JP4653262B2 - ロタウイルスワクチン製剤類 - Google Patents

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Description

技術分野
本発明は、ワクチン類として有用であるロタウイルス類の新規な液状および凍結乾燥製剤、およびその調製方法に関する。
発明の背景
ロタウイルス類(RV)は、先進国では幼児および若齢の小児の入院を必要とする疾患であり、世界の発展途上地域では5歳未満の小児でしばしば死因ともなる急性の胃腸炎の原因となる。米国、オーストラリア、および日本における研究により、急性下痢性疾患で入院する小児の34から63%がロタウイルス感染によることが明らかとなった。米国の健康維持組織によれば、ロタウイルス性胃腸炎による入院の発生率は、13から24ヶ月の小児で100,000人あたり222人、また1歳未満の小児では100,000人あたり362人であると推定された。この小児科母集団では、急性下痢症によるすべての入院の63%にロタウイルスの感染が関わっていた。1973年から1983年までの米国における死亡者数データの調査から、下痢性疾患により4歳未満の小児が毎年500人死亡し、米国においては下痢による冬季の死亡増加の20から80%にロタウイルス感染症が関わっていることが明らかとなった。ロタウイルスは、第三世界の国々において、かなりの比率で下痢性疾患による死亡の原因ともなっている。したがって、有効なロタウイルスワクチンは、世界の先進国および発展途上国いずれにおいても小児の健康に大きな影響力を持つと思われる。
ロタウイルス類は、11の遺伝子セグメントから形成される二重鎖RNAゲノムとともに内部および外部のカプシドを有している。プラーク減少中和試験(plaque reduction newtralization test)により多種多様の血清型が決定され、再集合体(reassortant)ウイルスの研究により、2つの外部カプシドタンパク、VP7およびVP4がウイルス血清型の抗原決定基であることが明らかとなった。VP7タンパクは、あるヒトロタウイルスの遺伝子セグメント7,遺伝子セグメント8あるいは遺伝子セグメント9によってコードされている。VP7をコードする遺伝子の位置は、従来の実験法によりそれぞれ特定のロタウイルスごとに決定することができる。VP4タンパクは、ロタウイルスの4番遺伝子による88,000ダルトンの主要表面構造タンパク産物である。VP7と同様に、VP4は主要な血清型特異的抗原として機能し、血清中和(SN)試験に反応し、血清型特異的中和抗体を誘起し、また、マウス実験系においてロタウイルス性疾患に対する血清型特異的免疫防御を誘起することができる。初期のいくつかの文献では、VP4はVP3と呼ばれていた。1988年以降、命名法の変更により、より正しく、このタンパクをVP4と呼ぶようになった。
VP7およびVP4タンパクをコードする遺伝子セグメントが独立して分離するため、血清型を決める命名法に、VP7で決定されるGタイプ、およびVP4で決定されるPタイプをともに含むことが提案された。米国における大部分のヒトロタウイルス感染症は、Gタイプ1、2、3、または4、およびPタイプ1、2、または3によるものである。しかし、たとえばタイプG9を含むその他のヒトロタウイルスタイプがアジア、欧州およびある第三世界の国々ではより一般的である。
多くの動物ロタウイルス類はヒトで弱毒化することから、ウシ血清型G6WC3ロタウイルスを含め、ロタウイルス生ワクチンとしての可能性が評価されてきた。WC3ワクチンウイルスは、幼児では免疫原性および非反応原性(non-reactogenic)であることが判明したが、ヒトロタウイルス感染に対して防御免疫を与えることには結びつかなかった。ロタウイルス性下痢に対する永続的防御を包含するには、血清型特異的免疫が必要であることが示唆された。
当技術分野にとって、ロタウイルス感染およびそれによる重症の臨床症状に対して防御免疫を与える有効なワクチンの必要性がある。
ロタウイルスワクチン類を全世界中に流通させるには、種々の環境条件で安定であるようにワクチンを製剤化する必要がある。ワクチンを安定化するのに用いられる成分は知られている。しかし、ロタウイルスワクチン類を安定化するのに有用な成分の特定の製剤化は、実験的に決めなければならない。本発明の一目的は、ロタウイルスワクチン類を安定化する製剤化である。
【図面の簡単な説明】
第1図は37℃、1週間のロタウイルス安定性に対する緩衝液の組合せの効果。G1再集合体のデータをパネルAに、P1再集合体のデータをパネルBに示す。すべての値は、対照、すなわち0日目の試料に対して標準化(normalized)されたpfu/mLで表す。緩衝液の組合せを以下に示す。0.05Mクエン酸ナトリウム+0.15M炭酸水素ナトリウム(□)、0.05Mクエン酸ナトリウム+0.15Mリン酸ナトリウム(○)、0.05M乳酸+0.15M炭酸水素ナトリウム(△)、0.05M乳酸+0.15Mリン酸ナトリウム(▽)および0.20Mコハク酸ナトリウム+0.05Mリン酸ナトリウム(◇)。すべての調製物のpHは7である。
第2図は重炭酸塩と比較した製剤緩衝液の酸中和能。それぞれの緩衝液1mLを0.01N HClで滴定した。記号:0.4M炭酸水素ナトリウム(●)、0.1Mクエン酸ナトリウム+0.3Mリン酸ナトリウム(○)、0.1Mクエン酸ナトリウム+0.3M炭酸水素ナトリウム(+)、および0.2Mコハク酸ナトリウム+0.1Mリン酸ナトリウム(▽)。
第3図は5%スクロース/0.1Mコハク酸ナトリウム/0.05Mリン酸ナトリウムの液状製剤中、種々の温度で保存後の再集合体ロタウイルスの安定性データ。G1ロタウイルスのデータをパネルAに、P1ロタウイルスのデータをパネルBに示す。
第4図は50%スクロース/0.1Mコハク酸ナトリウム/0.05Mリン酸ナトリウムの液状製剤中、種々の温度で保存後の再集合体ロタウイルスの安定性データ。G1ロタウイルスのデータをパネルAに、P1ロタウイルスのデータをパネルBに示す。
第5図はより高濃度の緩衝液、スクロースおよび加水分解ゼラチンを含むG1ロタウイルス液状製剤の種々の温度での安定性データ。Williams E培地(「WE」)、50%スクロース、0.2Mコハク酸ナトリウム、および0.1Mリン酸ナトリウム中のG1ロタウイルスのデータをパネルAに示す。Williams E培地、70%スクロース、0.2Mコハク酸ナトリウム、および0.1Mリン酸ナトリウム中のワクチンの安定性データをパネルBに示す。50%スクロース、0.1Mクエン酸ナトリウム、および0.3Mリン酸ナトリウム中G1ロタウイルスのデータをパネルCに示す。Williams E培地、50%スクロース、0.2Mコハク酸ナトリウム、0.1Mリン酸ナトリウムおよび5%加水分解ゼラチン中のG1ロタウイルスのデータをパネルDに示す。
第6図はより高濃度の緩衝液、スクロースおよび加水分解ゼラチンを含むP1ロタウイルス液状製剤の種々の温度での安定性データ。Williams E培地、50%スクロース、0.2Mコハク酸ナトリウム、および0.1Mリン酸ナトリウム中のP1ロタウイルスのデータをパネルAに示す。Williams E培地、70%スクロース、0.2Mコハク酸ナトリウム、および0.1Mリン酸ナトリウム中のワクチンの安定性データをパネルBに示す。50%スクロース、0.1Mクエン酸ナトリウム、および0.3Mリン酸ナトリウム中のP1ロタウイルスのデータをパネルCに示す。Williams E培地、50%スクロース、0.2Mコハク酸ナトリウム、0.1Mリン酸ナトリウムおよび5%加水分解ゼラチン中のP1ロタウイルスのデータをパネルDに示す。
第7図はロタウイルス液状製剤を50%スクロース、0.1Mコハク酸ナトリウム、および0.05Mリン酸ナトリウム中、種々の温度で保存後の安定性データ。G2ロタウイルスのデータをパネルAに、G3ロタウイルスの安定性データをパネルBに示す。
第8図はG1ロタウイルス凍結乾燥製剤の種々の温度で保存後の安定性データ。凍結乾燥の前に1%スクロース、4%マンニトールおよび10mMリン酸ナトリウムに透析したG1ロタウイルスのデータをパネルAに示す。凍結乾燥の前に1%ラクトース、4%マンニトールおよび10mMリン酸ナトリウムに透析したワクチンの安定性データをパネルBに示す。凍結乾燥の前に1%スクロース、4%マンニトールおよび75mMリン酸ナトリウムに透析したG1ロタウイルスのデータをパネルCに示す。
第9図はP1ロタウイルス凍結乾燥製剤の種々の温度で保存後の安定性データ。凍結乾燥の前に1%スクロース、4%マンニトールおよび10mMリン酸ナトリウムに透析したP1ロタウイルスのデータをパネルAに示す。凍結乾燥の前に1%ラクトース、4%マンニトールおよび10mMリン酸ナトリウムに透析したワクチンの安定性データをパネルBに示す。凍結乾燥の前に1%スクロース、4%マンニトールおよび75mMリン酸ナトリウムに透析したP1ロタウイルスのデータをパネルCに示す。
発明の詳細な説明
本発明は、ワクチン類として有用であるロタウイルス類の新規な製剤類、およびその調製法を提供する。より特定すると、本発明は液状および凍結乾燥ロタウイルスワクチンの安定化した製剤類に関する。さらに、いくつかの前記製剤は、高濃度の緩衝性成分を含むことから、胃酸の前中和の有無にかかわらず経口投与することができる。
ワクチンの全世界への流通、および常温の多様性のため、種々の環境条件で安定であるようにワクチンを製剤化する必要がある。種々の安定化法が用いられてきた。それらの方法には下記のものがある。
a)低温(−10℃〜−70℃)。大部分のワクチンは、極度の低温における保存に安定である。しかし、低温保存装置は高価であり、常に利用できるわけではないので、この解決法の有用性と実用性には限りがある。
b)凍結乾燥。凍結乾燥ワクチン類はかなり安定であり、あらかじめ定められた長さの時間は2〜8℃で保存できる。しかし、凍結乾燥は、乾燥中にウイルス力価の損失をもたらし、それによって製造工程の収率を減少させる。さらに、長期保存中に、凍結乾燥ワクチンが劣化し、ワクチンが免疫を与えるのに十分な力価を持たなくなりそう、または持たなくなるところまで劣化することもある。さらに、凍結乾燥ワクチンは使用前に再構成する必要があるため、使用前に室温で放置する間に、液状の再構成した調製物が効力を失うこともある。再構成による力価の損失により、免疫を与えるには不十分な力価になる可能性もある。
c)安定化剤。これらは特定の化学的化合物であって、生物学的分子および/またはワクチンに添加され、低温保存あるいは凍結乾燥法と組み合わせて用いられる一般的な薬剤賦形剤に作用し、安定化する化合物である。
これらの製剤は、(1)ワクチン原液(bulk)を安定化剤で希釈する、(2)安定化剤への透析/ダイアフィルトレーション、または(3)ワクチン原液の濃縮および安定化剤へのダイアフィルトレーションと、必要ならば、それに続く凍結乾燥、のいずれかによって調製することができる。
本発明の安定剤組成物は、下記の成分を大体下記の量だけ含有する。便宜上、量は概数で示してある。しかし、記述された値の10または20パーセント以内の量も、適切であると予想できることが当業者には理解されよう。すなわち、20%と記述した場合、16〜18%から22〜24%の範囲が暗示されてあり、適切である。液状製剤の場合:
スクロース 1〜70%(w/v)
リン酸ナトリウムまたはリン酸 0.01〜2M
カリウム
コハク酸ナトリウムまたはクエン 0.05〜2M
酸ナトリウム
組織培養培地、食塩水、または水 0〜残りの体積の調整分
凍結乾燥製剤の場合:
リン酸ナトリウム 0.05〜2M
スクロース 1〜20%(w/v)
マンニトール 1〜20%(w/v)
ラクトース 1〜20%(w/v)
さらに、下記のものが含まれていてもよい。:
加水分解ゼラチン 2.5%(w/v)
塩化ナトリウム 150mM
グルタミン酸ナトリウム 7mM
スクロースの代わりに、同じような浸透性(osmolality)の下記化合物を使用することもできる、。フコース、トレハロース、ポリアスパラギン酸、イノシトールヘキサリン酸(フィチン酸)、シアル酸またはN−アセチルノイラミン酸−ラクトース。また、スクロースのかわりに、ブドウ糖、マンニトール、ラクトース、またはソルビトールなどの適当な糖または糖アルコールのいずれも、所望の安定化を達成するために有効な濃度で使うことができる。
糖の濃度は製剤の粘度に関係する。低い粘度が望ましい場合には、当技術分野で知られているように、低濃度のスクロースなどの糖を用いるのが好ましい。当業者も認めているように、糖濃度の上限は、ある製剤が必要なろ過または製造ステップに耐えられるかどうかによって決めてもよい。
組織培養培地、食塩水または水は希釈剤として用いることができる。しばしばWilliams E培地(「WE」)が用いられるが、Williams E培地または改変Williams E培地のいずれかを意味している。
胃酸を中和する緩衝剤はクエン酸塩、リン酸塩およびコハク酸塩に限定されず、重炭酸塩またはフマル酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩などの通常のカルボン酸(カルボン酸塩)を含むことができるが、これらに限定されるものではない。それらを用いる適切さについては、リン酸塩、クエン酸塩またはコハク酸塩の代わりに、またはそれらと組み合わせて使用して製剤化を試みることによって簡単に評価できる。本発明の液状および凍結乾燥製剤には約2.0Mまでのカルボン酸塩を用いることができるが、約1.0M未満、例えば約0.05〜0.9Mの使用が好ましく、0.7M未満、例えば0.05〜約0.7Mでもよい。また、0.5M未満、例えば約0.05〜0.45Mでの使用も好ましい。これらの範囲にある特定の濃度が適当と思われる。また、より高濃度の緩衝成分(例えば、リン酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩)を、例えば、さらに胃酸中和が必要な場合には用いることができる。リン酸塩/クエン酸塩またはリン酸塩/コハク酸塩緩衝液においてさらに大きな緩衝能力が有用な場合は、リン酸塩よりむしろ緩衝剤としてコハク酸塩またはクエン酸塩の濃度をさらに増加することの方が好ましい。
本発明の液状および凍結乾燥製剤には約2.0Mまでのリン酸塩を用いることができるが、約1.0M未満、例えば約0.010〜0.8Mの使用が好ましく、0.5M未満、例えば約0.010〜0.45Mであることが多い。約0.35M未満、例えば0.010〜0.30Mの使用が最も好ましい。これらの範囲にある特定の濃度が適当と思われる。液状製剤においては、約または0.30M以下、例えば0.010〜0.35Mのリン酸塩濃度を維持し、例えば長期の保存または凍結/融解サイクルの間にリン酸塩が沈殿するのを防止するのが好ましい。したがって、いずれの製剤においても、リン酸塩濃度の上限は、リン酸塩の形成または沈殿、および塩が安定性および投与などの点で製剤のできばえに悪影響を及ぼすかどうかによって決めることができる。いずれの製剤についても、pH6〜8の範囲にpH調整することを含む標準的な経験的試験によって、特定の濃度を容易に決めることができる。
一般的な指針として、いくつかの液状製剤の酸中和能の例を下記表1に示す。いくつかの好ましい製剤も示す。
Figure 0004653262
凍結乾燥製剤の場合:
リン酸ナトリウム 20mM
加水分解ゼラチン 2.5%(w/v)
スクロース 5%(w/v)
塩化ナトリウム 150mM
グルタミン酸ナトリウム 7mM
または
スクロースまたはラクトース 1%(w/v)
マンニトール 4%(w/v)
リン酸ナトリウムまたはリン酸 0.01〜0.1M
カリウム
本発明の液状ウイルスワクチン安定剤の好ましい製剤は以下の通りである。
スクロース 50%(w/v)
リン酸ナトリウムまたはリン酸 0.1M
カリウム
コハク酸ナトリウム 0.2M
組織培養培地 すべての希釈に使用
または
スクロース 50%(w/v)
リン酸ナトリウムまたはリン酸 0.3M
カリウム
クエン酸ナトリウム 0.1M
組織培養培地 すべての希釈に使用
または
スクロース 30%(w/v)
リン酸ナトリウムまたはリン酸 0.3M
カリウム
クエン酸ナトリウム 0.7M
組織培養培地 すべての希釈に使用
これらの好ましい製剤において、組織培養培地の代わりに、またはそれと組み合わせて生理的食塩水または水を使用することも適切である。
本発明は、ワクチン類として用いるのに適当な再集合体ロタウイルス(RRV)の製剤を含むが、RRVはヒトに対する安全性、およびヒトロタウイルス感染に対し免疫防御を与える能力を特徴としている。RRVは弱毒化ウシロタウイルス(好ましくはWC3またはその子孫)と、疫学的に重要なヒト血清型を示す少なくとも1つのロタウイルスとの間の遺伝子再集合によって生成する。あるタイプのRRVでは、ヒトロタウイルスは、少なくともVP7タンパクをエンコードする遺伝子セグメントを再集合体に与える。別のタイプのRRVでは、ヒトロタウイルス親株は少なくともVP4タンパクをエンコードする遺伝子セグメントを再集合体に与える。さらに別のタイプのRRVでは、ヒトロタウイルス親株は少なくともVP7およびVP4遺伝子セグメントの両方を与える。別のタイプのRRVでは、ヒトロタウイルス親株は、遺伝子セグメントとさらにVP7および/またはVP4抗原をエンコードする遺伝子セグメントを与える。
RRVにおいて中和抗原VP7および/またはVP4をコードするヒトロタウイルス遺伝子は、免疫化したいいずれのヒトロタウイルス血清型から選択してもよい。本発明の再集合体では、VP7遺伝子はG1、G2、G3、またはG4ヒトロタウイルス血清型由来であり、VP4タンパクはヒトP1またはP2血清型由来であることが望ましい。本発明に有用な株を含むヒトロタウイルス感染症に臨床的に有意義であることが知られているロタウイルス株(以下「ヒトロタウイルス株」と呼ぶ)には、以下に示す株がある。
血清型G1:WI79、Wa、D、
血清型G2:WISC2およびDS1株、
血清型G3:WI78、P、HCR3A株、
血清型G4:Bricout(Br)B、ST3、
血清型G8:69M、
血清型G9:WI61、
血清型P1:WI79、WI78、WI61、Wa、
血清型P2:DS1、および
血清型P3:WISC2、BrB、BrA、M37。
ヒトロタウイルス株のこのリストは排他的なものではない。例えば、過去に動物感染症で同定されたいくつかのロタウイルス株もヒト感染症で見出されている。これらの株は、例えば「ブタ」ロタウイルスOSU、血清型G5、および「ウシ」ロタウイルスB223、血清型G10のように、本発明の目的のための「ヒト」ロタウイルス株として有用であると思われる。当業者であれば、適当な寄託先または学術的あるいは商業的生産者から、他の適切なヒト株を容易に入手できる。
本発明の再集合体類に含まれる非ヒト遺伝子は、米国特許4,636,385に詳しく記載されている弱毒化した血清型G6のウシロタウイルスWC3株またはその子孫から得るのが好ましい。しかし、その他のロタウイルス再集合体、特に他のウシ再集合体も好ましい。
Figure 0004653262
WI79−3,9およびWI78−1,6−11の寄託は、ブダペスト条約の要件に合うように変更されている。他の寄託はすべて、寄託時からブダペスト条約のもとで行われた。表2に示した寄託物を公共に利用する上のあらゆる制限条件は、本出願に特許が付与された段階では不可逆的に取り除かれ、培地は寄託日から30年間、または直近の試料の依頼から少なくとも5年のいずれか長い期間、維持される。さらに、生きた試料が寄託先で調合できない場合は、寄託物は置き換えられる。本特許出願の係属中は、資格のあるCommissionerが定めた者にこれらの寄託物の利用を提供しなければならない。
ワクチン組成物
ヒトロタウイルス感染症による急性下痢に対して免疫的防御を与えるワクチン類は、本発明の製剤において、1つまたは複数のロタウイルス再集合体を含むことができる。典型的なロタウイルス再集合体、およびその組合せ、およびワクチンとしての用途が、米国特許5,626,851および米国出願第08/456,906号に見出され、そのいずれも、そのすべてを参照として本明細書中に編入する。いくつかの典型的なワクチン組成物を表3に要約して示す。
Figure 0004653262
本発明のロタウイルスワクチン類は従来の成分を含有することができる。適切な成分は当業者には知られている。これらのワクチン組成物は液状または凍結乾燥の形で調製できる。その他の任意選択の成分、例えば、安定剤、緩衝液、保存剤、香味料、賦形剤なども加えることができる。ワクチン組成物を安定化するのに有用な特定の製剤の決定には広範な実験が必要であった。
経口投与に適応させる場合、ある製剤は坦体としてWilliams E培地(「WE」)/50%スクロース/0.1Mコハク酸塩/50mMリン酸塩液体を含む。別の製剤は、0.2Mコハク酸塩および0.1Mリン酸塩、または0.1Mクエン酸塩および0.3Mリン酸塩を含む。別の製剤は、Williams E培地/30%スクロースと0.7Mクエン酸塩および0.3Mリン酸塩を含む。さらに、追加免疫のための、または経口投与の場合に現れる免疫応答を増強するための新規なアジュバント類も、これらの製剤と共存できると思われる。非経口投与に適応させる場合、従来のアジュバント類(例えば、アルミニウム塩類)または新規なアジュバントをワクチン組成物に用いることもできる。
任意選択で、その他の活性成分および/または免疫化抗原を含有させてワクチンを製剤化してもよい。例えば、経口投与に適応させる場合、Sabinポリオワクチンを用いた製剤化が望ましいこともある。
追加免疫ワクチンの接種時期、回数および量を含む、ワクチン接種方法に関する用法は種々の宿主および環境要素、例えば患者の年齢、投与時期、地理的位置および地理的環境などを考慮して決めなければならない。
ワクチン接種の方法
したがって、ヒトロタウイルス感染症に対し、新規RRVワクチン組成物類をヒトに接種する方法も本発明に含まれる。本明細書中に記載する1つまたは複数の再集合体を含むワクチン組成物は適切な投与量で、好ましくは液状で、また、好ましくは経口により投与される。
すべての投与経路での用量は、一般的には再集合体105〜109プラーク形成単位(pfu)であり、好ましい用量は107pfuである。ワクチンをさらに追加して投与することもできる。「ロタウイルスシーズン」に先立って、感受性幼児および小児に一年毎に予防接種するのが好ましと思われる。ヒトにおけるロタウイルス感染症は、同じ季節の間に、例えば米国では冬に、様々な地域で発生することが観察されてきた。感受性幼児および小児に、そのシーズンに先立って繰り返し予防接種することも必要かもしれない。例えば、米国の場合に、最近好ましいとされている一用法は、ロタウイルスシーズンの開始に先立って、約2ヶ月の間隔で3回投与するものである。
下記の実施例は、本発明のRRVワクチン組成物類の調製法を例示したものである。これらの実施例は例として示したに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
実施例1
経口により投与されたワクチンは、胃の低いpHの環境にさらされる。大部分のワクチンは、このような極端な条件により不活性化する傾向がある。活性なワクチンの送達を確かめるため、酸中和能ならびにロタウイルスを安定化する能力について、可能性のある緩衝液の試験を行った。
酸中和緩衝液存在下でのロタウイルスの安定性
クエン酸塩、乳酸塩、およびコハク酸塩緩衝液の組合せ(全部で5種類)について、37℃で1週間にわたりロタウイルス安定性に対する効果を評価した。第1図の説明文に示した濃度の緩衝液を、同体積のWE培地中のロタウイルスに加え、0,3、または7日間インキュベートした。
G1血清型の場合、重炭酸塩の組合せは、値が5%スクロースの値(0.5日)と同じであり、感染性力価の半減時間(t1/2)に影響しなかった。対照的に、クエン酸塩、乳酸塩、コハク酸塩を含有するリン酸塩緩衝液は、ウイルスを安定化させ、それぞれ1.2、1.4、および1.5日のt1/2の値を示した(第1図)。
第1図に示すように、P1の安定化に対しリン酸塩は同様の効果を示した。5%スクロース溶液の約1.2日という値と比較して、乳酸塩/リン酸塩緩衝液は2.4日のt1/2、コハク酸塩/リン酸塩の組合せは6.8日のt1/2であった。G1ロタウイルス類に対する効果と同様、重炭酸塩を含む緩衝液の組合せは、リン酸塩を含有する同様の緩衝液ほどにはP1血清型へ安定性を与えなかった。
ロタウイルスと酸中和緩衝液の組合せ−単回投与の可能性
コハク酸塩/リン酸塩ならびにその他の緩衝液の安定化効果は、製剤が酸中和剤を含有できることを示唆する。試験した緩衝液1mLは、十分な酸を中和し、pHを3.5以上に保つようであるが(第2図)、このpHは、本発明者の直接実験および科学文献から、ロタウイルス感染性の保存のために必要であることが知られている条件である。幼児の胃酸体積および酸分泌速度からすれば、本発明に記載の液状製剤で約0.5時間、in vivoのpHを維持することができるが、ヒトの臨床試験を行って、これらの推測を確認しなければならないであろう。緩衝能の別の試験として、酸中和能に関するUSP試験を行った。表4に示すように、RV製剤緩衝成分は同体積の人工栄養乳と比べ、より効果的であった。
表4.新規液状ロタウイルス製剤(1)、過去の臨床試験で使用した製剤(2)、組織培養培地(3)、人工栄養乳(4)、および制酸剤(5)について、USP試験で測定した酸中和能
Figure 0004653262
凍結乾燥製剤に関しては、本発明に記載する酸中和緩衝液または重炭酸塩溶液などの通常入手できる酸中和成分で再構成することにより、付加的な緩衝能を得ることができる。したがって、液状あるいは凍結乾燥製剤のいずれでも、前処理することなく十分な緩衝能が可能である。その結果、一度胃酸中和ステップを行い、続いてワクチンを投与するよりむしろ、ロタウイルスワクチンを単回投与で投与するできることが好ましいと思われる。しかし、緩衝液とワクチンの同時投与は、この手段によるワクチンの有効性を信頼する患者でさらに評価しなければならない。ロタウイルスによる通常の経口ワクチン接種の際、十分な胃酸中和を確保するために、患者の前処理(処方給食または重炭酸塩投与あるいはMylantaなどの制酸剤)がまだ必要な場合、これらの製剤は、次項に記載するように、保存安定性の大きな増強を提供しなければならない。さらにロタウイルス再集合体は、人工栄養乳(例えば、Isomil(R)およびSimilac(R))ならびに重炭酸塩緩衝液と共存し、これらの中和剤が存在してもしなくても同等の熱安定性を示す。
実施例2
ロタウイルス上に推定されている結合部位が、安定化の標的と考えることができる。カルシウムおよび亜鉛の結合部位がロタウイルスタンパクに存在すると示唆されてきたし、これらの陽イオンがワクチンを安定化すると考えられる。その他の2価陽イオンもこれらまたは他の部位に結合し、ロタウイルスおよびその再集合体を安定化すると思われる。ワクチンを安定化できるが、その免疫原生を与える能力を妨害しない化合物を同定するために、その他の化合物による結合も検討した。
a.2価金属イオンの効果
EDTAまたはEGTAなどの金属キレート剤の添加は、RV感染性の損失を起こすことが知られており、これはRV外殻の崩壊によると考えられている。このことは金属類が構造維持のために必要であることを示唆している。したがって、2価金属イオンを検討し、それらのロタウイルス(RV)安定化能力を評価した。
WE培地中のロタウイルスを4℃で約16時間、20mMTris緩衝液および100mMNaClに透析した。最終溶液にそれぞれ10mMのCaCl2、MnCl2、MgCl2、ZnCl2、またはCaCl2+ZnCl2を補給し、金属イオン10mMの最終濃度とした。製剤化に先立って試料をろ過してもよい。試料を37℃で0、2/3、および7日間インキュベートし、次いで分析まで−70℃で保存した。それぞれのデータ点は2つの同一試料の平均を示す。
表5に示すように、組織培養培地なしにロタウイルス原液を製剤に透析することによって調製した場合、カルシウムおよびマンガンは、37℃でG1およびP1ロタウイルス再集合体のいずれの安定性も増加させる。亜鉛はG1の不活性化半減期(t1/2)を劇的に減少させ、カルシウムが存在してもしなくてもP1のt1/2を有意に減少させる。Zn2+をCa2+に置き換えることも可能であり、EDTAによるCa2+の除去に類似した方法で外部カプシドの不安定化を起こす。別の説明は、Zn2+が外因性メタロプロテイナーゼを活性化するか、または細胞培養に由来するヌクレアーゼを活性化することも考えられている。2価金属の添加は、Williams Eまたは改変Williams Eなどの組織培養培地を含有する安定化剤中で製剤化された場合には、RVの熱的安定性を増加させない。G2およびG3再集合体は、陽イオン補給組織培養培地中で比較した場合はG1およびP1再集合体と同様の挙動をするようであった。
したがって、本明細書中に記載のロタウイルス安定製剤の調製においては、十分な濃度の2価金属イオンが存在することが好ましい。おそらく、これらの金属イオンは、組織培養培地およびウイルス原液を調製するための細胞培養に用いられる細胞から供給されている。必要ならば、金属イオンを個々に直接添加するか組織培養培地の使用によって最終的な製剤に補給することもできる。
Figure 0004653262
b.生物学的に関連する糖類およびポリアニオンの効果
前述の予備的実験では、ロタウイルス再集合体がリン酸塩緩衝液で安定化することが明らかとなった。リン酸塩によって安定化され、また、硫酸、イノシトールヘキサリン酸(フィチン酸)および種々の硫酸化化合物(ヘパリンおよび硫酸化β−シクロデキストリン)などの関連するポリアニオンによっても安定化される単量体タンパクの例があることから、これらの化合物のロタウイルス安定化能について試験した。低濃度のリガンドで高い電荷密度が維持できることから、重合型のポリアニオンは一般的により効果的な安定化剤とされている。したがって、高い負電荷密度によりポリアスパラギン酸も検討した。VP4と結合することにより、熱誘起分解または変性に対する保護を行うのではないかという理由で、シアル酸(N−アセチルノイラミン酸)を検討した。同様に、N−アセチルノイラミン酸−ラクトースおよびムチンなどのシアル酸誘導体も試験した。宿主の成熟によるRV感染性の喪失は、シアル酸の存在下でのフコースへの切換えによるものと示唆されていたので、フコースを検討した。最後に、好ましい乾燥賦形剤として特性が広く知られていることから、トレハロースを検討した。
表6に見られるように、種々の化合物がロタウイルス製剤に添加され、加速安定試験においてウイルスを安定化する。イノシトールヘキサリン酸は、この試験の他のリガンドと比較して、最大のRV安定化能力を示した。G1に関しては、37℃での熱安定性が4倍まで増加するのが観察された。ムチンは感染力を妨げるが、これはおそらくビリオン構造を不安定化することによるのではなく、むしろRVを隔絶することによる(凝集塊が分析に先立って観察された)ためと考えられる。硫酸化重合体類には無視できる程度の効果しかなかったが、その他の試験化合物はすべて、様々な程度でRVを安定化した。例えば、トレハロースは、G1の場合に不活性化半減期を2倍以上に延長し、P1の場合では50%未満であった。
シアル酸はG1およびP1RVのいずれも安定化した。結合部位がVP4上に位置するならば、シアル酸はGタイプを安定化し、Pタイプはしない筈である。これらの実験では、ポリアニオンの存在下で一般的に、P1はより短い半減期を持つようであった。ヘパリンおよびポリアスパラギン酸存在下の低いt1/2は、RVが不安定化されたというよりむしろ、それらのリガンドと強固に結合することを示唆しているのかもしれない。安定性抑制の機構は、完全に明らかになってはいない。プラーク分析で測定される低レベルの感染性は、ビリオン自体の不安定化またはリガンドによるRVの隔絶化による可能性もある。RVと賦形剤との間の会合が中程度であれば、リガンドは分析の希釈条件(ならびにin vivo)で解離することが予想される。強固に結合した複合体は安定なウイルス粒子を含むかも知れないが、解離できないためにもはや感染性ではない。後者の場合は、ムチン、ヘパリン、およびおそらくポリアスパラギン酸に当てはまるようである。また、プラーク分析で用いた細胞に対する賦形剤の有害効果は無視することはできない。機構に関係なく、ある種のポリアニオンは何らの利点も与えない。イノシトールヘキサリン酸は検討したすべてのリガンドのうちで最も好ましいように見え、リン酸塩含有緩衝液による安定性を上回った。これらの結果は、リン酸塩が劇的にRVを安定化することを明らかにする本発明に記載の前述の試験を支持している。したがって、種々のリン酸塩類(例えばモノリン酸塩類およびポリリン酸塩類)およびリン酸化化合物類(例えば、リン酸化糖類)がロタウイルスを安定化できる。
Figure 0004653262
実施例3
いくつかのG1およびP1ロタウイルスの最適化凍結乾燥および液状製剤について、種々の温度で1年間の詳しい安定性データをとり、非最適化製剤、WE培地/5%スクロースの安定性データと比較した。スクロース、リン酸ナトリウム、およびコハク酸ナトリウムまたはクエン酸ナトリウムを含有するWE培地中にロタウイルス再集合体を含有する最適化液状製剤は、本質的な安定性の改善を示した。凍結乾燥製剤の場合には、保存安定性がさらに改善するのが観察された。適切な製剤化により、ロタウイルスの熱安定性は、既存の生−ウイルス液剤(すなわちOPV)および凍結乾燥(例えば、麻疹)ワクチンの熱安定性を上回る。
コハク酸塩/リン酸塩あるいはクエン酸塩/リン酸塩緩衝液のいずれの安定化効果も、胃酸中和との組合せによる安定性増強力をもたらす。液状製剤ならびに、緩衝液を用いて再構成可能な凍結乾燥製剤は、単回投与で製剤を送出することができる。
a.液状製剤安定性データ
Williams E培地/5%スクロース/0.1Mコハク酸塩/50mMリン酸塩中pH7で製剤化した場合、G1ロタウイルス再集合体ワクチンは、4℃で1年後に、−70℃で保存した試料と比較すると0.7log力価を失う(第3図)。P1再集合体ワクチンは同じ条件で0.2logを失う。22℃で6ヶ月後、G1再集合体は2.6logの感染性力価を失い、P1再集合体ロタウイルスは5.2logを失う。最近臨床試験に使用されたWilliams E培地/5%スクロース中のG1再集合体の非最適化液状製剤と比較すると、この製剤では22℃で6ヶ月間のインキュベーション後で5log以上の感染性を、また4℃で1年後1〜2logを失っている。これらのデータは本発明に記載の特定の緩衝液の組合せの付加的安定化効果を示している。
Williams E培地/50%スクロース/0.1Mコハク酸塩/50mMリン酸塩中pH7で、G1ロタウイルス再集合体ワクチンは、4℃で1年後に、−70℃で保存した試料と比較すると0.8log力価を失う(第4図)。P1再集合体ワクチンは同じ条件で0.3logより少ない値しか失わない。22℃では、G1およびP1ワクチンのいずれも、1年後に約2logの感染性を失う。これらのデータは、高濃度の糖に付加的安定化効果のあることを示している。
より高濃度の緩衝液による付加的製剤(Williams E培地/50%スクロース/0.2Mコハク酸塩/0.1Mリン酸塩、pH7)では、4℃でG1ロタウイルスワクチンをより一層安定化し、−70℃で保存した同じ試料と比較しても有意な力価損失はもたらさなかった(第5図)。さらに、4℃で1年間保存したいずれの最適化液状製剤にもG1力価の損失は観察されない。P1再集合体の感染性はすべての製剤で、−70℃で保存した試料と比較しても0.2logの低下である(第6図)。G1およびP1ロタウイルス再集合体の4℃での安定性は、より高濃度の緩衝液を用いた製剤の場合と同じであったが、Williams E培地/50%スクロース/0.1Mクエン酸酸塩/0.3Mリン酸塩を含有するpH7の製剤は、他の製剤と比較して22℃での損失は少ない。例えば、Williams E培地/50%スクロース/0.2Mコハク酸塩/0.1Mリン酸塩中のG1ロタウイルスは、22℃で1年後1.5logの力価の損失を示し、一方、Williams E培地/50%スクロース/0.1Mクエン酸塩/0.3Mリン酸塩製剤のこの間の損失は0.6logに過ぎない。前述のスクリーニング試験に示されるように、リン酸塩およびリン酸化化合物類の存在がロタウイルス再集合体の熱安定性を増すことから、後者の製剤の高濃度のリン酸塩が安定性増加の原因と考えられる。クエン酸塩/リン酸塩緩衝製剤中のロタウイルスは、22℃でより安定のようであり、45℃ではいずれの再集合体の場合にも、また37℃ではP1ロタウイルスの場合に、安定でなくなる。
Williams E培地/50%スクロース/0.1Mコハク酸酸塩/50mMリン酸塩中pH7、4℃で12ヶ月後、G2ロタウイルス再集合体は0.2logの感染性を失い、G3再集合体では、−70℃で同じ試料を保存した場合と比較して力価が0.3log減少した(第7図)。同じ製剤中のG1およびP1再集合体を比較すると(第3図)、G2およびG3はP1ロタウイルス再集合体と同等の安定性を有しており、G1再集合体の4℃で見られた安定性より勝っている。しかし、G2およびG3ワクチンは、22℃におけるG1ワクチンと比べると安定でないようである。
G1再集合体の安定性をスクロース、リン酸塩およびクエン酸塩を含む製剤中、組織培養培地を存在させ、およびさせずに検討した(表7)。この試験では、WEに5%スクロースのみを含有する製剤Aを標準とした。試験製剤Bは、WE中に50%スクロースと0.3Mリン酸ナトリウムおよび0.1Mクエン酸ナトリウムを含有する。試験製剤Cは、WEは加えず、50%スクロース、0.3Mリン酸ナトリウムおよび0.1Mクエン酸ナトリウムを含有する。ウイルス原液を、製剤BまたはCで10倍に希釈する。したがって、Bでは液体媒質の100%が組織培養培地であり、一方Cでは10%が組織培養培地である。Cでは、ウイルス原液が組織培養培地の唯一の供給源である。表7に示すように、製剤BおよびCは製剤Aに比べ大きな安定性を示した。製剤中の組織培養培地の有無は、30℃におけるロタウイルスの安定性に対し小さいが測定可能な効果をもたらした(BおよびCを比較せよ、表7)。この効果は37℃ではより大きくなるが、それでも標準(製剤A)と比較すると小さいものであった。これらのデータは、安定性の改善を得るためには広い濃度範囲(10〜100%)の組織培養培地が受け入れられることを示している。
Figure 0004653262
10%未満の体積比での組織培養培地の効果を検討するため、透析を行い、ウイルス原液から組織培養培地を完全に除去した。ロタウイルス液状製剤が透析したウイルス原液から調製され、したがって最終製剤が0%の組織培養培地を含有する場合、ロタウイルス原液を組織培養培地を用いずに安定剤で単純に希釈して得た製剤(最終ワクチン製剤には10%の組織培養培地が存在することになる)に比べると、より早く不活性化される。このことは、WE組織培養培地に存在する必須の安定化成分が透析によって除去されてしまったことを示唆している。有効量の組織培養培地が存在しない場合には、カルシウムなどの2価陽イオンを、透析したワクチン製剤に加え、安定性を改善することができる(表5を参照)。種々の製造規模での透析は、ダイアフィルトレーションまたは限外ろ過を用いて行うこともできる。
G1再集合体の安定性を一定範囲のpHで検討した。ロタウイルスG1再集合体を0.3Mリン酸ナトリウム/0.1Mクエン酸ナトリウム/50%スクロース安定化剤中、種々のpH値で製剤化した。ウイルス力価から、加速安定条件下で、約pH4.0から約pH8.0の範囲、特に約pH5.0から約pH7.0の間でG1再集合体の安定性がより大きいことがわかる。「約pH」というのは、記述されたpH値の前後0.3単位であることを意味する。
Figure 0004653262
b.凍結乾燥製剤の安定性データ
1%スクロース/4%マンニトール/10mMリン酸ナトリウムのpH7の凍結乾燥製剤において、G1ワクチンは22℃、1年後に0.3logの損失を示した(第8図)。1%スクロース/4%マンニトール/75mMリン酸ナトリウムを含有するpH7の製剤は、22℃またはそれ以下の温度では1年後においても有意な損失を示さなかった。P1ワクチンは、対応するG1製剤に比べ、低い安定性を示した。1%スクロース/4%マンニトール/10mMリン酸ナトリウム中、4℃で1年では、P1再集合体は、70℃で保存したワクチンと比較すると0.4logの力価の損失を示す(第9図)。さらにリン酸塩濃度の高い同様の製剤は0.2log未満の感染性の損失を示す。リン酸塩、スクロースおよび加水分解ゼラチン安定剤中のP1ワクチンは4℃で1年後も有意な損失を示さなかった。これらの凍結乾燥製剤は、ロタウイルス原液を安定化剤で10倍に希釈する(組織培養培地の最終濃度は10%)か、ロタウイルス原液を安定化剤に透析(組織培養培地を完全に除去)することによって調製した。

Claims (5)

  1. 液状ロタウイルスワクチン製剤であって、
    a)少なくとも一株のロタウイルス1×105〜1000×105pfu/mL、
    b)糖1〜70%(w/v)、
    c)リン酸ナトリウム0.01〜2M、および
    d)コハク酸塩、クエン酸塩および乳酸塩からなる群から選択される少なくとも一種のカルボン酸塩0.05〜2Mを含む製剤。
  2. 前記糖が、スクロース、マンニトール、ラクトース、ソルビトール、ブドウ糖、フコース、トレハロース、ポリアスパラギン酸、イノシトールヘキサリン酸(フィチン酸)、シアル酸またはN−アセチルノイラミン酸−ラクトースからなる群から選択される、請求の範囲第1項に記載の製剤。
  3. さらに、
    e)組織培養培地、生理的食塩水および水からなる群から選択される少なくとも一種の希釈剤を含む、請求の範囲第1項に記載の液状ワクチン製剤。
  4. 糖の濃度が5〜70%、リン酸ナトリウムの濃度が0.05〜0.3M、および前記少なくとも一種のカルボン酸がクエン酸塩またはコハク酸塩であり、その濃度が0.05〜0.7Mである、請求の範囲第1項に記載の製剤。
  5. pHがpH5.0〜pH8.0である、請求の範囲第1項に記載の製剤。
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