JP4662621B2 - 高エネルギビームを用いて材料加工する方法及び装置 - Google Patents
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Description
本発明は、高エネルギビームを用いて材料加工する方法であって、
溶接可能乃至切断可能な被加工材のキーホールの領域を、前記被加工材の全厚さを検知する被写界深度で観測し、
上記のビーム強度を時間に依存して測定するようにした、高エネルギビームを用いて材料加工する方法、
およびフォーカシング手段を有しており、該フォーカシング手段により高エネルギビームが溶接可能乃至切断可能な被加工材上に焦点合わせされ、
測定装置を有しており、該測定装置は前記被加工材のキーホールの領域を、前記被加工材の全厚さを検知する被写界深度で観測し、かつ前記ビームの強度を時間に依存して測定し、
前記測定装置に接続された評価ユニットを有しており、
該評価ユニットは、測定されたビーム強度を、前記キーホールの幾何形状量に基づいて評価する形式の装置に関する。
【0002】
プラズマを誘起する高エネルギビーム、例えばレーザビームまたは電子ビームを用いて材料加工する場合には、オンラインで品質を監視および調整する必要がある。加工プロセスを最適化することが所望される。したがって、加工領域からの光学的および音響的信号を品質監視のために使用することが、かなり以前から一般に公知である。例えば、被加工材を完全に溶接するための品質尺度である溶接浸透度を、被加工材の裏側から観測することによって、または被加工領域を側方から観測することによって特定することができる。この場合、観測のために光学的な検出器が使用され、この検出器は光の強度値から周波数の中心点を特定することができ、この周波数の中心点を用いて、溶接浸透度を推定することができる。しかし、両方法とも間接的であって、欠点がある。
【0003】
ドイツ連邦共和国特許公開第4434409号公報からは、冒頭で参照した方法ステップを有する方法が公知であり、この方法は、直接的なやり方である。被加工材のキーホールの領域が、誘起されたレーザビームの軸線で観測される。キーホール領域全体のプラズマビームの放射を観測することによって、強度の平均値を検出して、溶込み深さ(Eindringtiefe)の尺度として使用することができる。この方法では、測定装置を、プラズマを誘起するレーザビームの軸線に関して調整する必要がある。平均値形成するために、観測結果が相応に加算される。これにより観測精度、観測精度に依存する評価、さらに評価に依存する材料加工プロセスの制御が相応に改善される。
【0004】
本発明の課題は、冒頭に挙げた方法ステップを有する方法を改善して、材料加工の制御を改善することができ、ないしプロセスの直接観測を改善することによってプロセスの誤差を著しく阻止することである。
【0005】
この課題は、冒頭に述べた形式の方法において、
瞬時のビーム強度を、誘起されるビームの軸線に対して平行な、少なくとも2つの測定位置で測定し、
前記測定されるビーム強度を、前記キーホールの深さと、キーホールの開口部の加工方向での長さに関して、所定の関係性に基づいて評価し、
前記キーホールの深さと長さに依存して、前記ビーム強度または加工送り速度を制御することにより解決される。
【0006】
本発明では、プラズマビームの強度を評価する際に、平均値を形成しない。それに対して重要なことは、キーホールの観測領域の複数箇所での瞬時のプラズマ強度を評価することにある。所定の測定位置で観測されるプラズマ強度は、キーホールの形成に直接関連していることが分かった。その結果、基本的には、加工領域をピクセル毎ないしは点毎に観測することによって、キーホールの瞬時の形状、または少なくともこの形状の特性量を測定することができる。プラズマ強度は、誘起されるビームの軸線に対して平行に点毎に測定される。キーホールの形状ないしその特性量、つまり、請求項1の特徴部に記載のキーホールの幾何形状量に基づき加工の品質を直接推定することができる。その理由は、加工の品質程度は、キーホールの形状ないしの幾何形状量から分かるからである。なぜなら、所定の加工の用途、目的に応じたキーホールの幾何形状量は、所定の加工の質に対して既知だからである。逆に言えば、測定されたキーホールの幾何形状量に基づいて、実際に存在する加工品質を推定することができる。その際、測定装置を、誘起されるビームの軸線に対してその都度調整するのが回避される。この方法で得られたキーホールの幾何形状量は材料加工の制御のために利用される。このようにして瞬時のプラズマ強度を点毎に評価することにより、キーホールを少なくとも部分的に表示することができる。キーホールの形成ないし拡がりは、加工パラメータ、例えば、レーザビーム出力または加工送り速度の尺度であり、これらは材料加工の制御のために制御される。
【0007】
プラズマを誘起する高エネルギビームを用いて材料加工する際の切除凹部の形状は、誘起されるビームの軸線の方向に、またはこの軸線に対して平行な方向に延在している。このことは、被加工材中に出来る限り深く浸透して溶接するという観点でも必要である。そのような所望の深さの浸透溶接に関して、本発明の方法はキーホールの幾何形状量としてキーホールの深さを利用する。キーホールの瞬時の深さは、加工領域のあらゆる箇所で加工品質を特定するようなプロセスパラメータと直接関連している。例えば、被加工材の加工時のキーホールの深さが、所定の目標の大きさではない場合、加工品質が劣化する。
【0008】
加工の結果は、多数のキーホール幾何形状量から、キーホールの形状を特定して、材料加工の制御の基礎データとすることによって完全にすることができる。キーホールの瞬時の形状を完全に検出することにより、加工品質を正確に特定することができる。瞬時のキーホールは完全に直接的に観測される。例えば生じた加工欠陥を直接観測することができる。例として、アルミニウムのレーザビーム溶接の際の溶融浴の噴出を挙げておく。キーホールの閉鎖部が部分的であることが直接結像され、この結像から得られた幾何データが正しく変換されれば、本方法は、当該の加工欠陥が阻止されるように制御することができる。その種の方法は、キーホール全体の形状が特定される場合には最適に制御可能である。キーホールの形状が部分的にしか特定されない場合、またはキーホールの少数の幾何形状量しか特定されない場合、本方法は相応に制限されて制御可能である。
【0009】
キーホールは、誘起されるビームの軸線上に、この軸線に対して平行に種々異なる深さで延在しており、前記軸線に対して半径方向に、深さが種々異なって延在する場合には、種々異なった半径方向の寸法を有している。これらをキーホールの幾何形状量として利用することができる。このことは、キーホールの形状が完全に検出される場合は最適である。しかしキーホールの開口部の、加工方向での長さを幾何形状量として使用すると、簡単な方法が得られる。加工方向でのキーホールの開口の長さは、キーホールの深さとともにアスペクト比、すなわち前述の長さとキーホールの深さとの比を特定するために重要である。アスペクト比を十分な大きさにすると、キーホールから蒸気が周囲環境へ妨げなく流出することができ、そうすることによってプロセスが安定化される。加工方向でのキーホールの開口部の長さが所定であるように本方法を実行することにより、品質的に満足できる加工結果を達成することができる。ここでの前提は、浸透溶接の深さは、多数の加工の用途、目的において一定であり、区間エネルギの所定値、つまりレーザビーム出力と加工送り速度との比によって決定することができることである。特別な場合、キーホールの開口部の、加工方向での長さを幾何形状量として使用すると有利である。なぜなら被加工材を透過溶接する場合には、キーホールの形状が明らかに著しくスリムになるからである。と言うのは、照射エネルギの大部分がキーホールを通って外に放出され、被加工材の溶接のために利用されないからである。それに相応して上述の長さは低減する。したがって誘起されたビームの軸線に対して平行に直接観測することによって、透過溶接を瞬時に確認することができる。
【0010】
多くの材料加工の場合、所要エネルギを決めれば十分である。なぜなら加工中に所要エネルギを変化させる必要はないからである。そのために、区間エネルギが決められる。すなわちレーザビーム出力と加工送り速度との比が決められる。区間エネルギは、所定の浸透溶接の深さに対するものであり、この深さは、区間エネルギが大きくなるに連れて単調に大きくなる。その種の材料加工の場合、溶接領域内のダイナミックな過程について注目する必要はない。特に、キーホールから蒸気が何の妨げもなく流出することができる程に十分なアスペクト比が形成されている場合には注目する必要はない。溶接の欠陥、例えば、気孔はそのような方法では通常発生しない。しかし複雑な溶接業務を果たす必要がある場合には、例えば輪郭を溶接する場合には、材料加工中に方法パラメータを制御する必要がある。本発明の方法では、誘起されたビームの軸線に対して平行に、瞬時のプラズマ強度を測定することにより、キーホールの位置およびその拡がりを時間分解し、組み合わせて観測することができる。これによって、加工送り速度とレーザビーム出力とを別個に監視することができる。つまり加工方向でのキーホールの開口の長さおよびキーホールの深さは、レーザビーム出力が単調に大きくなるに連れて、両者とも単調に同じ方向に大きくなるからである。加工送り速度の場合には、このようにはならない。加工送り速度が単調に大きくなる場合、キーホールの長さは単調に大きくなるが、キーホールの深さは単調に減少する。
【0011】
前述の認識に基づいて、本方法は、レーザビーム出力を、キーホールの深さと同じ方向に変化するキーホールの開口の長さに依存して制御するようにして実行することができる。
【0012】
さらに本方法は、加工送り速度を、キーホールの深さとは反対方向に変化するキーホールの開口の長さに依存して制御するようにして実行することができる。
【0013】
前述の両方法では、材料加工用のレーザビーム出力および加工送り速度の方法パラメータを予め決める必要は必ずしもなく、寧ろ、加工中、決めることができる。
【0014】
前述の両方法手段は、同時に利用する必要はない。例えばキーホールの長さおよび深さを所定の範囲にだけ維持すればよく、キーホールの長さおよび深さを固定の値に維持する必要がない場合には、加工送り速度は固定のままでレーザビーム出力を制御すれば十分である。
【0015】
しかし材料加工のためには、加工方向でのキーホールの開口の長さのみならず、加工方向に対して横方向のキーホールの開口の幅も重要である。キーホールの幅が非常に小さい場合、材料加工を適切に制御する必要がある。つまり本方法は、加工方向に対して横方向のキーホールの開口の幅を、キーホールの幾何形状量として使用するようにして実行することができる。
【0016】
本発明はさらに、フォーカシング手段を有しており、該フォーカシング手段により高エネルギビームが溶接可能乃至切断可能な被加工材上に焦点合わせされ、測定装置を有しており、該測定装置は前記被加工材のキーホールの領域を、前記被加工材の全厚さを検知する被写界深度で観測し、かつ前記ビームの強度を時間に依存して測定し、前記測定装置に接続された評価ユニットを有しており、該評価ユニットは、測定されたビーム強度を、前記キーホールの幾何形状量に基づいて評価する形式の装置に関するものである。本発明の課題はこの装置を、改善された制御手段を用いて、改善された直接プロセス観測によってプロセスの欠陥を十分に阻止するように、材料加工の制御を改善することにある。
【0017】
この課題は、前記測定装置は、誘起されたビームの軸線に対して平行に配置された少なくとも2つの測定検出器を有し、
前記測定装置は前記測定検出器を用いて、瞬時のビーム強度を測定し、
前記ビーム強度は、前記キーホールの深さと、キーホールの開口部の加工方向での長さに関して、所定の関係性に基づいて評価され、
前記キーホールの深さと長さに依存して、前記ビーム強度または加工送り速度を制御するようにしたことによって解決される。
【0018】
前述の装置では、レーザビーム軸線に対して同軸線方向に観測することが利用される。この観測の光軸は、レーザビーム軸線に相応しているが、加工領域の瞬時の強度の実際の観測は、いずれの場合でもこの光学的なレーザビーム軸線の横で行われる。このように観測ないし測定を側方で行えば、基本的にはキーホールの最大の深さを検出することもできる。この最大の深さは、一般的にレーザビーム軸線の位置には存在せず、加工方向に関して軸線の後ろ側に位置している。側方で観察すれば、誘起されたビームの軸線内で測定検出器をその都度調整しないで済む。
【0019】
装置の非常に簡単な構成では、測定検出器を有孔絞りによって形成する。2つの有孔絞りを用いれば、プロセス状態を検出することができる。なぜなら各有孔絞りは、キーホールの1つの点領域だけを観測乃至測定するからである。
【0020】
装置の有利な構成では、第1の有孔絞りを加工方向に、第2の有孔絞りを加工方向に対して横方向に、それぞれ誘起されたビームの軸線の外側に設けるとよい。プラズマビームが所定の強度値を下回ると、材料加工の制御に影響することがある。
【0021】
キーホールの領域を覆う少なくとも1つのライン状カメラを設けると、キーホールの形成の検出を改善することができる。このライン状カメラは、1ラインに配設された多数の検出器を有している。それに応じてライン状カメラは、有利には加工方向および/または加工方向に対して横方向に、被加工材の加工領域の上側に配設される。ライン状カメラを用いて、光軸線の外側で、かつそれに対して平行に観測することによって、多数の測定値が得られる。この測定値の個数は、ライン状カメラの検出器の数によって決められる。
【0022】
キーホールの領域全体を結像して、個別に評価可能な測定値に分解された画像を形成する画像形成装置を設けると、加工処理ないしキーホールの観測を改善することができる。測定結果の精度は、評価可能な測定点の個数に依存し、つまり、面内に配設された、画像形成装置が有している検出器の個数に依存する。
【0023】
装置は、画像形成装置として、CCDカメラ、フォトダイオードアレイ、又はフォトマルチプライヤアレイを設けるようにして構成することができる。前述の画像形成装置は、プラズマを誘起する高エネルギビームを用いて材料加工する際に光学的に監視するために用いられる。その装置構成を、公知の使用方法、例えば、画像監視のクロック制御および自動強度適合用に用いることができる。
【0024】
以下、本発明について図示の実施例を用いて説明する。その際:
図1は、レーザビームを用いて加工する際に被加工材の観測用の装置の略図、
図2は、溶接時のキーホールの断面図、
図3は、透過溶接時のキーホールの断面図、
図4は、キーホールの長さおよびキーホールの深さと加工送り速度との関係性を示す図、
図5は、キーホールの長さおよびキーホールの深さとレーザビーム出力との関係性を示す図である。
【0025】
図1には、焦点合わせされたレーザビーム12により加工される被加工材10が略示されている。材料加工としては、使用されているレーザの使用量に応じて溶接、切断、穿孔、切除または溶断が行われる。図示していないレーザから放射されたレーザビーム12′は、偏向ミラー25を用いてフォーカシング(照準)ミラー15に偏向され、このフォーカシングミラーは、レーザビーム12を被加工材10にフォーカシングする。焦点24は例えば被加工材表面26上に位置している。フォーカシングミラー15としては有孔ミラーが使用され、この有孔ミラーの孔27はリングモード23を有するレーザビーム12のリング最大値28内に設けられている。孔27により、被加工材10の焦点24の領域内に被加工材の表面26を観測するための自由空間が提供される。被加工材表面26の加工領域を観測するために測定装置16が使用される。この測定装置は、図1には単に略示されているにすぎない。例えば、2つの測定検出器16′、16″は、有孔絞りの形式で使用される。図1には、この測定検出器16′、16″は詳細に図示されてはおらず、単に検出器の測定方向に関してだけ図示されている。それによると測定は、プラズマの軸線11方向に誘起されたレーザビームで行われるのではなく、そのプラズマの軸線11に対して平行に間隔をおいて行われる。加工時に観測される測定値または測定装置によって検出される光は線路29、Nd:YAGレーザで加工する場合には光導波路を介して評価ユニット19に伝送される。評価ユニット19は、プラズマビームの強度Iを時間tに依存して検出するように示されている。この検出は複数回行われる。すなわち検出器16′、16″によって決定される箇所の数だけ行われる。それにより、被加工材領域を点毎に検出することができる。評価ユニット19では、第1の測定点r1に対して関係性Ir1(t)が検出され、表示される。その下には、別の関係性Irn(t)が示されている。これにより、別の測定点rnでもプラズマビームの強度が時間tに依存して検出される。測定点r1,r2〜rnの配置は有利には、加工の用途、目的に相応して行われる。点列40は、使用される測定装置16に応じて多数の測定点を使用することができるということをシンボリックに示している。測定装置16は、検出器として有孔絞りを有することができるが、目的に応じて測定値を形成する任意の素子、または画像形成する素子として構成してもよく、例えばライン状カメラ、CCDカメラ、フォトダイオードまたはフォトマルチプライヤアレイとして構成することができる。測定点を評価する測定装置のそれぞれの構成に相応して、相応に多数の測定点が得られ、この測定点を評価することができる。
【0026】
評価ユニット19は制御装置43に接続されており、この制御装置は、評価ユニット19により供給されたデータを処理する。供給されるデータは、キーホールの幾何形状量に相当するデータである。この幾何形状量は、評価ユニット19によってその所定の基準値に基づいて、すなわち加工の用途、目的に対して既知であるキーホールの幾何形状量に基づいて算出される。
【0027】
測定点を形成する方法、または画像形成する方法を用いてキーホールの形状ないし加工領域の切除凹部の形状をかなり正確に検出することができる。図2には、被加工材を溶接する際のキーホールの長手方向断面が3次元表示で示されている。加工方向には長さが、加工方向に対して横方向には幅が示されている。キーホールの深さdkは、溶接ゾーンの物理的に条件に応じて、測定方向42で種々異なる。キーホールを図示のように完全に結像することは、加工領域全体を十分に正確に観測する場合にだけ、つまり、十分に多数の測定点で観測する場合にだけ可能である。キーホールの頂点41は、ビーム軸線ないし光軸42に対して間隔を有していることが分かる。これは、レーザビーム12の相対的な送りと、キーホール内でのダイナミックな過程によるものである。
【0028】
キーホールの深さ、キーホールの長さおよび幅は、キーホールの幾何形状量と見なすことができ、これらの幾何形状量はキーホールの形状を完全に記述することができる。キーホールの深さ、キーホールの長さおよび幅は、光軸42に対して平行に点毎に行われる観測によって完全に、測定装置の構成に相応して正確な時間で検出することができる。しかしキーホールの形状を完全に検出する必要はない。選択されたキーホールの幾何形状量、例えばキーホールの最大深さdk、キーホールの長さL、すなわち測定軸42を通る加工方向でのキーホールの開口の長さ、および加工方向に対して横方向のキーホール13の開口の幅B(測定軸42を通るように測定された)を使用すれば十分である。前述のキーホールの幾何形状量dk、LおよびBないしB/2が図2に示されている。
【0029】
図3は、図2とは異なるキーホール13の形成の様子を示す。その理由は、被加工材が透過溶接されているからであり、被加工材は、ビーム照射方向で少なくとも部分的に貫通している。したがってレーザビームの一部分は被加工材を透過するように照射され、励起(入力結合)されず、被加工材の溶融に使用される。そのためキーホール13は、極めて細い。したがって長さL1は、それと比較すべきキーホールの長さLよりも短い。相応に、幅B1/2も小さい。レーザビーム溶接を行う場合、キーホールの拡がりに基づいて少なくとも加工方向で浸透溶接と透過溶接との相違を見つけることができ、このことは例えば図2,3の比較から分かる。
【0030】
高エネルギビーム、例えば、レーザビームを用いる場合、方法パラメータの僅かな偏差が加工結果を著しく変えてしまう。レーザビーム出力、送り速度、焦点位置等が僅かに変化すると、浸透溶接の深さ、すなわちキーホールの深さ、溶接継ぎ目の構造および処理の安定性が影響を受ける。したがって材料加工時に製造プロセスを直接観測することは有意義である。加工パラメータならびに自由に調整されるプロセスパラメータを監視することができる。透過溶接を既述のようにして検出すること以外に、この方法により材料加工時に生じる加工欠陥も直接観測することができる。例えば、アルミニウムのレーザビーム溶接時の溶融浴の噴出、および切除凹部の閉鎖が部分的であることを検出できる。キーホールの幾何形状量が正確に変換されば、加工パラメータを制御ないし調整して、加工欠陥を回避することができる。
【0031】
キーホールの形状を時間分解して検出できることはすでに示した。この時間分解により、キーホールの自然な運動を示す特徴的な周波数を導出することができる。この運動またはキーホールの変化する形状を適切に評価することは、方法パラメータを制御するために利用することができる。これにより溶接ゾーンないしキーホールを安定化することができる。そうすることによって切除を均等に、溶接欠陥(例えば、気孔)なしに行うことができる。切除の安定化により、気相のダイナミックな運動が溶融浴上に移され、そのようにして溶融部内に変動が生じて、プロセス誤差を生じるのを回避することができる。
【0032】
キーホールの形状は、加工パラメータ、とりわけレーザビーム出力および加工送り速度に依存する点については既述の通りである。したがってキーホールの形状は、この加工パラメータの尺度と見なすことができ、この加工パラメータの制御に使用することができる。
【0033】
レーザビーム出力および加工送り速度は、種々異なってキーホールの形成に作用を及ぼすことが基礎となっている。説明のために、レーザビーム出力と加工送り速度は、区間エネルギという概念を形成することから出発する。区間エネルギとは、レーザビーム出力PLと加工送り速度vとの比である。この区間エネルギが大きくなるとキーホールの深さは単調に増大する。多くの材料加工においては、区間エネルギを加工の用途、目的に適合させれば十分である。しかし切除凹部ないしキーホールの自然な反応のダイナミックな作用を考慮することは有利である。キーホールのダイナミック特性に対しては、加工方向でのキーホールの開口の長さL、つまりキーホールの長さと、キーホールの深さdkとから得られるアスペクト比Aが重要である。ここでは、A=L/dkが成り立つ。アスペクト比Aが大きければ、キーホールから環境へ蒸気を妨げなしに流出させることができ、そうすることによってプロセスが安定される。
【0034】
図4,5には、キーホールの長さLおよびキーホールの深さdkと送り速度vとの関係性、ならびにレーザビーム出力PLとの関係性が示されている。キーホールの長さLは単調に大きくなるが、キーホールの深さdkは加工送り速度vの増大とともに単調に低下する。他方、レーザビーム出力PLとも関係する。レーザビーム出力PLが大きくなると、キーホールの長さLは大きくなり、キーホールの深さdkも大きくなる。
【0035】
キーホールの開口の長さLは技術的に測定可能である。このキーホールの長さLは区間エネルギPL/vには依存せず、出力PLおよび加工送り速度vとともに単調に増大する。アスペクト比A=L/dkは測定可能である。
【0036】
レーザビーム出力PLおよび加工送り速度vは、所望のキーホールの深さdkが達成されるのと同時に、安定した溶接に必要なアスペクト比Aも同時に調整されるように制御することができる。キーホールの深さdkの値は区間エネルギPL/vによって決められる。アスペクト比Aは、レーザビーム出力PLまたは加工送り速度v自体によって決められる。材料加工の制御または調整時に方法パラメータPLおよび加工送り速度vを、予め設定しておく必要はなく、有利には加工中決めるとよい。加工中にレーザビーム出力PLおよび加工送り速度vを決める際には、所定の関係性PL=(L,dk)およびv=v(L,dk)を知っておく必要はない。キーホールの長さLと深さdkが、PLとvに関して単調な特性を有していれば、方法パラメータPL、vの調整を実現するのに十分である。
【0037】
キーホールの長さLは局所的な深さの関数である。つまり加工の安定性を決めるアスペクト比A=A(zo)=L(zo/dk)も、局所的な深さzoの関数である。アスペクト比を決める深さzoは、それぞれの材料加工の用途、目的に依存して選択される。
【0038】
キーホール幾何形状量Lおよびdkを所定範囲に維持すれば加工結果にとって十分であるので、所定値に達成する必要がない場合、加工送り速度vを固定してレーザビーム出力PLにより材料加工を制御すれば十分である。
【0039】
材料加工の結果にとって重要なのは、キーホールの幅Bも最小値を下回らないようにすることである。したがってキーホールの長さLの他に、キーホールの幅Bも測定技術により検出する必要がある。最初に臨界的となるような幾何形状量LまたはBにより、レーザビーム出力PLおよび加工送り速度vの可能な範囲(この範囲内で安定した溶接過程が経過することができる)が決められる。キーホールの幅Bおよびキーホールの長さLを測定することにより、どちらの量が最初に臨界的となるのかを判定することができる。Bが不安定となる場合、レーザビーム出力PLを下げる必要がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 レーザビームを用いて加工する際に被加工材の観測用の装置の略図
【図2】 溶接時のキーホールの断面図
【図3】 透過溶接時のキーホールの断面図
【図4】 キーホールの長さおよびキーホールの深さと加工送り速度との関係性を示す図
【図5】 キーホールの長さおよびキーホールの深さとレーザビーム出力との関係性を示す図
Claims (11)
- 高エネルギビームを用いて材料加工する方法であって、
溶接可能乃至切断可能な被加工材(10)のキーホール(13)の領域を、前記被加工材の全厚さを検知する被写界深度で観測し、
上記のビームの強度を時間に依存して測定するようにした、高エネルギビームを用いて材料加工する方法において、
瞬時のビーム強度を、誘起されるビーム(12)の軸線(11)に対して平行な、少なくとも2つの測定位置で測定し、
前記測定されるビーム強度(PL)を、前記キーホール(13)の深さ(d k )と、キーホール(13)の開口部の加工方向での長さ(L)に関して、所定の関係性(P L =(L,d k )、v=v(L,d k ))に基づいて評価し、
前記キーホールの深さと長さに依存して、前記ビーム強度または加工送り速度(v)を制御するようにしたことを特徴とする誘起された高エネルギビームを用いて材料加工する方法。 - 多数のキーホールの深さと長さから、被加工材(10)のキーホール(13)の形状を特定し、材料加工の制御の基礎データとする請求項1記載の方法。
- ビーム出力(PL)を、キーホールの深さ(dk)の変化と同一方向に変化する、キーホール(13)の開口部の、加工方向での長さ(L)に依存して調整する請求項1記載の方法。
- 前記加工送り速度(v)を、キーホールの深さ(dk)の変化に対して反対方向に変化する、キーホール(13)の開口部の加工方向での長さ(L)に依存して調整する請求項1から3迄の何れか1記載の方法。
- 加工方向に対して横方向のキーホール(13)の開口部の幅(B)をキーホールの幾何形状量として使用する請求項1から4迄の何れか1記載の方法。
- フォーカシング手段を有しており、該フォーカシング手段により高エネルギビームが溶接可能乃至切断可能な被加工材(10)上に焦点合わせされ、
測定装置(16)を有しており、該測定装置は前記被加工材(10)のキーホール(13)の領域を、前記被加工材の全厚さを検知する被写界深度で観測し、かつ前記ビームの強度を時間に依存して測定し、
前記測定装置(16)に接続された評価ユニットを有しており、
該評価ユニットは、測定されたビーム強度を、前記キーホール(13)の幾何形状量に基づいて評価する形式の装置において、
前記測定装置(16)は、誘起されたビーム(12)の軸線(11)に対して平行に配置された少なくとも2つの測定検出器(16′、16″)を有し、
前記測定装置(16)は前記測定検出器(16′、16″)を用いて、瞬時のビーム強度を測定し、
前記ビーム強度(P L )は、前記キーホール(13)の深さ(d k )と、キーホール(13)の開口部の加工方向での長さ(L)に関して、所定の関係性(P L =(L,d k )、v=v(L,d k ))に基づいて評価され、
該キーホールの深さと長さに依存して、前記ビーム強度または加工送り速度(v)を制御するようにしたことを特徴とする装置。 - 前記測定検出器(16′、16″)は、キーホールの1つの点領域だけを観測乃至測定する有孔絞りによって形成される請求項6記載の装置。
- 第1の有孔絞りは加工方向に、第2の有孔絞りは前記加工方向に対して横方向に、それぞれ、誘起されるビーム(12)の軸線(11)の外側に設けられている請求項7記載の装置。
- キーホール(13)の領域をカバーする少なくとも1つのライン状カメラが設けられている請求項6から8迄の何れか1記載の装置。
- キーホール(13)の領域全体を結像して、個別に評価可能な測定点で分解する画像形成装置が設けられている請求項6から9迄の何れか1記載の装置。
- 画像形成装置として、CCDカメラ、フォトダイオードアレイ、又はフォトマルチプライヤアレイが設けられている請求項10記載の装置。
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