JP4666827B2 - 接地電位差抑制装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電源接地、信号接地、避雷針接地、建物接地等の各種接地が混在するビルにおいて、外部から侵入するノイズ電流やサージ電流による悪影響を除去することができる接地電位差抑制装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図5に示す如く、構内交換機PBXや中間配線盤MDF、パソコンPC等が稼働しているビルには、電源接地、信号接地、避雷針接地、建物接地等の各種接地が混在している。この場合、電源接地や建物接地等から侵入したノイズ電流が通信ケーブルを迷走して通信障害を引き起こすおそれがあるため、各種接地をビルのメッシュ接地により一点で接地することが行われている。
なお、図5において、RECTは電源用の整流器である。
【0003】
図5に示した接地方式はノイズ対策としては十分であるものの、突発的な雷サージが発生した場合にサージ迷走電流が発生して通信機器の誤動作や故障を引き起こすことがあり、改善の余地が残されている。
【0004】
このような観点から、サージ対策用の接地方式として、図6に示す方式が知られている。
この方式は、ビルの各階ごとに各機器を一括して接地するアースウィンドウEW1〜EW3を設け、これらのアースウィンドウEW1〜EW3をビルのメッシュ接地に一点で接続(一括接地)する方式である。
【0005】
図6に示すサージ対策用接地方式によると、各階の機器の接地を最短距離で結ぶことができるので、サージ侵入時に各機器間の電位差が発生しにくく、通信ケーブルや電源ケーブルを経由するサージ迷走電流の発生をある程度防止することができる。
なお、欧州特許出願公開第185777号明細書(EP185777A1)の第5頁第6行〜第8頁第12行、第2図,第4図等には、複数の通信線や接地線をダイオードを介して過電圧保護素子に接続し、前記通信線や接地線を雷サージ等の過電圧から保護するようにした安全回路システムが開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、サージ侵入時に接地線に発生する電圧について考察する。
まず、一般に、接地線としてはIVケーブル(ビニル絶縁電線)が使用されている。このIVケーブルのインダクタンスは一般に1.5〔μH/m〕程度であり、線材の断面積による相違はほとんどないと言える。この接地線1〔m〕にごく一般的な10/200〔μs〕で1〔kA〕の誘導雷サージ電流が流れると、接地線の両端に発生する電圧の大きさは以下のように推定することができる。
【0007】
すなわち、上記誘導雷サージ電流は約10〔μs〕でピーク値まで立ち上がることから、1周期が10×4=40〔μs〕の正弦波にほぼ近く、その周波数は約25kHzとなる。
従って、接地線の両端に発生する電圧の大きさは、
Figure 0004666827
となる。
【0008】
仮に、サージ電流が外線ケーブルから侵入し、中間配線盤MDFに実装されている保安器が動作した場合、図7に示すように中間配線盤MDF及び保安器からメッシュ接地まで専用の接地線が敷設されているとすると、接地線の長さが20〔m〕の時にはその両端に、
235〔V/m〕×20〔m〕=4.7〔kV〕
の電圧が接地電位差として発生することになる。これにより、別に専用接地線を接続してある交換機PBXの加入者回路基板と接地(交換機接地端子)との間には4.7〔kV〕を超える異常電圧が加わることになり、交換機PBXを破損したり人体に危険を及ぼすおそれがあった。
【0009】
そこで、理想的なサージ対策用接地として、図8に示す如く中間配線盤MDFの接地端子に交換機PBXの信号接地端子を接続することにより、中間配線盤MDFの接地線の長さに関わらず、サージ侵入時に交換機PBXに加わる異常電圧を保安器の残留電圧(保護性能電圧)のみとして交換機PBXを保護する対策が考えられている。
しかしながら、この接地方式の場合、交換機PBXが直接接地されないことから、耐ノイズ性能が低い交換機PBXでは、外線ケーブル等から侵入する常時ノイズによって伝送性能に支障をきたす可能性があり、サージ対策、ノイズ対策のすべてに有効な方式であるとは言えない現状である。
【0010】
そこで本発明は、サージ電流の侵入要因として各種の接地形態が密接に関係していることに着目してなされたものであり、その目的は、サージ電流、ノイズ電流の何れに対しても有効に作用して、機器の故障や通信障害等を確実に防止可能な接地電位差抑制装置を提供しようとするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1に記載した発明は、建物内に配置された通信機器、電源設備を独立接地方式によりそれぞれ接地してなる接地方式において、例えば後述の図1における第1及び第2のダイオードD1,D2からなる双方向素子WD1,WD2,WD3を接地線E1,E2,E3の数だけ備えると共に、所定の動作電圧が両端に印加された際に放電して導通するアレスタ等の放電素子Proを備え、各接地線同士(例えばE1とE2)を、一の双方向素子WD1内の第1のダイオードD1と、放電素子Proと、他の双方向素子WD2内のダイオードであって前記第1のダイオードD1と順方向接続される第2のダイオードD2と、からなる経路で接続したものである。
また、他の接地線同士(E1とE3,E2とE3)についても、同様に双方向素子内のダイオード及び放電素子Proを含む経路でそれぞれ接続したものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。まず、図1は本実施形態の基本的な構成を示す図である。
図1において、E1,E2,E3は例えばビル内の交換機PBXや中間配線盤MDX、電源設備等の接地線であり、これらの接地線E1,E2,E3はメッシュ接地(図示せず)に接続されている。各接地線E1,E2,E3には、第1及び第2のダイオードD1,D2を直列に接続した双方向素子WD1,WD2,WD3のダイオード同士の接続点が接続されていると共に、双方向素子WD1,WD2,WD3の各第1のダイオードD1のカソードが一括して接続され、かつ、各第2のダイオードD2のアノードが一括して接続されている。そして、第1のダイオードD1のカソードの一括接続点と第2のダイオードD2のアノードの一括接続点との間には、大容量のアレスタ等の放電素子Proが接続されている。
ここで、双方向素子WD1,WD2,WD3及び放電素子Proは、一種の高速・大電流トリガスイッチを構成している。
【0013】
上記構成によると、通常は、接地線E1,E2,E3にそれぞれ接続された各機器(図示せず)のノイズ対策用として、図5に示した接地方式と同様の独立したノイズ対策を採ることができる。つまり、放電素子Proの非動作時には、各接地線E1,E2,E3の間でダイオードが互いに逆方向に接続されているので、接地線E1,E2,E3による接地は相互に独立している。
【0014】
ここで、例えば外線ケーブルから機器にサージ電流が侵入した場合、接地線E1,E2,E3相互間の電圧が放電素子Proの動作電圧(例えば500〔V〕)を超えると、双方向素子WD1,WD2,WD3内のダイオードを介して放電素子Proが放電、導通する。これにより、1〔μs〕以下の短時間で本装置に接続されているすべての接地線E1,E2,E3が導通状態となり、各接地線の電位差を微小かつ均一にして通信機器や電源設備をサージから確実に保護することができる。
【0015】
次に、図2は、前記図7,図8と対応させて示した本実施形態の作用説明図である。図2において、10は本実施形態の接地電位差抑制装置であり、図1の双方向素子WD1,WD2,WD3及び放電素子Proから構成されている。
なお、図2では交換機PBXの接地線を図1のE1、中間配線盤MDFの接地線を図1のE2として示してあり、接地電位差抑制装置10はこれらの接地線E1,E2の間に接続される構成となっているため、図1における双方向素子WD3は不要である。実際には、接地線の数に応じた双方向素子の相互間に放電素子Proが接続されることになる。
【0016】
図2において、通常は図1の放電素子Proが不動作であるため抑制装置10は開放状態であり、各接地線E1,E2は独立して接地された状態である。しかし、外線ケーブルからのサージ電流の侵入によって接地線E1,E2の間に放電素子Proの動作電圧以上の電圧が発生すると、放電素子Proが放電、導通して図1の順方向接続されたダイオードを介し接地線E1,E2同士が接続されて同電位に保たれるため、電位差の発生を抑制する。
また、メッシュ接地側から侵入したサージに対しても、抑制装置10を介してサージ電流が流れ、各機器に悪影響を与える心配がない。
【0017】
更に、サージ電流の通過後は放電素子Proが速やかに動作を停止するので、抑制装置10は再び開放状態となって通常の独立接地状態に戻る。このため、外線ケーブル等から侵入するノイズをメッシュ接地により確実に除去することができる。
【0018】
図3は、接地線5回線分に対応させて双方向素子WD1〜WD5及び放電素子Pro等を実装した本実施形態の外観図((a)は平面図、(b)は正面図)である。CSはケーブルサポートを示す。また、図4は図3の等価回路図である。
図示されていないが、接地線の数に応じて双方向素子や端子台等を適宜増減、変更できるのは言うまでもない。
図3のような構造としてケースに収納することにより、全体を軽量かつコンパクトに形成することができ、壁面への取り付けも容易になる。
【0019】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、サージ電流の侵入に対して瞬時に応答し、通信機器や電源設備等のすべての接地を同時に接続して接地電位差を低減することができ、各機器への異常電圧の印加を防止して故障や動作不良を未然に防ぐことができる。特に、放電素子によりサージ電流や交流の異常電流に対する電流耐量を大きくとれるので、信頼性が高いシステムを実現することができる。
更に、通常時は各接地線が独立接地として作用するため、ノイズによる通信障害も抑制可能である等の効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の基本的構成図である。
【図2】本発明の実施形態の作用説明図である。
【図3】本発明の実施形態の外観図である。
【図4】本発明の実施形態の等価回路図である。
【図5】従来のノイズ対策用接地方式の説明図である。
【図6】従来のサージ対策用接地方式の説明図である。
【図7】サージ侵入時に接地線に発生する電圧の説明図である。
【図8】理想的なサージ対策用接地方式の説明図である。
【符号の説明】
WD1,WD2,WD3,WD4,WD5 双方向素子
D1,D2 ダイオード
Pro 放電素子
E1,E2,E3 接地線
PBX 構内交換機
MDF 中間配線盤
10 接地電位差抑制装置

Claims (1)

  1. 建物内に配置された通信機器、電源設備を独立接地方式によりそれぞれ接地してなる接地方式において、
    第1及び第2のダイオードからなる双方向素子を複数の接地線と同数備えると共に、所定の動作電圧が両端に印加された際に放電して導通する放電素子を備え、各接地線同士を、一の双方向素子内の第1のダイオードと、放電素子と、他の双方向素子内のダイオードであって前記第1のダイオードと順方向接続される第2のダイオードと、からなる経路で接続したことを特徴とする接地電位差抑制装置。
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