本発明に係る半導体製造工程や磁気ヘッド製造工程等において用いられている平坦化加工工程の安定稼働を目的とした表面検査装置およびその方法の実施の形態について図面を用いて説明する。まず、本発明に係る表面検査装置およびその方法の第1の実施の形態について説明する。即ち、この第1の実施の形態では、図2に示すように、Siウェハ21上にSiO2膜(被加工対象物)22を形成し、CMP(Chemical Mechanical Polishing)を施した際、ウェハ10上に生じた深さが浅いスクラッチ23aと異物24とを弁別することにある。ところで、SiO2膜22の下は、必ずしもSi基板21があるわけではなく、配線層が存在する場合もある。CMP工程では、このSiO2膜22の表面を平坦化するために研磨を行う。そのため、研磨傷であるスクラッチ23aは図2(a)に示すようにSiO2膜22の表面に生じる。ここで、SiO2膜22の膜厚をt、スクラッチ23の幅をW、深さをDとする。概略寸法はWが0.2μm〜0.4μm程度である。また、深さDは数nm程度から非常に深い物でも100nm程度である。この様に、CMPで生じるスクラッチ23aは幅に対して深さが非常に浅いことが特徴である。図2(b)に異物24の寸法パラメータを示す。ここでは、異物24を直径Φの粒状の物としてモデル化している。実際の異物24はこの様に綺麗な球状ではないが、スクラッチ23aは幅W(0.2μm〜0.4μm程度)に対して深さDが数nm〜数+nm程度と非常に浅いが、異物24はスクラッチ23aほどに幅と高さに極端に大きな差がないことを示している。本発明は、このスクラッチ23aの特有の寸法比率に着目している。
ところで、スクラッチ23には、多様な形状が存在する。特に、CMPにおいては、化学的な機構と機械的な機構が混在して研磨が行われる。微小な切削機構による機械的研磨の不具合により生じるスクラッチ23aは、いわゆる引っ掻き傷の様に微小な線状の形状をしている。また、稀ではあるが、砥粒以外の異物が研磨中に混入すると、幅に対して非常に深い線状の大スクラッチ23bを生じる。しかし、エッチング的な研磨機構である化学的要因の不具合により生じてしまうスクラッチ23abは、ディンプル状のすり鉢のような形状をしている。このように、研磨の不具合要因に応じてスクラッチ23の形状は異なる。逆に言えば、スクラッチ23の形状を詳細に分類することにより、不具合要因を絞り込みやすくなる。特に、異物混入による大スクラッチ23bが多発した場合、更なる巨大スクラッチ23cが発生した場合には、即時に研磨工程を停止させて対策を行わなければならない。
次に、上記第1の実施の形態を実現するためのスクラッチ等の表面検査装置の第1の実施例について図1〜図9を用いて説明する。即ち、表面検査装置の第1の実施例は、図1に示すように、位置座標が測定されてXY方向に走行制御されるステージ15上に載置される被検査物であるウェハ10と、例えば波長488nm(青の波長)のArレーザや窒素レーザやHe−Cdレーザやエキシマレーザ等の光源(レーザ光源に限定されるものではない。)からなる光源2、光路切替機構3、および反射ミラー4a、4b、4cにより構成される照明光学系1aと、集光レンズ6およびフォトマル、CCDカメラ、CCDセンサ、TDIセンサ等から構成される光電変換器7により構成される検出光学系5と、光電変換機7から出力されるアナログ輝度信号をデジタル輝度信号に変換するA/D変換部16、該A/D変換部16から得られるデジタル輝度信号を一時記憶する記憶部17および比較演算部18により構成される演算処理部8と、上記ステージ15から測定される位置座標を基に上記ステージ15を走行制御するステージコントローラ14と、該ステージコントローラ14を制御し、上記光路切替機構3を制御し、さらに演算処理部8を制御し、演算処理部8から得られる検査結果を受ける全体制御部9とから構成される。光源2としては、CMPされた絶縁膜22上に生じた微小な異物24やスクラッチ23を弁別して検出するために、エキシマレーザ光源のようにできるだけ波長が短いようが方が好ましい。そして、光源2から射出された光は、上記集光レンズ6の表面に直接照射されることなく、反射ミラー4a、反射ミラー4cを介してウェハ面(CMPが施された絶縁膜の面)を法線方向、或いはその近傍から照射する。これを落射照明12と称する。あるいは、光路切替機構3により、反射ミラー4aを退避させることにより、反射ミラー4bを介してウェハ面(CMPが施された絶縁膜の面)を斜め方向から照射する。これを、斜方照明11と称する。本第1の実施例においては、1個の光源2と複数の反射ミラー4a〜4c及び光路切替機構3を用いて落射照明と斜方照明を実現しているが、それぞれに別々の独立した2個の光源を使用してもかまわない。また、反射ミラーの数、光路切替機構の有無は問わない。このように、照明光学系1aとしては、集光レンズ6の表面を直接照射させることなく、ウェハ10上の絶縁膜22に対してCMPが施されたCMP面に対して法線方向或いは、それに近い方向、及び、ウェハ水平面に近い斜め方向(約30°以下の角度)からの2系統の照明11、12が実現されていれば良い。
次に、検出手順について述べる。検出は1枚のウェハについて、照明方向を切り替えて2回行う。具体的には、まず、落射照明光12を、集光レンズ6の表面に対して直接照射することなく、ウェハ10上の絶縁膜22のCMP面に対して照射する。すると、集光レンズ6の表面の微細な面粗さやその表面に付着した極微細な異物等から反射してくる迷光を発生させることなく、絶縁膜22から発生した正反射光成分が除かれた状態で、絶縁膜22上にCMPによって発生した極浅い微細なスクラッチ23aおよび異物24から射出した散乱光(低次の回折光成分)のみが、集光レンズ6によりCCD、TDIセンサ等から構成される光電変換器7の受光面に集光される。そして、光電変換器7の出力をA/D変換部16でA/D変換して欠陥i毎の輝度値S(i)を得た後、一旦、記憶部17に書き込む。次に、全体制御部9は、ステージ15を制御することにより、ウェハ面上の同じ座標位置を、光路切替機構2を用いて照射方向を切り替えて斜方照明11により照射する。すると、絶縁膜22から発生した正反射光成分が除かれた状態で、絶縁膜22上にCMPによって発生した極浅い微細なスクラッチ23aおよび異物24から射出した散乱光(低次の回折光成分)のみが、集光レンズ6により上記光電変換器7に集光される。そして、光電変換器7の出力をA/D変換部16でA/D変換して欠陥i毎の輝度値T(i)を得た後、一旦、記憶部17に書き込む。次に、既に記憶部17に記憶している落射照明12による欠陥i毎の検出輝度値S(i)と、斜方照明11による欠陥i毎の検出輝度値T(i)との比率R(i)を比較演算部18により算出する。比較演算部18は、該算出された輝度比率R(i)が予め設定した閾値(判定基準値:図5に示す弁別線20)よりも大きければ異物24、小さければ極浅い微細なスクラッチ23aと判別し、全体制御部9へ出力する。このように、CMPによって発生するスクラッチ23aは、極浅く微細であるため、集光レンズ6の表面に落射照明光12が照射された場合に集光レンズ6の表面から発生する微弱な迷光も光電変換器7で受光すると、スクラッチ23aからの散乱光と弁別することが難しくなる。そこで、落射照明光12を集光レンズ6の表面に照射させないように構成した。
本第1の実施例においては、落射照明12による検出を先に、斜方照明11による検出を後に行っているが、斜方照明11による検出を先に、落射照明12による検出を後に行ってもかまわない。また、本第1の実施例においては、2度目の検出である斜方照明11による検出輝度値T(i)をA/D変換後一旦記憶部17に書き込んでいるが、2度目の検出輝度値T(i)を記憶することなく、検出と同時に既に記憶済みの1度目の落射照明12による検出輝度値S(i)を、比較演算部18において参照して輝度比較演算を行っても本発明を実現することは可能である。
次に、本発明に係る上記実施の形態を実現するための弁別原理について図3および図4を用いて詳細に説明する。本発明では、1個の欠陥を2つの異なる角度(例えば落射照明12と斜方照明11)から光束dで照射することにより弁別を行う。まず、落射照明光12として、集光レンズ6の表面に直接照射することなく、ウェハ面の法線方向或いは、その近傍から光束dで照射する。次に、斜方照明光11として、ウェハ面に対して水平方向に近い角度から光束dで照射する。この、落射照明12と斜方照明11はどちらが先に行われても関係ない。弁別は、この光束dの2方向照明それぞれにおいて得られる欠陥23a、24から発せられた散乱光の強度を比較することにより行う。欠陥23a、24からの散乱光強度は、欠陥23a、24が受光した光源光量に応じて放出される。図3に示すように、欠陥23a、24が受光する光源光量は光源入射方向への欠陥寸法の投影面積にほぼ比例すると考えて良い。スクラッチ23aの場合、この投影面積は落射照明時には幅Wにより、また斜方照明時にはD’に比例する。スクラッチ深さDは幅Wに比べて非常に浅いことから、この斜方照明投影長D’は落射照明投影長W’に比べて非常に短くなる。そのため、スクラッチ23aが受光する光源光量は斜方照明11の方が落射照明12に比べて弱くなり、その結果、スクラッチ23aから射出される散乱光の光量は、斜方照明11の方が弱くなる。それに比べて、異物24の場合、斜方照明11と落射照明12の投影長Φはほぼ同等であることから、異物24から射出される散乱光の光量は、落射照明と斜方照明を比べても大きくは変わらない。そこで、図4に示すように、この落射照明12と斜方照明11のそれぞれによる散乱光の検出輝度値を比較して、斜方照明11の方が落射照明12よりも小さければスクラッチ23a、同等あるいは斜方照明の方が大きい物を異物24と判別することが可能となる。
ところで、CMPによってスクラッチ23aが生じる絶縁膜(例えば、SiO2膜)22は、光に対して透明なため、光干渉も含めて下層からの正反射光が生じるが、特に、落射照明12の場合には、絶縁膜22の表面およびその下層からの正反射光(光干渉光も含む)を集光レンズ6の視野外に行くようにして検出しないようにする工夫が必要となる。勿論、斜方照明11の場合も、絶縁膜22の表面およびその下層からの正反射光(光干渉光も含む)を集光レンズ6の視野外に行くようにして検出しないようにする工夫が必要となる。また、光源2として、ブロードバンドの光若しくは白色光を出射するものを用いれば、絶縁膜22の表面からの正反射光と下層からの正反射光との間の光干渉の問題は生じない。しかしながら、絶縁膜22上の微細な(特に深さDが浅い)スクラッチ23aおよび異物24から強度の強い散乱光を得るためには、照明光としてUV光、若しくはDUV光を用いるのが好ましい。
図5に弁別結果の一例をグラフで示す。これは、横軸に落射照明時の検出輝度値、縦軸に斜方照明時の検出輝度値をとったグラフである。この場合、図中の弁別線20から下の領域がスクラッチ23aの領域、上の領域が異物24の領域となる。
次に、以上説明した弁別手法を用いて演算処理するフローの一実施例について図6を用いて説明する。まず、ステップS61において、光電変換器7は、落射照明12による欠陥i毎の輝度信号S(i)を検出してA/D変換後記憶部17に記憶する。次に、ステップS62において、光電変換器7は、斜方照明11による欠陥i毎の輝度信号T(i)を検出してA/D変換後記憶部17に記憶する。そして、ステップS63において、比較演算部18は、記憶部17に記憶された落射照明により検出した欠陥i毎の輝度信号S(i)と斜方照明により検出した欠陥i毎の輝度信号T(i)との比率R(i)を次に示す(数1)式により求める。
R(i)=T(i)/S(i) (数1)
ここで、iは、複数個の欠陥を評価するために、欠陥毎につけた認識番号である。なお、光束dのサイズや光電変換器7の画素サイズにより1個の欠陥が複数の欠陥として検出される場合があるため、近接して検出される欠陥を示す信号に対して膨張処理(連結処理)によって一つの欠陥を示す信号に変換する必要がある。そのため、欠陥毎につける認識番号iは、連結処理された一つの欠陥を示す信号に対して付与されることになる。
さらに、ステップS64において、比較演算部18は、上記求められた輝度比率R(i)が予め設定した閾値(判定基準値:図5に示す弁別線20)よりも大きければ異物24、小さければスクラッチ23aと判別し、全体制御部9へ出力する。本実施例においては、斜方照明時の検出輝度T(i)を落射照明時の検出輝度値S(i)で除算しているが、その逆に、落射照明時の検出輝度値S(i)を斜方照明時の検出輝度値T(i)で除算してもかまわない。この場合は、比率R(i)が予め設定した閾値(判定基準値:図5に示す弁別線20)よりも大きければスクラッチ23aであり、小さければ異物24となる。
次に、反射ミラー4cの設置方法の実施例について図7を用いて説明する。これは、暗視野検出系の迷光を防止して、高感度に欠陥を検出するための手法である。スクラッチ23aの検査には、先に述べた原理から分かるようにウェハ10の面に対して法線に近い方向からの照明が必要となる。しかし、図8に示すような落射照明手法(レンズ6の上に反射ミラー4c’を置く。)では、入射光が集光レンズ6を透過してウェハ10を照明するため、いわゆる迷光を生じてしまい、その結果検出画像にノイズが生じてしまうことになる。具体的には、集光レンズ6の表面の微細な研磨跡や集光レンズ6上に付着したゴミ等から生じる散乱光が迷光となってしまうからである。このため、欠陥23a、24からの微小な散乱光を光電変換器7で受光して観察する場合、この迷光が致命的となる。即ち、極微小なスクラッチ23aからの散乱光は、迷光によるノイズに埋もれて検出することができなくなってしまう。
そこで、本発明においては、図7に示すように、強度の強い入射光が集光レンズ6の表面に照射されず、しかも、ウェハ10(層間絶縁膜22の表面(CMP面)およびその下層の配線層などの表面並びにスクラッチ23aの表面および異物24の表面)からの正反射光成分である0次回折光が集光レンズ6の瞳、即ちNA内に入射しないように反射ミラー4cを設けることを考案した。図7(a)には、反射ミラー4c1をウェハ10とレンズ6の間の、ほぼウェハ10の法線上に配置し、落射照明光12aを集光レンズ6の表面に照射されないように横方向から反射ミラー4c1に対して入射させて反射させ、しかもウェハ10からの正反射光成分を反射ミラー4c1で反射させてレンズ6の瞳内に入射させずにスクラッチ23aや異物24からの散乱光(1次以上の回折光成分)の内、斜線で示す領域(平面的には輪帯状)の散乱光(低次の回折光成分)をレンズ6の瞳内に入射させる手法を示す。なお、この反射ミラー4c1としては、外形がほぼ楕円形状となる。これを、垂直照明による散乱光検出と称する。
また、図7(b)には、反射ミラー4c2をウェハ10と集光レンズ6の間で、かつ、集光レンズ6のNAから外側に配置し、落射照明光12bを集光レンズ6の表面に照射されないように横方向から反射ミラー4c1に対して入射させて反射させ、しかもウェハ10からの正反射光成分を集光レンズ6の瞳外にしてスクラッチ23aや異物24からの散乱光の内、斜線で示す領域の散乱光をレンズ6の瞳内に入射させる手法を示す。なお、反射ミラー4c2を周方向に広げると、反射ミラー4c2によって照明される照明光は輪帯照明となる。ところが、図7(b)に示すように、反射ミラー4c2を一部分にすると、輪帯照明における一部分の照明となる。これを、疑似垂直照明による散乱光検出と称する。また、図7(c)には、反射ミラー若しくはハーフミラー4c3を集光レンズ6の上に配置し、開口50を中央に穿設した集光レンズ6を配置し、ハーフミラー4c3で反射した垂直照明光12aを、集光レンズ6の表面に照射させないで、上記開口50を通過させてウェハ10上の絶縁膜CMP面に照射し、しかもウェハ10からの正反射光成分をフーリエ変換面に設けられた空間フィルタ51で遮光し、スクラッチ23aや異物24からの散乱光の内集光レンズ6を通して得られる散乱光を光電変換器7で受光する手法を示す。
また、図7(d)には、図7(c)と同様に、落射照明光12aをハーフミラー52を透過し、集光レンズ6の開口50を通してウェハ10のCMP面に垂直照明し、ウェハ10からの正反射光をフーリエ変換面に設けられた空間フィルタ53で遮光し、スクラッチ23aや異物24からの散乱光の内集光レンズ6を通して得られる散乱光をハーフミラー52で反射させて光電変換器7で受光する手法を示す。以上説明したように、図7(c)(d)では、図7(a)と同様に、集光レンズ6の中央に開口50を形成することによって、集光レンズ6の表面から迷光を発生することなく、垂直照明および垂直方向からの散乱光検出が可能となる。そのため、水平面内でスクラッチ23aの向きがどのように形成されたとしても、非常に浅いスクラッチ23aのエッジから生じる散乱光を比較的一様に光電変換器7で受光することができ、一様な検出輝度値を得ることができる。さらに、図13(b)に示すように、線状のパターンである大スクラッチ23bに対して直角方向の指向性の強い回折光を得るためにも、垂直照明が疑似垂直照明よりも好ましい。
ところで、図7(a)の垂直照明による散乱光検出の場合、入射光はレンズ6の下を通過しており、明らかに集光レンズ6の表面に照射されず、迷光が生じることはない。また、ウェハ10からの正反射光は、反射ミラー4c1で反射するため、やはり集光レンズ6の瞳には入らない。さらに、図7(c)および図7(d)に示す垂直照明も同様となる。また、図7(b)の疑似垂直照明による散乱光検出の場合も、明らかに入射光は集光レンズ6を透過しない。また、反射ミラー4c2を集光レンズ6のNAの外に配置しているため、ウェハ10からの正反射光成分は集光レンズ6の瞳には入らない。つまり、何れの方法も光線強度が強く、迷光を生じやすい入射光は集光レンズ6の表面に照射されず、ウェハからの正反射光は集光レンズ6に入射しないように、落射照明を実現している。このため、迷光が生じにくく、層間絶縁膜22に対してCMPが施されたCMP面に発生したスクラッチ23aおよび異物24からS/N比の高い検出画像を得ることが可能となる。なお、層間絶縁膜22は光に対して透明であるため、落射照明をした際、その下層から正反射した光が戻ってくるが、次に説明するように、レンズ6のNA内に入射されないので、スクラッチ23aおよび異物24からの散乱光検出に影響を及ぼすことなく、スクラッチ23aおよび異物24を光電変換器7から得られる信号によって検出することが可能となる。
更に、図7に示す落射照明12a、12bは、迷光の解決による理由だけでなく、特にスクラッチ23aからの散乱光強度分布の強い成分を受光しやすくなることから、斜方照明11だけと比べて高い検出感度を得られる。これは、スクラッチ23aからの散乱光強度の内、低次回折光成分が比較的強いためである。即ち、ウェハ面の法線近傍から照明すれば、低次の回折光成分がウェハ10から反射されて集光レンズ6で集光されやすくなるためである。この結果、斜方照明11のみによる場合と比べてスクラッチ23aについて感度の高い検出が可能となる。この様に、垂直照明12a、或いは疑似垂直照明12bのみを用いることにより、高感度なスクラッチ23aの検査を実現することが可能となる。
ところで、集光レンズ6のNA内に反射ミラー4c1を配置しても、レンズ6等による結像特性に影響を与えないように、反射ミラー4c1の形状をほぼ楕円形状に形成すれば、図7(a)に斜線で示す領域(平面的には輪帯領域)の散乱光を集光レンズ6で集光して結像させることができることになる。しかし、もし、集光レンズ6のNA内に反射ミラー4c1が存在することが結像特性に悪影響を及ぼすような場合、垂直照明時には反射ミラー4c1をNA外に退避させる機構が必要となる。半導体検査の場合、欠陥検査装置から発生するゴミを極力無くす必要がある。この観点から見れば、可動機構をウェハ上方に設けるのは好ましくない。しかしこの様な場合でも、疑似垂直照明12bを用いれば良い。疑似垂直照明12bの場合、反射ミラー4c2はNAの外に有るため決して結像特性に悪影響を及ぼすことは無く、別途退避機構を設ける必要が無い。
また、本発明に係るスクラッチ等の表面検査装置を、斜方照明のみによる異物検査装置として使用する場合には、垂直照明が不要となるため、図7(a)に示す反射ミラー4c1を退避させて集光レンズ6のNAの全てを利用して異物から発生する散乱光を有効に集光して光電変換器7で受光させることも可能である。しかし、反射ミラー4c1を退避させなくして、ゴミの発生をなくするためには、表面検査装置の垂直照明としてスクラッチの検出精度が多少低下する疑似垂直照明12bを用いれば良い。また、垂直照明として、図7(c)および(d)に示す手法を用いる場合には、斜方照明のみによる異物検査装置として使用する場合にも垂直照明を停止させることによって適用することが可能となる。さらに、斜方照明のみによる異物検査装置として使用する場合において、周期的な配線パターンが形成されたメモリセル上の異物を検出しようとすると周期的な配線パターンからの回折光に基づく回折パターンを遮光する必要があるため、上記空間フィルタ51、53を直線状の空間フィルタに交換すればよい。
また、本第1の実施例においては1個の検出光学系5を用いているが、図9に示すように複数個の検出光学系5a、5bを用いても良い。特に、欠陥23a、24から生じる散乱光の強度が最も強く検出できる方向に、照射方向毎に検出光学系5a、5bを配置すると高い感度での検出が可能となる。例えば、図9に示すように落射照明時の検出光学系5aとしては、散乱光強度の強いウェハ法線方向にレンズ6a、および光電変換器7aを設ける。このレンズ6aの配置は、先に述べた垂直照明12aでも、疑似落射照明12bの何れでも適用可能である。また、斜方照明時の検出光学系5bとしては、散乱光強度の強い斜方入射光の正反射方向へ集光レンズ6b、および光電変換器7bを設ける。しかし、このレンズ6b、および光電変換器7bからなる検出光学系5bに関しても、ウェハ10からの正反射光成分は集光させなくする必要がある。そのため、正反射光射出方向55に検出光学系5bを設けるのは避け、正反射光成分が集光レンズ6bのNAから外れる場所に設置するのが好ましい。本実施例の場合、2つの検出光学系5a、5bを持つため、2つのA/D変換部16a、16bおよび輝度記憶部17a、17bを設けた。しかし、1つの記憶部17、例えば1個のRAMの中でアドレスを変えて別々に記憶しても同様の処理は勿論可能である。
次に、本発明に係るスクラッチ等の表面検査装置の第2の実施例について図10〜図12を用いて説明する。本第2の実施例において、第1の実施例と相違する構成は、検出光学系5にある。即ち、第2の実施例における検出光学系5は、高角度検出光学系5a、中角度検出光学系5c、および低角度検出光学系5bを設けることにある。なお、第1の実施例では、被検査物であるウェハ10を例えば真空吸着により固定されて設置する基板設置台51をステージ15上に設ける構成について省略されている。また、この第2の実施例においては、ステージ15を、直進ステージ15aと回転ステージ15bとから構成している。即ち、ステージ15としては、ウェハ10上の任意の座標に照明できるように、ウェハ10を搬送することができれば良い。更に、演算処理部8において、A/D変換部16および記憶部17も上記検出光学系5a〜5cに対応して構成する。照明光学系1aについては、第1の実施例とほぼ同様に構成する。即ち、垂直照明12については、反射ミラー4aで反射した照明光を反射ミラー4dで反射させ、ハーフミラー52を透過し、図7(d)に示すように、集光レンズ6aに形成された開口50を通過して光束dでウェハ10上のCMP面に照明される。そして、ウェハ10から発生した正反射光は空間フィルタ53で遮光され、スクラッチ23aのエッジや異物24から発生する低次の回折光が高角度検出光学系5aの集光レンズ6aによって集光されて光電変換器7aによって受光され、さらに高次の回折光が中角度検出光学系5cで検出される。勿論、垂直照明12としては、図7(a)(b)(c)に示す構成でもよい。斜方照明11については、反射ミラー4bで反射して光束dでウェハ10上のCMP面に照明される。そして、ウェハ10から発生した正反射光を検出することなく、特に異物24から発生する回折光が検出光学系5a〜5cによって検出されることになる。
次に、第2の実施例の検出光学系について、図11を用いて具体的に説明する。即ち、集光レンズ6a〜6iおよび光電変換器7a〜7iから構成される、高角度検出光学系5aを1個、中角度検出光学系5cを4個、および低角度検出光学系5bを4個配置して構成する。本実施例においては、光電変換器7a〜7iとしてフォトマルを用いている。このフォトマルを図11に示すように9個用いて、これらをドーム状に配置している。このそれぞれのフォトマル7a〜7iに、集光レンズ6a〜6iを具備させている。本実施例においては集光レンズ6a〜6iとフォトマル7a〜7iを検出光学系に用いているが、例えばCCDカメラ、或いは、TDIセンサ等に結像させても良い。また、光電変換器7a〜7iの個数を9個に限定するわけでもない。光電変換器7a〜7iの出力はA/D変換部16a〜16iを介して記憶部17a〜17iに書き込まれる。同時に、ステージコントローラ14から得られるウェハ10の座標データも記憶部17a〜17iに書き込む。そして、座標データと輝度データが比較演算部18に送信される。ウェハ全面を検査する場合には、この様に座標データと輝度データを記憶部17a〜17iに対にして書き込む必要がある。しかし、特定の座標に固定して検査する場合、座標データは必ずしも必要ではない。また、同一の記憶部17a〜17iに座標データと輝度データが対に記憶される必要はなく、別々の記憶部であっても良い。また、座標そのものでなくても良く、例えば検出した欠陥に認識番号を付け、それを記憶しておいてもかまわない。あくまでも、同一欠陥に対する斜方照明の検出輝度データと落射照明の検出輝度データの対応が取れれば良い。本実施例においては、座標データを用いて落射照明12と斜方照明11の2式のデータの内、同じ座標若しくは、近傍の座標に存在するデータを同一欠陥の輝度データであると認識させることにより、落射照明12と斜方照明11の輝度値S(i)、T(i)の比較を行っている。
図11(a)および(b)に示すように、落射照明12の入射方向(ウェハ面に対する法線方向から角度Avを有する。好ましいのは、該角度が0である。)に1個の検出光学系5aを設けた。これを、高角度検出光学系5aと称する。高角度検出光学系5aからウェハ面に近い方へ順次、中角度検出光学系5c、低角度検出光学系5bと称して4個づつ設けた。本実施例においては、合計9個の検出光学系を用いたが、本発明を実現するための手段として個数を限定するものでは無い。
また、本実施例においては、図12(a)、(b)に示すように落射照明12による時の受光手段として9個全ての検出光学系5a〜5cを用いた。そして、落射照明12による時の受光輝度としてこの9個の光電変換器7a〜7iの受光輝度の和を用いた。しかし、落射照明12による時の受光輝度として、9個全てを用いる必要はなく、高角度検出光学系5aのみ、或いは中角度検出光学系5cのみ、或いは、高角度検出光学系5aと中角度検出光学系5cの受光光量の和を用いても良い。特に、落射照明12によるスクラッチ23aや異物24から生じる低次回折光の検出としては、高角度検出光学系5aに代わって中角度検出光学系5cのみで行ってもよい。このとき、中角度検出光学系5cのNAには、正反射光(0次回折光)が入射されないので、単純に中角度検出光学系5cの光量の和をとればよい。このように、様々な組み合わせが考えられるが、本実施例では最も欠陥の検出感度が高くなるように、いわゆる高NA(Numerical Aperture)化するために全ての検出光学系5a〜5cの受光光量の和を用いた。しかし、スクラッチ23aおよび異物24からの回折光の多くは、高角度検出光学系5a、および中角度検出光学系5cによって検出されるので、両者の受光光量の和を用いるのが良い。
また、ウェハ面から角度Voをなす斜方照明11による時の受光手段としては、図12(c)、(d)に示すように斜方照明入射時のウェハからの正反射方向に近い側の低角度受光器6b、7b;6c、7cの2個を用いた。そして、斜方照明11による時の受光輝度としてはこの2個の受光輝度の和を用いた。これも、この低角度2個に限定するものでは無い。本実施例においては、高感度化を目指すために図9において述べたように正反射光を受光することなく、散乱光分布強度の強い方向の検出光学系(集光レンズ6b、および光電変換器7b)5bを選択したに過ぎない。弁別を行うという観点からは、2方向照明を用いてそれぞれの散乱光強度を検出することが大切であり、受光手段5bの方向はさほど問題ではない。検出光学系(集光レンズ6、および光電変換器7)5の方向は、微細な異物24をスクラッチ23aと弁別して何処まで検出しなくてはならないかに応じて決定すれば良い。また、検出光学系5として高角度検出光学系5aにした場合、落射照明光によって表面から迷光が発生しないようにする必要がある。
以上説明した、2方向照明による異物24とスクラッチ23aの弁別方式の実施例は、スクラッチ23aの深さが浅いという形状の特徴に着目したものである。
しかしながら、上記に説明したように、CMPの場合、外部からCMP装置内に大きな異物が混入することにより、稀ではあるが非常に深い傷を生じることがある。このように、研磨中に大きな異物が混入し、微粒子である研磨砥粒ではなく、大きな異物によりスクラッチが生じる場合には、幅Wに対して深さDが深いスクラッチ23bが生じることになる。このように深さが深いスクラッチ23bの場合には、前記弁別方法のみでは本来スクラッチ23であるはずのものを異物24として誤認識してしまうことになる。その結果、見落としてはならない非常に大きなスクラッチを認識できないことになってしまう。
そこで、次に、深いスクラッチ23bも、異物24と弁別して認識する第2の実施の形態について説明する。即ち、第1の実施の形態では、異物24も深さの深い大スクラッチ23bも、比率R(i)=T(i)/S(i)が大きくなるため、図6に示す弁別処理フローのステップS64において、深さの深い大スクラッチ23bも異物24と同様に検出されることになる。そこで、第2の実施の形態においては、更に、大スクラッチ23bと異物24とを正確に弁別することにある。なお、S(i)は、落射照明12による検査1回目の連結処理後の欠陥i毎のデータにおける輝度データを示す。T(i)は、斜方照明11による検査2回目の連結処理後の欠陥毎のデータの内、同じ座標値iを示す輝度データを示す。
即ち、幅Wに対して深さDが深いスクラッチ23bは同時に長さも長いことに着目している。これは、CMPにおける研磨は、回転しながら行われるためであり、打痕のように局所的に深く掘れることはありえないためである。本発明に係る第2の実施の形態では、この必然性に着目しており、図6のステップS64で異物24と認識したものの中から、線状に長いものを大スクラッチ23bとして更に分類する。これは、図13に示す原理に基づく。線状のパターンである大スクラッチ23bに、例えば図13(b)に示すように、光束12を法線方向から照射した場合、回折光は線状パターン23bの直角方向に非常に指向性の強い分布を示す。なお、図13(a)は、線状のパターンである大スクラッチ23bに対して光束11を法線方向から傾きを持たせて照射した場合を示し、これは異物検査装置において用いられている斜方照明による規則正しく繰り返し並んでいる配線パターンから生じる直線状の回折光パターンを除去する空間フィルタ手法の原理を示す。本発明においては、図13(b)に示すように垂直照明12による大スクラッチ23bからの回折光の強い指向性を認識することにより、欠陥が異物24ではなく、線状のパターンである大スクラッチ23bであることを識別する。
まず、大スクラッチ23bと異物24との弁別原理について図14、および図15を用いて説明する。まず、例えば、落射照明12をウェハ10に対して施し、演算処理部8は、ステップS65において、複数個(8つ)の低角度および中角度検出光学系5b、5c(光電変換器7b〜7i)の中から輝度の最も高い検出光学系Aを選択する。次に、演算処理部8は、ステップS66において、A検出光学系と直交する検出光学系Bの輝度値Sb(i)を参照し、そして、ステップS67において、検出光学系Aの輝度値Sa(i)と検出光学系Bの輝度値Sb(i)とを比較して輝度比率(Sa(i)/Sb(i))を算出する。次に、演算処理部8は、ステップS68において、算出された輝度比率(Sa(i)/Sb(i))を予め設定した設定値(閾値)と比較して大きいものを線状欠陥である大スクラッチ23b、小さなものを非線状欠陥である異物24若しくは小スクラッチ23aに分類する。
以上説明したように、第2の実施の形態によれば、演算処理部8において、大スクラッチ23bを、異物24若しくは小スクラッチ23aと弁別することができるので、第1の実施の形態と組み合わせることによって、小スクラッチ23a、異物24、大スクラッチ23bを弁別できることになる。次に、深いスクラッチ23bも、異物24と弁別して認識する第3の実施の形態について説明する。即ち、本第3の実施の形態においては、図16に示すように、更に、例えばウェハに横断するような長大な巨大スクラッチ23cを抽出する方式も組み合わせている。目視で見ても分かるほどの長大なスクラッチ23cは、演算処理部8において、簡単に連結処理後の長さを評価するだけで抽出することができる。しかし、この巨大スクラッチ23cを抽出する処理は無くても本発明の機能は損なわない。
まず、演算処理部8における本アルゴリズムでは、まず入射方向を変えた2回(1回目:落射照明12、2回目:斜方照明11)の検査データの各々について、ステップS70a、S70bの各々において連結処理を施し、ステップS71a、S71bにおいて巨大スクラッチ座標データ1、2を取得する。この連結処理とは、座標の近いデータを1つの欠陥として認識する膨張処理である。例えば、3×3画素において、周辺に欠陥を示す信号が検出されたならば、中心の画素に欠陥を示す信号を付与する膨張処理を複数回繰り返すことにより僅か離れていた欠陥が連結されることになる。これは、1個の欠陥をスポットサイズ、画素サイズ等の要因により複数個の欠陥として抽出することが有るためである。次に、演算処理部8は、ステップS72において、これら連結処理後の欠陥を示す座標データ1、2を参照すること(例えば欠陥を示す信号の論理和を取ること)により長い欠陥を巨大スクラッチ23cとして抽出する(巨大スクラッチデータを作成する)。また、演算処理部8は、ステップS72において、これら連結処理により連結された欠陥を示す座標データ1、2の個数(例えば画素数)を参照することにより、面積の大きな欠陥を巨大スクラッチ23cとして抽出する(巨大スクラッチデータを作成する)。
次に、演算処理部8は、ステップS73a、S73bの各々において、検査1回目のデータ、検査2回目のデータの各々から、巨大スクラッチと認識されたデータを除去し、ステップS61、S62の各々において検査1、2回目の連結処理後のデータを取得し、記憶部17に記憶する。次に、比較演算部18は、これら取得されて記憶部17に記憶された検査1、2回目の連結処理後のデータを用いて、ステップS64において、図6に示す2方向照明によるスクラッチ23aと異物24若しくは大スクラッチ23bとの弁別処理を行う。
次に、演算処理部8は、ステップS65〜S68において、図15に示すように、異物24若しくは大スクラッチ23bに弁別されたデータから大スクラッチ23bについて弁別処理を行う。この弁別処理に関して、更に具体的に図17を用いて詳細に説明する。即ち、この弁別処理は、低角度検出光学系5bと中角度検出光学系5cのフォトマル7b〜7i、合計8個を用いている。この場合、低角度と中角度ではウェハ10に対する立体角が異なるため、低角度と中角度の感度差を生じる。また、フォトマル7b〜7iは製品個々の感度特性に差を生じやすい。このため、8個のフォトマル間の感度バランスを調整しなくてはならない。そこで、ステップS74において、予め、個々のフォトマル7b〜7iへの印加電圧を変えて感度調整を行う。また、非常に微妙な感度バランス調整を行う場合、個々のフォトマル7b〜7iに対してゲインを設けて、検出した輝度をソフト的に、あるいはハード的に強度補正を行うのも効果的である。ただ、このゲインによる強度補正は絶対必要なものではない。次に、フォトマル間の感度バランスの補正を行った後のデータを用いて、演算処理部8は、ステップS75において、対向するフォトマル間から得られる輝度の和を取る。その結果、8個のフォトマル7b〜7iのデータは4個になる。そして、演算処理部8は、ステップS65において、図15のステップS65と同様に、その4つの輝度和のデータの中から最も大きなデータ(ΣSa(i))を選択する。そして、演算処理部8は、ステップS66〜S67において、図15のステップS66、S67と同様に、それと直交する位置の輝度和のデータSb(i)を参照して直交輝度比率(ΣSa(i)/ΣSb(i))を算出する。さらに、演算処理部8は、ステップS68において、この直交輝度比率(ΣSa(i)/ΣSb(i))が設定閾値50よりも大きければ大スクラッチ23b、小さければ異物24に分類した。以上述べた手法により、異物と誤認識する可能性のある大スクラッチ23bを異物24とは別に分類することが可能となった。
次に、2方向照明によりスクラッチと弁別した欠陥23aを更に詳しく形状分類する第4の実施の形態について図18から図20を用いて具体的に説明する。CMPは、化学的機械的研磨と呼ばれるように、単に機械的な作用による研磨だけでなく、エッチング的な化学的な作用による研磨も同時に行われる。通常、酸化膜研磨工程では機械的な作用が支配的な研磨条件であり、主なスクラッチ23aは、図18中タイヤ痕と記載している様な一個が三日月状の微細な線状のスクラッチであり、これが連続した傷23aaの場合が多い。その逆に、この化学的な研磨作用が大きく働く場合には、図18中ディンプル痕と記載しているような平面断面形状が円形であるすり鉢上の傷23abを生じることがある。また、研磨パッドが使い古されてきて、研磨パッドが硬化してくると、図18中面荒れと記載しているようなランダムな方向に生じた微細スクラッチ群23acを生じることがある。この様に、研磨条件の不具合要因に応じて生じるスクラッチ形状が異なる。逆に言えば、スクラッチの形状を詳細に分類して認識することにより、改善すべきプロセス条件の絞り込みが容易になり、不具合対策期間を大幅に短縮することが可能となる。そこで、前記の2方向照明による異物とスクラッチの弁別方式において、スクラッチ23aと弁別されたデータに関して更に詳しく形状分類を行う。これは、図18に示すように、水平方向と垂直方向の散乱光強度分布を詳細に調べて、スクラッチの形状分類を行う手法である。図18に示すように、タイヤ痕23aaは大スクラッチ弁別において述べたように、線状痕であるため水平方向に強い指向性を持った回折光を生じる。しかし、ディンプル痕23abと面荒れ23acに関しては水平方向散乱光強度分布には指向性が認められにくい。そこで、垂直方向の散乱光強度分布を用いてディンプル痕23abと面荒れ23acを分類する。これは、ディンプル痕23abは垂直方向に指向性が認められるが、面荒れには認められないためである。そこで、図19に示すように、演算処理部8において、水平方向、あるいは垂直方向の回折光の分布を評価することにより詳細な形状の分類を順次行う。本実施例においては、水平、垂直の双方の散乱光強度分布を用いているが、分類する形状に応じて、どちらか一方でも良い。即ち、ステップS61、S62において、第1回目の検査は、落射照明12による上方検出(高角度検出光学系5a、中角度検出光学系5c、低角度検出光学系5b)によって行われ、第2回目の検査は、斜方照明11による前方低角度検出光学系5b(6b、7b;6c、7c)または高角度検出光学系5aおよび/または中角度検出光学系5cによって行われる。
次に、本実施例においては、ステップS63、S64においてスクラッチ23aと分類されたデータから、演算処理部8は、ステップS76において、図17に示す同じ手法を用いて、まず、落射照明12による水平方向の散乱光強度分布(Sha(i)/Shb(i))を評価して、指向性の強いものをタイヤ痕23aaと分類する。そして、演算処理部8は、残りのデータに関して、ステップS77において、垂直方向の指向性を評価して、ディンプル痕23abと面荒れ23acとに分類する。本実施例においては、水平方向の指向性は図17に示すフローと同様に行った。垂直方向の指向性評価は様々な方法が考えられるが、例えば高角度検出光学系5aの光電変換器7aで検出される検出輝度Sh(i)と、低角度検出光学系5bおよび中角度検出光学系5cの光電変換器7a〜7iで検出される検出輝度の和ΣSl(i)との比率(Sh(i)/ΣSl(i))を取れば良い。図20に弁別結果の一例を示す。図20(a)は、落射照明12による水平方向の輝度比率(Sha(i)/Shb(i))を評価してタイヤ痕23aaとディンプル痕23ab、若しくは面荒れ23acとに分類した結果であり、図20(b)は、落射照明12による垂直方向の輝度比率(Sh(i)/ΣSl(i))を評価して面荒れ23acとディンプル痕23abを分類した結果である。この図20(b)において、ディンプル痕23abは直径が大きくなるほど垂直方向への回折光の指向性が強くなる。これは、一般に知られているエアリーディスクの原理とも一致する知見である。この輝度比率からディンプル痕の直径を推定することも可能である。以上説明した第4の実施の形態により、CMPで平坦に加工された絶縁膜上に存在する異物24や様々な形状を有するスクラッチ欠陥23を弁別して検査することが可能となり、その結果が演算処理部8から出力されて全体制御部9に接続された記憶装置31に格納されることになる。
次に、本発明に係る前述したスクラッチ等の表面検査において、検出欠陥の分類が正確に行われているか否かを事前に評価する第5の実施の形態について図1、および図21〜図23を用いて説明する。ところで、図1に示すように、スクラッチ等の表面検査装置は、記憶装置31、キーボードやマウスや記憶媒体などから構成された入力手段32、デイスプレイ等から構成された表示装置33、および例えばSEM装置等に接続されたネットワーク34を接続する全体制御部9が備えられている。当然、記憶装置31には、演算処理部8において弁別処理された検査結果が格納されていることになる。
さらに、本発明に係るスクラッチ等の表面検査では、感度の確認も同様に必要ではあるが、検査結果である検出欠陥の分類が正確に行われているか否かをレビューにより事前に評価しなければならない。このため、単に検出輝度情報だけでなく、弁別処理結果も踏まえてデータをサンプリングしなくてはならない。具体的には、数多く検出された欠陥の中から、弁別線位置(閾値)20、50に近い分類結果が怪しそうな欠陥のみをSEM装置(図示せず)でレビューすると言った、レビュー対象を選択して効率的に評価することが重要となる。即ち、次に説明するように、表示装置33の画面40上に表示された弁別線(閾値)20、50に近い分類結果が怪しい欠陥を指定することによって、その欠陥の位置座標を取得することができる。そして、このウェハ10をSEM装置に搭載し、取得された位置座標を基に上記欠陥についてSEM観察することによって、異物24なのか、各種のスクラッチ23なのかをレビュー評価することが可能となる。そして、このSEM装置によるレビュー評価結果を、例えばネットワーク34を介して全体制御部9に入力して記憶装置31に格納すれば、上記弁別線(閾値)20、50の妥当性をレビューすることが可能となる。
そこで、表示装置33に表示する画面40を、図21に示すように、スクラッチ弁別輝度分布グラフ41、大スクラッチ弁別輝度分布グラフ42、そして、欠陥マップ上対応座標検索43、及び、弁別結果の表示ウィンドウ44から構成した。スクラッチ弁別輝度分布グラフ41は、落射照明による受光輝度S(i)と斜方照明による受光輝度T(i)との関係を示し、閾値(弁別線)20によって微細スクラッチ23aと異物24/大スクラッチ23bとが弁別される状態を示すことになる。大スクラッチ弁別輝度分布グラフ42は、最大輝度(ΣSa(i))と直交輝度比率(ΣSa(i)/ΣSb(i))との関係を示し、閾値(弁別線)50によって異物24と大スクラッチ23bとが弁別される状態を示すことになる。欠陥マップ上対応座標検索43は、ウェハ10上に生じているスクラッチ23や異物24の発生状況(欠陥マップ)を示すものである。弁別結果の表示ウィンドウ44は、サイズ(小、中、大)に応じた異物24の個数、およびスクラッチ(タイヤ痕23aa、ディンプル痕23ab、面荒れ23ac、大スクラッチ23b、巨大スクラッチ23c)23の個数を示すものである。なお、この弁別結果の表示ウィンドウ44としては、ヒストグラフ表示も可能である。
なお、4種類の表示内容を別々のウィンドウ内に表示したが、1個のウィンドウ内に複数個のグラフを表示してもかまわない。また、この4種類が全て同時に表示されていなくてもかまわない。また、図示していないが、スクラッチの内容を水平方向及び垂直方向の輝度比率を用いて解析を行った結果である輝度比率画面もプルダウンメニューにより選択して表示することができる。また、欠陥マップ上対応座標検索43において、欠陥マップ上の欠陥をカーソル32等で指定すると、欠陥座標、弁別結果、各光電変換器7a〜7iの受光輝度を1個、若しくは複数個の項目で表示することが可能である。また、スクラッチ弁別輝度分布グラフ41、及び、大スクラッチ弁別輝度分布グラフ42の片方、若しくは双方のグラフ上において、カーソル32等で指定された欠陥に該当するデータを明滅、或いは、色を変える、或いは表示マークの大きさを変える等により、対応するデータを作業者が容易に判別しやすいように表示することが可能となる。これは、同様にスクラッチ弁別輝度分布グラフ41、或いは、大スクラッチ弁別輝度分布グラフ42上にて、カーソル等の入力手段32によりデータ点を選択すると、対応するデータを欠陥マップ上で、表示マークを明滅させる、或いは色を変える、或いは、表示マークの大きさを変える等により他のデータと区別してモニタ33上で判別できるようにした。また、グラフ41、42上で指定したデータの欠陥座標、弁別結果、各光電変換器7a〜7iの受光輝度の情報を、1個、若しくは複数個の項目について表示する。この様に、任意の欠陥データをグラフ41、42上、若しくは欠陥マップ43上において選択し、その検査情報をモニタ33上に表示することにより、弁別処理の妥当性の検討を短期間に終了させることが可能となる。
このように全体制御部9は、記憶装置31に格納された検査結果(異物24やスクラッチ23の座標データ、異物24や各種スクラッチ23の弁別結果、および落射照明および斜方照明によって各光電変換器7a〜7iから得られる受光輝度のデータ)を表示装置33の画面上に表示することが可能となり、事前に、検出欠陥の分類が正確に行われているか否かをレビューすることが可能となる。特に、グラフ表示41、42において、弁別するための弁別線(閾値)20、50の妥当性についてレビューすることが可能となる。
また、図21に弁別結果44で示すように光電変換器7a〜7iによる受光輝度の大きさに応じて異物24、スクラッチ23の各分類における欠陥の大きさを推定して幾つかのカテゴリーに分類して表示することも検査結果を有効利用するのに効果的である。異物24、スクラッチ23ともに、半導体の配線間隔等、設計値に対して十分小さな(サイズが小である)欠陥は、製品機能に致命的なダメージを与えることは少ない。その逆に、非常に大きな(サイズが大である)欠陥が数多く発生した場合には即時に生産を中止しなくてはならない。つまり、検出した欠陥の大きさに応じても対応策が異なる。そこで、弁別結果44で示すように、致命的な欠陥ではない極微小欠陥をサイズが小、致命に至りやすい欠陥をサイズが中、必ず致命に至ると想定される大きな欠陥をサイズが大と3つのカテゴリーに分類した。この、カテゴリー数は3つである必要はなく、用途に応じて1、若しくは複数個のカテゴリーを設ければ良い。また、異物24、スクラッチ23の分類全てについて一律に3つのカテゴリーを設定したが、異物、或いは、各スクラッチの分類毎に異なる数のカテゴリーを設けても良い。また、各カテゴリー毎に小計を求めた。また、異物24、スクラッチ23毎に合計を求めた。また、異物24とスクラッチ23の合計を足し合わせた欠陥合計を表示させても良い。
以上説明したように、全体制御部9が、弁別結果44として、異物24および各種スクラッチ23についてカテゴリー毎の小計、或いは合計を出力することができるように構成したことにより、実際、製造現場において用いる場合において、これらのカテゴリー毎の小計、或いは合計数を管理することが可能となり、その結果、スクラッチ23、異物24の発生具合を効率的にモニタリングすることが可能となり、適切な対応策を取ることができることになる。
更に、全体制御部9は、詳細に欠陥サイズの分布を見るために、度数分布表示機能を備えている。これは、図22に示すように横軸を落射照明時の受光輝度、縦軸に度数を取ったものである。本図においては、タイヤ痕23aaと分類された欠陥データについてのみ度数分布表示を行っている。これは、異物24、スクラッチ23の各分類毎、或いはスクラッチと認識されたものの全て、或いは、異物24とスクラッチ23を合わせた全欠陥について表示を行う等、組み合わせは様々考えられる。図示していないが、プルダウンメニュー等で容易に組み合わせを選択できるようにしている。また、横軸に各光電変換手段7a〜7i毎の輝度、或いは、任意の組み合わせについて光電変換手段7a〜7iの受光輝度和を算出しても良い。また、斜方照明時のデータに関して同様の処理を行っても良い。この度数分布表示機能を用いることにより、欠陥分布を詳細に分析できるのと同時に、散乱光の分布を詳細に解析することも容易になる。
また、これらの検査データを解析するのには、この様に専用の解析ツールも有効であるが、自分で手軽に多様な処理を実行できる市販の表計算ソフトを用いることも評価期間短縮に効果的である。そこで、検査データを選択した一部、或いは全てのデータについて、図23に示すような項目について表計算ソフトで読み込み可能なフォーマットでハードディスク、或いはフロッピー(登録商標)ディスク等の記憶装置31にセーブすることにした。本実施例においては欠陥に付けた認識番号、弁別結果、落射照明時の各フォトマル7a〜7iの受光輝度、及び、斜方照明時の各フォトマル7a〜7iの受光輝度に関して記憶装置31に書き込んでいる。これら全てが必ずしも必要ではない。また、欠陥の座標データ等をセーブするのも有意義な場合がある。このデータを市販の表計算ソフトで読み込むことにより、全体制御部9は、手軽に検出欠陥のデータを解析することが可能であり、短期間に弁別能力を向上させることができる。以上は、回折光の3次元的な強度分布を評価するために複数の光電変換手段7a〜7iを用いた方法について説明した。
次に、2次元的な回折光の分布を、簡易的に得るスクラッチ等の表面検査装置の第3の実施例について図24〜図26を用いて説明する。本実施例は、図1または図9に示す実施例における高角度検出光学系5aに、レンズ108、106及びCCDカメラ104、107、ビームスプリッタ105から構成される検出光学系を追加したものである。従って、本実施例においても、落射照明系と斜方照明系とが存在することになり、異物24と小スクラッチ23aとは輝度比率に基いて弁別されることになる。さらに、追加されたCCDカメラ104、107としては、TDIセンサ等2次元に光電変換する手段であれば良い。また、本実施例においては、2台のCCDカメラ104、107を用いているが1台のCCDカメラを結像面とフーリエ変換面の2カ所に移動させて構成しても良い。1方のCCDカメラ104は、カメラ結像面が、レンズ108の結像面に一致するように設置する。他方のCCDカメラ107は、カメラ結像面が、レンズ106のフーリエ変換面に一致するように設置する。まず、演算処理部8の演算部18aにおいて、CCDカメラ104から得られ、A/D変換部16aでA/D変換されて記憶部17aに記憶された結像画像データを用いて例えば所望の閾値で2値化信号に変換して欠陥を示す信号を抽出することによって欠陥23、24の位置を探索し、この探索された結果を出力して記憶装置31に欠陥の位置座標として記憶する。全体制御部9は、この探索された欠陥の位置座標を基にステージコントローラ14からの制御指令によりステージ15を駆動制御して欠陥23、24をCCDカメラ107の視野中心に位置付けする。
次に、演算処理部8の演算部18bは、CCDカメラ107から得られ、A/D変換部16aでA/D変換されて記憶部17aに記憶された画像データを用いて以下の評価を行う。例えば、図25中(a)の様に水平方向に大スクラッチ23bのような線状欠陥が存在している場合、フーリエ変換面上では図25(b)中垂直方向に回折光は分布する。これを、図26に示すアルゴリズムで評価することにより水平方向の回折光分布を評価することが可能となる。まず、演算部18bにおいて、図25(a)に示すように、0次回折光を受光する点の周辺に、図中円で示したこの場合8つの輝度評価領域を設定する。本実施例においては、この輝度評価領域は円であるが、円である必要性は全くない。四角でも、多角形でも良い。また、本実施例では8つの輝度評価領域を設定しているが、散乱光強度分布を評価する精度に応じて、8個より多くても、少なくても問題ない。数、形状を規定するものでは無い。そして、演算部18bは、設定されたそれぞれの輝度評価領域内で、各画素の受光輝度の和S(i)を求める。この、8つの輝度和を用いて図15又は図17と同様に水平方向の回折光指向性の評価を図26に示す処理フローS65、S66、S67により行うことができる。本実施例においては、ウェハ10の法線に近い方向から光源2の光を照射しているが、斜め方向から照射する場合にも用いることができる。また、本実施例ではウェハ10の法線方向の回折光を受光しているが、斜め方向の回折光を受光しても良い。また、本実施例ではウェハ10からの正反射光を受光しないようにレンズ108のNAから外れた位置に反射ミラー4cを配置した疑似垂直照明を用いているが、垂直照明でもかまわない。
以上述べた手法は、配線パターンの無いウェハ10を主に扱う場合であった。配線パターンが有るウェハ10に本手法を適用する場合には、図27に示すように空間フィルタ208を設ける。但し、配線パターンによっては必ずしも空間フィルタを必要としない場合もある。本実施例においては、特開平6−258239号公報に記載されているように、例えば直線状の空間フィルタを用いて周期的な配線パターンからの回折光に基づく回折パターンを除去する必要がある場合について述べる。本実施例の構成を、図27を用いて説明する。本実施例は、被検査物であるウェハ10と、光源2、及び光路切替機構3、反射ミラー4a”、4b、4a’、4a、4c’より構成した照明部、レンズ6、空間フィルタ208、光電変換手段7よりなる検出部より構成した。本実施例においては、1個の光源2の光線を光路切替機構3と反射ミラー4a”、4b、4a’、4aにより落射照明12と斜方照明11に切り替えているが、光源の個数、反射ミラーの数は規定しない。2個の光源を用いても、より多くの、或いは少ない反射ミラーを用いても良い。弁別原理、弁別処理方法は前記手法と同様に行うことができる。また、落射照明12は図7に示す垂直照明、疑似垂直照明の何れでも良い。以上述べた手法では、スクラッチ23の形状の特異性に着目して、そこから生じる散乱光の分布及びその強度を演算処理部8において解析することにより、スクラッチ23と異物24とを弁別した。また、更に、スクラッチ23の詳細な形状分類を行った。
次に、本発明に係る第1の実施の形態を実現するためのスクラッチ等の表面検査装置の第4の実施例について図28〜図34を用いて説明する。即ち、第4の実施例では、凸である異物24と凹であるスクラッチ23に着目して、凹凸の弁別処理を行う手法である。誤解を避けるために再度述べておくが、今まで述べた異物24とスクラッチ23の弁別手法は、凹凸の認識を行っている訳ではなく、あくまでもスクラッチ23と異物24の幅Wと深さD或いは、高さのアスペクト比の違いに着目した手法である。
本第4の実施例は、光源300およびウェハ10の垂直方向から照明するためのハーフミラー302から構成される照明光学系1bと、フーリエ変換面に設置した位相遅れフィルタ305、位相進みフィルタ306、それぞれを透過した光を分岐するためのビームスプリッタ304、および光電変換手段307、310から構成される検出光学系と、各光電変換手段307、310から得られる検出輝度の差を取る差信号処理部308、およびその結果から凹凸を認識する弁別処理部309から構成した演算処理部8とを備えて構成される。本第4の実施例においては、光電変換手段としてフォトマルA310、フォトマルB307を用いた。まず、図29および図30を用いて、位相遅れフィルタ305と位相進みフィルタ306について説明する。位相遅れフィルタ305は、周辺部に対して、0次回折光が透過する近傍の光の位相に遅れを生じさせる。具体的には、厚さtのオプティカルフラットな板に0次回折光が透過する近傍のみ、厚さをt+dと厚めにする。板の屈折率をnとすると、周辺部の光路長Lと0次回折光近傍の光路長L’は、大気の屈折率n0を考慮して以下に示す(数2)式および(数3)式により求めることができる。
L=n×t+n0×d (数2)
L’=n×(t+d) (数3)
つまり、周辺部と0次回折光近傍を透過する光には次の(数4)式で示される光路長差ΔL1を生じる。
ΔL1=L’−L=(n−n0)×d (数4)
大気の屈折率を1とすると、板にガラス材を用いた場合には屈折率がおよそ1.5であることから、具体的には次の(数5)式で示される光路長差ΔLを生じる。
ΔL1=(1.5−1)×d=0.5×d (数5)
また、位相進みフィルタ306は、図30に示すように、0次回折光透過近傍をt−dと薄目にしておく。そうすると、上記と同様の考え方により、次の(数6)式で示すように、光路長差ΔL2を生じる。
ΔL2=(n0−n)×d (数6)
上記具体例の場合、この光路長差ΔL2は次に示す(数7)式のようになる。
ΔL2=−0.5×d (数7)
波長λの光源の場合、これは周辺透過光に対して0次回折光近傍の透過光は、次の(数8)式および(数9)式で示すように、位相遅れθ1(rad.)、及び位相進みθ2(rad.)を生じることになる。
θ1=ΔL1/λ×2π=(n−n0)×d/λ×2π (数8)
θ2=ΔL2/λ×2π=(n0−n)×d/λ×2π (数9)
上記具体例において、波長λ=488nmの光源を用いた場合、位相ずれは具体的には次の(数10)式および(数11)式で示される数値となる。
θ1=0.5×d/488×2π (数10)
θ2=−0.5×d/488×2π (数11)
そこで、位相遅れθ1と位相進みθ2との間において、θ1=π/2、θ2=−π/2の位相ずれを生じさせるためには、dを次に(数12)式および(数13)式で示される値にすれば良い。
θ1=π/2=0.5×d/488×2π
ゆえに、d=244nm (数12)
θ2=−π/2=−0.5×d/488×2π
ゆえに、d=244nm (数13)
この様に設計した位相フィルタ305、306を用いれば、以下に述べる異物24とスクラッチ23との弁別原理を実現することが可能となる。
即ち、異物24とスクラッチ23との弁別原理について、図31を用いて説明する。ウェハ10に照射されたレーザは位相の揃った平面波である。また、欠陥のないウェハ表面から正反射される光はやはり位相の揃った平面波である。この正反射光を基準反射光と称する。凸部である異物24からの反射してくる光は、基準反射光に比べて光路長が短くなる。そのため、基準反射光に対して凸部からの反射光の位相は進んでいる。逆に凹部であるスクラッチ23からの反射光は、へこみ分だけ光路長が基準光に比べて長くなり、位相は遅れる。つまり、凹凸を含む面にレーザ光束12を照射すると、凹凸部分から反射されるレーザの位相は、平面部から反射されるレーザの位相よりも、凹部分は遅れを生じ、凸部分は進みを生じる。そこで、本発明においては、フーリエ変換面に2種類の位相フィルタ305、306を挿入し、この凹凸に起因した位相の進みと遅れを差信号処理部308で検出し、この検出した位相の進みと遅れを基に弁別処理部309で凹凸の弁別を行うことにより、異物24であるかスクラッチ23であるかを弁別することができ、それらを位置座標と共に全体制御部9に接続された記憶装置31に記憶させることができる。
さらに、図32〜図34を用いて詳細に説明する。まず、演算処理部8の差信号処理部308および弁別処理部309において、凹部であるスクラッチ23を検出する差信号強度について図32を用いて詳細に説明する。この位相ベクトル図は、位相変化を受けない基準反射光の位相を基準として、時計回りが位相遅れ、反時計回りが位相進みを示している。フォトマルA310は位相進みフィルタ306を透過した光を受光している。フォトマルB307は位相遅れフィルタ305を透過した光を受光している。ウェハ表面からの正反射光成分はフーリエ変換面においては点状に集光され、位相フィルタの中心に形成した位相変更領域を通過する。このため、位相進みフィルタ306を透過した基準光の位相は、位相ベクトル図上反時計回りに90度進まされたベクトル321となる。また、スクラッチ23から生じた散乱光はフーリエ変換面においてはほぼ平行光となり、位相フィルタ306、305の周辺領域を透過する。このため、基準透過光に対して相対的に位相の遅れているスクラッチ23からの散乱光は、図32の位相ベクトル図の左側に示すように時計回りに位相がずれたベクトルになる。結像面においては、これらの位相が進んだ基準反射光321と、位相の遅れた散乱光231が干渉することにより結像する。この位相ベクトル図上では、位相フィルタ306により90°位相が進められた基準光ベクトル321と、凹部により位相遅れを生じている散乱光ベクトル231の和、図中フォトマルA検出光ベクトル310aがその干渉により生じた結像ベクトルを表している。つまり、結像の輝度はこのフォトマルA検出光ベクトル310aの長さとなる。
同様に、位相遅れフィルタ305を透過した結像の輝度は、位相フィルタ305により90°位相が遅らされた基準光ベクトル322と、凹部により位相遅れを生じている散乱光ベクトル231の和で示される位相ベクトル右側のフォトマルB検出光ベクトル307aのようになる。この2つのベクトル310a、307aの大きさを比較するとフォトマルB検出光ベクトル307aの方が大きくなる。つまり、フォトマルB307で検出される、散乱光の位相ずれと同方向に基準光の位相をずらした場合の方が、合成ベクトルの大きさは大きくなる。従って、演算処理部8の差信号処理部308において、フォトマルA検出輝度310aからフォトマルB検出輝度307aを引いた差信号が負となることにより、弁別処理部309において凹部であるスクラッチ23を弁別することができる。
ところで、図34には、光電変換手段310、307に2次元の光電変換手段、例えばCCDカメラを用いた場合の暗視野画像の一例を示す。それぞれの輝度分布は、画像データ上a−a’、或いはb−b’断面における輝度プロファィルを示している。そして、図34左半分がスクラッチ23の場合である。位相進みフィルタ306を透過させた暗視野画像は、位相遅れフィルタ305を透過させた暗視野画像よりも暗くなる。この様に、2次元光電変換手段を用いた場合には、演算処理部8の差信号処理部308において、検出輝度プロファィルにおける最大値の差を取ればよい。
次に、演算処理部8の差信号処理部308および弁別処理部309において、凸部である異物24を検出する差信号強度について図33を用いて詳細に説明する。凸部である異物24においては、散乱光241は基準光に対して位相が進む。このため、結像面での強度は、位相進みフィルタ306を介したフォトマルA310の受光強度310bの方が、位相遅れフィルタ305を介したフォトマルB307の受光強度307bよりも強度が強くなる。そのため、差信号処理部308において得られる差信号は正となり、弁別処理部309において凸部である異物24として弁別することができる。そして、図34右半分に示すように、異物24の場合には位相進みフィルタ306を透過した暗視野画像の方が明るくなる。この様に、2次元光電変換手段を用いた場合には、演算処理部8の差信号処理部308において、検出輝度プロファィルにおける最大値の差を取ればよい。
以上説明したように、スクラッチ23および異物24からなる欠陥の凹凸形状に応じて、差信号処理部308から得られる輝度信号の差信号が正負逆となる。従って、弁別処理部309において、この正負を判定することでスクラッチ23と異物24との弁別を行うことが可能となる。また、弁別処理部309において差信号強度を深さ、或いは高さ情報に変換することも容易に可能である。ところで、以上説明した第1〜第4の実施の形態では、欠陥の種類としてスクラッチ23が含まれる場合についてのみ説明してきた。第1〜第4の実施の形態の前半部においては、事前にスクラッチ23と分類したものについてのみ、或いは異物24と分類したものについてのみ回折光の指向性を用いた形状分類を行った。しかし勿論、演算処理部8は、異物24のみの欠陥、スクラッチ23のみの欠陥に対して、この指向性を用いて分類する機能を用いて、欠陥の形状分類を行うことも容易に実現可能である。また、第1〜第4の実施の形態の後半に述べた位相差による凹凸弁別方式と、前半に述べた回折光分布評価方式とを組み合わせて用いることも可能である。以上説明した発明によれば、ADC(Automatic Defect Classification)、或いは、オンザフライADCを実現することが可能となる。
次に、ウェハエッジ近傍の欠陥検査の実施の形態について図35〜図40を用いて説明する。まず、本実施の形態を、図10及び図11に示す集光検出光学系に適用した場合について説明する。即ち、図35には、スクラッチ23や異物24等の欠陥402がウェハエッジ部403近傍に付着した場合を示している。この場合、レーザ等の照明光11、12を、スクラッチ23や異物24等の欠陥402に照射すると光束d内にエッジ403も含んでしまうことになる。さらに、ウェハエッジ403からの散乱光は、図36に示すようにエッジ法線方向の鉛直面上に分布する。このため、図37に示すように、ウェハ上方から見ると、ウエハ10のエッジ403からの散乱光404はエッジ法線方向に指向性が強く分布する。また、欠陥402からの散乱光405は、顕著な指向性を示さない。そこで、図38に示すようにエッジ接線方向に位置する検出光学系、図38中B検出光学系、B‘検出光学系の1個若しくは2個を用いればエッジ403からの散乱光404に比べて欠陥402からの散乱光405を強い強度で検出ことが可能となる。また、検出光学系としては、C検出光学系、C’検出光学系、D検出光学系、D‘検出光学系の1若しくは複数個用いても良い。また、演算処理部8内の比較演算部18において、A検出光学系、A’検出光学系と上記検出光学系との間の検出輝度比を算出することにより散乱光の指向性の強弱を判定して、エッジ403のみか、欠陥402を含むかを判定しても良い。
次に、本実施の形態を、図24に示す結像検出光学系に適用する場合について図39を用いて説明する。フーリエ変換面に図40に示す空間フィルタ407をウェハエッジ法線方向に空間フィルタ遮光部408を設置した場合である。図36に示すように、ウェハエッジ部403からの散乱光は、ウェハエッジ部403から法線方向に強い指向性を持って分布する。このため、空間フィルタ407を挿入することによりエッジ部403からの散乱光を遮光することになり、欠陥402からの散乱光を光電変換手段107で受光することが可能となる。本実施の形態では、ステージ15としてRθステージ(水平面内回転ステージ)を備えた場合を示している。この場合、検出光学系とレーザ光などの照明光により照射されたウェハエッジの方向は、オリフラも含めて相対的に常に一定している。そのため、集光光学系においては使用する検出光学系5b、5cの位置を、また、結像光学系においては空間フィルタ407により遮光する方向を変更せず一定で良い。
また、ステージ15としてXYステージのみにより構成した場合には、ウェハのエッジ方向に合わせて使用する検出光学系5b、5cを変える、或いは空間フィルタ407を観点させる等の工夫が必要となる。以上説明したように、上記実施例によれば、ウェハエッジ近傍の異物も高感度に検出できるため、エッジ周辺部に異物を付着させやすい工程の不具合を即時に発見することにより、高歩留まりを達成することが可能となる。
1a、1b…照明光学系、2…光源、3…光路切替機構、4a〜4d、4c…反射ミラー、5…検出光学系、5a…高角度検出光学系、5b…低角度検出光学系、5c…中角度検出光学系、6、6a〜6i…集光レンズ、7、7a〜7i…光電変換器(フォトマル)、8…演算処理部、9…全体制御部、10…被検査物(ウェハ)、11…斜方照明光、12…落射照明光、12a…垂直照明光、12b…疑似垂直照明光、14…ステージコントローラ、15…ステージ、16、16a〜16i…A/D変換部、17、17a〜17i…記憶部、18…比較演算部(比較判定部)、21…基板、22…絶縁膜(SiO2膜)、23…スクラッチ、23a…小スクラッチ、23aa…タイヤ痕、23ab…ディンプル痕、23ac…面荒れ、23b…大スクラッチ、23c…巨大スクラッチ、24…異物、20、50…弁別線(閾値)、31…記憶装置、32…入力手段、33…表示装置、34…ネットワーク、40…画面、41…スクラッチ弁別輝度分布グラフ、42…大スクラッチ弁別輝度分布グラフ、43…欠陥マップ上対応座標検索、44…弁別結果の表示ウインドウ(ヒストグラフ表示)、51…基板設置台、104…CCDカメラ、105…ビームスプリッタ、106…レンズ、107…CCDカメラ、108(6)…レンズ、208…空間フィルタ、300…光源、302…ハーフミラー、303…レンズ、304…ビームスプリッタ、305…位相遅れフィルタ、306…位相進みフィルタ、307…フォトマルB、308…差信号処理部、309…弁別処理部、310…フォトマルA。