JP4643861B2 - フレキシブル積層板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、加圧加熱成形装置で製造される積層板の製造方法に関し、特に、電子電気機器等に用いられるフレキシブル積層板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子電気機器用印刷回路基板に用いられる積層板には、金属箔が熱硬化性樹脂等の熱硬化型接着剤によって貼付された積層板(以下、熱硬化型の積層板と表す)と、熱可塑性樹脂等の熱融着型接着剤によって貼付された積層板(以下、熱融着型の積層板と表す)がある。熱硬化型の積層板は、ポリイミドフィルム等の耐熱性フィルムの両面にエポキシ樹脂やアクリル樹脂といった熱硬化型の接着剤を形成し、金属箔と貼り合わせた後、長時間キュアを行い、硬化を完了させ作製される。近年、環境問題から半田材料に従来の融点より高温である鉛フリーの半田が用いられるようになり、それに伴い、フレキシブル積層板に要求される耐熱性がさらに厳しいものとなり、この接着層のエポキシ樹脂、アクリル樹脂では耐熱性を満足することができなくなってきた。
【0003】
その耐熱性の要求に応えるべく、接着層に熱可塑性のポリイミド樹脂を使用した熱融着型の積層板が使用されている。熱融着型の積層板の製造は、金属材料の片面にポリイミド樹脂を塗布・乾燥、もしくはポリイミド前駆体溶液を塗布・乾燥・キュアし、接着面同士を向かい合わせにした状態でラミネート装置で貼り合わせて両面のフレキシブル積層板を製造する方法や、ポリイミドフィルム等の耐熱性フィルムの両面にポリイミド樹脂を塗布・乾燥、もしくはポリイミド前駆体溶液を塗布・乾燥・キュアして接着フィルムを作製し、銅箔/接着フィルム/銅箔の構成で、ラミネート装置で貼り合わせて両面のフレキシブル積層板を製造する方法等がある。
【0004】
熱融着型の積層板を製造する場合、接着層を構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)以上の温度で加圧加熱を行わなければ熱融着ができない。一方、電子電気機器用積層板は、部品実装の過程で高温加熱を受けるので、接着層を構成する熱可塑性樹脂には少なくとも180℃以上のTgが求められる。更にその熱融着のためには200℃以上の熱ラミネート温度が必要となる。この様な高温でのラミネートでは、被積層材料の熱膨張・熱収縮の変化が大きくなり、ラミネートされた積層体にシワ等の外観不良を生じやすいという問題がある。
【0005】
一般にラミネートされる直前に接着フィルムは、繰出軸から繰出したフィルムが蛇行しないようにある程度の張力をかけるため、接着フィルムのラミネート進行方向(MD方向)にはフィルムを引き伸ばす力が加わる。しかしながら、接着フィルムの巾方向(TD方向)には、何の力も加わらずフリーの状態のためMD方向に引っ張られた接着フィルムの伸びに従って、TD方向は縮もうとする力が働く。このTD方向が縮もうとする力によって、ラミネートされたフレキシブル積層板のTD方向のエッチング後の寸法変化が大きくなったり、シワが発生したりする問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、前記問題点に鑑み、熱ラミネート時に生じるシワ等の外観不良のないフレキシブル基板材料として好適な積層板の製造方法を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記同様の系でラミネート直前に接着フィルムをTD方向に強制的に引き伸ばすことによって、TD方向の縮みが抑制され、エッチング後の寸法変化が小さくなり、またラミネート時に生じるシワの軽減につながることを見出し本発明に達した。
すなわち本発明は、接着フィルムと金属材料とを熱ロールラミネート装置により連続的に貼り合わせてなる積層板の製造方法であって、ラミネート直前に接着フィルムを巾方向に伸張することを特徴とするフレキシブル積層板の製造方法であり、巾方向の伸張率が100.05〜100.50%であるのが好ましい。
【0008】
前期接着フィルムは、接着成分中に熱可塑性ポリイミドを50重量%以上含有する接着フィルムであるのが好ましく、金属材料は、厚みが50μm以下の銅箔であるのが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の詳細について説明する。
本発明の製造方法で得られる積層板の用途は特に限定されるものではないが、主として電子電気用のフレキシブル積層板として用いられるものである。
【0010】
接着フィルムとしては、熱融着性を有する樹脂から成る単層フィルム、熱融着性を有さないコア層の両側に熱融着性を有する樹脂層を形成して成る複数層フィルム、紙、ガラスクロス等の基材に熱融着性を有する樹脂を含浸したフィルム等が挙げられるが、ガラスクロス等の剛性のある基材を使用すると屈曲性が劣ることより、フレキシブル積層板用の接着フィルムとしては、熱融着性を有する樹脂から成る単層フィルム、熱融着性を有さないコア層の両側に熱融着性を有する樹脂層を形成して成る複数層フィルムが好ましい。熱融着性を有する樹脂から成る単層フィルム、熱融着性を有さないコア層の両側に熱融着性を有する樹脂層を形成して成る複数層フィルムとしては耐熱性を有するものが好ましく、接着成分が熱可塑性ポリイミド系成分から成るもの、例えば、熱可塑性ポリアミドイミド、熱可塑性ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリエステルイミド等が好適に用いられ得る。これらの耐熱性の熱可塑性樹脂を接着成分中の50%以上含有する接着フィルムも本発明には好ましく用いられ、エポキシ樹脂やアクリル樹脂のような熱硬化性樹脂等を配合した接着フィルムの使用も好ましい。各種特性の向上のために接着フィルムには種々の添加剤が配合されていても構わない。
【0011】
接着フィルムの構成は、耐熱性の接着層を外側に有するものであれば、熱融着性の接着成分のみから成る単層でも構わないが、寸法特性等の観点から、熱融着性を有さないコア層の両側に熱融着性の接着層を有する3層構造のフィルムが好ましい。この熱融着性を有さないコア層は、耐熱性があれば特に限定しないが、非熱可塑性のポリイミドフィルムの使用が好ましい。
【0012】
接着フィルムの作製方法については特に限定しないが、接着剤層単層からなる場合、ベルトキャスト法、押出法等により製膜することができる。また、接着フィルムの構成が接着層/熱融着性を有さないコア層/接着層という3層からなる場合、熱融着性を有さないコア層(例えば、耐熱性フィルム)の両面に接着剤を、片面ずつ、もしくは両面同時に塗布して3層の接着フィルムを作製する方法や、耐熱性フィルムの両面に接着成分のみからなる単層の接着フィルムを配して貼り合わせて3層の接着フィルムを作製する方法がある。接着剤を塗布して3層の接着フィルムを作製する方法において、特にポリイミド系の接着剤を使用する場合、ポリアミック酸の状態で耐熱性フィルムに塗布し、次いで乾燥させながらイミド化を行う方法と、そのまま可溶性ポリイミド樹脂を塗布し、乾燥させる方法があり、接着剤層を形成する方法は特に問わない。その他に、接着層/耐熱融着性を有さないコア層/接着層のそれぞれの樹脂を共押出して、一度に接着フィルムを製膜する方法もある。
【0013】
金属材料としては、特に限定しないが、電子電気機器用に用いられる積層板の場合、導電性・コストの点から銅箔を用いるのが好ましい。また、金属箔の厚みについては、銅箔の厚みが薄いほど回路パターンの線幅を細線化できることから、50μm以下の銅箔が好ましい。特に35μm以下の銅箔はそれ以上の厚みの銅箔に比べてコシがなく、熱ラミネートする際にシワを生じやすいため、35μm以下の銅箔について、本発明は顕著な効果を発揮する。また、銅箔の種類としては圧延銅箔、電解銅箔、HTE銅箔等が挙げられ特に制限はなく、これらの表面に接着剤が塗布されていても構わない。
【0014】
熱ロールラミネート装置については、被積層材料を加熱して圧力を加えてラミネートする装置であれば特にこだわらない。加熱方法について、所定の温度で加熱することができるものであれば特にこだわらず、熱媒循環方式、熱風加熱方式、誘電加熱方式等が挙げられる。加熱温度は200℃以上が好ましいが、電子部品実装のために積層板が雰囲気温度240℃の半田リフロー炉を通過する用途に供される場合には、それに応じたTgを有する熱融着シートを使用するため240℃以上の加熱が好ましい。プレスロールの材質はゴム、金属等、特に限定しないが、ラミネート温度が280℃以上の高温になると、ゴムロールは劣化するため使用できず、金属ロールが好ましい。加圧方式についても所定の圧力を加えることができるものであれば特にこだわらず、油圧方式、空気圧方式、ギャップ間圧力方式等が挙げられ、圧力は特に限定されない。
【0015】
接着フィルムをTD方向に伸ばす機構については、接着フィルムがTD方向に引き伸ばされる要件を満たすものであれば、特にこだわらない。例えば、ピンチローラー、エイスパンダーローラー、バナナロール、ヘリボンロール等の機構を設置して、接着フィルムをTD方向に引き伸ばすことが可能である。
【0016】
本発明においては、ラミネート直前に接着フィルムをTD方向に伸張することによって目的を達成しうるものであるが、TD方向の伸張率としては、100.05〜100.50%の範囲であるのが好ましい。
【0017】
保護材料は、ラミネートした製品のシワ発生等の外観不良から保護する目的を満たすものであれば何でも良い。ただし、加工時の温度に耐え得るものでなければならず、例えば250℃で加工する場合は、それ以上の耐熱性を有するポリイミドフィルム等が有効である。保護材料の厚みは特に限定しないが、ラミネート後の積層板のシワ形成を抑制する目的から、50μm以上の厚みが好ましい。保護材料の厚みが75μm以上であればシワ形成をほぼ完全に抑制できるため、さらに好ましい。また、保護材料は被積層材料と軽く密着するものであれば、特に表面処理等を施す必要がない。逆に保護材料が被積層材料と密着しないものである場合、保護材料側に軽く密着するような表面処理を施したり、銅箔側に同様な表面処理を施したり、保護材料、銅箔の両方に表面処理を施したりしても構わない。また、銅箔表面の酸化を防ぐ目的で施された防錆処理等、他の目的で施した表面処理であっても、保護材料と被積層材料が軽く密着するようなものであれば、表面処理を施してあっても構わない。
【0018】
保護材料を剥離する際の積層板の温度は、熱可塑性樹脂を被積層材料として使用する場合には、そのTg以下の温度が好ましい。より好ましくはTgよりも50℃以上低い温度、更に好ましくはTgよりも100℃以上低い温度である。最も好ましくは室温まで冷却された時点で保護材料を積層板から剥離するのが好ましい。以下実施例を記載して本発明をより詳細に説明する。
【0019】
【実施例】
本発明の実施例及び比較例を挙げ、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものでない。以下、実施例、比較例において、接着剤層の物性およびフレキシブル基板の物性は次のようにして測定した。
【0020】
(寸法変化率)
JIS−C6481に基づいて、両面基板に開けた4点の穴のそれぞれの距離を測定し、次にエッチングして銅箔を除去した後に20℃、60%RHの恒温室に24時間放置し、エッチング前同様に4点の穴のそれぞれの距離を測定してエッチング後の寸法変化率を次式で求めた。
寸法変化率(%)=[(エッチング後のフィルムの測定値−エッチング前の測定値)/(エッチング前の測定値)]×100
(実施例1)
耐熱性接着フィルム(鐘淵化学工業製の25μm厚PIXEO BP HT-142)の両側に金属材料(ジャパンエナジー製の18μm圧延銅箔BHY-22B-T)を配し、さらにその両側に保護材料(鐘淵化学工業製のアピカル125AH)を配した状態で、ラミネート直前に図1のようにピンチローラーを設置して、TD方向に100.10%伸張した状態で、ラミネート温度300℃、ラミネート圧力50N/mm、ラミネート速度1.0m/minの条件で熱ロールラミネート装置でラミネートを行い、フレキシブル積層板を得た。その結果、シワのないフレキシブル積層板を得た。エッチング後の寸法変化率は、MD-0.05、TD+0.02であった。
【0021】
(実施例2)
ラミネート直前に図3のようなエキスパンダーローラーを設置して接着フィルムをTD方向に100.20%引き伸ばした他は、実施例1と同様な条件でラミネートを行った。その結果、シワのないフレキシブル積層板を得た。エッチング後の寸法変化率は、MD-0.03、TD+0.03であった。
【0022】
(実施例3)
ラミネート直前に図4のようなパスラインでバナナロールを設置して接着フィルムをTD方向に100.30%引き伸ばした他は、実施例1と同様な条件でラミネートを行った。その結果、シワのないフレキシブル積層板を得た。エッチング後の寸法変化率は、MD-0.02、TD±0.00であった。
【0023】
(実施例4)
ラミネート直前に図5のようなヘリボンロールを設置して接着フィルムをTD方向に100.40%引き伸ばした他は、実施例1と同様な条件でラミネートを行った。その結果、シワのないフレキシブル積層板を得た。エッチング後の寸法変化率は、MD-0.01、TD-0.03であった。
【0024】
(比較例1)
ラミネート直前では図6のように何もせずに、実施例1と同様な条件でラミネートを行った。その結果、フレキシブル積層板の表面に薄っすらとシワが発生した。エッチング後の寸法変化は、 MD-0.10、TD+0.07であった。
【0025】
【発明の効果】
本発明による積層板の作製方法を用いることによって、ラミネート時にシワになりやすい圧延銅箔を用いた場合においても、外観良好な積層板を得ることが出来る。従って本発明は、特に電子電気機器用のフレキシブル積層板として好適な材料を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】ラミネート時の各材料のパスライン
【図2】ラミネートの上から見た図
【図3】ラミネート時の各材料のパスライン
【図4】ラミネート時の各材料のパスライン
【図5】ラミネート時の各材料のパスライン
【図6】ラミネート時の各材料のパスライン
【符号の説明】
1:金属材料
2:接着フィルム
3:保護フィルム
4:熱ロールラミネート装置
5:保護フィルム巻取装置
6:製品巻取装置
7:ピンチローラー
8:エキスパンダーローラー
9:フリーロール
10:バナナロール
11:ヘリボンロール
Claims (4)
- 接着フィルムと金属材料とを熱ロールラミネート装置により連続的に貼り合わせてなる積層板の製造方法であって、
ラミネート直前に接着フィルムを巾方向(TD方向)に伸張する工程を含み、
上記接着フィルムは、熱融着性を有さないコア層の両側に熱融着性を有する樹脂層を形成して成る複数層フィルムであり、
上記工程における接着フィルムの巾方向(TD方向)への伸張率が100.05〜100.50%であることを特徴とするフレキシブル積層板の製造方法。 - 接着フィルムが、接着成分中に熱可塑性ポリイミドを50重量%以上含有する接着フィルムである請求項1に記載のフレキシブル積層板の製造方法。
- 金属材料が、厚みが50μm以下の銅箔である請求項1又は2に記載のフレキシブル積層板の製造方法。
- 上記熱融着性を有さないコア層は非熱可塑性ポリイミドフィルムである、請求項1〜3のいずれかに記載のフレキシブル積層板の製造方法。
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CN102218891A (zh) * | 2011-04-28 | 2011-10-19 | 山东海博复合材料科技发展有限公司 | 片状模塑料双向揭膜机 |
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JPH0564869A (ja) * | 1991-09-09 | 1993-03-19 | Mitsubishi Kasei Corp | 金属・樹脂複合板の連続的製造方法 |
JPH07137196A (ja) * | 1993-11-18 | 1995-05-30 | Kanegafuchi Chem Ind Co Ltd | フレキシブル金属箔張り積層板の製造方法 |
JP2000119607A (ja) * | 1998-10-12 | 2000-04-25 | Kanegafuchi Chem Ind Co Ltd | ボンディングシートおよびそれを用いたフレキシブル銅張積層板の製造方法 |
-
2001
- 2001-06-22 JP JP2001190498A patent/JP4643861B2/ja not_active Expired - Lifetime
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