JP4665115B2 - 骨・関節疾患感受性遺伝子およびその用途 - Google Patents

骨・関節疾患感受性遺伝子およびその用途 Download PDF

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本発明は、変形性関節症などの骨・関節疾患(bone and joint diseases)に関連する遺伝子および該疾患と相関する該遺伝子内の多型の同定、並びにそれらに基づく骨・関節疾患の予防・治療、該疾患に対する遺伝的感受性の診断などに関する。
糖尿病・高血圧などの生活習慣病をはじめとする頻度の高いありふれた疾患(いわゆるcommon disease;CD)は、浸透率(penetrance;ある遺伝子に変異を有する個体がある疾患を発症する割合)の低い複数の疾患関連遺伝子の変異と、運動・栄養などの複数の環境因子との相互作用により発症に至る多因子性疾患であると考えられている。CDの疾患関連遺伝子の変異は頻度の高い遺伝子多型(common variant;CV)であり、健常者にも存在するが、患者における保有率が有意に高いものであるとの仮説(Common Disease-Common Variant (CD-CV) hypothesis)が提唱されている。有名な一例としては、アポリポ蛋白E遺伝子ε4における一塩基多型(Single Nucleotide Polymorphism;SNP)がアルツハイマー病の発症と相関することが知られている。
わが国では、2000年度から、ミレニアム・ゲノム・プロジェクトの一環として、ヒトゲノムの遺伝子領域にある約20万個のSNPを同定し(それらはJSNPデータベースとしてhttp://snp.ims.u-tokyo.ac.jp/上で公開されている)、これらのSNPについて代表的なCDとの相関を解析することにより、CDに対する感受性(易罹患性)を規定する遺伝子群を同定しようとする研究が進められており、既に心筋梗塞や関節リウマチのなり易さに関連する遺伝子が発見されている(非特許文献1,2)。
骨・関節の生活習慣病は、直接命に影響を及ぼすことは少ないが、痛みや歩行障害などのために日常生活動作(ADL)に支障をきたすことから、高齢者のQOLを損なう最大の原因となっている。また、これらの疾患は加齢とともに発症頻度が急増し且つ慢性に経過することから、国民医療経済にも重大な負担を課すこととなり、高齢化社会においては社会全体で克服すべき重要な課題である。世界保健機関(WHO)も21世紀の最初の10年を「骨と関節の10年(the Bone and Joint Decade;BJD)」と位置付けて骨・関節疾患の制圧に乗り出している。
変形性関節症(osteoarthritis;OA)は慢性の関節炎を伴う骨・関節疾患で、軟骨の退行変性により軟骨の破壊と骨や軟骨の増殖性変化をきたす病気である。その患者数は日本だけでも500万〜700万人にのぼり、60歳以上では、80%以上が膝・肘・股関節や脊椎に変形性関節症の症状を呈すると言われている、代表的なcommon diseaseである。現在のところ、OAの根本的な治療手段はなく、非ステロイド性消炎鎮痛剤やヒアルロン酸、ステロイド剤の投与など、痛みを抑制する対症療法が中心となっている。進行した場合、関節鏡視下手術・骨切り術・人工関節置換などの手術適応となるが、人工関節には寿命があるため55歳位まではこの手術を避けることが望ましいと考えられている。従って、関節の退行性変化を抑制する治療方法の開発が望まれている。
また、OAの診断法としてはX線検査しかないが、X線検査では発症前・発症初期の診断が不可能であり、より簡便且つ早期診断可能な診断法の開発も望まれている。
上記のCD-CV仮説に基づいてOAに対する感受性を規定する遺伝子を同定することは、OAの簡便な早期診断法および根本的な治療方法を開発する上で有用な情報を提供するものと期待される。しかしながら、現在のところ、OA感受性遺伝子として未だ確立されたものはない。欧米では、オックスフォード大学のJ. Loughlinらのグループをはじめとして、いくつかのグループからゲノムワイド連鎖解析によるOA感受性遺伝子座のマッピングに関する報告がなされているが(例えば、非特許文献3を参照)、再現性に乏しく、臨床応用に至っていないのが実状である。
OAの変化が主に骨及び関節軟骨にみられることから、従前、OA感受性遺伝子の研究は骨・関節軟骨の遺伝子が中心であった。しかし、これらの遺伝子の異常は、OAの原因であるとしても、その一面でしかない。
内反膝、臼蓋形成不全症などの関節の形態異常は、臨床上のOAの素因の1つであることはよく知られている。特に後者は、日本人の股関節OAの素因の大多数を占めている。また、遺伝性(単一遺伝子病)のOAである先天性脊椎骨端異形成症や多発性骨端異形成症では、股関節を中心に関節の形態異常を生じる。これらの事実は、関節の発生・形態形成に関与する遺伝子に起因して、OAが起こりうることを示唆している。
GDF5(Growth and Differentiation Factor 5; CDMP-1 (Cartilage Derived Morphogenetic Protein-1) とも呼ばれる)遺伝子は、関節の発生・形態形成に関与する遺伝子の一つで、TGFβスーパーファミリーに属し、BMP(Bone Morphogenetic Protein)サブファミリーのメンバーである。BMPは、元来、異所性に骨・軟骨を誘導する因子として同定されたが、現在では、細胞増殖、分化調節能を有し、初期発生にも関与すると目されている(非特許文献4)。
BMPサブファミリーの遺伝子異常が、骨・軟骨の異常をきたす種々の疾患の原因となっていることが知られている。BMP-5の自然変異マウスは、耳介、胸骨、肋骨の異形成を、BMP-11のノックアウトマウスは、四肢短縮、尾部短縮を生じる。一方、GDF5の自然変異マウスは、四肢短縮、手指欠損が特徴のbrachypodismとして知られている(非特許文献5)。また、ヒトにおけるGDF5の遺伝子異常として、Hunter-Thompson型Achromesomolic dysplasia(非特許文献6)、Grebe型 Chondrodysplasia、brachydactyly type Cなどが報告されている。
GDF5は2つのエクソンからなる5 kbpの比較的小さな遺伝子で、発生の過程で軟骨原基に発現する。この部分は、将来の関節領域となるため、GDF5は関節形成に重要な役割を担っていると考えられている。興味あることには、上述のGDF5の遺伝子異常のうち2例に臼蓋形成不全が生じていた。さらに、GDF5は関節軟骨特異的な遺伝子で(非特許文献7)、成人の関節軟骨にも存在し、関節軟骨のプロテオグリカン合成の亢進作用を持つことが知られている(非特許文献8)。
しかしながら、GDF5遺伝子の異常(CV)とOAのなりやすさ(易罹患性)との関連については全く報告がなされていない。
従前のOA感受性遺伝子の研究において、OAとの関連性が予期され得る限られた候補遺伝子を対象とした相関解析(random association)の結果は概して否定的であった。例えば、上述のJ. Loughlinらは、前もって候補遺伝子を予測せずにゲノム全域での多型解析により体系的に遺伝子マッピングを行う手法(ゲノムワイドスクリーニング)を用いて、第2, 4, 6, 11, 16番染色体上にOA感受性遺伝子座が存在すること、2番染色体上に位置するインターロイキン-1(IL-1)遺伝子クラスターおよびインターロイキン-4レセプター(IL-4R)α鎖遺伝子内における頻度の高い多型(CV)が、それぞれ膝関節OAおよび股関節OAと相関することを見出したと報告しているが(非特許文献9,10)、その一方で、6番染色体上のOA感受性領域内に存在するCOL9A1遺伝子(関節軟骨の基質タンパク質IX型コラーゲンをコードする)およびBMP5遺伝子(骨形成タンパク質(BMP)遺伝子ファミリーに属する)は、それらの機能からOAとの関連が強く示唆されたにもかかわらず、これらの遺伝子内にはOAと相関する多型が見出されなかったことを記述している(非特許文献3)。
Ozakiら,ネイチャー・ジェネティックス(Nat. Genet.),米国,第32巻,pp. 650-654,2002年 Tokuhiroら,ネイチャー・ジェネティックス(Nat. Genet.),米国,第35巻,pp. 341-348,2003年 J. Loughlin,カレント・オピニオン・イン・ファーマコロジー(Curr. Opin. Pharmacol.),英国,第3巻,pp. 295-299,2003年 KarsentyおよびWagner,ディヴェロプメンタル・セル(Dev. Cell),米国,第2巻,pp. 389-406,2002年 Stormら,ネイチャー(Nature),英国,第368巻,pp. 639-643,1994年 Thomasら,ネイチャー・ジェネティックス(Nat. Genet.),米国,第12巻,pp. 315-317,1996年 Francis-Westら,ディヴェロプメント(Development),英国,第126巻,pp. 1305-1315,1999年 Erlacherら,ジャーナル・オヴ・ボーン・アンド・ミネラル・リサーチ(J. Bone Miner. Res.),米国,第13巻,pp. 383,1998年 Loughlinら,アースライティス・アンド・リウマティズム(Arthritis Rheum.),米国,第46巻,pp. 1519-1527,2002年 Forsterら,ヒューマン・ジェネティックス(Hum. Genet.),独国,第114巻,pp. 391-395,2004年
本発明の目的は、変形性関節症をはじめとする骨・関節疾患の発症・進行に関与する遺伝子を同定し、その機能を解明することにより、当該疾患の新規且つ根本的な予防・治療手段を提供することである。また、本発明の別の目的は、骨・関節疾患に対する遺伝的感受性の簡便且つ高確度な診断方法を提供することである。
本発明者らは、上記の目的を達成すべくOA感受性遺伝子の候補としてGDF5遺伝子に着目し、遺伝子多型を用いた疾患(Case)−対照(Control)相関解析を行った結果、OAとGDF5遺伝子およびその周辺領域における多型との相関を検出した。さらに、連鎖不平衡解析によりOA感受性遺伝子の存在領域を同定し、OA感受性多型がGDF5遺伝子領域内にあることを実証した。また、本発明者らは、レポーターアッセイによりGDF5遺伝子のコアプロモーター領域を同定し、5’-非翻訳領域内に存在するSNPが該遺伝子の転写活性に影響を及ぼすことを見出した。
本発明者らは、これらの知見に基づいてさらに検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、
[1]被験者より採取されたゲノムDNA含有試料において、GDF5遺伝子内に存在する多型および該多型と連鎖不平衡係数D’が0.9以上の連鎖不平衡状態にある該遺伝子の周辺領域内に存在する多型であって、一方のアレル頻度が、任意の骨・関節疾患非罹患者集団におけるよりも任意の骨・関節疾患患者集団において高い多型からなる群より選択される1以上の多型を検出することを特徴とする、該被験者の骨・関節疾患に対する遺伝的感受性の診断方法、
[2]周辺領域が、C20orf44遺伝子、C20orf44遺伝子とGDF5遺伝子とのフランキング領域、GDF5遺伝子とCEP2遺伝子とのフランキング領域およびCEP2遺伝子からなる領域である上記[1]記載の方法、
[3]多型が、GenBankアクセッション番号NT_028392.4で表される塩基配列中、塩基番号4060984、4062783、4097865、4109802、4113806、4127320、4142995、4153819、4159282、4186100、4187803、4187893、4188717、4188908、4189193、4192277、4192504、4192943、4213022、4214682、4226807、4255285、4256239、4257040、4263246、4263874、4268152および4268710で示される塩基からなる群より選択される1以上の塩基における多型である上記[2]記載の方法、
[4]多型が、GenBankアクセッション番号NT_028392.4で表される塩基配列中、塩基番号4188908、4189193、4192277および4192504で示される塩基からなる群より選択される1以上の塩基における多型である上記[3]記載の方法、
[5]骨・関節疾患が、骨粗鬆症、変形性関節症、慢性関節リウマチ、関節炎、滑膜炎、代謝性関節症、スポーツによる関節障害、骨軟骨腫、骨腫瘍、軟骨腫瘍および先天性骨系統疾患からなる群より選択される上記[1]〜[4]のいずれかに記載の方法、
[6]GenBankアクセッション番号NT_028392.4で表される塩基配列の部分塩基配列であって、塩基番号4187803で示される塩基(但し、該塩基はGである)を含む、約15〜約500塩基の連続した塩基配列を含有してなる核酸、
[7]GenBankアクセッション番号NT_028392.4で表される塩基配列の部分塩基配列であって、塩基番号4187893で示される塩基(但し、該塩基はTである)を含む、約15〜約500塩基の連続した塩基配列を含有してなる核酸、
[8]GDF5遺伝子内に存在する多型および該多型と連鎖不平衡係数D’が0.9以上の連鎖不平衡状態にある該遺伝子の周辺領域内に存在する多型であって、一方のアレル頻度が、任意の骨・関節疾患非罹患者集団におけるよりも任意の骨・関節疾患患者集団において高い多型からなる群より選択される1以上の多型の各々を検出し得る1組以上の核酸プローブおよび/またはプライマーを含んでなる、骨・関節疾患に対する遺伝的感受性の診断用キット、
[9]周辺領域が、C20orf44遺伝子、C20orf44遺伝子とGDF5遺伝子とのフランキング領域、GDF5遺伝子とCEP2遺伝子とのフランキング領域およびCEP2遺伝子からなる領域である上記[8]記載のキット、
[10]多型が、GenBankアクセッション番号NT_028392.4で表される塩基配列中、塩基番号4060984、4062783、4097865、4109802、4113806、4127320、4142995、4153819、4159282、4186100、4187803、4187893、4188717、4188908、4189193、4192277、4192504、4192943、4213022、4214682、4226807、4255285、4256239、4257040、4263246、4263874、4268152および4268710で示される塩基からなる群より選択される1以上の塩基における多型である上記[9]記載のキット、
[11]多型が、GenBankアクセッション番号NT_028392.4で表される塩基配列中、塩基番号4188908、4189193、4192277および4192504で示される塩基からなる群より選択される1以上の塩基における多型である上記[10]記載のキット、
[12]核酸プローブが、GenBankアクセッション番号NT_028392.4で表される塩基配列中、塩基番号4060984、4062783、4097865、4109802、4113806、4127320、4142995、4153819、4159282、4186100、4187803、4187893、4188717、4188908、4189193、4192277、4192504、4192943、4213022、4214682、4226807、4255285、4256239、4257040、4263246、4263874、4268152および4268710からなる群より選択される塩基番号で示される多型部位の塩基を含む、約15〜約500塩基の連続した塩基配列を含有してなる核酸であり、核酸プライマーが、GenBankアクセッション番号NT_028392.4で表される塩基配列の部分塩基配列であって、上記の群より選択される塩基番号で示される多型部位の塩基を含む約50〜約1,000塩基の連続した塩基配列を増幅し得る一対の核酸である上記[10]記載のキット、
[13]骨・関節疾患が、骨粗鬆症、変形性関節症、慢性関節リウマチ、関節炎、滑膜炎、代謝性関節症、スポーツによる関節障害、骨軟骨腫、骨腫瘍、軟骨腫瘍および先天性骨系統疾患からなる群より選択される上記[8]〜[12]のいずれかに記載のキット、
[14]配列番号:3で表されるアミノ酸配列中アミノ酸番号1〜120で示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を含有してなる骨・関節疾患の予防・治療剤、
[15]配列番号:3で表されるアミノ酸配列中アミノ酸番号1〜120で示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質またはその部分ペプチドをコードする塩基配列を有する核酸を含有してなる骨・関節疾患の予防・治療剤、
[16]配列番号:3で表されるアミノ酸配列中アミノ酸番号1〜120で示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の発現もしくは活性を促進する化合物またはその塩を含有してなる骨・関節疾患の予防・治療剤、
[17]骨・関節疾患が、骨粗鬆症、変形性関節症、慢性関節リウマチ、関節炎、滑膜炎、代謝性関節症、スポーツによる関節障害および先天性骨系統疾患からなる群より選択される上記[14]〜[16]のいずれかに記載の剤、
[18]配列番号:3で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする塩基配列に相補的な塩基配列またはその一部を有する核酸を含有してなる骨・関節疾患の予防・治療剤、
[19]配列番号:3で表されるアミノ酸配列中アミノ酸番号1〜120で示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質またはその部分ペプチドまたはその塩に対する中和抗体を含有してなる骨・関節疾患の予防・治療剤、
[20]配列番号:3で表されるアミノ酸配列中アミノ酸番号1〜120で示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の発現もしくは活性を抑制する化合物またはその塩を含有してなる骨・関節疾患の予防・治療剤、
[21]骨・関節疾患が、先天性骨系統疾患、骨軟骨腫、骨腫瘍および軟骨腫瘍からなる群より選択される上記[18]〜[20]のいずれかに記載の剤、
[22]配列番号:3で表されるアミノ酸配列中アミノ酸番号1〜120で示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質またはその部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を含有してなる骨・関節疾患の診断剤、
[23]配列番号:3で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする塩基配列またはその一部を有する核酸を含有してなる骨・関節疾患の診断剤、
[24]骨・関節疾患が、骨粗鬆症、変形性関節症、慢性関節リウマチ、関節炎、滑膜炎、代謝性関節症、スポーツによる関節障害、骨軟骨腫、骨腫瘍、軟骨腫瘍および先天性骨系統疾患からなる群より選択される上記[22]または[23]記載の剤、
[25]配列番号:3で表されるアミノ酸配列中アミノ酸番号1〜120で示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を用いることを特徴とする骨・関節疾患の予防・治療剤のスクリーニング方法、
[26]配列番号:3で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする塩基配列またはその一部を有する核酸、あるいは配列番号:3で表されるアミノ酸配列中アミノ酸番号1〜120で示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質もしくは該部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を用いることを特徴とする骨・関節疾患の予防・治療剤のスクリーニング方法、および
[27]骨・関節疾患が、骨粗鬆症、変形性関節症、慢性関節リウマチ、関節炎、滑膜炎、代謝性関節症、スポーツによる関節障害、骨軟骨腫、骨腫瘍、軟骨腫瘍および先天性骨系統疾患からなる群より選択される上記[25]または[26]記載の方法などを提供する。
GDF5遺伝子における多型はOAと相関すること、また、GDF5は、軟骨基質であり軟骨細胞分化マーカーであるアグリカンの合成を亢進させるが、GDF5遺伝子のOA感受性多型においては該遺伝子の転写活性が低下していることから、該多型およびそれと連鎖不平衡状態にある多型は、OAをはじめとする骨・関節疾患に対する遺伝的感受性の簡便な判定に利用することができる。また、GDF5の発現および/または活性を増強することにより、骨・関節疾患、特に軟骨基質の変性・消失・産生能低下、軟骨細胞分化能低下が関連する疾患に対して予防・治療効果を奏する。
本発明の骨・関節疾患に対する遺伝的感受性の診断方法(以下、単に「本発明の診断方法」という場合がある)は、被験者のGDF5遺伝子における多型および/またはそれと連鎖不平衡状態にある多型を検出することを特徴とする。
本明細書において「(遺伝子)多型」とは、ゲノムDNA上の1または複数の塩基の変化(置換、欠失、挿入、転位、逆位等)であって、その変化が集団内に1%以上の頻度で存在するものをいい、例えば、1個の塩基が他の塩基に置換されたもの(SNP)、1〜数十塩基が欠失もしくは挿入されたもの(DIP)、2〜数十塩基を1単位とする配列が繰り返し存在する部位においてその繰り返し回数が異なるもの(繰り返し単位が2〜4塩基のものをマイクロサテライト多型、数〜数十塩基のものをvariable number of tandem repeat (VNTR)という)等が挙げられる。本発明の診断方法に利用することができる多型は、下記の条件を満たす限りいずれのタイプのものであってもよいが、好ましくはSNPである。
本発明の診断方法において利用することができる多型は、
(1) GDF5遺伝子内に存在する多型または該多型と連鎖不平衡係数D’が0.9以上の連鎖不平衡状態にある該遺伝子の周辺領域内に存在する多型であって、
(2) その一方のアレル頻度が、任意の骨・関節疾患非罹患者集団におけるよりも任意の骨・関節疾患患者集団において有意に高いものであれば特に制限されない。
GDF5遺伝子内に存在する多型としては、例えば、NCBI SNPデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/SNP/)に登録された32個の公知多型(RefSNP ID: rs6120942, rs5841206, rs224330, rs224331, rs224332, rs6060417, rs7267783, rs5841207, rs6060418, rs6060419, rs224333, rs11908226, rs224334, rs6120943, rs143384, rs143383, rs3842525, rs11469223, rs5841208, rs5841209, rs3055779, rs224335, rs10470075, rs10470076, rs10470077, rs10470078, rs224336, rs1810583, rs1810582, rs2002531, rs739329, rs6120944)、あるいは本発明において見出された新規多型[「GenBankアクセッション番号NT_028392 (VERSION: NT_028392.4, GI: 17458490, 2004年 2月19日更新)」(本明細書においては、単に「NT_028392.4」と略記する場合もある)で表される塩基配列中、塩基番号4187803, 4187893, 4187969, 4188266で示される塩基もしくは塩基番号4192660〜4192703, 4193138〜4193209で示される塩基配列における多型]等が挙げられる(後記実施例3,表2を参照)。尚、NCBI Nucleotide (GenBank) データベース上の情報更新による配列不一致の混乱を避けるために、NT_028392.4で表される塩基配列中、塩基番号4060981〜4268720に相当する部分配列を配列番号:1に示した。これにより、万一NT_028392.4の配列情報が参照不能となった場合でも、NT_028392.4における塩基番号(N0)を配列番号:1で表される塩基番号(N = N0-4060980)に換算することにより、本発明の実施に必要な配列情報の記載は担保される。以下、本明細書において、多型部位等のヌクレオチド(塩基)の位置はすべてNT_028392.4の塩基番号により表記する。
一方、GDF5遺伝子内に存在する多型と連鎖不平衡係数D’が0.9以上の連鎖不平衡状態にある多型としては、ゲノムDNA上のGDF5遺伝子の周辺領域、例えば、GDF5遺伝子の5’側ではCEP20、C20orf173、SDBCAG84、FER1L4遺伝子までの領域、3’側ではC20orf44遺伝子までの領域に存在する多型が挙げられる(例えば、表2を参照)。ここで「連鎖不平衡係数D’」は、2つのSNPについて第一のSNPの各アレルを(A, a)、第二のSNPの各アレルを(B, b)とし、4つのハプロタイプ(AB, Ab, aB, ab)の各頻度をPAB, PAb, PaB, Pabとすると、下記式により得られる。
D’=(PABPab−PAbPaB)/Min [(PAB+PaB)(PaB+Pab), (PAB+PAb)(PAb+Pab)]
[式中、Min [(PAB+PaB)(PaB+Pab), (PAB+PAb)(PAb+Pab)]は、(PAB+PaB)(PaB+Pab)と(PAB+PAb)(PAb+Pab)とのうち、値の小さい方をとることを意味する。]
上記多型のうち、一方のアレル頻度が任意の骨・関節疾患非罹患者集団におけるよりも任意の骨・関節疾患患者集団において有意に高いものが、本発明の診断方法に利用することができる。本明細書においては、以下、かかる多型を骨・関節疾患マーカー多型という場合もある。
骨・関節疾患患者集団および骨・関節疾患非罹患者集団は、それぞれ統計学上信頼し得る結果を与えるに十分な数からなる集団であれば、その大きさ(サンプル数)、各サンプルの背景(例えば、出身地、年齢、性別、疾患等)などに特に制限はない。骨・関節疾患としては、例えば、骨粗鬆症、変形性関節症、慢性関節リウマチ、関節炎、滑膜炎、代謝性関節症、スポーツによる関節障害、骨軟骨腫、骨腫瘍、軟骨腫瘍、先天性骨系統疾患等が挙げられるが、好ましくは骨粗鬆症、変形性関節症、慢性関節リウマチ、関節炎、滑膜炎、代謝性関節症、スポーツによる関節障害、軟骨基質の変性・消失・産生能低下、軟骨細胞分化能低下が関連する先天性骨系統疾患等であり、より好ましくは変形性関節症(OA)、いっそう好ましくは変形性股関節症(股関節OA)もしくは変形性膝関節症(膝関節OA)、就中股関節OAである。また、倫理上、試料提供者のインフォームド・コンセントを必要とすることから、骨・関節疾患非罹患者集団としては、通常、ある医療機関における骨・関節疾患以外の患者群、あるいはある地域における集団検診において骨・関節疾患に罹患していないと診断された被検者群などが好ましく用いられる。
GDF5遺伝子内に存在する骨・関節疾患マーカー多型としては、例えば、GenBankアクセッション番号NT_028392.4で表される塩基配列中、塩基番号4187803、4187893、4188717、4188908、4189193、4192277、4192504、4192943で示される塩基における多型(後記実施例4,表3を参照)、あるいはこれらのいずれかの多型と連鎖不平衡状態(D’≧0.9、好ましくはD’≧0.99、より好ましくはD’=1)にある多型が挙げられる。
一方、GDF5遺伝子の周辺領域に存在する骨・関節疾患マーカー多型としては、上記GDF5遺伝子内に存在する骨・関節疾患マーカー多型のいずれかと連鎖不平衡状態(D’≧0.9、好ましくはD’≧0.99、より好ましくはD’=1)にある多型、好ましくはC20orf44遺伝子、C20orf44遺伝子とGDF5遺伝子とのフランキング領域、GDF5遺伝子とCEP2遺伝子とのフランキング領域、あるいはCEP2遺伝子内に存在する多型が挙げられ、具体的には、GenBankアクセッション番号NT_028392.4で表される塩基配列中、塩基番号4060984、4062783、4097865、4109802、4113806、4127320、4142995、4153819、4159282、4186100、4213022、4214682、4226807、4255285、4256239、4257040、4263246、4263874、4268152、4268710で示される塩基における多型(表3を参照)等が例示される。
本発明の診断方法に利用される骨・関節疾患マーカー多型として、より好ましくは、GenBankアクセッション番号NT_028392.4で表される塩基配列中、塩基番号4188908、4189193、4192277、4192504で示される塩基における多型、特に好ましくは、塩基番号4192504で示される塩基における多型が挙げられる。塩基番号4192504で示される塩基における多型は、後記実施例11に示される通りGDF5遺伝子の転写活性の変化をもたらす。即ち、A(センス鎖では「T」)アレルでは、G(センス鎖では「C」)アレルに比べて転写活性が顕著に低下している。また、ケース−コントロール解析の結果、Aアレルのアレル頻度は、OA非罹患者集団におけるそれよりもOA患者集団において有意に高いことが示された。以上の事実とGDF5が軟骨基質合成・軟骨細胞分化を促進する機能を有することとを考慮すれば、GDF5は力学的ストレスなどにより障害を受けた関節軟骨の再生に寄与するが(例えば、間葉系細胞からの分化誘導、軟骨細胞の増殖促進、軟骨基質の産生等)、Aアレル保有者では、GDF5遺伝子の転写活性が低下しているために関節軟骨の再生能が減衰し、当該ストレスへの対応が不十分となって軟骨再生不良を引き起こすリスクが増大するので、軟骨基質の変性・消失・産生能低下、軟骨細胞分化能低下が関連する骨・関節疾患、例えば、骨粗鬆症、変形性関節症、慢性関節リウマチ、関節炎、滑膜炎、代謝性関節症、スポーツによる関節障害、先天性骨系統疾患[例えば、軟骨形成の低下している骨系統疾患・変形性関節症を合併する先天性骨系統疾患(例:軟骨無形成症、多発性骨端異形成症、脊椎骨端異形成症、骨幹端異形成症、Stickler症候群、偽性軟骨無形成症等)]に罹患しやすい(感受性である)ことが強く示唆される。一方、軟骨基質の産生能・軟骨細胞分化能の異常亢進が関連する疾患、例えば、先天性骨系統疾患[例えば、軟骨形成の亢進している骨系統疾患(例:多発性外骨腫、片側肥大、オリエール病、マフッチ症候群等)]、骨軟骨腫、骨腫瘍、軟骨腫瘍などの疾患に対しては、Aアレルは保護的であり得る。従って、GenBankアクセッション番号NT_028392.4で表される塩基配列中、塩基番号4192504で示される塩基における多型は、骨・関節疾患への易罹患性を規定する多型、即ち骨・関節疾患感受性多型である。
また、GenBankアクセッション番号NT_028392.4で表される塩基配列中、塩基番号4188908、4189193、4192277で示される塩基における多型は、塩基番号4192504で示される塩基における多型と完全連鎖の状態にあるので、これらの塩基のいずれかにおける多型を検出することにより、骨・関節疾患に対する遺伝的感受性を高確度に判定することが可能である。
本発明の診断方法において検出される多型は、上記した多型のうちのいずれか1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。
本発明の診断方法において、多型の検出は公知のSNP検出方法のいずれも使用することができる。古典的な検出方法としては、例えば、被験者の細胞等から抽出したゲノムDNAを試料とし、GenBankアクセッション番号NT_028392.4で表される塩基配列の部分塩基配列であって、上記したいずれかの多型部位の塩基(好ましくは、塩基番号4060984、4062783、4097865、4109802、4113806、4127320、4142995、4153819、4159282、4186100、4187803、4187893、4188717、4188908、4189193、4192277、4192504、4192943、4213022、4214682、4226807、4255285、4256239、4257040、4263246、4263874、4268152または4268710で示される塩基)を含む約15〜約500塩基の連続した塩基配列を含有してなる核酸をプローブとして用い、例えばWallaceら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 80, 278-282 (1983))の方法に従って、ストリンジェンシーを正確にコントロールしながらハイブリダイゼーションを行い、プローブと完全相補的な配列のみを検出する方法や、上記核酸と上記核酸において多型部位の塩基が他の塩基に置換された核酸のいずれか一方を標識し、他方を未標識としたミックスプローブを用い、変性温度から徐々に反応温度を低下させながらハイブリダイゼーションを行い、一方のプローブと完全相補的な配列を先にハイブリダイズさせ、ミスマッチを有するプローブとの交差反応を防ぐ方法などが挙げられる。ここで標識剤としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などが用いられる。放射性同位元素としては、例えば、〔125I〕、〔131I〕、〔3H〕、〔14C〕などが用いられる。上記酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えば、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが用いられる。蛍光物質としては、例えば、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネートなどが用いられる。発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどが用いられる。
好ましくは、多型の検出は、例えば、WO 03/023063に記載された種々の方法、例えば、RFLP法、PCR-SSCP法、ASOハイブリダイゼーション、ダイレクトシークエンス法、ARMS法、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法、RNaseA切断法、化学切断法、DOL法、TaqMan PCR法、インベーダー法、MALDI-TOF/MS法、TDI法、モレキュラー・ビーコン法、ダイナミック・アレルスペシフィック・ハイブリダイゼーション法、パドロック・プローブ法、UCAN法、DNAチップまたはDNAマイクロアレイを用いた核酸ハイブリダイゼーション法、、およびECA法などにより実施することができる(WO 03/023063,第17頁第5行〜第28頁第20行を参照)。以下、代表的な方法として、後記実施例で使用されるTaqMan PCR法とインベーダー法について、より詳細に説明する。
(1)TaqMan PCR法
TaqMan PCR法は、蛍光標識したアレル特異的オリゴヌクレオチド(TaqManプローブ)とTaq DNAポリメラーゼによるPCRとを利用した方法である。TaqManプローブとしては、GenBankアクセッション番号NT_028392.4で表される塩基配列の部分塩基配列であって、上記したいずれかの多型部位の塩基を含む約15〜約30塩基の連続した塩基配列からなるオリゴヌクレオチドが用いられる。該プローブは、その5’末端がFAMやVICなどの蛍光色素で、3’末端がTAMRAなどのクエンチャー(消光物質)でそれぞれ標識されており、そのままの状態ではクエンチャーが蛍光エネルギーを吸収するため蛍光は検出されない。プローブは双方のアレルについて調製し、一括検出のために互いに蛍光波長の異なる蛍光色素(例えば、一方のアレルをFAM、他方をVIC)で標識することが好ましい。また、TaqManプローブからのPCR伸長反応が起こらないように3’末端はリン酸化されている。TaqManプローブとハイブリダイズする領域を含むゲノムDNAの部分配列を増幅するように設計されたプライマーおよびTaq DNAポリメラーゼとともにPCRを行うと、TaqManプローブが鋳型DNAとハイブリダイズし、同時にPCRプライマーからの伸長反応が起こるが、伸長反応が進むとTaq DNAポリメラーゼの5’ヌクレア−ゼ活性によりハイブリダイズしたTaqManプローブが切断され、蛍光色素が遊離してクエンチャーの影響を受けなくなり、蛍光が検出される。鋳型の増幅により蛍光強度は指数関数的に増大する。
例えば、GenBankアクセッション番号NT_028392.4で表される塩基配列中、塩基番号4192504で示される塩基における多型の検出において、当該塩基を含むアレル特異的オリゴヌクレオチド(約15〜約30塩基長;AアレルはFAMで、GアレルはVICでそれぞれ5’末端標識し、3’末端はいずれもTAMRAで標識)をTaqManプローブとして用いた場合、被験者のジェノタイプがAA、あるいはGGであれば、それぞれFAMあるいはVICの強い蛍光強度を認め、他方の蛍光はほとんど認められない。一方、被験者のジェノタイプがAGであれば、FAMおよびVIC両方の蛍光が検出される。
(2)インベーダー法
インベーダー法では、TaqMan PCR法と異なり、アレル特異的オリゴヌクレオチド(アレルプローブ)自体は標識されず、多型部位の塩基の5’側に鋳型DNAと相補性のない配列(フラップ)を有し、3’側には鋳型に特異的な相補配列を有する。インベーダー法では、さらに鋳型の多型部位の3’側に特異的な相補配列を有するオリゴヌクレオチド(インベーダープローブ;該プローブの5’末端である多型部位に相当する塩基は任意である)と、5’側がヘアピン構造をとり得る配列を有し、ヘアピン構造を形成した際に5’末端の塩基と対をなす塩基から3’側に連続する配列がアレルプローブのフラップと相補的な配列であることを特徴とするFRET(fluorescence resonance energy transfer)プローブとが用いられる。FRETプローブの5’末端は蛍光標識(例えば、FAMやVICなど)され、その近傍にはクエンチャー(例えば、TAMRAなど)が結合しており、そのままの状態(ヘアピン構造)では蛍光は検出されない。
鋳型であるゲノムDNAにアレルプローブおよびインベーダープローブを反応させると、三者が相補結合した際に多型部位にインベーダープローブの3’末端が侵入する。この多型部位の構造を認識する酵素(cleavase)を用いてアレルプローブの一本鎖部分(即ち、多型部位の塩基から5’側のフラップ部分)を切り出すと、フラップはFRETプローブと相補的に結合し、フラップの多型部位がFRETプローブのヘアピン構造に侵入する。この構造をcleavaseが認識して切断することにより、FRETプローブの末端標識された蛍光色素が遊離してクエンチャーの影響を受けなくなって蛍光が検出される。多型部位の塩基が鋳型とマッチしないアレルプローブはcleavaseによって切断されないが、切断されないアレルプローブもFRETプローブとハイブリダイズすることができるので、同様に蛍光が検出される。但し、反応効率が異なるため、多型部位の塩基がマッチするアレルプローブでは、マッチしないアレルプローブに比べて蛍光強度が顕著に強い。
通常、3種のプローブおよびcleavaseと反応させる前に、鋳型DNAはアレルプローブおよびインベーダープローブがハイブリダイズする部分を含む領域を増幅し得るプライマーを用いてPCRにより増幅しておくことが好ましい。
上記のようにして多型を調べた結果、任意の骨・関節疾患非罹患者集団におけるよりも任意の骨・関節疾患患者集団において有意に高いアレルを保有していると判定された場合、特に該アレルについてホモ接合体であると判定された場合には、被験者は当該骨・関節疾患に対する遺伝的感受性が高いと診断することができる。例えば、GenBankアクセッション番号NT_028392.4で表される塩基配列中、
(1) 塩基番号4060984で示される塩基がAのアレルを保有する場合、
(2) 塩基番号4062783で示される塩基がGのアレルを保有する場合、
(3) 塩基番号4097865で示される塩基がGのアレルを保有する場合、
(4) 塩基番号4109802で示される塩基がTのアレルを保有する場合、
(5) 塩基番号4113806で示される塩基がGのアレルを保有する場合、
(6) 塩基番号4127320で示される塩基がAのアレルを保有する場合、
(7) 塩基番号4142995で示される塩基がGのアレルを保有する場合、
(8) 塩基番号4153819で示される塩基がTのアレルを保有する場合、
(9) 塩基番号4159282で示される塩基がTのアレルを保有する場合、
(10)塩基番号4186100で示される塩基がCのアレルを保有する場合、
(11)塩基番号4187803で示される塩基がAのアレルを保有する場合、
(12)塩基番号4187893で示される塩基がGのアレルを保有する場合、
(13)塩基番号4188717で示される塩基がCのアレルを保有する場合、
(14)塩基番号4188908で示される塩基がAのアレルを保有する場合、
(15)塩基番号4189193で示される塩基がCのアレルを保有する場合、
(16)塩基番号4192277で示される塩基がAのアレルを保有する場合、
(17)塩基番号4192504で示される塩基がAのアレルを保有する場合、
(18)塩基番号4192943で示される塩基がGのアレルを保有する場合、
(19)塩基番号4213022で示される塩基がGのアレルを保有する場合、
(20)塩基番号4214682で示される塩基がCのアレルを保有する場合、
(21)塩基番号4226807で示される塩基がTのアレルを保有する場合、
(22)塩基番号4255285で示される塩基がGのアレルを保有する場合、
(23)塩基番号4256239で示される塩基がGのアレルを保有する場合、
(24)塩基番号4257040で示される塩基がGのアレルを保有する場合、
(25)塩基番号4263246で示される塩基がAのアレルを保有する場合、
(26)塩基番号4263874で示される塩基がTのアレルを保有する場合、
(27)塩基番号4268152で示される塩基がCのアレルを保有する場合、または
(28)塩基番号4268710で示される塩基がTのアレルを保有する場合、被験者は、軟骨基質の変性・消失・産生能低下、軟骨細胞分化能低下が関連する骨・関節疾患、例えば、骨粗鬆症、変形性関節症、慢性関節リウマチ、関節炎、滑膜炎、代謝性関節症、スポーツによる関節障害、先天性骨系統疾患[例えば、軟骨形成の低下している骨系統疾患・変形性関節症を合併する先天性骨系統疾患(例:軟骨無形成症、多発性骨端異形成症、脊椎骨端異形成症、骨幹端異形成症、Stickler症候群、偽性軟骨無形成症等)]に罹患しやすい(感受性である)と診断することができる。
一方、GenBankアクセッション番号NT_028392.4で表される塩基配列中、
(1) 塩基番号4060984で示される塩基がGのアレルを保有する場合、
(2) 塩基番号4062783で示される塩基がCのアレルを保有する場合、
(3) 塩基番号4097865で示される塩基がAのアレルを保有する場合、
(4) 塩基番号4109802で示される塩基がCのアレルを保有する場合、
(5) 塩基番号4113806で示される塩基がCのアレルを保有する場合、
(6) 塩基番号4127320で示される塩基がGのアレルを保有する場合、
(7) 塩基番号4142995で示される塩基がCのアレルを保有する場合、
(8) 塩基番号4153819で示される塩基がCのアレルを保有する場合、
(9) 塩基番号4159282で示される塩基がAのアレルを保有する場合、
(10)塩基番号4186100で示される塩基がTのアレルを保有する場合、
(11)塩基番号4187803で示される塩基がGのアレルを保有する場合、
(12)塩基番号4187893で示される塩基がTのアレルを保有する場合、
(13)塩基番号4188717で示される塩基がTのアレルを保有する場合、
(14)塩基番号4188908で示される塩基がCのアレルを保有する場合、
(15)塩基番号4189193で示される塩基がAのアレルを保有する場合、
(16)塩基番号4192277で示される塩基がGのアレルを保有する場合、
(17)塩基番号4192504で示される塩基がGのアレルを保有する場合、
(18)塩基番号4192943で示される塩基がAのアレルを保有する場合、
(19)塩基番号4213022で示される塩基がAのアレルを保有する場合、
(20)塩基番号4214682で示される塩基がTのアレルを保有する場合、
(21)塩基番号4226807で示される塩基がCのアレルを保有する場合、
(22)塩基番号4255285で示される塩基がAのアレルを保有する場合、
(23)塩基番号4256239で示される塩基がTのアレルを保有する場合、
(24)塩基番号4257040で示される塩基がAのアレルを保有する場合、
(25)塩基番号4263246で示される塩基がGのアレルを保有する場合、
(26)塩基番号4263874で示される塩基がCのアレルを保有する場合、
(27)塩基番号4268152で示される塩基がAのアレルを保有する場合、または
(28)塩基番号4268710で示される塩基がCのアレルを保有する場合、被験者は、軟骨基質の産生能・軟骨細胞分化能の異常亢進が関連する疾患、例えば、先天性骨系統疾患[例えば、軟骨形成の亢進している骨系統疾患(例:多発性外骨腫、片側肥大、オリエール病、マフッチ症候群等)]、骨軟骨腫、骨腫瘍、軟骨腫瘍などの疾患に罹患しやすい(感受性である)と診断することができる。
尚、2以上の多型を調べた際に、1以上の結果が他の結果と相反する場合には、塩基番号4188908、4189193、4192277または4192504で示される塩基における多型の結果が優先され、これらの塩基の中で結果が相反する場合には、塩基番号4192504で示される塩基における多型の結果が優先される。
上述のように、GenBankアクセッション番号NT_028392.4で表される塩基配列中、塩基番号4187803および4187893で示される塩基における多型は、本発明において初めて見出された新規多型であり、且つ骨・関節疾患に対する遺伝的感受性の診断に利用できるマーカー多型である。より詳細には、GenBankアクセッション番号NT_028392.4で表される塩基配列中、塩基番号4187803で示される塩基はAであるが、本発明者らは該塩基がAからGに置換された新規SNPを同定した。Gアレルの頻度は、OA患者集団に比べてOA非罹患者集団において有意に高いことから、該アレルは、軟骨基質の変性・消失・産生能低下、軟骨細胞分化能低下が関連する骨・関節疾患、例えば、骨粗鬆症、変形性関節症、慢性関節リウマチ、関節炎、滑膜炎、代謝性関節症、スポーツによる関節障害、先天性骨系統疾患[例えば、軟骨形成の低下している骨系統疾患・変形性関節症を合併する先天性骨系統疾患(例:軟骨無形成症、多発性骨端異形成症、脊椎骨端異形成症、骨幹端異形成症、Stickler症候群、偽性軟骨無形成症等)]に罹患しにくい(保護性である)一方、軟骨基質の産生能・軟骨細胞分化能の異常亢進が関連する疾患、例えば、先天性骨系統疾患[例えば、軟骨形成の亢進している骨系統疾患(例:多発性外骨腫、片側肥大、オリエール病、マフッチ症候群等)]、骨軟骨腫、骨腫瘍、軟骨腫瘍などの疾患に罹患しやすい(感受性である)。同様に、より詳細には、GenBankアクセッション番号NT_028392.4で表される塩基配列中、塩基番号4187893で示される塩基はGであるが、本発明者らは該塩基がGからTに置換された新規SNPを同定した。Tアレルの頻度は、OA患者集団に比べてOA非罹患者集団において有意に高いことから、該アレルは、軟骨基質の変性・消失・産生能低下、軟骨細胞分化能低下が関連する骨・関節疾患、例えば、骨粗鬆症、変形性関節症、慢性関節リウマチ、関節炎、滑膜炎、代謝性関節症、スポーツによる関節障害、先天性骨系統疾患[例えば、軟骨形成の低下している骨系統疾患・変形性関節症を合併する先天性骨系統疾患(例:軟骨無形成症、多発性骨端異形成症、脊椎骨端異形成症、骨幹端異形成症、Stickler症候群、偽性軟骨無形成症等)]に罹患しにくい(保護性である)一方、軟骨基質の産生能・軟骨細胞分化能の異常亢進が関連する疾患、例えば、先天性骨系統疾患[例えば、軟骨形成の亢進している骨系統疾患(例:多発性外骨腫、片側肥大、オリエール病、マフッチ症候群等)]、骨軟骨腫、骨腫瘍、軟骨腫瘍などの疾患に罹患しやすい(感受性である)。
従って、本発明はまた、GenBankアクセッション番号NT_028392.4で表される塩基配列の部分塩基配列であって、
(a) 塩基番号4187803で示される塩基(但し、該塩基はGである)、または
(b) 塩基番号4187893で示される塩基(但し、該塩基はTである)
を含む、約15〜約500塩基(好ましくは約15〜約200塩基、より好ましくは約15〜約50塩基)の連続した塩基配列を含有してなる核酸を提供する。かかるSNP部位を含む新規核酸は、上記した本発明の診断方法において、当該塩基における多型を検出するのに好ましく用いることができる。
本発明はまた、上記本発明の診断方法に用いるためのキットを提供する。即ち、本発明の診断用キットは、GDF5遺伝子内に存在する多型および該多型と連鎖不平衡係数D’が0.9以上の連鎖不平衡状態にある該遺伝子の周辺領域(好ましくは、C20orf44遺伝子、C20orf44遺伝子とGDF5遺伝子とのフランキング領域、GDF5遺伝子とCEP2遺伝子とのフランキング領域およびCEP2遺伝子からなる領域)内に存在する多型であって、一方のアレル頻度が、任意の骨・関節疾患非罹患者集団におけるよりも任意の骨・関節疾患患者集団において高い多型からなる群より選択される1以上の多型の各々を検出し得る1組以上の核酸プローブおよび/またはプライマーを含むことを特徴とする。
具体的には、本発明の診断用キットに用いられる核酸プローブは、上記本発明の診断方法において検出すべき多型部位の塩基を含む領域でゲノムDNAとハイブリダイズする核酸であり、標的部位に対して特異的であり且つ多型性を容易に検出し得る限りその長さ(ゲノムDNAとハイブリダイズする部分の塩基長)に特に制限はなく、例えば約15塩基以上、好ましくは約15〜約500塩基、より好ましくは約15〜約200塩基、いっそう好ましくは約15〜約50塩基である。
該プローブは、多型性の検出に適した付加的配列(ゲノムDNAと相補的でない配列)を含んでいてもよい。例えば、上記インベーダー法に用いられるアレルプローブは、多型部位の塩基の5’末端にフラップと呼ばれる付加的配列を有する。
また、該プローブは、適当な標識剤、例えば、例えば、放射性同位元素(例:125I、131I、3H、14C等)、酵素(例:β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素等)、蛍光物質(例:フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネート等)、発光物質(例:ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニン等)などで標識されていてもよい。あるいは、蛍光物質(例:FAM、VIC等)の近傍に該蛍光物質の発する蛍光エネルギーを吸収するクエンチャー(消光物質)がさらに結合されていてもよい。かかる実施態様においては、検出反応の際に蛍光物質とクエンチャーとが分離して蛍光が検出される。
好ましくは、本発明の診断用キットに用いられる核酸プローブは、GenBankアクセッション番号NT_028392.4で表される塩基配列中、塩基番号4060984、4062783、4097865、4109802、4113806、4127320、4142995、4153819、4159282、4186100、4187803、4187893、4188717、4188908、4189193、4192277、4192504、4192943、4213022、4214682、4226807、4255285、4256239、4257040、4263246、4263874、4268152および4268710からなる群より選択される塩基番号で示される多型部位、より好ましくは塩基番号4187803、4187893、4188717、4188908、4189193、4192277および4192504からなる群より選択される塩基番号で示される多型部位の塩基を含む、約15〜約500塩基、好ましくは約15〜約200塩基、より好ましくは約15〜約50塩基の連続した塩基配列を含有してなる核酸である。ここで、
(1) 塩基番号4060984で示される塩基はAまたはG、
(2) 塩基番号4062783で示される塩基はGまたはC、
(3) 塩基番号4097865で示される塩基はGまたはA、
(4) 塩基番号4109802で示される塩基はTまたはC、
(5) 塩基番号4113806で示される塩基はGまたはC、
(6) 塩基番号4127320で示される塩基はAまたはG、
(7) 塩基番号4142995で示される塩基はGまたはC、
(8) 塩基番号4153819で示される塩基はTまたはC、
(9) 塩基番号4159282で示される塩基はTまたはA、
(10)塩基番号4186100で示される塩基はCまたはT、
(11)塩基番号4187803で示される塩基はAまたはG、
(12)塩基番号4187893で示される塩基はGまたはT、
(13)塩基番号4188717で示される塩基はCまたはT、
(14)塩基番号4188908で示される塩基はAまたはC、
(15)塩基番号4189193で示される塩基はCまたはA、
(16)塩基番号4192277で示される塩基はAまたはG、
(17)塩基番号4192504で示される塩基はAまたはG、
(18)塩基番号4192943で示される塩基はGまたはA、
(19)塩基番号4213022で示される塩基はGまたはA、
(20)塩基番号4214682で示される塩基はCまたはT、
(21)塩基番号4226807で示される塩基はTまたはC、
(22)塩基番号4255285で示される塩基はGまたはA、
(23)塩基番号4256239で示される塩基はGまたはT、
(24)塩基番号4257040で示される塩基はGまたはA、
(25)塩基番号4263246で示される塩基はAまたはG、
(26)塩基番号4263874で示される塩基はTまたはC、
(27)塩基番号4268152で示される塩基はCまたはA、
(28)塩基番号4268710で示される塩基はTまたはCであり、使用する多型検出法に応じて、各多型部位についていずれか一方の塩基を有する核酸を用いることもできるし、各アレルに対応する塩基を有する2種類の核酸を用いることもできる。尚、上記インベーダー法に使用されるインベーダープローブについては、多型部位の塩基(即ち、3’末端の塩基)は任意の塩基でよい。
本発明の診断用キットに用いられる核酸プライマーは、上記本発明の診断方法において検出すべき多型部位の塩基を含むゲノムDNAの領域を特異的に増幅し得るように設計されたものであればいかなるものであってもよい。例えば、GenBankアクセッション番号NT_028392.4で表される塩基配列の部分塩基配列であって、検出すべき多型部位の塩基より5’側の相補鎖配列の一部にハイブリダイズする、約15〜約50塩基、好ましくは約15〜約30塩基の塩基配列を含む核酸と、該多型部位の塩基より3’側の配列の一部にハイブリダイズする、約15〜約50塩基、好ましくは約15〜約30塩基の塩基配列を含む核酸との組み合わせであり、それらによって増幅される核酸の断片長が約50〜約1,000塩基、好ましくは約50〜約500塩基、より好ましくは約50〜約200塩基である、一対の核酸が挙げられる。
該プライマーは、多型性の検出に適した付加的配列(ゲノムDNAと相補的でない配列)、例えばリンカー配列を含んでいてもよい。
また、該プライマーは、適当な標識剤、例えば、例えば、放射性同位元素(例:125I、131I、3H、14C等)、酵素(例:β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素等)、蛍光物質(例:フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネート等)、発光物質(例:ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニン等)などで標識されていてもよい。
好ましくは、本発明の診断用キットに用いられる核酸プライマーは、GenBankアクセッション番号NT_028392.4で表される塩基配列の部分塩基配列であって、塩基番号4060984、4062783、4097865、4109802、4113806、4127320、4142995、4153819、4159282、4186100、4187803、4187893、4188717、4188908、4189193、4192277、4192504、4192943、4213022、4214682、4226807、4255285、4256239、4257040、4263246、4263874、4268152および4268710からなる群より選択される塩基番号で示される多型部位、より好ましくは塩基番号4187803、4187893、4188717、4188908、4189193、4192277および4192504からなる群より選択される塩基番号で示される多型部位の塩基を含む、約50〜約1,000塩基、好ましくは約50〜約500塩基、より好ましくは約50〜約200塩基の連続した塩基配列を増幅し得る一対の核酸である。
本発明の診断用キットに用いられる核酸プローブまたはプライマーは、DNAであってもRNAであってもよく、また、一本鎖であっても二本鎖であってもよい。二本鎖の場合は二本鎖DNA、二本鎖RNA、DNA/RNAハイブリッドのいずれであってもよい。従って、本明細書においてある塩基配列を有する核酸について記載する場合、特に断らない限り、該塩基配列を有する一本鎖核酸、該塩基配列と相補的な配列を有する一本鎖核酸、それらのハイブリッドである二本鎖核酸をすべて包含する意味で用いられていると理解されるべきである。
上記核酸プローブまたはプライマーは、例えば、NT_028392.4で表される塩基配列の情報に基づいて、DNA/RNA自動合成機を用いて常法に従って合成することができる。
上記核酸プローブおよび/またはプライマーは、各々別個に(あるいは可能であれば混合した状態で)水もしくは適当な緩衝液(例:TEバッファーなど)中に適当な濃度(例:2×〜20×濃度で1〜50μMなど)となるように溶解し、約-20℃で保存することができる。
本発明の診断用キットは、多型検出法に応じて、当該方法の実施に必要な他の成分を構成としてさらに含んでいてもよい。例えば、該キットがTaqMan PCR法による多型検出用である場合には、該キットは、10×PCR反応緩衝液、10×MgCl2水溶液、10×dNTPs水溶液、Taq DNAポリメラーゼ(5U/μL)等をさらに含むことができる。
本発明の診断用キットは、軟骨基質の変性・消失・産生能低下、軟骨細胞分化能低下が関連する骨・関節疾患、例えば、骨粗鬆症、変形性関節症、慢性関節リウマチ、関節炎、滑膜炎、代謝性関節症、スポーツによる関節障害、先天性骨系統疾患[例えば、軟骨形成の低下している骨系統疾患・変形性関節症を合併する先天性骨系統疾患(例:軟骨無形成症、多発性骨端異形成症、脊椎骨端異形成症、骨幹端異形成症、Stickler症候群、偽性軟骨無形成症等)]に対する遺伝的感受性の診断に使用することができる。、また、本発明の診断用キットは、軟骨基質の産生能・軟骨細胞分化能の異常亢進が関連する疾患、例えば、先天性骨系統疾患[例えば、軟骨形成の亢進している骨系統疾患(例:多発性外骨腫、片側肥大、オリエール病、マフッチ症候群等)]、骨軟骨腫、骨腫瘍、軟骨腫瘍などの疾患に罹患しやすい(感受性である)と診断することができる。
本発明はまた、GDF5の発現および/または活性を調節(増強または低減)することによる、骨・関節疾患、特に軟骨基質の変性・量もしくは産生異常(低下または増大)、軟骨細胞分化異常(低下または亢進)が関連する疾患の予防および/または治療に関する。
本発明で用いられるGDF5タンパク質は、配列番号:3で表されるアミノ酸配列中アミノ酸番号1〜120で示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質である。該タンパク質は、ヒトもしくは他の温血動物(例えば、サル、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ニワトリなど)の細胞[例えば、肝細胞、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、杯細胞、内皮細胞、平滑筋細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例:マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくは癌細胞など]またはそれらの細胞が存在するあらゆる組織もしくは器官[例えば、脳、脳の各部位(例:嗅球、扁桃核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄、小脳)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆嚢、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(例:大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、前立腺、睾丸、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、脂肪組織(例:褐色脂肪組織、白色脂肪組織)、骨格筋など]より単離された天然タンパク質であってもよく、また、後述のように、化学的に、もしくは無細胞タンパク質合成系を用いて生化学的に合成されたタンパク質であってもよい。あるいは、上記アミノ酸配列をコードする塩基配列を有する核酸を導入された形質転換体から産生される組換えタンパク質であってもよい。
配列番号:3で表されるアミノ酸配列中アミノ酸番号1〜120で示されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列とは、配列番号:3で表されるアミノ酸配列中アミノ酸番号1〜120で示されるアミノ酸配列と約50%以上、好ましくは約60%以上、より好ましくは約70%以上、さらに好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列であって、該アミノ酸配列を有するタンパク質が配列番号:3で表されるアミノ酸配列中アミノ酸番号1〜120で示されるアミノ酸配列を含有するタンパク質と実質的に同質の活性を有するような配列をいう。ここで「相同性」とは、当該技術分野において公知の数学的アルゴリズムを用いて2つのアミノ酸配列をアラインさせた場合の、最適なアラインメント(好ましくは、該アルゴリズムは最適なアラインメントのために配列の一方もしくは両方へのギャップの導入を考慮し得るものである)における、オーバーラップする全アミノ酸残基に対する同一アミノ酸および類似アミノ酸残基の割合(%)を意味する。「類似アミノ酸」とは物理化学的性質において類似したアミノ酸を意味し、例えば、芳香族アミノ酸(Phe、Trp、Tyr)、脂肪族アミノ酸(Ala、Leu、Ile、Val)、極性アミノ酸(Gln、Asn)、塩基性アミノ酸(Lys、Arg、His)、酸性アミノ酸(Glu、Asp)、水酸基を有するアミノ酸(Ser、Thr)、側鎖の小さいアミノ酸(Gly、Ala、Ser、Thr、Met)などの同じグループに分類されるアミノ酸が挙げられる。このような類似アミノ酸による置換はタンパク質の表現型に変化をもたらさない(即ち、保存的アミノ酸置換である)ことが予測される。保存的アミノ酸置換の具体例は当該技術分野で周知であり、種々の文献に記載されている(例えば、Bowieら,Science, 247: 1306-1310 (1990)を参照)。
アミノ酸配列の相同性を決定するためのアルゴリズムとしては、例えば、Karlinら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 5873-5877 (1993)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはNBLASTおよびXBLASTプログラム(version 2.0)に組み込まれている(Altschulら, Nucleic Acids Res., 25: 3389-3402 (1997))]、Needlemanら, J. Mol. Biol., 48: 444-453 (1970)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはGCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムに組み込まれている]、MyersおよびMiller, CABIOS, 4: 11-17 (1988)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはCGC配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(version 2.0)に組み込まれている]、Pearsonら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85: 2444-2448 (1988)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはGCGソフトウェアパッケージ中のFASTAプログラムに組み込まれている]等が挙げられるが、それらに限定されない。
実質的に同質の活性としては、例えば、軟骨基質プロテオグリカン[例:アグリカン等]産生促進活性、軟骨細胞分化促進活性などが挙げられる。「実質的に同質」とは、それらの性質が定性的に(例:生理学的に、または薬理学的に)同等であることを意味する。したがって、上記の活性の程度といった量的要素については同等であることが好ましいが、異なっていてもよい(例えば、約0.01〜約100倍、好ましくは約0.1〜約10倍、より好ましくは約0.5〜約2倍)。
GDF5の活性の測定は自体公知の方法に準じて行うことができる。例えば、軟骨細胞の培養液に[35S]標識した硫酸を添加してプロテオグリカンへの標識剤の取り込みを検出する方法、GDF5存在下に培養した軟骨細胞をアルシアンブルー染色して分光学的にグリコサミノグリカン量の変化を測定する方法、GDF5遺伝子を有する組換えウイルスを感染させた軟骨に[3H]標識したチミジンをパルスして標識化された細胞の割合を測定する方法などが挙げられるが、それらに限定されない。
また、本発明で用いられるGDF5としては、例えば、(1)配列番号:3で表されるアミノ酸配列中アミノ酸番号1〜120で示されるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(2)配列番号:3で表されるアミノ酸配列中アミノ酸番号1〜120で示されるアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、(3)配列番号:3で表されるアミノ酸配列中アミノ酸番号1〜120で示されるアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、(4)配列番号:3で表されるアミノ酸配列中アミノ酸番号1〜120で示されるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または(5)それらを組み合わせたアミノ酸配列を含有するタンパク質であって、配列番号:3で表されるアミノ酸配列中アミノ酸番号1〜120で示されるアミノ酸配列を含有するタンパク質と実質的に同質の活性を有するタンパク質も含まれる。
上記のようにアミノ酸配列が挿入、欠失または置換されている場合、その挿入、欠失または置換の位置は、当該タンパク質の活性を損なわない限り、特に限定されない。
本明細書においてアミノ酸配列により特定されるタンパク質は、ペプチド標記の慣例に従って、左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)である。配列番号:3で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質をはじめとする、本発明で用いられるGDF5は、C末端がカルボキシル基(-COOH)、カルボキシレート(-COO-)、アミド(-CONH2)またはエステル(-COOR)の何れであってもよい。
ここでエステルにおけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチルなどのC1-6アルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3-8シクロアルキル基、例えば、フェニル、α−ナフチルなどのC6-12アリール基、例えば、ベンジル、フェネチルなどのフェニル−C1-2アルキル基もしくはα−ナフチルメチルなどのα−ナフチル−C1-2アルキル基などのC7-14アラルキル基、ピバロイルオキシメチル基などが用いられる。
本発明で用いられるタンパク質がC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものも本発明で用いられるタンパク質に含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルなどが用いられる。
さらに、本発明で用いられるタンパク質には、N末端のアミノ酸残基(例:メチオニン残基)のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1-6アルカノイルなどのC1-6アシル基など)で保護されているもの、生体内で切断されて生成するN末端のグルタミン残基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば-OH、-SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1-6アルカノイル基などのC1-6アシル基など)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖タンパク質などの複合タンパク質なども含まれる。
本発明で用いられるタンパク質の具体例としては、例えば、配列番号:3で表されるアミノ酸配列を有する前駆ポリペプチドから生成されるヒトGDF5(GenBankアクセッション登録番号:NP_000548)などがあげられる。
本発明で用いられるGDF5の部分ペプチドは、配列番号:3で表されるアミノ酸配列中アミノ酸番号1〜120で示されるアミノ酸配列の部分アミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するペプチドであって、前記した本発明で用いられるGDF5と実質的に同質の活性を有するものであればいずれのものでもよい。ここで「実質的に同質の活性」とは上記と同義である。また、「実質的に同質の活性」の測定は、上記と同様にして行うことができる。
具体的には、該部分ペプチドとしては、本発明で用いられるGDF5の構成アミノ酸配列のうち少なくとも50個以上、好ましくは70個以上、より好ましくは100個以上のアミノ酸配列を有するペプチドなどが用いられる。
また、本発明で用いられるGDF5の部分ペプチドは、(1)そのアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が欠失し、または、(2)そのアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が付加し、または、(3)そのアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が挿入され、または、(4)そのアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜10個程度、より好ましくは1〜5個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されていてもよく、あるいは(5)それらが組み合わされていてもよい。
本発明で用いられるGDF5の部分ペプチドは、C末端がカルボキシル基(-COOH)、カルボキシレート(-COO-)、アミド(-CONH2)またはエステル(-COOR)の何れであってもよい。ここでエステルにおけるRとしては、GDF5について上記したと同様のものが挙げられる。また、該部分ペプチドがC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、該カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものも本発明で用いられるGDF5の部分ペプチドに含まれる。この場合のエステルとしては、C末端のエステルと同様のものが例示される。さらに、該部分ペプチドには、GDF5の場合と同様に、N末端のアミノ酸残基(例:メチオニン残基)のアミノ基が保護基で保護されているもの、N端側が生体内で切断され生成したグルタミン残基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基が適当な保護基で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖ペプチドなどの複合ペプチドなども含まれる。
本発明で用いられるGDF5またはその部分ペプチドの塩としては、生理学的に許容される酸(例:無機酸、有機酸)や塩基(例:アルカリ金属塩)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用いられる。
本発明で用いられるGDF5またはその塩は、前述したヒトや他の温血動物の細胞または組織から自体公知のタンパク質の精製方法によって調製することができる。具体的には、該動物のの組織または細胞をホモジナイズした後、酸などで抽出を行い、該抽出液を逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーを組み合わせることにより精製単離することができる。
本発明で用いられるGDF5もしくは部分ペプチドまたはその塩(以下、「GDF5類」と包括的に略記する場合がある)は、公知のペプチド合成法に従って製造することもできる。
ペプチド合成法は、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれであってもよい。本発明のタンパク質を構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合し、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的とするタンパク質を製造することができる。ここで、縮合や保護基の脱離は、自体公知の方法、例えば、以下の(1)〜(5)に記載された方法に従って行われる。
(1) M. Bodanszky および M.A. Ondetti、ペプチド・シンセシス (Peptide Synthesis), Interscience Publishers, New York (1966年)
(2) SchroederおよびLuebke、ザ・ペプチド(The Peptide), Academic Press, New York (1965年)
(3) 泉屋信夫他、ペプチド合成の基礎と実験、 丸善(株) (1975年)
(4) 矢島治明 および榊原俊平、生化学実験講座 1、 タンパク質の化学IV、 205、(1977年)
(5) 矢島治明監修、続医薬品の開発、第14巻、ペプチド合成、広川書店
本発明のGDF5類の合成には、通常市販のタンパク質合成用樹脂を用いることができる。そのような樹脂としては、例えば、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹脂、アミノメチル樹脂、4-ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂、4-メチルベンズヒドリルアミン樹脂、PAM樹脂、4-ヒドロキシメチルメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4-(2’,4’-ジメトキシフェニル−ヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂、4-(2’,4’-ジメトキシフェニル-Fmocアミノエチル)フェノキシ樹脂などを挙げることができる。このような樹脂を用い、α−アミノ基と側鎖官能基を適当に保護したアミノ酸を、目的とするタンパク質等の配列通りに、自体公知の各種縮合方法に従い、樹脂上で縮合させる。反応の最後に樹脂からタンパク質または部分ペプチドを切り出すと同時に各種保護基を除去し、さらに高希釈溶液中で分子内ジスルフィド結合形成反応を実施し、目的のタンパク質もしくは部分ペプチドまたはそれらのアミド体を取得する。
上記した保護アミノ酸の縮合に関しては、タンパク質合成に使用できる各種活性化試薬を用いることができるが、特に、カルボジイミド類がよい。カルボジイミド類としては、DCC、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロリル)カルボジイミドなどが用いられる。これらによる活性化にはラセミ化抑制添加剤(例えば、HOBt,HOOBt)とともに保護アミノ酸を直接樹脂に添加するかまたは、対称酸無水物またはHOBtエステルあるいはHOOBtエステルとしてあらかじめ保護アミノ酸の活性化を行なった後に樹脂に添加することができる。
保護アミノ酸の活性化や樹脂との縮合に用いられる溶媒としては、タンパク質縮合反応に使用しうることが知られている溶媒から適宜選択されうる。例えば、N,N-ジメチルホルムアミド,N,N-ジメチルアセトアミド,N-メチルピロリドンなどの酸アミド類、塩化メチレン,クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、トリフルオロエタノールなどのアルコール類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ピリジン,ジオキサン,テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトニトリル,プロピオニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル,酢酸エチルなどのエステル類あるいはこれらの適宜の混合物などが用いられる。反応温度はタンパク質結合形成反応に使用され得ることが知られている範囲から適宜選択され、通常約-20℃〜50℃の範囲から適宜選択される。活性化されたアミノ酸誘導体は通常1.5〜4倍過剰で用いられる。ニンヒドリン反応を用いたテストの結果、縮合が不十分な場合には保護基の脱離を行なうことなく縮合反応を繰り返すことにより十分な縮合を行なうことができる。反応を繰り返しても十分な縮合が得られないときには、無水酢酸またはアセチルイミダゾールを用いて未反応アミノ酸をアセチル化することによって、後の反応に影響を与えないようにすることができる。
原料の反応に関与すべきでない官能基の保護ならびに保護基、およびその保護基の脱離、反応に関与する官能基の活性化などは公知の基または公知の手段から適宜選択しうる。
原料のアミノ基の保護基としては、例えば、Z、Boc、t-ペンチルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、4-メトキシベンジルオキシカルボニル、Cl-Z、Br-Z、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホルミル、2-ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、Fmocなどが用いられる。
カルボキシル基は、例えば、アルキルエステル化(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、t-ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、2-アダマンチルなどの直鎖状、分枝状もしくは環状アルキルエステル化)、アラルキルエステル化(例えば、ベンジルエステル、4-ニトロベンジルエステル、4-メトキシベンジルエステル、4-クロロベンジルエステル、ベンズヒドリルエステル化)、フェナシルエステル化、ベンジルオキシカルボニルヒドラジド化、t-ブトキシカルボニルヒドラジド化、トリチルヒドラジド化などによって保護することができる。
セリンの水酸基は、例えば、エステル化またはエーテル化によって保護することができる。このエステル化に適する基としては、例えば、アセチル基などの低級(C1-6)アルカノイル基、ベンゾイル基などのアロイル基、ベンジルオキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭酸から誘導される基などが用いられる。また、エーテル化に適する基としては、例えば、ベンジル基、テトラヒドロピラニル基、t-ブチル基などである。
チロシンのフェノール性水酸基の保護基としては、例えば、Bzl、Cl2-Bzl、2-ニトロベンジル、Br-Z、t-ブチルなどが用いられる。
ヒスチジンのイミダゾールの保護基としては、例えば、Tos、4-メトキシ-2,3,6-トリメチルベンゼンスルホニル、DNP、ベンジルオキシメチル、Bum、Boc、Trt、Fmocなどが用いられる。
保護基の除去(脱離)方法としては、例えば、Pd-黒あるいはPd-炭素などの触媒の存在下での水素気流中での接触還元や、また、無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸あるいはこれらの混合液などによる酸処理や、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジンなどによる塩基処理、また液体アンモニア中ナトリウムによる還元なども用いられる。上記酸処理による脱離反応は、一般に約-20℃〜40℃の温度で行なわれるが、酸処理においては、例えば、アニソール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾール、パラクレゾール、ジメチルスルフィド、1,4-ブタンジチオール、1,2-エタンジチオールなどのようなカチオン捕捉剤の添加が有効である。また、ヒスチジンのイミダゾール保護基として用いられる2,4-ジニトロフェニル基はチオフェノール処理により除去され、トリプトファンのインドール保護基として用いられるホルミル基は上記の1,2-エタンジチオール、1,4-ブタンジチオールなどの存在下の酸処理による脱保護以外に、希水酸化ナトリウム溶液、希アンモニアなどによるアルカリ処理によっても除去される。
原料のカルボキシル基の活性化されたものとしては、例えば、対応する酸無水物、アジド、活性エステル〔アルコール(例えば、ペンタクロロフェノール、2,4,5-トリクロロフェノール、2,4-ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、パラニトロフェノール、HONB、N-ヒドロキシスクシミド、N-ヒドロキシフタルイミド、HOBt)とのエステル〕などが用いられる。原料のアミノ基の活性化されたものとしては、例えば、対応するリン酸アミドが用いられる。
タンパク質または部分ペプチドのアミド体を得る別の方法としては、例えば、まず、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基をアミド化して保護した後、アミノ基側にペプチド(タンパク質)鎖を所望の鎖長まで延ばした後、該ペプチド鎖のN末端のα−アミノ基の保護基のみを除いたタンパク質または部分ペプチドとC末端のカルボキシル基の保護基のみを除去したタンパク質または部分ペプチドとを製造し、これらのタンパク質またはペプチドを上記したような混合溶媒中で縮合させる。縮合反応の詳細については上記と同様である。縮合により得られた保護タンパク質またはペプチドを精製した後、上記方法によりすべての保護基を除去し、所望の粗タンパク質またはペプチドを得ることができる。この粗タンパク質またはペプチドは既知の各種精製手段を駆使して精製し、主要画分を凍結乾燥することで所望のタンパク質またはペプチドのアミド体を得ることができる。
タンパク質またはペプチドのエステル体を得るには、例えば、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基を所望のアルコール類と縮合しアミノ酸エステルとした後、タンパク質またはペプチドのアミド体と同様にして、所望のタンパク質またはペプチドのエステル体を得ることができる。
本発明で用いられるGDF5の部分ペプチドまたはその塩は、上述もしくは後述のいずれかの方法により得られるGDF5またはその塩を、適当なペプチダーゼで切断することによっても製造することができる。
このようにして得られた本発明のGDF5類は、公知の精製法により精製単離することができる。ここで、精製法としては、例えば、溶媒抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、再結晶、これらの組み合わせなどが挙げられる。
上記方法で得られるタンパク質または部分ペプチドが遊離体である場合には、該遊離体を公知の方法あるいはそれに準じる方法によって適当な塩に変換することができるし、逆にタンパク質が塩として得られた場合には、該塩を公知の方法あるいはそれに準じる方法によって遊離体または他の塩に変換することができる。
本発明のGDF5類は、GDF5またはその部分ペプチドをコードする核酸を含有する発現ベクターを導入した形質転換体を培養してGDF5類を生成せしめ、得られる培養物からGDF5類を分離・精製することによって製造することもできる。
GDF5またはその部分ペプチドをコードする核酸としては、前述した本発明で用いられるGDF5のアミノ酸配列もしくはその部分アミノ酸配列をコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものでもよい。該核酸は、DNAであってもRNAであってもよく、あるいはDNA/RNAキメラであってもよいが、好ましくはDNAが挙げられる。また、該核酸は二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNAまたはDNA:RNAのハイブリッドでもよい。
GDF5またはその部分ペプチドをコードするDNAは、ゲノムDNA、ヒトもしくは他の温血動物(例えば、サル、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ニワトリなど)の細胞[例えば、肝細胞、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、杯細胞、内皮細胞、平滑筋細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例:マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくは癌細胞など]またはそれらの細胞が存在するあらゆる組織もしくは器官[例えば、脳、脳の各部位(例:嗅球、扁桃核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄、小脳)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆嚢、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(例:大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、前立腺、睾丸、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、脂肪組織(例:褐色脂肪組織、白色脂肪組織)、骨格筋など]由来のcDNA、合成DNAなどが挙げられる。GDF5またはその部分ペプチドをコードするゲノムDNAおよびcDNAは、上記した細胞・組織より調製したゲノムDNA画分および全RNAもしくはmRNA画分をそれぞれ鋳型として用い、Polymerase Chain Reaction(以下、「PCR法」と略称する)およびReverse Transcriptase-PCR(以下、「RT-PCR法」と略称する)によって直接増幅することもできる。あるいは、GDF5またはその部分ペプチドをコードするゲノムDNAおよびcDNAは、上記した細胞・組織より調製したゲノムDNAおよび全RNAもしくはmRNAの断片を適当なベクター中に挿入して調製されるゲノムDNAライブラリーおよびcDNAライブラリーから、コロニーもしくはプラークハイブリダイゼーション法またはPCR法などにより、それぞれクローニングすることもできる。ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。
GDF5をコードするDNAとしては、例えば、配列番号:2で表される塩基配列中塩基番号1463〜1822で示される塩基配列を含有するDNA、あるいは配列番号:2で表される塩基配列中塩基番号1463〜1822で示される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含有し、前記した配列番号:3で表されるアミノ酸配列中アミノ酸番号1〜120で示されるアミノ酸配列を含有するタンパク質と実質的に同質の活性(例えば、軟骨基質プロテオグリカン産生促進活性、軟骨細胞分化促進活性など)を有するタンパク質もしくはペプチドをコードするDNAなどが挙げられる。
配列番号:2で表される塩基配列中塩基番号1463〜1822で示される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号:2で表される塩基配列中塩基番号1463〜1822で示される塩基配列と約60%以上、好ましくは約70%以上、さらに好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
本明細書における塩基配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=-3)にて計算することができる。塩基配列の相同性を決定するための他のアルゴリズムとしては、上記したアミノ酸配列の相同性計算アルゴリズムが同様に好ましく例示される。
ハイブリダイゼーションは、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)第2版(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、ハイブリダイゼーションは、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。ハイブリダイゼーションは、好ましくは、ハイストリンジェントな条件に従って行なうことができる。
ハイストリンジェントな条件としては、例えば、ナトリウム塩濃度が約19〜約40mM、好ましくは約19〜約20mMで、温度が約50〜約70℃、好ましくは約60〜約65℃の条件等が挙げられる。特に、ナトリウム塩濃度が約19mMで温度が約65℃の場合が好ましい。当業者は、ハイブリダイゼーション溶液の塩濃度、ハイブリダゼーション反応の温度、プローブ濃度、プローブの長さ、ミスマッチの数、ハイブリダイゼーション反応の時間、洗浄液の塩濃度、洗浄の温度等を適宜変更することにより、所望のストリンジェンシーに容易に調節することができる。
GDF5をコードするDNAは、好ましくは配列番号:2で表される塩基配列を含有するヒトGDF5 cDNA(GenBankアクセッション番号:NM_000557.2)もしくはそのアレル変異体または他の温血動物(例えば、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ、トリ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジーなど)におけるそのオルソログ(ortholog)等の塩基配列中、成熟タンパク質部分をコードする塩基配列(配列番号:2で表される塩基配列においては塩基番号1463〜1822で示される塩基配列)を少なくとも含有するDNAである。
GDF5の部分ペプチドをコードするDNAは、配列番号:3で表されるアミノ酸配列中アミノ酸番号1〜120で示されるアミノ酸配列の一部と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むものであればいかなるものであってもよい。また、ゲノムDNA、上記した細胞・組織由来のcDNA、合成DNAのいずれでもよい。
具体的には、該部分ペプチドをコードするDNAとしては、例えば、
(1)配列番号:2で表される塩基配列中塩基番号1463〜1822で示される塩基配列を有するDNAの部分塩基配列、または
(2)配列番号:2で表される塩基配列中塩基番号1463〜1822で示される塩基配列を有するDNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、且つ該DNAにコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質と実質的に同質の活性(例:軟骨基質プロテオグリカン産生促進活性、軟骨細胞分化促進活性など)を有するペプチドをコードするDNAなどが用いられる。
配列番号:2で表される塩基配列中塩基番号1463〜1822で示される塩基配列を有するDNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、該塩基配列中の対応する部分と約60%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
GDF5またはその部分ペプチドをコードするDNAは、該タンパク質またはペプチドをコードする塩基配列の一部分を有する合成DNAプライマーを用いてPCR法によって増幅するか、または適当な発現ベクターに組み込んだDNAを、GDF5の一部あるいは全領域をコードするDNA断片もしくは合成DNAを標識したものとハイブリダイゼーションさせることによってクローニングすることができる。ハイブリダイゼーションは、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)第2版(前述)に記載の方法などに従って行うことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、ハイブリダイゼーションは、該ライブラリーに添付された使用説明書に記載の方法に従って行うことができる。
DNAの塩基配列は、公知のキット、例えば、MutanTM-super Express Km(宝酒造(株))、MutanTM-K(宝酒造(株))等を用いて、ODA-LA PCR法、Gapped duplex法、Kunkel法等の自体公知の方法あるいはそれらに準じる方法に従って変換することができる。
クローン化されたDNAは、目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化するか、リンカーを付加した後に、使用することができる。該DNAはその5’末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGAまたはTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することができる。
上記のGDF5またはその部分ペプチドをコードするDNAを含む発現ベクターで宿主を形質転換し、得られる形質転換体を培養することによって、該タンパク質またはペプチドを製造することができる。
GDF5またはその部分ペプチドをコードするDNAを含む発現ベクターは、例えば、GDF5をコードするDNAから目的とするDNA断片を切り出し、該DNA断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。
発現ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例:pBR322,pBR325,pUC12,pUC13);枯草菌由来のプラスミド(例:pUB110,pTP5,pC194);酵母由来プラスミド(例:pSH19,pSH15);λファージなどのバクテリオファージ;レトロウイルス,ワクシニアウイルス,バキュロウイルスなどの動物ウイルス;pA1-11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neoなどが用いられる。
プロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。
例えば、宿主が動物細胞である場合、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、HSV-TKプロモーターなどが用いられる。なかでも、CMVプロモーター、SRαプロモーターなどが好ましい。
宿主がエシェリヒア属菌である場合、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーター、T7プロモーターなどが好ましい。
宿主がバチルス属菌である場合、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなどが好ましい。
宿主が酵母である場合、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーターなどが好ましい。
宿主が昆虫細胞である場合、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが好ましい。
発現ベクターとしては、上記の他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製オリジン(以下、SV40oriと略称する場合がある)などを含有しているものを用いることができる。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素(以下、dhfrと略称する場合がある)遺伝子〔メソトレキセート(MTX)耐性〕、アンピシリン耐性遺伝子(以下、Amprと略称する場合がある)、ネオマイシン耐性遺伝子(以下、Neorと略称する場合がある、G418耐性)等が挙げられる。特に、dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞を用い、dhfr遺伝子を選択マーカーとして使用する場合、目的遺伝子をチミジンを含まない培地によって選択することもできる。
また、必要に応じて、宿主に合ったシグナル(もしくはプレプロ)配列をコードする塩基配列を、GDF5またはその部分ペプチドをコードするDNAの5’末端側に付加[またはネイティブなシグナルコドン(例:配列番号:2で表される塩基配列中塩基番号320〜376で示される塩基配列)もしくはプレプロコドン(例:配列番号:2で表される塩基配列中塩基番号320〜1462で示される塩基配列)と置換]してもよい。宿主がエシェリヒア属菌である場合、PhoA・シグナル配列、OmpA・シグナル配列などが;宿主がバチルス属菌である場合、α−アミラーゼ・シグナル配列、サブチリシン・シグナル配列などが;宿主が酵母である場合、MFα・シグナル(プレプロ)配列、SUC2・シグナル配列などが;宿主が動物細胞である場合、インシュリン・シグナル(プレプロ)配列、α−インターフェロン・シグナル配列、抗体分子・シグナル配列などがそれぞれ用いられる。
宿主としては、例えば、エシェリヒア属菌、バチルス属菌、酵母、昆虫細胞、昆虫、動物細胞などが用いられる。
エシェリヒア属菌としては、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)K12・DH1〔プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),60巻,160 (1968)〕,JM103〔ヌクイレック・アシッズ・リサーチ(Nucleic Acids Research),9巻,309 (1981)〕,JA221〔ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(Journal of Molecular Biology),120巻,517 (1978)〕,HB101〔ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(Journal of Molecular Biology),41巻,459 (1969)〕,C600〔ジェネティックス(Genetics),39巻,440 (1954)〕などが用いられる。
バチルス属菌としては、例えば、バチルス・サブチルス(Bacillus subtilis)MI114〔ジーン(Gene),24巻,255 (1983)〕,207-21〔ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(Journal of Biochemistry),95巻,87 (1984)〕などが用いられる。
酵母としては、例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)AH22,AH22R-,NA87-11A,DKD-5D,20B-12、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)NCYC1913,NCYC2036、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)KM71などが用いられる。
昆虫細胞としては、例えば、ウイルスがAcNPVの場合、夜盗蛾の幼虫由来株化細胞(Spodoptera frugiperda cell;Sf細胞)、Trichoplusia niの中腸由来のMG1細胞、Trichoplusia niの卵由来のHigh FiveTM細胞、Mamestra brassicae由来の細胞、Estigmena acrea由来の細胞などが用いられる。ウイルスがBmNPVの場合、昆虫細胞としては、蚕由来株化細胞(Bombyx mori N 細胞;BmN細胞)などが用いられる。該Sf細胞としては、例えば、Sf9細胞(ATCC CRL1711)、Sf21細胞(以上、Vaughn, J.L.ら、イン・ヴィボ(In Vivo),13, 213-217 (1977))などが用いられる。
昆虫としては、例えば、カイコの幼虫などが用いられる〔前田ら、ネイチャー(Nature),315巻,592 (1985)〕。
動物細胞としては、例えば、サル細胞COS-7,Vero,チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO細胞と略記),dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO(dhfr-)細胞と略記),マウスL細胞,マウスAtT-20,マウスミエローマ細胞,ラットGH3,ヒトFL細胞などが用いられる。
形質転換は、宿主の種類に応じ、公知の方法に従って実施することができる。
エシェリヒア属菌は、例えば、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンジイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),69巻,2110 (1972) やジーン(Gene),17巻,107 (1982) などに記載の方法に従って形質転換することができる。
バチルス属菌は、例えば、モレキュラー・アンド・ジェネラル・ジェネティックス(Molecular & General Genetics),168巻,111 (1979) などに記載の方法に従って形質転換することができる。
酵母は、例えば、メソッズ・イン・エンザイモロジー(Methods in Enzymology),194巻,182-187 (1991)、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),75巻,1929 (1978) などに記載の方法に従って形質転換することができる。
昆虫細胞および昆虫は、例えば、バイオ/テクノロジー(Bio/Technology),6, 47-55 (1988) などに記載の方法に従って形質転換することができる。
動物細胞は、例えば、細胞工学別冊8 新細胞工学実験プロトコール.263-267 (1995)(秀潤社発行)、ヴィロロジー(Virology),52巻,456 (1973) に記載の方法に従って形質転換することができる。
形質転換体の培養は、宿主の種類に応じ、公知の方法に従って実施することができる。
例えば、宿主がエシェリヒア属菌またはバチルス属菌である形質転換体を培養する場合、培養に使用される培地としては液体培地が好ましい。また、培地は、形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物などを含有することが好ましい。ここで、炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、可溶性澱粉、ショ糖などが;窒素源としては、例えば、アンモニウム塩類、硝酸塩類、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などの無機または有機物質が;無機物としては、例えば、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウムなどがそれぞれ挙げられる。また、培地には、酵母エキス、ビタミン類、生長促進因子などを添加してもよい。培地のpHは、好ましくは約5〜8である。
宿主がエシェリヒア属菌である形質転換体を培養する場合の培地としては、例えば、グルコース、カザミノ酸を含むM9培地〔ミラー(Miller),ジャーナル・オブ・エクスペリメンツ・イン・モレキュラー・ジェネティックス(Journal of Experiments in Molecular Genetics),431-433,Cold Spring Harbor Laboratory, New York 1972〕が好ましい。必要により、プロモーターを効率よく働かせるために、例えば、3β-インドリルアクリル酸のような薬剤を培地に添加してもよい。
宿主がエシェリヒア属菌である形質転換体の培養は、通常約15〜43℃で、約3〜24時間行なわれる。必要により、通気や撹拌を行ってもよい。
宿主がバチルス属菌である形質転換体の培養は、通常約30〜40℃で、約6〜24時間行なわれる。必要により、通気や撹拌を行ってもよい。
宿主が酵母である形質転換体を培養する場合の培地としては、例えば、バークホールダー(Burkholder)最小培地〔Bostian, K. L. ら、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),77巻,4505 (1980)〕や0.5%カザミノ酸を含有するSD培地〔Bitter, G. A. ら、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),81巻,5330 (1984)〕などが挙げられる。培地のpHは、好ましくは約5〜8である。培養は、通常約20℃〜35℃で、約24〜72時間行なわれる。必要に応じて、通気や撹拌を行ってもよい。
宿主が昆虫細胞または昆虫である形質転換体を培養する場合の培地としては、例えばGrace's Insect Medium(Grace, T.C.C.,ネイチャー(Nature),195, 788 (1962))に非動化した10%ウシ血清等の添加物を適宜加えたものなどが用いられる。培地のpHは、好ましくは約6.2〜6.4である。培養は、通常約27℃で、約3〜5日間行なわれる。必要に応じて通気や撹拌を行ってもよい。
宿主が動物細胞である形質転換体を培養する場合の培地としては、例えば、約5〜20%の胎児牛血清を含むMEM培地〔サイエンス(Science),122巻,501 (1952)〕,DMEM培地〔ヴィロロジー(Virology),8巻,396 (1959)〕,RPMI 1640培地〔ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・メディカル・アソシエーション(The Journal of the American Medical Association),199巻,519 (1967)〕,199培地〔プロシージング・オブ・ザ・ソサイエティ・フォー・ザ・バイオロジカル・メディスン(Proceeding of the Society for the Biological Medicine),73巻,1 (1950)〕などが用いられる。培地のpHは、好ましくは約6〜8である。培養は、通常約30℃〜40℃で、約15〜60時間行なわれる。必要に応じて通気や撹拌を行ってもよい。
以上のようにして、形質転換体の細胞内または細胞外にGDF5類を生成させることができる。
前記形質転換体を培養して得られる培養物から、GDF5類を自体公知の方法に従って分離精製することができる。
例えば、GDF5類を培養菌体あるいは細胞から抽出する場合、培養物から公知の方法で集めた菌体あるいは細胞を適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチームおよび/または凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破壊した後、遠心分離やろ過により可溶性タンパク質の粗抽出液を得る方法などが適宜用いられる。該緩衝液は、尿素や塩酸グアニジンなどのタンパク質変性剤や、トリトンX-100TMなどの界面活性剤を含んでいてもよい。一方、GDF5類が細胞外に分泌される場合は、培養物から遠心分離または濾過等により培養上清を回収する。
このようにして得られた可溶性画分もしくは培養上清中に含まれるGDF5類の単離精製は、自体公知の方法に従って行うことができる。このような方法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法;透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法;イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法;アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法;逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法;等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法;などが用いられる。これらの方法は、適宜組み合わせることもできる。
かくして得られるGDF5またはその部分ペプチドが遊離体である場合には、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法によって該遊離体を塩に変換することができ、該タンパク質またはペプチドが塩として得られた場合には、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法により該塩を遊離体または他の塩に変換することができる。
なお、形質転換体が産生するGDF5類を、精製前または精製後に適当なタンパク質修飾酵素を作用させることにより、任意に修飾を加えたり、ポリペプチドを部分的に除去することもできる。該タンパク質修飾酵素としては、例えば、トリプシン、キモトリプシン、アルギニルエンドペプチダーゼ、プロテインキナーゼ、グリコシダーゼなどが用いられる。
かくして得られるGDF5類の存在は、特異的な抗体を用いたエンザイムイムノアッセイやウエスタンブロッティングなどにより確認することができる。
さらに、GDF5またはその部分ペプチドは、それをコードするDNAに対応するRNAを鋳型として、ウサギ網状赤血球ライセート、コムギ胚芽ライセート、大腸菌ライセートなどからなる無細胞タンパク質翻訳系を用いてインビトロ翻訳することによっても合成することができる。あるいは、さらにRNAポリメラーゼを含む無細胞転写/翻訳系を用いて、GDF5またはその部分ペプチドをコードするDNAを鋳型としても合成することができる。無細胞タンパク質(転写/)翻訳系は市販のものを用いることもできるし、それ自体既知の方法、具体的には大腸菌抽出液はPratt J.M.ら, “Transcription and Tranlation”, Hames B.D.およびHiggins S.J.編, IRL Press, Oxford 179-209 (1984)に記載の方法等に準じて調製することもできる。市販の細胞ライセートとしては、大腸菌由来のものはE.coli S30 extract system (Promega社製)やRTS 500 Rapid Tranlation System (Roche社製)等が挙げられ、ウサギ網状赤血球由来のものはRabbit Reticulocyte Lysate System (Promega社製)等、さらにコムギ胚芽由来のものはPROTEIOSTM (TOYOBO社製)等が挙げられる。このうちコムギ胚芽ライセートを用いたものが好適である。コムギ胚芽ライセートの作製法としては、例えばJohnston F.B.ら, Nature, 179, 160-161 (1957)あるいはErickson A.H.ら, Meth. Enzymol., 96, 38-50 (1996)等に記載の方法を用いることができる。
タンパク質合成のためのシステムまたは装置としては、バッチ法(Pratt,J.M.ら (1984) 前述)や、アミノ酸、エネルギー源等を連続的に反応系に供給する連続式無細胞タンパク質合成システム(Spirin A.S.ら, Science, 242, 1162-1164 (1988))、透析法(木川ら、第21回日本分子生物学会、WID6)、あるいは重層法(PROTEIOSTMWheat germ cell-free protein synthesis core kit取扱説明書:TOYOBO社製)等が挙げられる。さらには、合成反応系に、鋳型のRNA、アミノ酸、エネルギー源等を必要時に供給し、合成物や分解物を必要時に排出する方法(特開2000-333673)等を用いることができる。
「配列番号:3で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドをコードする塩基配列またはその一部」、あるいは「該塩基配列と相補的な塩基配列またはその一部」を含有する核酸とは、前述のGDF5またはその部分ペプチドをコードする核酸だけではなく、GDF5の前駆ポリペプチド(プレプロもしくはプロタンパク質)をコードする核酸や、コドンの読み枠の合わない部分塩基配列をも含む意味で用いられる。該核酸はDNAであってもRNAであってもよく、あるいはDNA/RNAキメラであってもよい。好ましくはDNAが挙げられる。また、該核酸は二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNAまたはDNA:RNAのハイブリッドでもよい。
目的核酸の標的領域と相補的な塩基配列を含む核酸、即ち、目的核酸とハイブリダイズすることができる核酸は、該目的核酸に対して「アンチセンス」であるということができる。一方、目的核酸の標的領域と相同性を有する塩基配列を含む核酸は、該目的核酸に対して「センス」であるということができる。ここで「相同性を有する」または「相補的である」とは、塩基配列間で約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の同一性または相補性を有することをいう。
GDF5をコードする塩基配列と相補的な塩基配列またはその一部を含有する核酸(以下、「アンチセンスGDF5」ともいう)は、クローン化した、あるいは決定されたGDF5をコードする核酸の塩基配列情報に基づき設計し、合成しうる。そうした核酸は、GDF5をコードする遺伝子の複製または発現を阻害することができる。即ち、アンチセンスGDF5は、GDF5をコードする遺伝子から転写されるRNAとハイブリダイズすることができ、mRNAの合成(プロセッシング)または機能(タンパク質への翻訳)を阻害することができる。
アンチセンスGDF5の標的領域は、アンチセンス核酸がハイブリダイズすることにより、結果としてGDF5タンパク質への翻訳が阻害されるものであればその長さに特に制限はなく、該タンパク質をコードするmRNAの全配列であっても部分配列であってもよく、短いもので約15塩基程度、長いものでmRNAまたは初期転写産物の全配列が挙げられる。合成の容易さや抗原性の問題を考慮すれば、約15〜約30塩基からなるオリゴヌクレオチドが好ましいがそれに限定されない。具体的には、例えば、GDF5をコードする核酸の5’端ヘアピンループ、5’端6-ベースペア・リピート、5’端非翻訳領域、翻訳開始コドン、タンパク質コード領域、翻訳終止コドン、3’端非翻訳領域、3’端パリンドローム領域、および3’端ヘアピンループが標的領域として選択しうるが、GDF5をコードする遺伝子内の如何なる領域も標的として選択しうる。例えば、該遺伝子のイントロン部分を標的領域とすることもまた好ましい。
さらに、アンチセンスGDF5は、GDF5をコードするmRNAもしくは初期転写産物とハイブリダイズしてタンパク質への翻訳を阻害するだけでなく、二本鎖DNAであるGDF5をコードする遺伝子と結合して三重鎖(トリプレックス)を形成し、RNAの転写を阻害し得るものであってもよい。
アンチセンス核酸は、2-デオキシ-D-リボースを含有しているデオキシリボヌクレオチド、D-リボースを含有しているリボヌクレオチド、プリンまたはピリミジン塩基のN-グリコシドであるその他のタイプのヌクレオチド、あるいは非ヌクレオチド骨格を有するその他のポリマー(例えば、市販のタンパク質核酸および合成配列特異的な核酸ポリマー)または特殊な結合を含有するその他のポリマー(但し、該ポリマーはDNAやRNA中に見出されるような塩基のペアリングや塩基の付着を許容する配置をもつヌクレオチドを含有する)などが挙げられる。それらは、2本鎖DNA、1本鎖DNA、2本鎖RNA、1本鎖RNA、さらにDNA:RNAハイブリッドであることができ、さらに非修飾ポリヌクレオチド(または非修飾オリゴヌクレオチド)、さらには公知の修飾の付加されたもの、例えば当該分野で知られた標識のあるもの、キャップの付いたもの、メチル化されたもの、1個以上の天然のヌクレオチドを類縁物で置換したもの、分子内ヌクレオチド修飾のされたもの、例えば非荷電結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、カルバメートなど)を持つもの、電荷を有する結合または硫黄含有結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)を持つもの、例えばタンパク質(ヌクレアーゼ、ヌクレアーゼ・インヒビター、トキシン、抗体、シグナルペプチド、ポリ-L-リジンなど)や糖(例えば、モノサッカライドなど)などの側鎖基を有しているもの、インターカレント化合物(例えば、アクリジン、プソラレンなど)を持つもの、キレート化合物(例えば、金属、放射活性をもつ金属、ホウ素、酸化性の金属など)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾された結合を持つもの(例えば、αアノマー型の核酸など)であってもよい。ここで「ヌクレオシド」、「ヌクレオチド」および「核酸」とは、プリンおよびピリミジン塩基を含有するのみでなく、修飾されたその他の複素環型塩基をもつようなものを含んでいて良い。こうした修飾物は、メチル化されたプリンおよびピリミジン、アシル化されたプリンおよびピリミジン、あるいはその他の複素環を含むものであってよい。修飾されたヌクレオチドおよび修飾されたヌクレオチドはまた糖部分が修飾されていてよく、例えば、1個以上の水酸基がハロゲンとか、脂肪族基などで置換されていたり、あるいはエーテル、アミンなどの官能基に変換されていてよい。
好ましくは、アンチセンス核酸は、修飾されていてもよいRNAまたはDNAである。修飾された核酸(RNA、DNA)の具体例としては、核酸の硫黄誘導体やチオホスフェート誘導体、そしてポリヌクレオシドアミドやオリゴヌクレオシドアミドの分解に抵抗性のものが挙げられるが、それに限定されるものではない。アンチセンスGDF5は次のような方針で好ましく設計されうる。すなわち、細胞内でのアンチセンス核酸をより安定なものにする、アンチセンス核酸の細胞透過性をより高める、標的とするセンス鎖に対する親和性をより大きなものにする、そしてもし毒性があるならアンチセンス核酸の毒性をより小さなものにする。こうした修飾は当該分野で数多く知られており、例えば J. Kawakami et al., Pharm Tech Japan, Vol. 8, pp.247, 1992; Vol. 8, pp.395, 1992; S. T. Crooke et al. ed., Antisense Research and Applications, CRC Press, 1993 などに開示されている。
アンチセンス核酸は、変化せしめられたり、修飾された糖、塩基、結合を含有していてもよく、リポソーム、ミクロスフェアのような特殊な形態で供与されたり、遺伝子治療において適用されたり、付加された形態で与えられることができうる。こうして付加形態で用いられるものとしては、リン酸基骨格の電荷を中和するように働くポリリジンのようなポリカチオン体、細胞膜との相互作用を高めたり、核酸の取込みを増大せしめるような脂質(例えば、ホスホリピド、コレステロールなど)といった疎水性のものが挙げられる。付加するに好ましい脂質としては、コレステロールやその誘導体(例えば、コレステリルクロロホルメート、コール酸など)が挙げられる。こうしたものは、核酸の3’端あるいは5’端に付着させることができ、塩基、糖、分子内ヌクレオシド結合を介して付着させることができうる。その他の基としては、核酸の3’端あるいは5’端に特異的に配置されたキャップ用の基で、エキソヌクレアーゼ、RNaseなどのヌクレアーゼによる分解を阻止するためのものが挙げられる。こうしたキャップ用の基としては、ポリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのグリコールをはじめとした当該分野で知られた水酸基の保護基が挙げられるが、それに限定されるものではない。
GDF5をコードするmRNAもしくは初期転写産物を、コード領域の内部(初期転写産物の場合はイントロン部分を含む)で特異的に切断し得るリボザイムもまた、アンチセンスGDF5に包含され得る。「リボザイム」とは核酸を切断する酵素活性を有するRNAをいうが、最近では当該酵素活性部位の塩基配列を有するオリゴDNAも同様に核酸切断活性を有することが明らかになっているので、本明細書では配列特異的な核酸切断活性を有する限りDNAをも包含する概念として用いるものとする。リボザイムとして最も汎用性の高いものとしては、ウイロイドやウイルソイド等の感染性RNAに見られるセルフスプライシングRNAがあり、ハンマーヘッド型やヘアピン型等が知られている。ハンマーヘッド型は約40塩基程度で酵素活性を発揮し、ハンマーヘッド構造をとる部分に隣接する両端の数塩基ずつ(合わせて約10塩基程度)をmRNAの所望の切断部位と相補的な配列にすることにより、標的mRNAのみを特異的に切断することが可能である。このタイプのリボザイムは、RNAのみを基質とするので、ゲノムDNAを攻撃することがないというさらなる利点を有する。GDF5 mRNAが自身で二本鎖構造をとる場合には、RNAヘリカーゼと特異的に結合し得るウイルス核酸由来のRNAモチーフを連結したハイブリッドリボザイムを用いることにより、標的配列を一本鎖にすることができる[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 98(10): 5572-5577 (2001)]。さらに、リボザイムを、それをコードするDNAを含む発現ベクターの形態で使用する場合には、転写産物の細胞質への移行を促進するために、tRNAを改変した配列をさらに連結したハイブリッドリボザイムとすることもできる[Nucleic Acids Res., 29(13): 2780-2788 (2001)]。
GDF5をコードするmRNAもしくは初期転写産物のコード領域内の部分配列(初期転写産物の場合はイントロン部分を含む)に相補的な塩基配列を有する二本鎖オリゴRNA(siRNA)もまた、アンチセンスGDF5に包含され得る。短い二本鎖RNAを細胞内に導入するとそのRNAの一方の鎖に相補的なmRNAが分解される、いわゆるRNA干渉(RNAi)と呼ばれる現象は、以前から線虫、昆虫、植物等で知られていたが、この現象が哺乳動物細胞でも起こることが確認されて以来[Nature, 411(6836): 494-498 (2001)]、リボザイムの代替技術として広く利用されている。
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド及びリボザイムは、GDF5をコードするcDNA配列もしくはゲノムDNA配列情報に基づいてmRNAもしくは初期転写産物の標的領域を決定し、市販のDNA/RNA自動合成機(アプライド・バイオシステムズ社、ベックマン社等)を用いて、これに相補的な配列を合成することにより調製することができる。RNAi活性を有するsiRNAは、センス鎖及びアンチセンス鎖をDNA/RNA自動合成機でそれぞれ合成し、適当なアニーリング緩衝液中で、例えば、約90〜約95℃で約1分程度変性させた後、約30〜約70℃で約1〜約8時間アニーリングさせることにより調製することができる。また、相補的なオリゴヌクレオチド鎖を交互にオーバーラップするように合成して、これらをアニーリングさせた後リガーゼでライゲーションすることにより、より長い二本鎖ポリヌクレオチドを調製することもできる。
アンチセンスGDF5の遺伝子発現阻害活性は、GDF5をコードする核酸を含有する形質転換体、生体内や生体外のGDF5をコードする遺伝子発現系またはGDF5の生体内や生体外の翻訳系を用いて調べることができる。
本発明はまた、GDF5またはその部分ペプチドに対する抗体(以下、「抗GDF5抗体」と略記する場合がある)を提供する。抗GDF5抗体は、GDF5またはペプチドに対して特異的親和性を有するものであれば、モノクローナル抗体であってもポリクローナル抗体であってもよい。該抗体は、GDF5またはその部分ペプチドを抗原として用い、自体公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。
〔モノクローナル抗体の作製〕
(a)モノクローナル抗体産生細胞の作製
GDF5またはその部分ペプチドを、哺乳動物に対して、投与により抗体産生が可能な部位に、それ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与する。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は通常2〜6週毎に1回ずつ、計2〜10回程度行われる。用いられる哺乳動物としては、例えば、サル、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ等が挙げられるが、マウスおよびラットが好ましく用いられる。
例えば、抗原で免疫された哺乳動物、例えばマウスから抗体価の認められた個体を選択し、最終免疫の2〜5日後に脾臓またはリンパ節を採取し、それらに含まれる抗体産生細胞を同種または異種動物の骨髄腫細胞と融合させることにより、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを調製することができる。抗血清中の抗体価の測定は、例えば、後記の標識化GDF5と抗血清とを反応させた後、抗体に結合した標識剤の活性を測定することにより行うことができる。融合操作は、既知の方法、例えば、ケーラーとミルスタインの方法〔ネイチャー(Nature)、256、495 (1975)〕に従い実施することができる。融合促進剤としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)やセンダイウィルスなどが挙げられるが、好ましくはPEGが用いられる。
骨髄腫細胞としては、例えば、NS-1、P3U1、SP2/0、AP-1などの哺乳動物の骨髄腫細胞が挙げられるが、P3U1が好ましく用いられる。用いられる抗体産生細胞(脾臓細胞)数と骨髄腫細胞数との好ましい比率は、1:1〜20:1程度であり、PEG(好ましくはPEG1000〜PEG6000)が10〜80%程度の濃度で添加され、20〜40℃、好ましくは30〜37℃で1〜10分間インキュベートすることにより効率よく細胞融合を実施できる。
モノクローナル抗体産生ハイブリドーマは、例えば、抗原を直接あるいは担体とともに吸着させた固相(例:マイクロプレート)にハイブリドーマ培養上清を添加し、次に放射性物質や酵素などで標識した抗免疫グロブリン抗体(細胞融合に用いられる細胞がマウスの場合、抗マウス免疫グロブリン抗体が用いられる)またはプロテインAを加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法;抗免疫グロブリン抗体またはプロテインAを吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、放射性物質や酵素などで標識したGDF5を加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法;などによりスクリーニングすることができる。
モノクローナル抗体の選別は、自体公知あるいはそれに準じる方法に従って行なうことができる。モノクローナル抗体の選別は、通常HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を添加した動物細胞用培地で行うことができる。モノクローナル抗体の選別および育種用培地は、ハイブリドーマが生育できるものならばどのような培地を用いてもよい。このような培地としては、例えば、1〜20%、好ましくは10〜20%のウシ胎仔血清を含むRPMI 1640培地、1〜10%のウシ胎仔血清を含むGIT培地(和光純薬工業(株))あるいはハイブリドーマ培養用無血清培地(SFM-101、日水製薬(株))などを用いることができる。培養温度は、通常20〜40℃、好ましくは約37℃である。培養時間は、通常5日〜3週間、好ましくは1週間〜2週間である。培養は、通常5%炭酸ガス下で行うことができる。ハイブリドーマ培養上清の抗体価は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。
このようにして得られたモノクローナル抗体は、自体公知の方法、例えば、免疫グロブリンの分離精製法〔例、塩析法、アルコール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体(例:DEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、抗原結合固相あるいはプロテインAあるいはプロテインGなどの活性吸着剤により抗体のみを採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法〕に従って分離精製することができる。
〔ポリクローナル抗体の作製〕
GDF5またはその部分ペプチドに対するポリクローナル抗体は、自体公知の方法に従って製造することができる。例えば、免疫抗原(GDF5またはその部分ペプチド)自体、あるいはそれとキャリアータンパク質との複合体を作製し、上記のモノクローナル抗体の製造法と同様に哺乳動物に免疫を行い、該免疫動物から抗GDF5抗体含有物を採取して、抗体の分離精製を行うことにより製造することができる。
哺乳動物を免疫するために用いられる免疫抗原とキャリアータンパク質との複合体に関し、キャリアータンパク質の種類およびキャリアーとハプテンとの混合比は、キャリアーに架橋させて免疫したハプテンに対して抗体が効率良くできれば、どのようなものをどのような比率で架橋させてもよいが、例えば、ウシ血清アルブミンやウシサイログロブリン、ヘモシアニン等を重量比でハプテン1に対し、約0.1〜20、好ましくは約1〜5の割合でカプリングさせる方法が用いられる。
また、ハプテンとキャリアーのカプリングには、種々の縮合剤、例えばグルタルアルデヒドやカルボジイミド、マレイミド活性エステル、チオール基、ジチオビリジル基を含有する活性エステル試薬等が用いられる。
縮合生成物は、哺乳動物に対して、抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は、通常約2〜6週毎に1回ずつ、計約3〜10回程度行われる。
ポリクローナル抗体は、上記の方法で免疫された哺乳動物の血液、腹水など、好ましくは血液から採取することができる。
抗血清中のポリクローナル抗体価の測定は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。ポリクローナル抗体の分離精製は、上記のモノクローナル抗体の分離精製と同様の免疫グロブリンの分離精製法に従って行うことができる。
GDF5の部分ペプチドを抗原として用いる場合、そのGDF5上の位置は特に限定されないが、例えば、各種温血動物間でよく保存された領域の部分アミノ酸配列を有するポリペプチドもしくはオリゴペプチドが挙げられる。
上記した(i)GDF5類、(ii)GDF5またはその部分ペプチドをコードする核酸(好ましくは、DNA)、(iii)抗GDF5抗体、(iv)アンチセンスGDF5は、例えば以下の用途を有する。
後記実施例において示される通り、GDF5は、軟骨基質であり軟骨細胞分化マーカーであるアグリカンの合成を亢進させるが、GDF5遺伝子のOA感受性多型においては該遺伝子の転写活性が低下している。これらの事実は、GDF5の発現または活性を調節(促進または阻害)し得る物質が、骨・関節疾患、特に軟骨基質の変性・産生異常や、軟骨前駆細胞から軟骨細胞への分化異常が関連する疾患の予防・治療に有効であることを示すものである。ここで「関連する疾患」とは、それに起因するか、あるいは結果としてそのような状態を生じる疾患をいう。
(1)軟骨基質の変性・消失・産生能低下、軟骨細胞分化能低下が関連する疾患の予防・治療剤
上記のように、GDF5は軟骨基質の合成を促進し、軟骨細胞の分化を促進する機能を有するので、生体内においてGDF5またはそれをコードする核酸(例:遺伝子、mRNA等)に異常があったり、これを欠損している場合、あるいはその発現量が異常に減少している場合、さらには、他の何らかの要因で軟骨基質の変性・消失が起こり、またその産生能が低下している場合、あるいは軟骨前駆細胞から軟骨細胞への分化が抑制されている場合に、a)GDF5もしくはその部分ペプチドまたはその塩(GDF5類)を患者に投与してGDF5の量を補充したり、b)(i)GDF5またはその部分ペプチドをコードするDNAを患者に投与して標的細胞内で発現させることによって、あるいは(ii)単離した標的細胞にGDF5またはその部分ペプチドをコードするDNAを導入し発現させた後に、該細胞を該患者に移植することなどによって、患者の体内におけるGDF5の量を増加させ、軟骨基質の合成および/または軟骨細胞の分化を誘導し、軟骨基質の変性や消失を基盤とする疾患を予防・治療することができる。
したがって、a)GDF5類、またはb)GDF5またはその部分ペプチドをコードする核酸を、上記のような疾患、例えば、骨粗鬆症、変形性関節症、慢性関節リウマチ、関節炎、滑膜炎、代謝性関節症、スポーツによる関節障害、先天性骨系統疾患[例えば、軟骨形成の低下している骨系統疾患・変形性関節症を合併する先天性骨系統疾患(例:軟骨無形成症、多発性骨端異形成症、脊椎骨端異形成症、骨幹端異形成症、Stickler症候群、偽性軟骨無形成症等)]など、好ましくは変形関節症(例:股関節OA、膝関節OA)、より好ましくは股関節OAの予防・治療剤として使用することができる。
GDF5類を上記予防・治療剤として使用する場合は、常套手段に従って製剤化することができる。
一方、GDF5またはその部分ペプチドをコードする核酸を上記予防・治療剤として使用する場合は、該核酸を単独あるいはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクターなどの適当なベクターに挿入した後、常套手段に従って製剤化することができる。該核酸は、そのままで、あるいは摂取促進のための補助剤とともに、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与することができる。
例えば、a)GDF5類、あるいはb)GDF5またはその部分ペプチドをコードする核酸は、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、a)GDF5類、あるいはb)GDF5またはその部分ペプチドをコードする核酸を、生理学的に認められる公知の担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに、一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な容量が得られるようにするものである。
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、上記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方することができる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D-ソルビトール、D-マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例:エタノール)、ポリアルコール(例:プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例:ポリソルベート80TM、HCO-50)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤である安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。
また、上記予防・治療剤は、例えば、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填される。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや他の温血動物(例えば、ラット、マウス、ハムスター、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジー、トリなど)に対して投与することができる。
GDF5類の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、例えば、ヒト変形性関節症患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1〜約100mg、好ましくは約1.0〜約50mg、より好ましくは約1.0〜約20mg程度が挙げられる。一方、非経口的に投与する場合、例えば注射剤として投与する場合には、ヒト変形性関節症患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜約30mg、好ましくは約0.1〜約20mg、より好ましくは約0.1〜約10mg程度が挙げられる。投与対象が他の動物の場合には、ヒト60kg当たりの投与量を該動物の体重に換算した量を投与することができる。
GDF5またはその部分ペプチドをコードする核酸の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、例えば、ヒト変形性関節症患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1〜約100mg、好ましくは約1.0〜約50mg、より好ましくは約1.0〜約20mg程度が挙げられる。一方、非経口的に投与する場合、例えば注射剤として投与する場合には、ヒト変形性関節症患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜約30mg、好ましくは約0.1〜約20mg、より好ましくは約0.1〜約10mg程度が挙げられる。投与対象が他の動物の場合には、ヒト60kg当たりの投与量を該動物の体重に換算した量を投与することができる。
(2)軟骨基質の産生能・軟骨細胞分化能の異常亢進が関連する疾患の予防・治療剤
上記のように、GDF5は軟骨基質の合成を促進し、軟骨細胞の分化を促進する機能を有するので、生体内においてGDF5またはそれをコードする核酸(例:遺伝子、mRNA等)に異常がある(高活性変異体の出現)場合、あるいはその発現量が異常に増加している場合、さらには他の何らかの要因で軟骨の過形成が起こり、また軟骨基質の産生能が異常亢進している場合、あるいは軟骨前駆細胞から軟骨細胞への分化が異常亢進している場合に、a)抗GDF5抗体を患者に投与してGDF5を不活性化(中和)したり、b)(i)アンチセンスGDF5を患者に投与して標的細胞内に導入する(および発現させる)ことによって、あるいは(ii)単離した標的細胞にアンチセンスGDF5を導入し発現させた後に、該細胞を該患者に移植することなどによって、患者の体内におけるGDF5の量を減少させ、軟骨基質の合成および/または軟骨細胞の分化を抑制し、軟骨基質の過剰などを基盤とする疾患を予防・治療することができる。
したがって、a)抗GDF5抗体またはb)アンチセンスGDF5を、上記のような疾患、例えば先天性骨系統疾患[例えば、軟骨形成の亢進している骨系統疾患(例:多発性外骨腫、片側肥大、オリエール病、マフッチ症候群など)]、骨軟骨腫、骨腫瘍、軟骨腫瘍などの疾患の予防・治療剤として用いることができる。
抗GDF5抗体を上記予防・治療剤として使用する場合、前記したGDF5類を含有する医薬と同様にして製剤化することができる。また、アンチセンスGDF5を上記予防・治療剤として使用する場合、前記したGDF5またはその部分ペプチドをコードする核酸を含有する医薬と同様にして製剤化することができる。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや他の温血動物(例えば、ラット、マウス、ハムスター、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジー、トリなど)に対して投与することができる。
抗GDF5抗体の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、例えば、ヒト変形性関節症患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1〜約100mg、好ましくは約1.0〜約50mg、より好ましくは約1.0〜約20mg程度が挙げられる。一方、非経口的に投与する場合、例えば注射剤として投与する場合には、ヒト変形性関節症患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜約30mg、好ましくは約0.1〜約20mg、より好ましくは約0.1〜約10mg程度が挙げられる。投与対象が他の動物の場合には、ヒト60kg当たりの投与量を該動物の体重に換算した量を投与することができる。
アンチセンスGDF5の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、例えば、ヒト変形性関節症患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1〜約100mg、好ましくは約1.0〜約50mg、より好ましくは約1.0〜約20mg程度が挙げられる。一方、非経口的に投与する場合、例えば注射剤として投与する場合には、ヒト変形性関節症患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜約30mg、好ましくは約0.1〜約20mg、より好ましくは約0.1〜約10mg程度が挙げられる。投与対象が他の動物の場合には、ヒト60kg当たりの投与量を該動物の体重に換算した量を投与することができる。
(3)骨・関節疾患の予防・治療物質のスクリーニング
上記のように、GDF5の活性を調節(促進または阻害)し得る物質は、骨・関節疾患、特に軟骨基質の変性・産生異常や、軟骨前駆細胞から軟骨細胞への分化異常が関連する疾患の予防・治療に有効である。従って、本発明は、GDF5類を用いてその活性の変動を測定することによる、骨・関節疾患の予防・治療物質のスクリーニング方法を提供する。
より具体的には、本発明は、
(a)軟骨細胞分化マーカーである軟骨基質(例:アグリカン等)を産生する能力を有する細胞を、GDF5類の存在下、またはGDF5類および被験物質の存在下に培養し、両条件下におけるGDF5類の活性を比較することを特徴とする、骨・関節疾患の予防・治療物質のスクリーニング方法を提供する。
上記スクリーニング方法において、GDF5類は、前述のいずれかの方法により単離・精製されたものを添加してもよいし、あるいは、軟骨基質を産生する能力を有する細胞が、GDF5類を産生する能力を同時に有していてもよい。GDF5またはその塩および軟骨基質を産生する能力を有する細胞としては、生来それらを発現しているヒトもしくは他の温血動物細胞またはそれを含む生体試料(例:関節液、関節軟骨等)であれば特に制限はないが、物理的または化学的刺激に応じてGDF5の発現および/または活性化が誘導されるものが好ましく、例えば、CS-OKB細胞、HCS2/8細胞、OUMS27細胞、ATDC5細胞等が挙げられるが、それらに限定されない。非ヒト動物由来の細胞、組織等の場合は、それらを生体から単離して培養してもよいし、あるいは生体に被験物質を投与し、一定時間経過後にそれら生体試料を単離してもよい。上記の遺伝子工学的手法により、軟骨基質遺伝子を産生する能力を有する細胞にGDF5またはその部分ペプチドをコードする核酸を導入して得られる各種の形質転換体を用いることもできる。
被験物質としては、例えばタンパク質、ペプチド、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液などが挙げられ、これらの物質は新規なものであってもよいし、公知のものであってもよい。
GDF5類の活性の測定は、例えば、軟骨基質の産生を指標にして測定することができる。例えば、一定期間(例えば、1〜25日程度)培養した細胞から常法により総RNAを抽出して、定量的RT-PCRやノーザンハイブリダイゼーションにより軟骨基質遺伝子[例:アグリカン遺伝子(Agc1)等]の発現量を定量する。あるいは、細胞からプロテオグリカン含有画分を分離し、後述のGDF5類の定量と同様の方法により、抗アグリカン抗体等を用いて軟骨基質プロテオグリカンを定量することによっても行うことができる。
上記(a)のスクリーニング法において、軟骨基質の産生を増大させた被験物質を「GDF5活性促進物質」、その産生を低下させた被験物質を「GDF5活性阻害物質」としてそれぞれ選択することができる。GDF5活性促進物質は、軟骨基質の変性・消失・産生能低下、軟骨細胞分化能低下が関連する疾患[例えば、骨粗鬆症、変形性関節症、慢性関節リウマチ、関節炎、滑膜炎、代謝性関節症、スポーツによる関節障害、先天性骨系統疾患(例えば、軟骨形成の低下している骨系統疾患・変形性関節症を合併する先天性骨系統疾患(例:軟骨無形成症、多発性骨端異形成症、脊椎骨端異形成症、骨幹端異形成症、Stickler症候群、偽性軟骨無形成症等))など]、好ましくは変形関節症(例:股関節OA、膝関節OA)、より好ましくは股関節OAの予防・治療剤として使用することができる。
一方、GDF5活性阻害物質は、軟骨基質の産生能・軟骨細胞分化能の異常亢進が関連する疾患[例えば、先天性骨系統疾患(例えば、軟骨形成の亢進している骨系統疾患(例:多発性外骨腫、片側肥大、オリエール病、マフッチ症候群等))、骨軟骨腫、骨腫瘍、軟骨腫瘍など]の予防・治療剤として用いることができる。
GDF5活性促進もしくは阻害物質を上記予防・治療剤として使用する場合は、前記したGDF5類と同様にして製剤化することができる。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや他の温血動物(例えば、ラット、マウス、ハムスター、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジー、トリなど)に対して投与することができる。
GDF5活性促進物質の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、例えば、ヒト変形性関節症患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1〜約100mg、好ましくは約1.0〜約50mg、より好ましくは約1.0〜約20mg程度が挙げられる。一方、非経口的に投与する場合、例えば注射剤として投与する場合には、ヒト変形性関節症患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜約30mg、好ましくは約0.1〜約20mg、より好ましくは約0.1〜約10mg程度が挙げられる。投与対象が他の動物の場合には、ヒト60kg当たりの投与量を該動物の体重に換算した量を投与することができる。
GDF5活性阻害物質の投与量も、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、例えば、ヒト変形性関節症患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1〜約100mg、好ましくは約1.0〜約50mg、より好ましくは約1.0〜約20mg程度が挙げられる。一方、非経口的に投与する場合、例えば注射剤として投与する場合には、ヒト変形性関節症患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜約30mg、好ましくは約0.1〜約20mg、より好ましくは約0.1〜約10mg程度が挙げられる。投与対象が他の動物の場合には、ヒト60kg当たりの投与量を該動物の体重に換算した量を投与することができる。
上述のように、GDF5の発現を調節(促進または阻害)する物質もまた、骨・関節疾患、特に軟骨基質の変性・産生異常や、軟骨前駆細胞から軟骨細胞への分化異常が関連する疾患の予防・治療に有効である。従って、本発明は、GDF5類を産生する能力を有する細胞におけるGDF5類の発現を、被験物質の存在下と非存在下で比較することを特徴とする、骨・関節疾患の予防・治療物質のスクリーニング方法を提供する。
GDF5の発現量は、GDF5をコードする核酸とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得る核酸(即ち、前記したGDF5をコードする塩基配列またはその一部を含有する核酸(以下、「センスGDF5」ともいう)またはGDF5をコードする塩基配列に相補的な塩基配列またはその一部(アンチセンスGDF5)を用いてそのmRNAを検出することにより、転写レベルで測定することもできる。あるいは、該発現量は、前記した抗GDF5抗体を用いてタンパク質(ペプチド)を検出することにより、翻訳レベルで測定することもできる。
従って、より具体的には、本発明は、
(b)GDF5類を産生する能力を有する細胞を被験物質の存在下および非存在下に培養し、両条件下におけるGDF5類をコードするmRNAの量を、センスもしくはアンチセンスGDF5を用いて測定、比較することを特徴とする、骨・関節疾患の予防・治療物質のスクリーニング方法、および
(c)GDF5類を産生する能力を有する細胞を被験物質の存在下および非存在下に培養し、両条件下におけるGDF5類のタンパク質(ペプチド)量を、抗GDF5抗体を用いて測定、比較することを特徴とする、骨・関節疾患の予防・治療物質のスクリーニング方法を提供する。
上記(b)および(c)のスクリーニング方法において、GDF5類を産生する能力を有する細胞としては、上記(a)のスクリーニング方法において用いられるのと同様のものが好ましく用いられる。
例えば、GDF5類のmRNA量またはタンパク質(ペプチド)量の測定は、具体的には以下のようにして行うことができる。
(i)正常あるいは疾患モデル非ヒト温血動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サル、トリなど)に対して、薬剤あるいは物理的刺激などを与える一定時間前(30分前〜24時間前、好ましくは30分前〜12時間前、より好ましくは1時間前〜6時間前)もしくは一定時間後(30分後〜3日後、好ましくは1時間後〜2日後、より好ましくは1時間後〜24時間後)、または薬剤あるいは物理的刺激と同時に被験物質を投与し、投与から一定時間が経過した後、関節液、関節軟骨などを採取する。得られた生体試料に含まれる細胞において発現したGDF5のmRNAは、例えば、通常の方法により細胞等からmRNAを抽出し、例えば、RT-PCRなどの手法を用いることにより定量することができ、あるいは自体公知のノーザンブロット解析により定量することもできる。一方、GDF5タンパク質量は、ウェスタンブロット解析や以下に詳述する各種イムノアッセイ法を用いて定量することができる。
(ii)GDF5またはその部分ペプチドをコードする核酸を導入した形質転換体を上記の方法に従って作製し、該形質転換体を常法に従って培養する際に被験物質を培地中に添加し、一定時間培養後、該形質転換体に含まれるGDF5類のmRNA量またはタンパク質(ペプチド)量を定量、解析することにより行うことができる。
被験物質としては、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物などが挙げられ、これら物質は新規な物質であってもよいし、公知の物質であってもよい。
上記(c)のスクリーニング方法におけるGDF5類の量の測定は、具体的には、例えば、
(i)抗GDF5抗体と、試料液および標識化されたGDF5類とを競合的に反応させ、該抗体に結合した標識化されたGDF5類を検出することにより試料液中のGDF5類を定量する方法や、
(ii)試料液と、担体上に不溶化した抗GDF5抗体および標識化された別の抗GDF5抗体とを、同時あるいは連続的に反応させた後、不溶化担体上の標識剤の量(活性)を測定することにより、試料液中のGDF5類を定量する方法等が挙げられる。
上記(ii)の定量法においては、2種の抗体はGDF5類の異なる部分を認識するものであることが望ましい。例えば、一方の抗体がGDF5類のN端部を認識する抗体であれば、他方の抗体としてGDF5類のC端部と反応するものを用いることができる。
標識物質を用いる測定法に用いられる標識剤としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などが用いられる。放射性同位元素としては、例えば、〔125I〕、〔131I〕、〔3H〕、〔14C〕などが用いられる。上記酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えば、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが用いられる。蛍光物質としては、例えば、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネートなどが用いられる。発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどが用いられる。さらに、抗体あるいは抗原と標識剤との結合にビオチン−(ストレプト)アビジン系を用いることもできる。
試料液としては、GDF5類が細胞内に局在する場合は、細胞を適当な緩衝液に懸濁した後、超音波処理または凍結融解などによって細胞を破壊して得られる細胞破砕液が、GDF5類が細胞外に分泌される場合には、細胞培養上清がそれぞれ用いられる。必要に応じて、破砕液や培養上清からGDF5類を分離・精製した後に定量を行ってもよい。また、標識剤の検出が可能である限り、無傷細胞を試料として用いてもよい。
抗GDF5抗体を用いるGDF5類の定量法は、特に制限されるべきものではなく、試料液中の抗原量に対応した、抗体、抗原もしくは抗体−抗原複合体の量を化学的または物理的手段により検出し、これを既知量の抗原を含む標準液を用いて作製した標準曲線より算出する測定法であれば、いずれの測定法を用いてもよい。例えば、ネフロメトリー、競合法、イムノメトリック法およびサンドイッチ法が好適に用いられる。感度、特異性の点で、例えば、後述するサンドイッチ法を用いるのが好ましい。
抗原あるいは抗体の不溶化にあたっては、物理吸着を用いてもよく、また通常タンパク質あるいは酵素等を不溶化・固定化するのに用いられる化学結合を用いてもよい。担体としては、アガロース、デキストラン、セルロースなどの不溶性多糖類、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、シリコン等の合成樹脂、あるいはガラス等があげられる。
サンドイッチ法においては不溶化した抗GDF5抗体に試料液を反応させ(1次反応)、さらに標識化した別の抗GDF5抗体を反応させ(2次反応)た後、不溶化担体上の標識剤の量もしくは活性を測定することにより、試料液中のGDF5類を定量することができる。1次反応と2次反応は逆の順序で行っても、また、同時に行ってもよいし、時間をずらして行ってもよい。標識化剤および不溶化の方法は前記のそれらに準じることができる。また、サンドイッチ法による免疫測定法において、固相化抗体あるいは標識化抗体に用いられる抗体は必ずしも1種類である必要はなく、測定感度を向上させる等の目的で2種類以上の抗体の混合物を用いてもよい。
抗GDF5抗体は、サンドイッチ法以外の測定システム、例えば、競合法、イムノメトリック法あるいはネフロメトリーなどにも用いることができる。
競合法では、試料液中のGDF5類と標識したGDF5類とを抗体に対して競合的に反応させた後、未反応の標識抗原(F)と、抗体と結合した標識抗原(B)とを分離し(B/F分離)、B,Fいずれかの標識量を測定することにより、試料液中のGDF5類を定量する。本反応法には、抗体として可溶性抗体を用い、ポリエチレングリコールや前記抗体(1次抗体)に対する2次抗体などを用いてB/F分離を行う液相法、および、1次抗体として固相化抗体を用いるか(直接法)、あるいは1次抗体は可溶性のものを用い、2次抗体として固相化抗体を用いる(間接法)固相化法とが用いられる。
イムノメトリック法では、試料液中のGDF5類と固相化したGDF5類とを一定量の標識化抗体に対して競合反応させた後、固相と液相を分離するか、あるいは試料液中のGDF5類と過剰量の標識化抗体とを反応させ、次に固相化したGDF5類を加えて未反応の標識化抗体を固相に結合させた後、固相と液相を分離する。次に、いずれかの相の標識量を測定し試料液中の抗原量を定量する。
また、ネフロメトリーでは、ゲル内あるいは溶液中で抗原抗体反応の結果生じた不溶性の沈降物の量を測定する。試料液中のGDF5類の量がわずかであり、少量の沈降物しか得られない場合にもレーザーの散乱を利用するレーザーネフロメトリーなどが好適に用いられる。
これら個々の免疫学的測定法を本発明の定量方法に適用するにあたっては、特別の条件、操作等の設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えてGDF5類の測定系を構築すればよい。これらの一般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参照することができる。
例えば、入江 寛編「ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和49年発行)、入江 寛編「続ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和54年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(医学書院、昭和53年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第2版)(医学書院、昭和57年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第3版)(医学書院、昭和62年発行)、「Methods in ENZYMOLOGY」 Vol. 70 (Immunochemical Techniques (Part A))、同書 Vol. 73 (Immunochemical Techniques (Part B))、同書 Vol. 74 (Immunochemical Techniques (Part C))、同書 Vol. 84 (Immunochemical Techniques (Part D: Selected Immunoassays))、同書 Vol. 92 (Immunochemical Techniques (Part E: Monoclonal Antibodies and General Immunoassay Methods))、同書 Vol. 121 (Immunochemical Techniques (Part I: Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies))(以上、アカデミックプレス社発行)などを参照することができる。
以上のようにして、抗GDF5抗体を用いることによって、細胞におけるGDF5類の生産量を感度よく定量することができる。
上記(b)および(c)のスクリーニング法において、GDF5類の発現量(mRNA量またはタンパク質(ペプチド)量)を増加させた物質をGDF5発現促進物質、発現量を減少させた物質をGDF5発現阻害物質としてそれぞれ選択することができる。GDF5発現促進物質は、軟骨基質の変性・消失・産生能低下、軟骨細胞分化能低下が関連する疾患[例えば、骨粗鬆症、変形性関節症、慢性関節リウマチ、関節炎、滑膜炎、代謝性関節症、スポーツによる関節障害、先天性骨系統疾患(例えば、軟骨形成の低下している骨系統疾患・変形性関節症を合併する先天性骨系統疾患(例:軟骨無形成症、多発性骨端異形成症、脊椎骨端異形成症、骨幹端異形成症、Stickler症候群、偽性軟骨無形成症等))など]、好ましくは変形関節症(例:股関節OA、膝関節OA)、より好ましくは股関節OAの予防・治療剤として使用することができる。
一方、GDF5発現阻害物質は、軟骨基質の産生能・軟骨細胞分化能の異常亢進が関連する疾患[例えば、先天性骨系統疾患(例えば、軟骨形成の亢進している骨系統疾患(例:多発性外骨腫、片側肥大、オリエール病、マフッチ症候群等))、骨軟骨腫、骨腫瘍、軟骨腫瘍など]の予防・治療剤として用いることができる。
GDF5発現促進もしくは阻害物質を上記予防・治療剤として使用する場合は、前記したGDF5類の場合と同様にして製剤化することができる。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや他の温血動物(例えば、ラット、マウス、ハムスター、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジー、トリなど)に対して投与することができる。
GDF5発現促進物質の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、例えば、ヒト変形性関節症患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1〜約100mg、好ましくは約1.0〜約50mg、より好ましくは約1.0〜約20mg程度が挙げられる。一方、非経口的に投与する場合、例えば注射剤として投与する場合には、ヒト変形性関節症患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜約30mg、好ましくは約0.1〜約20mg、より好ましくは約0.1〜約10mg程度が挙げられる。投与対象が他の動物の場合には、ヒト60kg当たりの投与量を該動物の体重に換算した量を投与することができる。
GDF5発現阻害物質の投与量も、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、例えば、ヒト変形性関節症患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1〜約100mg、好ましくは約1.0〜約50mg、より好ましくは約1.0〜約20mg程度が挙げられる。一方、非経口的に投与する場合、例えば注射剤として投与する場合には、ヒト変形性関節症患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜約30mg、好ましくは約0.1〜約20mg、より好ましくは約0.1〜約10mg程度が挙げられる。投与対象が他の動物の場合には、ヒト60kg当たりの投与量を該動物の体重に換算した量を投与することができる。
(4)遺伝子診断剤
GDF5をコードする塩基配列またはその一部を含有する核酸(以下、「センスGDF5」ともいう)、あるいは該塩基配列と相補的な塩基配列またはその一部を含有する核酸(アンチセンスGDF5)は、プローブ等として使用することにより、ヒトまたは他の温血動物(例えば、ラット、マウス、ハムスター、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジー、トリなど)におけるGDF5をコードするDNAまたはmRNAの異常(遺伝子異常)を検出することができるので、例えば、該DNAの損傷もしくは突然変異やmRNAのスプライシング異常あるいは発現低下、あるいは該DNAの増幅やmRNAの発現上昇などの遺伝子診断剤として有用である。GDF5をコードする塩基配列の一部を含有する核酸は、プローブとして必要な長さ(例えば、約15塩基以上)を有する限り特に制限されず、また、GDF5の部分ペプチドをコードしている必要もない。
センスもしくはアンチセンスGDF5を用いる上記の遺伝子診断は、例えば、自体公知のノーザンハイブリダイゼーション、定量的RT-PCR、PCR-SSCP法、アレル特異的PCR、PCR-SSOP法、DGGE法、RNaseプロテクション法、PCR-RFLP法などにより実施することができる。
上記のように、GDF5は軟骨基質遺伝子の発現を増加させ、軟骨前駆細胞から軟骨細胞への分化を促進する機能を有するので、軟骨基質の変性・消失・産生能低下、軟骨細胞分化能低下が関連する疾患に対して抑制的に作用する。そのため、そのような疾患に罹患しているか、あるいは将来罹患するリスクが高い状態にあれば、GDF5遺伝子の発現が正常な状態に比して上昇していると考えられる。従って、例えば、被験温血動物の細胞から抽出したRNA画分についてのノーザンハイブリダイゼーションや定量的RT-PCRの結果、GDF5遺伝子の発現上昇が検出された場合は、軟骨基質の変性・消失・産生能低下、軟骨細胞分化能低下が関連する疾患、例えば、骨粗鬆症、変形性関節症、慢性関節リウマチ、関節炎、滑膜炎、代謝性関節症、スポーツによる関節障害、先天性骨系統疾患[例えば、軟骨形成の低下している骨系統疾患・変形性関節症を合併する先天性骨系統疾患(例:軟骨無形成症、多発性骨端異形成症、脊椎骨端異形成症、骨幹端異形成症、Stickler症候群、偽性軟骨無形成症等)]などの疾患に罹患しているか、あるいは将来罹患する可能性が高いと診断することができる。
一方、ノーザンハイブリダイゼーションや定量的RT-PCRによりGDF5遺伝子の発現低下が検出された場合は、軟骨基質の産生能・軟骨細胞分化能の異常亢進が関連する疾患、例えば、先天性骨系統疾患[例えば、軟骨形成の亢進している骨系統疾患(例:多発性外骨腫、片側肥大、オリエール病、マフッチ症候群等)]、骨軟骨腫、骨腫瘍、軟骨腫瘍などの疾患に罹患しているか、あるいは将来罹患する可能性が高いと診断することができる。
前記した抗GDF5抗体は、ヒトまたは他の温血動物(例えば、ラット、マウス、ハムスター、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジー、トリなど)におけるGDF5またはその塩の量を測定することができるので、例えば、該タンパク質の発現低下または発現上昇などの遺伝子診断剤として有用である。
抗GDF5抗体を用いる上記の遺伝子診断は、前記した抗GDF5抗体を用いるGDF5発現調節(促進もしくは阻害)物質のスクリーニング方法((c)のスクリーニング方法)において、GDF5類を産生する能力を有する細胞として、被験温血動物から採取した生体試料(例:関節液、生検など)を用いてイムノアッセイを実施することにより行うことができる。
イムノアッセイの結果、該試料中のGDF5またはその塩の増加が検出された場合は、軟骨基質の変性・消失・産生能低下、軟骨細胞分化能低下が関連する疾患、例えば、骨粗鬆症、変形性関節症、慢性関節リウマチ、関節炎、滑膜炎、代謝性関節症、スポーツによる関節障害、先天性骨系統疾患[例えば、軟骨形成の低下している骨系統疾患・変形性関節症を合併する先天性骨系統疾患(例:軟骨無形成症、多発性骨端異形成症、脊椎骨端異形成症、骨幹端異形成症、Stickler症候群、偽性軟骨無形成症等)]などの疾患に罹患しているか、あるいは将来罹患する可能性が高いと診断することができる。
一方、イムノアッセイの結果、該試料中のGDF5またはその塩の減少が検出された場合は、軟骨基質の産生能・軟骨細胞分化能の異常亢進が関連する疾患、例えば、先天性骨系統疾患[例えば、軟骨形成の亢進している骨系統疾患(例:多発性外骨腫、片側肥大、オリエール病、マフッチ症候群等)]、骨軟骨腫、骨腫瘍、軟骨腫瘍などの疾患に罹患しているか、あるいは将来罹患する可能性が高いと診断することができる。
本明細書において、塩基やアミノ酸などを略号で表示する場合、IUPAC-IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによる略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を下記する。またアミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
DNA :デオキシリボ核酸
cDNA :相補的デオキシリボ核酸
A :アデニン
T :チミン
G :グアニン
C :シトシン
RNA :リボ核酸
mRNA :メッセンジャーリボ核酸
dATP :デオキシアデノシン三リン酸
dTTP :デオキシチミジン三リン酸
dGTP :デオキシグアノシン三リン酸
dCTP :デオキシシチジン三リン酸
ATP :アデノシン三リン酸
EDTA :エチレンジアミン四酢酸
SDS :ドデシル硫酸ナトリウム
Gly :グリシン
Ala :アラニン
Val :バリン
Leu :ロイシン
Ile :イソロイシン
Ser :セリン
Thr :スレオニン
Cys :システイン
Met :メチオニン
Glu :グルタミン酸
Asp :アスパラギン酸
Lys :リジン
Arg :アルギニン
His :ヒスチジン
Phe :フェニルアラニン
Tyr :チロシン
Trp :トリプトファン
Pro :プロリン
Asn :アスパラギン
Gln :グルタミン
pGlu :ピログルタミン酸
Sec :セレノシステイン(selenocysteine)
また、本明細書中で繁用される置換基、保護基および試薬を下記の記号で表記する。
Me :メチル基
Et :エチル基
Bu :ブチル基
Ph :フェニル基
TC :チアゾリジン-4(R)-カルボキサミド基
Tos :p-トルエンスルフォニル
CHO :ホルミル
Bzl :ベンジル
Cl2-Bzl :2,6-ジクロロベンジル
Bom :ベンジルオキシメチル
Z :ベンジルオキシカルボニル
Cl-Z :2-クロロベンジルオキシカルボニル
Br-Z :2-ブロモベンジルオキシカルボニル
Boc :t-ブトキシカルボニル
DNP :ジニトロフェニル
Trt :トリチル
Bum :t-ブトキシメチル
Fmoc :N-9-フルオレニルメトキシカルボニル
HOBt :1-ヒドロキシベンズトリアゾール
HOOBt :3,4-ジヒドロ-3-ヒドロキシ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン
HONB :1-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド
DCC :N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド
本願明細書の配列表の配列番号は、以下の配列を示す。
〔配列番号:1〕
GenBankアクセッション番号NT_028392.4で表される塩基配列中、塩基番号4060981〜4268720に相当する部分配列を示す。
〔配列番号:2〕
ヒトGDF5 mRNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:3〕
ヒトGDF5タンパク質のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:4〜配列番号:21〕
下記実施例においてPCRもしくはシークエンス用のプライマーまたはTaqManプローブとして使用された合成オリゴヌクレオチドの塩基配列を示す。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、これらは単なる例示であって本発明を何ら限定するものではない。
実施例1 GDF5の遺伝子多型スクリーニング
NCBI SNPデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/SNP/)には、GDF5遺伝子内の多型として32個が登録されているが、それらとは異なる新規多型の検出を行った。第一段階として、GDF5遺伝子のエクソンを中心に多型検出を行った。GDF5遺伝子の第2エクソンを増幅し得るプライマー(GDF5_ex2/F:5’-AAAGGCTCTCAGTGGTTTGG-3’(配列番号:4);GDF5_ex2/R:5’-GCTTCAGTTTCCAGGAGTGG-3’(配列番号:5))を各3pmol、10×Ex Taqバッファー 1.5μl、2.5mM デオキシリボヌクレオチド溶液 1.2μl、ジメチルスルホキシド(DMSO)1.5μl、10×TaKaRa Ex Taq (TaKaRa) 0.15μl、2.5ng/μl DNA溶液 2.0μlを含む混合液15μlを調製し、Gene Amp PCR System 9700(Applied Biosystems)を用いて、94℃で2分変性後、94℃,30秒、60℃,30秒、72℃,1分30秒を35サイクル反応させ、さらに72℃で3分間反応させてPCRを行った。反応後、得られたPCR産物をアガロースゲル電気泳動して、PCR産物が得られていることを確認した。このPCR産物を蒸留水で4倍希釈した後、これを鋳型として、サイクルシークエンス反応を行った。サイクルシークエンス反応のプライマーには、GDF5_ex2/SF1:5’-GGCCTGGACGGATCTGGCT-3’(配列番号:6);GDF5_ex2/SF2:5’-GGACGACTGGATCATCGCA-3’(配列番号:7);GDF5_ex2/SF3:5’-CAGACTCTGAATGGGACTGA-3’(配列番号:8);GDF5_ex2/SR1:5’-AGTCTCATCGGAAAGCACTG-3’(配列番号:9);GDF5_ex2/SR2:5’-CGCAGTGGAAAGCCTCGTA-3’(配列番号:10);GDF5_ex2/SR3:5’-TCGGAAGAGCTTCCAGATGT-3’(配列番号:11)を用いた。プライマー各5pmol、BigDye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Kit v2.0(Applied Biosystems)4μl、希釈PCR産物2μlにて調整した反応液10μlを、プロトコールに従ってサイクルシークエンス反応に付した。エタノール沈澱の後、蒸留水20μlに溶解、ABI PRISM 3700 DNA Analyzer(Applied Biosystems)を用いてキヤピラリ−電気泳動を行った。得られた波形データは、AutoAssembler(Applied Biosystems)、およびStaden Package(http://staden.sourceforge.net/)を用いて解析した。
その結果、GDF5遺伝子のアミノ酸コード領域に
(1) 参照contig NT_028392.4上の位置4188908にある多型g.4188908 A/C(ここで「g.」に続く数字は、参照contig NT_028392.4上の相対的位置を示す。以下の多型についても同じ)[尚、GDF5は相補鎖にコードされるので、コード鎖(mRNA)から見ると該多型は翻訳開始点を1とした相対的位置826におけるT/GのSNPであり(「c.826 T/G」と略記する。以下の多型についても同じ)、結果として開始メチオニンを1とした相対的位置276におけるアミノ酸置換(Ser/Ala)を生じる(「S276A」と略記する。以下の多型についても同じ)];および
(2) g.4188717 C/T(c.1017 G/A,K339K);
5’非翻訳領域(5’-UTR)に
(3) g.4192504 A/G(nt.45 T/C)(ここで「nt.」に続く数字は、参照配列NM_000557.2上の相対的位置を示す。以下の多型についても同じ。GDF5は相補鎖にコードされるので、コード鎖(mRNA)から見ると該多型は参照配列NM_000557.2上の相対的位置45におけるT/CのSNPである);
3’非翻訳領域(3’-UTR)に
(4) g.4187893 G/T(nt.2160 C/A);および
(5) g.4187803 A/G(nt.2240 T/C);
第1イントロンに
(6) g.4189193 A/C(IVS1-91 G/T)(ここで「IVS1」は第1イントロンを示し、それに続く数字は、正の数であれば5’末端を+1とした5’→3’方向の相対位置を、負の数であれば3’末端を-1とした3’→5’方向の相対位置をそれぞれ示す。以下の多型についても同じ)の6つのSNPを同定した。
GDF5遺伝子の第1エクソンに対しても上記の方法でPCR−ダイレクトシークエンス法により、多型の同定を行った。PCRには、GDF5_ex1/F:5’-GCAGGCCTGTGAGTGTGTG-3’(配列番号:12);GDF5_ex1/R:5’-GGCAGCCTAGGATCTGCTAT-3’(配列番号:13)の2つのプライマーを各3pmol、10×LA PCR Buffer II(Mg+ free)バッファー 1.5μl、2.5mM デオキシリボヌクレオチド溶液 2.4μl、ジメチルスルホキシド(DMSO)1.5μl、25mM 塩化マグネシウム 1.5μl、TaKaRa LA Taq(TaKaRa)0.15μl、2.5ng/μl DNA溶液 2.0μlを含む混合液15μlを用い、上記と同じ方法でPCR反応を行った。サイクルシークエンス反応には、GDF5_ex1/SF1:5’-GCTGTTCTCTTTGGTGTCATT-3’(配列番号:14);GDF5_ex1/SF2:5’-AGCTCCTTCCTGCTGAAGAA-3’(配列番号:15);GDF5_ex1/SR1:5’-ACGGCTCCTTGGGCTCTCGT-3’(配列番号:16);GDF5_ex1/SR2:5’-TGGCCAGAGGATGAGACTC-3’(配列番号:17)のプライマーを用いた。この第1エクソンの領域では、g.4192504 A/G(nt.45 T/C)のSNPを同定した。
実施例2 OA感受性遺伝子としてのGDF5遺伝子領域の相関解析スクリーニング
実施に当たり、費用および時間を節約するため、比較的少数の検体に対し、後述する方法で、保有するアレルを同定(タイピング)し、統計的に有意な値が得られた遺伝子多型に対して検体数を増やす手法を用いた。
DNA検体の収集では、事前に倫理委員会の承認を得た国内協力施設にて、医師もしくはそれに準ずる担当者が、対象者に説明し、書面にて同意が得られた場合のみDNA検体採取実施対象者とした。OAは各関節により疾患構造が異なるため、本相関解析では、日本人股関節OA患者および日本人膝関節OA患者を対象とした。また、対照群として用いた、日本人非OA患者群の検体も同様の方法で収集した。
保有するアレルの同定には、TaqMan PCR法(Applied Biosystems)を用いた。得られたタイピングデータを各群毎に集計し、ジェノタイプ、アレル、優性モデル、劣性モデルの4方法で、χ検定にて有意差検定を行った。
実施例1で同定した2つのSNPに対し相関解析スクリーニングをTaqMan PCR法で行った。GDF5遺伝子のアミノ酸コード領域のSNP g.4188908 A/C(c.826 T/G,S276A)に対しては、GDF5 S276A/F_v2:5’-GGACACGGCCAAGCCAG-3’(配列番号:18);GDF5_S276A/R v2:5’-CCAGATGTCGAACACCTCCC-3’(配列番号:19)の2つのPCRプライマーを各15pmol、TaqMan MGBプローブはGDF5_S276A/T:VIC-AGCCGGCCTCCTTGCTGGA-Tamra(配列番号:20)、GDF5_S276A/G:FAM-CCGGCCGCCTTGCTGG-Tamra(配列番号:21)を各3pmol、2.5ng/μl DNA溶液2.0μl、TaqMan Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems)7.5μlを15μlに調整し、ABI PRISM 7700 Sequence Detector(Applied Biosystems)を用いてPCR反応(50℃で2分、95℃で10分反応後、92℃で15秒、60℃で1分を35サイクル)させ、そのままABI PRISM 7700 Sequence Detectorを用いて蛍光強度を検出した。解析は、Sequence Detector vl.7(Applied Biosystems)を使用しタイピングを行った。
OA患者は、日本人股関節OA患者199人を対象とし、対照として日本人非OA患者群226人より得られたDNA検体を上記タイピングに使用した。この結果、Tアレル[g.4188908 A(c.826 T,276S);以下、GDF5コード鎖の塩基でアレルを表示する]をホモで持つ割合が、股関節OA患者群では67.3%で、対照群53.5%に比して有意に(χ検定p値0.002)高かった(表1)。また、股関節OA患者群で観察されたTアレルは81.4%と、対照群72.9%と有意に(χ検定p値0.003)高く、ジェノタイプ別でも股関節OA患者群と対照群で有意な(χ検定p値0.009)差が観察された。この結果から、GDF5遺伝子は、股関節OA患者群と関連することが示唆され、Tアレルが疾患(感受性)アレル、Gアレル[g.4188908 C(c.826 G,276A)]が保護アレルであることがわかった。
実施例3 GDF5遺伝子領域の遺伝子多型の同定
ヒトGDF5遺伝子は、ヒト20番染色体11.2領域に存在する。実施例2の結果より、GDF5遺伝子と股関節OAとが関連することが示唆されたため、GDF5遺伝子領域に全体およびその周囲領域に対し、遺伝子多型を検出する目的で、実施例1と同様の方法を用い、GDF5遺伝子領域全範囲、およびその周囲領域に対しPCR−ダイレクトシークエンス法を行った。多型を検出した領域は、GDF5遺伝子領域5kbpとGDF5遺伝子の5’側5.5kbpから3’側6kbpまでの17kbpである。また、GDF5遺伝子の5’側18kbpから21kbpの領域に対しても多型検出を実施した。多型検出には、股関節OA患者検体を24検体使用した。
この領域で、52の遺伝子多型を検出した。内訳は、SNP 47、繰り返し多型 3、欠失 2であった。GDF5遺伝子領域には11の多型が存在した。また、検出した多型のうち公共データベースNCBIに登録のない新規多型は25あった(表2)。
実施例4 GDF5遺伝子領域、およびGDF5遺伝子周辺領域におけるSNPのタイピング
対象とした多型は、実施例3で検出した多型とGDF5遺伝子周辺領域における多型である。SNPタイピングには、前述のTaqMan PCR法とインベーダー(Invader)法(Third Wave Technologies Inc.,ビー・エム・エル)を使用した。SNPを含む領域約500塩基から1000塩基をPCR法にて増幅させ、得られたPCR産物を蒸留水で4から25倍希釈する。5×Invaderプローブ混合液 1.0μl(Third Wave Technologies Inc)、10×FRETプローブ 0.5μl、10×Cleavase 0.5μl、10×Invaderバッファー 0.5μl(以上、Applied Biosystems)、希釈させたPCR産物 1.0μlを含む混合液 5μlを、95℃で2分変性後、60℃で20分から4時間反応させる。反応後、蛍光強度をABI PRISM 7900HT Sequence Detection System(Applied Biosystems)で測定、Sequence Detector v2.0(Applied Biosystems)を用いて解析した。
日本人一般集団における股関節OA患者1000人、膝関節OA患者373人を対象とし、日本人非OA患者群987人を対照として、これらより得られたDNA検体を上記43SNPのタイピングに使用した。GDF5遺伝子領域のSNPのみならず、その5’側に存在するCEP2遺伝子の3’側から、GDF5遺伝子の3’領域のC20orf55遺伝子にかけての周囲領域で、対照群に比して、股関節OA患者群では、少数アレルの頻度が低いことがわかった。また、膝関節OA患者群でも、この領域では、少数アレルの頻度が低い傾向にあった(表3)。
実施例5 GDF5遺伝子領域およびその周囲領域における相関解析
実施例4の結果に基づき、股関節OA患者1000人に対し、日本人非OA患者群987人を対照として、各々ジェノタイプとアレルの頻度でのχ検定を行った。実施例2で検出した股関節OA群と対照群との間のg.4188908 A/C(c.826 T/G,S276A)多型の相関は、検体数を1000名の規模に拡大しても再現された。また、GDF5およびその周辺領域全体で股関節OA群と対照群との間にジェノタイプとアレルいずれも有意な相関があった(表3)。相関の強さは、GDF5遺伝子領域でもっとも強く、GDF5遺伝子領域から離れるに従い減弱することがわかった(図1)。股関節OAにおいてもっとも強い相関は、g.4192504 A/G(nt.45 T/C)多型に存在し、χ検定におけるp値は、ジェノタイプ3.8×10-12、アレル1.8×10-13と非常に強かった。次に相関の高い多型は、GDF5遺伝子の3’側に存在するg.4186100 C/T多型であり、次いでg.4188908 A/C(c.826 T/G,S276A)多型であった。これらのいずれも、g.4192504 A/G(nt.45 T/C)多型とほぼ同程度のアレル頻度であり、χ検定のp値も、やや大きい程度であった。
膝関節OA患者373人に対し、上記と同様に日本人非OA患者群987人を対照として、各々ジェノタイプおよびアレルでのχ検定を行った。この結果、膝関節OA患者でも、GDF5遺伝子領域に有意な相関があった(表3)。股関節OA患者群と同様、GDF5遺伝子領域から離れるに従い相関は減弱した。
実施例6 GDF5遺伝子のg.4192504 A/G(nt.45 T/C)多型における相関解析
股関節OA患者群でもっとも強い相関を示したg.4192504 A/G(nt.45 T/C)多型は、対照群のCアレルのアレル頻度26.0%に比して股関節OA患者群、膝関節OA患者群いずれも、16.4%、21.2%と低く、また、逆にTアレルのアレル頻度は、83.6%、73.8%と高かった。ジェノタイプ頻度でも、TT個体は、股関節OA患者群で70.2%と対照群に比べ、15%程度多かった。この結果、この多型での股関節OA患者群のχ検定におけるp値は、ジェノタイプ3.8×10-12、アレル1.8×10-13と強い相関があった。一方、膝関節OA患者群のχ検定におけるp値は、ジェノタイプ3.2×10-2、アレル1.0×10-2と弱い相関があった(表4)。
この結果から、股関節OA患者群でのオッズ比は、優性モデルで2.39(1.55-3.69)(カッコ内は95%信頼区間)、劣性モデルで1.92(1.60-2.31)(同)、アレルで1.79(1.53-2.09)(同)であった。またこの多型の、膝関節OA患者群でのオッズ比は、優性モデルで1.82(1.03-3.23)(同)、劣性モデルで1.30(1.02-1.66)(同)、アレルで1.30(1.06-1.60)(同)であった(表4)。
実施例7 GDF5遺伝子のg.4192504 A/G(nt.45 T/C)多型における相関解析の詳細
股関節OA患者群では、関東地区と関西地区の医療機関で採取した検体を使用している。このため遺伝子のアレル頻度に地域差が存在した場合、撹乱因子となるので、地域別に再集計を行った。この結果、アレル頻度には地域差は大きくないことがわかった(表5)。また、対照群として使用した日本人非OA患者群は、OA以外の骨・関節疾患と診断された患者者集団(対照集団1および2)および三重県宮川村での集団検診で採取したコホート集団のうち、レントゲンでOAのないことが確認された患者の検体である。したがって、これらの疾患群にアレル頻度の差のないことも検討した。対照群内の各疾患群でアレル頻度に差はなかった(表5)。
実施例8 GDF5遺伝子g.4189193 A/C(IVS1-91 G/T)多型における相関解析
膝関節OA患者群で有意な相関を示した多型のうち代表的な多型であるg.4189193 A/C(IVS1-91 G/T)多型では、対照群のTアレルのアレル頻度16.9%に比して股関節OA患者群、膝関節OA患者群いずれも、10.0%、12.6%と低かった。ジェノタイプ頻度でも、GG個体は、股関節OA患者群で80.7%、膝関節OA患者群で75.8%、と対照群69.7%に比べ高かった。この結果、この多型での膝関節OA患者群のχ検定におけるp値は、ジェノタイプ1.8×10-2、アレル7×10-3と相関があった。一方、股関節OA患者群のχ検定におけるp値は、ジェノタイプ2.7×10-9、アレル13.3×10-10と相関があった(表6)。
この結果から、股関節OA患者群でのオッズ比は、優性モデルで2.39(1.55-3.69)(カッコ内は95%信頼区間)、劣性モデルで1.92(1.60-2.31)(同)、アレルで1.79(1.53-2.09)(同)であった。またこの多型の、膝関節OA患者群でのオッズ比は、優性モデルで1.82(1.03-3.23)(同)、劣性モデルで1.30(1.02-1.66)(同)、アレルで1.30(1.06-1.60)(同)であった(表6)。
以上の結果より、股関節OA患者群、膝関節OA患者群で、GDF5遺伝子との相関があると結論した。
実施例9 GDF5遺伝子領域におけるハプロタイプ解析
股関節OA患者群、膝関節OA患者群で、GDF5遺伝子との相関のあることがわかったが、GDF5遺伝子周囲領域の多型、とくにタイピングを行っていない多型にも相関があることを確かめるため、ハプロタイプ解析を行った。この結果、GDF5遺伝子領域およびその3’側のC20orf44までの領域では、D’が0.9以上となり連鎖不平衡状態にあることがわかった。また、GDF5遺伝子領域の5’側でも、CEP20、C20orf173、SDBCAG84、FERIL4の各遺伝子を含めた全領域でも連鎖不平衡状態にあった(図2)。すなわち、GDF5遺伝子およびその周辺領域では、いずれの多型もGDF5と相関を示すことがわかった。
実施例10 GDF5遺伝子領域における5’RACE反応
GDF5遺伝子の転写開始点を同定するため、5’RACEを行った。軟骨由来培養細胞から採取したmRNAより、SMART RACE KIT(Clontech)でRACE検体を作成した。この検体に対し、PCRを行い、PCR産物をアガロース電気泳動したところ、ほぼ均一の大きさのPCR産物を得た(図3)。これをTOPO TA cloning Kit(Invitrogen)を用いて、製品添付マニュアルに基づいて、ベクタープラスミドに挿入、シークエンスを行ない、NCBIから取得したシークエンスと比較した。この結果、GDF5遺伝子の転写開始点は、GDF5の参照mRNA配列(NM_000557.2)より少なくとも59塩基5’側にあることがわかった(図4)。
実施例11 GDF5遺伝子のプロモーター領域の決定
GDF5の最も強い相関を示したSNPは、5’-UTR領域の複数のSNPであった。そこで、1)この領域に転写活性があり、2)5’-UTR領域のSNPのアレル間でGDF5の発現の差があり、これがOAの感受性を決定していることを確かめた。
まず、コアプロモーターを同定すべく、プロモーターアッセイを実施した。最も強い相関を示したSNPとそれらとほぼ完全連鎖にある遺伝子多型(SNPとマイクロサテライト・マーカー)を含み、参照配列(NM_000557.2)の最初の塩基を基準に5’側1,160bp、3’側308bpの領域を組み込んだ領域に転写活性があることがわかった。そこから段階的に-93bpまで5’側を短くしても、転写活性はほとんど減少しなかった。更に、5’側、3’側を短縮していくことで、コアプロモーターが、5’側-93bpから3’側+69bpの領域に存在することが分かった(図5)。
実施例12 GDF5遺伝子のプロモーター解析
上記の結果に基づき、アレル間に活性の差が存在するかを確認した。上記のプロモーター領域にはマイクロサテライト・マーカーが2つ存在する。この2つのマイクロサテライト・マーカーには、頻度1%以上のアレルが7個存在し、繰り返しの数が短い2つのアレルのプロモーター活性が高く、他は低かった。しかし、その他にアレル間には一定の傾向は見られなかった。一方、このマイクロサテライト・マーカーを含まない場合でも、プロモーター活性の差がアレル間で存在した(図6)。
このコアプロモーターを含む領域には、g.4192504 A/G(nt.45 T/C)とg.4192277 A/G(nt.272 T/C)のSNPが2つ含まれる。このため、組み換え体を作成し、プロモーター活性を測定したところ、nt.45 T/Cが活性の差を生じさせていることが分かった(図6)。すなわち、nt.45 Cアレルでは転写活性が高く、nt.45 Tアレルでは活性が低い。
一方、3’側を+237、および+267まで短縮させた領域には、SNPは、nt.45 T/Cのみ含まれる。この領域のプロモーター活性も、nt.45 Cアレルに比較し、nt.45 Tアレルでは低下していた(図7)。
本発明によれば、骨・関節疾患に対する遺伝的感受性を容易に判定することができる。また、GDF5、それに対する抗体、それらをコードする核酸、それらのアンチセンス核酸、その他それらの発現もしくは活性を調節し得る物質は、骨・関節疾患の予防・治療剤として使用することができる。
GDF5遺伝子およびその周辺領域における相関解析のχ値を示す図である。 GDF5遺伝子およびその周辺領域のハプロタイプ解析の結果を示す図である。 GDF5遺伝子の5’RACE反応産物の電気泳動像を示す図である。 5’RACE反応より得られたGDF5遺伝子の転写開始点を示す図である。 種々のGDF5遺伝子5’領域を含むコンストラクトによるルシフェラーゼレポーターアッセイの結果を示す図である。 GDF5遺伝子の各アレルでのプロモーター活性の比較を示す図である。 GDF5遺伝子の各アレルでのプロモーター活性の比較を示す図である。
配列番号:4
プライマー
配列番号:5
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配列番号:6
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配列番号:7
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配列番号:8
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プローブ
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プローブ

Claims (7)

  1. 被験者より採取されたゲノムDNA含有試料において、GDF5遺伝子内に存在する多型および該多型と連鎖不平衡係数D’が0.9以上の連鎖不平衡状態にある該遺伝子の周辺領域内に存在する多型であって、配列番号:1で表される塩基配列中、塩基番号4、1803、36885、48822、52826、66340、82015、92839、98302、125120、126823、126913、127737、127928、128213、131297、131524、131963、152042、153702、165827、194305、195259、196060、202266、202894、207172および207730で示される塩基からなる群より選択される1以上の塩基における多型を検出することを特徴とする、該被験者の変形性関節症に対する遺伝的感受性の検査方法。
  2. 多型が、配列番号:1で表される塩基配列中、塩基番号127928、128213、131297および131524で示される塩基からなる群より選択される1以上の塩基における多型である請求項1記載の方法。
  3. 配列番号:1で表される塩基配列の部分塩基配列であって、塩基番号126823で示される塩基(但し、該塩基はGである)を含む、15〜500塩基の連続した塩基配列を含有してなる核酸。
  4. 配列番号:1で表される塩基配列の部分塩基配列であって、塩基番号126913で示される塩基(但し、該塩基はTである)を含む、15〜500塩基の連続した塩基配列を含有してなる核酸。
  5. GDF5遺伝子内に存在する多型および該多型と連鎖不平衡係数D’が0.9以上の連鎖不平衡状態にある該遺伝子の周辺領域内に存在する多型であって、配列番号:1で表される塩基配列中、塩基番号4、1803、36885、48822、52826、66340、82015、92839、98302、125120、126823、126913、127737、127928、128213、131297、131524、131963、152042、153702、165827、194305、195259、196060、202266、202894、207172および207730で示される塩基からなる群より選択される1以上の塩基における多型の各々を検出し得る1組以上の核酸プローブおよび/またはプライマーを含んでなる、変形性関節症に対する遺伝的感受性の診断用キット。
  6. 多型が、配列番号:1で表される塩基配列中、塩基番号127928、128213、131297および131524で示される塩基からなる群より選択される1以上の塩基における多型である請求項5記載のキット。
  7. 核酸プローブが、配列番号:1で表される塩基配列中、塩基番号4、1803、36885、48822、52826、66340、82015、92839、98302、125120、126823、126913、127737、127928、128213、131297、131524、131963、152042、153702、165827、194305、195259、196060、202266、202894、207172および207730からなる群より選択される塩基番号で示される多型部位の塩基を含む、15〜500塩基の連続した塩基配列を含有してなる核酸であり、核酸プライマーが、GenBankアクセッション番号NT_028392.4で表される塩基配列の部分塩基配列であって、上記の群より選択される塩基番号で示される多型部位の塩基を含む50〜1,000塩基の連続した塩基配列を増幅し得る一対の核酸である請求項5記載のキット
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