JP4648001B2 - ムチン−免疫グロブリン融合タンパク質 - Google Patents
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Description
本発明は、概して超急性拒絶を処置または予防するための組成物および方法に関し、より詳しくは、炭水化物エピトープGalα1,3Galを含む融合ポリペプチドを含有する組成物に関する。
同種移植用のドナー臓器が慢性的に欠乏していることは、動物からヒトへの臓器または組織、すなわち異種移植が実施できれば解決することが可能である。ブタは、ヒトの異種移植とって最も適したドナー種であると考えられている。しかし、それを常套手段として用いる前に解決すべきいくつかの問題がある。最初の免疫性障害は、炭水化物エピトープGalα1,3Gal(α−Gal)(ブタ等の他の哺乳類に存在)に特異的なヒト、類人猿、および旧大陸サルの異種反応性(xenoreactive)天然抗体(XNAb)によって、引き起こされる。ブタ血管内皮細胞上のα−Galエピトープに対するXNAbsの結合によって、数分から数時間のうちに移植片機能損失に至る一連のイベントが開始される((Galili, U., 1993; Oriol, R. et al., 1993)。
本発明は、ひとつには、ムチン型タンパク質主鎖上の異なるコア糖鎖によって炭水化物エピトープGalα1,3Gal(αGal)が特異的に高密度で発現しうるという発見にもとづいている。このような高密度のαGalエピトープは、遊離糖類または固相に結合したαGal決定基と比較して、抗αGalの結合または除去(すなわち、吸着)の増大をもたらす。本明細書ではポリペプチドをαGal融合ポリペプチドと称する。
本発明は、ひとつには、炭水化物エピトープ Galα1,3Gal (αGal)が高密度で、かつムチン型タンパク質主鎖上の異なるコア糖鎖によって、特異的に発現しうるということの発見にもとづいている。より具体的には、本発明は、ムチン型タンパク質主鎖のαGalエピトープの発現が該ポリペプチドを発現する細胞株に依存するという驚くべき発見にもとづいている。さらに、ムチンのグリカン・レパートリーを外来α1,3ガラクトシル基転移酵素およびコア2分岐酵素の共発現によって修飾することができる。この修飾によって、αGalエピトープの密度がよりいっそう高くなり、遊離糖類、固相に結合したαGal決定基、またはα1,3ガラクトシル基転移酵素単独によりトランスフェクションした細胞と比較して、抗αGal抗体の結合または除去(すなわち、吸着)の増加が生ずる。
種々の態様では、本発明は、第2のポリペプチドに結合した糖タンパク質(例えば、ムチン・ポリペプチド)の少なくとも一部分を含む第1のポリペプチドを有する融合タンパク質を提供する。本明細書で用いられるように、「融合タンパク質(fusion protein)」または「キメラ・タンパク質(chimeric protein)」は、非ムチン・ポリペプチドに対して操作可能に結合したムチン・ポリペプチドの少なくとも一部分を含む。「非ムチン・ポリペプチド(non−mucin polypeptide)」は、その質量の少なくとも40%未満がグリカンに起因するポリペプチドをいう。
入される宿主細胞で自律複製ができる(例えば、細菌複製開始点を持つ細菌ベクターおよびエピソームほ乳類ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソームほ乳類ベクター)は、宿主細胞に導入されると直ちに該宿主細胞のゲノムに組み込まれ、それによってその宿主ゲノムとともに複製される。さらに、ある種のベクターは、それが操作可能に連結している遺伝子の発現を導くことができる。そのようなベクターを本明細書では「発現ベクター(expression vectors)」と称する。一般に、発現ベクターは、しばしばプラスミドの形で、組換えDNA技術で有用である。本明細書では、ベクターの最も一般的な使用形態がプラスミドであることから、「プラスミド」および「ベクター」を互いに置き換えて使用することができる。しかし、本発明は、等価な機能を呈するそのような発現ベクターの他の形態、例えばウイルス・ベクター(例:複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ関連ウイルス)を含むことを意図している。
αGal融合ポリペプチドを、従来の条件(例えば、抽出、沈殿、クロマトグラフィー、アフィニティー・クロマトグラフィ、泳動、その他)にもとづいて単離および精製してもよい。例えば、免疫グロブリン融合タンパク質は、該融合タンパク質のFe部分に選択的に結合する固定化プロテインAおよびプロテインGを含むカラムに溶液を通すことによって、精製することが可能である。例えば、Reis, K. J., et al., J. Immunol. 132:3098−3102 (1984)および PCT出願公開番号 W087/00329を参照せよ。融合ポリペプチドの溶離は、カオトロピック塩処理または酢酸(1M)水溶液によっておこなうことが可能である。
本発明は、超急性拒絶(HAR)、例えば異種移植拒絶を処置または予防する方法も含む。そのような移植組織として、限定されるものではないが、そのような移植組織は含む腎臓、肝臓、皮膚、膵臓、角膜、または心臓が挙げられ、HARの意味にはレシピエントによる任意の抗体媒介移植拒絶が含まれる。移植臓器の超急性拒絶は、臓器がレシピエントの血行にさらされてから数秒または数分のうちに生ずる。臓器は、急速に蒼白になって、レシピエントの体内に残存する場合、壊死が生ずる。この超急性反応は、ドナー臓器に対して抗体が予め形成されたため、起こる。HARは、子宮内で多数の非自己抗原にさらされていることから、経産婦で最も一般的である。輸血回数が多いレシピエントも危険にさらされている。
本発明はまた、試料から抗αGal抗体を除去または減少させる方法を含む。試料は、血液または血漿等の体液である。あるいは、試料は生体組織、例えば心臓組織、肝臓組織、皮膚、または腎臓組織である。この方法を試料を本発明のαGal融合ペプチドと接触させることを含む。αGal融合ペプチド− 抗αGal抗体複合体の形成を可能とさせる条件下で、その試料をαGal融合ペプチドと接触させる。αGal融合ペプチド−抗体複合体を、もし存在するならば、抗αGal抗体を除去または減少させるために、生体試料から分離する。
ABO融合タンパク質、または該融合タンパク質をコードする核酸分子(本明細書では「治療薬(therapeutics)」または「活性化合物(active compounds)」ともいう)ならびにその誘導体、フラグメント、類似体、およびホモログを、投与のために適当な医薬組成物に取り込むことができる。そのような組成物は、概して核酸分子、タンパク質、または抗体および薬学的に許容される担体を含む。 本明細書で用いられるように、「薬学的に許容される担体(pharmaceutically acceptable carrier)」は、薬学的投与に適合性の、任意の、および全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤、抗真菌剤、等張性および吸着性遅延薬剤、その他を含むことを意図しており、薬学的投与(pharmaceutical addministration)と互換性を持つ。適当な担体は、当該分野での標準的参考書であるRemington’s Pharmaceutical Sciencesの最近の版に記載されており、本明細書ではこの文献を援用する。そのような担体または希釈剤の好ましい例として、限定されるものではないが、水、食塩水、フィンガー溶液(finger’s solutions)、デキストロース溶液、および5%ヒト血清アルブミンが挙げられる。不揮発性油のようなリポソームおよび非水溶ビヒクルも使用可能である。薬学的活性物質に対するそのような媒体および薬剤の使用は、当分野では周知である。任意の従来の媒体または薬剤が活性化合物と適合しない範囲を除いて、組成物でのそれらの使用を意図している。追加の活性成分もまた、組成物に取り込むことができる。
以下の略語が本明細書で用いられる。すなわち、ADCC、抗体依存性細胞障害; BSA、ウシ血清アルブミン; DXR、遅発性異物性拒否;ELISA、酵素結合免疫吸着検定法; FT、フコシル転移酵素;Gal、D−ガラクトース; GT、ガラクトシル基転移酵素;Glc、D‐グルコース; G1cNAc、D−Nアセチルグルコサミン; G1yCAM−1、グリコシル化依存性細胞接着分子−1;HAR, 超急性拒絶;Ig、免疫グロブリン; MAdCAM、粘膜アドレシン細胞接着分子; PAEC、ブタの大動脈血管内皮細胞; PBMC、末梢血単核細胞; PSGL−1、Pセレクチン糖タンパク質リガンド−1;RBC、赤血球; SDS−PAGE、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法; Hex、ヘキソース; HexNAc、N−アセチル・ヘキソサミン; NeuAc、N−アセチル・ノイラミン酸; NeuGc、N−グリコリルノイラミン酸;およびHexNolはN−アセチル・ヘキソサミンの開いた(環でない)形状である。
(一般的方法)
(細胞培養)
COS−7 m6細胞(35)およびSV40ラージT抗原不死化ブタ大動脈内皮細胞株PEC−A(36)を10%ウシ胎児血清(FBS)および25μg/ml硫酸ゲンタマイシンを含むダルベッコの改質イーグル培地(DMEM)で継代した。ヒトの赤血白血病細胞株K562とバーキットリンパ腫細胞株RajiをATCCから入手し、10%FBS、100IU/mlペニシリン、および100μg/mlストレプトマイシンを含むHEPES緩衝RPMI 1640で培養した。
ブタα1,3GT(37−39)を、コーディング配列の5′末端、コザック(Kozak)翻訳開始コンセンサス配列、およびHind3制限部位に相補的な6つのコドンを持つフォワード・プライマーと、コーディング配列の3′末端、翻訳停止およびNot1制限部位に相補的な6つのコドンを持つリバース・プライマーとを用いて、ブタ脾臓cDNAからPCR増幅した。増幅1,3GTcDNAを、Hind3およびNot1(35)を用いて、CDM8のポリリンカーにクローニングした。P−セクレチンへの結合を媒介する高度にグリコシル化したムチン型のタンパク質であるPセレクチン糖タンパク質リガンド−1 (PSGL−1)(40)をコードする配列を、HL−60cDNAライブラリーからPCRによって得て、Hind3およびNot1を用いてCDM8にクローニングし、さらにDNAの塩基配列決定(シーケンシング)をおこなって確認した。ムチン免疫グロブリン発現プラスミドは、フレーム単位のPSGL−1の細胞外部分のPCR増幅cDNAをBamH1部位を介して、CDM7(Seed, B. et al)の発現カセットとして担持されたマウスIgG2のFe部分(ヒンジ、CH2およびCH3)に融合させることによって、構築した。
COSm6細胞を、DEAE−デキストラン・プロトコールおよび1μgのCsSI勾配生成プラスミドDNA/mlトランスフェクション・カクテルを用いてトランスフェクトさせた。COS細胞を、空ベクター(CDM8)、PSGL1/mIgG2bプラスミド単独またはα1,3GTコード化プラスミドとの組み合わせにより、約70%密集度でトランスフェクトさせた。トランスフェクション細胞を、トランスフェクションの翌日にトリプシン処理して新しいフラスコへ移した。約12時間にわたる付着の後で、培地を捨て、細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗い、その後、新たに7日間にわたって無血清AIM−V培地(cat.nr. 12030, Life technologies Inc.)で培養した。培養後、上清を回収し、デブリスを遠心(1,400xg、20分)により沈殿させ、NaN3を0.02%まで添加した。PSGLI/mIgG2b融合タンパク質を、4℃で一晩、ヤギ抗マウスIgGアガロース・ビーズ(A−6531、Sigma)上で転倒回転させて精製した。ビーズをPBSで洗い、続いてSDS−PAGEおよびウエスタンブロット分析、またはヒトAB血清および精製ヒト免疫グロブリンの吸着に用いた。
ヒトIgG、IgM、およびIgAを、ヤギ抗ヒトIgG(Fe特異的、A−3316,Sigma)、IgM(μ鎖特異的、A−9935、Sigma)、およびIgA(α鎖特異的、A−2692、Sigma)アガロース・ビーズを用いて、ヒトAB血清(20人を上回る人数の健康血液ドナーからプールした)から精製した。手短に言うと、5mlのスラリー(2.5ml充填ビーズ)を、10mm直径のカラムに注入し、PBSで洗浄した。プールしてあるヒトAB血清10mlを、ペリスタル型ポンプを使用して1ml/分で適用し、カラム容量のPBSのPBSで数回洗浄し、1ml/分の流速で0.1Mグリシン、0.15M NaCl、pH2.4により溶離させた。1mlのフラクションを、0.7mlの中和緩衝液(0.2Mトリス/塩酸、pH 9)を含んでいる試験管に回収した。280nmの吸着を分光光度的に読み取り、タンパク質を含んでいる試験管をプールし、1%PBSに対して透析し、さらに凍結乾燥した。凍結乾燥免疫グロブリンを蒸留水に再懸濁し、その濃度を1gGについては16mg/ml、IgAについては4mg/ml、さらにIgMについては2mg/mlに合わせてた。
SDS−PAGEは、垂直型Mini−Protean II電気泳動システム(Bio−Rad, Herculus, Calif.)(41)を用いて5%の濃縮用ゲルと6または10%の分離ゲルとによるLeammliの方法で、おこなった。Mini Trans−Blot電気泳動トランスファー・セル(Bio−Rad, Herculus, Calif.) (42)を用いて、分離タンパク質をHybond(商標)−Cエクストラ・メンブレン(Amersham)上にブロッティングした。タンパク質ゲルの染色を、製造元の指示(Bio−Rad, Herculus, Calif.)に従って、銀染色キットを使用しておこなった。3%BSA含有PBSで少なくとも2時間にわたってブロッキングした後、上記メンブレンを、室温で、0.2mMCaCl2含有PBS(pH6.8)に1μg/mlの濃度で希釈されたペルオキシダーゼ共役バンデイレイア・シンプリシフォリア(Bandereia simplicifolia)イソレクチンB4(L−5391、Sigma)により、2時間プロービングした。メンブレンをPBS(pH6.8)で5回洗浄し、製造元(Amersham)の指示に従ってECL(商標)キットを用いたケミルミネセンスで結合レクチンを視覚化した。
(抗マウスIgFcELISAによるPSGLb1/mgG2bの定量化)
吸着前後の細胞培養上清の融合タンパク質濃度の測定は、融合タンパク質を親和性精製多クローン性ヤギ抗マウスIgGFc抗体(cat.nr. 55482, Cappel/Organon Teknika, Durham, N.C.)で捕獲する96穴ELISAアッセイによっておこなった。3%BSA含有PBSでブロッキングした後、融合タンパク質を捕獲し、O−フェニレンジアミン二塩化水素化物(Sigma)を基質として用いてペルオキシダーゼ共役親和性精製多クローン性抗マウスIgGFc抗体(cat.nr. 55566, Organon Teknika, Durham, N.C.) で検出した。プレートを492nmで読み取り、AIMV無血清培地に再懸濁した精製マウスIgGFcフラグメント((cat.nr. 015−000−008, Jackson lmmunoResearch Labs., Inc., West Grove, Pa.)の希釈シリーズを用いてELSAのキャリブレーションをおこなった。
PEC−A細胞を、ゼラチン・コーティング96穴プレート(Nunclon, Denmark)に15,000細胞/ウエルの密度で播種し、AIMV無血清培地で48時間インキュベートした。プレートを、0.15MNaCl2含有0.02%Tween20で5回洗浄し、50μl/ウエルの精製ヒトIgG、IgM、およびIgAを含むPBSで、各々の開始濃度を8、1、および2mg/mlとして、室温で1時間培養した。上記のようにプレートを再び洗浄し、50μlアルカリ・ホスファターゼ共役ヤギ抗ヒトIgG(γ鎖特異的;A3312、Sigma)、IgM(μ鎖特異的;A1067、Sigma)、およびIgA(α鎖特異的;A3062、Sigma)F(ab)’2フラグメント含有PBS(1:200希釈)を添加し、室温で1時間にわたりインキュベートした。プレートを上記のように洗浄し、基質p−ニトロフェニル・リン酸(Sigma104−105)でインキュベートし、405nmで読み取った。
PEC−A ELISAについて記載したように、PEC−A細胞を96穴プレートに播種して培養した。48時間培養した後、細胞をNa2 51CrO4(cat.nr. CJS4、Amersham)1μCi/ウエルで37℃、1時間にわたりロードし、AIMV培地で3回洗浄した。15μlの連続希釈した吸着または非吸着ヒトAB血清または精製ヒトIgG、IgA、もしくはIgM抗体を、補体源としての50μlのウサギ血清(Cat. no. 439665、Biotest AG, Dreieich, Germany)とともに添加した。5%CO2雰囲気下、37℃で4時間インキュベートした後、上清をSkatron上清回収システム(Skatro Instruments, Norway)を用いて収集し、ガンマ・カウンター(1282 Compugamma, LKB Wallac)で分析した。各血清およびIg試料を三重反復分析した。パーセント致死を、最大放出と自然発生的放出との差で割った自然発生的放出で差し引いた測定放出として、計算した。
ヒトPBMCを、南(South)病院(ストックホルム)の血液バンクで、健康なドナーから調製した新鮮な軟膜 (バフィー・コート)を単離した。6mlのバフィー・コートと、1mg/mlBSAおよび3.35mg/mlEDTAを含む15mlのPBSとを、50mlポリプロピレン管内で混合した。
10分間にわたり500gで遠心した後、血小板リッチな上清を捨てて、6mlの下部相を6mlのハンクス液(HBSS)と混合し、さらに6mlLympoprep(商標)(Nycomed Pharma AS)で下層を形成した。遠心後(800xg、20分)、界面を新しい管に移し、HBSSで3回洗浄し、さらに無血清AIMV培地に再懸濁した。エフェクター細胞調製の最終ステップは、37℃および5%CO2で1時間インキュベートしてプラスチック粘着細胞を取り除いた組織培養フラスコに、PBMCを移すことであった。標的細胞は、上記のように保ったK562およびRaji細胞、またはPEC−A細胞であり、これらの細胞をアッセイの前日にトリプシン処理し、その後AIMV無血清培地で培養することでプラスチック表面への再粘着を防いだ。アッセイの時点で、PEC−A細胞をフラスコの底から洗い落とした。標的細胞をNa2 51CrO4、100μCi/1x106細胞で、37℃で1時間にわたりロードし、HBSSで3回洗浄し、さらにAIMVに再懸濁することで、最終濃度を5x104/mlとした。5、000個の標的細胞を、2倍希釈で50:1から6.25:1の範囲にあるエフェクター細胞(E):標的細胞(T)比で、10%加熱不活性化ヒトAB血清有りまたは無しの200μlAIMV培地に含まれたエフェクター細胞がある各ウエルに加えた。
Norway)を用いて収集し、ガンマ・カウンター(LKB Wallac)で分析した。パーセント致死を、最大放出と自然発生的放出との差で割った自然発生的放出で差し引いた測定放出として、計算した。
(PSGL1/mIgG2b融合タンパク質の発現および特徴付け)
ベクター・プラスミドCDM8、PSGL1/mIgG2bプラスミド、またはブタα1,3GTプラスミドとともにPSGL1/mIgG2bプラスミドによりトランスフェクションしたCOS−7m6細胞由来の上清を、トランスフェクション後、約7日目に回収した。分泌ムチン/Ig融合タンパク質を、抗マウスIgGアガロース・ビーズ上での吸着によって精製し、検出のためにバンデイレイア・シンプリシフォリア(Bandereia simplicifolia)イソレクチンB4 (BSA IB4)を用いたSDS−PAGEおよびウエスタンブロット分析にかけた。図1に示すように、融合タンパク質は、銀による染色が相対的に弱い145kDaの見かけ分子量を持つ広帯域として、還元条件下で移動した。大きさの不均一性(約125ないし165kDa)および低染色性は、高グリコシル化ムチン型タンパク質(43,44)の挙動に関して既におこなわれた観察と一致する。融合タンパク質は、おそらくホモ二量体として生産される。なぜなら、非還元条件下でのSDS−PAGEによって、見かけ分子量が250kDaを上回る二重のバンドが見られたためである。PSGL1/mIgG2bプラスミド単独またはα1,3GTプラスミドとともにトランスフェクションした同一数のCOS−7m6細胞に由来する2種類の上清から親和性精製された融合タンパク質の量は、同じであった。BSA IB4によってエレクトロブロッティング・メンブレンをプロービングすることで、ブタα1,3GTによるトランスフェクション後に得られた融合タンパク質の強い染色が明らかになった(図1)。しかし、COS細胞がシミアン(Simian)サル(α1,3活性が欠けた旧大陸サル)由来であるという事実にもかかわらず、α1,3GT cDNAの同時トランスフェクションなしでCOS−7m6細胞で生産されたPSGL1/mIgG2bもまたBSA IB4による染色が弱かった。このことは、BSA IB4レクチンがまさしくGa1α1,3Galエピトープ(45)よりもわずかに広い特異性を持つことを示している。それにもかかわらず、ブタα1,3GTcDNAの同時トランスフェクションは、高度にGalα1,3Gal置換PSGL1/mIgG2b融合タンパク質の発現を支持した。
PSGLI/mlgG2bが個々のヒト免疫グロブリンクラスを吸収することができた効率を調べるために、抗ヒトIgG、IgM、およびIgAアガロース・ビード上で、免疫アフィニティークロマトグラフィーによってヒトAB血清から、ヒトIgG、IgM、7およびIgAを精製した。単離後、IgAを抗IgGおよびIgMカラムに通過させ、IgGおよびIgMの痕跡を取り除く。この手順を、同様に他のIgクラスについても実行した。Ig分画純度は、SDS−PAGEでチェックした(図4)。正常血清で見いだされる濃度で、ヒトIgGおよびIgM(IgAではない)をウサギ補体の存在下、PEC−Aに対して細胞毒性を示した(図5)。IgGおよびIgM分画に存在する細胞毒性は、Galα1,3Gal−置換PSGL1/mIgG2b上での吸着によって、完全に除去された。IgA分画によって示される細胞毒性の欠如がPEC−Aに対するヒトIgA抗体の結合の欠如によるものかどうかを調べるために、細胞ELISAを、結合IgG、IgM、およびIgA抗体を検出するために細胞毒性アッセイで使用された同一Ig分画で実施した。アルカリホスファターゼ共役クラス特異的F(ab)′2フラグメントを2次抗体として用いた。IgGおよびIgMの細胞毒性がGalα1,3Gal−置換PSGL1/mIgG2bの吸着によって完全に取り除かれても、IgGに関しては70%(30から70%の範囲)を上回って、IgMに関しては55%(10から55%の範囲)を上回っては、結合は決して減少しなかった(図5)。ヒト免疫グロブリンAは明らかにPEC−Aと結合し、結合はGalα1,3Gal−置換PSGLI/mIgG2b上での吸着後に、わずかに減少しただけだった(29%以下)。したがって、IgA分画の細胞毒性の欠如は、IgAフラクションがPEC−Aに結合できないことによって説明することはできず、補体を活性化させることによると思われる。
いくつかのアッセイが無血清条件下でおこなわれ、K562およびRaji細胞と比較した場合、PEC−Aは新たに単離したPBMCによって致死を指示する中間の感度を有し、K562はヒトNK細胞による致死に対して感度が高く、Rajiは鈍感であった(図6A)。10%ヒト補体不活性化AB血清の存在下、致死率がほぼ倍となり、以前の公表データ(30)と一致して生体外(in vitro)でのADCC効果が支持される(図6B)。しかし、全てのPEC−A細胞毒性抗体(上記参照)を取り除くことが知られている条件下で、もし血清がGalα1,3Gal−置換PSGL1/mgIgG2bによって吸着されると、致死率は無血清条件下で見られる致死率よりもわずかに低いレベルまで減少する。一方、Galα1,3Galエピトープを持たないPSGL1/mIgG2b融合タンパク質それ自体は、ヒトAB血清存在下で致死率の増加を引き起こすことはできない(図6B)。これらのデータは、Galα1,3Gal特異性による抗ブタ抗体が生体外(in vitro)で抗体依存性細胞性細胞毒性を支持することができるということ、またそれが効果的に補体結合の細胞毒性の抗ブタ抗体を除去するちょうどその時、Galα1,3Gal−置換PSGL1/mIgG2b融合タンパク質はこれらの抗体を効果的に除去すること、という考えを支持する。
(一般法)
(細胞培養)
CHO−K1、COS7m6、293T、およびブタ大動脈内皮細胞株PEC−A(Khodadoust, M. M. et al., 1995)を10%胎児ウシ血清(FBS)および25μg/ml硫酸ゲンタマイシンを含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で培養した。選択培地は、下記に示すように、ピューロマイシン(cat. no. P7255; Sigma, St. Louis, MO. 63178)、ハイグロマイシン(cat. no. 400051; Calbiochem, La Jolla, CA 92039)、およびG418(cat. no. G7034; Sigma, St. Louis, MO 63178)を含有していた
(発現プラスミドの構築)
記載(Liu, J. et al., 1997)されるように、ブタα1,3Ga1T(Gustafsson, K. et al., 1994)およびPSGL−1/mIgG2b発現プラスミドを構築した。フォワードおよびリバース・プライマーとして、それぞれcgcgggctcgagatgaagatattcaaatgtおよびcgcggggcggccgctcatgatgtggtagtgagatを用いて、HL60 cDNAライブラリからC2 GnTI cDNAをPCRによって増幅した。安定なトランスフェクタントを生成するために用いられるベクターは、両方向性であり、ポリリンカーの上流のEF1αプロモーター、スプライス・ドナーおよびアクセプター部位、ならびにSV40の両方向性ポリ(A)付加シグナルを有していた。この転写ユニットとは反対の配向で、かつ逆方向からのポリ(A)シグナルを用いているのが、HSV TKプロモーターに続いてピューロマイシン・アセチル転移酵素(EF1α/PAC)、ハイグロマイシンb(EF1α/Hyg)、およびネオマイシン(EF1α/Neo)耐性遺伝子(N. Chiu, J. Holgersson and B. Seed)のコーディング配列からなる第2の転写ユニットであった。HindIIIおよびNotIを用いて、ブタα1,3GalTおよびPSGL−l/mIgG2bのcDNAをEF1α/HygおよびEF1α/PACベクターにそれぞれ交換した。XhoIおよびNotIを用いて、C2GnTI遺伝子をEF1α/Neoに交換した。
付着CHO−K1、COS7m6、および293T細胞を75cm2T型フラスコに播種し、約24時間後に、70ないし80%の細胞集密(cell confluency)でトランスフェクションした。改変ポリエチレンイミン(PEI)トランスフェクション法をトランスフェクションに対して用いた(Boussif, O. et al., 1995; He, Z. et al., 2001)。トランスフェクション後24時間に、各T型フラスコ中の細胞を5つの100mmペトリ皿に分け、選択培地中でインキュベートした。選択培地中のピューロマイシンの濃度は、CHO−K1、COS7m6、および293T細胞に対して、それぞれ6.0、1.5、および1.0μg/mlであった。CHO−K1、COS7m6、および293T細胞に対して、それぞれ550、50、および100μg/mlのハイグロマイシンb濃度を用い、CHO−K1細胞に対して、900μg/mlのG418濃度を用いた。選択培地を3日毎に変えた。約2週間後に、薬剤耐性クローンが形成した。クローンを顕微鏡下で同定し、ピペットマンを用いて手で採取した。選択したコロニーを、選択薬剤の存在下96穴プレート中でさらに2週間培養した。細胞が80ないし90%集密に達したとき細胞培養上清を回収し、ヤギ抗マウスIgG Fc抗体を用いて、ELISA、SDS−PAGE、およびウエスタン・ブロット法によって、PSGL−1/mIg2bを評価した。最も高いPSGL−1/mIgG2b発現を有するCHO−K1、COS7m6、および293Tクローンを、プラスミドをコードするブタα1,3Ga1Tでトランスフェクトし、ハイグロマイシン含有培地中で選択した。ヤギ抗マウスIgG Fc抗体と、末端αGalを認識するGSA I 1B4−レクチンとの両方を用いて、ELISA、SDS−PAGE、およびウエスタン・ブロットによって、耐性クローンを単離および特徴付けした。PSGL−1/mIgG2b上で相対的に高いαGal発現を有する2つのCHOクローンをC2 GnTIでさらにトランスフェクトして、G418含有培地中で選択した。より多くの複合体O−グリカンを示すPSGL−1/mIgG2bの大きさの増加によって、C2 GnTIの発現が確認された。
垂直型Mini−Protean II電気泳動システム(Bio−Rad, Hercules, CA, USA)を使用して、5%スタッキング・ゲルおよび8%分離ゲルを用いて、Laemmliの方法(Laemmli, U. K., 1970)によってSDS−PAGEをおこなった。還元および非還元条件下で、試料を電気泳動にかけた。分離度を増加するために、4ないし15%勾配ゲル(cat.no. 161−1104; Bio−Rad, Hercules, CA, USA)または4ないし12%勾配gels(cat.no NP0322; Invitrogen, Lidingo, Sweden)を複数の実験で用いた。後者のゲルは、MES緩衝液(cat.noNP0002; Invitrogen)と組み合わせて用いた。高精度タンパク質標準(cat.no RPN756; Amersham Biosciences, Uppsala, Sweden)をタンパク質分子量測定のための基準として適用した。Rubyと組み合わせてPro Q Emerald 300糖タンパク質検出キット(cat.no P21855; Molecular Probes, Leiden, The Netherlands)を用いて、タンパク質ゲルを染色した。CCDカメラを搭載するFlour−S Max MultiImagerで、これらのゲルを可視化した。Mini TransBlot(Bio−Rad)電気泳動トランスファー・セルを用いて、Hybond C外膜(cat.no. RPN203E; Amershain Biosciences)またはニトロセルロース膜(cat.no LC2001; Invitrogen)上に分離されたタンパク質も電気泳動的にブロットした(Towbin, H. et al., 1979)。0.2Tween20を含むPBS中3%BSAで1時間ブロッキングした後、1μg/ml濃度に希釈したペルオキシダーゼ結合GSA I IB4−レクチン(cat.no. L−5391; Sigma)、1:1,000で希釈したペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウスIgG Fc抗体(cat.no. A−9917; Sigma)、および1:1,000で希釈したマウス抗PSGL−1抗体(クローンKPL−1、cat.no 557502; BD PharMingen, San Diego, CA)を用いて、膜を室温で1時間プロービングした。2次抗体は、1:50,000で希釈したペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウスIgG F(ab)′2(cat.no A 2304; Sigma)であった。ブロッキング緩衝液で、全ての希釈をおこなった。インキュベーション間および後で、0.2%Tween20を含有するPBSで膜を3回洗浄した。ECLキット(cat.no. RPN 2106; Amersham Biosciences)を用いて、製造元の指示にしたがい、化学発光によって結合レクチンおよび抗体を可視化した。
二抗体サンドイッチELISAによって、細胞培養上清中の組み換えPSGL−1/mIgG2bの濃度と、その相対的α−Galエピトープ密度とを測定した。20μg/mlの濃度で、アフィニティー精製ポリクローナル・ヤギ抗マウスIgG Fc抗体(cat. nr. 55482; Cappel/Organon Teknika, Durham, NC)で96ウェルELISAプレートを一晩4℃で被覆した。PBS中の1%BSAを用いて、該プレートを1時間ブロッキングした。PSGL−1/mIgG2bを含有する上清を4時間インキュベートし、その後、0.5%(v/v)Tween20を含有するPBSで3回洗浄した。洗浄後、1:3,000希釈のペルオキシダーゼ結合抗マウスIgG Fc抗体(cat.no. A−9917; Sigma)または1:2,000で希釈したペルオキシダーゼ結合GSA I IB4−レクチン(cat.no. L−5391;Sigma)でプレートを2時間インキュベートした。3,3′,5,5′−テトラメチルベンジジンジハイドロクロライド(cat. nr. T−3405; Sigma, Sweden)を用いて、結合ペルオキシダーゼ結合抗体またはペルオキシダーゼ結合GSA−レクチンを可視化した。2M H2SO4によって、反応を停止し、450nmでプレートを読み取った。較正に対して、融合タンパク質生成のために用いられる培地中または1%BSAを含有するPBS中で再懸濁した精製マウスIgG Fcフラグメント(cat. Nr. 015−000−008; Jackson ImmunoResearch Labs., Inc., West Grove, PA)の希釈系列を用いて、PSGL−1/mIgG2b濃度を評価した。2つのELISAから得た相対的O.D.(GSA反応性/抗マウスIgG反応性)を比較することによって、α−Galエピトープ密度を測定した。
記載(Liu, J. et al., 2003)されるように、ブタ大動脈内皮細胞(PAEC)細胞毒性アッセイを行った。細胞毒性を最大の40%(y=0.4)に減少させるために各細胞クローンから必要とされるPSGL−1/mIgG2bの量を、各融合タンパク質に対する測定値の直線回帰後に得た曲線を記述する式から推論し、その後対応するx値(マイクログラム吸着体)を算出した。
6.0x107個の細胞(90ないし100%集密を持つ細胞を含む10個の175cm2T型フラスコを表す)を用いて、各バッチ培養を開始した。トリプシン(0.5mg/ml)・EDTA(0.2mg/ml)での消化後に、細胞を少量の培地中で再懸濁し、200xgで5分間遠心して、過剰なトリプシンを除去した。Burkerチャンバー中の細胞を計数することによって細胞密度を測定し、培地を添加して、最終濃度3.0x105個細胞/mlにした。細胞懸濁物を1L撹拌フラスコに移し、速度60rpmで培養物を撹拌するために細胞回転装置(Integra Biosciences, Wallisellen, Switzerland)を用いた。単独またはC2 GnTIとの組合せでα1,3GalTを発現するCHO−K1細胞を分泌するPSGL−1/mIgG2bを、それぞれピューロマイシン(200μg/ml)またはピューロマイシン(200μg/ml)およびG418(500μg/ml)の存在下で培養した。細胞を2日毎に計数した。細胞密度が5.0x105個細胞/mlに達したとき、細胞密度がもう1度3.0x105個細胞/mlに等しくなるように新たな培地を添加した。細胞懸濁物量が1,000mlになるまでこれを繰り返した。その後、細胞生存率が50%に減少するまで、細胞を持続的に培養した。
20分間1,420xgで遠心することによって、堆積物から上清を取り除いた。取り除いた上清を、ヤギ抗マウスIgG(分子全体)−アガロース(cat.no. A 6531; Sigma)10mlを含有するカラムに流速0.5ml/分で通した。PBS120mlでの洗浄後に、3M NaSCN120mlで、結合融合タンパク質を溶出した。検出用の抗マウスIgGを用いたSDS−PAGEおよびウエスタン・ブロット法による分析に続いて、融合タンパク質を含有する管の内容物をプールした。PSGL−1/mIgG2bを含む画分を蒸留水に対して透析し、凍結乾燥し、蒸留H2Oの1ないし2ml中で再懸濁した。融合タンパク質の濃度をELISAによって測定した。より低い分子量の夾雑物を除去するために、FPLC(Pharmacia Biotech, Sweden)を用いて流速0.5ml/分でPBSで溶出させるHiPrep 16/60 Sephacryl S−200 HRカラム(cat.no. 17−1166−01; Amersham Biosciences, Uppsala, Sweden)上でのゲル濾過によって、融合タンパク質をさらに精製した。5ml画分を回収し、280nmでのUV分光測光によって、タンパク質を含有する管を同定した。SDS−PAGEおよびウエスタン・ブロット法によって、プールした画分を再び分析し、蒸留水中でプール、透析、および再懸濁した。
記載(Carlstedt, I. et al., 1993)されるように、β脱離によってオリゴ糖を放出させた。放出されたオリゴ糖を45℃窒素流動下で気化し、記載(Hansson, G. C. et al., 1993)されるように、わずかな修飾で、CiucanuおよびKerek(Ciucanu, I. et al., 1984)にしたがって、過メチル化した。
LCQイオン・トラップ質量分析計(ThermoFinnigan, San Jose, CA)を用いて、陽イオンモードでのエレクトロスプレー・イオン化質量分析法(ESI−MS)を実行した。メタノール:水(1:1)中で試料を溶解し、質量分析計に流速5ないし10μl/分で導入した。窒素を空間電荷層ガスとして用いて、ニードル電圧を4.0kVに設定した。加熱キャピラリーの温度を200℃に設定した。合計10ないし20個のスペクトルを総計し、ESI−MSおよびESI−MS/MSスペクトルを産生した。
(異なる宿主細胞中でのα−Gal置換P−セレクチン糖タンパク質リガンド−1/マウスIgG2bの安定的な発現)
ピューロマイシンを添加した選択培地中での培養の15ないし20日後に、CHO−K1、COS7m6、および293T細胞の異なる大きさのコロニーを位相差顕微鏡によって同定した。該顕微鏡下で、各細胞型の192個のコロニーをピペットによって採取し、選択下での更なる増殖のために2つの96穴プレートに移した。IgサンドイッチELISAを用いて、個々のクローンの上清中の融合タンパク質濃度を評価し、31個のCHO−K1コロニー、8個のCOS7m6コロニー、および36個の293Tコロニーが抗マウスIgG Fc陽性であった。各細胞株由来のコロニーを分泌する上位5つを24ウェル・プレートに移動し、さらに増殖させた。最もよく発現するCHO−K1、COS7m6、および293Tクローンを、ハイグロマイシンB耐性遺伝子を保持するα1,3GaIT・コード・プラスミドでトランスフェクションした。ピューロマイシンおよびハイグロマイシンを用いて、α1,3GalT遺伝子を安定的に組み込んだPSGL−1/mIgG2b発現細胞を選択した。27個のCHO−K1コロニー、3個のCOS7m6コロニー、および31個の293Tコロニーが選択された。抗マウスIgGおよびグリフォニア・シンプリシフォリア(Griffonia simplicifolia)I IB4レクチンELISAで測定されるような融合タンパク質の濃度と、そのα−Galエピトープ置換の相対的レベルとにもとづいて、増殖すべきコロニーを選択した。ブタα1,3GalT有りまたは無しでCHO−K1(それぞれ、クローン5L4−1および10)、COS7m6(それぞれ、クローン51および2H5)、および293T(それぞれ、クローン14およびC)細胞中で発現するイムノアフィニティー単離PSGL−1/mIgG2bをSDS−PAGEおよびウエスタン・ブロット法によって特徴づけた(表1、図7)。全ての細胞株は、非還元条件下で、約300kDaの抗マウスIgG Fc反応性タンパク質を産生した(図7A)。先行の観察(Liu, J. et al., 1997; Liu, J. et al., 2003)と一致して、還元での半分の大きさへの減少によって示される(図7Aおよび図7Bを比較せよ)ように、PSGL−1/mIgG2bはニ量体として産生された。GSA I IB4レクチンを用いて、異なる細胞型で生成された融合タンパク質上のα−Galエピトープの存在を検出した(図7B)。CHO−K1(クローン5L4−1)、COS7m6(クローン51)、および293T(クローン14)中のα1,3Ga1Tの共発現は、レクチンによって検出されたように、融合タンパク質上のα−Galエピトープの発現に至った。α1,3GalT無しで293T細胞中で生成されたPSGL−1/mIgG2bのレクチン反応性は予想外であり、融合タンパク質上のGalili抗原以外のα−Gal残基の存在を示す(図7B)。α1,3GalTの存在下でCOSおよび293T細胞中で産生された融合タンパク質は、CHO−K1細胞中で産生された融合タンパク質より大きい大きさの糖形態を含有していた(図7B)。
CHO、COS、および293T細胞中で生成されたPSGL−1/mIgG2b上の相対的なα−Galエピトープ密度をELISAによって測定した(図8)。α1,3GalTの存在下でCOS細胞中で生成されたPSGL−1/mIgG2bは、α1,3GalT無しでCOS中で生成されたPSGL−1/mIgG2bと比べて、相対的O.D.(GSA反応性/抗マウスIgG反応性)で5.3倍の増加を示した(図8)。293T細胞に関しては、相対的O.D.で3.1倍の増加があり、CHO細胞に関しては、1.8倍の増加だけであった(図8)。ELISA結果は、イムノアフィニティ精製PSGL−1/mIgG2bのウエスタン・ブロット実験で見られる相対的GSAレクチン染色と一致していた(図7B)。
ブタ大動脈内皮細胞細胞毒性を用いて、ブタα1,3GalTを共発現するCHO−K1(クローン5L4−1)、COS7m6(クローン5I)、および293T(クローン14)細胞中で産生されたPSGL−1/mIgG2bの、ヒト血液型AB血清の抗ブタ反応性抗体を吸着する能力を評価した(図9)。ヒトAB血清PAEC細胞毒性を最大40%に減少させるために、CHO細胞生成PSGL−1/mIgG2b9.1μgが必要であった(図9)。COSおよび293T細胞生成PSGL−1/mIgG2b関しては、PAEC細胞毒性を同レベルまで減少するために、それぞれ16倍および4倍少なく必要であった。さらに、α1,3GalT遺伝子の存在下でCHO−K1細胞中で生成されたPSGL−1/mIgG2bは、血液型AB血清のPAEC細胞毒性を36%をより下に減少することができなかった一方で、12および25%への減少がそれぞれ、非飽和条件下であっても、α1,3GalT発現COSおよび293T細胞中で生成されたPSGL−1/mIgG2bで見られた。
CHO−K1細胞分泌ムチン/Ig上のα−Galエピトープの数を増加させる試みでは、PSGL−1/mIgG2b、α1,3GalT、およびC2 GnTIを安定的に発現するCHO−K1細胞を樹立し、抗マウスIgG抗体およびGSA I IB4を用いて、ELISA、SDS−PAGE、およびウエスタン・ブロットによって、それらの細胞によって分泌されるPSGL−1/mIgG2bを分析した。PSGL−1/mIgG2bの明らかなMWは、コア2酵素の安定的な発現に続いて増加し、融合タンパク質上のより多くの複合体グリカンを示した(図10)。PSGL−1/mIgG2b上のα−Galエピトープ密度は、α1,3GalT無しでCHO−K1細胞中で生成されたPSGL−1/mIgG2bと比べて13.0倍の増加を示し、α1,3GalT単独を用いて生成されたPSGL−1/mIgG2bと比べて7.4倍の増加を示した(図8)。さらに、α1,3GalTおよびC2 GnTIを安定的に発現するaCHO−K1(CHO−C2−1−9)中で産生されたPSGL−1/mIgG2bの抗ブタ抗体吸着効果は、α1,3GalTを共発現する293TおよびCOS細胞中で産生されたPSGL−1/mIgG2bの吸着効果と同様であり(図9)、CHOクローン5L4−1中で生成されたPSGL−1/mIgG2bと比べて、ヒトAB血清のPAEC細胞毒性を最大40%に減少させるために10倍少ない融合タンパク質が必要であった。
単独、ブタα1,3GalTとの組み合わせ、またはα1,3GalTおよびC2 GnTIとの組み合わせでPSGL−1/mIgG2bを発現する安定的にトランスフェクションしたCHO−K1細胞(それぞれ、クローン10、クローン5L4−1、またはクローンC2−1−9)の1L撹拌フラスコ培養物から、組み換えPSGL−1/mIgG2bを精製した。Oグリカン構造分析を干渉する可能性のある混入するグリコシル化タンパク質を完全に除去するために、抗マウスIgGアフィニティー・クロマトグラフィーおよびゲル濾過を含むツー・ステップ精製法を設定した。各細胞クローンから得た細胞上清2リットルのアフィニティー精製は、ELISAによって評価されたように、CHO−10、5L4−1、およびC2−1−9から、それぞれPSGL−1/mIgG2b2.2mg、1.2mg、および0.95mgを生じた。ゲル濾過カラム上での更なる精製は、それぞれ、0.22mg、0.19mg、および0.29mgの最終PSGL−1/mIgG2b収率を生じた。アフィニティーおよびゲル濾過カラムから溶出した画分をSDS−PAGEおよびウエスタン・ブロット法によって分析した(ここではクローン10に対して示す)。糖タンパク質染色キットをRubyと組み合わせて用いて、グリコシル化タンパク質と、非グリコシル化タンパク質とを検出し(図11Aおよび11B)、抗PSGL−1抗体は、PSGL−1/mIgG2bの存在を確認した(図11C)。この抗体は、PSGL−1/mIgG2b二量体を表す300kDa付近のバンド(図11Cレーン2および4ないし9)と強く結合した。還元形態の融合タンパク質由来の150kDa付近のバンドも見られ(レーン4ないし6)、融合タンパク質分解産物を表す可能性が最も高い60ないし70kDaの弱いバンドも見られる(レーン7ないし9)。図11Aおよび11Bでは、抗PSGL−1抗体で染色されていない300kDaバンドもレーン1および3で見られ、細胞培養培地由来のタンパク質を表す可能性が最も高い。このことは、アフィニティー精製上清中のその存在(レーン3)によっても裏づけされ、該タンパク質が抗Igアフィニティー・カラムに吸着されていないことを示す。しかし、抗PSGL−1抗体に染色されていない50ないし60kDaのMWを持つグリコシル化バンドをアフィニティー精製画分で見ることができる(図11Aレーン4)。このタンパク質も、恐らく細胞培養培地に由来するものであり、融合タンパク質とともにアフィニティー・カラムに吸着される。このタンパク質をゲル濾過によって除去し、該ゲル濾過の間、該タンパク質(図11Aおよび11B,レーン7ないし9)は、融合タンパク質(図11A,11B,および11C、レーン5ないし6)より遅れて溶出した。50ないし70kDa付近の付加的な非グリコシル化タンパク質をゲル濾過によって除去した(図11B、レーン4とレーン7ないし9とを比較せよ)。各クローンに対して、最も多い量の融合タンパク質を含有するゲル濾過画分をオリゴ糖放出のために選択した。クローン10に対して示すように(図11Aおよび11B、レーン5)、この画分は、いずれの有意な量の混入するタンパク質(グリコシル化または非グリコシル化)も含有していなかった。
クローンCHO−10および5L4−1から放出された過メチル化オリゴ糖は、m/z895.4および1256.5付近のピークの2つの最も多数を占める群を持つ類似のMSスペクトルを与え(図12)、一方で、クローンC2−1−9によって産生されたPSGL−1/mIgG2bから放出されたO−グリカンの質量スペクトルは、より複雑なパターンを示した(図13)。タンデム質量分析法(MS/MS)によって、ESI−MSスペクトル中のイオンのオリゴ糖配列を導き出した。このように得られた配列および仮構造を表2に示す。下記に、我々は、α1,3GalTおよびC2 GnTIも発現するCHO細胞(C2−1−9)中で産生されたPSGL−1/mIgG2b上のO−グリカンのMS/MS分析の結果について記載する。MSおよびMS/MSスペクトル中のイオン全てをナトリウム化イオンとして検出した。
親スペクトル中の最も強度のピークは、一連のステップのMS/MSによって評価されるように、NeuAc−Hex−HexNol−HexN−Hex−Hex構造を表すm/z1548.7の偽分子イオン([M+Na]+)である(図14)。このイオンのMS2は、m/z951.3([M−NeuAc−Hex−O+NA]+)および1173.5([M−NeuAc+Na]+)の2つのより大きなフラグメント・イオンと、m/z506.1([M−Hex−Hex−HexN−NeuAc+Na]+)、620.2([NeuAc−Hex−O+Na]+)、690.2([Hex−Hex−HexN+Na]+)、751.3([M−Hex−Hex−NeuAc+Na]+または[M−Hex−NeuAc−Hex+Na]+)、881.3([M−Hex−Hex−HexN+Na]+)、969.5([M−NeuAc−Hex+Na]+)、および1330.7([M−Hex+Na]+)の複数のより小さなフラグメント・イオンとを与えた。m/z1173.5のフラグメント・イオンを単離して、MS3によって分析すると、m/z951.4、506.2、690.3、および751.5のフラグメント・イオンを生じた。より大きなピーク、すなわち951.4をMS4によってさらに分析し、m/z445.3([Hex−Hex+Na]+)、463.0([Hex−Hex−O+Na]+)、690.3 、および733.6([M−Hex−NeuAc−Hex−O+Na]+)のフラグメント・イオンを生じた。最終的に、MS4分析の優勢なフラグメント・イオン(690.3)をMS5によって分析した。これによって、末端Hex−Hexを表すm/z415.1および445.3の配列イオンを生じ、前者のイオンは、1つの酸素およびそのメチル基を消失していた。Hex−Hex−O構造も見いだされた(463.0)。さらに、内部Hex−HexN構造が、ヘキソースに結合する1つの酸素を持つもの(472.2)および持たないもの(454.0)で見られた。Hex−Hex−HexN構造からのO−Meの消失(660.1)、C−O−Meの消失(648.2)、およびN−C−O−Meの消失(619.4)も見られ、ここで、最後の1つは、恐らく内部HexNからのN−アセチル基の消失を表す。m/z533.2のより大きなフラグメント・イオンもMS5スペクトル中で見られた。このイオンは、最内側のHexNのクロス・リング・フラグメントに対応し(図14)、ヘキソースが1−4結合中のHexNに結合することを示す。この配列は、2型構造および末端Galで伸張されたシアル酸付加コア2と整合する可能性が最も高い。
Claims (9)
- ムチン免疫グロブリン融合ポリペプチドを含む、抗αGal抗体を吸着するための組成物であって、該ポリペプチドは、以下:
(a)O−グリカン上でのコア2分岐およびラクトサミン伸張のために、
i)免疫グロブリン・ポリペプチドのFc領域または重鎖をコードする核酸に結合したムチン・ポリペプチドをコードする核酸、
ii)α1,3ガラクトシル基転移酵素ポリペプチドをコードする核酸、および
iii)β1,6−N−アセチルグルコサミニル転移酵素ポリペプチドをコードする核酸、
を有する細胞をインビトロで提供するステップと、
(b)該ムチン免疫グロブリン融合ポリペプチドの生産を可能とする条件下で細胞をインビトロで培養するステップであって、該融合ポリペプチドは該α1,3ガラクトシル基転移酵素およびβ1,6−N−アセチルグルコサミニル転移酵素によってグリコシル化されているステップと、
(c)該ムチン免疫グロブリン融合ポリペプチドを単離するステップと、
を包含する方法によって産生されたものである、組成物。 - 前記ムチン・ポリペプチドが、PSGL−1、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、MUC5a、MUC5b、MUC5c、MUC6、MUC11、MUC12、CD34、CD43、CD45、CD96、GlyCAM−1、およびMAdCAM3からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
- 前記ムチン・ポリペプチドが、P−セレクチン糖タンパク質リガンド−1の細胞外部分を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
- 前記細胞が真核細胞または原核細胞であること特徴とする請求項1に記載の組成物。
- 前記真核細胞がほ乳類細胞、昆虫細胞、または酵母細胞であることを特徴とする請求項4に記載の組成物。
- 前記原核細胞が細菌細胞であることを特徴とする請求項4に記載の組成物。
- 前記真核細胞がCHO細胞、COS細胞、または293細胞であることを特徴とする請求項4に記載の組成物。
- ムチン免疫グロブリン融合ポリペプチドを含む、抗αGal抗体を吸着するための組成物であって、該ポリペプチドは、以下:
(a)O−グリカン上でのコア2分岐およびラクトサミン伸張のために、細胞に対して、
(i)免疫グロブリン・ポリペプチドのFc領域または重鎖をコードする核酸に結合したムチン・ポリペプチドをコードする核酸、
(ii)α1,3−ガラクトシル基転移酵素ポリペプチドをコードする核酸、および
(iii)β1,6−N−アセチルグルコサミニル転移酵素ポリペプチド
をコードする核酸をインビトロで導入するステップと、
(b)該ムチン免疫グロブリン融合ポリペプチドの生産を可能とする条件下で細胞をインビトロで培養するステップであって、該融合ポリペプチドは該α1,3ガラクトシル基転移酵素およびβ1,6−N−アセチルグルコサミニル転移酵素によってグリコシル化されているステップと、
(c)該ムリン免疫グロブリン融合ポリペプチドを単離するステップと、
を包含する方法によって産生されたものである、組成物。 - 前記α1,3ガラクトシル基転移酵素がブタ由来である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
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