従来から、光源(例えば発光ダイオード)の主光軸線(光軸)と小さい角度をなして光源から放射された光よりも、主光軸線と大きい角度をなして光源から放射された光を大きく集光させるように構成された車両用灯具が知られている。この種の車両用灯具の例としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。
特許文献1に記載された車両用灯具では、光源の主光軸線と小さい角度をなして光源から放射された光は、反射されることなく、直射光として照射されている。また、主光軸線と大きい角度をなして放射された光は、光源の外部に設けられたリフレクタ(反射部材)によって主光軸線の側に集光せしめられ、照射されている。
それにより、本車両用灯具では、要求される光度分布(配光分布)が得られている。
従って、所望の高度分布を得るために当該車両用灯具では、主光軸線と大きい角度をなして放射された光を主光軸線の側に集光させるために、光源の周囲にリフレクタを配置しなければならない。
そのため、光源の周囲にリフレクタを配置するためのスペースを確保しなければならず、その結果、車両用灯具全体が大型化してしまう。
また、リフレクタを配置するためのスペースを確保しなければならないため、隣接する2つの光源の間隔が広くなってしまう。
更に、例えば光源の仕様変更などがあった場合には、要求される光度分布(配光分布)が得られるように、光源の周囲の非常に狭いスペースに配置されたリフレクタも設計変更しなければならない。
次に、本発明の車両用灯具に関連する技術について説明する。
図1は車両用灯具の配光規格を説明するための図である。図1において、「H」は水平線を示しており、「V」は車両用灯具の主光軸線と交差する鉛直線を示している。「5°U」は水平線Hより5°上向きを示しており、「5°D」は水平線Hより5°下向きを示している。「10°R」は車両用灯具の主光軸線方向より10°右向きを示しており、「10°L」は車両用灯具の主光軸線方向より10°左向きを示している。
例えばリアフォグランプの配光規格では、図1中の線HV上の光度が150cd以上になり、図1中の線VL上の光度が150cd以上になるように規定されている。また、図1中の破線の内側の部分の光度が75cd以上になり、かつ、300cd以下になるように規定されている。
図2は本発明に関連する車両用灯具の断面図である。図2において、Sは白熱球光源を示しており、CLは光源Sの主光軸線を示している。Rは光源Sからの放射光の一部を反射するためのリフレクタを示しており、LSはレンズを示している。LC1,LC2,LC3,LC4はレンズLSに形成されたレンズカットを示している。
図2に示すように、光源Sから放射された光A’がレンズカットLC1によって屈折せしめられ、レンズカットLC1を透過した光Aが拡散光となって照射方向(図2の上側)に照射される。また、光源Sから放射された光B’がレンズカットLC2によって屈折せしめられ、レンズカットLC2を透過した光Bが拡散光となって照射方向に照射される。
更に、図2に示すように、光源Sから放射された光C”が、リフレクタRによって反射され、光源Sの主光軸線CLにほぼ平行な反射光C’になる。次いで、その反射光C’がレンズカットLC3によって屈折せしめられ、レンズカットLC3を透過した光Cが拡散光となって照射方向に照射される。また、光源Sから放射された光D”が、リフレクタRによって反射され、光源Sの主光軸線CLにほぼ平行な反射光D’になる。次いで、その反射光D’がレンズカットLC4によって屈折せしめられ、レンズカットLC4を透過した光Dが拡散光となって照射方向に照射される。
図3(A)及び図3(B)は図2に示した光Aの光度分布CA、光Bの光度分布CB、光Cの光度分布CCおよび光Dの光度分布CDを説明するための図である。詳細には、図3(A)は光Aの光度分布CA、光Bの光度分布CB、光Cの光度分布CCおよび光Dの光度分布CDのそれぞれを示した図、図3(B)は図3(A)に示した光Aの光度分布CA、光Bの光度分布CB、光Cの光度分布CCおよび光Dの光度分布CDを合成した図である。
図3(A)及び図3(B)において、縦軸は光度を示しており、横軸は、水平に延びている光源Sの主光軸線CL(図2参照)に対する水平方向角度(水平線H(図1参照)上角度)を示している。すなわち、「水平線H上角度0(°)」は、光源Sの主光軸線CL上を示している。
この車両用灯具では、フィラメントを有する白熱球が光源Sとして用いられている。そのため、光源Sから放射された光A’,B’,C”,D”の光度がほぼ均一になり、レンズLSを透過した光A,B,C,Dの光度もほぼ均一になる。
その結果、この車両用灯具では、図3(A)に示すように、光Bの光度分布CBは、光Aの光度分布CAを少し右側にオフセットさせたものとほぼ等しくなる。また、光Cの光度分布CCは、光Bの光度分布CBを少し右側にオフセットさせたものとほぼ等しくなる。更に、光Dの光度分布CDは、光Cの光度分布CCを少し右側にオフセットさせたものとほぼ等しくなる。
それゆえ、この車両用灯具では、図3(B)に示すように、規格範囲の右縁部付近における光度が、規格範囲の中心付近(角度0°付近)における光度と同様に高い値になり、規格値を満足するようになっている。
次に、本発明の灯具に関連する他の技術について説明する。上述した本発明に関連する車両用灯具では、図2に示すように、光源Sとして白熱球が用いられているが、他の技術による車両用灯具では、光源として、指向性の高いLEDを用いることができる。
図4は光源として用いられるLEDの光度分布を示した図である。図4において、横軸はLEDの主光軸線となす角度を示しており、縦軸はLEDの光度の百分率を示している。詳細には、図4は、LEDの主光軸線上の光度を100%とした場合におけるLEDの主光軸線となす角度と、LEDの光度との関係を示している。つまり、光源の主光軸線となす角度が大きくなるに従って光源から照射される光の光度が急激に低下するLEDが、光源として用いられる。
図5は本発明に関連する他の車両用灯具の断面図である。図5において、SはLED光源を示している。
この車両用灯具では、図5に示すように、光源Sの主光軸線CLと比較的小さい角度をなして光源Sから放射された光A’が、レンズカットLC1によって屈折せしめられ、レンズカットLC1を透過した光Aが照射方向(図5の上側)に照射される。
また、光源Sから放射された光B’が、レンズカットLC2によって屈折せしめられ、レンズカットLC2を透過した光Bが照射方向に照射される。詳細には、光源Sの主光軸線CLと光B’とがなす角度が、光源Sの主光軸線CLと光A’とがなす角度よりも大きくなる。更に、光B’がレンズカットLC2によって屈折せしめられる角度が、光A’がレンズカットLC1によって屈折せしめられる角度より大きくなる。換言すれば、光A’よりも光源Sの主光軸線CLと大きい角度をなして光源Sから放射された光B’が、光A’よりも光源Sの主光軸線CLの側に大きく集光せしめられる。
更に、光源Sから放射された光C’が、レンズカットLC3によって屈折せしめられ、レンズカットLC3を透過した光Cが照射方向に照射される。詳細には、光源Sの主光軸線CLと光C’とがなす角度が、光源Sの主光軸線CLと光B’とがなす角度よりも大きくなる。更に、光C’がレンズカットLC3によって屈折せしめられる角度が、光B’がレンズカットLC2によって屈折せしめられる角度より大きくなる。換言すれば、光B’よりも光源Sの主光軸線CLと大きい角度をなして光源Sから放射された光C’が、光B’よりも光源Sの主光軸線CLの側に大きく集光せしめられる。
また、光源Sから放射された光D’が、レンズカットLC4によって屈折せしめられ、レンズカットLC4を透過した光Dが照射方向に照射される。詳細には、光源Sの主光軸線CLと光D’とがなす角度が、光源Sの主光軸線CLと光C’とがなす角度よりも大きくなる。更に、光D’がレンズカットLC4によって屈折せしめられる角度が、光C’がレンズカットLC3によって屈折せしめられる角度より大きくなる。換言すれば、光C’よりも光源Sの主光軸線CLと大きい角度をなして光源Sから放射された光D’が、光C’よりも光源Sの主光軸線CLの側に大きく集光せしめられる。
図6(A)及び図6(B)は図5に示した光Aの光度分布CA、光Bの光度分布CB、光Cの光度分布CCおよび光Dの光度分布CDを説明するための図である。詳細には、図6(A)は光Aの光度分布CA、光Bの光度分布CB、光Cの光度分布CCおよび光Dの光度分布CDのそれぞれを示した図、図6(B)は図6(A)に示した光Aの光度分布CA、光Bの光度分布CB、光Cの光度分布CCおよび光Dの光度分布CDを合成した図である。
図6において、縦軸は光度を示しており、横軸は水平に延びている光源Sの主光軸線CL(図5参照)に対する水平方向角度(水平線H(図1参照)上角度)を示している。すなわち、「水平線H上角度0(°)」は、光源Sの主光軸線CL上を示している。
この車両用灯具では、上述したように、指向性の高いLEDが光源Sとして用いられている。そのため、図4および図5に示すように、光源Sの主光軸線CLと小さい角度をなして光源Sから放射された光A’の光度に比べ、光源Sの主光軸線CLと大きい角度をなして光源Sから放射された光B’,C’,D’の光度がかなり低くなる。
更に、図5に示すように、高光度の光A’が透過せしめられるレンズカットLC1の幅と、低光度の光B’が透過せしめられるレンズカットLC2の幅と、低光度の光C’が透過せしめられるレンズカットLC3の幅と、低光度の光D’が透過せしめられるレンズカットLC4の幅とが、ほぼ等しくされている。
また、図6(A)に示すように、光Bの光度分布CBは、光Aの光度分布CAを少し右側にオフセットさせた位置に形成されている。更に、光Cの光度分布CCは、光Bの光度分布CBを少し右側にオフセットさせた位置に形成されている。また、光Dの光度分布CDは、光Cの光度分布CCを少し右側にオフセットさせた位置に形成されている。
その結果、図6(A)に示すように、光Bの光度分布CBは、光Aの光度を50%以上減少させて光Aの光度分布CAを少し右側にオフセットさせたものとほぼ等しくなる。また、光Cの光度分布CCは、光Bの光度を減少させて光Bの光度分布CBを少し右側にオフセットさせたものとほぼ等しくなる。更に、光Dの光度分布CDは、光Cの光度を減少させて光Cの光度分布CCを少し右側にオフセットさせたものとほぼ等しくなる。
それゆえ、図6(B)に示すように、規格範囲の中心付近(角度0°付近)における光度が必要以上に高くなるにもかかわらず、規格範囲の右縁部付近における光度が不足してしまい、規格値を満足しなくなってしまう。換言すれば、図5および図6(B)に示すように、光源Sの主光軸線CLに沿って照射された光A,Bが必要以上に高光度になるにもかかわらず、光源Sの主光軸線CLと大きい角度をなして照射された光C,Dの光度が不足してしまう。
まず、本発明の車両用灯具の第1の実施形態について説明する。本発明の第1の実施形態の車両用灯具では、光源として、指向性の高いLEDが用いられる。従って、第1の実施形態の車両用灯具では、図4に示すように、LED光源の主光軸線となす角度が大きくなるに従ってLED光源から照射される光の光度が急激に低下する。
図7は第1の実施形態の車両用灯具の要部の斜視図である。図8は第1の実施形態の車両用灯具のレンズLSを手前側(レンズ正面側)から見た図である。
第1の実施形態の車両用灯具では、図7および図8に示すように、レンズLSに35個のレンズカット1〜35が形成されている。詳細には、レンズカット1の周囲にレンズカット2,22,21,24,4,9,6,7が配列され、それらの周囲にレンズカット3,23,28,27,26,29,30,25,5,10,15,14,11,12,13,8が配列され、それらの上側にレンズカット18,17,16,19,20が配列され、下側にレンズカット33,32,31,34,35が配列されている。
図9は第1の実施形態の車両用灯具の光源SおよびレンズLSの断面図である。第1の実施形態の車両用灯具では、図7〜図9に示すように、レンズカット1の左右方向の幅が、レンズカット2,3,4,5の左右方向の幅よりも広くされている。
更に、第1の実施形態の車両用灯具では、図9に示すように、光源Sの主光軸線CLと比較的小さい角度である所定範囲の放射角をなして光源Sから放射された光L1’が、レンズカット1によって屈折せしめられ、レンズカット1を透過した光L1が照射方向(図9の上側)に照射される。本発明においては、放射された光L’の所定範囲の放射角としては、主光軸線CLに対して±30度が好ましい。この範囲内に放射される光は、指向性のあるLED光源などの場合、ある程度高い光度を有する。そのため、レンズカット1を通過した光は大きく屈折することなく所望の光度分布の要求を満たすことができる。
また、第1の実施形態の車両用灯具では、光源Sから放射された光L2’が、レンズカット2によって屈折せしめられ、レンズカット2を透過した光L2が照射方向に照射される。詳細には、光源Sの主光軸線CLと光L2’とがなす角度が、光源Sの主光軸線CLと光L1’とがなす角度よりも大きくなる。更に、光L2’がレンズカット2によって屈折せしめられる角度が、光L1’がレンズカット1によって屈折せしめられる角度より大きくなる。換言すれば、光L1’よりも光源Sの主光軸線CLと大きい角度をなして光源Sから放射された光L2’が、光L1’よりも光源Sの主光軸線CLの側に大きく集光せしめられる。
更に、第1の実施形態の車両用灯具では、光源Sから放射された光L3’が、レンズカット3によって屈折せしめられ、レンズカット3を透過した光L3が照射方向に照射される。詳細には、光源Sの主光軸線CLと光L3’とがなす角度が、光源Sの主光軸線CLと光L2’とがなす角度よりも大きくなる。更に、光L3’がレンズカット3によって屈折せしめられる角度が、光L2’がレンズカット2によって屈折せしめられる角度より大きくなる。換言すれば、光L2’よりも光源Sの主光軸線CLと大きい角度をなして光源Sから放射された光L3’が、光L2’よりも光源Sの主光軸線CLの側に大きく集光せしめられる。
図10(A)及び図10(B)は図9に示した光L1の光度分布C1、光L2の光度分布C2および光L3の光度分布C3を説明するための図である。詳細には、図10(A)は光L1の光度分布C1、光L2の光度分布C2および光L3の光度分布C3のそれぞれを示した図、図10(B)は図10(A)に示した光L1の光度分布C1、光L2の光度分布C2および光L3の光度分布C3を合成した図である。
図10において、縦軸は光度を示しており、横軸は水平に延びている光源Sの主光軸線CL(図9参照)に対する水平方向角度(水平線H(図1参照)上角度)を示している。すなわち、「水平線H上角度0(°)」は、光源Sの主光軸線CL上を示している。
第1の実施形態の車両用灯具では、上述したように、指向性の高いLEDが光源Sとして用いられている。そのため、図4および図9に示すように、光源Sの主光軸線CLと小さい角度(所定範囲の放射角)をなして光源Sから放射された光L1’の光度に比べ、光源Sの主光軸線CLと大きい角度をなして光源Sから放射された光L2’,L3’の光度がかなり低くなる。
そこで、第1の実施形態の車両用灯具では、図9に示すように、レンズカット2による集光度合いよりも集光度合いの大きいレンズカット3が、レンズカット2の外側に配置されている。つまり、第1の実施形態の車両用灯具では、図9に示すように、レンズカット2を透過した光度の比較的低い光L2と、レンズカット3を透過した光度の比較的低い光L3とが重ね合わされている。換言すれば、第1の実施形態の車両用灯具では、図10(A)に示すように、光L2の光度分布C2と光L3の光度分布C3とが重ね合わされている。
詳細には、第1の実施形態の車両用灯具では、図9に示すように、レンズカット2を透過した光L2とレンズカット3を透過した光L3とが交差するように、レンズカット2およびレンズカット3が形成されている。更に詳細には、第1の実施形態の車両用灯具では、レンズカット3を透過した光L3の外縁が、レンズカット2を透過した光L2の外縁の内側に含まれるように、つまり、図10(A)に示すように、光L3の光度分布C3が光L2の光度分布C2に含まれるように、レンズカット2およびレンズカット3が形成されている。
そのため、第1の実施形態の車両用灯具によれば、図10(B)に示すように、レンズカットLC3を透過した光度の比較的低い光Cと、レンズカットLC3の外側のレンズカットLC4を透過した光度の比較的低い光Dとが重ね合わされることなく照射される図5および図6に示した本発明に関連する従来の車両用灯具よりも、光源Sの主光軸線CLと大きい角度をなして照射された光L2,L3(図9参照)により照射する領域の光度(C2+C3)を高くすることができる。
更に、第1の実施形態の車両用灯具では、上述した本発明に関連する従来の車両用灯具とは異なり、図7〜図9に示すように、高光度の光L1’が透過せしめられるレンズカット1の幅が、低光度の光L2’が透過せしめられるレンズカット2の幅および低光度の光L3’が透過せしめられるレンズカット3の幅よりも広くされている。
つまり、図5および図6に示した本発明に関連する技術による車両用灯具のように、隣接する2つのレンズカットLC1,LC2の境界部分に高光度の光A,Bが入射せしめられてしまうのを回避するために、第1の実施形態の車両用灯具では、図9に示すように、高光度の光L1’が透過せしめられるレンズカット1の幅が、低光度の光L2’が透過せしめられるレンズカット2の幅および低光度の光L3’が透過せしめられるレンズカット3の幅より広くされている。
そのため、第1の実施形態の車両用灯具によれば、図5および図6に示した本発明に関連する従来技術による車両用灯具のように、隣接する2つのレンズカットLC1,LC2の境界部分に高光度の光A’,B’が入射せしめられて乱反射するのに伴って、光源Sからの光A’,B’の利用効率が低下してしまうのを回避することができる。
換言すれば、第1の実施形態の車両用灯具によれば、図5および図6に示した本発明に関連する他の技術による車両用灯具のように、高光度の光A’,B’が透過せしめられるレンズカットLC1,LC2の幅が比較的狭い幅に設定されている場合よりも、光源Sからの光L1’(図9参照)の利用効率を向上させることができる。
更に、第1の実施形態の車両用灯具では、図9および図10(A)に示すように、レンズカット2を透過した光L2およびレンズカット3を透過した光L3が、レンズカット1を透過した光L1の中心(光度分布C1の中心)に指向せしめられるのではなく、レンズカット1を透過した光L1の外縁(光度分布C1の外縁、規格範囲の右縁部(図10(B)参照))に指向せしめられるように、レンズカット2およびレンズカット3が形成されている。
即ちレンズカット2を透過した光L2の光度分布C2のピークおよびレンズカット3を透過した光L3の光度分布C3のピークが、レンズカット1を透過した光L1の光度分布C1のピークと一致せしめられるのではなく、レンズカット1を透過した光L1の光度分布C1の裾部に位置するように、レンズカット2およびレンズカット3が形成されている。
そのため、第1の実施形態の車両用灯具によれば、図5および図6に示した本発明に関連する他の技術による車両用灯具のように、光源Sの主光軸線CLに沿って照射された光A,Bの光度(CA+CB)が必要以上に高くなるにもかかわらず、光源Sの主光軸線CLと大きい角度をなして照射された光C,Dの光度(CC+CD)が不足してしまうのを回避することができる。
換言すれば、第1の実施形態の車両用灯具によれば、指向性の高いLED光源Sが用いられる場合であっても、光源Sの主光軸線CLに沿って照射された光の光度(規格範囲の中心付近の光度(図10(B)参照)が必要以上に高くなってしまうのを回避しつつ、光源Sの主光軸線CLと大きい角度をなして照射された光の光度(規格範囲の右縁部付近の光度(図10(B)参照))が不足してしまうのを回避することができる。
図11は第1の実施形態の車両用灯具の光源SおよびレンズLSの図9と同様の断面図である。
第1の実施形態の車両用灯具では、図11に示すように、光源Sから放射された光L4’が、レンズカット4によって屈折せしめられ、レンズカット4を透過した光L4が照射方向(図11の上側)に照射される。詳細には、光源Sの主光軸線CLと光L4’とがなす角度が、光源Sの主光軸線CLと光L1’とがなす角度(所定範囲の放射角)よりも大きくなる。更に、光L4’がレンズカット4によって屈折せしめられる角度が、光L1’がレンズカット1によって屈折せしめられる角度より大きくなる。換言すれば、光L1’よりも光源Sの主光軸線CLと大きい角度をなして光源Sから放射された光L4’が、光L1’よりも光源Sの主光軸線CLの側に大きく集光せしめられる。
更に、第1の実施形態の車両用灯具では、光源Sから放射された光L5’が、レンズカット5によって屈折せしめられ、レンズカット5を透過した光L5が照射方向(図11の上側)に照射される。詳細には、光源Sの主光軸線CLと光L5’とがなす角度が、光源Sの主光軸線CLと光L4’とがなす角度よりも大きくなる。更に、光L5’がレンズカット5によって屈折せしめられる角度が、光L4’がレンズカット4によって屈折せしめられる角度より大きくなる。換言すれば、光L4’よりも光源Sの主光軸線CLと大きい角度をなして光源Sから放射された光L5’が、光L4’よりも光源Sの主光軸線CLの側に大きく集光せしめられる。
図12(A)及び図12(B)は図11に示した光L1の光度分布C1、光L4の光度分布C4および光L5の光度分布C5を説明するための図である。詳細には、図12(A)は光L1の光度分布C1、光L4の光度分布C4および光L5の光度分布C5をそれぞれ示した図、図12(B)は図12(A)に示した光L1の光度分布C1、光L4の光度分布C4および光L5の光度分布C5を合成した図である。
図12において、縦軸は光度を示しており、横軸は水平に延びている光源Sの主光軸線CL(図11参照)に対する水平方向角度(水平線H(図1参照)上角度)を示している。即ち、「水平線H上角度0(°)」は、光源Sの主光軸線CL上を示している。
第1の実施形態の車両用灯具では、上述したように、指向性の高いLEDが光源Sとして用いられている。そのため、図4および図11に示すように、光源Sの主光軸線CLと小さい角度(所定範囲の放射角)をなして光源Sから放射された光L1’の光度に比べ、光源Sの主光軸線CLと大きい角度をなして光源Sから放射された光L4’,L5’の光度がかなり低くなる。
そこで、第1の実施形態の車両用灯具では、図11に示すように、レンズカット4による集光度合いよりも集光度合いの大きいレンズカット5が、レンズカット4の外側に配置されている。つまり、第1の実施形態の車両用灯具では、図11に示すように、レンズカット4を透過した光度の比較的低い光L4と、レンズカット5を透過した光度の比較的低い光L5とが重ね合わされている。換言すれば、第1の実施形態の車両用灯具では、図12(A)に示すように、光L4の光度分布C4と光L5の光度分布C5とが重ね合わされている。
詳細には、第1の実施形態の車両用灯具では、図11に示すように、レンズカット4を透過した光L4とレンズカット5を透過した光L5とが交差するように、レンズカット4およびレンズカット5が形成されている。更に詳細には、第1の実施形態の車両用灯具では、レンズカット5を透過した光L5の外縁が、レンズカット4を透過した光L4の外縁の内側に含まれるように、つまり、図12(A)に示すように、光L5の光度分布C5が光L4の光度分布C4に含まれるように、レンズカット4およびレンズカット5が形成されている。
そのため、第1の実施形態の車両用灯具によれば、図12(B)に示すように、レンズカットLC3を透過した光度の比較的低い光Cと、レンズカットLC3の外側のレンズカットLC4を透過した光度の比較的低い光Dとが重ね合わされることなく照射される図5および図6に示した本発明に関連する他の技術による車両用灯具よりも、光源Sの主光軸線CLと大きい角度をなして照射された光L4,L5(図11参照)の光度(C4+C5)を高くすることができる。
更に、第1の実施形態の車両用灯具では、上述した本発明に関連する他の技術による車両用灯具とは異なり、図7、図8および図11に示すように、高光度の光L1’が透過せしめられるレンズカット1の幅が、低光度の光L4’が透過せしめられるレンズカット4の幅および低光度の光L5’が透過せしめられるレンズカット5の幅よりも広くされている。
つまり、図5および図6に示した本発明に関連する他の技術による車両用灯具のように、隣接する2つのレンズカットLC1,LC2の境界部分に高光度の光A,Bが入射せしめられてしまうのを回避するために、第1の実施形態の車両用灯具では、図11に示すように、高光度の光L1’が透過せしめられるレンズカット1の幅が、低光度の光L4’が透過せしめられるレンズカット4の幅および低光度の光L5’が透過せしめられるレンズカット5の幅より広くされている。
そのため、第1の実施形態の車両用灯具によれば、図5および図6に示した本発明に関連する他の技術による車両用灯具のように、隣接する2つのレンズカットLC1,LC2の境界部分に高光度の光A’,B’が入射せしめられて乱反射するのに伴って、光源Sからの光A’,B’の利用効率が低下してしまうのを回避することができる。
換言すれば、第1の実施形態の車両用灯具によれば、図5および図6に示した本発明に関連する他の技術による車両用灯具のように、高光度の光A’,B’が透過せしめられるレンズカットLC1,LC2の幅が比較的狭い幅に設定されている場合よりも、光源Sからの光L1’(図11参照)の利用効率を向上させることができる。
更に、第1の実施形態の車両用灯具では、図11および図12(A)に示すように、レンズカット4を透過した光L4およびレンズカット5を透過した光L5が、レンズカット1を透過した光L1の中心(光度分布C1の中心)に指向せしめられるのではなく、レンズカット1を透過した光L1の外縁(光度分布C1の外縁、規格範囲の左縁部(図12(B)参照))に指向せしめられるように、レンズカット4およびレンズカット5が形成されている。
詳細には、レンズカット4を透過した光L4の光度分布C4のピークおよびレンズカット5を透過した光L5の光度分布C5のピークが、レンズカット1を透過した光L1の光度分布C1のピークと一致せしめられないように、レンズカット4およびレンズカット5が形成されている。この場合において、レンズカット4およびレンズカット5は、例えばレンズカット1を透過した光L1の光度分布C1の裾のような部分に位置するように、あるいは、光度分布C4と光度分布C5のピークを光度分布C1上の同等の光度と一致する位置となるように、形成されている。
そのため、第1の実施形態の車両用灯具によれば、図5および図6に示した本発明に関連する他の技術による車両用灯具のように、光源Sの主光軸線CLに沿って照射された光A,Bの光度(CA+CB)が必要以上に高くなるにもかかわらず、光源Sの主光軸線CLと大きい角度をなして照射された光C,Dの光度(CC+CD)が不足してしまうのを回避することができる。
換言すれば、第1の実施形態の車両用灯具によれば、指向性の高いLED光源Sが用いられる場合であっても、光源Sの主光軸線CLに沿って照射された光の光度(規格範囲の中心付近の光度(図12(B)参照)が必要以上に高くなってしまうのを回避しつつ、光源Sの主光軸線CLと大きい角度をなして照射された光の光度(規格範囲の左縁部付近の光度(図12(B)参照))が不足してしまうのを回避することができる。
図1に示すようなリアフォグランプの配光規格では、上下方向(鉛直方向)の規格範囲の幅が、左右方向(水平方向)の規格範囲の幅よりも狭くなっている。従って、第1の実施形態の車両用灯具がリアフォグランプに適用される場合には、図4に示すように光源の主光軸線となす角度が大きくなるに従って光源から照射される光の光度が急激に低下するLED光源が用いられても、規格範囲の上縁部および下縁部の光度が不足してしまうおそれはない。
この点に鑑み、第1の実施形態の車両用灯具では、図9および図10に示すように、光L2および光L3が光L1の外縁(光度分布C1の外縁、規格範囲の右縁部(図10(B)参照))に指向せしめられ、図11および図12に示すように、光L4および光L5が光L1の外縁(光度分布C1の外縁、規格範囲の左縁部(図12(B)参照))に指向せしめられる。一方、レンズカット6,11,16(図7および図8参照)を透過した光は、規格範囲の上縁(図1中の「5°U」線付近)に指向せしめられず、また、レンズカット21,26,31(図7および図8参照)を透過した光も、規格範囲の下縁(図1中の「5°D」線付近)に指向せしめられない。
詳細には、第1の実施形態の車両用灯具では、レンズカット6,11,16(図7および図8参照)を透過した光が、例えば規格範囲の中心(図1中の水平線H付近)に指向せしめられ、また、レンズカット21,26,31(図7および図8参照)を透過した光が、例えば規格範囲の中心(図1中の水平線H付近)に指向せしめられている。
また、第1の実施形態の車両用灯具では、レンズLSの右上部のレンズカット7,8,12,13,17,18(図7および図8参照)、右下部のレンズカット22,23,27,28,32,33(図7および図8参照)、左上部のレンズカット9,10,14,15,19,20(図7および図8参照)、および左下部のレンズカット24,25,29,30,34,35(図7および図8参照)には、拡散機能のみが備えられ、光を指向させる機能は備えられていなくてもよい。
第2の実施形態の車両用灯具では、代わりに、レンズLSの右上部のレンズカット7,8,12,13,17,18、右下部のレンズカット22,23,27,28,32,33、左上部のレンズカット9,10,14,15,19,20、および左下部のレンズカット24,25,29,30,34,35の少なくとも一部に、光を指向させる機能を備えることも可能である。
具体的には、例えばレンズLSの右上部のレンズカット7および左上部のレンズカット14に、光を指向させる機能が備えられている。
図13は第2の実施形態の車両用灯具の光度分布を説明するための図である。詳細には、図13はレンズカット1を透過した光の光度分布C1、レンズカット2を透過した光の光度分布C2、レンズカット3を透過した光の光度分布C3、レンズカット4を透過した光の光度分布C4、レンズカット5を透過した光の光度分布C5、レンズカット7を透過した光の光度分布C7、および、レンズカット14を透過した光の光度分布C14を合成した図である。
図13において、縦軸は光度を示しており、横軸は水平に延びている光源S(図7参照)の主光軸線に対する水平方向角度(水平線H(図1参照)上角度)を示している。すなわち、「水平線H上角度0(°)」は、光源Sの主光軸線上を示している。
第2の実施形態の車両用灯具では、図13に示すように、レンズカット2を透過した光およびレンズカット3を透過した光が、レンズカット1を透過した光の外縁(光度分布C1の外縁、規格範囲の右縁部)に指向せしめられるのみならず、レンズカット7を透過した光が、レンズカット1を透過した光の外縁(光度分布C1の外縁、規格範囲の右縁部)に指向せしめられており、それにより、光度分布C1の外縁(規格範囲の右縁部)の光度不足が補われている。
また、第2の実施形態の車両用灯具では、図13に示すように、レンズカット4を透過した光およびレンズカット5を透過した光が、レンズカット1を透過した光の外縁(光度分布C1の外縁、規格範囲の左縁部)に指向せしめられるのみならず、レンズカット14を透過した光が、レンズカット1を透過した光の外縁(光度分布C1の外縁、規格範囲の左縁部)に指向せしめられており、それにより、光度分布C1の外縁(規格範囲の左縁部)の光度不足が補われている。
第1の実施形態の車両用灯具では、図7および図8に示すように、1個の光源Sが設けられているが、代わりに、複数の光源を設けることも可能である。
図14に、4個の光源(図示せず)が設けられた場合の第3の実施形態の車両用灯具をしめす。ここはレンズLS’を手前側から見た図8と同様の図である。第3の実施形態の車両用灯具では、図14に示すように、第1の実施形態の車両用灯具のレンズLS(図8参照)と同様に構成されたレンズ部LS−1,LS−2,LS−3,LS−4を4個有するレンズLS’が用いられている。
第3の実施形態の車両用灯具では、第1および第2の実施形態と同様に、光源の主光軸線と大きい角度をなして光源から放射された光が、リフレクタによってではなく、光源の主光軸線上に配置されたレンズLS’のレンズカットによって光源の主光軸線の側に集光せしめられる。
そのため、第3の実施形態の車両用灯具によれば、リフレクタによって集光せしめられる場合よりも、光源の周囲のスペースを小さく抑えることができる。つまり、レンズ部LS−1,LS−2,LS−3,LS−4を互いに近接させて配列することができる。
換言すれば、隣接する2つの光源の間隔を狭くすることができる。それにより、車両用灯具全体を小型化することができる。
また、第3の実施形態の車両用灯具によれば、1個の基板によって複数の光源を支持することができる。
また、リフレクタの場合よりも、要求される光度分布に適合させるための設計変更を容易にすることができる。
第1の実施形態の車両用灯具では、レンズカット1の周囲に34個のレンズカット2〜35が配列されているが、本発明はこれに限定されず、代わりに、レンズカット1の周囲に任意の数のレンズカットを配列することが可能である。
また、第3の実施形態の車両用灯具では、4個の光源が設けられているが、本発明はこれに限定されず、代わりに、4個以外の任意の数の光源を設けることも可能である。
上述した実施形態を適宜組み合わせることも可能である。