JP4651276B2 - リポソームを体内より排泄する抗体およびリポソームの血中クリアランス促進剤 - Google Patents

リポソームを体内より排泄する抗体およびリポソームの血中クリアランス促進剤 Download PDF

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本発明は、血中に投与されたリポソームを速やかに体外へ排泄する能力を有する抗体およびそれを含有するリポソームの血中クリアランス促進剤に関する。
近年、親水性高分子等で表面修飾することにより、10時間以上の長い血中半減期で血中を長時間にわたって安定に循環できる長期滞留型(長期循環型)のリポソームが開発されてきた(非特許文献1参照。)。このような長期滞留型のリポソームは、その中に癌、炎症組織等の血管の透過性が亢進しているような組織を診断しまたは治療するための薬剤を含有させたとき、透過性の亢進した血管からそのような組織に効率的に集積することで、診断または治療の手段として有用なものとなることが期待されている(非特許文献2参照。)。
しかしながら、例えば、リポソームに造影剤を含有させ、病巣の診断に応用する場合、病巣のリポソーム濃度を血管中のリポソーム濃度より高くすることで、病巣と血管のコントラストをつける必要があるが、リポソームが長期滞留型であると、血中濃度の減少速度が遅く、コントラストを得るまでに長時間を有するうえ、長時間の経過後には病巣および血中のいずれにおいても低い濃度になってしまうことが想定され、実用的な診断には不利な部分があった。
また、例えば、このような長期滞留型のリポソームに診断用または治療用の薬物を含有させ、診断または治療に用いる場合、これら薬物やリポソームにより予期せぬ副作用が発現したときに、副作用を長時間にわたり持続させてしまう可能性がある。
これらの場合において、随時必要なときに、リポソームを速やかに血中から体外に排泄させることができれば、即ち、血中クリアランスを促進させることができれば、造影剤を含有させる場合においては、病巣における濃度が高い状態で、血中の濃度を速やかに低下させてコントラストを得ることができ、また、副作用が発現したときにおいては、速やかに薬物またはリポソームを体内から除去することで、副作用の持続を防止することができる。
最近、一部の哺乳動物において、一度リポソームを投与された動物に、一定期間経過後に同一のまたは異なる種類のリポソームを投与した場合に、2回目に投与されたリポソームの血中クリアランスが促進され、リポソームの血中濃度が急激に低下することが報告されていたが(非特許文献3参照。)、この血中クリアランスが促進される現象(ABC現象:Accelerated Blood Clearance Phenomena)が起こる原因は、明らかではなかった。
Woodle MC,Lasic DD,Sterically stabilized liposomes.Biochim Biophys Acta.1992 Aug 14;1113(2):171−99 Maeda H,Wu J,Sawa T,Matsumura Y,Hori K.,Tumor vascular permeability and the EPR effect in macromolecular therapeutics:a review.J Control Release.2000 Mar 1;65(1−2):271−84 Dams ET,Laverman P,Oyen WJ,Storm G,Scherphof GL,van Der Meer JW,Corstens FH,Boerman OC.,Accelerated blood clearance and altered biodistribution of repeated injections of sterically stabilized liposomes.J Pharmacol Exp Ther.2000 Mar;292(3):1071−9
本発明は、リポソームの血中クリアランスを促進する物質およびそれに用いられる抗体を提供することを課題とする。
本発明者は、上記ABC現象を解明し、原因物質を特定し、単離する方法を開発すれば、長期滞留型のリポソームを随時必要なときに速やかに体外へ排泄させるための手段を得られる可能性があると考えた。
そして、本発明者は、鋭意研究の結果、ABC現象の発現時にリポソーム表面に結合している蛋白質を単離し、その構造を決定することで、リポソームの血中クリアランスを促進する物質を開発し、本発明を完成するに至った。
具体的には、本発明者は、上記課題を解決するため、リポソームを哺乳動物に単回投与し、投与後一定期間経過後に、血清を採取し、得られた血清を別の個体の哺乳動物に投与したときに、その血清を投与された哺乳動物に、血中からリポソームを速やかに排泄する活性が誘導されるかを検討した。
更に、本発明者は、このような活性が最も高いときの血清を、体外においてリポソームとインキュベーションし、リポソームに結合してくる蛋白を単離して、その構造を電気泳動法と、LC−MS/MS法(液体クロマトグラフで分離した成分を2段階の質量分析により分析する方法)とにより解析した。
本発明者は、その結果、血清中にリポソームに結合する抗体が産生されており、血中クリアランスが向上しているときには、その抗体がリポソーム表面に結合していることを見出し、本発明を完成させたのである。
即ち、本発明により、以下のようなリポソームの血中クリアランス促進剤等が、上記課題を解決するための手段として提供される。なお、以下の(1)〜(9)の発明において、リポソームは、ポリエチレングリコールで表面修飾されたリポソームである。
(1)リポソームに結合する抗体を有効成分として含有する、リポソームの血中クリアランス促進剤。
(2)前記抗体が、哺乳動物に前記リポソームを単回投与することにより、前記哺乳動物に産生される抗体であって、前記哺乳動物とは別の個体の哺乳動物に投与された場合に、前記別の個体の哺乳動物の血中に存在している前記リポソームが体外へ排泄されることを促進する能力を有する抗体である、上記(1)に記載のリポソームの血中クリアランス促進剤。
(3)前記抗体がポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体である、上記(1)または(2)に記載のリポソームの血中クリアランス促進剤。
(4)前記リポソームが診断用および/または治療用の薬物を担持する、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のリポソームの血中クリアランス促進剤。
(5)リポソームに結合する抗体を有効成分として含有する、血中に存在しているリポソームの体外排泄剤。
(6)哺乳動物にリポソームを単回投与することにより、前記哺乳動物に産生される抗体であって、前記哺乳動物とは別の個体の哺乳動物に投与された場合に、前記別の個体の哺乳動物の血中に存在している前記リポソームが体外へ排泄されることを促進する能力を有する抗体。
(7)前記リポソームの、前記抗体を投与しない場合における血中半減期が10時間以上である長期滞留型のリポソームである上記(6)に記載の抗体。
(8)上記(6)または(7)に記載の抗体を含有する医薬組成物。
(9)上記(6)または(7)に記載の抗体を製造する、抗体の製造方法であって、
哺乳動物にリポソームを単回投与する工程と、
投与後一定期間経過した後、前記哺乳動物から血清を採取する工程と、
前記血清を前記リポソームとインキュベーションする工程と、
インキュベーション後、前記リポソームに結合した蛋白質を精製して前記抗体を得る工程と
を具備する、抗体の製造方法。
本発明のリポソームの血中クリアランス促進剤は、リポソームの血中濃度の低下を促進させることができるので、特に、長期滞留型のリポソームの血中濃度を低下させる際に好適に用いられる。本発明の抗体は、本発明のリポソームの血中クリアランス促進剤に好適に用いられる。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明のリポソームの血中クリアランス促進剤は、リポソームに結合する抗体を有効成分として含有する。
本発明において、「リポソーム」とは、脂質を膜の基本構成材料とする小球状の構造を有し、疾患の診断用および/または治療用の薬物を担持可能なものを意味する。リポソームは、脂質分子の疎水性基と親水性基の極性に基づいて生ずる膜により外界から隔てられた空間を形成する構造を有する閉鎖小胞である。リポソームの大きさは、特に限定されないが、球状またはそれに近い形態をとる場合には、粒子外径の直径が、0.02〜250μmであるのが好ましく、0.03〜0.4μmであるのがより好ましく、0.05〜0.2μmが更に好ましい。粒子外径の直径とは、光散乱法により測定されるリポソーム粒子の直径の平均値である。
リポソームを構成する他の成分は、そのような形態を安定的に形成できるものであれば特に限定されないが、生体内における安定性等を考慮すると、膜構成成分として、脂質、その誘導体および表面修飾剤からなる群から選ばれる少なくとも一つが含有されるのが好ましい。特に、膜の基本構成材料として、脂質を含むことが好ましい。脂質としては、例えば、リン脂質、リン脂質以外の脂質、コレステロール類、これらの誘導体が挙げられる。
リン脂質としては、フォスファチジルコリン(=レシチン)、フォスファジルグリセロール、フォスファチジン酸、フォスファチジルコリン、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルセリン、フォスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、カルジオリビン等の天然もしくは合成のリン脂質、またはこれらに常法に従って水素添加したもの等を挙げることができる。
リン脂質以外の脂質は、特に限定されず、リン酸を含まない脂質が挙げられ、具体的には、グリセロ糖脂質、スフィンゴ糖脂質等を挙げることができる。
コレステロール類は、特に限定されないが、コレステロール、コレスタノール等を挙げることができる。
表面修飾剤は、リポソームの膜構成成分である脂質の構造や物性を変化させて、リポソームの膜に所望の特性を付与するために使用される。したがって、表面修飾剤はリポソームの膜構成成分の一つとして使用することができる。
表面修飾剤は、特に限定されないが、脂質と脂質に結合した化合物とからなる物質等が挙げられる。脂質に結合する化合物は、特に限定されないが、親水性高分子、水溶性多糖類の誘導体、塩基性官能基を有する化合物等が挙げられる。
親水性高分子は、特に限定されないが、ポリエチレングリコール、フィコール、ポリビニルアルコール、スチレン−無水マレイン酸交互共重合体、ジビニルエーテル−無水マレイン酸交互共重合体、合成ポリアミノ酸等が挙げられる。
水溶性多糖類の誘導体としては、特に限定されないが、グルクロン酸、シアル酸、デキストラン、プルラン、アミロース、アミロペクチン、キトサン、マンナン、シクロデキストリン、ペクチン、カラギーナン等が挙げられる。
表面修飾剤が親水性高分子または水溶性多糖を含む場合、親水性高分子または水溶性多糖が結合する脂質は、特に限定されないが、疎水性の領域を有する化合物(疎水性化合物)を使用することができる。
疎水性化合物は、特に限定されないが、長鎖脂肪族アルコール、ステロール、ポリオキシプロピレンアルキル、またはグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。具体的には、親水性高分子がポリエチレングリコールであり、疎水性化合物がジステアロイルフォスファチジルエタノールアミンである場合、表面修飾剤はポリエチレングリコール−ジステアロイルフォスファチジルエタノールアミンとなる。
疎水性化合物を含む表面修飾剤を用いた場合、疎水性化合物の少なくとも疎水性領域が、リポソームの脂質二重層の膜の中に安定化される。その結果、脂質二重層の膜表面上(薬物担体の外表面上および/または内表面上)に、疎水性化合物に結合した親水性高分子または水溶性多糖を存在させることができる。そうすることによってリポソームの膜を修飾することが可能となり、その結果、リポソームの血中安定性を高めるなどの効果が得られる。
塩基性官能基は、特に限定されないが、アミノ基、アミジノ基、グアジニノ基等が挙げられる。塩基性官能基を有する化合物としては、DOTMA(特許第61161246号公報参照。)、DOTAP(特許第5508626号公報参照。)、Transfectam(特許第2292246号公報参照。)、TMAG(特許第4108391号公報参照。)、3,5−ジペンタデシロキシベンズアミジン塩酸塩(国際公開第97/42166号パンフレット参照。)、DOSPA、TfxTM−50、DDAB、DC−CHOL、DMRIE等の公知の化合物が挙げられる。
表面修飾剤が塩基性官能基を含む場合、即ち、表面修飾剤が脂質に塩基性官能基を有する化合物が結合した物質である場合、これをカチオン化脂質と呼ぶ。カチオン化脂質は、その脂質部分がリポソームの脂質二重層の膜の中に安定化され、塩基性官能基部分を該脂質二重層の膜表面上(担体の外表面上および/または内表面上)に存在させることができる。そうすることによってリポソームの膜を修飾することが可能となる。
リポソームは、疾患の診断用および/または治療用の薬物を担持して使用することができる。ここで、「担持」とは、リポソームの閉鎖空間内に薬物が封入された状態、例えば、脂質二重層内に薬物の一部もしくは全部が含まれている状態、または、薬物担体の外表面に薬物が付着した状態にあることを意味する。
本発明において、薬物担体に担持可能な診断用の薬物としては、X線造影剤、放射性同位元素標識核医学診断薬、核磁気共鳴診断用診断薬等が好適に挙げられる。
具体的には、X線造影剤の例としては、アミドトリゾ酸メグルミン、イオタラム酸ナトリウム、イオタラム酸メグルミン、ガストログラフィン、ヨーダミドメグルミン、リピオドールウルトラフルイド、アジピオドンメグルミン、イオキサグル酸、イオトロクス酸メグルミン、イオトロラン、イオパノ酸、イオパミドール、イオヘキソール、イオベルソール、イオポダートナトリウム、イオメプロール、イソペーク、ヨードキサム酸等が挙げられる。
核磁気共鳴診断用診断薬としては、ガドペンテト酸メグルミン、ガドテリドール等のGd錯体;フェルモキシデス等の鉄微粒子;クエン酸鉄アンモニウム等の鉄錯体等が挙げられる。
また、薬物担体に担持可能な治療用の薬物としては、抗癌剤、抗生物質、酵素剤、酵素阻害剤、抗酸化剤、脂質取り込み阻害剤、ホルモン剤、抗炎症剤、ステロイド剤、血管拡張剤、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、アンジオテンシン受容体拮抗剤、平滑筋細胞の増殖・遊走阻害剤、血小板凝集阻害剤、抗凝固剤、ケミカルメディエーターの遊離抑制剤、血管内皮細胞の増殖または抑制剤、アルドース還元酵素阻害剤、メサンギウム細胞増殖阻害剤、リポキシゲナーゼ阻害剤、免疫抑制剤、免疫賦活剤、抗ウイルス剤,メイラード反応抑制剤、アミロイドーシス阻害剤、NOS阻害剤、AGEs阻害剤、ラジカルスカベンチャー等の薬剤;タンパク質、ペプチド、核酸、ポリヌクレオチド、遺伝子およびその類縁体等が好適に挙げられる。
具体的には、抗癌剤の例としては、シクロホスファミド、イホスファミド、塩酸ナイトロジェンマスタード−N−オキシド、チオテパ、ブルスファン、カルボコン、塩酸ニムスチン、ラニムスチン、メルファラン、トシル酸インプロスルファン、ダカルバジン、塩酸プロカルバジン、シタラビン、シタラビンオクスファート、エノシタビン、メルカプトプリン、チオイノシン、フルオロウラシル、ドキシフルリジン、テガフール、メトトレキサート、カルモフール、ヒドロキシカルバミド、硫酸ビンクリスチン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンデシン、エトポシド、クロモマイシンA3、塩酸ダウノルビシン、塩酸ドキソルビシン、塩酸アラクルビシン、ピラルビシン、塩酸エピルビシン、ダクチノマイシン、塩酸ミトキサントロン、塩酸ブレオマイシン、硫酸ペプロマイシン、マイトマイシンC、ネオカルノスタチン、L−アスパラギナーゼ、アセグラトンミトプロニトール、デキストラン硫酸ナトリウム、酢酸オクトレオチド、シスプラチン、カルボプラチン、クエン酸タモキシフェン、酢酸メドロキシプロゲステロン、リン酸エストラムスチンナトリウム、酢酸ゴセレリン、酢酸リュープロレリン、塩酸イリノテカン等が挙げられる。
抗生物質の例としては、ベンジルペニシリンカリウム、ベンジルペニシリンベンザチン、フェノキシメチルペニシリンカリウム、フェネチシリンカリウム、クロキサシリンナトリウム、フルクロキサシリンナトリウム、アンピシリン、トシル酸スルタミシリン、塩酸バカンピシリン、塩酸タランピシリン、レナンピシリン、ヘタシリンカリウム、シクラシリン、アモキシシリン、塩酸ピブメシリナム、アスポキシシリン、カルベニシリンナトリウム、カリンダシリンナトリウム、スルベニシリンナトリウム、チカルシリンナトリウム、ピペラシリンナトリウム、セファロリジン、セファロチンナトリウム、セファゾリンナトリウム、セファピリンナトリウム、セフラジン、セファレキシン、セファトリジンプロピレングリコール、セフロキサジン、セファクロル、セファドロキシル、塩酸セフォチアム、塩酸セフォチアムヘキセチル、セフロキシムナトリウム、セフロキシムアキセチル、セファマンドールナトリウム、セフジニル、塩酸セフェタメトピポキシル、セフチプテン、セフメタゾールナトリウム、セフォキシチンナトリウム、セフォテタンナトリウム、セフミノクスナトリウム、セフプペラゾンナトリウム、セフピラミドナトリウム、セフスロジンナトリウム、セフォタキシムナトリウム、セフォペラゾンナトリウム、セフチゾキシムナトリウム、塩酸セフメノキシム、セフトリアキソンナトリウム、セフタジジム、セフピミゾールナトリウム、セフィキシム、セフテラムピポキシル、セフゾナムナトリウム、セフポドキシプロキセチル、セフォジジム、硫酸セフピロム、ラタモキセフナトリウム、フロモキセフナトリウム、イミペネム、シラスタチンナトリウム、アズトレオナム、カルモナムナトリウム、硫酸ステレプトマイシン、硫酸カナマイシン、硫酸フラジオマイシン、硫酸アミカシン、硫酸ゲンタマイシン、硫酸パロモマイシン、硫酸ペカナマイシン、硫酸リポスタマイシン、硫酸ジベカシン、トブラマイシン、硫酸シソマイシン、硫酸ミスロノマイシン、硫酸アストロマイシン、硫酸ネチルマイシン、硫酸イセパマイシン、硫酸アルベカシン、エリスロマイシン、キタサマイシン、アセチルキタサマイシン、リン酸オレアンドマイシン、ジョサマイシン、アセチルスピラマイシン、ミデカマイシン、酢酸ミデカマイシン、ロキタマイシン、ロキシスロマイシン、クラリスロマイシン、塩酸テトラサイクリン、塩酸オキシテトラサイクリン、メタリン酸テトラサイクリン、塩酸デメチルクロルテトラサイクリン、ロリテトラサイクリン、塩酸ドキシサイクリン、塩酸ミノサイクリン、クロラムフェニコール、コハク酸クロラムフェニコールナトリウム、パルミチン酸クロラムフェニコール、チアンフェニコール、塩酸アミノ酢酸チアンフェニコール、硫酸コリスチン、コリスチンメタンスルホン酸ナトリウム、硫酸ポリミキシンB、バシトラシン、塩酸バンコマイシン、塩酸リンコマイシン、クリンダマイシン、塩酸スペクチノマイシン、ホスホマイシンナトリウム、ホスホマイシンカルシウム等が挙げられる。
酵素剤の例としては、キモトリプシン、結晶トリプシン、ストレプトキナーゼ・ストレプトドルナーゼ、ヒアルロニダーゼ、ウロキナーゼ、ナサルプラーゼ、アルテプラーゼ、塩化リゾチーム、セミアルカリプロティナーゼ、セラペプターゼ、チソキナーゼ、デュテプラーゼ、バトロキソビン、プロナーゼ、プロメライン等が挙げられる。
抗酸化剤の例としては、トコフェロール、アスコルビン酸、尿酸等が挙げられる。
抗炎症剤の例としては、サリチル酸コリン、サザピリン、サリチル酸ナトリウム、アスピリン、ジフルニサル、フルフェナム酸、メフェナム酸、フロクタフェニン、トルフェナム酸、ジクロフェナクナトリム、トルメチンナトリウム、スリンダク、フェンブフェン、フェルビナクエチル、インドメタシン、インドメタシンファルネシル、アセメタシン、マレイン酸プログルメタシン、アンフェナクナトリウム、ナブメトン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、フルルビプロフェンアキセチル、ケトプロフェン、ナプロキセン、プロチジン酸、プラノプロフェン、フェノプロフェンカルシウム、チアプロフェン酸、オキサプロジン、ロキソプロフェンナトリウム、アルミノプロフェン、ザルトプロフェン、フェニルブタゾン、クロフェゾン、ケトフェニルブタゾン、ピロキシカム、テノキシカム、アンピロキシカム、塩酸チアラミド、塩酸チノリジン、塩酸ベンジダミン、エピリゾール、エルモファゾン等が挙げられる。
ステロイド剤の例としては、酢酸コルチゾン、ヒドロコルチゾン(リン酸エステル、酢酸塩)、酪酸ヒドロコルチゾン、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム、プレドニゾロン(アセテート、サクシネート、第三級ブチル酢酸エステル、リン酸エステル)、メチルプレドニゾロン(アセテート)、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド(酢酸トリアムシノロン)、デキサメタゾン(リン酸エステル、酢酸塩、リン酸ナトリウム塩、硫酸エステル)、パルミチン酸デキサメタゾン、ベタメタゾン(リン酸塩、二ナトリウム塩)、酢酸パラメタゾン、酢酸フルドロコルチゾン、酢酸ハロプレドン、プロピオン酸クロベタゾール、ハルシノニド、プロピオン酸ベクロメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、酢酸ベタメタゾン、酢酸コルチゾン等が挙げられる。
血管拡張剤の例としては、テオフィリン、ジプロフィリン、プロキシフィリン、アミノフィリン、コリンテオフィリン、プロスタグランジン、プロスタグランジン誘導体、アルプロスタジルアルファデクス、アルプロスタジル、リマプロストアルファデクス、パパベリン、シクランデラート、シンナリジン、フマル酸ベンシクラン、マレイン酸シネパジド、塩酸ジラゼプ、トラピジル、塩酸ジフェニドール、ニコチン酸、イノシトールヘキサニコチネート、クエン酸ニカメタート、酒石酸ニコチニックアルコール、ニコチン酸トコフェロール、ヘプロニカート、塩酸イソクスプリン、硫酸バメタン、塩酸トラリゾン、メシル酸ジヒドロエルゴトキシン、酒石酸イフェンプロジル、塩酸モキシシリト、ニセルゴリン、塩酸ニカルジピン、ニルバジピン、ニフェジピン、塩酸ベニジピン、塩酸ジルチアゼム、ニソルジピン、ニトレンジピン、塩酸マニジピン、塩酸バルニジピン、塩酸エホニジピン、塩酸ベラパミル、塩酸トリメタジジン、カプトプリル、マレイン酸エナラプリル、アラセプリル、塩酸デラプリル、シラザプリル、リシノプリル、塩酸ベナゼプリル、塩酸ヒドララジン、塩酸トドララジン、ブドララジン、カドララジン、インダパミド、塩酸カルボクロメン、エフロキサート、塩酸エタフェノン塩酸オキシフェドリン、ニコランジル、亜硝酸アミル、硝酸イソソルビド等が挙げられる。
アンジオテンシン変換酵素阻害剤の例としては、アラセプリル、塩酸イミダプリル、塩酸テモカプリル、塩酸デラプリル、塩酸ベナゼプリル、カプトプリル、シラザプリル、マレイン酸エナラプリル、リシノプリル等が挙げられる。
平滑筋細胞の増殖・遊走阻害剤の例としては、ヘパリンナトリウム、ダルテパリンナトリウム(低分子ヘパリン)、ヘパリンカルシウム、デキストラン硫酸等が挙げられる。
血小板凝集阻害剤の例としては、塩酸チクロピジン、シロスタゾール、イコサペント酸エチル、ベラプロストナトリウム、塩酸サルプグレラート、バトロキソビン、ジピリダモール等が挙げられる。
抗凝固剤の例としては、ヘパリンナトリウム、ダルテパリンナトリウム(低分子ヘパリン)、ヘパリンカルシウム、デキストラン硫酸、ワルファリンカリウム、アルガトロバン等が挙げられる。
ケミカルメディエーター遊離抑制剤の例としては、トラニラスト、フマル酸ケトフェチン、塩酸アゼラスチン、オキサトミド、アンレキサノクス、レピリナスト等が挙げられる。
免疫抑制剤の例としては、シクロスポリン等が挙げられる。
抗ウイルス剤の例としては、アシクロビル、ガンシクロビル、ジダノシン、ジドブジン、ソリブジン、ビダラビン等が挙げられる。
好ましい「リポソーム」としては、体内を安定に循環するようなリポソームであれば、どのようなものでもいいが、1モルのリン脂質(水素添加されていてもいなくてもよいが、水素添加されていることがより好ましい)に対して、0.5〜1モルの割合でコレステロールを含むリポソーム、脂質としてスフィンゴミエリンにより構成されるリポソーム、これら脂質に対して5〜15モル%の割合でカチオン化脂質を含んで構成されるリポソーム、これらのリポソームの総脂質に対して0.1〜20モル%程度の親水性高分子誘導体を含んでいるリポソーム等が例示される。しかし、これらに限定されるものではない。
より具体的には、後述する実施例で用いられたリポソームのほか、以下のリポソーム(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)および(G)が挙げられる。
リポソーム(A)は、薬物または生理活性物質を担持させたリポソームであって、その膜構成成分として、(1)該リポソームの表面にのみポリエチレングリコール(PEG)結合リン脂質が結合し、(2)該ポリエチレングリコール結合リン脂質のリン脂質部分がリポソーム膜を構成する脂質層に固定してなり、(3)ポリエチレングリコール部分はリポソーム表面から外方向に伸びてなるリポソームである。PEG結合リン脂質分子中のPEG鎖長は、平均重合度で5〜1000モルの範囲が望ましく、より好ましくは40〜200モルである。
リポソーム(A)においては、リポソーム形成脂質とPEG結合リン脂質の混合比は、主成分であるリン脂質に対して、モル比で0.1〜50モル%、好ましくは0.5〜20モル%、より好ましくは1〜5モル%であるのが好ましい態様の一つである。
リン脂質の反応活性な官能基とPEGを共有結合させるには、塩化シアヌルを用いる方法、カルボジイミドを用いる方法、酸無水物を用いる方法、グルタルアミデヒドを用いる方法等がある。ホスファチジルエタノールアミンのアミノ基とPEGを結合するには、塩化シアヌル(2,4,6−トリクロロ−s−トリアジン)を用いる方法が好ましく利用される。例えば、モノメトキシポリエチレングリコールと塩化シアヌルを公知の反応操作で結合することにより、2−O−メトキシポリエチレングリコール−4,6−ジクロロ−s−トリアジン(活性化PEG1)または2,4−ビス(O−メトキシポリエチレングリコール)−6−クロロ−s−トリアジン(活性化PEG2)が得られる(Y,Inada,et al.,Chem.Lett.,7,773−776(1980))。
これらとアミノ基を脱塩酸縮合反応により結合させることで、ホスファチジルエタノールアミンの極性頭部にPEGを共有結合させたリン脂質が得られる。ここで、活性化PEG1を用いた場合は一分子のリン脂質中に1本のPEG鎖を、活性化PEG2を用いた場合は2本のPEG鎖を含有することになる。また、モノメトキシPEGと無水コハク酸を反応させてPEG末端にカルボキシル基を導入し、これとホスファチジルエタノールアミンをカルボジイミド存在下で反応させることにより、アミド結合を介したPEG結合リン脂質が得られる。
PEG結合リン脂質を脂質層に含有するリポソームを製造するには、PEG結合リン脂質をリポソーム形成脂質とあらかじめ均一に混合して、得られた混合脂質を用いて常法によりリポソームを形成させればよい。
リポソーム(A)については、特公平7−20857号公報に詳細に記載されている。
リポソーム(B)は、治療学的有効量で静脈内投与でき、かつ、4時間未満の半減期で血流中に遊離形態でクリアし得る治療用化合物の有効活性の期間を少なくとも24時間に延長するためのリポソーム組成物であって、(1)小嚢(小胞)形成リポイドおよび親水性ポリマーで誘導された1〜20モル%の小嚢形成リポイドからなり、そして(2)約0.1〜約0.4ミクロンの寸法範囲の選択された平均粒子径を有するリポソームおよび、(3)かかる治療学的に有効量の少なくとも3倍である量のリポソーム包含化合物を含有する組成物の投与で静脈内投与するためのリポソーム包含形態の化合物からなるリポソーム組成物である。
親水性ポリマーは約1000〜約5000ダルトンの分子量を有するポリエチレングリコールであるものが好ましい態様の一つであり、親水性ポリマーはフォスフォリポイドに誘導するものが好ましい態様の一つである。親水性ポリマーはポリ乳酸およびポリグリシル酸からなる群から選択されるのが好ましい態様の一つである。
リポソーム(B)において、治療用化合物の有効血中濃度はピコグラム−ナノグラム/mlの範囲であり、リポソーム組成物が該組成物の静脈内投与の後少なくとも5日の期間治療有効投与量で治療用化合物を放出するのが好ましい態様の一つである。
治療用化合物はペプチドホルモン(例えば、バソプレッシン)、スーパーオキサイドジスムターゼ、グルコセレプロシターゼ、アスパラギナーゼ、アデノシンデアミナーゼ、インターフェロン(アルファ、ベータ、ガンマ)、インターロイキン(1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20,21)腫瘍壊死因子(アルファ、ベータ)、コロニー刺激因子(M(マクロファージ)−CSF、G(顆粒球)−CSF、GM(顆粒球、マクロファージ)−CSF)、TPAプロウロキナーゼ、TPAウロキナーゼ、HIV−1ワクチン、B型肝炎ワクチン、マラリアワクチン、エリスロポイエチン(EPO)、NESP(改変EPO)、第VIII因子、骨成長因子、繊維芽細胞成長因子、インスリン様成長因子、神経成長因子、血小板―誘導成長因子、ソマトメジンCからなる群から選択される少なくとも一つであるのが好ましい態様の一つである。
リポソーム(B)については、特表平5−505173号公報に詳細に記載されている。
リポソーム(C)は、充実性腫瘍中に、血流を介して腫瘍結像剤または抗腫瘍剤を局在化するために使用されるリポソーム組成物であって、(1)小胞形成脂質と、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、およびポリ乳酸/ポリグリコール酸コポリマーから選択される親水性ポリマーで誘導体化された両親媒性小胞形成脂質1〜20モル%とから成るリポソームであって、(2)該腫瘍中への溢出に充分なサイズを有するリポソーム、および(3)リポソームに取り込まれた形態の腫瘍結像剤または抗腫瘍剤を含む、リポソーム組成物である。
リポソーム(C)においては、親水性ポリマーは約1,000〜約5,000ダルトンの分子量を有するポリエチレングリコールであり、抗腫瘍剤の少なくとも約80%がリポソームに取り込まれた形態であることが好ましい態様の一つである。また、抗腫瘍剤がアントラサイクリン抗生物質であり、アントラサイクリンはドキソルビシン、エピルビシン、およびダウノルビシンならびに薬理学的に許容可能なその塩および酸からなる群から選択されることができる。リポソーム(C)に取り込まれた前記抗腫瘍剤の濃度は50μg(薬剤)/μmol(リポソーム脂質)を超えることが好ましい。リポソーム(C)は腫瘍診断および/または治療に使用することができる。
リポソーム(C)については、特許第2889549号公報に詳細に記載されている。
リポソーム(D)は、治療および/または診断の目的で使用されるリポソームであって、(1)2,2,2−トリフルオロエタンスルホニル−PEG誘導体をリポソームと反応させることにより得られうる外部表面上に共有結合的に結合したPEG部分を有するリポソーム類である。リポソーム(D)は、2,2,2−トリフルオロエタンスルホニル−モノメトキシ−ポリエチレングリコールをリポソームと反応させることにより得られうる外部表面上に共有結合的に結合したPEG部分を有するリポソームであるのが好ましい態様の一つであり、脂質二重層が7:3〜5:5のモル比のジオレイルホスフアチジルコリン(DOPC)対ジオレイルホスフアチジルエタノールアミン(DOPE)からなるのがより好ましい態様の一つである。リポソーム(D)は、脂質二重層を崩壊させることなくリポソーム類の外部表面上にポリエチレングリコール(PEG)部分を共有結合的に結合させることができ、その結果、リポソームの生体内循環寿命を延ばすことが可能である。
リポソーム(D)については、特許第2948246号公報に詳細に記載されている。
リポソーム(E)は、薬物を担持するリポソームであって、その膜構成成分が、(1)生理的pH範囲で陽電荷を帯びる塩基性化合物、(2)親水性高分子の脂質誘導体、および(3)リポソームを構成する脂質からなり、これらの構成比が、(3)に対して(1)が1〜20mol%、好ましくは5〜15mol%であり、かつ、(1)と(3)の和に対して(2)が0.2〜5mol%であるリポソームである。
前記生理的pH範囲で陽電荷を帯びる塩基性化合物が、アミジノ基を有する塩基性化合物、アミノ基を2個以上有する塩基性化合物、ピペリジン環を有する塩基性化合物、4級アミンを有する塩基性化合物であることが好ましく、更には、下記式1〜4のいずれかであるのが好ましい態様の一つである。
Figure 0004651276
(式1中、Aは芳香環を表す。R1およびR2は炭素数10〜25のアルキル基またはアルケニル基を表し、R1およびR2は同一であっても異なっていてもよい。X1およびX2は−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CONH−または−NHCO−を表し、X1およびX2は同一であっても異なっていてもよい。mは0または1、nは0または1〜6の整数を表す。)
Figure 0004651276
(式2中、R3は水素または炭素数1〜8のアルキル基もしくはアルニケル基を表す。R4は水素または炭素数1〜8のアルキル基もしくはアルニケル基を表す。R5およびR6は水素または炭素数1〜25のアルキル基もしくはアルニケル基を表し(ただし、R5およびR6が共に水素である場合を除く。)、R5およびR6は同一であっても異なっていてもよい。X3は−O−または−S−を表す。pは0または1、qは0〜10の整数を表す。)
Figure 0004651276
(式3中、R7およびR8は炭素数1〜8のアルキル基またはアルニケル基を表し、R7およびR8は同一であっても異なっていてもよい。R9は水素または炭素数1〜8のアルキル基もしくはアルニケル基を表す。R10およびR11は水素または炭素数1〜25のアルキル基もしくはアルニケル基を表し(ただし、R10およびR11が共に水素である場合を除く。)、R10およびR11は同一であっても異なっていてもよい。X4は−O−または−S−を表す。rは0または1、sは0〜10の整数を表す。)
Figure 0004651276
なお、式1の化合物は国際公開第97/42166号パンフレットに、式2および3の化合物は特開平9−263579号公報に、式4はChem.Papers,39(1),125−134(1985)に記載の化合物である。
リポソーム(E)においては、前記親水性高分子の脂質誘導体がポリエチレングリコールの脂質誘導体であるのが好ましく、該ポリエチレングリコールの脂質誘導体がポリエチレングリコール鎖とジアシルグリセロールを1分子内に含む化合物であるのがより好ましい態様の一つである。
前記親水性高分子の分子量が1000〜7000であるのが好ましい態様の一つである。
リポソーム(E)は、その主要粒度範囲が90〜200nmであることが好ましい態様の一つである。
リポソーム(E)に担持されている薬物が、腎疾患の診断および/または治療を目的とする薬物であるか、病変部の組織および/または臓器にプロテオグリカンの過剰産生を伴う疾患の診断および/または治療を目的とする薬物であるかが好ましい態様の一つである。
前記腎疾患の診断および/または治療を目的とする薬物が、副腎皮質ステロイドおよび/またはその誘導体であるのが好ましい態様の一つである。
リポソーム(E)は、炎症腎治療薬として使用するのが好ましく、これらのリポソームを使用して、炎症腎の治療用薬剤を製造するのが好ましい態様の一つである。
リポソーム(E)については、国際公開第00/25748号パンフレットに詳細に記載されている。
リポソーム(F)は、治療および/または診断を目的とする薬物を担持するリポソームであって、膜構成成分として、(1)塩基性化合物、(2)リン酸モノエステル誘導体およびカルボキシル基またはその塩を有する化合物から選択される酸性化合物、ならびに、(3)前記(1)および(2)以外のリポソーム膜構成成分からなるリポソームである。
中でも、炎症部位や腫瘍部位等の病巣部位でpHが5〜7の環境下において、能率的に集積するリポソームであるのが好ましい態様の一つである。
塩基性化合物のモル比が全リポソーム膜構成成分中1〜30mol%であるのが好ましい態様の一つである。
リン酸モノエステル誘導体またはカルボン酸誘導体である酸性化合物のモル比が全リポソーム膜構成成分中0.5〜30mol%であるのが好ましい態様の一つである。
前記塩基性化合物が、上記式1、2および4ならびに下記式5のいずれかに示される塩基性化合物であるのが好ましい態様の一つである。
Figure 0004651276
前記塩基性化合物が、第四級アミンまたは第三級アミンを有する塩基性化合物であるのが好ましい態様の一つである。
前記塩基性化合物が、下記式6および7から選ばれるのが好ましい態様の一つである。
Figure 0004651276
(式6中、R12およびR13は炭素数1〜8のアルキル基またはアルケニル基を表し、R12およびR13は同一であっても異なっていてもよい。X5およびX6は−O−または−OCO−を表し、X5およびX6は同一であっても異なっていてもよい。R14およびR15は炭素数10〜20のアルキル基またはアルケニル基を表し、R14およびR15は同一であっても異なっていてもよい。tは1〜6の整数を表す。)
Figure 0004651276
(式7中、R12、R13、R14、R15、X5、X6およびtは、それぞれ式6中におけるのと同一の内容を表す。R16は、炭素数1〜8のアルキル基またはアルケニル基を表し、R12、R13およびR16は同一であっても異なっていてもよい。)
前記リン酸モノエステル誘導体が、リン酸プレドニゾロン、リン酸リボフラビン、ホスファチジン酸から選ばれるのが好ましい態様の一つである。
前記カルボキシル基またはその塩を有する化合物である酸性化合物が、脂肪酸であるのが好ましい態様の一つである。
前記脂肪酸が、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸であるのが好ましい態様の一つである。
前記他のリポソーム膜構成成分が、リン脂質もしくはその誘導体、および/または、ステロールもしくはその誘導体であるのが好ましい態様の一つである。
前記治療および/または診断を目的とする薬物が、抗癌剤、抗生物質、酵素剤、酵素阻害剤、抗酸化剤、脂質取り込み阻害剤、ホルモン剤、抗炎症剤、ステロイド剤、血管拡張剤、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、アンジオテンシン受容体拮抗剤、平滑筋細胞の増殖・遊走阻害剤、血小板凝集阻害剤,抗凝固剤、ケミカルメディエーターの遊離抑制剤、血管内皮細胞の増殖または抑制剤、アルドース還元酵素阻害剤、メサンギウム細胞増殖阻害剤、リポキシゲナーゼ阻害剤、免疫抑制剤、免疫賦活剤、抗ウイルス剤、メイラード反応抑制剤,アミロイドーシス阻害剤、NOS阻害剤、AGEs阻害剤またはラジカルスカベンチャーであるのが好ましい態様の一つである。
前記治療および/または診断を目的とする薬物が、核酸、ポリヌクレオチド、遺伝子およびその類縁体であるのが好ましい態様の一つである。
前記治療および/または診断を目的とする薬物が、グリコサミノグリカンおよびその誘導体であるのが好ましい態様の一つである。
前記治療および/または診断を目的とする薬物が、オリゴおよび/または多糖、ならびに、それらの誘導体であるのが好ましい態様の一つである。
前記治療および/または診断を目的とする薬物が、蛋白質またはペプチドであるのが好ましい態様の一つである。
前記治療および/または診断を目的とする薬物が、X線造影剤、放射性同位元素標識核医学診断薬、核磁気共鳴診断用診断薬等の各種体内診断薬であるのが好ましい態様の一つである。
リポソーム(F)については、国際公開第01/00174号パンフレットに詳細に記載されている。
リポソーム(G)は、リポソームを構成する膜剤がリン脂質と炭素数10〜20の高級飽和脂肪酸の少なくとも1種とを含有し、該高級飽和脂肪酸の含有量がリポソーム構成成分中におけるモル比で30〜50mol%であるリポソーム製剤である。
前記リン脂質が飽和リン脂質或いは水素添加リン脂質であるのが好ましい態様の一つである。
前記膜剤として更にコレステロールを含むのが好ましい態様の一つである。
上記リポソーム表面に、更に、親水性高分子鎖部と疎水性部とを有する凝集抑制剤が結合され、該凝集抑制剤は疎水性部がリポソーム中の脂質層に固定されるとともに親水性高分子鎖部はリポソーム表面から外方向に伸びてなるものであるのが好ましい態様の一つである。
上記リポソームに担持された物質が生理活性物質であるのが好ましい態様の一つである。
前記生理活性物質がヘモグロビンであるのが好ましい態様の一つである。
リポソーム(G)については、国際公開第03/015753号パンフレットに詳細に記載されている。
本発明において、リポソームに抗体が「結合する」とは、抗体が抗原を認識して結合することおよび物理的に吸着することを含む。抗原はリポソームであってもよいし、生体に投与されたリポソームに結合した蛋白質等であってもよい。また、抗体の可変領域ではなく、抗体の定常領域がリポソームに結合していてもよい。しかしながら、抗体がリポソームを抗原として認識して結合することが好ましい。
リポソームが結合する抗体は、リポソームの血中クリアランスを促進する抗体である。ここで、「血中クリアランス」とは、血液中から、薬物、リポソーム等が消失する速度をいう。血中から消失したリポソームは肝臓から体外へ排泄されるため、本発明に用いられる抗体は、最終的にはリポソームを速やかに体外へ排泄する能力を有する。ここで、「体外へ排泄する」とは、血液中の薬物、リポソーム等が肝臓、腎臓等の排泄器官を通して糞中や尿中へ排泄することをいう。
即ち、本発明は、リポソームに結合する抗体を有効成分として含有する、血中に存在しているリポソームの体外排泄剤も提供する。
また、本発明は、上述した抗体、好ましくは後述する本発明の抗体を含有する医薬組成物も提供する。本発明の医薬組成物の上述した抗体以外の成分は、特に限定されず、例えば、後述する「抗体を有効成分として含有する薬剤」の「製剤化」に使用される医薬的に許容される担体や添加物を含有することができる。
本発明に用いられる抗体は、上記性質を有するものであれば特に限定されないが、哺乳動物にリポソームを単回投与することにより、前記哺乳動物に産生される抗体であって、前記哺乳動物とは別の個体の哺乳動物に投与された場合に、前記別の個体の哺乳動物の血中に存在している前記リポソームが体外へ排泄されることを促進する能力を有する抗体(以下「本発明の抗体」という。)であるのが好ましい態様の一つである。
図1は、リポソームを哺乳動物に投与してから血清を採取するまでの期間と、その血清を別の個体の哺乳動物に投与した場合におけるリポソームの血中濃度の経時的変化との関係を表すグラフである。
図1に示されているように、リポソーム投与後4日および5日の哺乳動物から採取した血清を、別の個体の哺乳動物に投与すると、リポソームが1時間以内に血中からほぼ消失することが認められる。即ち、本発明の抗体を含む血清を動物に投与すると、リポソームが血中から速やかに消失する。これに対して、そのような血清を投与されていない哺乳動物では、一定時間経過後も血中にリポソームの大部分が残存する。
このように、ポリエチレングリコール等の親水性高分子により修飾されており、前記抗体を投与しない場合における血中半減期が10時間以上である長期滞留型のリポソームを、本発明の抗体の投与により、血中から速やかに排泄させることができる。本発明の抗体は、例えば、ポリエチレングリコール等の親水性高分子で表面修飾されているリポソームを哺乳動物に単回投与したときに得られることが分かっている。
本発明に用いられる抗体は、所望の薬理効果を有するものであれば、その由来、種類(モノクローナル、ポリクローナル)および形状を問わない。例えば、所望の薬理効果を有するものであれば、IgG、IgM、IgA、IgE等のイムノグロブリンサブクラスのいずれであってもよいし、またその混合物であってもよい。
そのような抗体は、公知の手段を用いて得ることができるが、以下のようにして製造されるのが好ましい態様の一つである。
即ち、哺乳動物にリポソームを単回投与する工程と、投与後一定期間経過した後、前記哺乳動物から血清を採取する工程と、前記血清を前記リポソームとインキュベーションする工程と、インキュベーション後、前記リポソームに結合した蛋白質を精製して前記抗体を得る工程とを具備する、抗体の製造方法により得られるのが好ましい。
抗体は、このような方法により、ポリクローナル(抗血清)抗体またはモノクローナル抗体として得ることができるが、哺乳動物由来のモノクローナル抗体であるのが好ましい。哺乳動物由来のモノクローナル抗体は、ハイブリドーマに産生されるもの、および遺伝子工学的手法により抗体遺伝子を含む発現ベクターで形質転換した宿主に産生されるものを含む。
モノクローナル抗体産生ハイブリドーマは、以下のようにして作製することができる。即ち、リポソームを感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られた免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナルな抗体産生細胞をスクリーニングすることによって作製することができる。
抗体取得の感作抗原として使用されるリポソームを、後述の実施例に記載された方法によって得る。得られたリポソームを感作抗原として用いる。
感作抗原で免疫される哺乳動物としては、特に限定されるものではないが、細胞融合に使用する親細胞との適合性を考慮して選択するのが好ましく、一般的には、げっ歯類の動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター)、ウサギ、サル等が使用される。
感作抗原を動物に免疫するには、公知の方法にしたがって行われる。例えば、一般的方法として、感作抗原を哺乳動物の腹腔内または皮下に注射することにより行われる。具体的には、感作抗原をPBS(Phosphate−Buffered Saline)、生理食塩水等で適当量に希釈しまたは懸濁させたものに、所望により通常のアジュバント、例えば、フロイント完全アジュバントを適量混合し、乳化後、哺乳動物に4〜21日毎に数回投与する。また、感作抗原免疫時に適当な担体を使用することもできる。
このように免疫し、血清中に所望の抗体レベルが上昇するのを確認した後に、哺乳動物から免疫細胞を採取し、細胞融合に付されるが、好ましい免疫細胞としては、特に脾細胞が挙げられる。
前記免疫細胞と融合される他方の親細胞として、哺乳動物のミエローマ細胞を用いる。このミエローマ細胞は、公知の種々の細胞株、例えば、P3(P3x63Ag8.653)(J.Immnol.(1979)123,1548−1550)、P3x63Ag8U.1(Current Topics inMicrobiology and Immunology(1978)81,1−7)、NS−1(Kohler.G.and Milstein,C.Eur.J.Immunol.(1976)6,511−519)、MPC−11(Margulies.D.H.et al.,Cell(1976)8,405−415)、SP2/0(Shulman,M.et al.,Nature(1978)276,269−270)、F0(de St.Groth,S.F.et al.,J.Immunol.Methods(1980)35,1−21)、S194(Trowbridge,I.S.J.Exp.Med.(1978)148,313−323)、R210(Galfre,G.et al.,Nature(1979)277,131−133)等が好適に使用される。
前記免疫細胞とミエローマ細胞との細胞融合は、基本的には公知の方法、例えば、ミルステインらの方法(Kohler.G.and Milstein,C.、Methods Enzymol.(1981)73,3−46)等に準じて行うことができる。
より具体的には、前記細胞融合は、例えば、細胞融合促進剤の存在下に通常の栄養培養液中で実施される。融合促進剤としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、センダイウィルス(HVJ)等が使用され、更に所望により融合効率を高めるためにジメチルスルホキシド等の補助剤を添加使用することもできる。
免疫細胞とミエローマ細胞との使用割合は任意に設定することができる。例えば、ミエローマ細胞に対して免疫細胞を1〜10倍とするのが好ましい。前記細胞融合に用いる培養液としては、例えば、前記ミエローマ細胞株の増殖に好適なRPMI1640培養液、MEM培養液、その他、この種の細胞培養に用いられる通常の培養液が使用可能であり、更に、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。
細胞融合は、前記免疫細胞とミエローマ細胞との所定量を前記培養液中でよく混合し、予め37℃程度に加温したPEG溶液(例えば、平均分子量1000〜6000程度)を通常30〜60%(w/v)の濃度で添加し、混合することによって目的とする融合細胞(ハイブリドーマ)を形成する。続いて、適当な培養液を逐次添加し、遠心して上清を除去する操作を繰り返すことによりハイブリドーマの生育に好ましくない細胞融合剤等を除去する。
このようにして得られたハイブリドーマは、通常の選択培養液、例えば、HAT培養液(ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含む培養液)で培養することにより選択される。上記HAT培養液での培養は、目的とするハイブリドーマ以外の細胞(非融合細胞)が死滅するのに十分な時間(通常、数日から数週間)継続する。ついで、通常の限界希釈法を実施し、目的とする抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングおよび単一クローニングを行う。
また、ヒト以外の動物に抗原を免疫して上記ハイブリドーマを得るほかに、ヒトリンパ球をin vitroでリポソームに感作し、感作リンパ球をヒト由来の永久分裂能を有するミエローマ細胞と融合させ、リポソームへの結合活性を有する所望のヒト抗体を得ることもできる(特公平1−59878号公報参照。)。更に、ヒト抗体遺伝子のレパートリーを有するトランスジェニック動物に抗原となるリポソームを投与して抗体産生細胞を取得し、これを不死化させた細胞からリポソームに対するヒト抗体を取得してもよい(国際公開第94/25585号パンフレット、国際公開第93/12227号パンフレット、国際公開第92/03918号パンフレット、国際公開第94/02602号パンフレット参照。)。
このようにして作製されるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、通常の培養液中で継代培養することが可能であり、また、液体窒素中で長期保存することが可能である。
該ハイブリドーマからモノクローナル抗体を取得するには、該ハイブリドーマを通常の方法にしたがい培養し、その培養上清として得る方法、あるいはハイブリドーマをこれと適合性がある哺乳動物に投与して増殖させ、その腹水として得る方法等が採用される。前者の方法は、高純度の抗体を得るのに適しており、一方、後者の方法は、抗体の大量生産に適している。
本発明では、モノクローナル抗体として、抗体遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し、遺伝子組換え技術を用いて産生させた組換え型のものを用いることができる(例えば、Vandamme,A.M.et al.,Eur.J.Biochem.(1990)192,767−775,1990参照)。
具体的には、抗体を産生するハイブリドーマから、抗体の可変(V)領域をコードするmRNAを単離する。mRNAの単離は、公知の方法、例えば、グアニジン超遠心法(Chirgwin,J.M.et al.,Biochemistry(1979)18,5294−5299)、AGPC法(Chomczynski,P.et al.,Anal.Biochem.(1987)162,156−159)等により行って全RNAを調製し、mRNA Purification Kit(Pharmacia製)等を使用して目的のmRNAを調製する。また、QuickPrep mRNA Purification Kit(Pharmacia製)を用いることによりmRNAを直接調製することができる。
得られたmRNAから逆転写酵素を用いて抗体V領域のcDNAを合成する。cDNAの合成は、AMV Reverse Transcriptase First−strand cDNA Synthesis Kit(生化学工業社製)等を用いて行う。また、cDNAの合成および増幅を行うには、5′−AmpliFINDER RACE Kit(Clontech製)およびPCRを用いた5′−RACE法(Frohman,M.A.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1988)85,8998−9002、Belyavsky,A.et al.,Nucleic AcidsRes.(1989)17,2919−2932)等を使用することができる。
得られたPCR産物から目的とするDNA断片を精製し、ベクターDNAと連結する。更に、これより組換えベクターを作製し、大腸菌等に導入してコロニーを選択して所望の組換えベクターを調製する。そして、目的とするDNAの塩基配列を公知の方法、例えば、ジデオキシヌクレオチドチェインターミネーション法により確認する。
目的とする抗体のV領域をコードするDNAを得たのち、これを、所望の抗体定常領域(C領域)をコードするDNAを含有する発現ベクターへ組み込む。
本発明で使用される抗体を製造するには、抗体遺伝子を発現制御領域、例えば、エンハンサー、プロモーターの制御のもとで発現するよう発現ベクターに組み込む。つぎに、この発現ベクターにより、宿主細胞を形質転換し、抗体を発現させる。
抗体遺伝子の発現は、抗体重鎖(H鎖)または軽鎖(L鎖)をコードするDNAを別々に発現ベクターに組み込んで宿主細胞を同時形質転換させてもよいし、あるいはH鎖およびL鎖をコードするDNAを単一の発現ベクターに組み込んで宿主細胞を形質転換させてもよい(国際公開第94/11523号パンフレット参照。)。
また、組換え型抗体の産生には上記宿主細胞だけではなく、トランスジェニック動物を使用することができる。例えば、抗体遺伝子を、乳汁中に固有に産生される蛋白質(ヤギβカゼイン等)をコードする遺伝子に挿入して融合遺伝子として調製する。抗体遺伝子が挿入された融合遺伝子を含むDNA断片をヤギの胚へ注入し、この胚を雌のヤギへ導入する。胚を受容したヤギから生まれるトランスジェニックヤギまたはその子孫が産生する乳汁から所望の抗体を得る。また、トランスジェニックヤギから産生される所望の抗体を含む乳汁量を増加させるために、適宜ホルモンをトランスジェニックヤギに使用してもよい(Ebert,K.M.et.al.,Bio/Technology(1994)12,699−702)。
本発明では、上記抗体のほかに、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ抗体、ヒト型化(Humanized)抗体を使用できる。これらの改変抗体は、以下の方法を用いて製造することができる。
本発明に有用なキメラ抗体は、前記のようにして得た抗体V領域をコードするDNAをヒト抗体C領域をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより得ることができる。
ヒト型化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体とも称され、これは、ヒト以外の哺乳動物、例えば、マウス抗体の相補性決定領域(CDR;complementarity determining region)をヒト抗体の相補性決定領域へ移植したものであり、その一般的な遺伝子組換え手法も知られている(欧州特許出願公開第125023号明細書、国際公開第96/02576号パンフレット参照。)。
具体的には、マウス抗体のCDRとヒト抗体のフレームワーク領域(framework region;FR)とを連結するように設計したDNA配列を、CDRおよびFR両方の末端領域にオーバーラップする部分を有するように作製した数個のオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いてPCR法により増幅する。得られたDNAをヒト抗体C領域をコードするDNAと連結し、次いで発現ベクターに組み込んで、これを宿主に導入し産生させることによりヒト型化抗体を得ることができる(欧州特許第239400号明細書、国際公開第96/02576号パンフレット参照。)。
CDRを介して連結されるヒト抗体のフレームワーク領域は、相補性決定領域が良好な抗原結合部位を形成するものが選択される。必要に応じ、再構成ヒト抗体の相補性決定領域が適切な抗原結合部位を形成するように、抗体の可変領域におけるフレームワーク領域のアミノ酸を置換してもよい(Sato,K.etal.,Cancer Res.(1993)53,851−856)。
また、CDRとFRを含む可変領域や定常領域の活性を調節するために、それらの部位の糖鎖付加配列を変化させることができる。即ち、人工的に糖鎖を付加したり、糖鎖を持たないようにするための調節が可能である。
キメラ抗体およびヒト型化抗体のC領域には、ヒト抗体のものが使用され、例えば、H鎖では、Cγ1、Cγ2、Cγ3、Cγ4を、L鎖ではCκ、Cλを使用することができる。また、抗体またはその産生の安定性を改善するために、ヒト抗体C領域を修飾してもよい。
キメラ抗体は、ヒト以外の哺乳動物由来抗体の可変領域とヒト抗体由来の定常領域とからなる。一方、ヒト型化抗体は、ヒト以外の哺乳動物由来抗体の相補性決定領域と、ヒト抗体由来のフレームワーク領域およびC領域とからなる。ヒト型化抗体はヒト体内における抗原性が低下されているため、本発明の薬剤の有効成分として有用である。
本発明で使用される抗体は、所期の目的を達成するかぎり、抗体の断片またはその修飾物であってよい。例えば、抗体の断片としては、Fab、F(ab′)2、Fv、またはH鎖若しくはL鎖のFvを適当なリンカーで連結させたシングルチェインFv(scFv)が挙げられる。具体的には、抗体を酵素、例えば、パパイン、ペプシンで処理し抗体断片を生成させるか、または、これら抗体断片をコードする遺伝子を構築し、これを発現ベクターに導入した後、適当な宿主細胞で発現させる(例えば、Co,M.S.et al.,J.Immunol.(1994)152,2968−2976、Better,M.& Horwitz,A.H.Methods in Enzymology(1989)178,476−496,Academic Press,Inc.、Plueckthun,A.& Skerra,A.Methods in Enzymology(1989)178,476−496,Academic Press,Inc.、Lamoyi,E.,Methods in Enzymology(1989)121,652−663、Rousseaux,J.et al.,Methods in Enzymology(1989)121,663−669、Bird,R.E.et al.,TIBTECH(1991)9,132−137参照)。
scFvは、抗体のH鎖V領域とL鎖V領域とを連結することにより得られる。このscFvにおいて、H鎖V領域とL鎖V領域は、リンカー、好ましくはペプチドリンカーを介して連結される(Huston,J.S.et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.(1988)85,5879−5883)。scFvにおけるH鎖V領域およびL鎖V領域は、本明細書に抗体として記載されたもののいずれの由来であってもよい。V領域を連結するペプチドリンカーとしては、例えば、アミノ酸12〜19残基からなる任意の一本鎖ペプチドが用いられる。
scFvをコードするDNAは、前記抗体のH鎖またはH鎖V領域をコードするDNA、およびL鎖またはL鎖V領域をコードするDNAのうち、それらの配列のうちの全部または所望のアミノ酸配列をコードするDNA部分を鋳型とし、その両端を規定するプライマー対を用いてPCR法により増幅し、次いで、更にペプチドリンカー部分をコードするDNA、およびその両端が各々H鎖、L鎖と連結されるように規定するプライマー対を組み合せて増幅することにより得られる。
また、一旦scFvをコードするDNAが作製されると、それらを含有する発現ベクター、および該発現ベクターにより形質転換された宿主を常法に従って得ることができ、また、その宿主を用いることにより、常法に従ってscFvを得ることができる。
これら抗体の断片は、前記と同様にしてその遺伝子を取得し発現させ、宿主により産生させることができる。本発明における「抗体」にはこれらの抗体の断片も包含される。
抗体の修飾物として、ポリエチレングリコール(PEG)等の各種分子と結合した抗体を使用することもできる。本発明における「抗体」にはこれらの抗体修飾物も包含される。このような抗体修飾物は、得られた抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。なお、抗体の修飾方法はこの分野においてすでに確立されている。
前記のように構築した抗体遺伝子は、公知の方法により発現させ、取得することができる。哺乳類細胞の場合、常用される有用なプロモーター、発現させる抗体遺伝子、その3′側下流にポリAシグナルを機能的に結合させて発現させることができる。例えば、プロモーター/エンハンサーとしては、ヒトサイトメガロウィルス前期プロモーター/エンハンサー(human cytomegalovirus immediate early promoter/enhancer)を挙げることができる。
また、その他に本発明で使用される抗体発現に使用できるプロモーター/エンハンサーとして、レトロウィルス、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、シミアンウィルス40(SV 40)等のウィルスプロモーター/エンハンサー、あるいはヒトエロンゲーションファクター1α(HEF1α)等の哺乳類細胞由来のプロモーター/エンハンサー等が挙げられる。
SV 40プロモーター/エンハンサーを使用する場合はMulliganらの方法(Nature(1979)277,108)により、また、HEF1αプロモーター/エンハンサーを使用する場合はMizushimaらの方法(Nucleic Acids Res.(1990)18,5322)により、容易に遺伝子発現を行うことができる。
大腸菌の場合、常用される有用なプロモーター、抗体分泌のためのシグナル配列および発現させる抗体遺伝子を機能的に結合させて該遺伝子を発現させることができる。プロモーターとしては、例えば、laczプロモーター、araBプロモーターを挙げることができる。laczプロモーターを使用する場合はWardらの方法(Nature(1098)341,544−546;FASEB J.(1992)6,2422−2427)により、あるいはaraBプロモーターを使用する場合はBetterらの方法(Science(1988)240,1041−1043)により発現することができる。
抗体分泌のためのシグナル配列としては、大腸菌のペリプラズムに産生させる場合、pelBシグナル配列(Lei,S.P.et al J.Bacteriol.(1987)169,4379)を使用すればよい。そして、ペリプラズムに産生された抗体を分離した後、抗体の構造を適切に組み直して(refold)使用する。
複製起源としては、SV 40、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、ウシパピローマウィルス(BPV)等の由来のものを用いることができ、更に、宿主細胞系で遺伝子コピー数増幅のため、発現ベクターは、選択マーカーとしてアミノグリコシドトランスフェラーゼ(APH)遺伝子、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、大腸菌キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Ecogpt)遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)遺伝子等を含むことができる。
本発明で使用される抗体の製造のために、任意の発現系、例えば、真核細胞または原核細胞系を使用することができる。真核細胞としては、例えば、樹立された哺乳類細胞系、昆虫細胞系、真糸状菌細胞および酵母細胞等の動物細胞等が挙げられ、原核細胞としては、例えば、大腸菌細胞等の細菌細胞が挙げられる。
好ましくは、本発明で使用される抗体は、哺乳類細胞、例えば、CHO、COS、ミエローマ、BHK、Vero、HeLa細胞中で発現される。
つぎに、形質転換された宿主細胞をin vitroまたはin vivoで培養して目的とする抗体を産生させる。宿主細胞の培養は公知の方法に従い行う。例えば、培養液として、DMEM、MEM、RPMI1640、IMDMを使用することができ、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。
前記のように発現、産生された抗体は、細胞、宿主動物から分離し均一にまで精製することができる。本発明で使用される抗体の分離、精製はアフィニティーカラムを用いて行うことができる。例えば、プロテインAカラムを用いたカラムとして、Hyper D、POROS、Sepharose F.F.(Pharmacia製)等が挙げられる。その他、通常の蛋白質で使用されている分離、精製方法を使用すればよく、何ら限定されるものではない。例えば、上記アフィニティーカラム以外のクロマトグラフィーカラム、フィルター、限外ろ過、塩析、透析等を適宜選択、組み合わせることにより、抗体を分離、精製することができる(Antibodies A Laboratory Manual.Ed Harlow,David Lane,Cold Spring Harbor Laboratory,1988)。
本発明で使用される抗体の抗原結合活性の測定には公知の手段を使用することができる(Antibodies A Laboratory Manual.Ed Harlow,David Lane,Cold Spring Harbor Laboratory,1988)。
本発明で使用される抗体の抗原結合活性を測定する方法として、BIACORE法(表面プラズモン共鳴を利用する分析法)、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)、EIA(酵素免疫測定法)、RIA(放射免疫測定法)あるいは蛍光抗体法を用いることができる。例えば、酵素免疫測定法を用いる場合、リポソームをコーティングしたプレートに、抗体を含む試料、例えば、抗体産生細胞の培養上清や精製抗体を加える。アルカリフォスファターゼ等の酵素で標識した二次抗体を添加し、プレートをインキュベートし、洗浄した後、p−ニトロフェニルリン酸等の酵素基質を加えて吸光度を測定することで抗原結合活性を評価することができる。
本発明において、「バルク」とは抗体を含む組成物であり、前記の方法を用いて発現・産生された抗体を、細胞・宿主動物から分離・精製した抗体組成物のことである。分離・精製されたバルクには、分離・精製時に用いた溶媒(緩衝液等)が含まれる。更には、精製された抗体溶液組成物に、等張化剤としてハロゲン化金属類等、具体的には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム等、好ましくは、塩化ナトリウムを、本質的にヒトの血液とおなじ浸透圧になるように添加する。一般的には約250〜350mOsmの浸透圧が好ましい。
更に、酢酸、クエン酸、リン酸およびそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の緩衝剤を、0.1〜100mmol/L、好ましくは、5〜50mmol/L程度添加し、pHを5〜8、好ましくは5.5〜7.0、最も好ましくは、約6.0に調整し、バルク用抗体溶液組成物を調製する。
本バルク用抗体溶液組成物は、製剤として調製されるまでの間、溶液状態あるいは凍結状態、好ましくは凍結状態で保存する。
この組成物には、約1〜100mg/mLの抗体が含まれており、更には、凍結融解の際に抗体の微粒子形成を減少し得るクライオプロテクタントあるいは凍結乾燥時のリオプロテクタントとなる界面活性剤(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート80、Triton、ドデシル硫酸ナトリウム)、ナトリウムオクチルグリコシド、ラウリル−・リノレイル−・ステアリル−スルホベタイン、ラウリル−・ミリスチル−・リノレイル−・ステアリル−サルコシン、ミリスチル−・リノレイル−・セチル−ベタイン、ラウロアミドプロピル−・コカミドプロピル−・リノールアミドプロピル−・ミリスタミドプロピル−・パルミドプロピル−・イソステアラミドプロピル−ベタイン、ミリスタミドプロピル−・パルミドプロピル−・イソステアラミドプロピル−ジメチルアミン、ナトリウムメチルココイル−・二ナトリウムメチルオレイル−タウレート、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールやプロピレングリコールのコポリマー(Pluronics等)や糖または糖アルコール(例えば、スクロース、トレハロース、グリセロール、アラビトール、キシリトール、ソルビトールおよびマンニトール等のポリオール等)、グルタミン酸やヒスチジンのようなアミノ酸等が含まれていてもよい。またこれらの濃度は、抗体濃度および調製する製剤の等張性に依存する。
バルク用抗体溶液組成物は、少なくとも2〜8℃で2年間で安定であることが好ましい。
バルク用溶液組成物は、長期保存性や、輸送時の物理的ストレスに対して安定であることを要求されるのと同時に、ある実施形態において、この組成物を用いて治療される患者に適した投与方法(例えば、皮下投与)の製剤に調製するために、できるだけ安定化剤等の添加物を添加しないことが好ましい。
したがって、バルク用溶液組成物は、緩衝剤、ハロゲン化金属類等の等張化剤、界面活性剤、糖または糖アルコール以外の安定化剤を含んでいないことが好ましい。更にバルク用溶液組成物は、緩衝剤、ハロゲン化金属類等の等張化剤、界面活性剤以外の安定化剤を含んでいないことが好ましい。最も好ましくは、バルク用溶液組成物は、緩衝剤、ハロゲン化金属類等の等張化剤以外の安定化剤を含んでいない組成物である。
抗体は、造影剤のコントラストの改善、リポソーム入り治療薬の副作用の除去等の目的で投与される、リポソームの血中クリアランス促進剤や血中に存在しているリポソームの体外排泄剤等の有効成分として使用することができる。抗体は、上記の用途のいずれか一つまたは複数を目的として、投与することができる。
抗体を有効成分として含有する薬剤は、経口投与および非経口投与のいずれでも可能であるが、好ましくは非経口投与であり、具体的には経肺剤型(例えば、ネフライザー等の器具を用いた経肺投与剤)、経鼻投与剤型、経皮投与剤型(例えば、軟膏、クリーム剤)、注射剤型等が挙げられる。注射剤型の例としては、例えば、点滴等の静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射等により全身または局部的に投与することができる。
特に、注射製剤の場合は、緩衝剤として酢酸および/またはその塩を使用することが好ましい。緩衝剤として酢酸および/またはその塩を使用した場合には、注射製剤投与時の疼痛が少ないものとなる。
また、患者の年齢、症状により適宜投与方法を選択することができる。有効投与量は、患者あたり0.01〜100000mg/body、好ましくは0.1〜10000mg/body、更に好ましくは0.5〜1000mg/body、更に好ましくは1〜100mg/bodyの投与量を選ぶことができる。しかしながら、抗体を含有する薬剤はこれらの投与量に制限されるものではない。
また、投与時期としては、所望の効果を期待する時期の前後を問わず投与することができ、または所望の効果を発揮すべき事象が予測される時に投与してもよい。
このような抗体を有効成分として含有する薬剤は、常法にしたがって製剤化することができ(Remington’s Pharmaceutical Science,latest edition,Mark Publishing Company,Easton,米国)、医薬的に許容される担体や添加物を共に含むものであってもよい。
このような担体および医薬添加物の例として、水、医薬的に許容される有機溶剤、アミノ酸、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、寒天、ポリエチレングリコール、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン(HSA)、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤等が挙げられる。
実際の添加物は、本発明の薬剤の剤型に応じて上記の中から単独でまたは適宜組み合わせて選ばれるが、これらに限定するものではない。例えば、注射用製剤として使用する場合、精製された抗体を溶剤、例えば、生理食塩水、緩衝液、ブドウ糖溶液等に溶解し、これに吸着防止剤、例えば、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ゼラチン、ヒト血清アルブミン等を加えたものを使用することができる。あるいは、使用前に溶解再構成する剤形とするために凍結乾燥したものであってもよく、凍結乾燥のための賦形剤としては、例えば、マンニトール、ブドウ糖等の糖アルコールや糖類を使用することができる。
抗体の安定化製剤を提供するためには、pHが5〜8の範囲となるように、抗体を緩衝液に溶解するとよい。緩衝液は、酸(好ましくは、酢酸、クエン酸、リン酸等の弱酸)とその塩(好ましくは、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ塩)の混合溶液であるとよい。製剤中の緩衝剤(例えば、酸およびその塩)の総濃度は、0.1〜100mmol/L、好ましくは、5〜50mmol/Lであり、より好ましくは、10〜20mmol/Lである。酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液等は一般的な方法で調製される(D.D.ペリン、B.デンプシー著、「緩衝液の選択と応用」講談社サイエンティフィック)。
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限られるものではない。
実験1 リポソームの調製
HSPC(hydrogenated soy phosphatidylcholine)またはHEPC(hydrogenated egg phosphatidylcholine)、CHOL(cholesterol)およびPEG2000−DSPE(distearoylphosphatidylethanolamine polyethylene glycol(M=2000))をそれぞれクロロホルムに溶解させ、それぞれの溶液をHSPCまたはHEPCとして40μmol、HSPCまたはHEPC:CHOL:PEG2000−DSPE=1.85:1:0.15になるようにナス型フラスコに加え混合した。その後、クロロホルムをエバポレーターにより除去して、脂質薄膜を調製した。これにHEPES(4−(2−hydroxyethyl)piperazine−1−ethanesulfonic acid)緩衝液2mLを加え、65℃に加温しながらボルテックスミキサーでかくはんしてリポソーム分散液を調製した。得られたリポソーム分散液を、Lipex Biomembranes社のエクストルーダーを用いて、孔径0.4μmの膜を3回、孔径0.2μmの膜を3回、孔径0.1μmの膜を10回通して、粒子径が100nmとなるように整粒した。粒径はParticle Sizing System社のNICOMP370を用いて動的光散乱法により確認した。
実験2 H標識リポソームの調製
HSPCまたはHEPCに、H−cholesteryl hexadecylether(NEN Life Science Products)をHSPCまたはHEPCの1μmolに対して4μCiの放射活性で添加した以外は、実験1と同様の方法で操作して、H標識リポソームを調製した。
実験3 RhodamineB標識リポソームの調製
HSPCまたはHEPCに、rhodamine−DHPE(Molecular Probes,Inc.)をHSPCまたはHEPCに対して0.0015μmol添加した以外は、実験1と同様の方法で操作して、RhodaminB標識リポソームを調製した。
実験4 抗リポソーム血清の産生
HEPCを用いて実験1の方法で調製したリポソームを9週齢のWistar系雄性ラットにHSPCまたはHEPCとして0.001μmol/kgの割合で静脈投与し、投与1〜5日後頚動脈にカニュレーションを施し、血液を血清分離剤入りチューブ(栄研)に採取した。このチューブをそのまま30分間室温で放置した後、3000rpmで15分間遠心分離し、上清のみを遠心チューブにとり、血清を得た。血清は使用するまで−80℃にて保存した。
実験5 リポソーム認識血清の投与によるリポソームの排泄促進効果の確認
実験4においてリポソーム投与後1〜5日経過したラットから得られた血清と、リポソームを投与していないラットの血清を、それぞれ、リポソームをまだ投与していない別の個体のWistar系雄性ラットに投与し、その直後に、それぞれのラットにHEPCを用いて実験2で得られたH標識リポソームを投与し、リポソームの血中動態を血漿中の放射活性により評価した。
その結果、リポソーム投与後4日および5日経過後のラットの血清をあらかじめ投与されていたラットにおいて、投与されたH標識リポソームが速やかに血中から消失することが確認された(図1参照。)。したがって、リポソーム投与後、4日および5日経過後のラットの血清中にリポソームを認識する物質があることが示唆された。
実験6 リポソーム認識血清からのリポソーム認識蛋白質の分離
採取した血清中に存在するリポソームを認識する物質を分離するため、HEPCを用いて実験3で得られたRhodamineB標識リポソームの分散液(リン脂質として、14μmol/mL)と、リポソーム未投与のラット血清または実験4で得られた投与後5日目の血清とをそれぞれリポソーム分散液:血清=1:4となるように混合し、水浴槽中で、37℃、15minの条件でインキュベーションした。
この液1.2mLを、あらかじめHEPES緩衝液で平衡化しておいた、Sepharose(R)4 fast Flowカラム(1.5cm×30cm)にアプライし、1.25mL/minの流速で、上記緩衝液を用いてゲルろ過した。
ゲルろ過においては、フラクションコレクターに、0.5min毎のフラクションを回収し、各フラクションの蛍光強度を測定した。具体的には、各フラクションの10μLをブラックの96wellプレート(Labsystem)のwellに加え、wellにメタノールを200μL分注し、十分に振とうした後、Wallac 1420 ARVOsx(Amersham pharmacia biotech)を用いて、蛍光強度(Ex=530nm,Em=590nm)を測定した。
測定した蛍光強度より、リポソーム画分を集め、回収した。この画分を濃縮装置(Microcon Centrifugal Devices、MILLIPORE)に入れ、超遠心機(Microfuge(R) R, Beckman Courter)を用いて、14000g、80minの条件で遠心した。
濃縮後、濃縮装置を取り外し上下逆さにして、別のエッペンドルフチューブに装着して2500rpm、3分間の条件で遠心して、サンプルを採取した。なお、濃縮の程度は濃縮前後の試料の量を測定することで推定した。
実験7 SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動による結合蛋白の分離
リポソーム投与前のラット血清と、リポソーム投与後5日経過後のラット血清とからそれぞれ、実験6の方法で得られた溶液のリポソーム画分を、リン脂質として3μmol/mLとなるように希釈し、その0.025mLを0.075mLのサンプル緩衝液(組成:25mM Tris塩酸,25.2% グリセロール,2% SDS(sodium dodecyl sulfate),0.006% BPB(bromophenol blue),2mM EDTA(ethylenediaminetetraacetic acid),1% DTT(dithiothreitol);pH6.8)と混合し、95℃で5分間処理した後、還元条件下、12.5%ポリアクリルアミドゲルを用いてSDS電気泳動により分画した。
電気泳動の結果を図2に示す。
実験8 結合蛋白質の同定
上記実験7の電気泳動上で、リポソーム未投与ラットの血清に比べて、リポソーム投与後のラットで明らかな増大が見られる7本のバンド(図2中のband1〜7)を切り出し、これらのゲル片にTrypsinを含むTris塩酸緩衝液(pH8.0)を加え、35℃、20時間の処理にて消化した。酵素消化で得られたペプチドにつき、LC−MS/MS(HPLC装置:MAGIC 2002(Michrom BioResources,Inc.,USA;カラム:Magic C18(0.1×50mm,Michrom BioResources,Inc.,USA);質量分析装置:Q−Tof2(Micromass,UK)を用いて分析し、MS/MSにより得られたイオンシグナルデータをMascot Searchにより、NCBInrデータベースを用いて検索し、統計学的に有意なスコアを示すペプチドを含む蛋白質を同定した。
その結果、band1(分子量80kD付近)およびband3(分子量55kD)には、免疫グロブリンの重鎖由来のペプチド(Ig重鎖VDJh2領域、Igμ鎖C領域、免疫グロブリン重鎖variable領域、Igγ−2C鎖C領域、Igε重鎖)を含む蛋白質が泳動されており、分子量との同一性からも、これらが、免疫グロブリン重鎖由来のbandと同定された。一方、band5および6(分子量約25kD付近)に免疫グロブリンの軽鎖由来のペプチド(Igκchain、同VJ2鎖、同Vk−Jk2領域、κ軽鎖variable領域、Ig2C2.C12軽鎖)を含む蛋白質が泳動されており、これらのbandは免疫グロブリン軽鎖であることが確認された。
リポソームを哺乳動物に投与してから血清を採取するまでの期間と、その血清を別の個体の哺乳動物に投与した場合におけるリポソームの血中濃度の経時的変化との関係を示すグラフである。 実施例で得られたリポソーム投与後5日経過後の血清およびリポソーム未投与の血清のSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果を示す蛋白質染色像である。

Claims (9)

  1. ポリエチレングリコールで表面修飾されたリポソームに結合する抗体を有効成分として含有する、リポソームの血中クリアランス促進剤。
  2. 前記抗体が、哺乳動物に前記リポソームを単回投与することにより、前記哺乳動物に産生される抗体であって、前記哺乳動物とは別の個体の哺乳動物に投与された場合に、前記別の個体の哺乳動物の血中に存在している前記リポソームが体外へ排泄されることを促進する能力を有する抗体である、請求項1に記載のリポソームの血中クリアランス促進剤。
  3. 前記抗体がポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体である、請求項1または2に記載のリポソームの血中クリアランス促進剤。
  4. 前記リポソームが診断用および/または治療用の薬物を担持する、請求項1〜3のいずれかに記載のリポソームの血中クリアランス促進剤。
  5. ポリエチレングリコールで表面修飾されたリポソームに結合する抗体を有効成分として含有する、血中に存在しているリポソームの体外排泄剤。
  6. 哺乳動物にポリエチレングリコールで表面修飾されたリポソームを単回投与することにより、前記哺乳動物に産生される抗体であって、前記哺乳動物とは別の個体の哺乳動物に投与された場合に、前記別の個体の哺乳動物の血中に存在している前記リポソームが体外へ排泄されることを促進する能力を有する抗体。
  7. 前記リポソームの、前記抗体を投与しない場合における血中半減期が10時間以上である長期滞留型のリポソームである請求項6に記載の抗体。
  8. 請求項6または7に記載の抗体を含有する医薬組成物。
  9. 請求項6または7に記載の抗体を製造する、抗体の製造方法であって、
    哺乳動物にポリエチレングリコールで表面修飾されたリポソームを単回投与する工程と、
    投与後一定期間経過した後、前記哺乳動物から血清を採取する工程と、
    前記血清を前記リポソームとインキュベーションする工程と、
    インキュベーション後、前記リポソームに結合した蛋白質を精製して前記抗体を得る工程と
    を具備する、抗体の製造方法。
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