JP4648029B2 - 熱定着ロール用シリコーンゴム組成物及び熱定着ロール - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真複写機、プリンター、ファクシミリ等の静電記録装置における加熱定着装置の熱定着ロールの形成に用いるシリコーンゴム組成物、及びこの硬化物を使用した熱定着用ロールに関するものである。
加熱硬化型液状シリコーンゴムは成形性に優れ、成形後は耐熱性、電気絶縁性に優れることから種々の分野で使用されている。その中で、耐熱性や離型性に優れることからPPCやLBP、FAX等の定着ロールに使用されている。
これら電子写真プロセスを利用した機器においては、感光体表面から複写紙に転写されたトナー像を複写紙に固定する必要がある。このトナー像を固定する方法として、互いに圧接回転している加熱されたヒーターロールと加圧ロールとの間に複写紙を通過させ、複写紙上のトナー像を熱融着し、固定する方法が広く採用されている。この熱融着方法においては、一般にロール材料の熱伝導率を高くすることで、応答の速い複写機、プリンターなどとすることができるが、一方で熱伝導性の高いものは放熱も早く、小型化、低価格化の流れの中で、逆に熱伝導性の低い、即ち蓄熱性のよい材料が必要とされている。
かかる材料として、気体の低熱伝導性を利用したシリコーンゴム発泡体があり、熱分解型発泡剤を添加する方法や硬化時に副生する水素ガスを利用する方法などがある。ところが、熱分解型発泡剤を添加する方法は、その分解ガスの毒性や臭いが問題点とされており、また硬化触媒に白金触媒を使用するものでは、発泡剤による硬化阻害が問題とされていた。
また、硬化時に副生する水素ガスを利用する方法においては、水素ガスの爆発性、未硬化物の保存時の取り扱いに注意を要するなどの問題があった。更に射出成形のように金型内で発泡させる成形においては、微小かつ均一なセルを有するシリコーンゴム発泡体を得ることが難しいという問題があった。
このような問題を解決する方法として、有機樹脂からなる中空フィラーを添加する方法も知られており(特許文献1,2:特開2000−143986号公報、特開2001−220510号公報参照)、均一な気泡が得られることで有効であるが、成形した硬化物の硬度や圧縮永久歪のバラツキが大きくなってしまうという問題があった。
特開2000−143986号公報 特開2001−220510号公報
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、上記の問題なく、熱伝導性の小さいシリコーンゴムを与える熱定着ロール用シリコーンゴム組成物、及びこれを用いた熱定着ロールを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の問題点を解決すべく鋭意検討した結果、有機樹脂製の中空フィラーを配合してシリコーンゴムスポンジを得る場合に、オルガノポリシロキサン100質量部に、平均粒子径が5〜200μmで、かつ平均粒子径に対して30%以上小さい粒子径のものと、30%以上大きい粒子径のものとの合計が20〜70質量%である粒度分布が広い有機樹脂製中空フィラーを0.3〜100質量部配合したシリコーンゴム組成物とすることにより、圧縮永久歪が小さく、かつゴム硬度や圧縮永久歪のバラツキが小さい低熱伝導性のシリコーンゴムを得ることができることを見出したものである。
従って、本発明は、下記熱定着ロール用シリコーンゴム組成物及び熱定着ロールを提供する。
請求項1:
(A)一分子中に少なくとも2個の珪素原子と結合するアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン100質量部
(B)一分子中に珪素原子と結合する水素原子を2個以上含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:0.1〜50質量部、
(C)付加反応触媒:触媒量
に、平均粒子径が5〜200μmで、かつ平均粒子径に対して30%以上小さい粒子径のものと、30%以上大きい粒子径のものとの合計が20〜70質量%である粒度分布の広い有機樹脂製中空フィラーを0.3〜100質量部配合することを特徴とする熱定着ロール用シリコーンゴム組成物。
請求項2:
更に、アルキレンオキシドの開環重合体及び開環共重合体から選ばれるポリエーテル、多価アルコール又はその誘導体を一分子中に少なくとも2個の珪素原子と結合するアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン100質量部に対し、1〜30質量部含有する請求項1記載のシリコーンゴム組成物。
請求項3:
中空フィラーの真比重が、0.01〜1.0である請求項1又は2記載のシリコーンゴム組成物。
請求項4:
中空フィラーが、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルから選ばれるモノマーの重合体又は上記モノマーの2種以上の共重合体により形成されたものである請求項1,2又は3記載のシリコーンゴム組成物。
請求項5:
硬化後の熱伝導率が、0.05〜0.15W/m・℃である請求項1乃至4のいずれか1項記載のシリコーンゴム組成物。
請求項6:
ロール軸の外周面にシリコーンゴム層を設けてなる熱定着ロールにおいて、このシリコーンゴム層が、請求項1乃至5のいずれか1項記載のシリコーンゴム組成物の硬化物により形成されたことを特徴とする熱定着ロール。
請求項7:
ロール軸の外周面にシリコーンゴム層を介してフッ素樹脂層又はフッ素ゴム層を設けてなる熱定着ロールにおいて、このシリコーンゴム層が、請求項1乃至5のいずれか1項記載のシリコーンゴム組成物の硬化物により形成されたことを特徴とする熱定着ロール。
本発明によれば、粒度分布の広い中空フィラーを配合することにより、圧縮永久歪が小さく、かつ成形やロットによるゴム硬度、圧縮永久歪のバラツキが小さいシリコーンゴム組成物を得ることができる。更に、これにより蓄熱性が高くなり、熱の拡散が小さくなるために省エネルギー性に優れ、かつ装置もコンパクト化できるため、これを熱定着ロールに適用すると定着装置の小型化、低コスト化に有用である。
本発明の熱定着ロール用シリコーンゴム組成物は、熱硬化型オルガノポリシロキサン組成物中に、平均粒子径が200μm以下で、かつ平均粒子径に対して30%以上小さい粒子径のものと、30%以上大きい粒子径のものとの合計が20質量%以上である粒度分布の広い有機樹脂製中空フィラーを配合したものである。
ここで、上記有機樹脂製中空フィラーとは、硬化物内に気体部分を持つことでスポンジゴムのように熱伝導率を低下させるもので、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルから選ばれるモノマーの重合体或いは上記モノマーの2種以上の共重合体により形成されたものであることが好ましい。また、中空フィラーの強度を持たせるため等の理由で表面に無機フィラー等を付着させたものでもよい。
シリコーンゴム組成物内で十分な熱伝導性の低下を行うには、中空フィラーの真比重が0.01〜1.0であることが好ましく、より好ましくは0.02〜0.5であり、更に好ましくは0.02〜0.3である。真比重が0.01より小さいと配合・取り扱いが難しいばかりか、中空フィラーの耐圧強度が不十分で成型時に破壊してしまい、軽量化、熱伝導率の低下ができなくなってしまう場合がある。また、真比重が1.0より大きいと、中空フィラーの殻の厚さが大きく、熱伝導の低下が十分とはならない場合が生じる。
また、中空フィラーの平均粒子径は5μm以上200μm以下、好ましくは5μm以上150μm以下、より好ましくは20μm以上120μm以下であり、平均粒子径が200μmを超えると成型時の射出圧力により中空フィラーが破壊されてしまい、熱伝導が高くなってしまったり、ロール成形後の表面の粗さが大きくなってしまうなどの問題が生じる。また、平均粒子径が5μm未満では内包する気体が不十分で、目的とする低熱伝導率が得られない場合がある。
更に、本発明においては、中空フィラーの粒度分布が広いことが重要であり、平均粒子径に対して30%以上大きい粒子径のものと、30%以上小さい粒子径のものとの合計(即ち、平均粒子径をMμmとした場合、0.7Mμm以下の粒子径のものと、1.3Mμm以上の粒子径のものとの合計)が全体量の20〜70質量%、特に30〜70質量%であることが好ましい。20質量%未満では硬化物の圧縮永久歪が大きかったり、硬化物の物性にバラツキが生じたりしてしまう。更に好ましくは、平均粒子径に対して35%以上大きい粒子径のものと、35%以上小さい粒子径のものとの合計が全体量の20質量%以上、特に30〜60質量%である。
このような粒度分布の広い中空フィラーを配合することにより、圧縮永久歪が小さく、かつ成形やロットによるゴム硬度、圧縮永久歪のバラツキが小さいシリコーンゴム組成物を得ることができる。なお、このような粒度分布の広い中空フィラーは、平均粒子径の小さい中空フィラーと平均粒子径の大きい中空フィラーとを適宜量混合することによって得ることができる。また、市販の中空フィラーをそのまま使用する場合には、同一製造メーカーの同一製品であっても、個々の製造ロットにより粒度分布にバラツキがある場合があるため、予め粒度分布が特定された個々の製造ロット品から分布の広い特定のロット品を選定して使用するようにする必要がある。
なお、粒度分布は、例えばレーザー光回折法等の分析手段を使用した粒度分布計により、平均粒子径は、累積重量平均値D50(又はメジアン径)等として求めることができる。
上記中空フィラーの配合量は、下記熱硬化型オルガノポリシロキサン組成物の(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.3〜100質量部であり、好ましくは0.3〜80質量部、より好ましくは0.5〜50質量部である。0.1質量部未満では熱伝導率の低下が不十分であり、また100質量部を超える量では成形、配合が難しいだけでなく、成形物もゴム弾性のない脆いものとなってしまう。更に、シリコーンゴム組成物中(あるいは硬化物中)体積比で10〜80%となるように配合することが好ましい。
本発明に用いられる熱硬化型オルガノポリシロキサン組成物は、
(A)一分子中に少なくとも2個の珪素原子と結合するアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)一分子中に少なくとも珪素原子と結合する水素原子を2個以上含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:0.1〜50質量部、
(C)付加反応触媒:触媒量、
(D)ポリエーテル、多価アルコール又はその誘導体:0〜30質量部
を含有することが好ましい。
上記(A)成分の一分子中に少なくとも平均2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンとしては、下記平均組成式(1)で示されるものを用いることができる。
1 aSiO(4-a)/2 (1)
(式中、R1は互いに同一又は異種の炭素数1〜10、好ましくは1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、aは1.5〜2.8、好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.95〜2.05の範囲の正数である。)
ここで、上記R1で示される互いに同一又は異種の炭素数1〜10、好ましくは1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。
この場合、R1のうち少なくとも2個はアルケニル基(炭素数2〜8のものが好ましく、更に好ましくは2〜6である)であることが必要である。なお、アルケニル基の含有量は、R1中0.001〜20モル%、特に0.01〜10モル%とすることが好ましい。このアルケニル基は、分子鎖末端の珪素原子に結合していても、分子鎖途中の珪素原子に結合していても、両者に結合していてもよい。
このオルガノポリシロキサンの構造は、基本的には直鎖状構造を有するが、部分的には分岐状の構造、環状構造などであってもよい。分子量については特に限定なく、粘度の低い液状のものから、粘度の高い生ゴム状のものまで使用できるが、硬化してゴム状弾性体とするためには、25℃での粘度が100mPa・s以上であり、通常100〜1,000,000mPa・sであり、特に500〜100,000mPa・sであることが好ましい。なお、本発明において、粘度は回転粘度計(BL型、BH型、BS型)により測定した25℃における値である。
上記(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一分子中に少なくとも2個(通常、2〜200個)、好ましくは3個以上、より好ましくは3〜100個の珪素原子結合水素原子を有するものであり、下記平均組成式(2)で示されるものを用いることができる。
bcSiO(4-b-c)/2 (2)
(式中、Rは炭素数1〜10、好ましくは1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、bは0.7〜2.1であり、cは0.001〜1.0で、かつb+cは0.8〜3.0、好ましくはbは0.9〜2.0、cは0.01〜1.0、b+cは1.0〜2.7を満足する正数である。)
ここで、Rで示される炭素数1〜10、好ましくは1〜8の非置換又は置換一価炭化水素基としては、上記平均組成式(1)のR1として例示したものと同様のものを挙げることができるが、脂肪族不飽和基を有しないものが好ましい。また、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網目状等いずれの構造であってもよく、1分子中の珪素原子の数(又は重合度)は2〜300個、特に4〜150個程度の室温(25℃)で液状のものが好適に用いられる。なお、珪素原子に結合する水素原子は分子鎖末端、分子鎖の途中のいずれに位置していてもよく、両方に位置するものであってもよい。
このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしてより具体的には、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、メチルハイドロジェンシロキサン環状重合体、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C65)SiO3/2単位とからなる共重合体などが挙げられる。
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、25℃での粘度が1〜1,000mPa・s、通常、3〜500mPa・s、好ましくは5〜300mPa・sのものである。25℃における粘度が1mPa・s未満では十分な架橋を行えない場合があり、1,000mPa・sを超えるものは反応性が不十分な場合がある。
このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1〜50質量部が好ましく、特に0.3〜30質量部とすることが好ましい。0.1質量部未満では架橋を十分行えない場合があり、50質量部を超える量ではゴム物性を低下させてしまう場合がある。
また、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、同様の理由で(A)成分中の珪素原子に結合したアルケニル基に対する(B)成分中の珪素原子に結合した水素原子(即ち、Si−H基)のモル比が0.5〜5モル/モル、好ましくは0.8〜4モル/モル、より好ましくは1〜3モル/モルとなる量で配合することもできる。
(C)成分の付加反応触媒は、(A)成分中のアルケニル基と(B)成分中のSi−H基とのヒドロシリル化付加反応を促進するための触媒であり、この付加反応触媒としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などの白金族金属触媒が挙げられる。なお、この付加反応触媒の配合量は触媒量とすることができるが、通常、白金族金属として(A)及び(B)成分の合計質量に対して0.5〜1,000ppmが好ましく、特に1〜500ppm配合することが好ましい。
これら(A)〜(C)成分に加え、圧縮永久歪を低下させるなどの目的で、更に(D)ポリエーテル、多価アルコール又はその誘導体を配合することができる。ポリエーテルの具体例としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドの開環重合体や開環共重合体などが挙げられ、多価アルコール又はその誘導体として、具体的には、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ペンタエリスルトール、グリセリン−α−モノクロロヒドリンなどの多価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなど多価アルコールの2量体、3量体などのオリゴマー、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、クラウンエーテルなどのそれら多価アルコールの重合体あるいは2種以上の共重合体、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルなどの部分エーテル化物、グリセリンモノアセテート、グリセリンジアセテート、エチレングリコールモノアセテートなどの部分エステル化物、あるいは部分シリル化物などが挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
上記(D)成分を配合する場合、(A)成分100質量部に対し、1〜30質量部、好ましくは3〜20質量部である。30質量部を超えるとゴム物性の低下が著しくなってしまう。
本発明のシリコーンゴム組成物は、上記成分に加えて必要に応じ、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、溶融シリカ、焼成シリカ、ゾル−ゲル法の球状シリカ、結晶シリカ(石英粉)、珪藻土等のシリカ微粒子、炭酸カルシウムのような充填剤、補強剤となるシリコーン系のレジン、カーボンブラック、導電性亜鉛華、金属粉等の導電剤、窒素含有化合物やアセチレン化合物、リン化合物、ニトリル化合物、カルボキシレート、錫化合物、水銀化合物、硫黄化合物等のヒドロシリル化反応制御剤、酸化鉄、酸化セリウムのような耐熱剤、ジメチルシリコーンオイル等の内部離型剤、接着性付与剤、チクソ性付与剤等を本発明の効果を損なわない範囲で任意に配合することができる。
本発明のシリコーンゴム組成物は、上記有機樹脂製中空フィラーと、(A)〜(D)成分及び必要に応じてその他の成分の所定量を混合し、常法に準じて調製することができる。組成物の粘度としては、1〜1,000Pa・sが好ましく、より好ましくは2〜500Pa・s、更に好ましくは5〜200Pa・s程度である。1Pa・s未満では硬化物のゴム物性が不十分となる場合があり、1,000Pa・sを超えると成形時に中空フィラーが壊れてしまう場合がある。
本発明に係るシリコーンゴム組成物の硬化方法は、注入成形、圧縮成形、射出成形、コーティングなどの方法があり、硬化条件としては100〜300℃の温度で10秒〜1時間の範囲が好適に採用される。また、有機樹脂製中空フィラーを意図的に破壊する、圧縮永久歪を低下させる、低分子シロキサン成分を低減する等の目的で、成形後、更に120〜250℃のオーブン内で30分〜70時間程度のポストキュア(2次キュア)を行ってもよい。
本発明のシリコーンゴム組成物の硬化物は、ロール軸の外周面にシリコーンゴム層を設けてなる熱定着ロールのシリコーンゴム層として好適に使用することができ、この熱定着ロールとして、具体的には、電子写真複写機、プリンター、ファクシミリ等の静電記録装置における加熱定着装置の熱定着ロールなどが例示できる。
本発明の熱定着ロールは、ステンレス、鉄、ニッケル、アルミニウムなどの芯金上に上記シリコーンゴム組成物の硬化物層を形成するものであるが、この場合、芯金の材質、寸法等はロールの種類に応じて適宜選定し得る。また、シリコーンゴム組成物の成形、硬化方法も適宜選定し得、例えば、注入成形、移送成形、射出成形、コーティング等の方法によって成形でき、加熱により硬化される。シリコーンゴム層の外周に更にフッ素樹脂層やフッ素ゴム層を設けてもよい。この場合、フッ素系樹脂層は、フッ素系樹脂コーティング材やフッ素系樹脂チューブなどにより形成され、上記シリコーンゴム層を被覆する。
ここで、フッ素系樹脂コーティング材としては、例えばポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)のラテックスや、ダイエルラテックス(ダイキン工業(株)製、フッ素系ラテックス)等が挙げられ、またフッ素系樹脂チューブとしては、市販品を使用し得、例えばポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)、フッ化エチレン−ポリプロピレン共重合体樹脂(FEP)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、ポリフッ化ビニル樹脂などが挙げられるが、これらのうちで特にPFAが好ましい。
なお、上記シリコーンゴム層の厚さは適宜選定されるが、0.05〜80mm、特に0.1〜50mmであることがシリコーンゴムのゴム弾性を活かす点で好ましい。また、その上に形成されるフッ素樹脂又はフッ素ゴム層の厚さは5〜200μm、特に10〜100μmが好ましい。
更に、上記シリコーンゴム層の熱伝導率は、ヒーターやヒーターロールあるいはベルトから受けた熱を逃がさず、蓄熱するという点において、0.15W/m・℃以下であることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.14W/m・℃である。
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、各例中の部は質量部を示し、中空フィラーの粒度分布及び平均粒子径は、マイクロトラック粒度分布測定装置(日機装(株)製)により乾式測定法で求めた。なお、実施例3と比較例3における中空フィラーは同一の製品であるが、製造ロットが異なるために粒度分布が異なるものである。
[実施例1]
側鎖ビニル基含有ジメチルポリシロキサン(重合度700、ビニル価0.0094mol/100g)100部、比表面積が110m2/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(日本エアロジル(株)製、R−972)2部、比重0.04、平均粒径50μmで、粒子径30μm以下と70μm以上との合計が30質量%である熱可塑性樹脂製中空フィラー(アクリロニトリル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルの共重合体)3.6部(硬化物中38体積%に相当する)をプラネタリーミキサーに入れ、30分撹拌を続けた後、更に架橋剤として両末端及び側鎖にSi−H基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサンA(重合度17、Si−H基量0.0030mol/g)を3.8部、エチレングリコールを5部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノールを0.05部添加し、15分撹拌を続けてできあがった組成物に白金触媒(Pt濃度1%)0.1部を混合し、これをシリコーンゴム組成物(1)とした。このシリコーンゴム組成物(1)を120℃×10分、130℃×10分、140℃×10分の各温度でプレスキュア後、200℃×4時間のポストキュアを実施し、2mm及び6mmのシートを得、外観チェック後、JIS K6249に準じて2mmシートより比重、硬度(デュロメーターA)を測定し、6mmシートより熱伝導率、更に10mm角に切り出して圧縮永久歪(180℃×22時間、25%圧縮)を測定した。結果を表1に示す。
[実施例2]
側鎖ビニル基含有ジメチルポリシロキサン(重合度700、ビニル価0.0094mol/100g)50部、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(重合度500)50部、比表面積が110m2/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(日本エアロジル(株)製、R−972)5部、比重0.02、平均粒径90μmと比重0.04、平均粒子径50μmを混合して得た平均粒子径72μm、粒子径100μm以上と40μm以下との合計が38質量%である熱可塑性樹脂製中空フィラー(アクリロニトリル、アクリル酸エステルの共重合体)4部(硬化物中45体積%に相当する)をプラネタリーミキサーに入れ、30分撹拌を続けた後、更に架橋剤として実施例1のメチルハイドロジェンポリシロキサンAを3.5部、トリエチレングリコールを3部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノールを0.05部添加し、15分撹拌を続けてできあがった組成物に白金触媒(Pt濃度1%)0.1部を混合し、これをシリコーンゴム組成物(2)とした。このシリコーンゴム組成物(2)を、実施例1と同様に、各温度でプレスキュアし、比重、硬度(デュロメーターA)、熱伝導率、圧縮永久歪を測定した。結果を表1に示す。
[実施例3]
側鎖ビニル基含有ジメチルポリシロキサン(重合度700、ビニル価0.0094mol/100g)50部、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(重合度500)50部、比表面積が200m2/gであるヒュームドシリカ(日本エアロジル(株)製、アエロジル200)1部、比重0.03、平均粒子径が105μm、粒子径140μm以上と70μm以下との合計が24質量%である熱可塑性樹脂製中空フィラー(松本油脂製薬(株)製、マイクロスフィアーF80EDのロットA)3部(硬化物中36体積%に相当する)、比重0.35、平均粒径56μmのガラス中空フィラー(東海工業(株)製、セルスターZ−36)15部をプラネタリーミキサーに入れ、30分撹拌を続けた後、更に架橋剤として実施例1のメチルハイドロジェンポリシロキサンAを3.5部、ジエチレングリコールモノメチルエーテルを6部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノールを0.05部添加し、15分撹拌を続けてできあがった組成物に白金触媒(Pt濃度1%)0.1部を混合し、これをシリコーンゴム組成物(3)とした。このシリコーンゴム組成物(3)を、実施例1と同様に、各温度でプレスキュアし、比重、硬度(デュロメーターA)、熱伝導率、圧縮永久歪を測定した。結果を表1に示す。
[比較例1]
側鎖ビニル基含有ジメチルポリシロキサン(重合度700、ビニル価0.0094mol/100g)100部、比表面積が110m2/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(日本エアロジル(株)製、R−972)2部、比重0.04、平均粒子径50μm、粒子径40μm以下と粒子径65μm以上との合計が18%である熱可塑性樹脂製中空フィラー(アクリロニトリル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルの共重合体)4部(硬化物中45体積%に相当する)をプラネタリーミキサーに入れ、30分撹拌を続けた後、更に架橋剤として実施例1のメチルハイドロジェンポリシロキサンAを3.8部、エチレングリコールを5部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノールを0.05部添加し、15分撹拌を続けてできあがった組成物に白金触媒(Pt濃度1%)0.1部を混合し、これをシリコーンゴム組成物(4)とした。このシリコーンゴム組成物(4)を、実施例1と同様に、各温度でプレスキュアし、比重、硬度(デュロメーターA)、熱伝導率、圧縮永久歪を測定した。結果を表1に示す。
[比較例2]
側鎖ビニル基含有ジメチルポリシロキサン(重合度700、ビニル価0.0094mol/100g)50部、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(重合度500)50部、比表面積が110m2/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(日本エアロジル(株)製、R−972)5部、比重0.03、平均粒子径75μm、粒子径95μm以上と55μm以下との合計が16質量%である熱可塑性樹脂製中空フィラー(アクリロニトリル、アクリル酸エステルの共重合体)4部(硬化物中45体積%に相当する)をプラネタリーミキサーに入れ、30分撹拌を続けた後、更に架橋剤として実施例1のメチルハイドロジェンポリシロキサンAを3.5部、トリエチレングリコールを3部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノールを0.05部添加し、15分撹拌を続けてできあがった組成物に白金触媒(Pt濃度1%)0.1部を混合し、これをシリコーンゴム組成物(5)とした。このシリコーンゴム組成物(5)を、実施例1と同様に、各温度でプレスキュアし、比重、硬度(デュロメーターA)、熱伝導率、圧縮永久歪を測定した。結果を表1に示す。
[比較例3]
側鎖ビニル基含有ジメチルポリシロキサン(重合度700、ビニル価0.0094mol/100g)50部、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(重合度500)50部、比表面積が200m2/gであるヒュームドシリカ(日本エアロジル(株)製、アエロジル200)1部、比重0.03、平均粒子径が102μm、粒子径130μm以上と75μm以下との合計が18質量%である熱可塑性樹脂製中空フィラー(松本油脂製薬(株)製、マイクロスフィアーF80EDのロットB)3部(硬化物中、36体積%に相当する)、比重0.35、平均粒径56μmのガラス中空フィラー(東海工業(株)製、セルスターZ−36)15部をプラネタリーミキサーに入れ、30分撹拌を続けた後、更に架橋剤として実施例1のメチルハイドロジェンポリシロキサンAを3.5部、ジエチレングリコールモノメチルエーテルを6部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノールを0.05部添加し、15分撹拌を続けてできあがった組成物に白金触媒(Pt濃度1%)0.1部を混合し、これをシリコーンゴム組成物(6)とした。このシリコーンゴム組成物(6)を、実施例1と同様に、各温度でプレスキュアし、比重、硬度(デュロメーターA)、熱伝導率、圧縮永久歪を測定した。結果を表1に示す。
Figure 0004648029
[実施例4]
直径24mm×長さ300mmのアルミニウムシャフトの表面に付加反応型液状シリコーンゴム用プライマーNo.101A/B(信越化学工業(株)製)を塗付した。内面をプライマー処理した厚さ50μmのフッ素PFAチューブとアルミニウムシャフトとの間に実施例1のシリコーンゴム組成物(1)を充填し、120℃で30分加熱硬化し、更に200℃で4時間ポストキュアし、外径30mm×長さ250mmのPFA樹脂被覆シリコーンゴムロールを作製した。
このロールをPPC複写機の定着ロールとして組み込み、80℃の加圧状態で3日間放置後、通紙を行ったところ、3枚目まで定着不良によるにじみが発生したが、その後は問題なかった。
[比較例4]
直径24mm×長さ300mmのアルミニウムシャフトの表面に付加反応型液状シリコーンゴム用プライマーNo.101A/B(信越化学工業(株)製)を塗付した。内面をプライマー処理した厚さ50μmのフッ素PFAチューブとアルミニウムシャフトとの間に比較例1のシリコーンゴム組成物(4)を充填し、120℃で30分加熱硬化し、更に200℃で4時間ポストキュアし、外径30mm×長さ250mmのPFA樹脂被覆シリコーンゴムロールを作製した。
このロールをPPC複写機の定着ロールとして組み込み、80℃の加圧状態で3日間放置後、通紙を行ったところ、25枚目まで定着不良によるにじみが発生した。
[実施例5]
直径24mm×長さ300mmのアルミニウムシャフトの表面に付加反応型液状シリコーンゴム用プライマーNo.101A/B(信越化学工業(株)製)を塗付した。更にこの上に実施例2のシリコーンゴム組成物(2)を塗付し、130℃で30分加熱硬化し、更に180℃で2時間ポストキュアし、ゴム厚さ2mmのシリコーンゴムロールとした。この硬化物表面にダイエルラテックスとシリコーンゴム用プライマーGLP−103SR(ダイキン工業(株)製)を均一に塗付し、80℃×10分加熱し、更にダイエルラテックスGLS−213を均一にスプレー塗付し、この硬化物表面にダイエルラテックスとシリコーンゴム用プライマーGLP−103SR(ダイキン工業(株)製)を均一に塗付し、80℃×10分加熱し、更にダイエルラテックスGLS−213を均一にスプレー塗付し、300℃で1時間加熱焼成し、外径28mm×長さ250mmのダイエルラテックスコーティングシリコーンゴムロールを作製した。
このロールをPPC複写機の定着ロールとして組み込み、80℃の加圧状態で3日間放置後、通紙を行ったところ、5枚目まで定着不良によるにじみが発生したが、その後は問題なかった。
[比較例5]
直径24mm×長さ300mmのアルミニウムシャフトの表面に付加反応型液状シリコーンゴム用プライマーNo.101A/B(信越化学工業(株)製)を塗付した。更にこの上に比較例2のシリコーンゴム組成物(5)を塗付し、130℃で30分加熱硬化し、更に180℃で2時間ポストキュアし、ゴム厚さ2mmのシリコーンゴムロールとした。この硬化物表面にダイエルラテックスとシリコーンゴム用プライマーGLP−103SR(ダイキン工業(株)製)を均一に塗付し、80℃×10分加熱し、更にダイエルラテックスGLS−213を均一にスプレー塗付し、この硬化物表面にダイエルラテックスとシリコーンゴム用プライマーGLP−103SR(ダイキン工業(株)製)を均一に塗付し、80℃×10分加熱し、更にダイエルラテックスGLS−213を均一にスプレー塗付し、300℃で1時間加熱焼成し、外径28mm×長さ250mmのダイエルラテックスコーティングシリコーンゴムロールを作製したところ、表面にいくつか孔が見られた。
このロールをPPC複写機の定着ロールとして組み込み、80℃の加圧状態で3日間放置後、通紙を行ったところ、定着不良によるにじみが発生し、100枚通紙を続けても回復しなかった。

Claims (7)

  1. (A)一分子中に少なくとも2個の珪素原子と結合するアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン100質量部
    (B)一分子中に珪素原子と結合する水素原子を2個以上含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:0.1〜50質量部、
    (C)付加反応触媒:触媒量
    に、平均粒子径が5〜200μmで、かつ平均粒子径に対して30%以上小さい粒子径のものと、30%以上大きい粒子径のものとの合計が20〜70質量%である粒度分布の広い有機樹脂製中空フィラーを0.3〜100質量部配合することを特徴とする熱定着ロール用シリコーンゴム組成物。
  2. 更に、アルキレンオキシドの開環重合体及び開環共重合体から選ばれるポリエーテル、多価アルコール又はその誘導体を一分子中に少なくとも2個の珪素原子と結合するアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン100質量部に対し、1〜30質量部含有する請求項1記載のシリコーンゴム組成物。
  3. 中空フィラーの真比重が、0.01〜1.0である請求項1又は2記載のシリコーンゴム組成物。
  4. 中空フィラーが、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルから選ばれるモノマーの重合体又は上記モノマーの2種以上の共重合体により形成されたものである請求項1,2又は3記載のシリコーンゴム組成物。
  5. 硬化後の熱伝導率が、0.05〜0.15W/m・℃である請求項1乃至4のいずれか1項記載のシリコーンゴム組成物。
  6. ロール軸の外周面にシリコーンゴム層を設けてなる熱定着ロールにおいて、このシリコーンゴム層が、請求項1乃至5のいずれか1項記載のシリコーンゴム組成物の硬化物により形成されたことを特徴とする熱定着ロール。
  7. ロール軸の外周面にシリコーンゴム層を介してフッ素樹脂層又はフッ素ゴム層を設けてなる熱定着ロールにおいて、このシリコーンゴム層が、請求項1乃至5のいずれか1項記載のシリコーンゴム組成物の硬化物により形成されたことを特徴とする熱定着ロール。
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