JP2008310161A - 光偏向素子、および画像表示装置 - Google Patents

光偏向素子、および画像表示装置 Download PDF

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由希子 安部
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Abstract

【課題】画像表示装置に用いる光偏向装置において、複数のライン状電極に段階的に異なる電位を与えて液晶内に水平電界を与えるが、ライン状電極に沿って液晶の配向が乱れたり白濁が生じたりする現象がある。電圧を印加してこの素子を駆動すると、白濁が更にライン状に伸びていく場合がある。白濁はライン状電極のエッジ部で発生しやすく、原因の一つは、ライン状電極の形成部と非形成部の段差にあると考えられる。
【解決手段】基板上にライン状電極を複数並べ、各電極の端部付近を抵抗膜で連結して抵抗膜の両端に所定の電位を与える。ライン状電極の上には導電性中間層を設け、さらに、その上に配向制御層を設ける。隣り合うライン状電極間にある導電性中間層による抵抗値Riは同じ電極間を結ぶ抵抗膜の抵抗値Rrの10倍以上になるよう設定する。これにより、液晶内の電位勾配が緩やかな傾斜になり、白濁問題が解消される。
【選択図】図3

Description

本発明は、基板面に略水平な電界によって液晶を駆動する光学素子、入射光の光路をシフトさせて出射する光偏向素子、および光偏向素子を使用した画像表示装置に関する。
画像表示装置、あるいはプロジェクションディスプレイ、ヘッドマウントディスプレイなどの電子ディスプレイ装置に用いることのできる光偏向素子において、光損失をできるだけ小さくする工夫がなされている(例えば、特許文献1 参照。)。特許文献1に示された光偏向素子では、基板面に形成されたライン状電極群と抵抗体により、素子の有効領域内において基板面に略水平な電界を形成し、これによって液晶を駆動する。ここで、有効領域とは、素子を通過した光が所定の量だけ正常にシフトされる領域を指す。ライン状電極は基板面上の有効領域全体を含む領域に設けられ、各電極には薄膜抵抗体によって段階的に異なる電位が与えられ、この離散的な電位勾配によって水平電界が発生する。
本発明者らの検討により、上記の構造の光偏向素子において、ライン状電極に沿って液晶の配向が乱れたり白濁が生じたりする現象がしばしばみられることが明らかとなった。また、電圧を印加してこの素子を駆動すると、白濁が更にライン状に伸びていく場合がある。白濁はライン状電極のエッジ部で発生しやすく、原因の一つは、ライン状電極の形成部と非形成部の段差にあると考えられる。電圧印加時に白濁が成長する現象は、ライン状電極の形成部のみに離散的な電位を与えていることによって生じる電界の不均一性に起因する。液晶の配向不良や白濁の発生は、素子の光学特性を劣化させ、更に白濁の面積が広がれば有効領域において正常な光偏向が行えなくなってしまう。
ガラスや樹脂などの誘電体層を液晶層とライン状電極形成面との間に設けて不連続な電位分布を鈍らせ、液晶層内での電界を均一にする方法が示された例がある(例えば、特許文献2 参照。)。この方法によると、電極の形成部と非形成部の境界における電位の急峻な変化が抑えられるため、駆動時の白濁の成長抑制には効果がある。しかし、ライン状電極間の基板面の電位は浮遊した状態であることから、ライン状電極の配置に対応した電界の不均一性の発生は防ぐことができない。これに起因して、有効領域内であっても光の偏向量が一定とならなかったり、変調された電界分布に対応して液晶に幾何学的なパタンのドメインが形成されて素子の光学特性が劣化したりすることがわかっている。
特開2004−286938号公報 特開2003−98502号公報
本発明は、光偏向量の均一性を確保し、光学特性の劣化なしに、液晶の配向不良や白濁の発生を抑制することを目的とする。
請求項1に記載の発明では、絶縁性を有する一対の基板と、該各基板面上に形成された少なくとも1条の抵抗膜と、該抵抗膜に電圧を印加するための一対の電極と、前記基板面上に形成され、少なくとも一部において前記抵抗膜に電気的に接続された複数のライン状の電極とを有し、一定間隔で対向させて配置した前記一対の基板の間隔内にキラルスメクチックC相の液晶層を有し、該液晶層に接し、該液晶層の層法線方向が前記基板面に対して略垂直となるよう配向を制御する配向制御層を有する光偏向素子において、少なくとも光路を含む領域では前記ライン状電極が形成された前記基板面と前記配向制御層との間に導電性の中間層を有し、任意の隣り合うライン状電極間に形成された導電性中間層の抵抗値Riが、同ライン状電極間に形成された抵抗膜の抵抗値Rrの10倍以上であり、且つ、前記導電性中間層の表面抵抗率が1012 Ω/□以下であることを特徴とする。
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の光偏向素子において、前記導電性中間層が無機膜であることを特徴とする。
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の光偏向素子において、前記導電性中間層が金属酸化物を含むことを特徴とする。
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の光偏向素子において、前記導電性中間層が多孔質膜であることを特徴とする。
請求項5に記載の発明では、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の光偏向素子において、前記導電性中間層が多孔質ITO(スズ添加酸化インジウム)であることを特徴とする。
請求項6に記載の発明では、請求項1に記載の光偏向素子において、前記導電性中間層が導電性微粒子を含むことを特徴とする。
請求項7に記載の発明では、請求項1ないし6に記載の光偏向素子を有する画像表示装置であって、画像情報に従って光を制御可能な複数の画素が2次元的に配列した画像表示素子と、前記画像表示素子を照明する照明光学系と、前記光偏向素子と、前記画像表示素子から出射された画像光を偏向して投影する投影光学系とを有し、前記光偏向素子は、画像表示素子と投影光学系との間に設けられている画像表示装置を特徴とする。
本発明によれば、ライン状電極に沿って発生する液晶の配向不良を防止するこちょができる。
図1ないし3は本発明を適用した光偏向素子の構成図である。図1は平面図、図2は図1の破線A−Aにおける断面図、図3は図1の点線B−Bにおける断面図である。
各図において符号1は光偏向素子、2は第一の基板、3は第二の基板、4はスペーサ、5はライン状電極、6は有効領域、7は導電性中間層、8は配向制御層、9は液晶層、10は抵抗膜、11は電源、12は水平電界をそれぞれ示す。
光偏向素子1は、透明で絶縁性を有する第一の基板2と第二の基板3が、スペーサ4を介して対向配置させて設けられている。第一の基板2の内面には複数本のライン状電極5がほぼ等間隔に形成されている。ライン状電極群5は、素子の有効領域6内に設けられているので、透光性の高い材料で形成することが望ましい。基板2のライン状電極形成面には、導電性中間層7と配向制御層8が積層されている。第二の基板3の内面にも同様にライン状電極5、導電性中間層7、配向制御層8が形成されている。
スペーサ4によって厚さを設定された二枚の基板間隔内にはキラルスメクチックC相を形成可能な液晶層9が充填されている。ここで、配向制御層8は液晶分子を配向制御層に対して垂直方向に配向させる垂直配向膜であり、キラルスメクチックC相を形成する液晶分子の層構造の層法線方向が基板面に対してほぼ垂直となるように構成されている。
ライン電極群5を電気的に直列に接続するための抵抗膜10は、ライン状電極5の端部表面に沿って帯状に積層されている。抵抗膜10が高い透光性を有する材料からなる場合は有効領域6内の一部にこれを形成しても良いが、透光性が低い場合は有効領域外に配置することが望ましい。ライン状電極群5のうち両端の2本は電源11に接続されている。電圧を印加すると、隣接するライン電極では抵抗膜10により電圧値の減衰が起こり、各ライン状電極間に電位勾配が発生する。この電位勾配により、液晶層9の内部に水平電界12が発生する。
印加する電圧の極性を切換えることで、各ライン状電極間には逆向きの電位勾配を与えることができ、水平電界12の方向を切換えられる(同図破線矢印)。このような液晶層内部の水平電界方向の切換えで、液晶ダイレクタの方向を変化させて液晶層を通過した光の光路を切換えることができる。図2において、基板に垂直な方向に入射した光は、電界方向の切換えによって、第一出射光と第二出射光の光路をとる。ライン状電極の本数やライン幅、ライン間隔、各ライン電極間の電位差などは所望の光路サイズや光路偏向量、液晶材料などに基づき適宜設定される。
ここで、液晶層9に関して詳細に説明する。「スメクチック液晶」は液晶分子の長軸方向を層状に配列してなる液晶層である。このような液晶に関し、上記層の法線方向(層法線方向)と液晶分子の長軸方向とが一致している液晶を「スメクチックA相」、法線方向と一致していない液晶を「スメクチックC相」と呼んでいる。スメクチックC相よりなる強誘電液晶は、一般的に外部電界が働かない状態において各層毎に液晶ダイレクタ方向が螺旋的に回転しているいわゆる螺旋構造をとり、「キラルスメクチックC相」と呼ばれる。また、キラルスメクチックC相反強誘電液晶は各層毎に液晶ダイレクタが対向する方向を向く。これらのキラルスメクチックC相よりなる液晶は、不斉炭素を分子構造に有し、これによって自発分極しているため、この自発分極Psと外部電界Eにより定まる方向に液晶分子が再配列することで光学特性が制御される。なお、本実施の形態等では、液晶層9として強誘電液晶を例にとり光偏向素子の説明を行うが、反強誘電液晶の場合にも同様に使用することができる。
キラルスメクチックC相よりなる強誘電液晶の構造は、主鎖、スペーサ、骨格、結合部、キラル部などよりなる。主鎖構造としてはポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリシロキサン、ポリオキシエチレンなどが利用可能である。スペーサは分子回転を担う骨格、結合部、キラル部を主鎖と結合させるためのものであり、適当な長さのメチレン鎖等が選ばれる。また、カイラル部とビフェニル構造など剛直な骨格とを結合する結合部には−COO−結合等が選ばれる。キラルスメクチックC相よりなる強誘電液晶9は配向制御層8により基板面に垂直に分子螺旋回転の回転軸が向いており、いわゆるホメオトロピック配向をなす。配向膜としては、シランカップリング剤や市販の液晶用垂直配向材などを用いることが出来る。
本発明の光偏向素子は、有効領域内において、ライン状電極が形成された基板面と配向制御層との間に導電性を有する中間層7を設けたことを特徴とする。
配向制御層8は、液晶配向剤の基板面への塗布・焼成や、無機材料の蒸着やスパッタ等によって形成されるが、いずれの場合もその表面にはライン状電極5の形状に相当した段差が形成される。この段差によって液晶の配向状態が乱され、ひどい場合は白濁が発生することが以前から問題となっていた。本発明の光偏向素子では、ライン状電極5が形成された基板面に対して導電性中間層7と配向制御層8とを積層しているため、配向制御層8の段差形状の断面は中間層を設けないときと比べてより台形状になり、液晶の配向乱れが生じにくくなる。
本発明の光偏向素子では、導電性中間層7に適切な導電性を持たせることで、より均一な電界の発生を可能にしている。すなわち、中間層に導電性を持たせると、中間層にも微量の電流が流れるために電位が連続的になり、電界の均一性が向上して白濁の成長を防ぐことができる。中間層の表面抵抗率が1012 Ω/□以下のとき、電位を連続的にするのに十分な電流が流れる。ここで、ライン状電極5の電位は抵抗膜10に電流が流れることによって生じる電圧降下量で定められるべきだが、中間層の抵抗が低過ぎるとこの電位が変化してしまう。任意の隣り合うライン状電極間の抵抗値Rは、同ライン状電極間に形成された抵抗膜10の抵抗値Rrと、同ライン状電極間に形成された導電性中間層7の抵抗値Riの並列抵抗値に略等しいが、RiがRrの10倍以上であれば、中間層の抵抗値の影響が無視できて抵抗値Rが主にRrによって定められるため、所定の電位をライン状電極に与えることができる。
導電性中間層は光が通過する領域に設けられるため、強い光に晒されても特性に劣化がないことが望ましい。無機膜でこれを形成すれば、十分な耐光性・耐久性が得られる。
中でも、金属酸化物材料が導電性中間層の材料に特に適している。金属酸化物材料は十分な透光性を有するものが多く、電気的性質も形態や形成方法によって広い範囲で制御することができるため、所望の透過率や抵抗値を得やすい。
多孔質膜で導電性中間層を形成すると、液晶の配向性およびその耐久性が向上する効果がある。これは、多孔質な膜にはその表面形状の効果により液晶の配向を基板面に対して垂直に規制する効果があり、そのような多孔質膜を配向制御層の下地とすることで、配向制御層の液晶層と接する面にも凹凸が形成され、これにより垂直配向規制力が高まるためである。よって、液晶の配向状態が安定化し、耐久性が高まる。また、多孔質膜は、多孔質の度合いによって抵抗を制御できるため、所望の抵抗値が得やすい。
特に、多孔質ITOが導電性中間層の材料に適している。ITOは電気的性質の安定性が比較的良く、抵抗値の変動が小さく抑えられて素子の動作が安定する。
或いは、導電性微粒子を含む膜で導電性中間層7を形成しても良い。導電性の微粒子を分散させた膜では、微粒子濃度の調節によって容易に所望の抵抗値が実現できる。キャリア数や移動度(膜の結晶性)を制御して抵抗値を調整した場合と比べて、微粒子の濃度は温度や周囲の雰囲気等の影響を受けにくいため、抵抗値の変動が少ない。また、粒子の凹凸に起因した表面形状の効果も得られるため、液晶の配向状態が安定化し、耐久性が高まる。
図4は光偏向素子を用いた画像表示装置の概念図である。
同図において符号30は画像表示装置、31は光源、32は拡散板、33はコンデンサレンズ、34は透過型液晶パネル、35は光偏向手段、36は投射レンズ、37は光源駆動制御部、38はパネル駆動制御部、39は光偏向駆動制御部、40は主制御部、41はスクリーンをそれぞれ示す。
光偏向素子1を使用した画像表示装置について説明する。画像表示装置30の光学系は、LEDランプを2次元アレイ状に配列した光源31と、光源31から出射した光の光路に沿って配置された拡散板32とコンデンサレンズ33と透過型液晶パネル34と、光偏向素子1又は光偏向素子2を有する光偏向手段35および投射レンズ36が順に配設されている。駆動手段は、光源31を駆動する光源駆動制御部37と、液晶パネル34を駆動するパネル駆動制御部38および光偏向手段35を駆動する光偏向駆動制御部39および主制御部40を有する。
この画像表示装置30でスクリーン41に画像を投影するときは、光源駆動制御部37で制御されて光源31から出射された照明光は拡散板32により均一化された照明光となりコンデンサレンズ33に入射する。コンデンサレンズ33に入射した光はコンデンサレンズ33より、パネル駆動制御部38で光源31と同期して制御される液晶パネル34をクリティカル照明する。この透過型液晶パネル34は入射した照明光を空間光変調して画像光として光偏向手段35に入射し、この光偏向手段35は入射した画像光が画素の配列方向に任意の距離だけシフトして投射レンズ36に入射する。投射レンズ36は入射した光を拡大してスクリーン41に投射する。
このようにして光偏向手段35により画像フィールドを時間的に分割した複数のサブフィールド毎の光路の偏向に応じて表示位置がずれている状態の画像パターンをスクリーン41に表示させることにより、液晶パネル34の見掛け上の画素数を増倍して表示することができる。この光偏向手段35によるシフト量は液晶パネル34の画素の配列方向に対して2倍の画像増倍を行うことから、画素ピッチの1/2に設定される。このシフト量に応じて液晶パネル34を駆動する画像信号をシフト量分だけ補正することにより、画素数の少ない液晶パネル34を用いても見掛け上高精細な画像を安定して表示することができる。この際、光偏向手段35として、前述した実施の形態のような光偏向素子を用いているので、鮮明な表示画像が安定して得られる。
大きさ5cm×6cm、厚さ1mmのガラス板2枚に対し、一方の面上の光路を含む領域に膜厚500Åのライン状電極を形成した。一本のライン状電極の幅は10μmで、ピッチを0.5mmとして80本配置した。次に、ライン状電極を電気的に直列につなぐ領域に、サーメット抵抗膜を形成した。各ライン状電極に対し、それと隣り合うライン状電極との間での抵抗値を測定したところ、平均250kΩであり、分布は±3%以内におさまっていた。ライン状電極を形成している導電膜と比べてサーメット抵抗膜の方が桁違いに高抵抗であるため、ここで測定された抵抗値にはほぼサーメット抵抗膜のみが寄与しているととらえてよい。
次に、光路を含む4.2cm角の領域のライン状電極形成面に対し、ITO膜を500Åの厚さでマグネトロンスパッタ法により成膜し、これを導電性中間層とした。ターゲットにはスズを5%含むITO焼結体を用い、成膜中のアルゴンガスと酸素の流量比は1:1とした。成膜温度は特に制御しない。この後、再度隣り合うライン電極間の抵抗値を測定したところ、導電性中間層形成前と比べて約2%減少していた。導電性中間層をライン状電極に積層させたことで、サーメット抵抗膜と導電性中間層が並列に接続されたとみなすことができ、抵抗値が2%減少したことから、ライン状電極間の導電性中間層の抵抗値はサーメット抵抗膜の約50倍であることがわかる。また、導電性中間層の表面抵抗率は約1×10 Ω/□であった。
続いて、導電性中間層の表面を垂直配向剤で処理して配向制御層を形成した。
片方の基板上の約4cm角の領域の外側の2辺に、50μm粒子径のスペーサを混入した熱硬化接着剤を塗布した。両基板のライン状電極が全て液晶層を挟んで向かい合うようにして基板を貼り合わせ、所定の温度で加熱して接着剤を硬化させた。素子の有効領域が4cm×4cmとなるように、スペーサ部材、接着剤、抵抗膜は有効領域外に配置してある。
次に、二枚の基板間に強誘電性液晶を毛管法で注入し、図1に類似の光偏向素子を作製した。両端の電極の端部に半田により導線を取り付け、交流電源に接続した。
光偏向素子の入射面側に5μm幅のライン/スペースのマスクパターンを設け、このマスクパターンを通して直線偏光で照明した。直線偏光の向きは、電極の長手方向と同一に設定した。マスクパターンを透過した光を顕微鏡で観察したところ、無電界時にはマスクパターンがそのまま観察された。
電極間に電圧を印加すると液晶層に水平電界が形成され、この電界によって液晶層の平均的な光学軸の傾斜方向が変化して光偏向が実現する。
一方の電極を接地し、他方に+2400Vの電圧を印加したところ、ライン/スペースパターンが電極の長手方向に約2.5μmシフトして観察された。マスクパターンや光偏向素子、顕微鏡は機械的に静止しているので、電気的に光路がシフトしていることが確認できた。もう一方に−2400Vの電圧を印加したところ、逆方向に約2.5μmシフトした。周波数60Hz、振幅±2400Vの矩形波電圧を印加したところ、ピーク対ピークで約5μmの光路シフトが確認できた。ライン/スペースの幅が5μmであるため、あたかもラインとスペースの明暗が反転するように観察された。すなわち、5μm幅のスペース部分をライトバルブのピクセルとすれば、一つのピクセルが見かけ上2つのピクセルに増倍することを確認できた。
この素子における液晶の配向特性は極めて良好であり、初期的に白濁等は一切なかった。これは、ライン状電極の段差が存在する基板面に対し、導電性中間層と配向制御層を積層することで配向制御層の段差形状がより台形状になり、液晶の配向に影響を与えにくくなったためと考えられる。また、素子を2時間連続で駆動させたが、液晶の状態に変化はなく、正常な光偏向を行うことができていた。すなわち、導電性中間層によって連続的な電位が形成されて電界が均一となり、白濁の発生が抑制できることが示された。
〔比較例1〕
導電性中間層を形成しない以外は実施例1と同様にして、光偏向素子を作製した。
作製した素子の配向状態を確認したところ、有効領域の端部においてライン状の白濁が見られた。顕微鏡で観察したところ、ライン状電極のエッジに相当する部分の液晶の配向性が乱れており、段差が切り立っているために液晶がうまく配向していないことがわかる。
実施例1と同様に電圧を印加して素子を駆動したところ、初期的に存在していた白濁が更にラインが伸びるように成長する現象がみられた。これは電界の不均一性に起因する。
酸化スズと酸化インジウムの前駆体をイソプロパノールに分散させた塗布液を基板上に塗布、焼成することで導電性中間層を形成した以外は、実施例1と同様に光偏向素子を作製した。
焼成時に溶媒が飛ぶために、このようにして形成されるITO膜は多孔質となる。この多孔質な導電性中間層の表面抵抗率は約1×1010Ω/□であり、これを形成する前後で隣り合うライン状電極間抵抗値に変化はなかった。サーメット抵抗膜と比べて非常に抵抗が高く、その寄与が無視できていることがわかる。
液晶の配向状態に関して経時劣化や駆動による劣化は見られず、耐光性・耐久性も高い素子が得られた。導電性中間層に積層された配向制御層の表面には、中間層の多孔質形状を反映した凹凸が形成されており、表面形状の効果で液晶の配向がより安定化されている。
導電性中間層を、ATO(アンチモン添加酸化スズ)微粒子が分散した塗布液を基板上に塗布、焼成して形成した以外は、実施例1と同様に光偏向素子を作製した。導電性中間層の抵抗は、塗布液中のATO微粒子濃度を調整することで容易に変えることができる。ATO微粒子濃度を10%としたところ、導電性中間層の表面抵抗率は約1×1010Ω/□となった。
液晶の配向状態に関して経時劣化や駆動による劣化は見られず、耐光性・耐久性も高い素子が得られた。導電性中間層に積層された配向制御層の表面には、ATO微粒子の形状を反映した凹凸が形成されており、表面形状の効果で液晶の配向がより安定化されている。
図4のような画像表示装置を作成した。画像表示素子としてXGA(1024×768ドット)液晶パネルを用いた。また、画像表示素子の光源側にマイクロレンズアレイを設けて照明光の集光率を高める構成とした。本実施例では、光源としてRGB三色のLED光源を用い、上記の一枚の液晶パネルに照射する光の色を高速に切換えてカラー表示を行う、いわゆるフィールドシーケンシャル方式を採用している。本実施例では、画像表示のフレーム周波数が60Hz、ピクセルシフトによる4倍の画素増倍のためのサブフィールド周波数が4倍の240Hzとする。一つのサブフレーム内をさらに3色分に分割するため、各色に対応した画像を720Hzで切換える。液晶パネルの各色の画像の表示タイミングに合わせて、対応した色のLED光源をON/OFFすることで、観察者にはフルカラー画像が見える。
光偏向素子の基本構成は実施例2と同様であるが、スペーサの厚さを90μmとして、光路シフト量が約9μmになるように設定した。ライン電極の電源接続部に、±2400Vの矩形波電圧を印加できるようにした。この素子を二枚用い、入射側を第一の光偏向素子、出射側を第二の光偏向素子とした。互いの電極の方向が直交し、画像表示素子の二次元の画素の配列方向に一致するように配置した。さらに、第一および第二の光偏向素子の間に偏光面回転素子を設けた。偏光面回転素子により第一の光偏向素子からの出射光の偏光面が90度回転し、第二の光偏向素子の偏向方向に一致する。第一偏向素子、偏光面回転素子、第二偏向素子からなる光偏向装置を液晶ライトバルブの直後に設置した。また、本実施例では液晶表示素子からの出射光が既に直線偏光であり、その偏光方向が第一の光偏向素子の光偏向方向と一致するように配置されているが、光偏向素子への入射光の偏光度を確実にするために、光偏向素子の入射面側に直線偏光板を設けた。
光偏向素子を駆動する矩形波電圧の周波数を120Hzとし、二枚の縦と横の位相を90度ずらして、4方向に画素シフトするように駆動タイミングを設定した。画像表示素子に表示するサブフィールド画像を240Hzで書き換えることで、縦横二方向に見かけ上の画素数が4倍に増倍した高精細画像が表示できた。
光偏向素子において、液晶の配向性が改善されたことで、表示される画像の特性が向上し、耐光性・耐久性も高められた。
本発明を適用した光偏向素子の平面構成図である。 本発明を適用した光偏向素子の断面構成図である。 本発明を適用した光偏向素子の断面構成図である。 光偏向素子を用いた画像表示装置の概念図である。
符号の説明
1 光偏向素子
5 ライン状電極
7 導電性中間層
8 配向制御層
9 液晶層
10 抵抗膜
30 画像表示装置
39 光偏向駆動制御部

Claims (7)

  1. 絶縁性を有する一対の基板と、該各基板面上に形成された少なくとも1条の抵抗膜と、該抵抗膜に電圧を印加するための一対の電極と、前記基板面上に形成され、少なくとも一部において前記抵抗膜に電気的に接続された複数のライン状の電極とを有し、一定間隔で対向させて配置した前記一対の基板の間隔内にキラルスメクチックC相の液晶層を有し、該液晶層に接し、該液晶層の層法線方向が前記基板面に対して略垂直となるよう配向を制御する配向制御層を有する光偏向素子において、少なくとも光路を含む領域では前記ライン状電極が形成された前記基板面と前記配向制御層との間に導電性の中間層を有し、任意の隣り合うライン状電極間に形成された導電性中間層の抵抗値Riが、同ライン状電極間に形成された抵抗膜の抵抗値Rrの10倍以上であり、且つ、前記導電性中間層の表面抵抗率が1012 Ω/□以下であることを特徴とする光偏向素子。
  2. 請求項1に記載の光偏向素子において、前記導電性中間層が無機膜であることを特徴とする光偏向素子。
  3. 請求項1または2に記載の光偏向素子において、前記導電性中間層が金属酸化物を含むことを特徴とする光偏向素子。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1つに記載の光偏向素子において、前記導電性中間層が多孔質膜であることを特徴とする光偏向素子。
  5. 請求項1ないし4のいずれか1つに記載の光偏向素子において、前記導電性中間層が多孔質ITO(スズ添加酸化インジウム)であることを特徴とする光偏向素子。
  6. 請求項1に記載の光偏向素子において、前記導電性中間層が導電性微粒子を含むことを特徴とする光偏向素子。
  7. 請求項1ないし6に記載の光偏向素子を有する画像表示装置であって、画像情報に従って光を制御可能な複数の画素が2次元的に配列した画像表示素子と、前記画像表示素子を照明する照明光学系と、前記光偏向素子と、前記画像表示素子から出射された画像光を偏向して投影する投影光学系とを有し、前記光偏向素子は、画像表示素子と投影光学系との間に設けられていることを特徴とする画像表示装置。
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JPH10221703A (ja) * 1997-02-07 1998-08-21 Citizen Watch Co Ltd 効率的な液晶の波面変調の為の電極構造
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