JP4656910B2 - ニューキノロン剤を含有する超音波治療用活性酸素発生剤 - Google Patents

ニューキノロン剤を含有する超音波治療用活性酸素発生剤 Download PDF

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Description

本発明はニューキノロン剤を含有する超音波治療用薬剤、特に超音波治療用活性酸素発生剤に関する。
ニューキノロン剤(ニューキノロン系抗生物質)は、従来のキノロン系抗生物質であるナリジクス酸に類似した母核である4−キノロン骨格の6位にフッ素を有する構造を持った抗生物質である。従来のキノロン系抗生物質が主としてグラム陰性桿菌に対してのみ抗菌活性を有し、尿路感染症に適用されていたのに対して、ニューキノロン剤は呼吸器感染症などにも適応を拡大した広い抗菌スペクトルを有している。ニューキノロン剤は非常に強力で広範囲の抗菌スペクトルと、より少ない副作用を有するため、感染症の治療に臨床的に幅広く使用されてきた(非特許文献1)
また、音響動力学療法(sonodynamic therapy:SDT)は薬物と超音波との相乗効果を利用した、癌治療のための有望な新しい方法である(非特許文献2及び7)。ホトダイナミック化合物であるヘマトポルフィリン(Hp)やその誘導体は、薬剤単体では細胞損傷を引き起こさないような濃度であっても、超音波照射を使うと細胞損傷効果を増強させることが見出された。Hpと超音波とを組合せることによって、治療の有効性が増大し、必要な超音波照射の強度は低下した(非特許文献3)。しかし、Hpは、重度の光線皮膚炎などいくつかの臨床的な副作用を有し、患者から太陽光から4週間以上遮断しなければならないとの臨床報告もある。したがって、Hpは、現在までのところ臨床的にあまり幅広く使用されていない。
Antimicrob.Agents Chemother.36(11)(1992)2544−2547 Jpn.J.Cancer Res.93(2002)216−222 Jpn.J.Cancer Res.81(1990)304−308 Jpn.J.Cancer Res.90(1999)1146−1151 Jpn.J.Cancer Res.89(1998)452−456 Drugs Exp.Clin.Res.20(5)(1994)177−183 Heterocycles,38(6)(1994)1209−1211
最近、ピロキシカムのような一部の非ステロイド性抗炎症性薬物(NSAID)が、抗腫瘍効果について上記のHpと超音波照射との組み合わせと同様の協奏効果が生じることが見出された(非特許文献2、4、5及び7)。ピロキシカムはHpよりは副作用が少ないものの、それでも音響動力学化合物として臨床的に使用するためには高濃度で使用しなければならず、臨床的に使用するには依然として理想から程遠いものであった。
従って、抗腫瘍効果について、新しい音響動力学化合物の登場が求められていた。
一方、ニューキノロン剤は非常に強力で広範囲の抗菌スペクトルを有する抗生物質であり、より少ない副作用を有するため、感染症の治療に臨床的に幅広く使用されてきた(非特許文献1)が、音響動力学化合物としての使用の可能性は現在まで記載も示唆もされていない。また、ニューキノロン剤が、感染症の治療のほかに、癌治療にも適応できることについては従来記載も示唆もされていない。
そこで本発明者は、ニューキノロン剤の存在下での超音波に対する腫瘍細胞の感受性の変化、及び超音波とニューキノロン剤との組合せの腫瘍治療への適応可能性について鋭意検討し、得られた知見に基づき本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)ニューキノロン剤を含有することを特徴とする超音波治療用薬剤。
(2)前記ニューキノロン剤が、塩酸ロメフロキサシン(LFLX)、スパルフロキサシン(SPFX)、塩酸シプロフロキサシン(CPFX)、及びガチフロキサシン水和物(GFLX)からなる群から選ばれる上記(1)記載の薬剤。
(3)前記ニューキノロン剤が、LFLX、SPFX及びGFLXからなる群から選ばれる上記(2)記載の薬剤。
(4)前記ニューキノロン剤がSPFXである上記(3)記載の薬剤。
(5)前記ニューキノロン剤の4−キノロン骨格の8位にフッ素基又はメトキシ基を有する上記(1)記載の薬剤。
(6)前記超音波治療用薬剤が活性酸素発生剤である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の薬剤。
(7)前記超音波治療用薬剤が抗腫瘍剤である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の薬剤。
(8)腫瘍に罹患した被験体に上記(1)〜(7)のいずれかに記載の薬剤を、必要に応じて賦形剤又は担体と共に投与し、次いで被験体又はその腫瘍部に超音波を照射することからなる腫瘍の治療方法。
(9)超音波強度が2.0W以上である上記(8)記載の方法。
超音波照射とニューキノロン剤とを組合せることにより、ニューキノロン剤を腫瘍の治療に相乗効果的に用いることができる。
発明を実施するための形態
本発明においてニューキノロン剤とは、当該業界で通常ニューキノロン系抗生物質と称される薬剤のことを言い、特に塩酸ロメフロキサシン(LFLX)、スパルフロキサシン(SPFX)、塩酸シプロフロキサシン(CPFX)、及びガチフロキサシン水和物(GFLX)等が挙げられる。本発明においては、好ましくはLFLX、SPFX、CPFX及びGFLXが用いられ、より好ましくはLFLX、SPFX及びGFLXが用いられ、更に好ましくはSPFXが用いられる。
また、特に、4−キノロン骨格の8位(C)にフッ素基又はメトキシ基を有するニューキノロン剤が好ましく用いられ、LFLX、SPFX及びGFLXがこれに該当する。
LFLX、SPFX、CPFX又はGFLXの存在下で超音波を照射し、肉腫180(sarcoma 180)の細胞に対する音響動力学的な抗腫瘍効果をイン・ビトロで検査したところ、ニューキノロン剤を加えた群における腫瘍細胞の生存率は、同薬剤を加えなかった群に比べて有意に低かった。腫瘍細胞の生存率は、特にCPFX群よりSPFX群で有意に低く、またSPFXの効果は用量依存性である。
この発見は、従来感染症治療薬として使用されてきたニューキノロン剤が超音波照射下で抗腫瘍性活性薬剤として使用できることを示している。従って、本発明の超音波治療用薬剤は抗腫瘍剤として用いることができる。
また、ヒドロキシルラジカルの捕捉剤であるD−マンニトールを、上記ニューキノロン剤の代表としてのSPFXと共に使用した場合、超音波照射後の腫瘍細胞生存率はSPFXのみを使用した場合と同程度であった。しかし、一重項酸素とヒドロキシルラジカルの捕捉剤であるL−ヒスチジンをSPFXと共に使用した場合は、超音波照射後の腫瘍細胞生存率はSPFXのみを使用した場合に比べて有意に高かった。
このことは、ニューキノロン剤が超音波照射下で活性酸素発生剤として一重項酸素を発生させ、これが抗腫瘍効果に寄与していることを示していると考えられる。従って、本発明の超音波治療用薬剤は活性酸素発生剤として用いることができる。
ニューキノロン剤は、非常に有効性の高いクラスの抗生物質に属し、一般的な細菌感染症に打ち勝つための第1選択肢として臨床的に使用されている。
理論に束縛されることは本発明者らの意図するところではないが、フッ素基やメトキシ基など官能基をC位に有するニューキノロン剤は、超音波を照射するとC位でラジカルを形成し、その後、図6に示すように酸素と反応して一重項酸素の発生をもたらす不安定なペルヒドロキシル化合物を提供すると考えられる。
本発明において、ニューキノロン剤の溶液の濃度は、0.01mMより高いことが好ましく、0.05mM以上がより好ましく、0.1mM以上が更に好ましく、0.2mM以上が最も好ましい。以下に記載する実施例で使用したSPFXの最低有効濃度は0.05mMであった。
ニューキノロン剤は人に投与される時は、従来薬学的によく知られた形態及び経路が適用される。例えば散剤、錠剤、カプセル剤、軟膏、注射剤、シロップ剤、水剤等により経口的に又は非経口的に使用され、必要に応じて、賦形剤(例えば、乳糖、D−マンニトール、トウモロコシデンプン、結晶セルロース等)、崩壊剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等)、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク等)、コーティング剤(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、白糖、酸化チタン等)、可塑剤(例えば、ポリエチレングリコール等)、基剤(例えば、ポリエチレングリコール、ハードファット等)、溶解剤ないし溶解補助剤(例えば、注射用蒸留水、生理食塩水、プロピレングリコール等)、pH調節剤(例えば、無機又は有機の酸又は塩基)、等張化剤(例えば、食塩、ブドウ等、グリセリン等)、安定化剤等が使用される。
また、ニューキノロン剤は、製剤中に、例えば、0.1〜99.5重量%、好ましくは、0.5〜95重量%の量で使用されるのが適当である。症状や、年齢、体重等によって異なるが、通常成人1日当たり、体重1kgにつき、0.05〜100mg、好ましくは、0.1〜50mgの量で投与することができる。
SPFXは、経口使用のために新しく開発された、広範囲の強力な抗菌活性を有するキノロンである。この化合物は、以下の薬理学的な利点を有する。(i)高密度の、大部分が脂質である外莢膜及び細胞壁への透過率が高いこと、(ii)組織透過率が優れており、血漿で得られるレベルより2〜11倍高いレベルがもたらされること、(iii)マクロファージ内での蓄積が優れていること、(iv)マウスの血漿、及びヒトの血漿でも、長い半減期が得られること。
この優れた薬物動態によって、SPFX等のニューキノロン剤は、有用な抗生物質であるだけでなく、音響動力学化合物としても有用であることがわかる。
本発明において超音波は、例えば非特許文献2、4又は7で用いられたような超音波発生装置等、公知のものを用いることができる。これらの装置を用いて、例えば周波数2MHzで、2.0W以上の強度の超音波を30秒以上、好ましくは60秒以上、皮膚等の体表面を通して患部に又は直接患部に照射する。照射は例えば磁気共鳴画像化装置(MRI)の画像を基に、コンピュータで正確に患部の位置を特定しながら行うこともできる。超音波の照射の時期は、ニューキノロン剤の投与後、薬剤の生体内における薬物動態を考慮して適宜決定することができる。
本発明の薬剤は、腫瘍に罹患した被験体に、必要に応じて賦形剤又は担体と共に投与し、次いで被験体又はその腫瘍部に、超音波を、好ましくは2.0W以上の強度で照射することにより、腫瘍の治療方法に用いることができる。
材料及び方法
(1)腫瘍細胞の調製
腹水肉腫180(ascitic sarcoma 180)を実験腫瘍として使用した。肉腫180の懸濁液(約1ml)を7週齢のICR雄マウス(日本エスエルシー株式会社(Shizuoka Laboratory Co.))に腹腔内注射し、約7〜10日後に採取した1.0〜2.0mlの腹水液を、細胞数が7.52×10個/ml(5.25×10個/0.7ml)に設定されるようにリン酸緩衝食塩水(PBS)で希釈した(以降、ストック溶液と呼ぶ)。対照溶液は、ストック溶液を100mlのPBSで2倍に希釈することによって調製した。腫瘍細胞生存率は、トリパンブルー色素排除法によって、光学顕微鏡(オリンパス株式会社 BH−210 ×400)下で血球計数器(萱垣医理科工業)を使用して評価した。腹水液中の腫瘍細胞の変性の影響を排除するために、2.5%未満の死亡率を有するストック溶液を以下の実験で使用した。
(2)薬剤
以下の5つの薬剤の、肉腫180に対する音響動力学化合物としての抗腫瘍性活性を検討した(図1)。
1)ピロキシカム(日本ロシュ株式会社、東京から供給)C1513S、分子量331.35
2)LFLX(塩野義製薬株式会社、大阪から供給)C1719・HCl、分子量387.81
3)SPFX(大日本製薬株式会社、大阪から供給)C1922・HCl、分子量392.41
4)CPFX(バイエル薬品株式会社、大阪から供給)C1718FN・HCl・HO、分子量385.82
5)GFLX(杏林製薬株式会社、東京から供給)C1922・11/2HO、分子量402.42。
各薬物の0.2mM溶液を調製するために、6.63mgのピロキシカム、7.76mgのLFLX、7.85mgのSPFX、7.72mgのCPFX、又は8.04mgのGFLXを、0.3mlのDMFに個別に溶解し、100mlのPBSで別々に希釈した。0.2mMの濃度は、実験系に影響を与えないと予想される0.3mlのDMFに溶解することができる薬物量に基づいている(非特許文献2及び4)。
(3)超音波発生装置
本実施例で使用した超音波発生装置は、非特許文献2、4又は7で用いたものと同じである。
(4)超音波照射実験
1.4mlの対照溶液、及び各薬物の0.2mM溶液の0.7mlと混合した0.7mlのストック溶液(6群)を、径10mm、高さ40mm、底厚1mmのガラスセル(秋田大学医学部の機器センターで作成)に個別に投入した。既に言及したように、各ガラスセルに含まれる腫瘍細胞の数は約5.26×10個に設定した。まず、薬剤自体を加えることによってストック溶液中の腫瘍細胞生存率が変化するかどうかを経時的に検討した(n=10)。次に、対照溶液及び薬剤添加溶液に、周波数2MHzで1.5W、2.0W、3.0Wの超音波をそれぞれ30秒間及び60秒間照射した(n=10)。確実に圧電素子をガラスセルに密着させるために、超音波伝達ゲル(Parker、Aqusonic 100、ニュージャージー州フェアフィールド)を使用した。ガラスセル内の溶液の温度を室温(22〜26℃)に設定した。超音波照射によって破壊された細胞は死亡細胞として計数したので、この実験における細胞生存率は、(照射後の生存細胞数/照射前の生存細胞数)×100(%)として計算した。細胞の変性及び壊死の程度を見るために、超音波照射前及び後に、細胞懸濁液からメイギムザスメアを調製した。
(5)活性酸素の同定
一重項酸素とヒドロキシルラジカルの捕捉剤であるL−ヒスチジン塩酸塩一水和物(和光純薬工業株式会社)、及びヒドロキシルラジカルの捕捉剤であるD−マンニトール(半井化学薬品株式会社)を使用して、既に言及した超音波照射実験と同じ条件下で腫瘍細胞生存率を算出した(n=10)。この結果を、0.2mMのニューキノロン剤を加えたそれぞれの群の結果と比較した。L−ヒスチジン及びD−マンニトールの濃度は、それぞれ0.2Mに設定した。
(6)統計分析
腫瘍細胞生存率の平均及び標準偏差を各群について計算した。群の間の差は、ウィルコクソン検定による比較のP値が0.05以下の場合に有意であると見なした。
結果
(1)腫瘍細胞生存率に対する薬剤の経時的な影響
対照群の腫瘍細胞生存率は、3時間以内では0.2mMの薬剤を加えた群と有意な差がなかった。3時間以内では、薬剤添加群の間の生存率で有意な差は観察されなかった。
(2)腫瘍細胞生存率に対する超音波照射の影響
30秒及び60秒の照射時間において、対照群と薬剤添加群のいずれも、超音波の強度を上げると腫瘍細胞生存率が下がった(図2A及び図2B)。
超音波強度が1.5Wの場合は、30秒及び60秒の照射時間で対照群と薬剤添加群との間に有意な差は見出されなかった(図2A及び図2B)。それに対して、超音波強度を2Wに上げた場合は、30秒(対照は78.72±12.25%;LFLXは49.46±14.62%、P=0.0011;SPFXは30.85±15.41%、P=0.0002;CPFXは66.47±11.27%、P=0.0233;GFLXは38.84±8.35%、P=0.0001;ピロキシカムは40.43±12.33%、P=0.0001)、及び60秒(対照は52.14±22.41%;LFLXは27.14±9.52%、P=0.028;SPFXは23.41±8.74%、P=0.0039;CPFXは38.31±8.99%、P=0.0016;GFLXは26.08±9.52%、P=0.0048;ピロキシカムは28.19±9.40%、P=0.0289)で、薬剤添加群の腫瘍細胞生存率は対照群に比べて有意に低かった(図2A及び図2B)。腫瘍細胞生存率は、30秒及び60秒で、C位に官能基を有さないCPFX群に比べて、C位にフッ素基及びメトキシ基を有するLFLX、SPFX及びGFLX、並びにピロキシカム群で有意に低かった(図2A及び図2B)。
3W、30秒間又は60秒間では、対照群と薬剤添加群のいずれも腫瘍細胞生存率が低く、有意な差は見られなかった。この実験の後、最も効果的な結果をもたらしたSPFXの様々な濃度(0.2mM、0.1mM、0.05mM及び0.01mM)を、既に言及した条件と同じ条件下で更なる実験用に選択した。
2Wで30秒間超音波照射を行うと、腫瘍細胞の生存率はSPFX0.2mMの群(30.85±15.41%)、0.1mMの群(34.58±15.90%)それに0.05mMの群とも(44.15±8.35%)、対照群に比べ有意に低く(p<0.0001)、60秒間の照射でも同様であった(p<0.0001)(0.1mMの群では28.72±5.70%、0.05mMの群では34.05±8.77%)。30秒又は60秒のいずれでも対照群と0.01mM群との間には差がなかった。また30秒間照射したとき0.2mMの群の生存率は0.05mMの群より有意に低値であった(P=0.0281)(図3)。
(3)メイギムザスメア(May−Giemsa Smear)
照射後、青紫色に染まった肉腫180細胞が拡散して見られ、対照群では核及び細胞質のほとんどがよく維持されていた(図4A)。しかし、0.2mMのSPFX群では、腫瘍細胞は濃縮した核と明るい細胞質を示し、全細胞数は減少しており、ほとんどの細胞が損失又は小片に断片化されていた(図4B)。
(4)活性酸素捕捉剤の効果
腫瘍細胞生存率は、30秒(p<0.0001)及び60秒(p<0.0001)で、SPFXのみが存在する場合に比べて、0.2mMのSPFXと共に0.2MのL−ヒスチジンが存在する場合で有意に高かった。しかし、D−マンニトールを加えた群では、腫瘍細胞死の抑制は見られなかった(図5)。
考察
以上の実験では、2Wの超音波照射における腫瘍細胞生存率は、30秒の照射では、対照78.72%に対して、LFLX49.46%、SPFX30.85%、CPFX66.47%、及びGFLX38.84%、並びにピロキシカム40.30%であり、また60秒の照射では、対照52.14%に対して、LFLX27.14%、SPFX23.41%、CPFX38.31%、及びGFLX26.08%、並びにピロキシカム28.19%であった。薬剤添加群では腫瘍細胞生存率は対照より有意に低かった。
1.5Wの超音波照射では、群の間で有意な腫瘍細胞生存率の差は見出されなかったが、3Wの超音波照射では、対照群と薬剤添加群のいずれも腫瘍細胞生存率は0%に近かった。この結果から、高出力の超音波照射では、超音波照射のみでも肉腫180細胞を破壊することができるようではあるが、ニューキノロン剤が存在すると、より短い時間、より弱い出力で相当の抗腫瘍効果が得られる。4つのニューキノロン剤のすべてが音響動力学化合物として効果的である。
更に、2Wの超音波照射では、30秒及び60秒の照射後の腫瘍細胞生存率は、対照群に比べて、0.2mM、0.1mM、及び0.05mMのSPFX群で有意に低かった。0.01mMのSPFX群と対照群の間で有意な差は見出されなかった。0.2mM群の腫瘍細胞生存率も、0.05mM群に比べて30秒又は60秒で有意に低かった。これらの結果は、SPFXの存在下での超音波照射の効果は用量依存性であることを示している。ガラスセル内の肉腫180細胞を根絶させるには、0.05mMより高い用量のSPFXの存在下で、2Wを超える超音波が必要であった。
上記実験例では、薬剤のPBSへの溶解を補助するために、可溶化剤であるDMFをニューキノロン剤やピロキシカムと同時に使用した(非特許文献2及び4)が、DMFの抗腫瘍効果は報告されていない。また、ニューキノロン剤の中には、ある種の癌細胞系でアポトーシスを誘発させるかもしれない(非特許文献6)。
従って、本発明者らは超音波処理を施さずに、対照群と薬剤添加群との腫瘍細胞生存率を比較した。しかし、3時間経った後でも、0.3%のDMFの存在下でも、或いは薬剤を加えた場合でも、腫瘍細胞の生存率に変化は見出されなかった。このことは、増強された抗腫瘍効果が、超音波と薬剤とを組み合わせた音響動力学効果に起因していることを示している。
Hpの音響動力学反応では、いくつかの側面から見た証拠によって、音響化学的(sonochemical)に活性化されたHpによって生じた一重項酸素が最も重要な細胞損傷媒体である可能性が高いことが示唆される(非特許文献2、4及び7)。
L−ヒスチジンは一重項酸素とヒドロキシルラジカルの捕捉剤として作用することで知られているが、超音波で誘導したヒドロキシルラジカルを捕捉するためであれば、0.2Mの濃度のD−マンニトールだけで十分である。従って、L−ヒスチジンによる、SPFXの存在下における超音波処理で誘発させた細胞損傷の有意な減少、及び0.2MのD−マンニトールに有意な効果が見られなかったことは、一重項酸素が細胞損傷における重要な媒体であることを示している。
ピロキシカム、LPLX、SPFX、CPFX及びGFLXの構造式を示す。 2W、30秒での超音波照射後の腫瘍細胞生存率を示す。対照群と薬剤添加群、及びCPFX群と他の薬剤添加群の間で有意な差が見られた。 2W、60秒での超音波照射後の腫瘍細胞生存率を示す。対照群と薬剤添加群、及びCPFX群と他の薬剤添加群の間で有意な差が見られた。 様々な濃度のSPFXの存在下における、超音波照射後の腫瘍細胞生存率を示す。2W、30秒及び60秒で、対照群と0.05mM以上の濃度のSPFXを加えた群との間、0.2mM群と0.05mMや0.1mMの群の間、及び0.1mM群と0.01mM群の間に有意な差が見られた。 対照群でのメイギムザスメアを示す。腫瘍細胞は青紫に染まり、核と細胞質のいずれも損なわれずに維持されている(×400)。 0.2mMのSPFX群でのメイギムザスメアを示す。2W、30秒で、腫瘍細胞はほとんど損失又は小片に断片化された(×400)。 L−ヒスチジン及びD−マンニトールの、腫瘍細胞死を抑制する効果を示す。2W、30秒及び60秒で、腫瘍細胞生存率はSPFX群よりSPFX+L−ヒスチジン群で有意に高かったが、SPFX+D−マンニトール群とSPFX群では有意な差は見出されなかった。 ニューキノロン剤から一重項酸素を生じさせる妥当と思われる機構を示す。

Claims (5)

  1. 塩酸ロメフロキサシン(LFLX)、スパルフロキサシン(SPFX)、塩酸シプロフロキサシン(CPFX)、及びガチフロキサシン水和物(GFLX)からなる群から選ばれるニューキノロン剤を含有することを特徴とする超音波治療用薬剤。
  2. 前記ニューキノロン剤が、LFLX、SPFX、及びGFLXからなる群から選ばれる請求項記載の薬剤。
  3. 前記ニューキノロン剤がSPFXである請求項記載の薬剤。
  4. 前記超音波治療用薬剤が活性酸素発生剤である請求項1〜のいずれか一項に記載の薬剤。
  5. 前記超音波治療用薬剤が抗腫瘍剤である請求項1〜のいずれか一項に記載の薬剤。
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