JP4652539B2 - 撮影光学系及びそれを用いた光学機器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、撮影光学系及びそれを用いた光学機器に関し、特に手ブレや振動等による画像ブレを補正する防振機能を有した銀塩写真カメラ、ビデオカメラ、電子スチルカメラ、デジタルカメラ等の光学機器に好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より長焦点距離の撮影光学系に好適なレンズタイプとして、物体側から順に正の屈折力を有する前方レンズ群と、負の屈折力を有する後方レンズ群を有する撮影光学系、所謂望遠レンズが知られている。
【0003】
一般的に望遠レンズでは、焦点距離を伸ばすほど、また、レンズ全長の短縮を図り光学系のコンパクトにするほど軸上色収差及び倍率色収差が拡大し像性能が悪化する傾向にある。その為、近軸軸上光線と瞳近軸光線の光軸からの通過位置が比較的に高くなる前方レンズ群に、蛍石等の異常部分分散を持った低分散の正レンズと高分散の負レンズを用いて色収差の発生を低減した望遠レンズが種々提案されている。
【0004】
光学系の色収差を補正する方法として、分散の異なる2つの材質の硝材(レンズ)を組み合わせる方法に対して、レンズ面やあるいは光学系の1部に回折作用を有する回折格子を設けた回折光学素子を用いて、色収差を減じる方法がSPIEVol.1354 International Lens Design Conference(1990)等の文献や特開平4−213421号公報、持開平6−324262号公報、そしてUSP5044706号等により開示されている。
【0005】
これは、光学系中の屈折面と回折面とでは、ある基準波長の光線に対する色収差の出方が逆方向に発現するという物理現象を利用したものである。
【0006】
さらに、このような回折光学素子は、その周期的構造の周期を変化させることで非球面レンズ的な効果をも持たせることができ収差の低減に大きな効果がある。 又、多くの撮影レンズ(光学系)におけるフォーカスは撮影レンズ全体を移動させたり、若しくは撮影レンズの一郎を移動させたりして行っている。このうち撮影レンズが長焦点距離を有する望遠レンズの場合は撮影レンズが大型となり、又、高重量となるため、撮影レンズ全体を移動させてフォーカスを行うのが機構的に困難である。
【0007】
このため、望遠レンズでは一部のレンズ群を移動させてフォーカスを行っているものが多い。このうち撮影レンズの前方レンズ群以外の比較的小型でしかも軽量のレンズ系中の中央部分の一部のレンズ群を移動させてフォーカスを行ったインナーフォーカス式を用いているものが種々と提案されている。
【0008】
例えば、特開昭55−147606号公報では焦点距離300mm、Fナンバー2.8のインナーフォーカス式の望遠レンズを、特開昭59−65820号公報や特開昭59−65821号公報では焦点距離135mm、Fナンバー2.8程度のインナーフォーカス式の望遠レンズを提案している。
【0009】
これらで提案されているインナーフォーカス式の望遠レンズでは何れも物体側より順に正の屈折力の第1群、負の屈折力の第2群、そして正の屈折力の第3群の3つのレンズ群を有し、第2群を光軸上移動させてフォーカスを行っている。
【0010】
一方、近年では、光学系に加わった振動により発生する像面の変動(像ブレ)を打ち消すように光学系の一部を移動させることで像ブレを補正する光学系の発明が盛んにされており、前記のような長焦点距離の望遠レンズでも手持ち撮影時の手ブレによる撮影画像のプレが軽減されるようなものも開発されている。
【0011】
例えば、光学系中の一部のレンズ群を光軸と直交する方向に移動させて撮影画像のブレを補正するものが、特開昭50−80147号公報や、特開昭56−223819号公報や、特開平7−270724号公報、そして特開平8−201691号公報等で提案されている。
【0012】
本出願人は特開2000−89101号公報でインナーフォーカス式を採用し、防振機能を有した望遠型の光学系を提案している。
【0013】
同公報では物体側より順に正の屈折力の第1群、負の屈折力の第2群、正の屈折力の第3群を有し、該第2群を光軸上移動させてフォーカスを行うインナーフォーカス式の光学系において、第3群を物体側より順に正の屈折力の第3a群、負の屈折力の第3b群、そして正の屈折力の第3c群の3つのレンズ群より構成し、該第3b群を光軸と垂直方向に移動させて、像ブレを補正している。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、望遠レンズであっても光学系のコンパクト化に限界がある。例えば35mmフィルムフォーマットで焦点距離300mm以上になるような所謂、超望遠レンズではレンズ全長が長くなり、又レンズ本体も重たくなってくる。この為超望遠レンズにおいては手持ちでの撮影が困難となり取り扱い上非常に不便になってくる。
【0015】
特に望遠レンズを使用する際には、望遠レンズの振動(手ブレ)を抑制することが困難となる。望遠レンズが振動によって傾くと、撮影画像はその傾き角と望遠レンズの焦点距離に応じた変位を発生する。そのためこのような撮影の際には、望遠レンズが振動によって傾いた際にも撮影画像の変位、所謂撮影画像のブレが発生しないようにする必要がある。
【0016】
又、望遠レンズでは焦点距離が長くなるほど、色収差の発生が多くなり、これを良好に補正するのが難しくなってくる。
【0017】
本発明は、色収差を始めとする諸収差が良好に補正されていながら望遠比0.7程度と非常にコンパクトであり、さらに光学系に振動が加わった時の撮影画像のブレを良好に補正できる防振機能をも有することで、広範囲の撮影領域に対応できる撮影光学系及びそれを用いた光学機器の提供を目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明の撮影光学系は、物体側より順に、正の屈折力を有する第1レンズ群、負の屈折力を有する第2レンズ群、正の屈折力を有する第3レンズ群から構成され、無限遠物体から近距離物体へのフォーカシングに際して前記第2レンズ群を像側へ移動させる撮影光学系において、前記第1レンズ群は光軸に対して回転対称な正の屈折力の回折光学面を有し、前記第3レンズ群は負の屈折力を有する第3Nレンズ群を有し、該第3Nレンズ群を光軸に対して垂直方向に移動させて画像ブレを補正し、波長530nmの1次回折光に関する前記回折光学面の屈折力をΦD、全系の屈折力をΦTLとしたとき、
0.032≦ΦD/ΦTL<0.1
の条件式を満足することを特徴としている。
【0019】
請求項2の発明は請求項1の発明において、前記第3Nレンズ群は、正レンズ1枚と負レンズ1枚からなる接合レンズを有し、前記接合レンズの正レンズと負レンズの材質のアッベ数を各々ν3p、ν3n、前記接合レンズの正レンズと負レンズの材質の屈折率を各々N3p、N3nとしたとき、
ν3n−ν3p>15
N3n>1.7
N3p>1.7
の条件式を満足することを特徴としている。
【0020】
請求項3の発明は請求項1又は2の発明において、前記第3Nレンズ群は正レンズ1枚と負レンズ1枚からなる接合レンズを有し、前記第1レンズ群、第3Nレンズ群、前記接合レンズの焦点距離を各々f1、f3N、f3Cとし、全系の焦点距離をfTLとしたとき、
0.25<f1/fTL<0.55
−0.25<f3N/fTL<−0.03
−0.40<f3C/fTL<−0.10
の条件式を満足することを特徴としている。
【0021】
請求項4の発明は請求項1乃至3のいずれか1項の発明において、前記第3レンズ群は、物体側から像側へ順に、正の屈折力を有する第31レンズ群、前記第3Nレンズ群、正の屈折力を有する第33レンズ群より構成されていることを特徴としている。
【0022】
請求項5の発明の光学機器は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の撮影光学系を有することを特徴としている。
【0024】
【発明の実施の形態】
図1、図3、図5は本発明の後述する撮影光学系の数値実施例1〜3のレンズ断面図である。図7は参考例1の撮影光学系の数値実施例4のレンズ断面図である。図2、図4、図6は本発明の撮影光学系の数値実施例1〜3の収差図である。図8は参考例1の撮影光学系の数値実施例4の収差図である。収差図において(A)は基準状態、(B)は防振時の収差を示している。図中L1は正の屈折力の第1群(第1レンズ群)、L2は負の屈折力の2群(第2レンズ群)、L3は正の屈折力の第3群(第3レンズ群)である。
【0025】
第3群L3は正の屈折力の第31群(第31レンズ群)L31、負の屈折力の第3N群(第3Nレンズ群)L3N、そして正の屈折力の第33群(第33レンズ群)L3の3つのレンズ群を有している。SPは開口絞り、IPは像面、であり、フィルム、CCD等の撮像手段が設けられている。Dは正の屈折力を有する回転対称な回折光学面であり、第1群L1中のレンズ面に設けている。
【0026】
本実施形態では、第2群L2を矢印の如く像面側(光軸上像側)へ移動させることにより無限遠物体から至近物体へのフォーカスを行っている。
【0027】
撮影光学系が手ブレ(振動)を起こした時の象ブレを補正する時には第3群L3中の第3N群L3Nを光軸と垂直な方向に移動させている。
【0028】
本実施形態では比較的径の小さくなっている第2群L2をフォーカシングレンズ群とすることで、焦点調整機構の負荷の軽減が行えると同時に小型化も可能となり、比較的コンパクトな望遠型の撮影光学系を構成している。
【0029】
また、本発明による撮影光学系では、近軸軸上光線と瞳近軸光線の光軸からの通過位置が一番高くなる第1群L1内に回折光学面を配置することで軸上色収差および倍率色収差を良好に補正可能な構成としている。これにより、通常の屈折光学素子のみを用いた光学系に比べ、全長(レンズ系全長)を短縮した際の軸上色収差および倍率色収差の補正がしやすく、よりコンパクトな光学系の構成を可能としている。
【0030】
そして、該第3群中に負の屈折力の第3N群L3Nを設け、該第3N群を光軸に対し垂直に移動させることで、光学系に振動が加わった時の撮影画像のブレを補正するようにしている。このような構成とすることで、ブレ補正を行うレンズ群の径を小さくすることができ、補正レンズの駆動機構の負荷の軽減が行えると同時にレンズ全体の小型化を可能とし、よりコンパクトな望遠型の撮影光学系の構成を可能としている。
【0031】
以上のような構成とすることで、本発明の撮影光学系は、特に色収差が良好に補正され且つ撮影光学系に振動が加わった時の撮影画像のブレも良好に補正できる防振機能をも有していながら、全体としてコンパクトな撮影光学系を構成することを可能としている。
【0032】
次に本実施形態において第1レンズ群に設けた回折光学面(回折面)について説明する。
【0033】
なお、本発明の実施形態では、正の屈折力の回折面を1面設けた場合を示したが、更に回折面を追加しても良く、これによれば、更に良好な光学性能が得られる。追加する回折面は、正の屈折力であっても負の屈折力であってもよく、特に負の屈折力の回折面を追加する場合は、光学系の像面寄りで瞳近軸光線の入射高が比較的高く、かつ、近軸軸上光線の入射高が比較的低くなる位置に配置するのが良い。これにより、倍率色収差を更に良好に補正することができる。また、各回折面は平面或いは球面レンズに配置してあるが、非球面をベースとしてもよく、両面に施してもよい。更に、接合レンズの接合面に施しても良く、ベースの材質は光を透過するものであれば、特にガラスでなくても良い。
【0034】
特に、第1レンズ群内の回折面については、軸上物点及び軸外物点からの光線が出来るだけ回折面へ垂直に入射するよう、平面または物体側へ凸面を向けたレンズ面あるいは物体へ緩い凹面を向けたレンズ面に設けるのがよく、これにより、回折効率の低下を緩和することが出来る。望ましくは、レンズ面の法線に対し、±15°未満で光線が入射するようなレンズ面に回折面を設定するのが良い。
【0035】
回折光学面の回折格子形状は、実際には図9に示すようなキノフォーム形状の形態で実現される。
【0036】
図9において1は回折面を設けるベースとなる基材、2は回折格子を形成する光学材料(樹脂部)、3は回折格子(回折面)である。
【0037】
図10は図9に示す回折光学素子の1次回折効率(設計回路次数)の波長依存性を示している。実際の回折素子の構成は前述した基材1の表面に塗布した樹脂部2に、波長(設計波長)530nmで1次回折効率が100%となるような格子厚dの回折格子3を成形している。
【0038】
図10で明らかなように設計次数での回折効率は最適化した波長530nmから離れるに従って低下する。その低下した分、設計次数近接の次数0次、2次回折光が増大することになり、これがフレアとなって光学系の解像度の低下につながる。
【0039】
そこで本発明では、図11に示すような異なる材質の回折格子を積層状に配置した形態の回折格子形状を実施例の一つとして採用している。
このような構成にすることにより、より広い波長域で高い1次の回折効率を得る構成とすることができる。図12はこの構成での回折光学素子の1次回折効率の波長依存性を示している。
【0040】
この図から分かるように積層構造の回折格子にすることで、設計次数の回折効率は使用波長のほぼ全域で95%以上の高い回折効率を有している。これにより本発明の撮影光学系は高い解像度が得られ光学性能は更に改善される。
【0041】
なお、ここでの回折光学素子としては、材質を樹脂に限定するものでなく、基材1によっては第1の回折格子4を直接に基材1に形成してもよい。
【0042】
また更に、図13のように積層構造を3層以上の構成にすると、より良好な光学性能を得ることができる。
【0043】
このような構成とすることにより、空気層に触れる部分の回折格子の格子厚を薄くすることが可能となる。それにより回折格子のエッジの壁部分で発生する散乱光によるフレアが低減され、また回折格子に入射する光の入射角の増大に伴う回折効率低下の軽減も可能となり、光学性能は更に改善される。
【0044】
図14は、この構成での回折光学素子の1次回折効率の波長依存性を示している。
【0045】
また、回折格子を図示のような積層構造にすることにより、格子面を外気に触れにくい構成とすることができ、ごみの付着、汚れなどによる画質を劣化させる不要な散乱光の発生を低減することができる。
【0046】
もちろん、本実施例のように回折光学面をレンズの接合面に配置することは、このような観点からも有効である。
【0047】
本発明の目的とする撮影光学系は以上の如く構成することにより達成されるが、さらに、光学性質を良好にするには次の諸条件のうち少なくとも1つを満足させるのが良い。
【0048】
(ア−1)前記第3Nレンズ群は、正レンズ1枚と負レンズ1枚からなる接合レンズを有し、ν3p、ν3nを前記接合レンズの正レンズと負レンズの材質のアッベ数、N3p、N3nを前記接合レンズの正レンズと負レンズの材質の屈折率としたときν3n − ν3p > 15 (1)
N3n>1.7 (2)
N3p>1.7 (2)
の条件式を満足することである。
【0049】
(1)式は、ブレ補正用のレンズ群の色収差補正に関わる条件式である。前記第3Nレンズ群を光軸に対して略垂直方向に偏心させてブレ補正を行う本発明の撮影光学系においては、ブレ補正時に前記第3Nレンズ群で発生する偏心色収差を該第3Nレンズ群内である程度補正しておくことが望ましい。そのためには前記第3Nレンズ群は正レンズ1枚と負レンズ1枚より成る接合レンズを有し、そのアッベ数の差が(1)式を満足することが望ましい。
【0050】
(2)式は、ブレ補正用のレンズ群の偏心収差補正に関わる条件式であり、(2)式の下限を超えて第3Nレンズ群内の接合レンズの正レンズと負レンズの材質の屈折率が小さいと、偏心時のコマ収差や非点収差等の補正が困難となり、また第3Nレンズ群全体の負の屈折力が大きくできなくなるためブレ補正のために光軸に対して略垂直方向に移動させる移動量が大きくなって駆動機構の負荷が増大し、大型化を招き望ましくない。
【0051】
(1)、(2)の条件は、本発明の撮影光学系が回折光学面を適切に配置して成ることから、より効果的に働くものである。
【0052】
色収差補正に関する(1)式の条件だけでいえば、前記正レンズは一般的に高屈折率である高分散ガラス、前記負レンズは一般的に低屈折率である低分散ガラスというように、(2)式の条件を外れて負レンズ側の材質の屈折率を下げてまでもアッベ数の差を大きくすることがより有効である。しかし、全系での色収差を良好に補正できる第1群内に効果的に回折光学面を配置することで、第3Nレンズ群内だけでの色収差補正の負荷を軽減し、その負荷が軽減した分を正レンズと負レンズの両方の材質の屈折率を上げて偏心時の緒収差の補正を行うことと偏心移動距離の縮小化に振り分けている。
【0053】
尚、更に好ましくは条件式(1)、(2)の数値を下記の如く設定するのが良い。
【0054】
ν3n − ν3p > 20
N3n>1.73
N3p>1.73
(ア−2)前記第3Nレンズ群は正レンズ1枚と負レンズ1枚からなる接合レンズを有し、f1、f3N、f3Cを順に前記第1レンズ群、第3Nレンズ群、接合レンズの焦点距離、fTLを全系の焦点距離としたとき0.25 < f1/fTL < 0.55 (3)
−0.25 < f3N/fTL < −0.03 (4)
−0.40 < f3C/fTL < −0.10 (5)
の条件式を満足することである。
【0055】
(3)式は第1レンズ群の屈折力を規定しコンパクト化と収差補正のバランスを取るための条件式である。条件式(3)の上限を超えて第1レンズ群の正の屈折力が弱くなると光学系全体のコンパクト化が難しくなり、また下限を超えて正の屈折力が強くなるとコンパクト化に伴い増大する球面収差が補正困難となり望ましくない。
【0056】
(4)式はブレ補正用のレンズ群の偏心移動量と収差補正のバランス取るための条件式である。条件式(4)の上限を超えて第3Nレンズ群の負の屈折力が強まると、非偏心時の第3レンズ群内での緒収差の補正が困難となり望ましくない。逆に下限を超えて負の屈折力が弱まるとブレ補正のために光軸に対して略垂直方向に偏心させる偏心移動量が大きくなり望ましくない。
【0057】
(5)式はブレ補正用のレンズ群内の接合レンズの屈折力を規定し、諸収差を良好に補正するための条件式である。条件式(5)の上限を超えて接合レンズの負の屈折力が強まるとブレ補正用のレンズ群内での色収差のバランスが崩れ望ましくない。
【0058】
逆に下限を超えて負の屈折力が弱まると偏心時のコマ収差や非点収差などの収差補正が困難となると同時に、第3Nレンズ群全体の負の屈折力も強くすることが難しくなり望ましくない。
【0059】
また、更なる光学性能向上のためには、前記条件式の数値範囲は以下のようにすることが好ましい。
0.3 < f1/fTL < 0.45
−0.15 < f3N/fTL < −0.08
−0.35 < f3C/fTL < −0.15
(ア−3)前記第3レンズ群は、前記第3Nレンズ群の物体側に正の屈折力を有する第31レンズ群、前記第3Nレンズ群の像面側に正の屈折力を有する第33レンズ群を有することである。
【0060】
このように全体として正の屈折力を持つ第3レンズ群内を、負の屈折力を持つ第3Nレンズ群を挟む形で正の屈折力を持つレンズ群を配置した構成とすることで、ブレ補正用のレンズ群である第3Nレンズ群に入射する光束の径が小さくなりブレ補正レンズ群自体の小型化に有効であり、また収斂光束がブレ補正用のレンズ群に入射する形となるため、少ない移動量で結像位置のズレの補正が可能となり、ブレ補正レンズの駆動機構の負荷軽減、小型化に有利となる。
【0061】
(ア−4)波長530nmの1次回折光に関する前記回折光学面の屈折力をΦD、全系の屈折力をΦTLとしたとき
0.032 ≦ ΦD/ΦTL < 0.1 (6)
の条件式を満足することである。
【0062】
条件式(6)は主に倍率色収差を良好に補正するためのものである。
【0063】
(6)式の上限を超えて前記回折光学面の屈折力が強まると、第2レンズ群以降で発生する軸上、倍率色収差に対して補正不足となり、逆に下限を超えて屈折力が弱まると第2レンズ群以降で発生する軸上、倍率色収差に対して補正過剰となる。
【0064】
上記のように回折光学面の屈折力を適切に設定することで、全長を短縮しながらも軸上、倍率色収差が良好に補正されたコンパクトで高性能な撮影光学系を実現することを容易にしている。
【0065】
尚、更に好ましくは条件式(6)の数値範囲を次の如く設定するのが良い。
【0066】
0.032 ≦ ΦD/ΦTL < 0.05
(ア−5)第3Nレンズ群は物体側より順に両レンズ面が凸面の正レンズと両レンズ面が凹面の負レンズとからなる接合レンズ、両レンズ面が凹面の負レンズを有することである。
【0067】
これによれば防振時の収差変動を少なくすることが容易となる。
【0068】
(ア−6)第2レンズ群は像面側に凹面を向けた負レンズの1つのレンズで構成することである。
【0069】
これによればフォーカスを高速に行うことが容易となる。
【0070】
(ア−7)回折面を第1レンズ群中の物体側に凸面を向けた正レンズと像面側に凸面を向けた正レンズとから成る接合レンズの接合面に設けることである。
【0071】
これによれば回折面の回折効果による色収差の補正を効果的に行うことが容易となる。
【0072】
次に、本発明の撮影光学系を用いた一眼レフカメラシステムの実施形態を、図15を用いて説明する。図15において、10は一眼レフカメラ本体、11は本発明による撮影光学系を搭載した交換レンズ、12は撮影光学系11を通して得られる被写体像を記録するフィルムや撮像素子などの記録手段、13は撮影光学系からの被写体像を観察するファインダー光学系、14は撮影光学系からの被写体像を記録手段12とファインダー光学系13に切り替えて伝送するための回動するクイックリターンミラーである。ファインダーで被写体像を観察する場合は、クイックリターンミラー14を介してピント板15に結像した被写体像をペンタプリズム16で正立像としたのち、接眼光学系17で拡大して観察する。撮影時にはクイックリターンミラ14が矢印方向に回動して被写体像は記録手段12に結像して記録される。
【0073】
このように本発明の撮影光学系を一眼レフカメラ交換レンズ等の光学機器に適用することにより、高い光学性能を有した長焦点距離でありながらも非常にコンパクトな光学機器が実現できる。
【0074】
以下に、本発明による撮影光学系の実施例の数値実施例1〜3と参考例1の数値実施例4を示す。これらの数値実施例において、riは物体側から順に第i番目の面の曲率半径、diは物体側から順に第i番目の面と第i+1番目の面のレンズ厚又は空気間隔、niとνiはそれぞれ物体側から順に第i番目の光学部材のd線における材質の屈折率とアッベ数である。
【0075】
各実施例は共にDで示す面に回折光学面が設けられている。ここで、各数値実施例の回折面の位相形状ψは、次式によって定義している。
【0076】
ψ(h,m)=(2π/mλ0)(C1h2+C2h4+C3h6…)
但し、hは光軸に対して垂直方向の高さ、mは回折光の回折次数、λ0は設計波長、Ciは位相係数(i=1,2,3…)である。
【0077】
また、任意の波長λ、任意の回折次数mに対する回折面Dの屈折力φDは、最も低次の位相係数C1を用いて次のように表すことができる。
【0078】
φD(λ,m)=−2C1mλ/λ0
各実施例において、回折光の回折次数mは1であり、設計波長λ0 はd線の波長(587.56nm)である。
【0079】
【外1】
【0080】
【外2】
【0081】
【外3】
【0082】
【外4】
【0083】
【発明の効果】
本発明によれば光学系が振動したときの像ブレを補正することができ、しかも無限遠物体から近距離物体に至る広範囲の物体距離において高い光学性能を有したレンズ全長の短いコンパクトな撮影光学系及びそれを用いた光学機器を達成することができる。
【0084】
この他本発明によれば、色収差を始めとする諸収差が良好に補正されていながら望遠比0.7程度と非常にコンパクトであり、さらに光学系に振動が加わったときの撮影画像のブレを良好に補正できる防振機能をも有した、取り扱い易く高い光学性能をも備えた撮影光学系及びそれを用いた光学機器を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の撮影光学系の数値実施例1のレンズ断面図。
【図2】 本発明の撮影光学系の数値実施例1の基準状態と防振時の収差図。
【図3】 本発明の撮影光学系の数値実施例2のレンズ断面図。
【図4】 本発明の撮影光学系の数値実施例2の基準状態と防振時の収差図。
【図5】 本発明の撮影光学系の数値実施例3のレンズ断面図。
【図6】 本発明の撮影光学系の数値実施例3の基準状態と防振時の収差図。
【図7】 参考例1の撮影光学系の数値実施例4のレンズ断面図。
【図8】参考例1の撮影光学系の数値実施例4の基準状態と防振時の収差図。
【図9】 本発明における単層回折格子の断面模式図。
【図10】 本発明における単層回折格子の回折効率を示すグラフ。
【図11】 本発明における積層回折格子の断面模式図。
【図12】 本発明における積層回折格子の回折効率を示すグラフ。
【図13】 本発明における3積層回折格子の断面模式図。
【図14】 本発明における3積層回折格子の回折効率を示すグラフ。
【図15】 本発明の光学機器の要部概略図。
【符号の説明】
SP : 絞り
IP : 像面
1 : 回折格子のベース面の基材
2 : 回折格子を形成する光学材料
3 : 回折格子
4 : 積層回折格子における第1の回折格子
5 : 積層回折格子における第2の回折格子
6 : 3積層回折格子における第1の回折格子
7 : 3積層回折格子における第2の回折格子
8 : 3積層回折格子における第3の回折格子
10 : ビデオカメラ本体
11 : 撮影光学系
12 : 撮像素子
13 : 記録手段
14 : ファインダー
Y : 像高
Claims (5)
- 物体側より順に、正の屈折力を有する第1レンズ群、負の屈折力を有する第2レンズ群、正の屈折力を有する第3レンズ群から構成され、無限遠物体から近距離物体へのフォーカシングに際して前記第2レンズ群を像側へ移動させる撮影光学系において、前記第1レンズ群は光軸に対して回転対称な正の屈折力の回折光学面を有し、前記第3レンズ群は負の屈折力を有する第3Nレンズ群を有し、該第3Nレンズ群を光軸に対して垂直方向に移動させて画像ブレを補正し、波長530nmの1次回折光に関する前記回折光学面の屈折力をΦD、全系の屈折力をΦTLとしたとき、
0.032≦ΦD/ΦTL<0.1
の条件式を満足することを特徴とする撮影光学系。 - 前記第3Nレンズ群は、正レンズ1枚と負レンズ1枚からなる接合レンズを有し、前記接合レンズの正レンズと負レンズの材質のアッベ数を各々ν3p、ν3n、前記接合レンズの正レンズと負レンズの材質の屈折率を各々N3p、N3nとしたとき、
ν3n−ν3p>15
N3n>1.7
N3p>1.7
の条件式を満足することを特徴とする請求項1の撮影光学系。 - 前記第3Nレンズ群は正レンズ1枚と負レンズ1枚からなる接合レンズを有し、前記第1レンズ群、第3Nレンズ群、前記接合レンズの焦点距離を各々f1、f3N、f3Cとし、全系の焦点距離をfTLとしたとき、
0.25<f1/fTL<0.55
−0.25<f3N/fTL<−0.03
−0.40<f3C/fTL<−0.10
の条件式を満足することを特徴とする請求項1又は2の撮影光学系。 - 前記第3レンズ群は、物体側から像側へ順に、正の屈折力を有する第31レンズ群、前記第3Nレンズ群、正の屈折力を有する第33レンズ群より構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撮影光学系。
- 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の撮影光学系を有することを特徴とする光学機器。
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