JP4656059B2 - 脱毛症の予防および治療的処置のための新規ペプチド複合体 - Google Patents

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Description

本発明は、皮膚科学または美容治療、特に発毛刺激または脱毛の遅延に有用な、配列 Lys-Asp-Valを含む新規なペプチド複合体を提供することを目的とする。
個人の生涯を通じて、発毛および毛髪の更新は毛包の活性により決定される。毛包は、それぞれ全く異なる分子性および細胞性機構により特徴付けられる3つの相−成長期(anagen)、退行期(中間期、catagen)および休止期 (テロゲン、telogen)−からなる規則的周期を行っている:
−約3年の成長期の間、真皮乳頭の細胞は、毛球中に存在する幹細胞にシグナルを「送る」。次いで、これらのシグナルを受けた関連細胞が毛包マトリックスへと移動して、マトリックス細胞と称される。この領域では、真皮乳頭の細胞はさらにシグナルを出して、マトリックス細胞を最初増殖させ、次いで分化させて、毛幹を長くする。この相の間、毛包は真皮を通って移動し、成長期VIでは脂肪組織に接触した下皮に固定される。
−退行期と称される次の相は、約3週間続く短い相であり、その間に毛包の下部の細胞がアポトーシスに入り、このようにして毛包を退化させる。
−残る休止期と称される次の相は、3カ月間毛包が不活発となり、新たな成長期が始まる前に毛髪が抜けることを特徴とする。
今日、個人の外見は大きな社会的重要性をもち、脱毛は、ある人々にとっては社会的に不利と感じられる真の問題である。男性においては、患者の大多数は、男性ホルモン性脱毛症である。この種の脱毛症は、男性ホルモン、より詳しくはテストステロンの、真皮乳頭の細胞による毛包レベルでのカタボリズムにおける欠陥による。実際、毛包のレベルにおいてテストステロンの代謝物、DHT ( テストステロンに5 α- リダクターゼが作用して産生される代謝物) の蓄積がある。通常の過程では、この化合物は分解され、次いで尿中に除去される。現在、この種の脱毛症において脱毛を遅延させるために5 α- リダクターゼの阻害剤が使用されている。
毛髪および頭皮生物学、脱毛症、頭皮疾患およびそれらの治療に関する現在の一連の知識は、 "毛髪および頭皮病理学" P.BouhannaおよびP.Reygagne、マッソン版にまとめられている。
多年にわたり化粧品業および医薬品業では、脱毛症の影響を止めるかまたは低減しうる物質、特に発毛を誘導または促進するか脱毛を減少させる物質を探求してきた。
ミノキシジルおよびフィナステリドなどの一定数の化合物が既に使用されている。
ある種のペプチドが、発毛に対する刺激効果で知られているが、本発明の目的であるペプチドまたはペプチド複合体はいずれの文献にも示されていない。
本出願人は、脱毛症を改善しうる配列 Lys-Asp-Valを含む新規なペプチドおよびペプチド複合体を合成した。
本発明は、下記式(I) に対応するペプチド、または下記式(II)に対応するそのペプチドの複合体を提供することを目的とする。
W-Lys-Asp-Val-Z (I) (SEQ ID NO. 1-2)
A-W-Lys-Asp-Val-Z (II) (SEQ ID NO. 3-4)
上記式中、Aは、下記に対応する基を表し、
−一般式(III) のモノカルボン酸
HOOC-R (III)
(ここで、Rは、直鎖または分岐のC1-C24脂肪族基であり、これはヒドロキシル基で置換されていてもよく、1または2以上の不飽和、有利には1〜6の不飽和を含みうる) 、
−リポ酸もしくはその還元型、ジヒドロリポ酸、N-リポイル−リシン、またはレ チノイン酸
Wは、ZがTyr-Val-Gln-Leu-Tyr-NH2 、Leu-DOPA、DOPA−NH2 またはHomoPhe-NH2 を表す場合は、
Glu-Gln-Arg 、Arg-Lys 、Arg-Lys-Asp 、Arg または結合を表すか、あるいは
Wは、ZがTyr-Val-Gln-Leu-Tyr-NH2 、Leu-DOPA、Val-Tyr-OH、Val-Tyr-NH2 、Tyr-NH2 、Tyr-OH、DOPA-NH2またはHomoPhe-NH2 を表す場合は、Gly-Gln-Gln またはGlu-Gln を表す。
有利には、このペプチド配列は酸Aと化学的または物理的に結合している。本発明の結合したペプチドは、これらの酸Aと、塩、エステルまたはアミドの形態で結合し、酸のカルボン酸部分が結合を確実にする。
式(I) のペプチド中のアミノ酸はD、LまたはDL形の立体配置を有していてよい。
換言すれば、式(I) のペプチドまたは式(II)の複合体は、1または2以上の不斉炭素原子を含みうる。従って、それらは鏡像異性体またはジアステレオマーの形態で存在しうる。これらの鏡像異性体またはジアステレオマー、およびラセミ混合物を含むそれらの混合物は本発明の一部である。
式(II)のペプチド複合体は、式(III) の化合物のアミド形態で得られる低分子量の誘導体である。
さらに、式(I) のペプチドおよび式(II)のペプチド複合体は、塩形態で亜鉛と結合して錯体(complex)を形成しうる。
本発明においては、
−Lys はリシンを、
−Asp はアスパラギン酸を、
−Val はバリンを、
−Arg はアルギニンを、
−Tyr はチロシンを、
−DOPAはジヒドロキシフェニルアラニンを、
−HomoPhe はホモフェニルアラニンを意味する。
本発明の目的である上記のペプチド複合体は、NH2-末端形態 (換言すればアミド機能を示す) またはOH- 末端の形態 (換言すればカルボン酸機能を示す) で得ることができる。
好ましくは、式(III) の酸はポリ不飽和脂肪酸である、即ち1〜6の不飽和を含む。より好ましくは、これはオメガ三(ω-3)系列酸である。
これらのω-3系列酸の中で、特にα- リノレン酸、セルボン酸 (cervonic acid)、チムノドン酸 (timnodonic acid)、およびピノレン酸 (pinolenic acid) が挙げられる。
セルボン酸、チムノドン酸、およびピノレン酸は、それぞれ 4,7,10,13,16,19- ドコサヘキエン酸 (DHA)、5,8,11,14,17- エイコサペンタエン酸 (EPA)、および5,9,12- オクタデカトリエン酸としても知られている。
Aが一般式(III) のモノカルボン酸を表す場合、これは酢酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ヒドロキシデセン酸、デセン酸、特にトランス-10-ヒドロキシ- Δ2-デセン酸およびトランス- オキソ-9- デセン-2酸の中から有利に選択され得る。
本発明のペプチド複合体の中で、以下のペプチドが挙げられる:
1- A-Arg-Lys-Asp-Val-DHomoPhe-NH2
2- A-Arg-Lys-Asp-Val-HomoPhe-NH2 (SEQ ID NO. 5)
3- A-Lys-Asp-Val-DOPA-NH2 (SEQ ID NO. 6)
4- A-DLys-Asp-Val-DOPA-NH2
5- A-Arg-Lys-Asp-Val-DOPA-NH2 (SEQ ID NO. 7)
Aがリポ酸および酢酸から選択されるペプチド複合体が本発明に関して特に適している。
本発明の目的であるペプチド複合体は、当分野の技術者に知られている方法により、古典的化学合成または酵素的合成のいずれかにより得うることができる。
ペプチドまたはそのペプチド複合体は、局所経路を介してその美容用途のために投与しうる。それらはまた、経口経路を介して食品サプリメント、即ち、機能性食品工業において用いることができる。
本発明のペプチド複合体は、局所経路を介して投与されるのが好ましい。
本発明はまた、医薬として用いる本発明のペプチドまたはペプチド複合体、および脱毛症の予防および治療的処置を意図する化合物の製造のための本発明のペプチドまたはペプチド複合体の使用を目的とする。
別の態様によれば、本発明はまた、本発明のペプチドもしくはペプチド複合体を含む美容用もしくは皮膚科用化合物、または場合により以下に規定するような発毛を改善する化合物と併用した本発明のペプチドもしくはペプチド複合体を含む食品サプリメントを目的とする。
美容用または皮膚科用化合物は有利には頭皮全体に適用される。
美容用または皮膚科用化合物は、例えばローション、薬物添加シャンプー、スプレー、ジェルまたは薬物添加クリームの形態で提供することができる。
局所美容用化合物において、本発明のペプチド複合体は、10-8M 〜10-3M の範囲、好ましくは10-7M 〜10-5M の範囲の濃度で存在すればよい。
最後に、本発明の別の目的は、本発明のペプチドもしくはペプチド複合体を単独もしくは以下に記載のように併用して含む化合物の頭皮への適用を含む、または本発明のペプチドもしくはペプチド複合体を単独もしくは以下に記載のように併用して含む食品サプリメントの経口経路を介した投与を含む、脱毛症に対する美容的処置方法に関する。
本発明のペプチド複合体と併用して、同じく発毛活性を改善し、その活性については既に報告されている化合物を使用することが可能である。
これらの化合物の中では、以下の化合物が挙げられる:
−天然のコラーゲンの産生を刺激し、細胞外マトリックスの強化につながるペプチド、
−ミノキシジル、
−ニコチン酸エステル類、
−抗炎症剤、より詳しくは抗炎症作用を有するペプチド、
−レチンノイン酸、その誘導体およびレチノール、
− 5α- リダクターゼ阻害剤。
発毛を改善し、本発明ペプチドまたはペプチド複合体と併用できる化合物の中で、下記の一般式(I) に対応するペプチド、もしくは一般式(II)に対応するその複合体、それらの鏡像異性体もしくはジアステレオマー、またはラセミ混合物を含むそれらの混合物、またはこれらのペプチドもしくはペプチド複合体と形成しうる亜鉛との錯体も挙げられる。
X-Gly-His-Lys-Y (I) (SEQ ID NO. 8-9)
A-X-Gly-His-Lys-Y (II) (SEQ ID NO. 10-11)
式中、
Aは前に定義した通りであり、
Xは、場合によりメチル化されていてもよい、1〜3のリシン残基の鎖であるか、または結合を意味し (式(II)の場合) 、
Yは-OH または-NH2基を表し、
あるいはA-X は水素原子を表す。
頭皮への局所適用を意図する本発明の美容用化合物は、さらに、頭皮の光防護を可能にするUVB 遮蔽剤を含んでもよい。適したUVB 遮蔽剤の中で、以下のものがINCI名称を用いて挙げられる:
−p-アミノ安息香酸、即ちPABAおよびそのエステル類:
・エチルヘキシルジメチルPABA
・PEG-25 PABA
−ケイ皮酸エステル類
・メトキシケイ皮酸エチルヘキシル
・p-メトキシケイ皮酸イソアミル
・オクトクリレン (octocrylene)
−サリチル酸エステル類
・ホモサレート (homosalate)
・サリチル酸エチルヘキシル
−ベンゾイミダゾール類
・フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸
−ベンジリデンカンファー誘導体:
・4-メチルベンジリデンカンファー
・ベンジリデンカンファー
・カンファーベンザルコニウムメトスルフェート
・ポリアクリルアミドメチルベンジリデンカンファー
−トリアジン類:
・エチルヘキシルトリアゾン
・ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン
本発明のペプチドをその抗脱毛活性を実証することを可能にする薬理学試験の対象とした。
各種ペプチドのin vitroでのマウス震毛の成長に及ぼす効果
サイモポイエチンペプチド誘導体の発毛に対する刺激効果を実証するために、成長期相のマウス震毛の毛包を、サイモポイエチンペプチド誘導体の存在下または不在下で、Philpottによる既報の方法 (Philpott et al., 1994, in vitro でのヒトの発毛:毛髪生物学の研究のためのモデル、Journal of dermatological science 7: S55-S72) により培養した。これらの毛包の毛幹の成長を数日間続けた (0日目〜4日目) 。Aが酢酸である場合の上記ペプチド1-および2-について、以下の表に結果を示す。これらの結果より、毛包がin vitroで生きた状態にされている場合、これらのペプチドが発毛を刺激することが示される。
Figure 0004656059
以下の処方例により本発明を例示する。
ペプチド複合体、Ac-Lys-Asp-Val-DOPA-NH2 を含むローション
(g)
−ペプチドAc-Lys-Asp-Val-DOPA-NH2 5・10-6
−95度エタノール 60
−プロピレングリコール 10
−水−保存料−芳香剤 100 とする十分量
ペプチド複合体、Ac-Arg-Lys-Asp-Val-HomoPhe-NH2を含むローション
(g)
−ペプチドAc-Arg-Lys-Asp-Val-HomoPhe-NH2 10-5
−水 81
−Keltrol T 0.5
−Techpolymer MB-4C 1
−Sepigel 305 0.5
−Silicone oil 0.2 1401 2
−ブチレングリコール 5

Claims (13)

  1. 下記式(I) に対応するペプチド、もしくは下記式(II)に対応するそのペプチド複合体、それらの鏡像異性体もしくはジアステレオマー、またはラセミ混合物を含むそれらの混合物、または亜鉛との錯体の形態で存在しうる式(I)のペプチドおよび式(II)のペプチド複合体。
    W-Lys-Asp-Val-Z (I) (SEQ ID NO. 1-2)
    A-W-Lys-Asp-Val-Z (II) (SEQ ID NO. 3-4)
    上記式中、Aは、下記に対応する基を表し、
    −一般式(III) のモノカルボン酸
    HOOC-R (III)
    (ここで、Rは、直鎖または分岐のC1〜C24 脂肪族基であり、これはヒドロキシル基で置換されていてもよく、1または2以上の不飽和、有利には1〜6の不飽和を含んでもよい) 、
    −リポ酸もしくはその還元型、ジヒドロリポ酸、N-リポイル−リシン、またはレ チノイン酸、
    Wは、Arg または結合を表し、Zは、DOPA-NH 2 またはHomoPhe-NH 2 を表す
  2. 一般式(III) の酸が、α- リノレン酸、セルボン酸、チムノドン酸、およびピノレン酸の中から選ばれるオメガ三(ω-3)系列酸であるか、酢酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ヒドロキシデセン酸、およびデセン酸、特にトランス-10-ヒドロキシ- Δ2-デセン酸およびトランス- オキソ-9- デセン-2酸の中から選ばれるC1〜C24 脂肪族基、あるいはリポ酸もしくはその還元型、ジヒドロリポ酸、N-リポイル−リシン、またはレチノイン酸の中から選ばれる酸であることを特徴とする、請求項1記載のペプチドまたはペプチド複合体。
  3. Aがリポ酸および酢酸の中から選ばれることを特徴とする、請求項1または2記載のペプチドまたはペプチド複合体。
  4. 以下から選ばれることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかの項記載のペプチド複合体:
    1- A-Arg-Lys-Asp-Val-DHomoPhe-NH2
    2- A-Arg-Lys-Asp-Val-HomoPhe-NH2 (SEQ ID NO. 5)
    3- A-Lys-Asp-Val-DOPA-NH2 (SEQ ID NO. 6)
    4- A-DLys-Asp-Val-DOPA-NH2
    5- A-Arg-Lys-Asp-Val-DOPA-NH2 (SEQ ID NO. 7)
    ただし、Aは請求項1〜3のいずれかの項で定義した一般式(III) の酸である。
  5. 請求項1〜4のいずれかの項記載のペプチドまたは複合体を含む、美容用または薬剤用化合物。
  6. 局所適用のための、請求項5記載の美容用または皮膚科用化合物。
  7. 医薬として使用するための、請求項1〜4のいずれかの項記載のペプチドまたはペプチド複合体。
  8. 脱毛症の予防および治療的処置用の医薬として使用するための、請求項1〜4のいずれかの項記載のペプチドまたはペプチド複合体。
  9. 脱毛症の予防および治療的処置用の化合物の製造のための、請求項1〜4のいずれかの項記載のペプチドまたはペプチド複合体の使用。
  10. 請求項1〜4のいずれかの項記載のペプチドまたはペプチド複合体を含む、脱毛症に対する美容用化合物。
  11. ミノキシジル、ニコチン酸エステル、抗炎症剤、レチンノイン酸もしくはその誘導体、レチノール、または 5α- リダクターゼ阻害剤から選ばれた発毛を改善する化合物をさらに含有する、請求項10記載の美容用化合物。
  12. 下記の一般式(I) に対応するペプチド、もしくは一般式(II)に対応するその複合体、それらの鏡像異性体もしくはジアステレオマー、またはラセミ混合物を含むそれらの混合物、またはこれらのペプチドまたはペプチド複合体と形成しうる亜鉛との錯体を、さらに含む請求項10記載の美容用化合物。
    X-Gly-His-Lys-Y (I) (SEQ ID NO. 8-9)
    A-X-Gly-His-Lys-Y (II) (SEQ ID NO. 10-11)
    上記式中、
    Aは請求項1〜3のいずれかにおいて定義された通りであり、
    Xは、メチル化されていてもよい1〜3のリジン残基の鎖を表すか、結合を表し (式(II) の場合) 、
    Yは-OH または-NH2基を表し、
    あるいはA-X は水素原子を表す。
  13. p-アミノ安息香酸、即ちPABAおよびそのエステル (例、エチルヘキシルジメチルPABAもしくはPEG-25 PABA ) ;ケイ皮酸エステル (例、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、p-メトキシケイ皮酸イソアミル、もしくはオクトクリレン) ;サリチル酸エステル (例、ホモサレート、もしくはサリチル酸エチルヘキシル) ;ベンゾイミダゾール (例、フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸) ;ベンジリデンカンファー誘導体 (例、4-メチルベンジリデンカンファー、ベンジリデンカンファー、カンファーベンザルコニウムメトスルフェートおよびポリアクリルアミドメチルベンジリデンカンファー) ;およびトリアジン (例、エチルヘキシルトリアゾン、ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン) から選ばれたUVB 遮蔽剤を含む、請求項10〜12のいずれかの項記載の美容用化合物。
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