特許文献1では、素子の有効面積を広くとる場合、電極間の距離を増すに従い均一な電界を得られない。特に、平行に配置された電極間の中央部分での電界の向きや大きさのばらつきが顕著であり、電極間の中央部分における電極に垂直な成分は、電極近傍と比べて著しく小さくなり、液晶分子を均一に傾けることができず光のシフト量が不均一となる。この液晶分子の傾きは、ある大きさの電界(飽和電界)以上の大きさをもつ電界で飽和するため、印加電圧を増やして飽和電界以上の大きさの電界を発生させることにより、素子の有効面積内のシフト量の不均一性を防ぐことができる。しかしながら印加電圧の増加は、消費電力の増加、素子の温度上昇等の問題を引き起こすため、より小さな印加電圧で有効面積内に均一な電界を発生させ、電界の発生効率を高める技術が求められている。
本発明は、基板間に保持された液晶の面内に平行かつ均一な電界を印加して、透過する光を均一にシフトさせ、広い面積においてシフト量のばらつきを低減させることのできる光偏向素子及び該光偏向素子製造方法と、該光偏向素子を用いて光を多方向にシフトさせる光偏向デバイス並びに高解像度の画像を表示する画像表示装置を提供することを目的とする。
この発明の光偏向素子は、一対の基板と液晶層と電極対と抵抗体層とを備え、基板は、透明で平行に配置され、液晶層は、基板間に挟まれ層法線方向を基板面に直交させたキラルスメクチックC相を形成し、電極対は、互いに平行かつ液晶層に平行な二本の電極を基板と液晶層との間に有し、抵抗体層は、基板と液晶層との間に配置された薄膜状の透明抵抗体で二本の電極を電気的に接続し、抵抗体層は、電極対に平行で、かつ低抵抗な等電位部を局所的に有する。
この発明の光偏向素子は、一対の基板と液晶層と電極対と抵抗体層とを備え、基板は、透明で平行に配置され、液晶層は、基板間に挟まれ層法線方向を基板面に直交させたキラルスメクチックC相を形成し、電極対は、互いに平行かつ液晶層に平行な二本の電極を一方の基板と液晶層との間及び他方の基板と液晶層との間にそれぞれ有し、抵抗体層は、一方の基板と液晶層との間に配置された薄膜状の透明抵抗体により一方の基板側の二本の電極を電気的に接続し、他方の基板と液晶層との間に配置された薄膜状の透明抵抗体により他方の基板側の二本の電極を電気的に接続し、抵抗体層は、一方の基板側の電極対に平行で、かつ低抵抗な等電位部と、他方の基板側の電極対に平行で、かつ低抵抗な等電位部とをそれぞれ局所的に有し、一方の基板側の等電位部と他方の基板側の等電位部とは液晶層を挟んで対称的に配置され、対称的に配置された等電位部は電気的に接続されている。
さらに、等電位部は、抵抗体層を厚くして形成されているとよい。また、等電位部は、抵抗体層を局所的に加熱して形成された構造をもつとよい。また、等電位部は、不純物イオンをドーピングされているとよい。また、等電位部は、体積抵抗率の異なる複数の層で形成されているとよく、さらに、等電位部は、等電位部外の抵抗体層と同一の透光性金属酸化物で形成され、等電位部外の抵抗体層よりも酸化物の組成のストイキオメトリからのずれが大きい層を含むとよく、また、等電位部は、等電位部外の抵抗体層と同一の透光性金属酸化物で形成され、等電位部外の抵抗体層よりも酸化物の結晶性がよい層を含むとよい。また、さらに、上記いずれかの光偏向素子において抵抗体層と液晶層との間に誘電体層を備えるとよい。
この発明の光偏向デバイスは、液晶層の層法線方向を一致させて発生する電界の方向を直交させた2つの請求項1から請求項9のいずれかに記載の光偏向素子と、2つの光偏向素子の間で透過光の偏光方向を直角に回転させる偏光面回転素子とを備える。
この発明の画像表示装置は、原画像表示部と請求項10に記載の光偏向デバイスと表示制御部とを備え、原画像表示部は、2次元に配列した画素で画像を表示し、表示制御部は、原画像表示部の画像を順次切り替えて表示させながら、1または複数の画像ごとに、光偏向デバイスの一方の光偏向素子に印加する電圧の極性と、光偏向デバイスの他方の光偏向素子に印加する電圧の極性との組み合わせを切り替えることにより、原画像表示部の画像をシフトさせる。
この発明の光偏向素子製造方法は、透明な第1の基板の一方の面に二本の直線状の電極を平行に配置した電極対を形成し、第1の基板と電極対とを含む面に、面状の透明抵抗体の薄膜を形成し、第1の基板の電極対の間で該電極対に平行な直線状に第1の基板の面状の透明抵抗体を局所的に厚く積層し、透明な第2の基板の一方の面に二本の直線状の電極を平行に配置した電極対を形成し、第2の基板と電極対とを含む面に、面状の透明抵抗体の薄膜を形成し、第1の基板及び第2の基板の透明抵抗体側の面をそれぞれ垂直配向処理し、第1の基板の電極対間にある透明抵抗体と、第2の基板の電極対間にある透明抵抗体とを囲うようにスペーサを挟んで、第1の基板の電極対と第2の基板の電極対とを平行に対向させて接着し、スペーサで囲われた空間にキラルスメクチックC相の液晶を注入する。
この発明の光偏向素子製造方法は、透明な第1の基板の一方の面に二本の直線状の電極を平行に配置した電極対を形成し、第1の基板と電極対とを含む面に、面状の透明抵抗体の薄膜を形成し、第1の基板の電極対の間で該電極対に平行な直線状に第1の基板の面状の透明抵抗体を局所的に厚く積層し、透明な第2の基板の一方の面に二本の直線状の電極を平行に配置した電極対を形成し、第2の基板と電極対とを含む面に、面状の透明抵抗体の薄膜を形成し、第2の基板の電極対の間で該電極対に平行な直線状に第2の基板の面状の透明抵抗体を局所的に厚く積層し、第1の基板及び第2の基板の透明抵抗体側の面をそれぞれ垂直配向処理し、第1の基板側の厚く積層した部分と第2の基板側の厚く積層した部分が液晶層を挟んで対称的に配置され、第1の基板の電極対間にある透明抵抗体と、第2の基板の電極対間にある透明抵抗体とを囲うようにスペーサを挟んで、第1の基板の電極対と第2の基板の電極対とを平行に対向させて接着し、スペーサで囲われた空間にキラルスメクチックC相の液晶を注入する。
この発明の光偏向素子製造方法は、透明な第1の基板の一方の面に二本の直線状の電極を平行に配置した電極対を形成し、第1の基板と電極対とを含む面に、面状の透明抵抗体の薄膜を形成し、第1の基板の電極対の間で該電極対に平行な直線状に第1の基板の面状の透明抵抗体を局所的に加熱し、透明な第2の基板の一方の面に二本の直線状の電極を平行に配置した電極対を形成し、第2の基板と電極対とを含む面に、面状の透明抵抗体の薄膜を形成し、第1の基板及び第2の基板の透明抵抗体側の面をそれぞれ垂直配向処理し、第1の基板の電極対間にある透明抵抗体と、第2の基板の電極対間にある透明抵抗体とを囲うようにスペーサを挟んで、第1の基板の電極対と第2の基板の電極対とを平行に対向させて接着し、スペーサで囲われた空間にキラルスメクチックC相の液晶を注入する。
この発明の光偏向素子製造方法は、透明な第1の基板の一方の面に二本の直線状の電極を平行に配置した電極対を形成し、第1の基板と電極対とを含む面に、面状の透明抵抗体の薄膜を形成し、第1の基板の電極対の間で該電極対に平行な直線状に第1の基板の面状の透明抵抗体を局所的に加熱し、透明な第2の基板の一方の面に二本の直線状の電極を平行に配置した電極対を形成し、第2の基板と電極対とを含む面に、面状の透明抵抗体の薄膜を形成し、第2の基板の電極対の間で該電極対に平行な直線状に第2の基板の面状の透明抵抗体を局所的に加熱し、第1の基板及び第2の基板の透明抵抗体側の面をそれぞれ垂直配向処理し、第1の基板側の加熱した部分と第2の基板側の加熱した部分が液晶層を挟んで対称的に配置され、第1の基板の電極対間にある透明抵抗体と、第2の基板の電極対間にある透明抵抗体とを囲うようにスペーサを挟んで、第1の基板の電極対と第2の基板の電極対とを平行に対向させて接着し、スペーサで囲われた空間にキラルスメクチックC相の液晶を注入する。
この発明の光偏向素子製造方法は、透明な第1の基板の一方の面に二本の直線状の電極を平行に配置した電極対を形成し、第1の基板と電極対とを含む面に、面状の透明抵抗体の薄膜を形成し、第1の基板の電極対の間で該電極対に平行な直線状に第1の基板の面状の透明抵抗体に対して局所的に不純物イオンをドーピングし、透明な第2の基板の一方の面に二本の直線状の電極を平行に配置した電極対を形成し、第2の基板と電極対とを含む面に、面状の透明抵抗体の薄膜を形成し、第1の基板及び第2の基板の透明抵抗体側の面をそれぞれ垂直配向処理し、第1の基板の電極対間にある透明抵抗体と、第2の基板の電極対間にある透明抵抗体とを囲うようにスペーサを挟んで、第1の基板の電極対と第2の基板の電極対とを平行に対向させて接着し、スペーサで囲われた空間にキラルスメクチックC相の液晶を注入する。
この発明の光偏向素子製造方法は、透明な第1の基板の一方の面に二本の直線状の電極を平行に配置した電極対を形成し、第1の基板と電極対とを含む面に、面状の透明抵抗体の薄膜を形成し、第1の基板の電極対の間で該電極対に平行な直線状に第1の基板の面状の透明抵抗体に対して局所的に不純物イオンをドーピングし、透明な第2の基板の一方の面に二本の直線状の電極を平行に配置した電極対を形成し、第2の基板と電極対とを含む面に、面状の透明抵抗体の薄膜を形成し、第2の基板の電極対の間で該電極対に平行な直線状に第2の基板の面状の透明抵抗体に対して局所的に不純物イオンをドーピングし、第1の基板及び第2の基板の透明抵抗体側の面をそれぞれ垂直配向処理し、第1の基板側の不純物イオンをドーピングした部分と第2の基板側の不純物イオンをドーピングした部分が液晶層を挟んで対称的に配置され、第1の基板の電極対間にある透明抵抗体と、第2の基板の電極対間にある透明抵抗体とを囲うようにスペーサを挟んで、第1の基板の電極対と第2の基板の電極対とを平行に対向させて接着し、スペーサで囲われた空間にキラルスメクチックC相の液晶を注入する。
この発明の光偏向素子製造方法は、透明な第1の基板の一方の面に二本の直線状の電極を平行に配置した電極対を形成し、第1の基板と電極対とを含む面に、面状の透明抵抗体の薄膜を形成し、第1の基板の面状の透明抵抗体と体積抵抗率が異なり、第1の基板の電極対に平行な直線状の透明抵抗体の薄膜を、第1の基板の面状の透明抵抗体に重ねて第1の基板の電極対の間に局所的に積層し、透明な第2の基板の一方の面に二本の直線状の電極を平行に配置した電極対を形成し、第2の基板と電極対とを含む面に、面状の透明抵抗体の薄膜を形成し、第1の基板及び第2の基板の透明抵抗体側の面をそれぞれ垂直配向処理し、第1の基板の電極対間にある透明抵抗体と、第2の基板の電極対間にある透明抵抗体とを囲うようにスペーサを挟んで、第1の基板の電極対と第2の基板の電極対とを平行に対向させて接着し、スペーサで囲われた空間にキラルスメクチックC相の液晶を注入する。
この発明の光偏向素子製造方法は、透明な第1の基板の一方の面に二本の直線状の電極を平行に配置した電極対を形成し、第1の基板と電極対とを含む面に、面状の透明抵抗体の薄膜を形成し、第1の基板の面状の透明抵抗体と体積抵抗率が異なり、第1の基板の電極対に平行な直線状の透明抵抗体の薄膜を、第1の基板の面状の透明抵抗体に重ねて第1の基板の電極対の間に局所的に積層し、透明な第2の基板の一方の面に二本の直線状の電極を平行に配置した電極対を形成し、第2の基板と電極対とを含む面に、面状の透明抵抗体の薄膜を形成し、第2の基板の面状の透明抵抗体と体積抵抗率が異なり、第2の基板の電極対に平行な直線状の透明抵抗体の薄膜を、第2の基板の面状の透明抵抗体に重ねて第2の基板の電極対の間に局所的に積層し、第1の基板及び第2の基板の透明抵抗体側の面をそれぞれ垂直配向処理し、第1の基板側の平行な直線状の透明抵抗体の薄膜を積層した部分と第2の基板側の平行な直線状の透明抵抗体の薄膜を積層した部分が液晶層を挟んで対称的に配置され、第1の基板の電極対間にある透明抵抗体と、第2の基板の電極対間にある透明抵抗体とを囲うようにスペーサを挟んで、第1の基板の電極対と第2の基板の電極対とを平行に対向させて接着し、スペーサで囲われた空間にキラルスメクチックC相の液晶を注入する。
この発明の光偏向素子製造方法は、透明な第1の基板の一方の面に二本の直線状の電極を平行に配置した電極対を形成し、真空製膜法を用いて第1の基板と電極対とを含む面に、面状の透光性金属酸化物の薄膜を形成し、第1の基板の面状の透光性金属酸化物の形成時と酸素量の異なる雰囲気中で真空成膜法を用いて、第1の基板の電極対に平行な直線状の透光性金属酸化物の薄膜を、第1の基板の面状の透光性金属酸化物に重ねて第1の基板の電極対の間に局所的に積層し、透明な第2の基板の一方の面に二本の直線状の電極を平行に配置した電極対を形成し、真空製膜法を用いて第2の基板と電極対とを含む面に、面状の透光性金属酸化物の薄膜を形成し、第1の基板及び第2の基板の透光性金属酸化物側の面をそれぞれ垂直配向処理し、第1の基板の電極対間にある透光性金属酸化物と、第2の基板の電極対間にある透光性金属酸化物とを囲うようにスペーサを挟んで、第1の基板の電極対と第2の基板の電極対とを平行に対向させて接着し、スペーサで囲われた空間にキラルスメクチックC相の液晶を注入する。
この発明の光偏向素子製造方法は、透明な第1の基板の一方の面に二本の直線状の電極を平行に配置した電極対を形成し、真空製膜法を用いて第1の基板と電極対とを含む面に、面状の透光性金属酸化物の薄膜を形成し、第1の基板の面状の透光性金属酸化物の形成時と酸素量の異なる雰囲気中で真空成膜法を用いて、第1の基板の電極対に平行な直線状の透光性金属酸化物の薄膜を、第1の基板の面状の透光性金属酸化物に重ねて第1の基板の電極対の間に局所的に積層し、透明な第2の基板の一方の面に二本の直線状の電極を平行に配置した電極対を形成し、真空製膜法を用いて第2の基板と電極対とを含む面に、面状の透光性金属酸化物の薄膜を形成し、第2の基板の面状の透光性金属酸化物の形成時と酸素量の異なる雰囲気中で真空成膜法を用いて、第2の基板の電極対に平行な直線状の透光性金属酸化物の薄膜を、第2の基板の面状の透光性金属酸化物に重ねて第2の基板の電極対の間に局所的に積層し、第1の基板及び第2の基板の透光性金属酸化物側の面をそれぞれ垂直配向処理し、第1の基板側の平行な直線状の透光性金属酸化物の薄膜を積層した部分と第2の基板側の平行な直線状の透光性金属酸化物の薄膜を積層した部分が液晶層を挟んで対称的に配置され、第1の基板の電極対間にある透光性金属酸化物と、第2の基板の電極対間にある透光性金属酸化物とを囲うようにスペーサを挟んで、第1の基板の電極対と第2の基板の電極対とを平行に対向させて接着し、スペーサで囲われた空間にキラルスメクチックC相の液晶を注入する。
この発明の光偏向素子製造方法は、透明な第1の基板の一方の面に二本の直線状の電極を平行に配置した電極対を形成し、真空成膜法を用いて、第1の基板を高温にした状態で、第1の基板の電極対に平行な直線状の透光性金属酸化物の薄膜を、第1の基板上であって第1の基板の電極対の間に局所的に形成し、直線状の透光性金属酸化物形成時よりも第1の基板を低い温度にした状態で真空成膜法を用いて、第1の基板の電極対及び直線状の透光性金属酸化物を含む面に、面状の透光性金属酸化物の薄膜を積層し、透明な第2の基板の一方の面に二本の直線状の電極を平行に配置した電極対を形成し、真空製膜法を用いて第2の基板と電極対とを含む面に、面状の透光性金属酸化物の薄膜を形成し、第1の基板及び第2の基板の透光性金属酸化物側の面をそれぞれ垂直配向処理し、第1の基板の電極対間にある透光性金属酸化物と、第2の基板の電極対間にある透光性金属酸化物とを囲うようにスペーサを挟んで、第1の基板の電極対と第2の基板の電極対とを平行に対向させて接着し、スペーサで囲われた空間にキラルスメクチックC相の液晶を注入する。
この発明の光偏向素子製造方法は、透明な第1の基板の一方の面に二本の直線状の電極を平行に配置した電極対を形成し、真空成膜法を用いて、第1の基板を高温にした状態で、第1の基板の電極対に平行な直線状の透光性金属酸化物の薄膜を、第1の基板上であって第1の基板の電極対の間に局所的に形成し、直線状の透光性金属酸化物形成時よりも第1の基板を低い温度にした状態で真空成膜法を用いて、第1の基板の電極対及び直線状の透光性金属酸化物を含む面に、面状の透光性金属酸化物の薄膜を積層し、透明な第2の基板の一方の面に二本の直線状の電極を平行に配置した電極対を形成し、真空成膜法を用いて、第2の基板を高温にした状態で、第2の基板の電極対に平行な直線状の透光性金属酸化物の薄膜を、第2の基板上であって第2の基板の電極対の間に局所的に形成し、直線状の透光性金属酸化物形成時よりも第2の基板を低い温度にした状態で真空成膜法を用いて、第2の基板の電極対及び直線状の透光性金属酸化物を含む面に、面状の透光性金属酸化物の薄膜を積層し、第1の基板及び第2の基板の透光性金属酸化物側の面をそれぞれ垂直配向処理し、第1の基板側の平行な直線状の透光性金属酸化物の薄膜を形成した部分と第2の基板側の平行な直線状の透光性金属酸化物の薄膜を形成した部分が液晶層を挟んで対称的に配置され、第1の基板の電極対間にある透光性金属酸化物と、第2の基板の電極対間にある透光性金属酸化物とを囲うようにスペーサを挟んで、第1の基板の電極対と第2の基板の電極対とを平行に対向させて接着し、スペーサで囲われた空間にキラルスメクチックC相の液晶を注入する。
この発明の光偏向素子によれば、電位が均一になる低抵抗な等電位部で電極対の間の電位を電極対に対して平行に矯正することにより二本の電極に垂直な電界を均一にでき、電極対の近傍及び遠方にかかわらず液晶分子の傾きを均一にして、ばらつきの少ないシフト量で透過光をシフトできる。
この発明の光偏向素子によれば、電極対の間の電位を電極対に対して平行に矯正することにより二本の電極に垂直な電界を均一にできるとともに、液晶層の両面に対称的に設けた等電位部により層法線方向の電界成分の発生を抑えて二本の電極に垂直な電界成分の減少を抑制することができるため、電極対の近傍及び遠方にかかわらず液晶分子の傾きを均一にして、ばらつきの少ないシフト量で透過光をシフトできる。
この発明の光偏向素子における等電位部を、膜厚を厚くして形成することにより、積層する場合に比べて材料の種類を減らして簡単な製造方法で製造できる。本発明の光偏向素子における等電位部を、局所的に加熱して形成することにより、低抵抗な領域を高精度かつ容易に製造できる。本発明の光偏向素子における等電位部を、不純物イオンのドーピングにより低抵抗にすることにより、高精度かつ容易に製造できる。
この発明の光偏向素子における等電位部を、複数の層で形成することにより、等電位部の境界を明確に定めて電位の安定化の効果を確実に得られる。等電位部を等電位部外の抵抗体層と同一の透光性金属酸化物で組成のストイキオメトリからのずれを異ならせて形成することにより、金属酸化物が組成のストイキオメトリからのずれにより電気伝導をもたらすキャリアを発生させることを利用して低抵抗な等電位部を少ない材料で簡易に形成でき、複数の層間の屈折率差を小さく抑えて不要な光の散乱や回折を防ぐことができるとともに、製造プロセスを簡略化できる。等電位部を等電位部外の抵抗体層と同一の透光性金属酸化物で結晶性を異ならせて形成することにより、すなわち、抵抗体層においてアモルファスと多結晶が混在している場合に等電位部の多結晶状態の占める割合を高くすることにより、結晶性がよいほど電気伝導をもたらすキャリアの移動度が高くなる金属酸化物の性質を利用して、低抵抗な等電位部を少ない材料で簡易に形成でき、複数の層間の屈折率差を小さく抑えて不要な光の散乱や回折を防ぐことができるとともに、製造プロセスを簡略化できる。
また、さらに、誘電体層を設けて等電位部の境界近傍における電位勾配の急激な変化を緩和することにより、液晶層に印加される電界を均一にできる。
この発明の光偏向デバイスによれば、電極対の間の電位を電極対に対して平行に矯正することにより二本の電極に垂直な電界を均一にでき、電極対の近傍及び遠方にかかわらず液晶分子の傾きを均一にして、ばらつきの少ないシフト量で入射光をシフトできる光偏向素子を2つ用い、電極対に印加する電圧の極正を選択して光偏向素子の出射光のシフト方向を2次元的に正確に制御できる。
この発明の画像表示装置によれば、均一に出射光をシフトできる光偏向素子を用いて、画像表示素子の解像度以上の画像を、高品質に表示できる。
この発明の光偏向素子製造方法によれば、電極対の間の電位を電極対に対して平行に矯正することにより二本の電極に垂直な電界を均一にし、電極対の近傍及び遠方にかかわらず液晶分子の傾きを均一にして、ばらつきの少ないシフト量で透過光をシフトできる光偏向素子を、材料の種類を少なく簡単な製造方法で製造できる。
この発明の光偏向素子製造方法によれば、電極対の間の電位を電極対に対して平行に矯正することにより二本の電極に垂直な電界を均一にするとともに、液晶層の層法線方向の電界成分の発生を抑えて二本の電極に垂直な電界成分の減少を抑制し、電極対の近傍及び遠方にかかわらず液晶分子の傾きを均一にして、ばらつきの少ないシフト量で透過光をシフトできる光偏向素子を、材料の種類を少なく簡単な製造方法で製造できる。
この発明の光偏向素子製造方法によれば、電極対の間の電位を電極対に対して平行に矯正することにより二本の電極に垂直な電界を均一にし、電極対の近傍及び遠方にかかわらず液晶分子の傾きを均一にして、ばらつきの少ないシフト量で透過光をシフトできる光偏向素子を、高精度かつ容易に製造できる。
この発明の光偏向素子製造方法によれば、電極対の間の電位を電極対に対して平行に矯正することにより二本の電極に垂直な電界を均一にするとともに、液晶層の層法線方向の電界成分の発生を抑えて二本の電極に垂直な電界成分の減少を抑制し、電極対の近傍及び遠方にかかわらず液晶分子の傾きを均一にして、ばらつきの少ないシフト量で透過光をシフトできる光偏向素子を、高精度かつ容易に製造できる。
この発明の光偏向素子製造方法によれば、電極対の間の電位を電極対に対して平行に矯正することにより二本の電極に垂直な電界を均一にし、電極対の近傍及び遠方にかかわらず液晶分子の傾きを均一にして、ばらつきの少ないシフト量で透過光をシフトできる光偏向素子を、高精度かつ容易に製造できる。
この発明の光偏向素子製造方法によれば、電極対の間の電位を電極対に対して平行に矯正することにより二本の電極に垂直な電界を均一にするとともに、液晶層の層法線方向の電界成分の発生を抑えて二本の電極に垂直な電界成分の減少を抑制し、電極対の近傍及び遠方にかかわらず液晶分子の傾きを均一にして、ばらつきの少ないシフト量で透過光をシフトできる光偏向素子を、高精度かつ容易に製造できる。
この発明の光偏向素子製造方法によれば、電極対の間の電位を電極対に対して平行に矯正することにより二本の電極に垂直な電界を均一にし、電極対の近傍及び遠方にかかわらず液晶分子の傾きを均一にして、ばらつきの少ないシフト量で透過光をシフトできる光偏向素子を、等電位部の境界を明確にして高精度かつ容易に製造できる。
この発明の光偏向素子製造方法によれば、電極対の間の電位を電極対に対して平行に矯正することにより二本の電極に垂直な電界を均一にするとともに、液晶層の層法線方向の電界成分の発生を抑えて二本の電極に垂直な電界成分の減少を抑制し、電極対の近傍及び遠方にかかわらず液晶分子の傾きを均一にして、ばらつきの少ないシフト量で透過光をシフトできる光偏向素子を、等電位部の境界を明確にして高精度かつ容易に製造できる。
この発明の光偏向素子製造方法によれば、電極対の間の電位を電極対に対して平行に矯正することにより二本の電極に垂直な電界を均一にし、電極対の近傍及び遠方にかかわらず液晶分子の傾きを均一にして、ばらつきの少ないシフト量で透過光をシフトできる光偏向素子を、等電位部の境界を明確にして高精度かつ容易に製造できる。
この発明の光偏向素子製造方法によれば、電極対の間の電位を電極対に対して平行に矯正することにより二本の電極に垂直な電界を均一にするとともに、液晶層の層法線方向の電界成分の発生を抑えて二本の電極に垂直な電界成分の減少を抑制し、電極対の近傍及び遠方にかかわらず液晶分子の傾きを均一にして、ばらつきの少ないシフト量で透過光をシフトできる光偏向素子を、等電位部の境界を明確にして高精度かつ容易に製造できる。
この発明の光偏向素子製造方法によれば、電極対の間の電位を電極対に対して平行に矯正することにより二本の電極に垂直な電界を均一にし、電極対の近傍及び遠方にかかわらず液晶分子の傾きを均一にして、ばらつきの少ないシフト量で透過光をシフトできる光偏向素子を、等電位部の境界を明確にして高精度かつ容易に製造できるとともに、透光性金属酸化物を結晶性よく均一に形成することができる。
この発明の光偏向素子製造方法によれば、電極対の間の電位を電極対に対して平行に矯正することにより二本の電極に垂直な電界を均一にするとともに、液晶層の層法線方向の電界成分の発生を抑えて二本の電極に垂直な電界成分の減少を抑制し、電極対の近傍及び遠方にかかわらず液晶分子の傾きを均一にして、ばらつきの少ないシフト量で透過光をシフトできる光偏向素子を、等電位部の境界を明確にして高精度かつ容易に製造できるとともに、透光性金属酸化物を結晶性よく均一に形成することができる。
第1の実施形態の光偏向素子1は、図1(a)の平面図及び図1(b)のA1-A2断面図に示すように、入射側基板10と出射側基板11とスペーサ12と入射側抵抗体層13と入射側電極対14と出射側抵抗体層15と出射側電極対16と配向膜17と液晶層18とを備える。なお、入射側及び出射側は説明の便宜上設定したものであり、入射側と出射側とを入れ替えてもよい。
入射側基板10及び出射側基板11は、ガラス基板等の薄い透明な材質で長方形に形成され、数μm〜百μm程度の間隔で配置されている。スペーサ12は、数μm〜百μm程度の一定厚さのフィルムや数μm〜百μm程度の直径を有する球状体等で形成されており、入射側基板10と出射側基板11との間の外周付近に挟まれて、入射側基板10と出射側基板11とを均一な間隔で平行に保持している。
入射側抵抗体層13は、入射側基板10の出射側基板11に対向する面を覆う面状の透明抵抗体の薄膜で形成されている。入射側抵抗体層13を形成する透明抵抗体には、透光性金属酸化物、導電性粉末や微粒子の樹脂分散膜等を用い、導電性粉末や微粒子には、金属や金属酸化物等の半導体材料を用いる。入射側抵抗体層13の表面抵抗率は、大きすぎて外部へのリーク電流の増加により電界を不均一にならないように1×1011Ω/□以下、特に1×1010Ω/□以下が望ましく、かつ、小さすぎて消費電力の増加により発熱しすぎないように1×107Ω/□以上、特に1×108Ω/□以上が望ましい。
入射側電極対14は、金属板、金属箔、導電ペースト、導電膜等の導電体で薄膜かつ線形状に形成された平行な入射側第1電極141と入射側第2電極142とを有し、入射側第1電極141と入射側第2電極142とを入射側抵抗体層13の両端部付近に配置して構成されている。
入射側抵抗体層13は入射側等電位部131を有し、入射側等電位部131は入射側抵抗体層13と同じ材料で局所的に厚く形成された領域であり、かつ、入射側電極対14に対して平行に、入射側抵抗体層13を縦断するように直線状に形成されている。入射側等電位部131は、入射側抵抗体層13の他の領域の抵抗値より十分小さく10分の1以下程度であることが望ましいため、入射側抵抗体層13の他の領域の膜厚より10倍以上にすることが望ましい。
出射側抵抗体層15は、出射側基板11の入射側基板10に対向する面を覆う面状の透明抵抗体の薄膜で形成されている。出射側抵抗体層15の材料及び表面抵抗率は、入射側抵抗体層13と同様に適宜選択される。出射側電極対16は、金属板、金属箔、導電ペースト、導電膜等の導電体で薄膜かつ線形状に形成された平行な出射側第1電極161と出射側第2電極162とを、出射側抵抗体層15の両端付近に配置して形成されている。
入射側第1電極141及び出射側第1電極161は対向する位置に配置されて一端または両端で電気的に接続され、入射側第2電極142及び出射側第2電極162は対向する位置に配置されて一端または両端で電気的に接続されている。第1電極端子163及び第2電極端子164は、出射側基板11上のスペーサ12により囲まれた領域外で入射側基板10に重ならない領域に配置され、第1電極端子163は出射側第1電極161に接続され、第2電極端子164は出射側第2電極162に接続されている。
配向膜17は、入射側抵抗体層13及び出射側抵抗体層15の対向する面をそれぞれ薄膜状に覆い、表面の液晶分子を配向膜17に対して垂直方向に配向させる機能を有し、シランカップリング剤や市販の液晶用垂直配向材等で構成される。液晶層18は、配向膜17に挟まれてスペーサ12で囲われた空間に充填したキラルスメクチックC相の強誘電性液晶で形成されている。
一般に、キラルスメクチックC相の強誘電性液晶は、液晶分子の長軸方向に層構造をなし、液晶分子の長軸方向が層法線方向からわずかに傾いており、外部電界が働かない状態で各層毎に液晶ダイレクタ方向が螺旋的に回転しているいわゆる螺旋構造をもつ。キラルスメクチックC相の強誘電性液晶は、不斉炭素を分子構造に有して自発分極Psをもつため、外部電界Eが印加されると自発分極Psと外部電界Eとにより定まる方向に液晶分子を再配列させ、液晶分子の再配列により複屈折性を有する。キラルスメクチックC相の強誘電性液晶は、主鎖、スペーサ、骨格、結合部、キラル部等の構造をもち、主鎖構造は、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリシロキサン、ポリオキシエチレン等で形成され、分子回転を担う骨格、結合部、キラル部を主鎖と結合させるスペーサは、適当な長さのメチレン鎖等で形成され、カイラル部とビフェニル構造など剛直な骨格とを結合する結合部は、(-COO-)結合等で形成される。
液晶層18に充填されたキラルスメクチックC相の強誘電性液晶は、配向膜17に垂直に螺旋構造の回転軸を向けたホメオトロピック配向をなし、基板面に対してほぼ垂直な層法線方向をもつ層構造を形成している。なお、液晶層18は、キラルスメクチックC相を形成する各層毎に液晶ダイレクタが対向する方向を向く反強誘電性液晶で構成されてもよい。
図2のA3-A4断面図に示すように、入射側基板10側からY方向に直線偏光した入射光を入射しながら、第1電極端子163を第2電極端子164より高電位とする電圧V0を印加し、または、第2電極端子164を第1電極端子163より高電位とする電圧-V0を印加することにより、以下に説明するように進行方向のX方向に対して平行であって、入射側電極対14及び出射側電極対16に平行なY方向の正負にシフトした出射光を得る。
第1電極端子163を第2電極端子164より高電位とする電圧V0を印加すると、入射側抵抗体層13には、高電位の入射側第1電極141から低電位の入射側第2電極142に向かうZ方向に電流が流れ、Z方向へ直線的に降下する連続的な電位勾配が形成されると同時に、出射側抵抗体層15には、高電位の出射側第1電極161から低電位の出射側第2電極162に向かうZ方向に電流が流れ、Z方向へ直線的に降下する連続的な電位勾配が形成される。
入射側等電位部131は、入射側抵抗体層13内の他の領域より低抵抗であって入射側電極対14の中間にY方向に沿って設けられており、Y方向の電位差を打ち消して電位をほぼ均一に保つ機能を有するため、入射側電極対14に近い領域でY方向に整列しやすく入射側電極対14から遠い領域で抵抗ムラ等に起因してY方向に平行でなくなりやすい等電位線を、Y方向に平行に矯正することができる。入射側抵抗体層13及び出射側抵抗体層15でZ方向に直線状に降下する連続的な電位勾配は、液晶層18にZ方向の均一な電界を生じさせる。
液晶層18は、Z方向の電界によりキラルスメクチックC相の強誘電性液晶のダイレクタをY方向に一律に傾け、平均的な光学軸を傾斜させて複屈折性を有する。Y軸に沿って直線偏光した入射光は、入射側基板10側からX方向に向けて進行し、液晶層18に入射するとY方向にわずかに屈折して直進し、液晶層18から出射する際に逆方向にわずかに屈折してX方向に進行して出射側基板11側から出射する。光偏向素子1からの出射光は、入射光と方向が同じでY方向にシフト量d1だけシフトしている。
一方、第2電極端子164を第1電極端子163より高電位とする電圧-V0を印加すると、液晶層18に−Z方向の均一な電界が生じ、液晶層18におけるキラルスメクチックC相の強誘電性液晶のダイレクタは−Y方向に傾き、Y軸に沿って直線偏光した入射光は、入射側基板10側からX方向に向けて進行し、液晶層18に入射すると−Y方向にわずかに屈折して直進し、液晶層18から出射する際に逆方向にわずかに屈折してX方向に進行して出射側基板11から出射する。光偏向素子1からの出射光は、入射光と方向が同じで−Y方向にシフト量d2だけシフトしている。
シフト量d1及びシフト量d2は、液晶層18の厚さと、Y軸に沿って直線偏光した入射光に対するキラルスメクチックC相の強誘電性液晶の屈折率で決まり、屈折率は液晶分子の傾き量に依存し、液晶分子の傾きは印加される電界の大きさに依存する。
光偏向素子1によれば、入射側等電位部131を設けて、等電位線をY方向に平行に矯正することにより、液晶層18に発生する電界のY方向成分の発生を防止してZ方向に均一にできるため、光の入射位置によるシフト量のばらつきを減らすことができる。
また、入射側抵抗体層13は、図3(a)の平面図及び図3(b)のA5-A6断面図に示すように、間隔を開けて入射側等電位部131を複数設けたものであってもよい。この入射側等電位部131は、幅の狭いものが望ましい。このように入射側等電位部131を複数設けることにより、液晶層18の電界がより均一化して、シフト量のばらつきを減少させることができる。さらに、入射側等電位部131は、光の回折が問題とならない程度の間隔で設けるとよい。
また、液晶層18と入射側抵抗体層13との界面及び液晶層18と出射側抵抗体層15との界面に誘電体層を設けてもよい。平行な電極を複数設けて段階的に電位を与えて変化させる構造と異なり、本発明では、入射側電極対14の間の入射側抵抗体層13と、出射側電極対16の間の出射側抵抗体層15により連続的に降下する電位を形成するため、広い領域にわたる誘電体層は必要としないが、誘電体層を設けることにより、入射側等電位部131や出射側等電位部151の境界付近における電位勾配の急激な変化を防止して、液晶層18における電位勾配の急な変化を小さくして電界をより均一にできる。
具体的に、入射側抵抗体層13と同じ材料で厚く形成された入射側等電位部131を設けた光偏向素子1を製造してシフト量及びシフト量のばらつきを測定した。
短辺7cm×長辺9cmの面をもつ厚さ1mmのガラス基板で形成された入射側基板10の長辺に平行に、クロムで5cmの間隔をあけて入射側電極対14を形成し、入射側電極対14の間に、酸化スズの焼結体をターゲットに用いた高周波マグネトロンスパッタ法により厚さ0.1μmの酸化スズ膜を成膜して入射側抵抗体層13と入射側等電位部131の一部とを形成し、入射側等電位部131を形成する3つの線状の領域以外をマスクして、再び同じ条件で酸化スズを0.4μm成膜することにより、厚さ0.5μmの入射側等電位部131を形成した。スパッタ中はアルゴンガス及び酸素を流し、酸素流量比を約95%とし、成膜中の基板温度を90℃に保った。酸化スズ膜の表面抵抗率は、入射側等電位部131以外の領域において約5×108Ω/□、入射側等電位部131において約1×108Ω/□であった。酸化スズ膜の可視光透過率は90%以上である。出射側基板11には、入射側電極対14と同様にクロムで出射側電極対16を形成し、さらに出射側電極対16に接続された第1電極端子163及び第2電極端子164を形成し、入射側抵抗体層13の入射側等電位部131以外の領域と同様の構造の出射側抵抗体層15を形成した。
次に、入射側抵抗体層13及び出射側抵抗体層15の表面をシランカップリング剤で処理して配向膜17を形成し、厚さ50μmのマイラーシートをスペーサ12とし、配向膜17側を内面にして入射側基板10と出射側基板11とを張り合わせ、約90℃に加熱した状態で、入射側基板10と出射側基板11との間に強誘電性液晶(チッソ製CS1029)を毛管法で注入し、冷却後に接着剤で封止して液晶層18を形成した。入射側電極対14に挟まれた領域が、入射光をシフトさせる有効面積となる。
入射側基板10の外面に、入射側電極対14に平行な5μm幅のラインとスペースとの縞状のマスクパターンを配置し、マスクパターンを通して入射側電極対14に平行な直線偏光を入射した。第1電極端子163と第2電極端子164との間に2000Vの電圧を印加したところ、マスクパターンが入射側電極対14に平行に約2.5μmシフトし、極性を逆にして-2000Vの電圧を印加したところ、マスクパターンが逆方向に約2.5μmシフトし、パルスジェネレータと高速パワーアンプとを用いて、2000V及び-2000Vのピークをもつ矩形波電圧を印加したところ、マスクパターンがピーク対ピークで約5μmシフトした。
有効面積内の複数個所におけるシフト量の測定を行ったところ、シフト量の平均値は約2.5μmであり、有効面積全面でのばらつきは20%以内であった。入射側等電位部131の直上や近傍を避けた場合のばらつきは10%以内であった。
比較のために、入射側抵抗体層13に入射側等電位部131を形成しない光偏向素子を作成して、シフト量及びばらつきを測定したところ、入射側電極対14の近傍におけるシフト量は約2.5μmであり、入射側電極対14から遠ざかるにつれてシフト量は減少し、入射側電極対14の中央部分におけるシフト量は約1.5μmであり、入射側電極対14付近より約40%減少した。
入射側等電位部131を設けない場合には、入射側電極対14より遠くなるほど抵抗ムラ等の影響で液晶層18に印加される電界の向き及び大きさにバラツキが大きくなる一方、入射側等電位部131を設けることにより液晶層18に印加される電界が均一化してシフト量のばらつきが減少することが明らかである。
第2の実施形態の光偏向素子2は、図4(a)の平面図及び図4(b)のB1-B2断面図に示すように、第1の実施形態の光偏向素子1と同様の入射側基板10と出射側基板11とスペーサ12と入射側抵抗体層13と入射側電極対14と出射側電極対16と配向膜17と液晶層18とを備え、第1の実施形態の光偏向素子1の出射側抵抗体層15と異なる出射側抵抗体層25を備える。
出射側抵抗体層25は、出射側基板11の入射側基板10に対向する面を覆う面状の透明抵抗体の薄膜で形成されている。出射側抵抗体層25の材料及び表面抵抗率は、入射側抵抗体層15と同様に適宜選択される。出射側抵抗体層25は出射側等電位部251を有し、出射側等電位部251は出射側抵抗体層25と同じ材料で局所的に厚く形成された領域であり、かつ、出射側電極対16に対して平行に、出射側抵抗体層25を縦断するように直線状に形成されている。
出射側等電位部251は、入射側等電位部131と液晶層18を介して対称的な位置に配置され、一端または両端において入射側等電位部131と電気的に低抵抗に接続されている。出射側等電位部251は、出射側抵抗体層25内の他の領域より低抵抗であって出射側電極対16の中間にY方向に沿って設けられており、Y方向の電位差を打ち消して電位をほぼ均一に保つ機能を有するため、出射側電極対16に近い領域でY方向に整列しやすく出射側電極対16から遠い領域で抵抗ムラ等に起因してY方向に平行でなくなりやすい等電位線を、Y方向に平行に矯正して液晶層18に発生する電界のY方向成分の発生を防止する。さらに、出射側等電位部251は、入射側等電位部131と等電位に保たれるため、液晶層18の層法線方向を向くX方向の電界成分の発生を防止することができる。
光偏向素子2によれば、入射側等電位部131及び出射側等電位部251を設けて液晶層18に発生する電界のY方向成分の発生を防止するとともに、入射側等電位部131と出射側等電位部251とを等電位にして液晶層18に発生する電界のX方向成分の発生を防止することにより、液晶層18に発生する電界をZ方向に均一にでき、光の入射位置によるシフト量のばらつきを減らすことができる。
なお、図4(c)の断面図に示すように、入射側抵抗体層13は、間隔を開けて入射側等電位部131を複数設けたものであってもよく、出射側抵抗体層25は、間隔を開けて出射側等電位部251を複数設けたものであってもよい。入射側等電位部131や出射側等電位部251を複数設けることにより、液晶層18の電界がより均一化して、シフト量のばらつきを減少させることができる。なお、液晶層18と入射側抵抗体層13との界面及び液晶層18と出射側抵抗体層25との界面に誘電体層を設けてもよい。誘電体層を設けることにより、入射側等電位部131や出射側等電位部251の境界付近における電位勾配の急激な変化を防止して、液晶層18における電位勾配の急な変化を小さくして電界をより均一にできる。
第3の実施形態の光偏向素子3は、図5(a)の平面図及び図5(b)のC1-C2断面図に示すように、第1の実施形態の光偏向素子1と同様の入射側基板10と出射側基板11とスペーサ12と入射側電極対14と出射側抵抗体層15と出射側電極対16と配向膜17と液晶層18とを備え、第1の実施形態の光偏向素子1の入射側抵抗体層13と異なる入射側抵抗体層33を備える。
入射側抵抗体層33は、入射側基板10の出射側基板11に対向する面を覆う面状の透明抵抗体の薄膜で形成されている。入射側抵抗体層33を形成する透明抵抗体には、透光性金属酸化物、導電性粉末や微粒子の樹脂分散膜等を用い、導電性粉末や微粒子には、金属や金属酸化物等の半導体材料を用いる。入射側抵抗体層33の表面抵抗率は、大きすぎて外部へのリーク電流の増加により電界を不均一にならないように1×1011Ω/□以下、特に1×1010Ω/□以下が望ましく、かつ、小さすぎて消費電力の増加により発熱しすぎないように1×107Ω/□以上、特に1×108Ω/□以上が望ましい。
入射側抵抗体層33は入射側等電位部331を有し、入射側等電位部331は入射側抵抗体層33と同じ材料で局所的に加熱されて形成された領域であり、かつ、入射側電極対14に平行に、入射側抵抗体層33を縦断するように直線状に形成されている。入射側等電位部331は局所的に加熱されることにより結晶化しており、入射側抵抗体層33の加熱されていない領域よりもキャリアの移動度が高く体積抵抗率が低い。特に、入射側抵抗体層13がアモルファスや微細な多結晶等で形成されている場合、加熱した領域と加熱しない領域との抵抗率の差を大きく形成することができる。なお、入射側等電位部331を精度よく局所的に加熱する方法として、レーザーアニール、イオンビーム照射、電子ビーム照射等を用いることが望ましい。
光偏向素子3によれば、入射側等電位部331を設けて等電位線をY方向に平行に矯正することにより、液晶層18に発生する電界のY方向成分の発生を防止してZ方向に均一にできるため、光の入射する位置によるシフト量のばらつきを減らすことができるとともに、入射側等電位部331を加熱により形成するため、入射側等電位部331と入射側等電位部331以外の領域との体積抵抗率の差を大きく形成しやすく、一層の材料を局所的に加熱する簡単な製造方法により安価に製造できる。
なお、図5(c)の断面図に示すように、入射側抵抗体層33は、間隔を開けて入射側等電位部331を複数設けたものであってもよく、出射側抵抗体層15は、入射側等電位部331と液晶層18を介して対称的な位置に配置され、一端または両端において入射側等電位部331と電気的に低抵抗に接続された出射側等電位部351を備えたものであってもよい。入射側等電位部331を複数設けることにより、液晶層18の電界がより均一化して、シフト量のばらつきを減少させることができ、出射側等電位部351を設けることにより、さらに液晶層18の電界がより均一化して、シフト量のばらつきを減少させることができる。なお、液晶層18と入射側抵抗体層33との界面及び液晶層18と出射側抵抗体層15との界面に誘電体層を設けてもよい。誘電体層を設けることにより、入射側等電位部331や出射側等電位部151の境界付近における電位勾配の急激な変化を防止して、液晶層18における電位勾配の急な変化を小さくして電界をより均一にできる。
具体的に、局所加熱された入射側等電位部331を設けた光偏向素子3を製造してシフト量およびシフト量のばらつきを測定した。
短辺7cm×長辺9cmの面をもつ厚さ1mmのガラス基板で形成された入射側基板10の長辺に平行に、クロムで5cmの間隔をあけて入射側電極対14を形成し、入射側電極対14の間に、酸化スズの焼結体をターゲットに用いた高周波マグネトロンスパッタ法により厚さ0.1μmの酸化スズ膜を形成した。スパッタ中はアルゴンガスと酸素を流し、酸素流量比を約95%とし、成膜中の基板温度を90℃に保った。次に、入射側等電位部331を形成する3つの線状の領域以外をマスクして、マスクされていない領域にレーザ照射による局所加熱を行った。酸化スズ膜の表面抵抗率は、局所加熱を行っていない領域で約5×108Ω/□、局所加熱を行った領域において約2桁小さい値であった。酸化スズ膜の可視光透過率は90%以上である。出射側基板11には、入射側電極対14と同様にクロムで出射側電極対16を形成し、さらに出射側電極対16に接続された第1電極端子163及び第2電極端子164を形成し、入射側抵抗体層33の入射側等電位部331以外の領域と同様の構造の出射側抵抗体層15を形成した。
次に、入射側抵抗体層33及び出射側抵抗体層15の表面をシランカップリング剤で処理して配向膜17を形成し、厚さ50μmのマイラーシートをスペーサ12とし、配向膜17側を内面にして入射側基板10と出射側基板11とを張り合わせ、約90℃に加熱した状態で、入射側基板10と出射側基板11との間に強誘電性液晶(チッソ製CS1029)を毛管法で注入し、冷却後に接着剤で封止して液晶層18を形成した。入射側電極対14に挟まれた領域が、入射光をシフトさせる有効面積となる。
有効面積内の複数個所におけるシフト量の測定を行ったところ、シフト量の平均値は約2.5μmであり、有効面積全面でのばらつきは15%以内であった。入射側等電位部331の直上や近傍を避けた場合のばらつきは10%以内であった。局所加熱された入射側等電位部331を設けることにより液晶層18に印加される電界が均一化してシフト量のばらつきが減少することが明らかである。
第4の実施形態の光偏向素子4は、図6(a)の平面図及び図6(b)のD1-D2断面図に示すように、第1の実施形態の光偏向素子1と同様の入射側基板10と出射側基板11とスペーサ12と入射側電極対14と出射側抵抗体層15と出射側電極対16と配向膜17と液晶層18とを備え、第1の実施形態の光偏向素子1の入射側抵抗体層13と異なる入射側抵抗体層43を備える。
入射側抵抗体層43は、入射側基板10の出射側基板11に対向する面を覆う面状の透明抵抗体の薄膜で形成されている。入射側抵抗体層43を形成する透明抵抗体には、透光性金属酸化物、導電性粉末や微粒子の樹脂分散膜等を用い、導電性粉末や微粒子には、金属や金属酸化物等の半導体材料を用いる。入射側抵抗体層43の表面抵抗率は、大きすぎて外部へのリーク電流の増加により電界を不均一にならないように1×1011Ω/□以下、特に1×1010Ω/□以下が望ましく、かつ、小さすぎて消費電力の増加により発熱しすぎないように1×107Ω/□以上、特に1×108Ω/□以上が望ましい。
入射側抵抗体層43は入射側等電位部431を有し、入射側等電位部431は入射側抵抗体層43と同じ材料で局所的に不純物イオンをドーピングされて形成された領域であり、かつ、入射側電極対14に平行に、入射側抵抗体層43を縦断するように直線状に形成されている。入射側等電位部431は局所的に不純物イオンをドーピングされることにより、ドーピングされていない領域よりもキャリアが多く体積抵抗率が低い。
不純物イオンはイオンビームを照射してドーピングできる。例えば、入射側抵抗体層43がn型金属酸化物で形成されている場合、空格子点または格子間にH+をドーピングしてキャリアである伝導電子数を増やすことにより、入射側等電位部431の体積抵抗率をH+をドーピングしていない領域よりも小さくできる。入射側等電位部431にドーピングされる不純物イオンは、入射側抵抗体層43の金属酸化物を構成する金属イオンを異なる金属イオンで置換したものであってもよく、入射側抵抗体層43をn型金属酸化物で形成している場合は、n型金属酸化物の金属イオンより原子価の大きい金属イオンを注入し、入射側抵抗体層43をp型金属酸化物で形成している場合は、p型金属酸化物の金属イオンより原子価の小さい金属イオンを注入して置換する。入射側等電位部431にドーピングされる不純物イオンは、金属酸化物を構成する酸素をF、Cl、Br、I等の元素で置換したものであってもよい。入射側等電位部431に不純物イオンをドーピングした後に加熱して置換を促進させることが望ましい。
光偏向素子4によれば、入射側等電位部431を設けて等電位線をY方向に平行に矯正することにより、液晶層18に発生する電界のY方向成分の発生を防止してZ方向に均一にできるため、光の入射する位置によるシフト量のばらつきを減らすことができるとともに、入射側等電位部431を不純物イオンのドーピングにより形成するため、入射側等電位部431と他の領域との体積抵抗率の差を大きく形成しやすく、一層の材料に局所的に不純物イオンをドーピングする簡単な製造方法により安価に製造できる。
なお、図6(c)の断面図に示すように、入射側抵抗体層43は、間隔を開けて入射側等電位部431を複数設けたものであってもよく、出射側抵抗体層15は、入射側等電位部431と液晶層18を介して対称的な位置に配置され、一端または両端において入射側等電位部431と電気的に低抵抗に接続された出射側等電位部451を備えたものであってもよい。入射側等電位部431を複数設けることにより、液晶層18の電界がより均一化して、シフト量のばらつきを減少させることができ、出射側等電位部451を設けることにより、さらに液晶層18の電界がより均一化して、シフト量のばらつきを減少させることができる。なお、液晶層18と入射側抵抗体層43との界面及び液晶層18と出射側抵抗体層15との界面に誘電体層を設けてもよい。誘電体層を設けることにより、入射側等電位部431や出射側等電位部151の境界付近における電位勾配の急激な変化を防止して、液晶層18における電位勾配の急な変化を小さくして電界をより均一にできる。
第5の実施形態の光偏向素子5は、図7(a)の平面図及び図7(b)のE1-E2断面図に示すように、第1の実施形態の光偏向素子1と同様の入射側基板10と出射側基板11とスペーサ12と入射側電極対14と出射側抵抗体層15と出射側電極対16と配向膜17と液晶層18とを備え、第1の実施形態の光偏向素子1の入射側抵抗体層13と異なる入射側抵抗体層53を備える。
入射側抵抗体層53は、入射側基板10の出射側基板11に対向する面を覆う面状の透明抵抗体の薄膜で形成されている。入射側抵抗体層53は、入射側第1電極141、入射側第2電極142及び入射側等電位部531の間を面状に覆うように、薄膜状に形成されている。入射側抵抗体層53を形成する透明抵抗体には、透光性金属酸化物、導電性粉末や微粒子の樹脂分散膜等を用い、導電性粉末や微粒子には、金属や金属酸化物等の半導体材料を用いる。入射側抵抗体層53の表面抵抗率は、大きすぎて外部へのリーク電流の増加により電界を不均一にならないように1×1011Ω/□以下、特に1×1010Ω/□以下が望ましく、かつ、小さすぎて消費電力の増加により発熱しすぎないように1×107Ω/□以上、特に1×108Ω/□以上が望ましい。
入射側抵抗体層53は入射側等電位部531を有し、入射側等電位部531は、入射側抵抗体層53と体積抵抗率の異なる第1層と第2層との二層構造で局所的に厚く形成された領域であり、かつ、入射側電極対14に平行に、入射側抵抗体層33を縦断するように直線状に形成されている。第1層は、入射側等電位部531を形成する領域以外の領域と一体的に形成される。第2層は、入射側等電位部531を形成する領域以外をマスクして、入射側等電位部531を形成する領域のみに第1層に重ねて形成される。第2層は、第1層より体積抵抗率の低い材料を用いて形成したものであってもよいし、第1層と同一の元素を組成にもつ材料を用い、成膜条件を変えることによって体積抵抗率を低くして形成したものであってもよい。第1層及び第2層の材料として同一の透光性金属酸化物を用いて成膜方法を真空成膜とすることにより、物性を容易に制御して体積抵抗率や可視光透過率を設定できるため、同一材料からなる積層構造を容易に形成することができる。例えば、電気伝導に寄与するキャリアの発生に強い相関をもつ抵抗体の組成のストイキオメトリからのずれ量や、キャリアの移動度に相関を持つ抵抗体の結晶性を変えることによって、体積抵抗率の異なる二層を形成することが可能である。また、真空成膜の手法の中でも物理体積法を用いることにより、基板の高温加熱による変質等を防止できる。
真空成膜により入射側等電位部531を形成すると、加熱しないことで入射側抵抗体層53における入射側等電位部531の境界が温度上昇により不明確とならず、ドーピングを行わないことで入射側抵抗体層53における入射側等電位部531の境界がドーピングされた物質の拡散により不明確とらないため、入射側抵抗体層53における入射側等電位部531の境界を明確に定められる。
光偏向素子5によれば、入射側等電位部531を設けて等電位線をY方向に平行に矯正することにより、液晶層18に発生する電界のY方向成分の発生を防止してZ方向に均一にできるため、光の入射する位置によるシフト量のばらつきを減らすことができるとともに、入射側等電位部531を同一の元素を組成にもち体積抵抗率の異なる第1層と第2層との積層により形成することにより、第1層と第2層との屈折率差及び入射側等電位部531と入射側等電位部531以外の領域との屈折率差を小さくできるため、不要な光の散乱及び回折を防止して光利用効率の低下や表示画像の劣化を防止できる。
なお、図7(c)の断面図に示すように、入射側抵抗体層53は、間隔を開けて入射側等電位部531を複数設けたものであってもよく、出射側抵抗体層15は、入射側等電位部531と液晶層18を介して対称的な位置に配置され、一端または両端において入射側等電位部531と電気的に低抵抗に接続された出射側等電位部551を備えたものであってもよい。入射側等電位部531を複数設けることにより、液晶層18の電界がより均一化して、シフト量のばらつきを減少させることができ、出射側等電位部551を設けることにより、さらに液晶層18の電界がより均一化して、シフト量のばらつきを減少させることができる。なお、液晶層18と入射側抵抗体層53との界面及び液晶層18と出射側抵抗体層15との界面に誘電体層を設けてもよい。誘電体層を設けることにより、入射側等電位部531や出射側等電位部151の境界付近における電位勾配の急激な変化を防止して、液晶層18における電位勾配の急な変化を小さくして電界をより均一にできる。
具体的に、体積抵抗率の異なる第1層と第2層とをもつ入射側等電位部531を設けた光偏向素子5を製造してシフト量及びシフト量のばらつきを測定した。
短辺7cm×長辺9cmの面をもつ厚さ1mmのガラス基板で形成された入射側基板10の長辺に平行に、クロムで5cmの間隔をあけて入射側電極対14を形成し、入射側電極対14の間に、酸化スズの焼結体をターゲットに用いて高周波マグネトロンスパッタ法により厚さ0.1μmの酸化スズ膜を成膜して入射側抵抗体層53と入射側等電位部531の第1層とを形成した。スパッタ中はアルゴンガスと酸素を流し、酸素流量比を約95%とし、成膜中の基板温度を90℃に保った。次に、入射側等電位部531を形成する3つの線状の領域以外をマスクして、体積抵抗率約5×10-3ΩcmのITO膜を0.05μm成膜して入射側等電位部531の第2層を形成した。ITO膜成膜時には、酸素流量比を10%として基板温度を90℃に保った。表面抵抗率は、入射側等電位部531以外の領域において約5×108Ω/□、ITO膜を成膜した入射側等電位部において約5桁以上低い約1×103Ω/□であった。酸化スズ膜の可視光透過率は90%以上である。同様に、出射側基板11に、クロムで出射側電極対16、第1電極端子163及び第2電極端子164を形成し、入射側抵抗体層53の入射側等電位部531以外の領域と同様の構造の出射側抵抗体層15を形成した。
次に、入射側抵抗体層53及び出射側抵抗体層15の表面をシランカップリング剤で処理して配向膜17を形成し、厚さ50μmのマイラーシートをスペーサ12とし、配向膜17側を内面にして入射側基板10と出射側基板11とを張り合わせ、約90℃に加熱した状態で、入射側基板10と出射側基板11との間に強誘電性液晶(チッソ製CS1029)を毛管法で注入し、冷却後に接着剤で封止して液晶層18を形成した。スペーサ12で囲まれた領域が、入射光をシフトさせる有効面積となる。
有効面積内の複数個所におけるシフト量の測定を行ったところ、シフト量の平均値は約2.5μmであり、有効面積全面でのばらつきは10%以内であった。入射側等電位部531の直上や近傍を避けた場合のばらつきは5%以内であった。入射側等電位部531を設けることにより液晶層18に印加される電界が均一化してシフト量のばらつきが減少することが明らかである。また、酸化スズとITOの屈折率に差があることを反映して光の回折が観測された。
また、具体的に、同一の透光性金属酸化物を用い、異なる条件で成膜された体積抵抗率の異なる第1層と第2層とを持つ入射側等電位面531を設けた光偏向素子5を製造してシフト量及びシフト量のばらつきを測定した。
短辺7cm×長辺9cmの面をもつ厚さ1mmのガラス基板で形成された入射側基板10の長辺に平行に、クロムで5cmの間隔をあけて入射側電極対14を形成し、入射側電極対14の間に、酸化スズの焼結体をターゲットに用いた高周波マグネトロンスパッタ法により厚さ0.1μmの酸化スズ膜を形成した。スパッタ中はアルゴンガスと酸素を流し、酸素流量比を約95%とし、成膜中の基板温度を90℃に保った。次に、入射側等電位部531を形成する3つの線状の領域以外をマスクして、酸化スズを0.05μm成膜した。スパッタ中の酸素流量比を約20%とし、成膜中の基板温度を90℃に保った。測定した表面抵抗率は、入射側等電位部531以外の領域において約5×108Ω/□、入射側等電位部531において約2×103Ω/□であった。酸化スズ膜の可視光透過率は90%以上である。出射側基板11には、入射側電極対14と同様にクロムで出射側電極対16を形成し、さらに出射側電極対16に接続された第1電極端子163及び第2電極端子164を形成し、入射側抵抗体層53と同様に出射側等電位部551をもつ出射側抵抗体層55を形成した。なお、上記の入射側等電位部531の第2層に相当する領域を先に形成し、結晶性がよく低抵抗の入射側等電位部531を形成するために、入射側基板10を高温した状態で入射側等電位部531を形成することが望ましく、この場合、入射側抵抗体層53の抵抗を加熱により変化させることを防止するため、入射側基板10を高温にした状態で上記の第2層に相当する層を先に形成した後、入射側基板10を比較的低温にした状態で上記の第1層に相当する層を入射側抵抗体層53の他の領域とともに重ねて形成することが望ましく、出射側等電位部551についても同様である。
入射側抵抗体層53及び出射側抵抗体層55を覆う領域に、厚さ150μmのカバーガラスを厚さ10μmの光学用UV接着剤で貼り付けた。次に、各カバーガラスの表面をシランカップリング剤で処理して配向膜17を形成し、厚さ50μmのマイラーシートをスペーサ12とし、各配向膜17側を内面にして入射側基板10と出射側基板11とを張り合わせ、約90℃に加熱した状態で、入射側基板10と出射側基板11との間に強誘電性液晶(チッソ製CS1029)を毛管法で注入し、冷却後に接着剤で封止して液晶層18を形成した。電極対14で挟まれた領域が、入射光をシフトさせる有効面積となる。入射側等電位部531と出射側等電位部551との対向した領域を入射側抵抗体層53及び出射側抵抗体層55の外部でドータイトを用いて電気的に接続した。
有効面積内の複数個所におけるシフト量の測定を行ったところ、シフト量の平均値は約2.5μmであり、有効面積全面でのばらつきは5%以内であった。入射側等電位部531の直上や近傍を避けた場合のばらつきも5%以内であった。入射側等電位部531及び出射側等電位部551を設けることにより液晶層18に印加される電界が均一化してシフト量のばらつきが減少することは明らかである。また、誘電体層を設けたことにより、入射側等電位部531及び出射側等電位部551の直上や近傍の急激な電位勾配の変化を鈍らせることができ、電界の均一性が増した。さらに、入射側等電位部531及び出射側等電位部551の積層構造を同一材料で形成しているため、酸化スズとITOを用いた場合と異なり、入射側等電位部531及び出射側等電位部551に起因する光の散乱や回折は観測されなかった。
第6の実施形態の画像表示装置6は、図6の構成図に示すように原画像表示部60と光偏向デバイス61と投射レンズ62とスクリーン63と表示制御部64とを備える。
原画像表示部60は、光源600と拡散板601とマイクロレンズアレイ602と画像表示素子603とを有する。光源600は、2次元アレイ状に配列したRGB3色のLEDを高速に切り替えて各色の照明光を出射する。拡散板601は照明光を均一化し、マイクロレンズアレイ602は均一化された照明光の集光率を高めて画像表示素子603の各画素に入射させる。画像表示素子603は、水平走査方向及び垂直走査方向に2次元に画素を固定して配列した透過型液晶表示素子で構成され、照明光を空間光変調して一定の解像度の画像光を出射する。なお、液晶表示素子に照射する光の色を高速に切り替えてカラー表示を行うフィールドシーケンシャル方式の液晶表示素子を用いる画像表示部について説明するが、原画像表示部は他の構成により画像を表示してもよい。
光偏向デバイス61は、直線偏光板610と第1光偏向素子611と偏向面回転素子612と第2光偏向素子613とを有する。直線偏光板610は、原画像表示部60から出射される画像光を水平走査方向に沿った直線偏光に変換する。なお、原画像表示部60から出射される画像光が既に水平走査方向に直線偏光されていれば、直線偏光板610はなくてもよい。第1光偏向素子611は、電圧V1を印加されると水平走査方向に直線偏向して入射する画像光を画像表示素子603の水平走査方向の一方にシフト量d1だけシフトして出射し、逆極性の電圧-V1を印加されると逆方向にシフト量d1だけシフトして出射する。第1光偏向素子611のシフト量d1は、画像表示素子603の水平走査方向の画素ピッチの半分である。
偏光面回転素子612は、第1光偏向素子611と第2光偏向素子612との間に設けられて、第1光偏向素子611から出射される直線偏光を90度回転させて垂直走査方向に沿った直線偏光に変換して第2光偏向素子612に入射させる。第2光偏向素子613は、電圧V2を印加されると垂直走査方向に直線偏向して入射される画像光を垂直走査方向の一方にシフト量d2だけシフトして出射し、逆極性の電圧-V2を印加されると逆方向にシフト量d2だけシフトして出射する。第2光偏向素子613のシフト量d2は、画像表示素子603の垂直走査方向の画素ピッチの半分である。
光偏向デバイス61は、第1光偏向素子611に印加する電圧V1及び電圧-V1、第2光偏向素子613に印加する電圧V2及び電圧-V2の組み合わせの4つのうちからいずれかを選択して、第1光偏向素子611と第2光偏向素子613とに同時に電圧を印加されることにより、原画像表示部60から出射される画像光を画像表示素子603の画素配列の対角線の4方向のいずれかにシフトさせる。
投射レンズ62は、光偏向デバイス61でシフトされた画像光を拡大してスクリーン63に投射する。表示制御部64は、光源600を点灯させ、画像表示素子603に画像を表示させ、光偏向デバイス61に電圧を印加して画像光のシフト方向を制御し、光源600と画像表示素子603と光偏向デバイス61とを同期制御する。
最終的に表示される1フレームの画像は、あらかじめ全画素を水平方向及び垂直方向に2ラインごとに区切り4画素ごとの画素群に分け、各画素群内の4つの位置の画素ごとにまとめた4つの画像に分割して処理される。1フレームの画像を表示する画像信号の画面フィールドは、分割された画像単位に4つのサブフィールドに分割されている。さらに、各サブフィールドの画像はRGBの3つに分割されている。表示制御部64は、図9の信号図に示すように、光源600のLEDの色を順に切り替えながら、画像表示素子603にサブフィールドごとにRGB3色の画像を順次表示させるとともに、各サブフィールドの3色分の画像を表示するごとに光偏向デバイス61に印加する電圧を切り替えてシフト方向を4方向から選択し、各画素を各画素群内の本来の位置に配置させる。スクリーン63には、画像表示素子603の画素数を水平走査方向及び垂直走査方向に倍増した高解像度の画像が表示される。
この画像表示装置6によれば、水平走査方向及び垂直走査方向のみかけ上の画素数を倍増することにより、使用する画像表示素子603の解像度よりも高精細な画像を表示できる。光偏向デバイス61に光偏向素子1を用いることにより、画像全体にわたって均一なシフト量を得ることができ、表示する画像領域全体にわたって高精細な画像を得られる。なお、光偏向素子は本発明のいずれの光偏向素子であってもよい。
具体的に、画像表示素子として対角0.9インチXGA(1024×768ドット)、縦横の画素ピッチ約18μm、画素の開口率約50%であるポリシリコンTFT液晶パネルを用い、光偏向素子のスペーサの厚さを90μmとしてシフト量約9μmに設定した。偏光面回転素子として、2枚の薄いガラス基板(7cm×9cm、厚さ0.15mm)上にポリイミド系の配向材料をスピンコートして約0.1μmの配向膜を形成し、アニール処理後にラビング処理を行い、8μm厚のスペーサを周辺部に挟んでラビング方向が直交するように張り合わせたセルの中に、誘電率異方性が正のネマチック液晶にカイラル材を適量混合した材料を常圧下で注入して液晶分子の配向を90度捻じったTN液晶セルを用いた。表示制御部64は、スクリーン63に最終的に表示させる画像のフレーム周波数を60Hzとし、サブフィールド周波数をフレーム周波数の4倍の240Hzとし、サブフィールドごとに3色の画像を表示する周波数をサブフィールド周波数の3倍の720Hzとした。表示制御部64は、パルスジェネレータと高速パワーアンプから周波数120Hz、+2000Vと-2000Vのピークをもつ矩形波の駆動電圧を、第1光偏向素子611と第2光偏向素子613とに位相を90度ずらして印加した。スクリーン63には、水平走査方向及び垂直走査方向の2方向にみかけの画素数が増加して解像度を4倍とした高精細な画像を表示できた。本発明の光偏向素子を用いた画像表示装置6により、画像光を画像表示領域全体で均一にシフトできた。