JP4643797B2 - ギャップ付き変圧器及びこれを用いた非接触給電装置並びにx線ct装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は,所定のギャップを介して1次側から供給される交流電力を2次側へ伝達可能なギャップ付き変圧器及びこれを用いた非接触給電装置並びにX線CT装置に係り,特に,1次巻線で発生した磁束が2次側巻線と鎖交しない磁束の漏れを抑制し,効率良く電力を伝達可能なギャップ付き変圧器及びこれを用いて電力を負荷側に非接触で伝達する非接触給電装置並びに電源からX線管側へ非接触で電力を供給することができるX線CT装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
X線CT装置は、X線管から扇状のX線ビームを被検体に照射し、該被検体を透過したX線を前記X線管と対向する位置に配置したX線検出器で検出し、この検出したデータを画像処理して前記被検体の断層像を得るものである。
前記X線検出器は、円弧状に配列された数百にも及ぶ検出素子群で構成され、被検体を挟んでX線管に対向して配置されており、検出器素子の数に対応した数の放射状に分布するX線通路を形成し、X線管と検出器が一体となって被検体の周りを少なくとも180度以上回転させて一定の角度ごとに被検体の透過X線を検出する。
【0003】
このX線CT装置において、近年、“短時間で広い範囲のスキャンが可能”、“体軸方向に連続したデータが得られ、これによって3次元画像の生成が可能になる”などの特徴により、ヘリカルスキャンやスパイラルスキャンと呼ばれるら旋CTが急激に普及した。
このら旋CTは、撮影中に積極的に撮影位置を移動させることで広範囲の多層の撮影にかかる時間を大幅に短縮して、3次元のCT撮影を可能としたものである。
【0004】
このような特徴のあるら旋CTは、固定したスキャナ本体が連続回転スキャンを行うと同時に寝台を体軸方向に連続移動させることによって、X線管を被検体に対し相対的にら旋運動をさせる。このように、ら旋スキャンは撮影中、連続回転スキャンと並行して撮影位置も変えているため、全体の撮影時間が短縮される。また、撮影中に体軸方向にも連続走査しているため、3次元データを収集していることになる。
【0005】
このら旋スキャンを実現するためには、スキャナ回転盤を連続して回転させる必要があり、そのためにはスキャナ回転盤に搭載したX線管に連続して電力を供給するための手段が必要となる。この手段には、スリップリングとブラシから成る電力供給機構が用いられ、前記スキャナ回転盤にX線管と共に該X線管に高電圧(以下、この電圧を管電圧と呼ぶことにする)を印加するための高電圧発生装置などを搭載し、この高電圧発生装置などに前記電力供給機構を介して前記X線管から所要のX線を発生するための電力を供給する。このように、高電圧発生装置はスキャナ回転盤に搭載されて高速に回転されるために、その重量はできるだけ軽い方が望ましい。このため、X線高電圧装置には、前記高電圧発生装置の高電圧変圧器を小型、軽量化でき、かつ管電圧の脈動を小さくできるインバータ式X線高電圧装置が用いられる。
【0006】
しかし、このようなスリップリングとブラシによる電力供給機構による従来のX線CT装置は、スリップリングとブラシの機械的摺接による電力供給方法であるので、前記スリップリングとブラシとの間に大電流が流れることによって,その接触部分に摩耗や腐食が生じるものであった。すなわち、上記スキャナ回転部に搭載されている高電圧変圧器は、出力側に百数十kVもの高電圧を発生させるもので、入力側との絶縁のために内部に十分な絶縁距離を設けてあり、このために数μH〜数十μHの漏れインダクタンスがある。また、上記スリップリングとブラシとを介して流れる電流は、最大で約400Aにもなる。このような状態で、上記スキャナ回転部が回転するときにスリップリングとスキャナ固定部に設けたブラシとの間に小さな隙間が生じると、上記漏れインダクタンスの影響で電流は流れ続けようとし、上記隙間にアークが発生して局所的に高温になることがある。そして、この高温によって上記スリップリングやブラシが摩耗したり腐食することがあるので、上記スリップリングの研磨やブラシの交換などの保守点検を定期的に行わなければならず、保守点検に多くの労力と費用とを要するものである。
【0007】
そこで,このような問題点に対処する方法として,電源からX線管側へ電力を機械的摺接によらない非接触で供給する電磁誘導作用を利用した方法が特開平7-204192号に開示されている。
これは、スキャナ回転部に設けられ電源からX線管側へ電力を供給する手段として、上記インバータ式X線高電圧装置のインバータ回路の出力側に接続されると共にスキャナ回転部の固定枠の周上に配置されたリング状の第一の鉄心に第一の巻線を巻き付け、スキャナ回転部の回転枠の周上に配置されたリング状の第二の鉄心に第二の巻線を巻き付けて成り、上記第一の巻線で発生する磁束が上記各鉄心を介して第二の巻線に鎖交させて該第二の巻線に誘起した電圧を利用するものである。
【0008】
このような構成の電磁誘導送電手段において、上記X線管とX線検出器を回転させるために、スキャナ回転部の固定枠に配置された第一の鉄心と回転枠に配置された第二の鉄心の間にはギャップが必要となる。
したがって、前記電磁誘導送電手段はギャップ付き変圧器の1次側を固定にし、2次側を回転させる回転変圧器の原理を応用したものと言える。
【0009】
ギャップ付き変圧器は,1次側鉄心と、この1次側鉄心に巻かれた1次側巻線と、前記1次側鉄心とギャップを設けて対向して配置された2次側鉄心と、この2次側鉄心に巻かれた2次側巻線とで構成される。このギャップ付き変圧器において、1次巻線に外部から交流電圧が供給されるとこの電流によって1次巻線の周囲,特に,1次側鉄心に磁束が発生し、この1次巻線によって発生する磁束の多くは,前記ギャップを介して2次側鉄心に到達し,そのまま2次巻線と鎖交して再び1次側鉄心に戻り,1次巻線と鎖交して1次側から供給した電力を2次側に伝達する。以上のことから、前記電磁誘導送電手段のスキャナ回転部の固定枠の周上に配置されたリング状の第一の鉄心と第一の巻線は、前記ギャップ付き変圧器の1次側鉄心と1次側巻線に対応し、前記電磁誘導送電手段のスキャナ回転部の回転枠の周上に配置されたリング状の第二の鉄心と第二の巻線は、前記ギャップ付き変圧器の2次側鉄心と2次側巻線に対応しており、前記ギャップ付き変圧器の原理で1次側から供給した電力を2次側に非接触で伝達することによって、スリップリンク゛とブラシによる機械的摺接による電力伝送手段の摩耗や腐食を防止し、保守点検を容易にすると共に、装置全体の信頼性向上が可能となる。
【0010】
【発明が解決しようとしている課題】
一般に、変圧器においては、1次巻線に流れる電流によって生じる磁束のうちの一部は2次側鉄心まで到達せず,1次側鉄心付近で戻って1次巻線だけと鎖交するものがある。また,2次側鉄心には到達するものの,2次巻線とは完全に鎖交せずに途中でバイパスして1次側鉄心に戻るものもある。
【0011】
特に,1次側鉄心と2次側鉄心との間にギャップがある上記のギャップ付き変圧器においては,1次巻線で生じた磁束はギャップを越えて2次側鉄心に到達することができずにもっと近くを通ろうとする磁束が増加するために,1次巻線及び2次巻線と鎖交しない磁束,すなわち,漏れ磁束が多く生じる傾向にある。この漏れ磁束は、1次巻線から供給されて2次側に伝達する電力を制限してしまう。1次巻線から見るとこの漏れインダクタンスは周波数の高い交流電流を著しく制限するものである。
【0012】
さらに,ギャップを通る磁束が多い変圧器は,2次側が開放のとき1次側から見たインダクタンス,すなわち,励磁インダクタンスが低下し,その分,無負荷でも1次巻線に大きな電流が流れて,1次巻線や1次側および2次側鉄心,1次電流を供給するインバータ回路などに大きな損失を発生させ,結果的に,電力変換伝達効率を低下させるという問題があった。
【0013】
以上で説明したように,上記従来のギャップ付き変圧器は,鉄心間のギャップが比較的大きな磁気抵抗として働き,本来、磁束を通したい経路以外に磁束が漏れ,この漏れ磁束が一次巻線,二次巻線の電磁的結合を低下させるという問題をもっており、ギャップが大きいときはなおさらその傾向が強い。
【0014】
このように、1次巻線と2次巻線の電磁結合が低いと,等価的には1次巻線に大きなインダクタンス(漏れインダクタンス)が直列に挿入されているように作用し,1次巻線の電流を制限してしまうばかりでなく,1次巻線に供給される交流電圧に対して流れる電流が位相遅れを生じ力率が著しく低下して大きな電力を伝達できないという問題が生る。
このような問題を有するギャッブ付き変圧器と同じ原理の上記電磁誘導送電手段においも、スキャナ回転部の固定枠に配置された第一の鉄心と回転枠に配置された第二の鉄心との間にギャップを必要とするために、上記ギャップ付き変圧器と同様の問題が生じ、この点の改善が望まれていた。すなわち、ギャップの存在によって生じる漏れ磁束を低減して電力の伝達効率をあげることが必要である。
【0015】
なお、上記ギャップ付き変圧器の原理を利用して電力を非接触で伝達する非接触給電方式は、上記X線CT装置の他に、経皮的電力伝達型の心臓用ペースメーカ,電気自動車用の給電装置,電話器や電動歯ブラシなどの給電に応用されるようになってきており、機械的な電気接点がないので該接点の腐食や汚れによる機器の信頼性が高い。また,高速で動作するものに対して静止側から電力を無接点で供給できるので,無人搬送装置,リニアモータカーなどへ応用され,さらに,電力伝達される装置の操作者の感電を防止するなど,実応用面で非常に有効な利点を持っている。
【0016】
このように、ギャップ付き変圧器の原理を応用した非接触給電装置は、その多くの利点を活かして多分野への適用が展開されつつあるが、反面、上記したようにギャップの存在によって生じる電力伝達効率の低下という問題が残されている。
そこで、本発明の目的は,1次、2次鉄心間のギャップによって生じる漏れ磁束による電力伝達効率の低下を防ぎ,1次巻線に供給した電力を前記ギャップを介して2次巻線側に伝達することが可能なギャップ付き変圧器及びこのギャップ付き変圧器を用いて電力を負荷側に非接触で伝達する非接触給電装置並びにこの非接触給電装置を用いて電源からX線管側へ非接触で電力を供給することができるX線CT装置を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記目的は以下の手段によって達成される。
(1)第一の鉄心と,これに巻かれた第一の巻線と,ギャップを介して第一の鉄心に対向して配置された第二の鉄心と,この第二の鉄心に巻かれた第二の巻線とからなるギャップ付き変圧器において,前記第一の鉄心と第二の鉄心内の磁束走行方向に沿って導体層を設ける。
【0018】
(2)前記(1)のギャップ付き変圧器の第一の巻線に交流電圧源を接続して前記第二の巻線に接続された負荷に前記交流電圧源の電力を非接触で供給する。
【0019】
(3)直流電圧を発生する電源と、該電源からの直流電圧を交流に変換するインバータと、該インバータからの交流電圧を昇圧する高電圧変圧器と、該高電圧変圧器の出力電圧を整流する整流器と、該整流器から直流電圧を供給してX線を放射するX線管と、該X線管から放射され被検体を透過した透過X線量分布を検出すると共にその検出信号を増幅するX線検出部と、前記X線管と前記X線検出部とを対向させて被検体の周りに回転させるスキャナ回転部と、該スキャナ回転部のX線検出部からの出力信号を処理して診断部位の断層像を再構成する画像処理装置と、該画像処理装置からの出力信号を入力して断層像を表示する画像表示装置と、前記スキャナ回転部には電源からX線管側へ電力を供給する手段とを備えて成るX線CT装置において、前記電力供給手段は、前記インバータの出力側に接続され、かつ前記スキャナの固定枠に配置された第一の鉄心と、この第一の鉄心に巻かれた第一の巻線と、前記高電圧変圧器の入力側に接続され、かつ前記スキャナ回転部の回転枠に前記第一の鉄心に対向して配置された第二の鉄心と、この第二の鉄心に巻かれた第二の巻線と、前記第一の鉄心と第二の鉄心内の磁束走行方向に沿って設けた導体層との組み合わせから成り、前記第一の巻線により生成された主磁束が前記第二の巻線により形成される主要導磁器に導かれるように構成する。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のギャップ付き変圧器及びこのギャップ付き変圧器を用いた非接触給電装置並びにこの非接触給電装置を用いたX線CT装置について実施例を用いて詳細に説明する。
【0021】
(1)ギャップ付き変圧器
図1は本発明のギャップ付き変圧器(E型鉄心を用いた変圧器)の第一の実施例である。11は1次側鉄心,21は1次側鉄心に巻かれた1次巻線,12は1次側鉄心11にギャップを設けて配置された2次側鉄心,22は2次側鉄心に巻かれた2次巻線,31と32,33と34はそれぞれ1次側鉄心11と2次側鉄心12の溝に配置された銅板である。この銅板31〜34は,1次巻線と1次側鉄心,2次巻線と2次側鉄心の間に挟まれていると同時に,両鉄心の内側に鉄心に沿って張られており,鉄心内に発生する1次巻線21及び2次巻線22と鎖交する主磁束の方向に対して平行に配置するのが特徴である。
【0022】
図1に示した第一の実施例の銅板31,32は,1次巻線に供給される電流によって生じた磁束が1次側鉄心内を通るとき,その一部が鉄心外に漏れて1次巻線へ最短距離の経路で戻るのを阻止するはたらきがある。すなわち,銅板31,32を横切ろうとする磁束があると,銅板に渦電流が生じて横切る磁束と反対向きの磁束が発生し,それを打ち消すはたらきがある。結局,磁束は銅板を横切ることができず2次側鉄心の方向へ進み,その殆どは2次側鉄心に到達する。
【0023】
2次側鉄心に一度到達した磁束は,上記と同様の理由によって,銅板33,34を横切ることができず,結果的には2次巻線22と鎖交して再び1次側鉄心に戻る。こうして1次巻線で発生した磁束のほとんどは2次巻線に鎖交することになり,1次巻線に供給された電力が効率良く2次巻線へ伝達されることになる。
【0024】
図2は本発明のギャップ付き変圧器(中空の変圧器)の第二の実施例である
図2は変圧器がリング状で、鉄心は中空になっており、(a)は1次側を上から見た図、(b)は1次側、2次側を組み合わせた図である。このリング状の変圧器は回転する物体間に電力を伝達するのに適している。図2において,11'は1次側鉄心,21'は1次側鉄心に巻かれた1次巻線,12'は1次側鉄心11にギャップを設けて配置された2次側鉄心,22'は2次側鉄心12'に巻かれた2次巻線,31'と32',33'と34'はそれぞれ1次側鉄心11'と2次側鉄心12'の溝に配置された銅板である。この銅板31'〜34'は,1次巻線21'と1次側鉄心11',2次巻線22'と2次側鉄心12'の間に挟まれていると同時に,両鉄心の内側に鉄心に沿って張られている。この場合も主磁束の方向と平行に銅板を配置している。
【0025】
第二の実施例は第一の実施例と同様,1次巻線21'によって鉄心11'の中に生じた磁束が鉄心の内側に漏れることなく,効率良く2次側鉄心12'に到達し,更に,2次巻線22'に鎖交して,漏れ磁束の少ない磁気結合の高いギャップ付き変圧器を実現する。
【0026】
ここで,図2(a)の1次側を上から見た図に示すように,銅板31'と銅板32'はわずかな間隔を置いて互いに絶縁されて配置されている。これは,これらの銅板がリング状に接続されていると,1次巻線21'で生じた磁束によって,この銅板にリングに沿って電流が流れ,鉄心の磁束をほとんど全て打ち消してしまうのを防ぐためである。図3は本発明のギャップ付き変圧器(E型鉄心の側面に銅板を設けた変圧器)の第三の実施例である。
【0027】
図1に示した第一の実施例では,E型の溝にあたる部分に磁束が漏れることを防いだが,こうした場合においても鉄心の端面から磁束が漏れることがあるため,これが漏れ磁束となる。そこで,図3の実施例では側面に鉄心断面とほぼ同形状の銅板35〜38を配置してこの側面から生じる磁束をも閉じ込めることができる。
【0028】
図4は本発明のギャップ付き変圧器(E型鉄心の内側及び外側に銅板を設けた変圧器)の第四の実施例である。
上記の第一〜第三の実施例では,鉄心の溝の内側に磁束が漏れることを防ぎ,磁気的結合を向上させるものである。これに対して,図4では,鉄心の外側にも銅板を配置することによって,鉄心の外側に漏れる磁束を鉄心内に閉じ込めることが可能である。この場合,磁束のほとんど全てが鉄心の中を通過するために,1次巻線でみた励磁インピーダンスを高めることができ,それに伴って,励磁電流を低減し,励磁電流によって生じる損失を低減し,電力伝達効率の高いギャップ付き変圧器を構成することが可能である。
【0029】
このように,本発明のギャップ付き変圧器の趣旨は,本来,鉄心内を走行させたい磁束の方向に沿って鉄心に導体を配置することによって,鉄心から漏れて1次巻線及び2次巻線と鎖交しない無効な漏れ磁束を低減し,さらにはまた,所要の励磁インピーダンスを確保して電力伝達効率を低下させることなく,ギャップを介した1次側と2次側の電磁的結合を可能にすることにある。
【0030】
上記図1と図3,図4では断面形状がE型の鉄心について述べたが,これはU型,EI型,C型などさまざまな断面形状の鉄心に適用可能である。
【0031】
以上で説明した実施例では,鉄心内を通過させたい磁束の走行方向に沿って導体板を配置することにより,1次巻線と2次巻線の磁気的結合を高め,その結果,漏れ磁束や漏れインダクタンスを低減して効率良い電力伝達を実現しようというものである。このとき,導体は電気抵抗の小さいものを選ぶほうが磁束の通過を阻止する効果が高く,その際に流れる渦電流によって生じる損失,発熱も小さい。しかし,必ずしも導体として銅板を用いる必要はなく,アルミニューム,銀など他の電気伝導度の高い物質を用いることができる。
また,実装上は,この導体板は薄いものが有利であるが,上記,渦電流によって生じる損失を低減するために,ある程度の厚さが必要な場合もある。
【0032】
(2)非接触給電装置
上記(1)のギャップ付き変圧器を交流電圧源と負荷との間に入れることによって,電磁誘導により非接触で前記負荷に電力を供給することが可能となる。その非接触給電装置の一例を図5に示す。図5において、51は直流電源,52はこの直流電源51から直流電圧を受電し,高周波の交流に変換するインバータ回路,21aはインバータ回路52の出力側に接続された1次巻線,11aは1次巻線が巻かれている1次側鉄心,12aは1次側鉄心31aにギャップを介して対向して配置された2次側鉄心,22aは2次側鉄心12aに巻かれた2次巻線,53は2次巻線22aに接続された負荷である。ここで負荷22aは,抵抗性の負荷である場合もあるし,更に,整流回路やコンバータ,インバータに代表される電力変換回路を含む場合や,バッテリー,照明機器,電動機などである場合もあり,特に,ここでは負荷の種類を限定しない。
【0033】
図5に示した非接触給電装置では,ギャップを介して1次、2次側に分かれた変圧器を通して効率良く電力を供給できることが重要であり,図1〜図4で説明した漏れ磁束を低減したギャップ付き変圧器を適用することができる。
本発明による非接触給電装置は、電動歯ブラシ,心臓ペースメーカ,電話器,電気自動車,X線CT装置,搬送機械,ロボット,など,接点の保護,感電防止,無接点の相対動作機器などあらゆる非接触給電部に用いることができる。
【0034】
(3)非接触給電装置を用いたX線CT装置
上記(2)のギャップ付き変圧器による非接触給電装置をインバータ回路と高電圧変圧器との間に入れることによって,電磁誘導により非接触でX線CT装置のX線管に電力を供給することが可能となる。
【0035】
図6は、図1のギャップ付き変圧器と同じ原理の電磁誘導送電手段を用いた本発明によるX線CT装置の実施例を示す全体構成のブロック図である。
このX線CT装置は,被検体の診断部位にX線を放射しその透過X線量分布を検出して断層像を再構成して画像として表示するもので,図1に示すように,電源1と,インバータ回路2と,高電圧発生回路520と,X線管560と、X線検出部550と,画像処理装置9と,画像表示装置10とを有し,上記電源1からX線管560へ電力を供給する手段としてスキャナ回転部5に電磁誘導送電手段4を備え,さらにX線検出部550から画像処理装置9へ検出信号を送る手段としてスキャナ回転部に設けた前記X線検出部550からの出力信号を光に変換する発光素子7cとスキャナ固定部に設けた光を電気信号に変換する受光素子8cとによる信号伝送手段とを備えて成る。
【0036】
上記電源1は,インバータ回路2に供給する直流電圧を発生するもので,図1においては商用の交流電源101と,この交流電源の電圧を所望の直流電圧に変換するコンバータ回路102と,このコンバータ回路の出力電圧を平滑するコンデンサ103とから成る。なお、この電源1の入力電源としての商用電源は、単相交流電源を例としてあげたが、これは三相交流電源でも良く、また、前記電源1は,直流電圧を発生するものであれば上記の構成に限らず、例えばバッテリであっても良い。
【0037】
インバータ回路2は,上記電源1から出力された直流電圧を高周波の交流に変換するもので、この変換された高周波交流電圧を共振コンデンサ3とこれと直列に接続される回路のインダクタンス(電磁誘導送電手段4、高電圧変圧器524の漏れインダクタンスなどの回路系に存在するインダクタンス成分であるが、前記高電圧変圧器524の漏れインダクタンスがほとんどを占める)との共振作用によって生じる電力をX線管560に供給する。
【0038】
電磁誘導送電手段4は、スキャナ固定部に設けた第一の巻線401とスキャナ回転部に設けた第二の巻線402などから成り、後述の機構による電磁誘導作用により前記インバータ回路2の出力電圧をスキャナ回転部5に搭載した高電圧変圧器524に非接触で送電する。
【0039】
高電圧発生回路520は,高電圧変圧器524とこの高電圧変圧器524の出力電圧を直流電圧に変換する高電圧整流器525とで構成され、該高電圧整流器525で直流に変換した高電圧をX線管560に印加し、X線管560からX線を放射する。
【0040】
X線検出部550は,上記X線管560から放射され被検体を透過した透過X線量分布を検出すると共にその検出信号を増幅するもので,上記の透過X線量分布を検出する検出器551と,この検出器551からの検出信号を増幅するプリアンプ552とから成る。
【0041】
画像処理装置9は,上記X線検出部550からの出力信号を入力して処理し,被検体6の診断部位の断層像を再構成するものである。
画像表示装置10は,上記画像処理装置9からの出力信号を入力して断層像を表示するもので,例えばテレビモニタから成る。
【0042】
このように,スキャナ回転部5には,上記高電圧発生回路520と、高電圧整流器525と、X線管560と、X線検出部550が搭載され,上記X線管6とX線検出部550とが被検体6を挟んで対向し上記被検体6の周りを回転するようになっている。
【0043】
スキャナ回転部5は,中心部に被検体挿入用の開口部が形成された回転枠を有し,この回転枠の一側面に、上記高電圧発生回路520、X線管560、X線検出部550を搭載し、前記回転枠の胴部の周りには検出信号伝送用の発光素子7Cを(図6の7c)を設け、この発光素子に対向してスキャナの固定枠に受光素子8C(図6の8c)を設けて、これらによって被検体を透過したX線検出信号を画像処理装置9に伝送する。
【0044】
図7は上記電磁誘導送電手段4の具体的な構造である。同図(a)はスキャナの被検体挿入用開口部55と固定枠57と回転枠56との位置関係を示す断面図、(b)は図2(a)の破線で囲んで示した電磁誘導送電手段4の部分を拡大した斜視図である。
【0045】
先ず、スキャナ回転枠56は,固定枠57の内側にて軸方向に所定距離だけ離して設けた軸受406a,406bによって回転可能に取り付けられている。固定枠57の内側面と回転枠56の外周面にはそれぞれ対向して第一の鉄心404と第二の鉄心405が配置され、前記第一の鉄心404と第二の鉄心405内の磁束走行方向に対して平行に銅板(導体層)が設けられている。
【0046】
各々の鉄心は一体でも良いが,複数に分割されていても良い。また,一方の鉄心が一体で,他方の鉄心が分割されているという組み合わせでも良い。第一の鉄心404に設けた溝には、インバータ回路2の出力側に接続された第一の巻線401が嵌め込み固定され、第二の鉄心405に設けた溝には,高電圧変圧器524の入力側に接続された第二の巻線402が嵌め込み固定される。電磁誘導送電手段4を上記のように構成することにより,図6に示すインバータ回路2から供給された交流電流が第一の巻線401に流れると,図7(b)に示すように,対向する第一の巻線401及び第二の巻線402,及び対向する円形で断面がコの字形の第一の鉄心404と、同じく円形で断面がコの字形の第二の鉄心405とで構成された外鉄形のギャップ付き変圧器に磁気回路が形成され磁束φが発生する。すると,前記第一の鉄心404と第二の鉄心405内の磁束走行方向に対して平行に設けられた銅板(導体層)でギャップによって生じる漏れ磁束を低減し、前記磁束φに鎖交している第二の巻線402に電圧が誘起され,この第二の巻線402から図6に示す高電圧変圧器524に交流電圧を供給することができる。このようにして、X線管560の管電圧を発生する高電圧発生回路520に非接触で電力を供給することができるようになる。
【0047】
上記図6の実施例では、電磁誘導送電手段に図1のE型鉄心を用いたギャップ付き変圧器の原理を応用した例をあげて説明したが、本発明はこれに限定するものではなく、他の図2、図3、図4に示したギャップ付き変圧器と同じ原理の電磁誘導送電手段を用いても良い。
【0048】
【発明の効果】
以上で述べたように,本発明によれば,1次、2次鉄心内の磁束走行方向に対して平行に設けた銅板(導体層)で前記1次、2次鉄心間のギャップによって生じる漏れ磁束を低減するようにしたので、この漏れ磁束による伝達電力低下を防ぎ,1次巻線に供給された電力を鉄心間のギャップを介して大電力を2次巻線側に伝達することが可能なギャップ付き変圧器を提供することができる。このギャップ付き変圧器の鉄心間のギャップを利用して鉄心磁気特性の有効利用や,機械的な電気接点がない電力伝達機能を実現でき,特に、非接触給電装置は、接点の腐食や汚れによる機器の信頼性低下を防ぎ,感電防止にも有効であり、この非接触給電装置の電磁誘導送電手段をX線CT装置に利用することによって、電源からX線管側へ非接触で電力を供給することができる。したがって、“短時間で広い範囲のスキャンが可能”、“体軸方向に連続したデータが得られ、これによって3次元画像の生成が可能になる”などの特徴を有するら旋CTの高画質化及び高信頼性化に大きく寄与するものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のギャップ付き変圧器(E型鉄心を用いた変圧器)の第一の実施例図。
【図2】本発明のギャップ付き変圧器(中空の変圧器)の第二の実施例図。
【図3】本発明のギャップ付き変圧器(E型鉄心の側面に銅板を設けた変圧器)の第三の実施例図。
【図4】本発明のギャップ付き変圧器(E型鉄心の内側及び外側に銅板を設けた変圧器)の第四の実施例図。
【図5】本発明によるギャップ付き変圧器を用いた非接触給電装置の一実施例図。
【図6】本発明によるギャップ付き変圧器の原理による電磁誘導送電手段を用いたX線CT装置の全体構成のブロック図。
【図7】図6の電磁誘導送電手段の具体的構造図。
【符号の説明】
1…電源、2…インバータ回路、4…電磁誘導送電手段、5…スキャナ回転部、6…被検体、11,11',11a…1次側鉄心、12,12',12a…2次側鉄心、21,21',21a…1次巻線、22,22',22a…2次巻線、31〜38,31'〜34',31a,32a…銅板51…直流電源、52…インバータ回路、53…負荷、55…スキャナ開口部、56…スキャナ回転枠、57…スキャナ固定枠、101…商用交流電源、102…コンバータ回路401…第一の巻線、402…第二の巻線、404…第一の鉄心、405…第二の鉄心、406〜409…銅板、520…高電圧発生装置、524…高電圧変圧器、525…高電圧整流器 560…X線管、550…X線検出部
Claims (4)
- 第一の鉄心と,これに巻かれた第一の巻線と,ギャップを介して第一の鉄心に対向して配置された第二の鉄心と,この第二の鉄心に巻かれた第二の巻線とからなるギャップ付き変圧器において,
第一の鉄心は第一の巻線が配置される第一の溝を有し、
第二の鉄心は第二の巻線が配置されるとともに第一の溝に対向する第二の溝を有し、
第一の鉄心及び第二の鉄心からの磁束の漏れを防止する漏れ磁束防止層を、第一の鉄心と第一の巻線の間及び第二の鉄心と第二の巻線の間に、第一の溝及び第二の溝に沿って設けたことを特徴とするギャップ付き変圧器。 - 請求項1に記載したギャップ付き変圧器において、
第一の鉄心と第二の鉄心はともにリング状であり、
前記漏れ磁束防止層は第一の鉄心と第二の鉄心の周方向において、絶縁部を有することを特徴とするギャップ付き変圧器。 - 請求項1または2に記載したギャップ付き変圧器の前記第一の巻線に交流電圧源を接続して前記第二の巻線に接続された負荷に前記交流電圧源の電力を供給することを特徴とする非接触給電装置。
- 直流高電圧を供給してX線を放射するX線管と、該X線管から放射され被検体を透過した透過X線量分布を検出すると共にその検出信号を増幅するX線検出部と、前記X線管と前記X線検出部とを対向させて被検体の周りに回転させるスキャナ回転部と、該スキャナ回転部のX線検出部からの出力信号を処理して診断部位の断層像を再構成する画像処理装置と、該画像処理装置からの出力信号を入力して断層像を表示する画像表示装置と、前記スキャナ回転部へ電力を供給する電力供給手段とを備えて成るX線CT装置において、
前記電力供給手段は、請求項3に記載の非接触給電装置であり、前記スキャナ回転部に前記第二の鉄心と前記第二の巻線を配置し、前記スキャナ回転部の固定枠に前記第一の鉄心と前記第一の巻線を配置したことを特徴とするX線CT装置。
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