本第一実施形態における高周波コイル40において、高周波電流が流れるのは導体線路405及び406(並びに円形導体板401及び402)であって、磁場の発生は当該導体線路405及び406周囲となり、かつ、これら導体線路405及び406は、円形導体板401及び402の径方向に沿って(円形導体板401及び402の略中央部分に)設けられていることにより、「外部」、より正確には撮影空間部2の外部に対し、高周波磁場の漏れが生じ難いからである。
【0029】
したがって、本第一実施形態においては、送信効率が低下するようなことがなく、また、受信感度も低下するようなことがない。
【0030】
なお、上記高周波コイル40は、図2に示すような形態のほか、図5に示すように、導体線路405又は406の両端を、円形導体板401又は402の周縁部上の一端及び他端に接続するのではなく、該両端を、円形導体板401又は402の周縁部付近、かつ、円形導体板401又は402上に接続するような形態としてよい。要するに、本発明においては、導体線路405又は406の両端が、円形導体板401又は402の周縁部及びその近傍の略対称位置となる一端と他端とにそれぞれ接続される形態であればよい。
【0031】
以下では、本発明の第二の実施形態について説明する。なお、本第二実施形態を含む以下に述べる各実施形態は、上記した高周波コイル40の変形態様に関するものであるから、説明はそれを中心に行う。したがって、既に説明した事項、あるいは以下特に記載されない事項等は、上記第一実施形態と同様である。
【0032】
本第二実施形態では、上記第一実施形態における導体線路405又は406が、円形導体板401又は402上に1本のみ設けられる形態であったところ、図6に示すように、これを複数本設けるところに特徴がある。図においては特に、円形導体板401Aに対して、導体線路405a、405b及び405cのように3本の導体線路が設けられる形態を示している。なお、これに伴い、コンデンサ素子も、403a、403b及び403cの三つが設けられている。また、図示していないが、図1において下部に配置される円形導体板402Aについても、図6と同様な構成とされる。
【0033】
このような形態とすると、次のような効果を得ることができる。すなわち、上記第一実施形態におけるように、円形導体板401又は402上に導体線路405又は406を1本のみ設ける形態(図2参照)であると、発生する高周波磁場は当該導体線路405又は406周囲に集中してしまい、その分布が不均一になる場合がある。本第二実施形態では、導体線路405a、405b及び405cのように、これを複数本設けるような形態とするから、発生する高周波磁場は分散されることになり、またしたがって、より均一な磁場を形成することができる。
【0034】
以下では、本発明の第三の実施形態について説明する。
【0035】
本第三実施形態では、図7に示すように、円形導体板401Bの周囲に縁部450を設けた点に特徴がある。この縁部450は、円形導体板401Bの面に略垂直に、かつ、その全周にわたって立設される。コンデンサ素子403を直列に接続した導体線路405は、上記第一実施形態と同様に設けられるが、その両端は、縁部450の内面に接続されている。
【0036】
このような構成によれば、縁部450の存在により、高周波磁場の漏れはより減少し、したがって送信効率及び受信感度の更なる性能向上を達成することができる。なお、導体線路405は、図7のような場合に限らず、図6に示したように複数本設ける形態としてよいことは勿論である。
【0037】
以下では、本発明の第四の実施形態について説明する。
【0038】
本第四実施形態では、図8に示すように、円形導体板401Cの面上にスリット460を形成する点、そして円形導体板401Cを二つの薄導体板401Ca及び401Cbで構成し、かつ両薄導体板401Ca及び401Cbの間に誘電体膜470を挟み込む点に特徴がある。なお、図8及び以下で参照する図9においては、上記第一実施形態における導体線路405の図示は省略されているが、本第四実施形態においても同様に設置されることに変わりはない。
【0039】
図8(a)において、スリット460は、円形導体板401Cの径方向に平行に形成された複数のスリット群460aと、これらに直交するよう形成されたスリット群460bとから構成されており、円形導体板401Cを複数の導体板片に分割している。また、このスリット460は、図8(b)に示すように、円形導体板401Cの一方の薄導体板401Ca及び他方の薄導体板401Cbで異なる位置に形成されている。すなわち、円形導体板401Cの一方の薄導体板401Ca表面に形成されたスリット群460a又は460bを構成する直線状の各スリットと、他方の薄導体板401Cb表面に形成された同各スリットとは、円形導体板401C面に垂直な方向から見て、それらの形成位置が互いに重ならないようになっている。
【0040】
また、円形導体板401Cを構成する両薄導体板401Ca及び401Cbとの間には、図8(b)に示すように、誘電体膜(容量性部材)470が設けられている。これにより、この円形導体板401Cにおいては、一方の薄導体板401Caと他方の薄導体板401Cbの各々における上記各スリット460が形成されない面において、当該面の各々が両電極となるコンデンサ素子が構成されることがわかる。
【0041】
このような形態によれば、次のような効果を享受できる。すなわち、本発明に係る高周波コイルにおいては、上記までに述べたように、比較的大きな面積となる円形導体板401を利用する形態であることから、上記した図示しない傾斜磁場コイルを駆動したときには、その面内に渦電流が生じる可能性がある。この渦電流は、それ自身による磁場を形成するから、撮影空間部2における傾斜磁場の強度やその分布に悪影響を及ぼす。
【0042】
この点、本第四実施形態における円形導体板401Cでは、図8に示したように、スリット460が形成されていることから、上記渦電流が円形導体板401Cに流れることを阻止することができる。したがって、傾斜磁場の分布等に悪影響を与えることがない。
【0043】
また、上記スリット460が、円形導体板401Cの一方の薄導体板401Ca表面と他方の薄導体板401Cb表面とで異なる位置に形成されること、そして、一方の薄導体板401Caと他方の薄導体板401Cbとの間には誘電体膜470が設けられることにより、本円形導体板401Cは、上述したように、コンデンサ素子とみなし得るものとなるから、高周波電流の流れが阻止されるようなことがない。なお、所望の高周波電流を流すためには、誘電体膜470の誘電率を適宜調整することによればい。
【0044】
なお、上記では、スリット群460a及び460bが直交するような形態となっていたが、本発明はこのような形態に限定されるものではない。特に、上記した効果を、より効果的に達成するためには、例えば高周波コイルを駆動したときに、円形導体板に生じる高周波電流の流れ方を計算的に求め、その流線方向にスリットを形成するような形態とすることも可能である。例えば図9に示すように、渦電流が図中矢印Cのように流れ、また、高周波電流は図中矢印Dのように流したい場合を想定するときには、スリット461は、同図に示すような、いわば「貝殻模様状」に形成すればよい。
【0045】
また、上記では、二つの薄導体板401Ca及び401Cbは、誘電体膜470を挟むことにより、円形導体板401Cをコンデンサ素子とみなし得るものとしていたが、本発明においては、上記誘電体膜470を設けることに代えて、例えば、両薄導体板401Ca及び401bとの間に、コンデンサ(容量性素子)そのものを設ける構成としてもよい。
【0046】
以下では、本発明の第五の実施形態について説明する。
【0047】
本第五実施形態は、本発明に係る高周波コイルを、よく知られている「QD(Quadrature)方式」に対応するよう、構成した変形例に関するものである。ここに「QD方式」とは、撮影空間部2に位相が90°異なる高周波磁場をかけて回転磁場を発生させることで送信効率を向上させたり、また、同じく位相が90°異なる磁気共鳴信号を受信するとともに、これらの位相をあわせて加算することでS/N比を向上させることが可能な方式である。
【0048】
図10においては、本第五実施形態に係る高周波コイルの円形導体板401Dが示されており、この円形導体板401Dには、その延在する方向が互いに直交する導体線路群405A及び405Bが設けられるとともに、これらが交差する地点には、結合導体405Cが設けられている。なお、導体線路群405A及び405Bを構成する各導体線路にコンデンサ素子403Dが設けられる点は、上記各実施形態と全く同様である。
【0049】
また、これら導体線路群405A及び405Bに対する電力供給は、図11に示すような回路により行われる。この図において、図1中上方に配置されるべき円形導体板401Dと、同下方に配置されるべき円形導体板402Dとに対し、位相が反転した電力を供給することを目的とした電力分配器409D1及び409D2が設けられる点については、上記第一実施形態と同様である。
【0050】
ただし、本第五実施形態においては、上記の他、導体線路群405A及び405Bの各々並びに導体線路群406A及び406Bの各々に対して、90°位相の異なる電力を供給することとなるから、そのための電力分配器409D3が設けられる。そして、この電力分配器409D3による二つの出力は、図11に示すように、二つの電力分配器409D1及び409D2に与えられ、これら電力分配器409D1及び409D2では更に四つの出力が得られるようなものとなる。
【0051】
このような構成からわかるように、円形導体板401Dに対しては、位相が0°と90°のものが、円形導体板402Dに対しては、位相が180°と270°のものが、各々供給されることになる。
【0052】
以上のことから、本第五実施形態によれば、QD方式に対応した高周波コイルを提供することができる。また、図10においては、上記第二実施形態と同様に、複数の導体線路から構成された導体線路群405A及び405Bが設けられていることから、高周波磁場の集中による磁場不均一という弊害を被ることがない。さらに、上記結合導体405Cの存在により、本高周波コイルを製作するためには、直交する導体線路群405A及び405Bを、この結合導体405Cに接続するのみでよいから、その製作は容易である。
【0053】
なお、図11に示す回路形態は単なる一例示に過ぎず、本発明においては、上記の他、上記した目的を達成するため、種々の回路構成を採用することができる。その際においては、円形導体板401D及び402Dとにより挟まれる撮影空間部2において、これら円形導体板401D及び402Dの面に平行な高周波磁場が、円偏波で発生することが可能な回路構成となるよう留意すればよい。
【0054】
また、直交するコイル間で電気的なカップリングを調整する場合には、例えば上記導体線路群405A及び405Bを構成する各導体線路に設けられたコンデンサ素子のうち、最端に位置する導体線路のコンデンサ素子を、図11に示すように可変とすることにより、この調整を行うことでデカップリングすることが可能である。その他種々の手法が考えられる。
【0055】
以下では、本発明の第六の実施形態について説明する。
【0056】
本第六実施形態は、図12に示すように、円形導体板401E上において放射状導体線路405Eが配設されている点に特徴がある。この場合において、給電あるいは受信のためのケーブル接続箇所は、これら放射状に配設された導体線路405Eのうちから、90°異なる2箇所を任意に選択すればよい。
【0057】
このような構成により、本第六実施形態では、上記第五実施形態と同様に、QD方式に対応可能である。また、この構成では、発生する高周波磁場を均一化するという点で、上記第一実施形態との対比からは勿論、上記第五実施形態との対比を通じても、より好ましいことが明らかである。
【0058】
ただし、図12に示すような構成においては、円形導体板401Eの中心部においては、その周辺部に比べて高周波磁場の集中が生じるから、これを回避するため、例えば、図13に示すように、その中心部に、円形導体405E2を取り付けるようにするとよい。また、これに代えて、上記第五実施形態におけるような結合導体405Cを設けるようにしても勿論よい。
【0059】
以下では、本発明の第七の実施形態について説明する。
【0060】
本第七実施形態は、本発明に係る高周波コイルに対し、これを送信専用に用いる場合、受信コイルとのデカップリングを効果的に行うための構成に関するものである。図14では、その(a)図において、上記第二実施形態として示した複数の導体線路405a、405b及び405cを設けるような形態(図6参照)、また、その(b)において、上記第六実施形態として示した放射状導体線路405E及び円形導体405E2を設けるような形態(図13参照)、の二つの形態に関し、デカップリングが達成される構成を例示している。
【0061】
図14(a)では、3本の導体線路405a、405b及び405cの各々に、PINダイオードPa、Pb及びPcを直列に接続し、これらPINダイオードPa、Pb及びPcの各々に対し、高周波の漏れを防ぐためのインダクタンスL1乃至L6が各々に取り付けられた制御線C1乃至C6を接続した形態となっている。このことにより、制御線C1乃至C6において流れる電流をON・OFF制御することにより、同調状態をON・OFFすることが可能となる。
【0062】
また、図14(b)では、中央の円形導体405E2に、PINダイオードPE1乃至PE4を直列に接続し、同じく円形導体405E2にインダクタンスL7及びL8が取り付けられた制御線C7及びC8を接続した形態となっている。このことにより、上記と同様な作用効果が達成される。
【0063】
なお、上記各実施形態においては、本発明に係る高周波コイルを構成する導体板は、すべて「円形」となるようなものについてのみ説明したが、本発明はこの形態に限定されるものでは勿論ない。例えば、その他、「楕円形状」、「長方形状」、「六角形状」等々、様々な形態としてよい。
【0064】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の核磁気共鳴映像装置用高周波コイル及び核磁気共鳴映像装置によれば、導体板上に設けられる導体線路周囲に高周波磁場を発生させるため、送信効率の低下や受信感度の低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施形態に係る核医学診断装置の構成例を示す概要図である。
【図2】図1に示す高周波コイルのより詳細な構成例を示す概要図であって、(a)は平面図、(b)は側面図をそれぞれ示す図である。
【図3】図1に示す高周波コイルへ給電を行うための回路構成例を示す概要図である。
【図4】図3に示す回路構成例において円形導体板上の導体線路と給電ケーブルとの接続態様例を示す図であって、(a)は容量性結合、(b)は誘導性結合の例をそれぞれ示す図である。
【図5】図2とは別形態となる高周波コイルの構成例を示す概要図である。
【図6】本発明の第二実施形態に係り、図2(a)に示す導体線路が複数本設けられた円形導体板の構成例を示す概要図である。
【図7】本発明の第三実施形態に係り、図2(a)に示す円形導体板周囲に縁部を設けた構成例を示す概要図である。
【図8】本発明の第四実施形態に係り、図2(a)に示す円形導体板にスリットを形成するとともに((a)図)、該円形導体板を二つの導体板により構成しかつこれら二つの導体板の間に誘電体膜を挟み込んだ((b)図)構成例を示す概要図である。
【図9】図8に示す高周波コイルの変形例を示す概要図である。
【図10】本発明の第五実施形態に係り、図2(a)に示す円形導体板をQD方式に対応可能に構成した構成例を示す概要図である。
【図11】図10に示す高周波コイルへ給電を行うための回路構成例を示す概要図である。
【図12】本発明の第六実施形態に係り、図2(a)に示す導体線路を放射状に配設した構成例を示す概要図である。
【図13】図12に示す高周波コイルの変形例を示す概要図である。
【図14】本発明の第七実施形態に係り、導体線路上にPINダイオードを直列に接続してデカップリングを実現できる構成とした概要図であって、(a)は図6に示す高周波コイルについて、(b)は図13に示す高周波コイルについて、をそれぞれ示すものである。
【図15】従来のMRI装置の構成例を示す概要図である。
【図16】従来のオープン型MRI装置の構成例を示す概要図である。
【図17】図16に示すMRI装置において従来利用されていた8の字型コイルの構成例
を示す概要図である。
【符号の説明】
1、1´ ガントリ
2 撮影空間部
2a 開口部
3 主磁石
3N N極主磁石
3S S極主磁石
3C 磁気回路
4、40 高周波コイル(4´ 8の字型コイル)
401、401A〜401F、402、402D 円形導体板
401Ca及び401Cb 一方の導体板及び他方の導体板
403、403a〜403c、403D、404 コンデンサ素子
405、405a〜405c、406 導体線路
405A、405B、406A、406B 導体線路群
405C 結合導体
405E 放射状導体線路
405E2 円形導体
450 縁部
460、461 スリット
470 誘電体膜
407、408 給電ケーブル(4A、4D 同軸ケーブル)
409、409D1、409D2 電力分配器(0°又は180°用)
409D3 電力分配器(0°又は90°用)
410 デュプレクサ
411 電力送信器
412 受信器
4B、4E 整合用コンデンサ
4C、4G 同調用コンデンサ
4F 誘導結合用導体
Pa、Pb、Pc、PE1〜PE4 PINダイオード
C1〜C6、C7、C8 制御線
L1〜L6、L7、L8 インダクタンス
Claims (4)
- 静磁場空間中に配置された被検体に対し傾斜磁場を印加するとともに励起用磁場を印加することにより発生する核磁気共鳴信号を受信して当該被検体に関する核磁気共鳴画像及び核磁気共鳴スペクトルを取得する核磁気共鳴映像装置に用いられる磁気共鳴映像装置用高周波コイルであって、
二つの導体板と、
前記導体板の各々について、その両端が当該導体板の周縁部及びその近傍の略対称位置となる一端と他端とにそれぞれ接続される導体線路と、
該導体線路に直列に接続されるコンデンサ素子とから構成され、
前記導体板の周縁部に、当該導体板に略垂直に立設された縁部が設けられている
ことを特徴とする核磁気共鳴映像装置用高周波コイル。 - 前記導体板は、その各々が複数の導体板片に分割された二つの薄導体板から構成され、該二つの薄導体板は容量性素子又は容量性部材で互いに結合されていることを特徴とする請求項1記載の核磁気共鳴映像装置用高周波コイル。
- 前記導体線路は、その延在する方向が互いに直交する少なくとも二組の導体線路から構成され、
前記少なくとも二組の導体線路が交差する地点に結合導体が設けられていることを特徴とする請求項1記載の核磁気共鳴映像装置用高周波コイル。 - 静磁場空間中に配置された被検体に対し傾斜磁場を印加するとともに核磁気共鳴映像装置用高周波コイルにより励起用磁場を印加することにより発生する核磁気共鳴信号を受信して当該被検体に関する核磁気共鳴画像及び核磁気共鳴スペクトルを取得する核磁気共鳴映像装置において、
前記核磁気共鳴映像装置用高周波コイルは、
二つの導体板と、
前記導体板の各々について、その両端が当該導体板の周縁部及びその近傍の略対称位置となる一端と他端とにそれぞれ接続される導体線路と、
該導体線路に直列に接続されるコンデンサ素子と、から構成されるとともに、
前記導体線路が設けられた面が互いに対向するように配置された前記二つの導体板における当該導体線路に対し容量結合又は誘導結合されたケーブルを備え、
前記導体板の周縁部に、当該導体板に略垂直に立設された縁部が設けられている
ことを特徴とする核磁気共鳴映像装置。
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