JP4647867B2 - センサの測定用アパーチャーよりも大きなターゲットの評価に用いる装置及び方法 - Google Patents

センサの測定用アパーチャーよりも大きなターゲットの評価に用いる装置及び方法 Download PDF

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Description

【0001】
(技術分野)
本発明は、物体、特にセンサのアパーチャーより大きい物体の評価に用いる装置及び方法に関する。
【0002】
(背景技術)
シャック−ハルトマン(Shack-Hartmann)の波面センサを含めて、波面センサは光の波面の測定に用いられる公知の技術である。表面からの光を反射させてその光を波面センサに向けることにより、ウエハや光学部品の表面の特性を測定することができる。波面センサは傾き測定により波面の誤差を決定する。
【0003】
シャック−ハルトマンテストにおいては、アレイ状に配置された多数の小型レンズが波面のサンプリングに使用される。各レンズは対応するサブアパーチャーを構成する。得られるスポットのアレイは、光線の痕跡を物理的に現実化したものとみなされ、検出器上に収束される。所定の焦点の位置は、サブアパーチャーにおける波面の平均的な傾きに依存している。各サンプルの伝播方向あるいは波面傾きは、各小型レンズの焦点の位置のシフトを推定することにより決定される。次いで、公知のいろいろな方法により、検出された画像から波面が再構成される。センサの解像度及び感度は小型レンズアレイにより決定される。
【0004】
シャック−ハルトマンの波面センサには、いくつかの応用がある。これらの応用のくつかについては十分に開発がなされ、適応光学部品、パルスレーザ及びレーザビームの質の測定、接眼用適応光学部品、そして測定、さらに、種々の計測学的応用のために研究された特別のセンサが開発されている。いくつかの応用については、シャック−ハルトマンセンサは好適に使用することができる。なぜなら、振動に強く、光源波長に限定がなく、簡単でコンパクトで頑丈なアセンブリの中に配置することができるからである。シャック−ハルトマンの波面センサの利用に関する総説が、Lasers as Tools for Manufacturing II, SPIE Volume2993(1997)において、 D.R.Nealらの"Wavefront Sensors for Control and Process Monitoring in Optics Manufacture"に述べられている。
【0005】
しかしながら、波面あるいは他の計測の技術へ応用するに際し、ターゲットの大きさが阻害要因となっている多くの計測学応用(metrology application)がある。例えば、巨大な鏡又は光学部品、市販のガラス、平面ディスプレイ、そしてシリコンウエハ等である。これに関し、例えば、参照によりその内容が本願に盛り込まれているプルトニー(Poultney)の米国特許第5,563,709号を含め、過去にいくつかの方法が開発されているが、大きな要素に適用した場合の空間解像度の損失という問題や、大きさや較正上の問題点を有している。
【0006】
そのような計測学的応用の一例として、シリコンウエハの測定が挙げられる。その測定において、重要な結論は、シリコンウエハ上への微小部品の搭載に影響を与える表面欠陥を決定することである。マイクロエレクトロニクス回路の最小の部品サイズは、当初以来着実に小さくなっている。現在0.35μmが主流となり、次世代の回路では0.18μmあるいは0.13μmが必要とされている。これら微小部品を搭載するには、非常に微細な欠陥を検出(及び除去)することが必要となる。同時に、ウエハサイズは大きくなっている。現在の世代の200mmウエハは、300mmウエハに急速に置き換わっており、さらに近い将来450mmウエハの使用も検討されている。大きなウエハに対する一層の解像度向上に対するニーズが、計測用ツールに対する非常に大きな課題となっている。
【0007】
現在の計測手段は、これらの新しいプロセスのニーズに対して、明らかにスケーラブルではない。大きなサイズに対するスケーリングには、非常に大きな光学部品が必要となり、それに伴い、高コスト、大きな足跡、そして搭載の困難性が発生する。さらに、必要とされる解像度はそのような方法では達成することができない。シャック−ハルトマン法は、小型レンズ当り少なくとも4つのピクセルを必要とする。そのため、所定のアパーチャーを超える解像度には限界がある。プルトニーに開示された方法を大面積にスケーリングするには、非常に多数のピクセルを備えたカメラが必要となる。干渉形法は、大面積に適用可能で、解像度の損失も少ないが、現在の実用的な方法にはデータの4から6のフレームの獲得が必要である。このことは、クリーンルーム環境における自動化された検査における振動の問題と、大きな物体を分析する時の処理量の減少とをもたらす。
【0008】
他の応用は、上述のウエハ分析の場合より一層問題がある。シリコンウエハは300mmあるいは450mmにでも拡大可能であるが、フラットパネルディスプレイは現在、1500×600mmが作製されている。1回のアパーチャー測定用に現在使用されている計測ツールをスケーリングすることは明らかに実用的ではない。自動車用あるいは商業用のガラスは大面積のものが作製されており、4m幅のセグメントは珍しくない。明らかに、別の技術が必要である。
【0009】
分析すべき特徴サイズが減少するとともに、許容可能な歪みの大きさは減少し、十分な平坦性を確保するためには高解像度の測定が行われなくてはならない。この高解像度の測定と大面積での測定とを両立させるのは困難である。さらに、1回の測定により大面積について平坦性を測定するシステムを較正する場合には、同程度の大きさの基準試料が必要であるが、それを作製するのは困難である。
【0010】
いくつかの解決策が開示されている。例えば、リンドウ(Lindow)らの米国特許第4689491号、オトタケ(Ototake)らの米国特許第4730927号、そしてモズレヒ(Moslehi)らの米国特許第5293216号には、表面の逐点分析が開示されているが、これらの特許に開示されている分析方法は非常に時間がかかる。
【0011】
(発明の開示)
(発明が解決しようとする技術的課題)
したがって、本発明はセンサのアパーチャーより大きい物体の表面を評価する方法及び装置に関するものであり、関連する技術の限界や不利益に起因する1以上の問題を実質的に克服することができる。
【0012】
本発明の目的は、小面積の領域の測定に利用されるシャック−ハルトマンのセンサの利点(すなわち、振動の影響を受けにくく、表面の傾きを直接測定でき、波長に依存しない。)を大面積の領域の測定に利用することにある。小面積の領域の場合、非常に良好な平面が得られるので、非常に正確な測定を行うことができる。規格品のカメラと小型レンズアレイを用いることができる。この技術を用いることにより、関心のある表面の全体に亘り、多くの隣接する及びオーバーラップする領域の測定を行うことができる。大面積の領域を測定するため、本発明によれば、次に、表面全体を特徴付ける傾き情報を利用する適切なアルゴリズムを用いてこれらの領域を繋ぎ合せる。ここで、「繋ぎ合せる」という言葉は、オーバーラップする領域の波面の導関数から波面をアセンブルことを意味する。この方法により、高解像度で、さらに大面積の領域の測定を、非常に大きな光学部品あるいは検出器を用いることなく行うことができる。本発明の方法は、適切な移動装置を用いることにより、どのような大きさのものに対してもスケーラブルである。
【0013】
これら及び他の目的の少なくとも一つは、多数のサブ領域を有するターゲットからの波面の再構成方法であって、サブ領域に照射する工程と、サブ領域からの光を小型レンズアレイに導く工程と、小型レンズアレイからの焦点の位置を検出する工程と、検出した焦点の位置に基いてサブ領域からの波面を決定する工程と、すべてのサブ領域の測定が終了するまで、前記の工程を繰返す工程と、波面を繋ぎ合わせてターゲットからの波面を再構成する工程と、から成る再構成方法により実現することができる。
【0014】
ターゲットは理想的には平面が好ましい。方法には、基準表面を用いて較正する工程が含まれる。上記の繰返す工程は、物体と、照射、導く、そして検出を実行するシステムとを互いに移動させる工程を含むことができる。その移動させる工程は、整数個の小型レンズを移動させる工程を含むことができる。その移動させる工程では、隣接測定の10〜50%をオーバーラップさせることができる。各サブ領域がターゲットのすべての第1方向に沿って延在する場合、その移動させる工程は、サブ領域を全部測定するために第1方向に直交する一方向に移動させる工程を含むことができる。上記の繋ぎ合せる工程には、決定する工程からの1以上の波面を有するオーバーラップ領域における波面をオーバーラップ領域の波面の平均値に等しいと設定する工程を含むことができる。ターゲットには、ウエハ、フラットパネルディスプレイ、そして大きな光学部品のいずれか一つを用いることができる。物体から配達された光は物体により反射あるいは伝送されることができる。サブ領域に対する照射は各サブ領域に対し1回のみ実行することが好ましい。もちろん、精度を上げるために多数回照射することもできる。
【0015】
これら及び他の物体の少なくとも一つは、システムのアパーチャーよりも大きい物体を分析するための計測学システムであって、光源と、波面センサと、光源からの光を被測定物体の一部に導き、かつ、物体からの光を波面センサに導く光学システムと、物体とシステムの相対位置を調整する移動装置と、被測定物体の異なる部分について波面センサにより測定された波面を、移動装置により決められた位置で繋ぎ合せるプロセッサと、から成る計測学的システムを用いて実現することができる。
【0016】
そのシステムは光学システムを較正するための基準表面を含むことができる。移動装置は物体を搭載するための移動ステージを含むことができる。光学システムを較正するための基準表面は移動ステージの上に搭載することができる。波面センサには、物体のすべての次元に沿って延在する線形波面センサを用いることができる。移動装置は1次元においてのみ相対位置を調整することができる。システムは、光学システムの中の物体からの位置を測定する位置決めセンサを含むことができる。システムは、位置決めセンサにより測定された位置に基いて制御された波面センサに物体からの光を向ける移動可能な表面を有することができる。物体には、ウエハ、フラットパネルディスプレイ、大きな光学部品、そして他の表面のいずれか一つを用いることができる。光学システムは、物体により反射あるいは伝送された光を波面センサに導くことができる。移動装置は、1回だけ測定された物体の一部に光学システムが光を導いた後、相対位置を調整することができる。
【0017】
これら及び他の本発明の目的は、以下の詳細な説明により明確になるであろう。しかしながら、詳細な説明及び特定の実施例は、本発明の好ましい態様を示すものであるが、例示にすぎないものであり、本発明の精神及び範囲に含まれる種々の変形と変更がこの詳細な説明から当業者には明白である、ということは理解されるべきである。
【0018】
(発明を実施するための最良の形態)
本発明は、ここでは、特定の応用について例示された実施形態を参照して説明されているが、本発明がその内容に限定されるものでないことは理解されるべきである。当業者であって記載内容の教示を理解できる者であれば、本発明の範囲に含まれる付加的な変形、応用、そして実施形態、さらに、余計な実験を行うことなく本発明の有用性が認められる付加的な分野にも利用可能であることが理解できるであろう。
【0019】
物体として、例えばウエハを用いた本発明の計測学システムの一例の模式図を図1aに示す。光源10は光ファイバー12を通してコリメータレンズ14に光を供給する。光源10は広帯域の光源が好ましく、例えば、低い時間的コヒーレンスを有する光源を挙げることができ、これにより波面センサの小型レンズ間のクロストークの影響を最小化することができる。しかし、レーザを含むあらゆる光源を用いることができる。光源10は、振動に対するシステムの感度を低下させるために、パルス型のものを用いることが好ましい。波面センサの焦点平面の上の明確な光源の像の大きさは、所望のダイナミックレンジと整合した焦点の分離に際し適切なサンプリングが可能なように調整される。平行光は、評価すべき物体の表面20の上に光を映す光学部品18の上に光を向けるビームスピリッタ16に導かれる。評価される表面20は、湾曲やゆがみを最小化するためにチャック22の上に設けることができる。チャック22は移動ステージ24の上に取付けられる。
【0020】
表面20により反射された光は、光学部品18により再撮像され、ビームスピリッタ16を通って小型レンズアレイを備えた波面センサ26、好ましくはシャック−ハルトマンの波面センサに達する。光学部品18は、波面センサ26の小型レンズアレイのすべての小型レンズが充填されるように設計されるのが好ましい。表面20と波面センサ26は、対となる画面に配置されるのが好ましく、それにより、回折の影響が存在しない。センサ26の上の表面20の像を拡大するズームレンズ28を設けることが好ましい。像を拡大すればするほど、システムの感度を高めることができる。センサは像の情報を、センサの内部あるいはセンサの外部あるいはセンサから離間して配置されたプロセッサ30に出力する。プロセッサ30は、センサのデータを処理して物体の所望のプロフィル、例えば、平坦性を評価する。プロセッサ30は、情報を処理し、個々の測定から得られた全表面のマップを作成するのに用いられる多数のアルゴリズムを有している。
【0021】
図1b-1eは、システムの別の実施形態を示している。これらの構成からわかるように、光と表面との間、及び表面からの反射と検出器との間に所望の光の通路が維持されている限りは、要素の相対的な配置は問題ではない。
【0022】
図1bには、簡単な構成が示されている。2つの薄いウエッジ(wedge)34、35が、直交する平面に設けられている。第1の薄いウエッジ34がビームの第1の方向に非点収差をもたらす一方で、第2の薄いウエッジ35はビームの第1の方向に直交する第2の方向に同じ量の非点収差をもたらす。これにより、ビームが検出器26に当る距離を変えることにより、簡単に非点収差を補償することができる。
【0023】
図1cは、光の配達部分と検出部分とが互いに平行でなくても良いことを示している。実際に、これらの部分は同じ平面上になくても良い。
【0024】
図1dは、プリズム又はウエッジ34が、光源12からの光を表面20へ、及び表面20からの光をセンサ26に向けるビームスピリッタとして用いることができることを示している。これにより、アパーチャー37による二次反射の分離とフィルタリングが可能となる。また、図1dには、操縦可能なミラー31が示されている。そのミラーは、光が正確にセンサ26に指向可能に位置決め検出器33により制御されている。プリズム又は検出器35は、表面20から位置決め検出器33に戻ってきた光の一部を分離するのに用いられ、ビームスピリッタプリズム34によりもたらされる収差を補償可能に配置されている。もちろん、適切であれば、いかなる配置にもビームスピリッタを配置することができる。ミラー31は、位置決め検出器33がビームが光学システムの中心にあることを指示するまで調整される。位置決めは、アパーチャーストップ37を有する光学システム36を用いる場合には特に重要である。アパーチャーストップ37を用いる場合、もしビームがシステムの光学軸の中心からずれていると、センサ26は正確な信号を受け取ることができない。調整可能なミラーを含むこの位置決めは、上記のすべての構成と一緒に使用することが可能である。
【0025】
図1eに示すように、光を表面20とセンサ26に向ける要素は減らすことができる。この実施形態では、表面20に対し斜めの角度に光配達システムとセンサ26とを配置することにより所望の方向に光を向けることができる。
【0026】
好適には、図1aと1c−1eに示されているように、基準表面32を移動ステージ24の上に取り付けることができる。本発明によれば、ターゲットの表面の一部のみを一度に映すことができるので、この基準表面を簡単に組立てることができる。実際、波面センサにより一度に測定されるターゲット表面の量は、許容範囲内の精度を有する、最大の利用可能な基準平面により一部が決定される。例えば、波長の1/200以上の非常に高精度の基準表面が直径3インチまで現在達成可能であり、例えば、REO、Burleigh、そして Zygo Inc.から入手可能である。システムを用いて基準表面を測定することにより、システムを較正することができる。この較正によれば、光学システムの誤差を次の測定により差し引くことができるので、光学部品に対する要求精度を下げることができる。移動ステージの上に基準表面を取付けることにより、システムを所望の回数だけ較正することができる。システムとターゲットの相対移動は連続的でも非連続的でも良い。
【0027】
図1a−1eに示すように、表面20の一部のみが計測学システムによりセンサの上に撮像(image)される。表面20の完全な像を得るために、計測学システムと表面20は移動ステージ24により互いに移動し、おそらくわずかにオーバーラップした状態で各位置で撮像される。次いで、これらの多数の像は、以下に述べる方法により完全な像を作製するために、繋ぎ合わされる。この繋ぎ合わせを実行するために多くのアルゴリズム、例えば、最小二乗法や模擬アニーリング等が使用される。本発明の重要な特徴は、隣接するオーバーラップ領域からの傾斜情報を直接用いることにある。以前は、エッジラインが上昇するまで、表面の個々の像をすべて調整していた。これに対し、直接、傾き情報を保存することにより、像のエッジにおける得られた差はすべてステージの傾きによるものとなる。このように、本発明の繋ぎ合せは、ステージが完全であるという仮定に依存するものではない。以前の方法では必要とされていたそのような仮定は間違った誤差を与えてしまい、平面に見える表面を受け入れる場合や受け入れ可能な表面を受け入れ不可とする場合の両方を与える可能性がある。
【0028】
二次元波面センサ
図2は、シャック−ハルトマンの波面センサを波面センサ26として用いた場合の二次元の実施形態の基本要素を示す模式図である。表面20からの入射波面40の一部は、二次元の小型レンズアレイ42へ入射する。小型レンズアレイ42は、入射波面40を多数の微小サンプルに分割する。小型レンズが小さくなるほど、センサの空間解像度が向上する。しかしながら、微小な小型レンズからのスポットの大きさは回折効果により使用可能な焦点距離に制限を加え、感度を低下させる。このように、これら2つのパラメータは所望の測定が実行可能となるようにバランスさせなければならない。好ましくは少なくとも12〜16ビットの非常に低ノイズのカメラが現在利用可能であり、これによりすべての波面センサの感度を向上させることができ、そしてこのバランスも達成することができる。
【0029】
各サンプルは検出器46の上に焦点44を形成する。検出器46は、例えば、低ノイズで高ピクセル数の電荷結合素子(CCD)カメラを用いることができ、これには例えば、シリコン・マウンテン・デザイン社製のSMD−2Kを挙げることができる。プロセッサ30は、焦点の位置を決定するために中心軌跡近似を実行する。焦点の位置はサンプル全体の平均波面に依存する。したがって、これらサンプルのそれぞれの伝搬方向は、検出器46の上の焦点の位置により決定される。プロセッサ30は、位置の基準セットに対し焦点の位置を比較する。この基準はシステムの較正の間に確定される。次いで、プロセッサ30は測定された焦点と基準位置との間の差を小型レンズの焦点距離で割り、その差を波面の傾きに変換する。次いで、プロセッサ30は、二次元における波面の傾きを積分して、測定される物体の一部に対してビームの波面を作成する。次いで、プロセッサ30は、測定物体の平坦性を評価するため、較正用波面からの波面のすべてのずれを決定する。
【0030】
図2にはレンズは1列のみしか示されていないが、図2の小型レンズアレイ42は実際は二次元であり、基準平面の大きさと一致するように、2方向に多数のレンズを有している。さらに、検出器の上に多数の焦点を形成するのに、利用可能であればいかなる方法も使用できる。これには、小型レンズアレイ、ホールアレイ、格子アレイ、プリズムアレイ等が含まれる。
【0031】
1次元波面センサ
また、図4に示すシャック−ハルトマンセンサは、センサの長さが、測定対象部分の最大長さよりも、あるいは測定され以下の方法により繋ぎ合わされる部分の一部よりも長いものを用いることができる。大きな部分は図1eに示すように斜めの角度で測定することができ、これにより直径の小さなセンサであっても大きな直径部分を測定することができる。基準データは小さな基準平面を用いて取得することができる。
【0032】
1本のラインに沿って波面を測定する1次元(1D)用の波面センサがニール(Neal)らの米国特許第5,493,391号公報に記載され、それは参照によりその内容が盛り込まれている。このタイプの測定方法は、測定のバンド幅に利点を有している。なぜなら、同じ測定に対し、より少ないカメラピクセルで良いからである。1Dセンサの場合、センサのバンド幅はR/Nで評価される。ここで、Rはカメラのピクセル速度(ピクセル/sec)で、Nはセンサの1本のラインを横切るピクセル数(又はピクセルクロック)を表わす。2Dセンサの場合、R/Nで評価され、同じピクセル速度Rであれば、システムの実効バンド幅を大きく減らすことができる。例えば、Rが10MHzでNが512ピクセルの場合、1Dのバンド幅は19.5kHz、2Dのバンド幅は38Hzである。これは、フロー、乱流等の移動システム、あるいは他の動的システムの検査にとっては大きな利点である。しかしながら、本特許に開示されたセンサはx軸の導関数のみを測定するものであり、y軸の導関数あるいは直交微分については推論を通じていくつかの情報が得られるのみである。
【0033】
本発明では、x及びy軸の導関数(derivative)の測定が必要である。図4は線形波面センサ60を示している。そのセンサは以前の1Dセンサのスピードの利点をほとんど備えているのみならず、x軸及びy軸の導関数の両方の測定が可能である。
【0034】
線形波面センサ60は、その端部が互いに接触するように直線状に配列された球状(あるいは概ね球状)のレンズ66の列から成る小型レンズアレイ62と、検出器64とを備えている。本発明における好適な使用のためには、各レンズのfナンバーをかなり大きくする必要がある。これにより、測定の感度を最大限にすることができる。レンズのfナンバーは、特定の検出器64に適した最適のスポットの大きさを作製可能なように選定される。
【0035】
線形波面センサ60は、検出器64として測定バンド幅を最大化するために刻時された二次元CCDを用いて実現することができる。これは、CCDカメラに外部から水平刻時パルスあるいは垂直同期パルスを送ることにより可能となる。測定対象領域は従来の2DのCCD上に規定され、最初のわずかのデータ列の読出しが終わった後、フレームをリセットするために送られる。スポットの位置は、中心軌跡アルゴリズム(centroid algorithm)、整合フィルターアルゴリズム(matched filter algorithm)、高速フーリエ移相アルゴリズム(fast Fourier phase shift algorithm)、あるいは他の適当なアルゴリズムを用いて得られる。カメラの制御エレクトロニクスと、データ収集に使用されるフレームグラバー(frame grabber)が両方とも同じコンピュータのソフトウエアにより制御されている限り、この技術の一つの利点は、スポットが移動している時にスポットを追跡(tracking)することによりダイナミックレンジを広げることができる。
【0036】
線形波面センサ60を実現するための、電子制御に代わる別の方法を図5に示す。3本線のCCD68を検出器64として用いる。3本線のCCD検出器は、当初、ライン走査カメラのカラー動作を可能とするために開発された。本発明において使用するために、3本線のCCD68はカラーフィルターを取外すことにより改良されている。3本線は、図5に模式的に示したように、水平方向だけでなく垂直方向もセンシングが可能であり、小型レンズアレイ62からの焦点69が検出器68の多くのラインの上に示されている。スポットは両方の軸におけるその中心軌跡(centroid)を通じて配置される。これは、x軸及びy軸の導関数の両方を測定するための必要な情報を与える。この方法の問題点は、y軸方向(検出器アレイのラインに垂直な)におけるダイナミックレンジが減少することである。なぜなら、この方向においては3回の測定のみしか実行されないからである。しかし、この問題を解決するため、小型レンズの設計のアスペクト比を変化させることにより、スポットの形状を調整することができる。さらに、そのシステムの高速データ速度は、より多くのデータを取り込むことにより、ダイナミックレンジの損失を補償することを可能とする。
【0037】
本発明の線形波面センサ60は、いくつかの点において他の一次元波面センサ装置に類似している。例えば、「光学式モニタ装置」というタイトルのシック(Sick)の米国特許第4227091号を挙げることができる。しかしながら、本発明の線形波面センサ60は、両方の導関数を測定できる他の概念よりも非常に簡単である。上記の本発明の電子制御は、市販の部品を用いることができ、ソフトウエア、カメラの制御エレクトロニクス、そして対象領域の情報を得るためのフレームグラバーを用いる。上記の本発明の物理的な3本線配置は、ダイナミックレンジが制約されるが、その実施は容易である。本発明の線形波形センサ60は、物体を取付ける及び/又は移動させることが実際には困難である場合に有用である。
【0038】
波面の再構成
波面センサに係るいずれかの実施形態により取り込まれたデータは、物体全体の波面を形成するために処理される必要がある。図3に示すように、波面センサ26(又は線形波面センサ60)を被測定物に比例して移動させることにより、各波面の傾きが得られ、続いて、その傾きは全波面を作成するために繋ぎ合わされる。本発明においては、「繋ぎ合せる」という言葉は、オーバーラップした領域の波面の導関数を用いて波面を再構成することを意味する。図3では一次元のみしか示していないが、物体の表面の両方の次元に沿ってこの移動が可能であるということは理解されるべきである。さらに、一次元のアレイし示していないが、同様の方法により二次元のアレイも可能であることは理解されるべきである。
【0039】
図の上方に示したように、十分な入射波面48に対して小型レンズアレイ42(62)が第1の位置にある。十分な入射波面48の一部のみが、小型レンズアレイ42(62)により撮像される。図の真中に示したように、小型レンズアレイ42(62)は入射波面48に対してシフトし、第2の位置にある。第1の位置と第2の位置との間のオーバーラップ領域50は、オーバーラップ領域50の平均傾きをマッチングさせることにより互いに繋ぎ合わされる。このマッチングは、ヒューリスティック・コンバージェンス(hueristic convergence)により達成され、第1導関数を連続にさせる以前の方法と異なり、第1導関数が不連続となる。この不連続性は、移動ステージの誤差を表わすものであり、簡単に差し引くことができる。そのため、表面についての情報のみを得ることができる。
【0040】
図の下方では、小型レンズアレイ42(62)が入射波面48に対してシフトし、第3の位置にある。第2の位置と第3の位置の間のオーバーラップ領域52は、上記のようにオーバーラップ領域52の平均傾きをマッチングさせることにより互いに繋ぎ合わされる。すべてのシフト及び繋ぎ合せが完了した後、波面の完全な像が得られる。
【0041】
収集したデータを処理するために、例えば、個々の波面の像を結び付けるために、誤差最小化のアルゴリズムが用いられる。データを取得している間、像の端部の上の領域を前の像とオーバーラップさせるように、各波面の像が取り込まれる。次いで、各波面の像の各オーバーラップ領域でのx軸及びy軸方向における傾きの平均値が算出される。波面像を取得する間の移動の間に、試験物体と波面センサの先端(tip)と傾き(tilt)は互いにわずかだけ変化するので、各波面像の先端と傾きとを像のオーバーラップ領域の先端及び傾きとマッチングするように調整する。このマッチングを達成するために、オーバーラップ領域の先端と傾きとの差の絶対値の合計を誤差関数として規定することができる。この誤差関数を最小化するために、例えば、模擬アニーリングのような反復探索アルゴリズムを用いることができる。上記のアルゴリズムは、隣接する像の間の先端あるいは傾きの誤差を補償することができるほんの一例を示すものである。
【0042】
波面センサを、整数個の多数の小型レンズを用いて一度に一方向に移動させることが好ましい。典型的には各シフトについて同じ量だけ移動させるが、シフト方向において全物体を撮像するのに必要な最後のシフトの場合だけは、物体の端部を撮像するために十分に離れている方が良い。得られるオーバーラップは小型レンズアレイのアパーチャーの10%〜50%のオーダである。オーバーラップ領域の大きさは所望の繋ぎ合せ精度が得られるように調整することができる。一次元センサの場合、実際には、それ以上の大きさのオーバーラップが必要である。なぜなら、二次元センサの場合よりもデータの取り込み速度が大きいからである。
【0043】
波面の傾きを測定するシャック−ハルトマンの波面センサを用いる時は、垂直方向における、例えば、ナノメータオーダのわずかな差、すなわち、波面センサと被測定物体との間の間隔は、測定には影響を与えない。他のタイプのセンサ、例えば、干渉計センサを用いた場合、垂直方向における差が平坦性の測定に大きな影響を与える。したがって、既知の領域がオーバーラップするように、移動ステージは波面センサと物体とを互いに正確に位置決めする必要があるが、ステージに垂直方向の逃げを精密に設ける必要はない。さらに、干渉計は分析に十分なデータを収集するために一般的に3〜6のフレームを必要とするが、本発明に係る波面センシングでは1つのフレームで、対象とする領域に必要なすべてのデータを収集することができる。最後に、1個の像のみで良く、かつ、各像には少量のデータしか含まれないので、本発明に係る波面センシングは、一連の測定のためにシステムを移動及び停止させる必要がなく、連続した走査を可能とする。これにより、分析を行う速度を高めることができる。これは、干渉計にない際立った利点である。干渉計の場合、停止し、各位置で3−6フレームの測定を行う必要がある。
【0044】
したがって、本発明によれば、サブアパーチャーの波面の傾きの高解像度の測定を互いに繋ぎ合せることができるので、アパーチャー全体について高解像度の測定が可能となる。サブアパーチャーの面積に対応する基準を、システムの較正のために測定することができる。上記の説明はウエハの平坦性の測定に関するものであるが、本発明の計測学システムは、システムのアパーチャーよりも大面積であって、多くの他の物体あるいは光学システムに対する高解像度の波面測定に使用できるだけでなく、平坦でないプロフィールの測定にも使用することができる。
【0045】
本発明の実施形態において詳細に説明したが、ここで教示された基本的な発明概念に基く多くの変形及び/又は変更は、それらは当業者には明らかであるが、添付のクレーム及びそれと等価なものにより規定される本発明の精神及び範囲に含まれる。例えば、図示を容易にするため、すべての要素が同じ平面上に存在するように、すべての構成が図示されているが、要素は別の面の上に存在しても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】 a.本発明の計測学システムの一例を示す模式図である。b.本発明の計測学システムの別の構成例を示す模式図である。c.本発明の計測学システムのさらに別の構成例を示す模式図である。d.本発明の計測学システムのさらに別の構成例を示す模式図である。e.本発明の計測学システムのさらに別の構成例を示す模式図である。
【図2】 シャック−ハルトマンセンサの模式図である。
【図3】 本発明における波面の繋ぎ合せ方法を示す図である。
【図4】 線形シャック−ハルトマンセンサの模式図である、
【図5】 図4のシャック−ハルトマンセンサの動作を示す模式図である。

Claims (28)

  1. 多数のサブ領域を有するターゲットからの波面の再構成方法であって、
    a)ターゲットの一のサブ領域に光照射する工程と、
    b)該一のサブ領域からの光をスポット発生器に導く工程と、
    c)上記スポット発生器からの光の焦点の位置を検出する工程と、
    d)検出した焦点の位置に基いてサブ領域からの波面を決定する工程と、
    e)隣接するサブ領域に対して該一のサブ領域とオーバーラップするように光照射してオーバーラップ領域を形成しながら、すべてのサブ領域について、工程a)からd)を繰返す工程と、
    f)工程d)で決定した波面をオーバーラップ領域の波面の導関数を用いて繋ぎ合わせて、ターゲットからの波面を再構成する工程と、から成るターゲットからの波面の再構成方法。
  2. 上記ターゲットは、平面である請求項1記載の方法。
  3. さらに、基準表面に対して工程a)からd)を実行することにより較正する工程を含む請求項1記載の方法。
  4. 上記の繰返す工程は、上記ターゲットと、上記の照射する工程、導く工程、そして検出する工程を実行するシステムとを互いに移動させる工程を有する請求項1記載の方法。
  5. 上記スポット発生器は小型レンズのアレイであって、上記の移動させる工程は整数個の小型レンズを移動させる工程を含む請求項4記載の方法。
  6. 上記の移動させる工程により、隣接する測定の10〜50%がオーバーラップする請求項4記載の方法。
  7. 上記サブ領域は、それぞれ、ターゲットの第1方向全体に沿って延在し、上記の移動させる工程は、上記サブ領域の全測定の第1方向に直交する一方向に移動させる工程を含む請求項4記載の方法。
  8. 上記の繋ぎ合せる工程は、上記の決定する工程からの1以上の波面を有するオーバーラップ領域の波面をオーバーラップ領域の波面の平均値と等しいと設定する工程を含む請求項1記載の方法。
  9. 上記ターゲットは、ウエハ、フラットパネルディスプレイ及び光学部品のいずれかである請求項1記載の方法。
  10. 上記ターゲットから導かれた光が上記ターゲットにより反射される請求項1記載の方法。
  11. 上記ターゲットから導かれた光が上記ターゲットにより伝送される請求項1記載の方法。
  12. サブ領域を照射する上記の照射する工程は、各サブ領域について1回のみ実行される請求項1記載の方法。
  13. 上記の移動させる工程は、上記ターゲットと上記システムとを互いに連続して移動させる工程を含む請求項4記載の方法。
  14. 上記の照射する工程は、パルス光によりサブ領域を照射する工程を含む請求項1記載の方法。
  15. 上記の繋ぎ合せる工程は、誤差最小化アルゴリズムを用いてオーバーラップ領域における波面の値を決定する請求項1記載の方法。
  16. システムのアパーチャーよりも大きいターゲットを分析するための計測学システムであって、
    光源と、
    波面センサと、
    光源からの光をターゲットの一部分に導き、かつ、ターゲットからの光を波面センサに導く光学システムと、
    上記のターゲットの一部分に隣接するターゲットの異なる部分を上記のターゲットの一部分とオーバーラップさせてオーバーラップ領域を形成した状態で、該異なる部分について測定を行うように、ターゲットとシステムの相対位置を調整する移動装置と、
    移動装置により決められた位置で、波面センサにより測定されたターゲットの異なる部分についての波面を、オーバーラップ領域の波面の導関数を用いて繋ぎ合せるプロセッサと、から成る計測学システム。
  17. さらに、上記光学システムを較正するための基準表面を有する請求項16記載のシステム。
  18. 上記移動装置は、上記ターゲットを搭載する移動ステージを有する請求項16記載のシステム。
  19. さらに、上記光学システムを較正するための基準表面を有し、該基準表面は上記移動ステージに搭載される請求項18記載のシステム。
  20. 上記波面センサは、上記ターゲットのすべての次元に沿って延在する線形波面センサである請求項16記載のシステム。
  21. 上記移動装置は、1次元のみの相対位置を調整する請求項16記載のシステム。
  22. さらに、上記システムは、ターゲットからの光の光学システムにおける位置を測定する位置決め検出器を有する請求項16記載のシステム。
  23. さらに、上記システムは、上記位置決め検出器により測定した位置に基き、制御された波面センサにターゲットからの光を向ける調整可能なミラーを有する請求項22記載のシステム。
  24. 上記ターゲットは、ウエハ、フラットパネルディスプレイ及び光学部品のいずれかである請求項16記載のシステム。
  25. 上記光学システムは、ターゲットから反射された光を波面センサに導く請求項16記載のシステム。
  26. 上記光学システムは、ターゲットにより伝送された光を波面センサに導く請求項16記載のシステム。
  27. 上記移動装置は、1回だけ測定されたターゲットの一部に光学システムにより光が導かれた後、相対位置を調整する請求項16記載のシステム。
  28. 上記移動装置は、連続して相対位置を調整する請求項16記載のシステム。
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