JP4651276B2 - リポソームを体内より排泄する抗体およびリポソームの血中クリアランス促進剤 - Google Patents
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Description
そして、本発明者は、鋭意研究の結果、ABC現象の発現時にリポソーム表面に結合している蛋白質を単離し、その構造を決定することで、リポソームの血中クリアランスを促進する物質を開発し、本発明を完成するに至った。
更に、本発明者は、このような活性が最も高いときの血清を、体外においてリポソームとインキュベーションし、リポソームに結合してくる蛋白を単離して、その構造を電気泳動法と、LC−MS/MS法(液体クロマトグラフで分離した成分を2段階の質量分析により分析する方法)とにより解析した。
本発明者は、その結果、血清中にリポソームに結合する抗体が産生されており、血中クリアランスが向上しているときには、その抗体がリポソーム表面に結合していることを見出し、本発明を完成させたのである。
哺乳動物にリポソームを単回投与する工程と、
投与後一定期間経過した後、前記哺乳動物から血清を採取する工程と、
前記血清を前記リポソームとインキュベーションする工程と、
インキュベーション後、前記リポソームに結合した蛋白質を精製して前記抗体を得る工程と
を具備する、抗体の製造方法。
本発明のリポソームの血中クリアランス促進剤は、リポソームに結合する抗体を有効成分として含有する。
本発明において、「リポソーム」とは、脂質を膜の基本構成材料とする小球状の構造を有し、疾患の診断用および/または治療用の薬物を担持可能なものを意味する。リポソームは、脂質分子の疎水性基と親水性基の極性に基づいて生ずる膜により外界から隔てられた空間を形成する構造を有する閉鎖小胞である。リポソームの大きさは、特に限定されないが、球状またはそれに近い形態をとる場合には、粒子外径の直径が、0.02〜250μmであるのが好ましく、0.03〜0.4μmであるのがより好ましく、0.05〜0.2μmが更に好ましい。粒子外径の直径とは、光散乱法により測定されるリポソーム粒子の直径の平均値である。
コレステロール類は、特に限定されないが、コレステロール、コレスタノール等を挙げることができる。
表面修飾剤は、特に限定されないが、脂質と脂質に結合した化合物とからなる物質等が挙げられる。脂質に結合する化合物は、特に限定されないが、親水性高分子、水溶性多糖類の誘導体、塩基性官能基を有する化合物等が挙げられる。
水溶性多糖類の誘導体としては、特に限定されないが、グルクロン酸、シアル酸、デキストラン、プルラン、アミロース、アミロペクチン、キトサン、マンナン、シクロデキストリン、ペクチン、カラギーナン等が挙げられる。
疎水性化合物は、特に限定されないが、長鎖脂肪族アルコール、ステロール、ポリオキシプロピレンアルキル、またはグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。具体的には、親水性高分子がポリエチレングリコールであり、疎水性化合物がジステアロイルフォスファチジルエタノールアミンである場合、表面修飾剤はポリエチレングリコール−ジステアロイルフォスファチジルエタノールアミンとなる。
具体的には、X線造影剤の例としては、アミドトリゾ酸メグルミン、イオタラム酸ナトリウム、イオタラム酸メグルミン、ガストログラフィン、ヨーダミドメグルミン、リピオドールウルトラフルイド、アジピオドンメグルミン、イオキサグル酸、イオトロクス酸メグルミン、イオトロラン、イオパノ酸、イオパミドール、イオヘキソール、イオベルソール、イオポダートナトリウム、イオメプロール、イソペーク、ヨードキサム酸等が挙げられる。
核磁気共鳴診断用診断薬としては、ガドペンテト酸メグルミン、ガドテリドール等のGd錯体;フェルモキシデス等の鉄微粒子;クエン酸鉄アンモニウム等の鉄錯体等が挙げられる。
抗酸化剤の例としては、トコフェロール、アスコルビン酸、尿酸等が挙げられる。
平滑筋細胞の増殖・遊走阻害剤の例としては、ヘパリンナトリウム、ダルテパリンナトリウム(低分子ヘパリン)、ヘパリンカルシウム、デキストラン硫酸等が挙げられる。
血小板凝集阻害剤の例としては、塩酸チクロピジン、シロスタゾール、イコサペント酸エチル、ベラプロストナトリウム、塩酸サルプグレラート、バトロキソビン、ジピリダモール等が挙げられる。
ケミカルメディエーター遊離抑制剤の例としては、トラニラスト、フマル酸ケトフェチン、塩酸アゼラスチン、オキサトミド、アンレキサノクス、レピリナスト等が挙げられる。
免疫抑制剤の例としては、シクロスポリン等が挙げられる。
抗ウイルス剤の例としては、アシクロビル、ガンシクロビル、ジダノシン、ジドブジン、ソリブジン、ビダラビン等が挙げられる。
リポソーム(A)においては、リポソーム形成脂質とPEG結合リン脂質の混合比は、主成分であるリン脂質に対して、モル比で0.1〜50モル%、好ましくは0.5〜20モル%、より好ましくは1〜5モル%であるのが好ましい態様の一つである。
親水性ポリマーは約1000〜約5000ダルトンの分子量を有するポリエチレングリコールであるものが好ましい態様の一つであり、親水性ポリマーはフォスフォリポイドに誘導するものが好ましい態様の一つである。親水性ポリマーはポリ乳酸およびポリグリシル酸からなる群から選択されるのが好ましい態様の一つである。
リポソーム(B)において、治療用化合物の有効血中濃度はピコグラム−ナノグラム/mlの範囲であり、リポソーム組成物が該組成物の静脈内投与の後少なくとも5日の期間治療有効投与量で治療用化合物を放出するのが好ましい態様の一つである。
リポソーム(C)においては、親水性ポリマーは約1,000〜約5,000ダルトンの分子量を有するポリエチレングリコールであり、抗腫瘍剤の少なくとも約80%がリポソームに取り込まれた形態であることが好ましい態様の一つである。また、抗腫瘍剤がアントラサイクリン抗生物質であり、アントラサイクリンはドキソルビシン、エピルビシン、およびダウノルビシンならびに薬理学的に許容可能なその塩および酸からなる群から選択されることができる。リポソーム(C)に取り込まれた前記抗腫瘍剤の濃度は50μg(薬剤)/μmol(リポソーム脂質)を超えることが好ましい。リポソーム(C)は腫瘍診断および/または治療に使用することができる。
前記生理的pH範囲で陽電荷を帯びる塩基性化合物が、アミジノ基を有する塩基性化合物、アミノ基を2個以上有する塩基性化合物、ピペリジン環を有する塩基性化合物、4級アミンを有する塩基性化合物であることが好ましく、更には、下記式1〜4のいずれかであるのが好ましい態様の一つである。
前記親水性高分子の分子量が1000〜7000であるのが好ましい態様の一つである。
リポソーム(E)は、その主要粒度範囲が90〜200nmであることが好ましい態様の一つである。
リポソーム(E)に担持されている薬物が、腎疾患の診断および/または治療を目的とする薬物であるか、病変部の組織および/または臓器にプロテオグリカンの過剰産生を伴う疾患の診断および/または治療を目的とする薬物であるかが好ましい態様の一つである。
前記腎疾患の診断および/または治療を目的とする薬物が、副腎皮質ステロイドおよび/またはその誘導体であるのが好ましい態様の一つである。
リポソーム(E)は、炎症腎治療薬として使用するのが好ましく、これらのリポソームを使用して、炎症腎の治療用薬剤を製造するのが好ましい態様の一つである。
中でも、炎症部位や腫瘍部位等の病巣部位でpHが5〜7の環境下において、能率的に集積するリポソームであるのが好ましい態様の一つである。
塩基性化合物のモル比が全リポソーム膜構成成分中1〜30mol%であるのが好ましい態様の一つである。
リン酸モノエステル誘導体またはカルボン酸誘導体である酸性化合物のモル比が全リポソーム膜構成成分中0.5〜30mol%であるのが好ましい態様の一つである。
前記塩基性化合物が、上記式1、2および4ならびに下記式5のいずれかに示される塩基性化合物であるのが好ましい態様の一つである。
前記塩基性化合物が、下記式6および7から選ばれるのが好ましい態様の一つである。
前記カルボキシル基またはその塩を有する化合物である酸性化合物が、脂肪酸であるのが好ましい態様の一つである。
前記脂肪酸が、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸であるのが好ましい態様の一つである。
前記他のリポソーム膜構成成分が、リン脂質もしくはその誘導体、および/または、ステロールもしくはその誘導体であるのが好ましい態様の一つである。
前記治療および/または診断を目的とする薬物が、核酸、ポリヌクレオチド、遺伝子およびその類縁体であるのが好ましい態様の一つである。
前記治療および/または診断を目的とする薬物が、グリコサミノグリカンおよびその誘導体であるのが好ましい態様の一つである。
前記治療および/または診断を目的とする薬物が、オリゴおよび/または多糖、ならびに、それらの誘導体であるのが好ましい態様の一つである。
前記治療および/または診断を目的とする薬物が、蛋白質またはペプチドであるのが好ましい態様の一つである。
前記治療および/または診断を目的とする薬物が、X線造影剤、放射性同位元素標識核医学診断薬、核磁気共鳴診断用診断薬等の各種体内診断薬であるのが好ましい態様の一つである。
前記リン脂質が飽和リン脂質或いは水素添加リン脂質であるのが好ましい態様の一つである。
前記膜剤として更にコレステロールを含むのが好ましい態様の一つである。
上記リポソーム表面に、更に、親水性高分子鎖部と疎水性部とを有する凝集抑制剤が結合され、該凝集抑制剤は疎水性部がリポソーム中の脂質層に固定されるとともに親水性高分子鎖部はリポソーム表面から外方向に伸びてなるものであるのが好ましい態様の一つである。
上記リポソームに担持された物質が生理活性物質であるのが好ましい態様の一つである。
前記生理活性物質がヘモグロビンであるのが好ましい態様の一つである。
即ち、本発明は、リポソームに結合する抗体を有効成分として含有する、血中に存在しているリポソームの体外排泄剤も提供する。
図1に示されているように、リポソーム投与後4日および5日の哺乳動物から採取した血清を、別の個体の哺乳動物に投与すると、リポソームが1時間以内に血中からほぼ消失することが認められる。即ち、本発明の抗体を含む血清を動物に投与すると、リポソームが血中から速やかに消失する。これに対して、そのような血清を投与されていない哺乳動物では、一定時間経過後も血中にリポソームの大部分が残存する。
即ち、哺乳動物にリポソームを単回投与する工程と、投与後一定期間経過した後、前記哺乳動物から血清を採取する工程と、前記血清を前記リポソームとインキュベーションする工程と、インキュベーション後、前記リポソームに結合した蛋白質を精製して前記抗体を得る工程とを具備する、抗体の製造方法により得られるのが好ましい。
抗体取得の感作抗原として使用されるリポソームを、後述の実施例に記載された方法によって得る。得られたリポソームを感作抗原として用いる。
前記免疫細胞と融合される他方の親細胞として、哺乳動物のミエローマ細胞を用いる。このミエローマ細胞は、公知の種々の細胞株、例えば、P3(P3x63Ag8.653)(J.Immnol.(1979)123,1548−1550)、P3x63Ag8U.1(Current Topics inMicrobiology and Immunology(1978)81,1−7)、NS−1(Kohler.G.and Milstein,C.Eur.J.Immunol.(1976)6,511−519)、MPC−11(Margulies.D.H.et al.,Cell(1976)8,405−415)、SP2/0(Shulman,M.et al.,Nature(1978)276,269−270)、F0(de St.Groth,S.F.et al.,J.Immunol.Methods(1980)35,1−21)、S194(Trowbridge,I.S.J.Exp.Med.(1978)148,313−323)、R210(Galfre,G.et al.,Nature(1979)277,131−133)等が好適に使用される。
前記免疫細胞とミエローマ細胞との細胞融合は、基本的には公知の方法、例えば、ミルステインらの方法(Kohler.G.and Milstein,C.、Methods Enzymol.(1981)73,3−46)等に準じて行うことができる。
より具体的には、前記細胞融合は、例えば、細胞融合促進剤の存在下に通常の栄養培養液中で実施される。融合促進剤としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、センダイウィルス(HVJ)等が使用され、更に所望により融合効率を高めるためにジメチルスルホキシド等の補助剤を添加使用することもできる。
細胞融合は、前記免疫細胞とミエローマ細胞との所定量を前記培養液中でよく混合し、予め37℃程度に加温したPEG溶液(例えば、平均分子量1000〜6000程度)を通常30〜60%(w/v)の濃度で添加し、混合することによって目的とする融合細胞(ハイブリドーマ)を形成する。続いて、適当な培養液を逐次添加し、遠心して上清を除去する操作を繰り返すことによりハイブリドーマの生育に好ましくない細胞融合剤等を除去する。
また、ヒト以外の動物に抗原を免疫して上記ハイブリドーマを得るほかに、ヒトリンパ球をin vitroでリポソームに感作し、感作リンパ球をヒト由来の永久分裂能を有するミエローマ細胞と融合させ、リポソームへの結合活性を有する所望のヒト抗体を得ることもできる(特公平1−59878号公報参照。)。更に、ヒト抗体遺伝子のレパートリーを有するトランスジェニック動物に抗原となるリポソームを投与して抗体産生細胞を取得し、これを不死化させた細胞からリポソームに対するヒト抗体を取得してもよい(国際公開第94/25585号パンフレット、国際公開第93/12227号パンフレット、国際公開第92/03918号パンフレット、国際公開第94/02602号パンフレット参照。)。
該ハイブリドーマからモノクローナル抗体を取得するには、該ハイブリドーマを通常の方法にしたがい培養し、その培養上清として得る方法、あるいはハイブリドーマをこれと適合性がある哺乳動物に投与して増殖させ、その腹水として得る方法等が採用される。前者の方法は、高純度の抗体を得るのに適しており、一方、後者の方法は、抗体の大量生産に適している。
具体的には、抗体を産生するハイブリドーマから、抗体の可変(V)領域をコードするmRNAを単離する。mRNAの単離は、公知の方法、例えば、グアニジン超遠心法(Chirgwin,J.M.et al.,Biochemistry(1979)18,5294−5299)、AGPC法(Chomczynski,P.et al.,Anal.Biochem.(1987)162,156−159)等により行って全RNAを調製し、mRNA Purification Kit(Pharmacia製)等を使用して目的のmRNAを調製する。また、QuickPrep mRNA Purification Kit(Pharmacia製)を用いることによりmRNAを直接調製することができる。
得られたPCR産物から目的とするDNA断片を精製し、ベクターDNAと連結する。更に、これより組換えベクターを作製し、大腸菌等に導入してコロニーを選択して所望の組換えベクターを調製する。そして、目的とするDNAの塩基配列を公知の方法、例えば、ジデオキシヌクレオチドチェインターミネーション法により確認する。
目的とする抗体のV領域をコードするDNAを得たのち、これを、所望の抗体定常領域(C領域)をコードするDNAを含有する発現ベクターへ組み込む。
抗体遺伝子の発現は、抗体重鎖(H鎖)または軽鎖(L鎖)をコードするDNAを別々に発現ベクターに組み込んで宿主細胞を同時形質転換させてもよいし、あるいはH鎖およびL鎖をコードするDNAを単一の発現ベクターに組み込んで宿主細胞を形質転換させてもよい(国際公開第94/11523号パンフレット参照。)。
また、組換え型抗体の産生には上記宿主細胞だけではなく、トランスジェニック動物を使用することができる。例えば、抗体遺伝子を、乳汁中に固有に産生される蛋白質(ヤギβカゼイン等)をコードする遺伝子に挿入して融合遺伝子として調製する。抗体遺伝子が挿入された融合遺伝子を含むDNA断片をヤギの胚へ注入し、この胚を雌のヤギへ導入する。胚を受容したヤギから生まれるトランスジェニックヤギまたはその子孫が産生する乳汁から所望の抗体を得る。また、トランスジェニックヤギから産生される所望の抗体を含む乳汁量を増加させるために、適宜ホルモンをトランスジェニックヤギに使用してもよい(Ebert,K.M.et.al.,Bio/Technology(1994)12,699−702)。
本発明に有用なキメラ抗体は、前記のようにして得た抗体V領域をコードするDNAをヒト抗体C領域をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより得ることができる。
ヒト型化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体とも称され、これは、ヒト以外の哺乳動物、例えば、マウス抗体の相補性決定領域(CDR;complementarity determining region)をヒト抗体の相補性決定領域へ移植したものであり、その一般的な遺伝子組換え手法も知られている(欧州特許出願公開第125023号明細書、国際公開第96/02576号パンフレット参照。)。
具体的には、マウス抗体のCDRとヒト抗体のフレームワーク領域(framework region;FR)とを連結するように設計したDNA配列を、CDRおよびFR両方の末端領域にオーバーラップする部分を有するように作製した数個のオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いてPCR法により増幅する。得られたDNAをヒト抗体C領域をコードするDNAと連結し、次いで発現ベクターに組み込んで、これを宿主に導入し産生させることによりヒト型化抗体を得ることができる(欧州特許第239400号明細書、国際公開第96/02576号パンフレット参照。)。
また、CDRとFRを含む可変領域や定常領域の活性を調節するために、それらの部位の糖鎖付加配列を変化させることができる。即ち、人工的に糖鎖を付加したり、糖鎖を持たないようにするための調節が可能である。
キメラ抗体およびヒト型化抗体のC領域には、ヒト抗体のものが使用され、例えば、H鎖では、Cγ1、Cγ2、Cγ3、Cγ4を、L鎖ではCκ、Cλを使用することができる。また、抗体またはその産生の安定性を改善するために、ヒト抗体C領域を修飾してもよい。
キメラ抗体は、ヒト以外の哺乳動物由来抗体の可変領域とヒト抗体由来の定常領域とからなる。一方、ヒト型化抗体は、ヒト以外の哺乳動物由来抗体の相補性決定領域と、ヒト抗体由来のフレームワーク領域およびC領域とからなる。ヒト型化抗体はヒト体内における抗原性が低下されているため、本発明の薬剤の有効成分として有用である。
scFvをコードするDNAは、前記抗体のH鎖またはH鎖V領域をコードするDNA、およびL鎖またはL鎖V領域をコードするDNAのうち、それらの配列のうちの全部または所望のアミノ酸配列をコードするDNA部分を鋳型とし、その両端を規定するプライマー対を用いてPCR法により増幅し、次いで、更にペプチドリンカー部分をコードするDNA、およびその両端が各々H鎖、L鎖と連結されるように規定するプライマー対を組み合せて増幅することにより得られる。
これら抗体の断片は、前記と同様にしてその遺伝子を取得し発現させ、宿主により産生させることができる。本発明における「抗体」にはこれらの抗体の断片も包含される。
抗体の修飾物として、ポリエチレングリコール(PEG)等の各種分子と結合した抗体を使用することもできる。本発明における「抗体」にはこれらの抗体修飾物も包含される。このような抗体修飾物は、得られた抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。なお、抗体の修飾方法はこの分野においてすでに確立されている。
SV 40プロモーター/エンハンサーを使用する場合はMulliganらの方法(Nature(1979)277,108)により、また、HEF1αプロモーター/エンハンサーを使用する場合はMizushimaらの方法(Nucleic Acids Res.(1990)18,5322)により、容易に遺伝子発現を行うことができる。
抗体分泌のためのシグナル配列としては、大腸菌のペリプラズムに産生させる場合、pelBシグナル配列(Lei,S.P.et al J.Bacteriol.(1987)169,4379)を使用すればよい。そして、ペリプラズムに産生された抗体を分離した後、抗体の構造を適切に組み直して(refold)使用する。
好ましくは、本発明で使用される抗体は、哺乳類細胞、例えば、CHO、COS、ミエローマ、BHK、Vero、HeLa細胞中で発現される。
つぎに、形質転換された宿主細胞をin vitroまたはin vivoで培養して目的とする抗体を産生させる。宿主細胞の培養は公知の方法に従い行う。例えば、培養液として、DMEM、MEM、RPMI1640、IMDMを使用することができ、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。
本発明で使用される抗体の抗原結合活性を測定する方法として、BIACORE法(表面プラズモン共鳴を利用する分析法)、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)、EIA(酵素免疫測定法)、RIA(放射免疫測定法)あるいは蛍光抗体法を用いることができる。例えば、酵素免疫測定法を用いる場合、リポソームをコーティングしたプレートに、抗体を含む試料、例えば、抗体産生細胞の培養上清や精製抗体を加える。アルカリフォスファターゼ等の酵素で標識した二次抗体を添加し、プレートをインキュベートし、洗浄した後、p−ニトロフェニルリン酸等の酵素基質を加えて吸光度を測定することで抗原結合活性を評価することができる。
更に、酢酸、クエン酸、リン酸およびそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の緩衝剤を、0.1〜100mmol/L、好ましくは、5〜50mmol/L程度添加し、pHを5〜8、好ましくは5.5〜7.0、最も好ましくは、約6.0に調整し、バルク用抗体溶液組成物を調製する。
この組成物には、約1〜100mg/mLの抗体が含まれており、更には、凍結融解の際に抗体の微粒子形成を減少し得るクライオプロテクタントあるいは凍結乾燥時のリオプロテクタントとなる界面活性剤(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート80、Triton、ドデシル硫酸ナトリウム)、ナトリウムオクチルグリコシド、ラウリル−・リノレイル−・ステアリル−スルホベタイン、ラウリル−・ミリスチル−・リノレイル−・ステアリル−サルコシン、ミリスチル−・リノレイル−・セチル−ベタイン、ラウロアミドプロピル−・コカミドプロピル−・リノールアミドプロピル−・ミリスタミドプロピル−・パルミドプロピル−・イソステアラミドプロピル−ベタイン、ミリスタミドプロピル−・パルミドプロピル−・イソステアラミドプロピル−ジメチルアミン、ナトリウムメチルココイル−・二ナトリウムメチルオレイル−タウレート、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールやプロピレングリコールのコポリマー(Pluronics等)や糖または糖アルコール(例えば、スクロース、トレハロース、グリセロール、アラビトール、キシリトール、ソルビトールおよびマンニトール等のポリオール等)、グルタミン酸やヒスチジンのようなアミノ酸等が含まれていてもよい。またこれらの濃度は、抗体濃度および調製する製剤の等張性に依存する。
バルク用溶液組成物は、長期保存性や、輸送時の物理的ストレスに対して安定であることを要求されるのと同時に、ある実施形態において、この組成物を用いて治療される患者に適した投与方法(例えば、皮下投与)の製剤に調製するために、できるだけ安定化剤等の添加物を添加しないことが好ましい。
したがって、バルク用溶液組成物は、緩衝剤、ハロゲン化金属類等の等張化剤、界面活性剤、糖または糖アルコール以外の安定化剤を含んでいないことが好ましい。更にバルク用溶液組成物は、緩衝剤、ハロゲン化金属類等の等張化剤、界面活性剤以外の安定化剤を含んでいないことが好ましい。最も好ましくは、バルク用溶液組成物は、緩衝剤、ハロゲン化金属類等の等張化剤以外の安定化剤を含んでいない組成物である。
特に、注射製剤の場合は、緩衝剤として酢酸および/またはその塩を使用することが好ましい。緩衝剤として酢酸および/またはその塩を使用した場合には、注射製剤投与時の疼痛が少ないものとなる。
また、投与時期としては、所望の効果を期待する時期の前後を問わず投与することができ、または所望の効果を発揮すべき事象が予測される時に投与してもよい。
このような担体および医薬添加物の例として、水、医薬的に許容される有機溶剤、アミノ酸、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、寒天、ポリエチレングリコール、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン(HSA)、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤等が挙げられる。
HSPC(hydrogenated soy phosphatidylcholine)またはHEPC(hydrogenated egg phosphatidylcholine)、CHOL(cholesterol)およびPEG2000−DSPE(distearoylphosphatidylethanolamine polyethylene glycol(Mw=2000))をそれぞれクロロホルムに溶解させ、それぞれの溶液をHSPCまたはHEPCとして40μmol、HSPCまたはHEPC:CHOL:PEG2000−DSPE=1.85:1:0.15になるようにナス型フラスコに加え混合した。その後、クロロホルムをエバポレーターにより除去して、脂質薄膜を調製した。これにHEPES(4−(2−hydroxyethyl)piperazine−1−ethanesulfonic acid)緩衝液2mLを加え、65℃に加温しながらボルテックスミキサーでかくはんしてリポソーム分散液を調製した。得られたリポソーム分散液を、Lipex Biomembranes社のエクストルーダーを用いて、孔径0.4μmの膜を3回、孔径0.2μmの膜を3回、孔径0.1μmの膜を10回通して、粒子径が100nmとなるように整粒した。粒径はParticle Sizing System社のNICOMP370を用いて動的光散乱法により確認した。
HSPCまたはHEPCに、3H−cholesteryl hexadecylether(NEN Life Science Products)をHSPCまたはHEPCの1μmolに対して4μCiの放射活性で添加した以外は、実験1と同様の方法で操作して、3H標識リポソームを調製した。
HSPCまたはHEPCに、rhodamine−DHPE(Molecular Probes,Inc.)をHSPCまたはHEPCに対して0.0015μmol添加した以外は、実験1と同様の方法で操作して、RhodaminB標識リポソームを調製した。
HEPCを用いて実験1の方法で調製したリポソームを9週齢のWistar系雄性ラットにHSPCまたはHEPCとして0.001μmol/kgの割合で静脈投与し、投与1〜5日後頚動脈にカニュレーションを施し、血液を血清分離剤入りチューブ(栄研)に採取した。このチューブをそのまま30分間室温で放置した後、3000rpmで15分間遠心分離し、上清のみを遠心チューブにとり、血清を得た。血清は使用するまで−80℃にて保存した。
実験4においてリポソーム投与後1〜5日経過したラットから得られた血清と、リポソームを投与していないラットの血清を、それぞれ、リポソームをまだ投与していない別の個体のWistar系雄性ラットに投与し、その直後に、それぞれのラットにHEPCを用いて実験2で得られた3H標識リポソームを投与し、リポソームの血中動態を血漿中の放射活性により評価した。
その結果、リポソーム投与後4日および5日経過後のラットの血清をあらかじめ投与されていたラットにおいて、投与された3H標識リポソームが速やかに血中から消失することが確認された(図1参照。)。したがって、リポソーム投与後、4日および5日経過後のラットの血清中にリポソームを認識する物質があることが示唆された。
採取した血清中に存在するリポソームを認識する物質を分離するため、HEPCを用いて実験3で得られたRhodamineB標識リポソームの分散液(リン脂質として、14μmol/mL)と、リポソーム未投与のラット血清または実験4で得られた投与後5日目の血清とをそれぞれリポソーム分散液:血清=1:4となるように混合し、水浴槽中で、37℃、15minの条件でインキュベーションした。
この液1.2mLを、あらかじめHEPES緩衝液で平衡化しておいた、Sepharose(R)4 fast Flowカラム(1.5cm×30cm)にアプライし、1.25mL/minの流速で、上記緩衝液を用いてゲルろ過した。
測定した蛍光強度より、リポソーム画分を集め、回収した。この画分を濃縮装置(Microcon Centrifugal Devices、MILLIPORE)に入れ、超遠心機(Microfuge(R) R, Beckman Courter)を用いて、14000g、80minの条件で遠心した。
濃縮後、濃縮装置を取り外し上下逆さにして、別のエッペンドルフチューブに装着して2500rpm、3分間の条件で遠心して、サンプルを採取した。なお、濃縮の程度は濃縮前後の試料の量を測定することで推定した。
リポソーム投与前のラット血清と、リポソーム投与後5日経過後のラット血清とからそれぞれ、実験6の方法で得られた溶液のリポソーム画分を、リン脂質として3μmol/mLとなるように希釈し、その0.025mLを0.075mLのサンプル緩衝液(組成:25mM Tris塩酸,25.2% グリセロール,2% SDS(sodium dodecyl sulfate),0.006% BPB(bromophenol blue),2mM EDTA(ethylenediaminetetraacetic acid),1% DTT(dithiothreitol);pH6.8)と混合し、95℃で5分間処理した後、還元条件下、12.5%ポリアクリルアミドゲルを用いてSDS電気泳動により分画した。
電気泳動の結果を図2に示す。
上記実験7の電気泳動上で、リポソーム未投与ラットの血清に比べて、リポソーム投与後のラットで明らかな増大が見られる7本のバンド(図2中のband1〜7)を切り出し、これらのゲル片にTrypsinを含むTris塩酸緩衝液(pH8.0)を加え、35℃、20時間の処理にて消化した。酵素消化で得られたペプチドにつき、LC−MS/MS(HPLC装置:MAGIC 2002(Michrom BioResources,Inc.,USA;カラム:Magic C18(0.1×50mm,Michrom BioResources,Inc.,USA);質量分析装置:Q−Tof2(Micromass,UK)を用いて分析し、MS/MSにより得られたイオンシグナルデータをMascot Searchにより、NCBInrデータベースを用いて検索し、統計学的に有意なスコアを示すペプチドを含む蛋白質を同定した。
Claims (9)
- ポリエチレングリコールで表面修飾されたリポソームに結合する抗体を有効成分として含有する、リポソームの血中クリアランス促進剤。
- 前記抗体が、哺乳動物に前記リポソームを単回投与することにより、前記哺乳動物に産生される抗体であって、前記哺乳動物とは別の個体の哺乳動物に投与された場合に、前記別の個体の哺乳動物の血中に存在している前記リポソームが体外へ排泄されることを促進する能力を有する抗体である、請求項1に記載のリポソームの血中クリアランス促進剤。
- 前記抗体がポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体である、請求項1または2に記載のリポソームの血中クリアランス促進剤。
- 前記リポソームが診断用および/または治療用の薬物を担持する、請求項1〜3のいずれかに記載のリポソームの血中クリアランス促進剤。
- ポリエチレングリコールで表面修飾されたリポソームに結合する抗体を有効成分として含有する、血中に存在しているリポソームの体外排泄剤。
- 哺乳動物にポリエチレングリコールで表面修飾されたリポソームを単回投与することにより、前記哺乳動物に産生される抗体であって、前記哺乳動物とは別の個体の哺乳動物に投与された場合に、前記別の個体の哺乳動物の血中に存在している前記リポソームが体外へ排泄されることを促進する能力を有する抗体。
- 前記リポソームの、前記抗体を投与しない場合における血中半減期が10時間以上である長期滞留型のリポソームである請求項6に記載の抗体。
- 請求項6または7に記載の抗体を含有する医薬組成物。
- 請求項6または7に記載の抗体を製造する、抗体の製造方法であって、
哺乳動物にポリエチレングリコールで表面修飾されたリポソームを単回投与する工程と、
投与後一定期間経過した後、前記哺乳動物から血清を採取する工程と、
前記血清を前記リポソームとインキュベーションする工程と、
インキュベーション後、前記リポソームに結合した蛋白質を精製して前記抗体を得る工程と
を具備する、抗体の製造方法。
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